説明

配管の断熱構造

【課題】水の浸入に関する問題を効果的に回避できる配管の断熱構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る配管の断熱構造1は、配管2と、前記配管2の外周に設けられた断熱材3と、前記断熱材3の外周に設けられた外装材4と、を備える配管の断熱構造1であって、前記外装材4は、長手方向一方側に隣接する他の外装材20aの他方側を遮るよう周方向に立設される堤部30と、前記堤部30から前記一方側に延びて前記他の外装材20aと前記断熱材3との間に配置されるフランジ部40aと、を有する継手部材10を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の断熱構造に関し、特に、外装材を備えた配管の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配管の断熱構造としては、断熱材の外周に外装材を設けたものがある。すなわち、従来、例えば、特許文献1には、配管の保温構造において、長手方向の位置決めに用いられるストッパーが形成された外装板を設けることが記載されている。また、特許文献2には、配管の保冷構造において、長手方向の継ぎ目部分に防湿テープを貼り付けられた外装材を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−220682号公報
【特許文献2】特開2001−108189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の断熱構造においては、外装材の長手方向の継ぎ目部分からの水の浸入及びこれに伴う問題を確実に回避することが難しかった。
【0005】
すなわち、例えば、ストッパーが形成された外装板を備えた上記従来の保温構造において、当該外装材の長手方向に強い風雨が吹き付けられる場合には、当該風雨が当該外装板の長手方向の継ぎ目部分に直接吹き付けられ、その結果、当該継ぎ目部分から水が浸入することがあった。
【0006】
また、長手方向の継ぎ目部分に防湿テープを貼り付けられた外装材を備えた上記従来の保冷構造においては、当該防湿テープの劣化は避けられないため、風雨に起因した当該継ぎ目部分からの水の浸入を確実に防止することが難しかった。また、断熱材を覆う外装材は、温度変化に伴う当該断熱材の膨張及び収縮に追従できることが要求されるが、上記従来の保冷構造においては、防湿テープによって隣接する外装材同士が固定されるため、当該外装材は断熱材の膨張及び収縮に追従することが難しかった。
【0007】
また、上記従来の断熱構造においては、いったん浸入した水を排出することが容易でなかった。したがって、上記従来の断熱構造においては、外部から浸入した水が断熱材の内部に保持されることにより断熱性能が低下するという問題を確実に回避することが難しかった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、水の浸入に関する問題を効果的に回避できる配管の断熱構造を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る配管の断熱構造は、配管と、前記配管の外周に設けられた断熱材と、前記断熱材の外周に設けられた外装材と、を備えた配管の断熱構造であって、前記外装材は、長手方向一方側に隣接する他の外装材の他方側を遮るよう周方向に立設される堤部と、前記堤部から前記一方側に延びて前記他の外装材と前記断熱材との間に配置されるフランジ部と、を有する継手部材を含むことを特徴とする。本発明によれば、水の浸入に関する問題を効果的に回避できる配管の断熱構造を提供することができる。
【0010】
また、前記堤部は、前記一方側に隣接する他の外装材の前記他方側を遮るとともに、前記他方側に隣接する他の外装材の前記一方側を遮るよう周方向に立設され、前記継手部材は、前記堤部から前記他方側に延びて前記他方側に隣接する他の外装材と前記断熱材との間に配置されるフランジ部をさらに有することとしてもよい。こうすれば、水の浸入に関する問題をより確実に回避できる。また、前記堤部のうち、前記断熱材の下方側に配置される部分に排水用穴が形成されていることとしてもよい。また、前記配管の断熱構造は、前記フランジ部の外表面と前記断熱材の外表面とを長手方向に繋ぐシール材をさらに備えることとしてもよい。こうすれば、浸入した水を効果的に排出することもできる。また、前記継手部材は、周方向において分割可能な複数の部材から形成されていることとしてもよい。こうすれば、簡便な構成で堤部を周方向の全域に形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る配管の断熱構造の一例について、その外観を示す説明図である。
【図2】長手方向に沿って切断した図1に示す本構造1の断面の一部について、その一例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る継手部材の一例について、これを構成する部材の外観を示す説明図である。
【図4】図3に示す部材から構成された継手部材について、その外観を示す説明図である。
【図5】長手方向に沿って切断した図1に示す本構造1の断面の一部について、他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る配管の断熱構造について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る配管の断熱構造(以下、「本構造1」という。)の一例について、その外観を示す説明図である。図2は、図1に示す本構造1を長手方向に切断した場合における、当該本構造1の断面の一部について、その一例を示す説明図である。
【0013】
なお、図2において、矢印X1の指す方向は、本構造1の長手方向における一方であり、矢印X2の指す方向は、本構造1の長手方向における他方である。また、図2に示す例においては、矢印X1及び矢印X2の指す方向が水平方向であり、これらに直交する矢印Y1及び矢印Y2の指す方向が鉛直方向である。すなわち、図2において、矢印Y1の指す方向は、鉛直方向における上方であり、矢印Y2の指す方向は、鉛直方向における下方(すなわち、重力の作用する方向)である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本構造1は、配管2と、断熱材3と、外装材4と、を備えている。すなわち、本構造1においては、配管2の径方向外側に断熱材3が積層され、さらに当該断熱材3の径方向外側に外装材4が積層されている。なお、図1においては、説明の便宜上、断熱材3及び外装材4の一部を省略して、配管2及び断熱材3の一部を露出させて示している。
【0015】
配管2は、水平方向に延びるよう屋外に設けられた水平配管であり、その内部には輸送の対象とする流体(気体又は液体)が流通する。図2に示す例において、矢印X1の指す方向は、配管2内の流れの上流方向であり、矢印X2の指す方向は、当該流れの下流方向である。
【0016】
配管2の内部に低温(例えば、本構造1の外部環境の温度より低い温度)の流体が流通する場合、本構造1は、当該配管2の温度上昇を抑制するために構築された保冷構造となる。また、配管2の内部に高温(例えば、本構造1の外部環境の温度より高い温度)の流体が流通する場合、本構造1は、当該配管2の温度低下を抑制するために構築された保温構造となる。この配管2は、例えば、炭素鋼やステンレス等の金属から構成される。
【0017】
断熱材3は、配管2の外周に設けられている。すなわち、配管2の径方向外側の表面(外表面)は、断熱材3により覆われている。本構造1が保冷構造である場合、断熱材3としては、例えば、硬質ウレタンフォーム等の断熱性樹脂発泡成形体を好ましく用いることができる。また、本構造1が保温構造である場合、断熱材3としては、例えば、けい酸カルシウム、パーライト等の断熱性無機多孔質成形体や、グラスウール、ロックウール等の断熱性無機繊維体を好ましく用いることができる。
【0018】
外装材4は、断熱材3の外周に設けられている。すなわち、断熱材3の外表面は、外装材4により覆われている。外装材4は、断熱材3を風雨や紫外線から保護することを主な目的として設けられている。この外装材4は、例えば、着色メッキ鋼板やステンレス板等の金属製の板部材から構成される。
【0019】
そして、本構造1において、外装材4は、継手部材10と、当該継手部材10の上流側に隣接する第一の外装材20aと、当該継手部材10の下流側に隣接する第二の外装材20bと、を含んでいる。すなわち、本構造1の長手方向において、継手部材10は、第一の外装材20aと第二の外装材20bとの間に設けられている。
【0020】
この継手部材10は、堤部30を有している。堤部30は、第一の外装材20aの下流側を遮るとともに、第二の外装材20bの上流側を遮るよう周方向に立設されている。
【0021】
すなわち、堤部30は、第一の外装材20aの下流側の端部21aと、第二の外装材20bの上流側の端部21bと、の間であって、これらの端部21a,21bに近接した位置において、当該端部21a,21bよりも径方向外側に突出して設けられている。
【0022】
また、継手部材10は、堤部30より上流側の部分であるフランジ部40aと、当該堤部30より下流側の部分であるフランジ部40bと、を有している。
【0023】
そして、一方のフランジ部40aは、堤部30から上流側に延びて、第一の外装材20aと断熱材3との間に配置されている。すなわち、この上流側のフランジ部40aは、第一の外装材20aの径方向内側に入り込んで、当該第一の外装材20aの下流側の端部21aと重なるよう配置されている。
【0024】
また、他方のフランジ部40bは、堤部30から下流側に延びて、第二の外装材20bと断熱材3との間に配置されている。すなわち、この下流側のフランジ部40bは、第二の外装材20bの径方向内側に入り込んで、当該第二の外装材20bの上流側端部21bと重なるよう配置されている。
【0025】
また、堤部30は、継手部材10の周方向の全域に形成されることが好ましい。図3は、堤部30が周方向の全域に形成された継手部材10の一例について、これを構成する部材11,12の外観を示す説明図である。図4は、図3に示す部材11,12から構成された継手部材10について、その外観を示す説明図である。
【0026】
図3及び図4に示す例において、継手部材10は、周方向において分割可能な2つの部材11,12から形成されている。一方の部材11は、継手部材10の堤部30の一部を構成する部分堤部31と、当該継手部材10の上流側のフランジ部40aの一部を構成する部分フランジ部41aと、当該継手部材10の下流側のフランジ部40bの一部を構成する部分フランジ部41bと、を有している。また、他方の部材12は、継手部材10の堤部30の他の一部を構成する部分堤部32と、当該継手部材10の上流側のフランジ部40aの他の一部を構成する部分フランジ部42aと、当該継手部材10の下流側のフランジ部40bの他の一部を構成する部分フランジ部42bと、を有している。
【0027】
なお、これらの部材11,12は、例えば、着色メッキ鋼板やステンレス板等の金属製の板部材に、金型を用いたプレス処理を施すことにより形成することができる。すなわち、例えば、プレス処理により、1つの板部材の一部に、直線的に延びる山脈のように張り出した部分堤部31を形成し、次いで、当該板部材を当該部分堤部31の長手方向に湾曲させることにより、一方の部材11を形成することができる。この場合、部分堤部31と部分フランジ部41a,41bと、は一つの板部材の互いに異なる一部として、一体的に形成される。
【0028】
そして、一方の部材11と他方の部材12とは、その周方向における端部を互いに重ね合わせることにより、1つの継手部材10を構成できるように形成されている。すなわち、一方の部材11の部分フランジ部41a,41bの内径は、他方の部材12の部分フランジ部42a,42bの外径と略等しくなっている。また、一方の部材11の部分堤部31の長手方向の長さは、他方の部材12の部分堤部32の長手方向の長さよりも大きくなっており、当該部分堤部31,32は互いに嵌合可能に形成されている。また、一方の部材11の周方向の長さは、他方の部材12のそれよりも長くなっている。
【0029】
したがって、図4に示すように、一方の部材11の周方向の端部11i,11iiを、他方の部材12の周方向の端部12i,12iiの径方向外側に重ね合わせるよう配置し、当該一方の部材11と他方の部材12とを接合して一体化することにより、継手部材10を形成することができる。すなわち、断熱材3(図1及び図2参照)の外周において、図4に示すように2つの部材11,12を重ねて配置し、さらに粘着テープ、針金、又は帯鋼を用いて固定することにより、当該断熱材3の外表面に継手部材10を取り付けることができる。このように、継手部材10が、周方向に分割可能な複数の部材11,12を有する場合、簡単な構成で堤部30を当該継手部材10の周方向の全域に形成することができる。
【0030】
なお、これらの部材11,12の重ね方は図4に示す例に限られない。すなわち、例えば、一方の部材11の周方向一方側の端部11iが、他方の部材12の当該一方側の端部12iの径方向外側に重なるとともに、当該一方の部材11の周方向他方側の端部11iiが、当該他方の部材12の当該他方側の端部12iiの径方向内側に重なるようにすることもできる。この場合、例えば、一方の部材11の周方向の長さは、他方の部材12のそれと略等しくするとともに、いずれの周方向長さも断熱材3の外周長さの半分より長くする。
【0031】
本構造1においては、外装材4の長手方向における中途部分に継手部材10を設けることにより、当該外装材4の長手方向における継ぎ目部分からの水の浸入を効果的に防止することができる。
【0032】
すなわち、例えば、外装材4の下流側から強い風雨が吹き付けられる場合であっても、当該風雨は、当該外装材4の一部に立設された堤部30によって遮られるため、当該堤部30より上流側部分であって当該堤部30の近傍部分への当該風雨の吹き付けが効果的に妨げられる。
【0033】
より具体的には、堤部30が防波堤の役割を果たすことにより、例えば、第一の外装材20aの下流側端部21aと、継手部材10の上流側フランジ部40aと、の継ぎ目部分に風雨が直接吹き付けることを効果的に回避できる。したがって、この継ぎ目部分からの水の浸入を効果的に防止することができる。
【0034】
また、上述のとおり、継手部材10のフランジ部40a,40bは、当該継手部材10に隣接する他の外装材20a,20bの端部21a,21bと重ね合わされている。このため、例えば、継手部材10と他の外装材20a,20bとの継ぎ目部分から水が僅かに浸みこんだ場合であっても、当該水は、当該継手部材10のフランジ部40a,40bと、当該外装材20a,20bの端部21a,21bと、の間に保持されて、より奥への浸入が妨げられる。したがって、浸入した水が断熱材3に到達することを効果的に防止できる。
【0035】
さらに、図1及び図2に示すように、継手部材10に隣接する他の外装材20a,20bの端部21a,21bには、径方向外側に張り出すよう湾曲した末端部分である覆輪22a,22bが形成されている。
【0036】
このため、例えば、継手部材10と他の外装材20a,20bとの継ぎ目部分から水が僅かに浸みこんだ場合であっても、当該水は、当該継手部材10のフランジ部40a,40bと、当該外装材20a,20bの覆輪22a,22bと、の間に保持されて、より奥への浸入が妨げられる。したがって、この覆輪22a,22bによって、継ぎ目部分から浸入した水が断熱材3に到達することをさらに効果的に防止できる。
【0037】
ただし、覆輪22a,22bは、周方向の一部において欠如していることがある。すなわち、図1に示す例において、第一の外装材20aは、その周方向の一部に、かしめ部分23aを有している。このかしめ部分23aは、例えば、ステンレス板を断熱材3の外周に巻き付けることにより第一の外装材20aを形成する際に、当該ステンレス板の周方向の端部を重ねて折り曲げる(かしめる)ことにより形成される。
【0038】
そして、このかしめ部分23aを第一の外装材20aの長手方向全域に形成する場合には、当該かしめ部分23aの下流側の末端において覆輪22aは潰される。したがって、この場合、第一の外装材20aの外周のうち、少なくともかしめ部分23aにおいては、上述したような覆輪22aによる水の浸入抑制効果は得られない。これは、第二の外装材20bについても同様である。
【0039】
これに対し、継手部材10は、これら第一の外装材20a及び第二の外装材20bとは別体に成形され、その堤部30は、当該継手部材10の周方向の全域に形成することができる。すなわち、堤部30は、第一の外装材20aのかしめ部分23aの下流側をも遮るように立設されている。したがって、本構造1においては、第一の外装材20aのかしめ部分23aにおいても、上述のような堤部30による水の浸入防止効果が得られる。
【0040】
なお、上述のとおり、継手部材10のフランジ部40a,40bは、隣接する他の外装材20a,20bと断熱材3との間に入り込んでいる。このため、本構造1において、継手部材10は、脱落することなく、断熱材3の外周に簡便且つ確実に保持することができている。
【0041】
そして、このような簡便な構成により継手部材10が保持されるため、当該継手部材10及び隣接する他の外装材20a,20bは、温度変化に伴う断熱材3の膨張及び収縮に適切に追従することができる。さらに、外装材20a,20bは、本構造1の最外層として、継手部材10の径方向外側に配置されるため、当該外装材20a,20bの補修や交換を容易に行うことができる。
【0042】
また、図2に示す例においては、堤部30のうち、断熱材3の下方側に配置される部分に、当該堤部30を貫通する排水用穴33が形成されている。このため、仮に、継手部材10と断熱材3との間に水が浸入した場合であっても、重力の作用により下方に移動した当該水を排水用穴33から本構造1の外部へ効果的に排出することができる。
【0043】
特に、堤部30は、径方向外側に張り出した中空構造として形成されているため、浸入した水を断熱材3から離れた位置(堤部30の内面)に保持することができる。したがって、浸入した水が断熱材3に入り込むことを効果的に回避しつつ、当該水を排水用穴33から確実に排出することができる。
【0044】
図5は、長手方向に沿って切断した図1に示す本構造1の一部の断面について、他の例を示す説明図である。なお、図5において、矢印Uの指す方向は鉛直方向における上方であり、矢印Lの指す方向は鉛直方向における下方(すなわち、重力の作用する方向)である。また、ここでは、本構造1のうち、上述の例と同様の部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図5に示す例において、配管2は、流体(気体又は液体)を輸送するために、鉛直方向に延びるよう屋外に設けられた垂直配管である。また、図5に示す本構造1は、上述の例と同様に、堤部30及びフランジ部40a,40bを有する継手部材10と、当該継手部材10の上方側に隣接する第一の外装材20aと、当該継手部材10の下方側に隣接する第二の外装材20bと、を備えている。
【0046】
そして、この本構造1は、上方側のフランジ部40aの外表面と断熱材3の外表面とを長手方向に繋ぐシール材50を備えている。すなわち、このシール材50は、上方側のフランジ部40aから、当該フランジ部40aよりさらに上方側の断熱材3に跨って設けられている。
【0047】
より具体的に、シール材50の径方向内側の表面(内表面)のうち下方側部分は、上方側のフランジ部40aの径方向外側の表面(第一の外装材20aの下方側の端部21aに対向する外表面)に接着している。また、シール材50の内表面のうち上方側部分は、断熱材3の外表面のうち、当該フランジ部40aより上方側の部分に接着している。なお、例えば、シール材50のうち、断熱材3に接着している上方側部分の長手方向の長さは、フランジ部40aに接着している下方側部分のそれと略等しくすることができる。
【0048】
したがって、本構造1において、上方側のフランジ部40aと断熱材3との隙間はシール材50によりシールされ、塞がれている。一方、シール材50の径方向外側の表面は、第一の外装材20aとは接着されていない。また、シール材50は、周方向の全域に設けられている。
【0049】
なお、シール材50としては、例えば、非透水性と適度な親水性とを有するテープ、フィルム、又はシートを好ましく用いることができる。具体的に、このシール材50としては、例えば、一方の表面に接着層が形成された、アルミ箔、ステンレス箔等の金属製、又はポリエチレン、塩化ビニル等の樹脂製の非透水性粘着テープを用いることができる。
【0050】
このようなシール材50を備えた本構造1においては、継手部材10より上方において、第一の外装材20aと断熱材3との間に浸入した水は、シール材50を伝って、当該第一の外装材20aの外に効率よく排出される。
【0051】
すなわち、例えば、継手部材10より上方において、断熱材3の外表面に付着した水は、重力の作用により、当該外表面を伝って下方に移動し、当該外表面に接着されているシール材50の上方端に到達する。さらに、この水は、シール材50の外表面を伝って、当該シール材50と第一の外装材20aとの間を下方に移動する。
【0052】
そして、この水は、第一の外装材20aの下方側の端部21aと継手部材10との間から、当該継手部材10を伝って当該第一の外装材20aの外(すなわち、当該第一の外装材20aより下方)に流れ出る。こうして、本構造1においては、浸入した水をシール材50により誘導することで効果的に排出することができる。
【0053】
また、継手部材10の堤部30は、径方向の外側に突出して形成されている。したがって、第一の外装材20aと継手部材10との間から流れ出た水は、さらに当該継手部材10の堤部30に到達し、当該堤部30から水滴となって下方に落下する。
【0054】
これにより、本構造1においては、継手部材10を跨いだ水の移動を効果的に防止することができる。すなわち、例えば、本構造1において、継手部材10より上方側に水が浸入した場合には、当該水は当該継手部材10から滴下して排出される。このため、浸入した水が継手部材10より下方側の断熱材3に到達することを効果的に防止することができる。
【0055】
また、本構造1の内部に浸入した水のみならず、当該本構造1の外表面、例えば、第一の外装材20aの径方向外側の表面に水が付着した場合においても、継手部材10によって、当該水の浸入防止及び当該水の排出を効果的に達成することができる。
【0056】
すなわち、例えば、第一の外装材20aの外表面に水が付着した場合、当該水は、重力の作用により、当該外表面を伝って下方に移動し、継手部材10に到達する。そして、継手部材10の外表面に付着した水は、重力の作用によりさらに下方に移動し、最終的に、堤部30から水滴として下方に落下する。
【0057】
このように、本構造1においては、外装材4の中途部分に継手部材10を設けることにより、水の浸入や長手方向への移動を効果的に防止できるととともに、いったん浸入した水を効果的に排出することもできる。
【0058】
また、上述のとおり、継手部材10は、その構造がシンプルであり、また、本構造1への取り付けも簡単であるため、汎用性が高い。すなわち、この継手部材10は、例えば、配管2が水平方向に延びる場合、鉛直方向に延びる場合、又は水平方向に対して所定の角度だけ傾斜して延びる場合、のいずれの場合においても、上述したような効果をもたらす。
【0059】
なお、本発明は、上述の例に限られない。例えば、本構造1は、継手部材10を複数有することもできる。すなわち、本構造1においては、例えば、継手部材10と、堤部30を有しない他の外装材と、を交互に繰り返し配置することができる。
【0060】
また、上述の例において、堤部30の長手方向に沿った断面における形状は、U字形であったが、これに限られず、例えば、台形やV字形とすることもできる。また、上述の例において、排水用穴33は、堤部30の先端部分に形成されていたが、これに限られず、例えば、配管2が傾斜して延びる場合には、当該堤部30の下方側部分であれば、先端以外の部分に当該排水用穴33を形成してもよい。
【0061】
また、上述の例において、継手部材10は、2つの部材11,12から形成されていたが、これに限られず、例えば、その周方向において分割可能なより多くの複数の部材から形成することもできる。また、例えば、継手部材10は、分割可能なものに限られず、その周方向において連続した1つの板状部材から形成することもできる。この場合であっても、継手部材10の堤部30は、その周方向の全域に形成されることが好ましい。
【0062】
また、上述の例において、シール材50は、配管2が鉛直方向に延びる場合に設けられるものであったが、これに限られず、例えば、配管2が水平方向に延びる場合、水平方向に対して傾斜して延びる場合にも設けることができる。また、上述の例において、シール材50は、継手部材10の長手方向一方側に設けられていたが、これに限られず、継手部材10の長手方向一方側及び他方側のいずれか一方側又は両側に設けることができる。
【0063】
また、上述の例において、シール材50は、周方向の全域に設けられていたが、周方向の一部にのみ設けることもできる。すなわち、例えば、配管2が水平方向に延びる場合、又は傾斜して延びる場合には、周方向の下方側部分にのみシール材50を設けることとしてもよい。
【0064】
また、上述の例において、配管2は、直線的に延びていたが、これに限られず、その長手方向における一部または全部が湾曲していてもよい。また、上述の例において、断熱材3は、配管2の外周に一層だけ設けられていたが、これに限られず、複数の断熱層が径方向に積層されたものであってもよい。また、上述の例において、本構造1は、屋外に設置されていたが、屋内に設置することもできる。すなわち、本構造1が屋内に設置される保冷構造である場合であっても、継手部材10の設置により、例えば、外気中の水分が凝縮して本構造1に付着することに伴う問題を効果的に回避することができる。
【0065】
また、継手部材10は、既設の断熱構造に追加的に設けることもできる。すなわち、既設の断熱構造において、外装材の一部を補修し又は交換する場合に、継手部材10を新たに挿入することにより、当該既設の断熱構造を有効に利用して、本構造1を製造することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 配管の断熱構造、2 配管、3 断熱材、4 外装材、10 継手部材、11,12 部材、20a,20b 外装材、21a,21b 端部、22a,22b 覆輪、23a かしめ部分、30 堤部、31,32 部分堤部、33 排水用穴、40a,40b フランジ部、41a,41b,42a,42b 部分フランジ部、50 シール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管と、
前記配管の外周に設けられた断熱材と、
前記断熱材の外周に設けられた外装材と、
を備える配管の断熱構造であって、
前記外装材は、
長手方向一方側に隣接する他の外装材の他方側を遮るよう周方向に立設される堤部と、
前記堤部から前記一方側に延びて前記他の外装材と前記断熱材との間に配置されるフランジ部と、
を有する継手部材を含む
ことを特徴とする配管の断熱構造。
【請求項2】
前記堤部は、前記一方側に隣接する他の外装材の前記他方側を遮るとともに、前記他方側に隣接する他の外装材の前記一方側を遮るよう周方向に立設され、
前記継手部材は、前記堤部から前記他方側に延びて前記他方側に隣接する他の外装材と前記断熱材との間に配置されるフランジ部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載された配管の断熱構造。
【請求項3】
前記堤部のうち、前記断熱材の下方側に配置される部分に排水用穴が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載された配管の断熱構造。
【請求項4】
前記フランジ部の外表面と前記断熱材の外表面とを長手方向に繋ぐシール材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された配管の断熱構造。
【請求項5】
前記継手部材は、周方向において分割可能な複数の部材から形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された配管の断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−281345(P2010−281345A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133324(P2009−133324)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】