説明

配管の加熱装置

【課題】 継手、枝管の接続部、バルブの接続部等、配管の径よりも大きな径を有する付属品を備えた配管の内部を流通する流体を、配管の外周側から加熱するための電気エネルギーを利用する加熱装置であって、配管及び付属品に容易に配置することができ、配管を均一に効率よく加熱することができ、さらに設置の際のコストが安価である加熱装置を提供する。
【解決手段】 所定の区間の該付属品及び該配管を包囲することが可能な筒形状を有する断熱材の内部表面に、面状ヒータが備えられ、さらに繊維状の金属の塊が該面状ヒータ及び配管に接触するように充填されてなる加熱装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に円筒形の配管内を流通する流体を加熱するための電気エネルギーを利用する加熱装置に関するものである。更に詳細には、継手、バルブ等の付属品を備えた配管内を流通する流体を、効率よく加熱するための加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の配管等の外側表面に取付けて、配管内を流通する流体を加熱するための面状ヒータが広く利用されている。このようなヒータの形態としては、例えば、特開平11−74066号公報、特開2004−158271号公報に示すように、配管の外周に螺旋状に巻き付けるテープ状のヒータ、特表2000−505582号公報、特開2002−295783号公報、特開2002−352941号公報に示すように、発熱素子と断熱材が一体となったジャケットヒータ等が開発されている。
【0003】
また、前記のような面状ヒータに使用される発熱素子としては、グラフトカーボン、カーボン粉末、金属粉末、あるいは金属酸化物粉末等を含む合成樹脂(導電性樹脂)を用いて、ガラスクロスに含浸させたもの、前記のような導電性樹脂をポリエステル、ポリイミド、マイカ等の絶縁基材シートに塗布または印刷により保持させたもの、金属箔をエッチングして回路としたもの、あるいは金属抵抗線を絶縁基板シートに張り巡らして回路としたもの等が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−74066号公報
【特許文献2】特表2000−505582号公報
【特許文献3】特開2002−295783号公報
【特許文献4】特開2002−352941号公報
【特許文献5】特開2004−158271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加熱対象の配管が、継手、枝管の接続部、バルブの接続部等、配管の径よりも大きな径を有する付属品を備えている場合、従来からのテープ状のヒータやジャケットヒータを使用すると種々の問題が発生した。例えば、テープ状のヒータを用いると、これらの配管及び付属品に巻き付けるのに手間がかかるという不都合、温度分布が均一になるように取り付けることが難しいという不都合があった。また、大きなジャケットヒータを用いて、配管及び付属品を併せて加熱しようとすると、付属品がない箇所においてヒータと配管との間に間隙ができるので、配管全体にわたり均一に加熱できないという不都合、配管の温度を所定の温度に昇温させる間にヒータと配管の間隙に熱がこもり、オーバーシュ−トによりヒータの温度が異常に高くなる不都合があった。さらに、配管及び付属品を別々に加熱しようとすると、複数個の複雑な形状のヒータを準備しなければならず、コストがかかり、また取り付けに手間がかかるという不都合があった。
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、継手、枝管の接続部、バルブの接続部等の付属品を備えた配管の内部を流通する流体を、配管の外周側から加熱するための電気エネルギーを利用する加熱装置であって、配管及び付属品に容易に配置することができ、配管を均一に効率よく加熱することができ、さらに設置の際のコストが安価である加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定の区間の付属品及び配管を包囲することが可能な比較的に大きな断熱材の内部表面に、面状ヒータを配置し、さらに弾性がある繊維状の金属の塊を面状ヒータと配管の空間に充填すれば、配管への取付けの際に、繊維状の金属の塊が収縮し面状ヒータと配管に密着して、面状ヒータからの熱が、繊維状の金属を介して容易に均一に効率よく配管に伝わることを見出し、本発明の配管の加熱装置に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、加熱対象の配管の径よりも大きな径を有する付属品を備えた配管を加熱するための加熱装置であって、所定の区間の該付属品及び該配管を包囲することが可能な筒形状を有する断熱材の内部表面に、面状ヒータが備えられ、さらに繊維状の金属の塊が該面状ヒータ及び配管に接触するように充填されてなることを特徴とする配管の加熱装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の配管の加熱装置は、1個の加熱装置で加熱対象の配管の径よりも大きな径を有する付属品を、配管とともに加熱することができる構成なので、取り付けに手間がかからず、設置の際のコストも安価である。また、弾性がある繊維状の金属の塊を、面状ヒータ及び配管に接触するように、好ましくは間隙が少なくなるように配置するので、配管に取付けの際には繊維状の金属の塊が圧縮されて面状ヒータの表面と配管の表面に密着して固定され、繊維状の金属の塊による放熱により、面状ヒータの異常発熱もなく、面状ヒータからの熱が容易に配管に伝わり、配管を均一に効率よく加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の配管の加熱装置は、継手、枝管の接続部、バルブの接続部のような、加熱対象の配管の径よりも大きな径を有する付属品を備えた配管を流通する流体を加熱するための電気エネルギーを利用した加熱装置に適用される。
以下、本発明の配管の加熱装置を、図1〜図8に基づいて説明するが、本発明がこれにより限定されるものではない。
【0011】
尚、図1は、本発明の配管の加熱装置の一例を示す上部切開の斜視図である。図2は、本発明の配管の加熱装置の一例を示す断面図である。図3は、本発明に用いられる断熱材の一部(電極挿入部なし)の一例を示す斜視図である。図4は、図3の断熱材に面状ヒータを取付けたときの状態の一例を示す斜視図である。図5は、本発明に用いられる断熱材の一部(電極挿入部あり)の一例を示す斜視図である。図6は、本発明の配管の加熱装置の図2以外の一例を示す断面図である。図7は、継手を備えた配管の構成図である。図8は、バルブ(枝管)の接続部を備えた配管の構成図である。
【0012】
本発明の配管の加熱装置は、加熱対象の配管の径よりも大きな径を有する付属品、例えば図7に示すような継手6、図8に示すようなバルブ8(枝管)の接続部7を備えた配管4を加熱するための加熱装置であって、図1、図2に示すように、所定の区間の該付属品及び該配管を包囲することが可能な筒形状を有する断熱材1の内部表面に、面状ヒータ2が備えられ、さらに繊維状の金属の塊3が該面状ヒータ2及び配管4に接触するように充填されてなる配管の加熱装置である。
【0013】
尚、図1は、本発明の配管の加熱装置において、図5の電極挿入部5を有する断熱材の部分を除去した上部切開の斜視図であり、本発明の配管の加熱装置は、図1に示すような加熱装置の一構成部分の上部に、図5の断熱材の電極の取り付け部5に電極を挿入した加熱装置の一構成部分を配置してなる加熱装置である。図5の断熱材は、電極の取り付け部の他、適宜、面状ヒータ及び/または繊維状の金属の塊を備えることができる。
【0014】
本発明の加熱装置における断熱材は、付属品よりも大きな内径の筒形(円筒、楕円筒、四角筒、多角筒)状を有する断熱材であるが、その両端部を断熱性向上のために、配管を通すことができる程度の孔を有する円盤状等とすることもできる。また、筒形状の断熱材は、長手方向と垂直の断面の外周の形状と内周の形状が、図6に示すように一致してもよいし、図2に示すように一致していなくてもよい。また、本発明の加熱装置における断熱材は、筒形状を有する1個の成形体からなる断熱材とすることもできるが、図2、図6に示すように長手方向に2分割、あるいは3分割、4分割にして、これらをバンド等の結合手段で結合させて一体化することもできる。
【0015】
本発明における断熱材の構成材料としては、ヒータの加熱温度に耐えられ、断熱性を有するものであれば特に制限されることはなく、例えば、シリコーン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができるが、これらの中ではシリコーン樹脂が好ましい。また、断熱材の厚みは、通常は2〜50mm、好ましくは4〜20mmである。厚みが2mm未満の場合は断熱性が悪化し、厚みが50mmを超える場合は断熱性向上の効果が少なくなり加熱装置が大きくなる不具合が生じる。
【0016】
本発明に使用される面状ヒータは、通常は発熱素子の両面を絶縁樹脂シートで被覆した面状ヒータであるが、可撓性、柔軟性はあってもなくてもよい。
前記の発熱素子としては、例えば所望のパターンに成形した金属箔抵抗体、金属線抵抗体、または、グラフトカーボン、カーボン粉末、金属粉末、金属酸化物粉末から選ばれる少なくとも1種をシリコーン樹脂等の耐熱性樹脂に混練させた導電性樹脂を、ガラス繊維、セラミック繊維等の基材に含浸させた抵抗体等を用いることができる。このような発熱素子の厚みは、通常は0.01〜0.5mm、好ましくは0.05〜0.1mmである。厚みが0.01mm未満の場合は強度が弱く、0.5mmを超えると可撓性、柔軟性が失われる場合がある。
【0017】
また、絶縁樹脂シートとしては、所定の厚みで電気絶縁性があれば特に制限されることがなく、例えば、シリコーン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができるが、これらの中ではシリコーン樹脂が好ましい。また、絶縁樹脂シートの厚みは、発熱素子に対して片側あたり、通常は0.5〜5mm、好ましくは0.7〜2mmである。厚みが0.5mm未満の場合は電気絶縁性が悪化し、厚みが5mmを超える場合は可撓性が失われる場合があり、厚みが増すことで熱の伝導効率が悪くなる場合もある。さらに、絶縁樹脂シートの表面に金属箔あるいは金属板を配置した面状ヒータとすることもできる。
【0018】
尚、面状ヒータは、図6に示すように、断熱材の内部表面の全面に配置すると配管への加熱効率がよくなるが、配管と付属品の構造によっては配管への取り付けが困難になる場合もあるので、例えば図2に示すように、断熱材の筒内壁表面の一部(断面がコの字状)に配置させることもできる。面状ヒータの形態としては、板状、円筒状、四角筒状、長手方向にスリットを有する円筒状、四角筒状等を例示することができる。面状ヒータは、通常は容易に動かないように断熱材の内部表面に固定される。
【0019】
本発明の加熱装置においては、加熱装置を配管に取付けた際に、繊維状の金属の塊が、前述のような面状ヒータと配管の両方に接触するように、断熱材の内部に充填される。例えば、図3に示すような断熱材1の一構成部分に、図4に示すように前記のような面状ヒータ2が配置された後、図1に示すように繊維状の金属の塊3が充填され、さらに図5に示すような断熱材の一構成部分1が上から配置されて製作される。繊維状の金属の材料としては、鉄、銅、アルミニウム、合金等を例示することができるが、通常は安価で入手が容易なスチールウールが用いられる。また、繊維状の金属の長さ、太さ、及び幅は、弾性を保てれば特に制限されることはない。
【0020】
また、繊維状の金属の塊の形態には特に制限されることはないが、例えば断熱材の形態に合せて、図6に示すように長手方向に2分割、あるいは3分割、4分割にして、面状ヒータの内側表面(面状ヒータが配置されていない部分は断熱材の内側表面)に固定されて備えられる。繊維状の金属の塊の充填部には間隙(ここで「間隙」とは、塊の内部の間隙ではなく、塊と塊の間、面状ヒータと塊の間、または断熱材と塊の間の間隙をいう。)があってもよいが、配管に取付ける前の状態で、通常は間隙が50%以下となるように、好ましくは間隙が20%以下となるように充填される。さらに、配管に取付けた際に間隙が少なくなり、繊維状の金属の塊が若干圧縮されるような状態となることがより好ましい。中心部(配管が配置される部分)の形態としては、繊維状の金属の塊には弾性があるため、配管を挿入するための凹部を設けても設けなくてもよい。
【0021】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
(ヒータの製作)
縦3.5cm、横30.0cm、厚さ0.8mmの未加硫のシリコーン樹脂製絶縁シート上に金属抵抗線を配線し、その上に前記と同様なシリコーン樹脂製絶縁シートを重ね合せ、160℃、30分間の条件で熱プレスした後、200℃の炉に2時間放置し完全硬化させて可撓性を有する面状ヒータを3個作製した。次に、これらの面状ヒータを、縦3.5cm、横30.0cm、厚さ2.0mmの金属板3枚からなる断面がコの字型金属板(断面:3.5cm×3.5cm、長さ:30.0cm)の表面に、接着により一体化し成形してコの字型のヒータを得た。
【0023】
(加熱装置の製作)
長手方向と垂直の断面の形状が、外周で円形、内周で正方形である筒状の断熱材(シリコーン樹脂製絶縁シート/シリコーンスポンジシート/シリコーン樹脂製絶縁シートの3層からなる)を製作した。続いて、配管を通すことができる程度の孔を有する円盤状の断熱材を両端部に取付け、長手方向に半割して、さらに一方に電極を取り付けるための空洞部を設けて、図3及び図5に示すような構成の断熱材を得た。尚、これらの断熱材の外側表面に、バンド及び止め具を取付けてこれらの断熱材が互いに結合できるようにした。
【0024】
結合された前記の断熱材の内部表面にコの字型のヒータを固定し、電極を取付けた。次に、コの字型のヒータの内形よりも若干大きめの2分割可能な角柱状のスチールウールの塊について、中心部に配管を通すための円柱状の空洞部を設け、手で圧縮しながらコの字型のヒータの内側に充填し、断面が図2に示すような構成の加熱装置を得た。尚、スチールウールの塊は、配管に取付けられた場合、配管とヒータとの間に隙間がなくなり、若干圧縮されるような状態となるように設定されている。
【0025】
(加熱試験)
外側表面の中央部に温度測定用の熱電対を取付けた直径12.7mmの配管(継手有り)に、前記のスチールウールの塊が配管を覆うように加熱装置を取付けた。次に、ヒータの表面温度の平均が150℃となるように、100Vの定格電圧を加えた結果、1時間経過後には配管の表面温度は安定し148℃であった。また、配管の表面温度が200℃となるように、前記ヒータに加える電圧を調整して通電した結果、ヒータの表面温度(平均)は199℃で安定した。
【0026】
[比較例1]
実施例1の加熱装置の製作の製作において、スチールウールの塊を充填しなかったほかは実施例1と同様にして加熱装置を製作した。
この加熱装置について、配管(継手部分)と密着する箇所のヒータの表面温度の平均が150℃となるように、100Vの定格電圧を加えた結果、1時間経過後にはヒータとの間に隙間を有する配管の表面温度は安定し136℃であった。そして、その箇所に対面するヒータの表面温度は186℃であった。また、配管の表面温度が200℃となるように、前記ヒータに加える電圧を調整して通電した結果、配管との間に隙間を有するヒータの表面温度(平均)は241℃で安定した。
【0027】
以上の実施例のように、本発明の配管の加熱装置は、面状ヒータの異常発熱もなく、ヒータからの熱が容易に配管に伝わり、配管を均一に効率よく加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の配管の加熱装置の一例を示す上部切開の斜視図
【図2】本発明の配管の加熱装置の一例を示す断面図
【図3】本発明に用いられる断熱材の一部(電極挿入部なし)の一例を示す斜視図
【図4】図3の断熱材に面状ヒータを取付けたときの状態の一例を示す斜視図
【図5】本発明に用いられる断熱材の一部(電極挿入部あり)の一例を示す斜視図
【図6】本発明の配管の加熱装置の図2以外の一例を示す断面図
【図7】継手を備えた配管の構成図
【図8】バルブ(枝管)の接続部を備えた配管の構成図
【符号の説明】
【0029】
1 断熱材
2 面状ヒータ
3 繊維状の金属の塊
4 配管
5 電極挿入部
6 継手
7 接続部
8 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象の配管の径よりも大きな径を有する付属品を備えた配管を加熱するための加熱装置であって、所定の区間の該付属品及び該配管を包囲することが可能な筒形状を有する断熱材の内部表面に、面状ヒータが備えられ、さらに繊維状の金属の塊が該面状ヒータ及び配管に接触するように充填されてなることを特徴とする配管の加熱装置。
【請求項2】
加熱対象の配管の径よりも大きな径を有する付属品が、継手、枝管の接続部、またはバルブの接続部である請求項1に記載の配管の加熱装置。
【請求項3】
繊維状の金属が、スチールウールである請求項1に記載の配管の加熱装置。
【請求項4】
面状ヒータの発熱素子が、金属箔抵抗体または金属線抵抗体である請求項1に記載の配管の加熱装置。
【請求項5】
面状ヒータの発熱素子が、グラフトカーボン、カーボン粉末、金属粉末、金属酸化物粉末から選ばれる少なくとも1種を耐熱性樹脂に混練させた抵抗体である請求項1に記載の配管の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−47332(P2012−47332A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232438(P2010−232438)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000229601)日本パイオニクス株式会社 (96)
【出願人】(390006677)菱有工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】