配管及び排水構造
【課題】配管自体が空気圧の変動を吸収する。
【解決手段】水が流れる通水部52と、通水部52を覆って通水空間58を形成し、空気圧により通水空間58の容積を変える膨縮部材56と、前記膨縮部材は、前記通水空間内が正圧になったときに、前記通水空間内が大気圧のときより膨張し、前記通水空間内の空気圧が大気圧よりも20Pa上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したときに、前記通水空間の容積が、前記通水空間内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張する膨縮部材を備える配管50とする。
【解決手段】水が流れる通水部52と、通水部52を覆って通水空間58を形成し、空気圧により通水空間58の容積を変える膨縮部材56と、前記膨縮部材は、前記通水空間内が正圧になったときに、前記通水空間内が大気圧のときより膨張し、前記通水空間内の空気圧が大気圧よりも20Pa上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したときに、前記通水空間の容積が、前記通水空間内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張する膨縮部材を備える配管50とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管及び排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、主に器具排水管や排水横枝管などの配管には、塩ビ管などの硬質管が用いられ、レベル調整可能な支持金具(レベルバンド)によって所定の勾配をつけて配管されている。このような配管の径は、排水器具の種類や合流の仕方によって決められている。一般的に、排水の流れ方としては、管の軸方向断面の下半分のみに流れ、上半分は通気の役割をしている。このため、配管の軸方向断面の上半分は、排水が流れないにも係らず必要なため、配管が太くなる。このような太い配管を、例えばユニットバスの排水構造に適用すると、ユニットバスの床面と床スラブとの間の床下空間が拡大する等の不都合がある。
【0003】
そこで、全断面に水が流れるように所定の配管よりも細い配管を敷設すると、排水時に他の合流する排水器具の排水トラップで噴き出しや破封が生じたり、立て管内で生じた圧力によって、同様な現象が生じる。
【0004】
また、膨縮する軟質部材からなる管を配管した場合、図11に示すように、配管が弛んで所定の勾配をつけて配管ができず、逆流や排水不良が生じるおそれがある。
【0005】
一方、特許文献1には、排水設備が正圧になったときに、排水設備内の空気を可撓性空気溜めに流入して、当該可撓性空気溜めを膨らませることによって、正圧を減衰する圧力減衰装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4295616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、圧力減衰装置を配管に設けないといけないため、コストアップとなる。また、この圧力減衰装置は大きく、全体としてサイズアップにもなる。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、空気圧の変動を吸収することが可能な配管及び排水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係る配管は、水が流れる通水部と、前記通水部を覆って通水空間を形成し、空気圧により前記通水空間の容積を変える膨縮部材と、を備える。
この構成によれば、通水空間内の空気圧が変化したときに、膨縮部材が膨張又は縮小して、通水空間の容積を変える。これにより、通水空間内の空気密度を調整できるので、空気密度と比例関係にある空気圧の変動を吸収することができる。
【0010】
本発明の第2態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水空間内が正圧になったときに、前記通水空間内が大気圧のときより膨張する。
この構成によれば、一時的に通水空間内が正圧になっても、膨縮部材が膨張して通水空間の容積が拡大し、大気圧に近い状態に戻すことができる。
なお、正圧とは、大気圧よりも高圧であることをいう。
【0011】
本発明の第3態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水空間内の空気圧が大気圧よりも20Pa上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したときに、前記通水空間の容積が、前記通水空間内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張する。
このように、膨縮部材を、通水空間内の空気圧が大気圧よりも20Pa上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したときに、通水空間の容積が、通水空間内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張する構成とすると、正圧を十分に緩和することができる。
【0012】
本発明の第4態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水空間が負圧になったときに、前記通水空間が大気圧のときより縮小する。
この構成によれば、一時的に通水空間内が負圧になっても、膨縮部材が縮小して通水空間の容積が小さくなり、大気圧に近い状態に戻すことができる。
なお、負圧とは、大気圧よりも低圧であることをいう。
【0013】
本発明の第5態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水部を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材である。
このように、膨縮部材を、通水部を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材とすることにより、複数の配管を保管する時や配送時に、配管の軟質部材を縮ませて、軟質部材の上に、他の配管の硬質部材を下にして積み重ねることにより、配管が嵩張ることを抑制できる。
【0014】
本発明の第6態様に係る配管は、前記通水部は、前記通水空間を円形としたときの全周のうち、1/3以上を構成する。
このように、通水部を、通水空間を円形としたときの全周のうち、1/3以上を構成することにより、通水部の強度を高めることができる。
【0015】
本発明の第7態様に係る配管は、前記通水部は、前記通水空間を円形としたときの全周のうち、1/2以上を構成する。
このように、通水部を、通水空間を円形としたときの全周のうち、1/2以上を構成することにより、通水部の強度をより高めることができる。
【0016】
本発明の第8態様に係る配管は、前記通水部は、外周部の一部が開口され、前記開口が前記膨縮部材で覆われた円筒状の硬質管からなる。
この構成によれば、配管の継手部や支持金具の支持部を、膨縮部材以外の部分、すなわち硬質管の全周が硬質部材からなる部分とすることができ、部分的に強度が必要な箇所にも対応できる。
【0017】
本発明の第9態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水部全体を取り囲む管体である。
この構成によれば、膨縮部材の中に通水部を挿入して、配管を作製することができるため、膨縮部材を通水部に取り付ける手間を省くことができる。
【0018】
本発明の第10態様に係る排水構造は、水が流れる通水部と、前記通水部を覆って通水空間を形成し、空気圧により前記通水空間の容積を変える膨縮部材と、を有する配管と、前記配管と連通する排水トラップと、を備える。
この構成によれば、膨縮部材により、配管内の空気圧の変動を吸収することができるため、配管と連通する排水トラップ内の空気圧の変動も吸収できる。このため、排水トラップで噴き出しや破封が生じることを防止することができる。
【0019】
本発明の第11態様に係る排水構造は、前記膨縮部材は、前記通水空間を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材であり、前記硬質部材を下にして前記配管に勾配を付けた支持金具を備える。
この構成によれば、硬質部材を下にしているため、配管が弛むことなく、所定の勾配を保つことが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記構成としたので、空気圧の変動を吸収することが可能な配管及び排水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排水構造の一部構成を概略的に示す部分断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る配管の構成を概略的に示す断面斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る配管50及び排水構造10の作用を説明する図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る配管50及び排水構造10の作用を説明する図である。
【図5】(A)は、本発明の第1実施形態に係る配管50を積み重ねた図である。(B)は、本発明の第1実施形態に係る配管50の構成部品を別々に積み重ねた図である。
【図6】硬質部材としての通水部を下にして配管に勾配を付けながら、支持金具を配管に取り付けた場合の概略構成図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る配管を示す概略図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る配管を示す概略図である。
【図9】本発明に係る配管の変形例を示す概略図である。
【図10】図6に示す支持金具の変形例を示す概略図である。
【図11】配管全体を軟質部材で構成した場合の概略図である。
【図12】従来の配管を積層した場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る配管及び排水構造について図面に基づき説明する。
【0023】
−排水構造の構成−
まず、本発明の第1実施形態に係る排水構造の構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る排水構造の一部構成を概略的に示す部分断面図である。
【0024】
本発明の第1実施形態に係る排水構造は、浴槽、洗濯機、洗面所、トイレ及び台所流し等の排水構造など様々な場所に適用可能であるが、図1では、ユニットバスの排水構造を一例として挙げている。
【0025】
図1に示すユニットバスの排水構造10では、床スラブ12の上部に図示しない支持部材を介してユニットバスの床面としての浴室用防水パン14が配置されている。
浴室用防水パン14の上部には、一方の側に入浴用の湯水を溜める容器としての浴槽16が配置されている。
【0026】
浴槽16には、浴槽16内に溜めた湯水を排出するための排水口18が設けられており、栓20で塞ぐことが可能となっている。
浴室用防水パン14には、排水口18の下側に、排水口18からの湯水等を排出するための排水口22が設けられている。この排水口22には、目皿24が取り付けられている。
【0027】
また、排水口22には、浴槽用排水配管26が接続されている。この浴槽用排水配管26の下流側の端部は、ユニットバスの浴室用防水パン14と床スラブ12との間に設けられた封水式の排水トラップ28に接続されている。
【0028】
排水トラップ28は、床スラブ12の上部にある外筒30を備えている。外筒30の外周壁30Aには、浴槽用排水配管26が接続される流入側接続管32が形成されている。
【0029】
また、外筒30の外周部には、外筒30からオーバーフローした排水が流れる流出部34が形成され、この流出部34につながる流出側接続管36が、本発明の第1実施形態に係る配管50に接続される構成である。
【0030】
さらに、外筒30には、外筒30の内側に環状の貯留空間38を形成するように、浴室用防水パン14側から内筒40が挿入されている。内筒40の下端部と外筒30の底部30Bとの間には、外筒30と内筒40との間を排水が流れる連通部42が形成されている。
【0031】
また、内筒40の上部は、浴室用防水パン14に形成された凹部44に嵌る目皿蓋46で覆われており、内筒40に貯留した排水が直接見えないようになっていると共に、体を洗う際に使用した湯水、浴槽16から溢れた湯水等を目皿蓋46から内筒40へ排水できる構成である。
【0032】
−配管の構成−
次に、本発明の第1実施形態に係る配管について説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る配管の構成を概略的に示す断面斜視図である。
【0033】
本発明の第1実施形態に係る配管50は、排水が流れる通水部52を備えている。具体的には、通水部52は、筒状の管を長さ方向へ切断した樋状のもので、内側を排水が流れる構成となっている。この通水部52は、例えば塩化ビニルのような硬質部材で形成されている。
【0034】
通水部52の長手方向に沿った開口部は、シート状の膨縮部材56で覆われ、配管50の断面形状は、膨縮部材56が膨張したとき、略円形となる。
膨縮部材56の取り付け方法としては、膨縮部材56の幅方向端部を通水部52の開口縁部54に接着剤で貼る方法や、熱融着等が挙げられる。この膨縮部材56と通水部52で通水空間58を形成し、膨縮部材56が空気圧の変動で膨縮し、通水空間58の容積を変えるものである。
【0035】
具体的には、膨縮部材56は、通水空間58内の空気圧が大気圧よりも20Pa程度上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したあたりで通水空間58の容積が、通水空間58内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張するものである。
【0036】
このような膨縮を可能とする膨縮部材56の材料としては、通水部52を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材が挙げられ、例えばゴム、ビニール、ゴム以外のエラストマーなどが挙げられる。また、仮に膨縮部材56がゴムからなる場合、膨縮部材56の厚みとしては、例えば0.1mmである。
【0037】
−作用−
次に、本発明の第1実施形態に係る配管50及び排水構造の作用を説明する。
図3及び図4は、本発明の第1実施形態に係る配管50及び排水構造10の作用を説明する図である。
【0038】
本発明の第1実施形態に係る配管50は、排水トラップ28の周壁に形成された略円形の流出側接続管36に、通水部52と膨縮部材56が接続され、接続部から漏水しないようにシール材で接着されている。
【0039】
配管50の膨縮部材56は、通水空間58内が例えば配管50と連通する不図示の立て管で生じた圧力によって正圧になったときに、図2に示す通水空間58内が大気圧のときの弛んだ状態から(図2の点線で示した膨縮部材56の状態)、図3に示すように膨張する。したがって、一時的に通水空間58内が正圧になっても、膨縮部材56が膨張して通水空間58の容積が拡大し、大気圧に近い状態に戻すことができる。
【0040】
同様に、本発明の第1実施形態に係る配管50の通水空間58内は、例えば配管50と連通する不図示の立て管で生じた圧力によって、負圧となる場合がある。
【0041】
このとき、膨縮部材56は、通水空間58が負圧になったときに、図2に示す通水空間58内が大気圧のときの膨縮部材56の状態から、図4に示すように縮小する。したがって、一時的に通水空間58内が負圧になっても、膨縮部材56が縮小して通水空間58の容積が小さくなり、大気圧に近い状態に戻すことができる。
なお、負圧とは、大気圧よりも低圧であることをいう。
【0042】
以上のように、膨縮部材56により、配管50内の空気圧の変動を吸収することができるため、配管50と連通する排水トラップ28内の空気圧の変動も吸収できる。このため、排水トラップ28で噴き出しや破封が生じることを防止することができる。
例えば、封水深50mmの一般的なトラップでは、±400Pa(安全率もみると、±600Pa)を超すと、噴き出しや破封が生じるが、本発明の第1実施形態に係る配管50を排水トラップ28と連通させれば、±400Paを超えても、噴き出しや破封が生じない。
また、同様に、排水時に他の合流する排水器具の排水トラップで噴き出しや破封が生じたりすることを防止することができる。
【0043】
ここで、通常の配管の口径は、各器具からの排水量や空気圧に対して対応するために、一般的に、下記のように定められている。
一例)
・浴室からの器具排水管の口径:50A
・トイレからの器具排水管の口径:75A
・洗面器からの器具排水管の口径:40A
(排水横枝管は、合流するとワンサイズアップする。)
【0044】
上記の設定は、排水を、通気を含めて十分に行うために必要な口径であるが、本発明の第1実施形態の配管50を使用すれば、配管50自体がある程度空気圧の変動を吸収してくれるため、現在規定されている口径よりも通水部52を形成する筒状の管の口径を小さくして敷設しても問題がない。配管50を細くすることができれば、コストダウンを図ることも可能となる。また、ユニットバスの床下空間(床スラブ12と浴室用防水パン14との間の空間)を縮小することも可能となる。
【0045】
また、配管50自体が空気圧の変動を吸収してくれるため、排水トラップ28は、従来品と比べて封水強度が低くても破封などから耐えることが可能となる。すなわち、封水深hが50mm未満であっても十分、破封などから耐えることができる。このように、本発明の第1実施形態に係る配管50と排水トラップ28を連通させた排水構造10とすれば、ユニットバス自体の低床化などができ、建築的なメリットも向上する。
【0046】
ここで、上述のような膨縮をする膨縮部材56は、通水部52を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材からなる。従来では、複数の配管を保管する時や配送時に、配管を積み重ねると図12に示すように、配管が嵩張っていたが、膨縮部材56を、通水部52を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材とすることにより、図5(A)に示すように、配管50の軟質部材からなる膨縮部材56を縮ませて、膨縮部材56の上に、他の配管50の硬質部材からなる通水部52を下にして積み重ねることにより、配管50が嵩張ることを抑制できる。また、配管する段階で、膨縮部材56を通水部52に取り付けるような場合は、保管時や配送時には、図5(B)に示すように、膨縮部材56と、通水部52を別々にして積み重ねることができる。
【0047】
また、本発明の第1実施形態に係る配管50において、通水部52は、筒状の管を長さ方向へ切断した樋状のものである。すなわち、通水空間58を円形としたときの全周のうち、1/2を構成する。
このため、配管50の強度を高めることができる。
【0048】
さらに、本発明の第1実施形態に係る配管50は、勾配管又は無勾配管のいずれでも使用できるが、例えば、勾配管として使用しても、従来の排水構造と同様問題なく施工ができる。
具体的には、図6に示すように、硬質部の通水部52を下にして配管50に勾配を付けながら、支持金具70を配管50に取り付ける。
【0049】
この構成によれば、通水部52を下にしているため、配管50が弛むことなく、所定の勾配を保つことが可能である。また、膨縮部材56は上に位置するため、排水が配管50に多量に流れた場合においても、排水が膨縮部材56と接触することを抑制することができる。したがって、膨縮部材56が水によって破れること等を防ぐことができる。
【0050】
また、配管50同士を接続するときは、通水部52同士は、ソケットへ挿入して接続し、膨縮部材56は別途貼り合せシートで継目を止水する。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る配管について、図7を用いて説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る配管を示す概略図である。
【0052】
本発明の第2実施形態に係る配管100では、水が流れる通水部102は、円筒状の硬質管で構成されている。通水部102の外周部の中央の一部には、開口部105が形成されている。この開口部105は、膨縮部材106で覆われ通水空間104が形成されている。
この構成によれば、例えば支持金具70で配管50の全周面が保持されるので配管50が抜け落ちない。また、円筒状の硬質管を継手として使用できる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る配管について、図8を用いて説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る配管を示す概略図である。
【0054】
本発明の第3実施形態に係る配管200は、半円形の樋状の通水部202を膨縮部材206で取り囲んで構成されている。この配管200は、膨縮部材206が膨張したら略円筒状となる管体である。
【0055】
この構成によれば、膨縮部材206の中に通水部202を挿入して、配管200を作製することができるため、膨縮部材206を通水部202に取り付ける手間を省くことができる。例えば、通水部202と膨縮部材206を接着する方が好ましい形態ではあるが、通水部202と膨縮部材206を接着しなくても配管200を作製することができる。
【0056】
(変形例)
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【0057】
例えば、本発明の第1実施形態では、配管50の通水部52は、筒状の管を軸方向から半分に切断したもののいずれか片方のような形状となっている場合、すなわち、通水空間58を円形としたときの全周のうち、1/2を構成する場合を説明したが、通水空間58を円形としたときの全周のうち、少なくとも1/3以上を構成すれば、排水や強度の面で実用的となる。
【0058】
また、本発明の第1実施形態では、排水構造がユニットバスの排水構造10である場合を説明したが、本発明の第1実施形態に係る配管50は、トイレや洗面器等の排水構造にも適用できる。
【0059】
また、通水部52の形状は、筒状の管を軸方向から半分に切断したもののいずれか片方のような形状となっている場合となっている場合を説明したが、三角柱や四角柱状の管を軸方向から半分に切断したもののいずれか片方のような形状となっていてもよい。
【0060】
また、本発明の第1実施形態では、配管50が、正圧と負圧のどちらに対しても空気圧の変動を吸収できる場合を説明したが、少なくとも正圧又は負圧のいずれか1つに対して、空気圧の変動を吸収できればよい。
【0061】
また、配管50の膨縮部材56は、通水部52に取り付ける場合を説明したが、二色成形等により通水部52と一体形成することも可能である。また、通水部52と膨縮部材56を別々に成形し、後に膨縮部材56を通水部52に取り付ける場合には、図9に示すように、通水部52の周方向両端部54に、例えば周方向外側に延出する突起部400を設け、同様に、膨縮部材56の両端部にも突起部402を設け、これらを接着剤等で貼り合せるようなことも可能である。
【0062】
また、図9では、筒状の管を長さ方向に切断した半割状のカバー部404を、膨縮部材56と共に、通水部52に取り付けている。このような方法で、例えば、図7に示すような配管100の製造が可能となる。
また、図6に示す支持金具70は、通水部52を支持する下半分の金具だけでなく、膨縮部材56を覆うよう上半分の金具を備えているが、図10に示すように、上半分の金具は省略してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 排水構造
28 排水トラップ
50、100、200 配管
52、102、202 通水部
56、106、206 膨縮部材
58、104、204 通水空間
70 支持金具
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管及び排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、主に器具排水管や排水横枝管などの配管には、塩ビ管などの硬質管が用いられ、レベル調整可能な支持金具(レベルバンド)によって所定の勾配をつけて配管されている。このような配管の径は、排水器具の種類や合流の仕方によって決められている。一般的に、排水の流れ方としては、管の軸方向断面の下半分のみに流れ、上半分は通気の役割をしている。このため、配管の軸方向断面の上半分は、排水が流れないにも係らず必要なため、配管が太くなる。このような太い配管を、例えばユニットバスの排水構造に適用すると、ユニットバスの床面と床スラブとの間の床下空間が拡大する等の不都合がある。
【0003】
そこで、全断面に水が流れるように所定の配管よりも細い配管を敷設すると、排水時に他の合流する排水器具の排水トラップで噴き出しや破封が生じたり、立て管内で生じた圧力によって、同様な現象が生じる。
【0004】
また、膨縮する軟質部材からなる管を配管した場合、図11に示すように、配管が弛んで所定の勾配をつけて配管ができず、逆流や排水不良が生じるおそれがある。
【0005】
一方、特許文献1には、排水設備が正圧になったときに、排水設備内の空気を可撓性空気溜めに流入して、当該可撓性空気溜めを膨らませることによって、正圧を減衰する圧力減衰装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4295616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、圧力減衰装置を配管に設けないといけないため、コストアップとなる。また、この圧力減衰装置は大きく、全体としてサイズアップにもなる。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、空気圧の変動を吸収することが可能な配管及び排水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係る配管は、水が流れる通水部と、前記通水部を覆って通水空間を形成し、空気圧により前記通水空間の容積を変える膨縮部材と、を備える。
この構成によれば、通水空間内の空気圧が変化したときに、膨縮部材が膨張又は縮小して、通水空間の容積を変える。これにより、通水空間内の空気密度を調整できるので、空気密度と比例関係にある空気圧の変動を吸収することができる。
【0010】
本発明の第2態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水空間内が正圧になったときに、前記通水空間内が大気圧のときより膨張する。
この構成によれば、一時的に通水空間内が正圧になっても、膨縮部材が膨張して通水空間の容積が拡大し、大気圧に近い状態に戻すことができる。
なお、正圧とは、大気圧よりも高圧であることをいう。
【0011】
本発明の第3態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水空間内の空気圧が大気圧よりも20Pa上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したときに、前記通水空間の容積が、前記通水空間内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張する。
このように、膨縮部材を、通水空間内の空気圧が大気圧よりも20Pa上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したときに、通水空間の容積が、通水空間内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張する構成とすると、正圧を十分に緩和することができる。
【0012】
本発明の第4態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水空間が負圧になったときに、前記通水空間が大気圧のときより縮小する。
この構成によれば、一時的に通水空間内が負圧になっても、膨縮部材が縮小して通水空間の容積が小さくなり、大気圧に近い状態に戻すことができる。
なお、負圧とは、大気圧よりも低圧であることをいう。
【0013】
本発明の第5態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水部を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材である。
このように、膨縮部材を、通水部を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材とすることにより、複数の配管を保管する時や配送時に、配管の軟質部材を縮ませて、軟質部材の上に、他の配管の硬質部材を下にして積み重ねることにより、配管が嵩張ることを抑制できる。
【0014】
本発明の第6態様に係る配管は、前記通水部は、前記通水空間を円形としたときの全周のうち、1/3以上を構成する。
このように、通水部を、通水空間を円形としたときの全周のうち、1/3以上を構成することにより、通水部の強度を高めることができる。
【0015】
本発明の第7態様に係る配管は、前記通水部は、前記通水空間を円形としたときの全周のうち、1/2以上を構成する。
このように、通水部を、通水空間を円形としたときの全周のうち、1/2以上を構成することにより、通水部の強度をより高めることができる。
【0016】
本発明の第8態様に係る配管は、前記通水部は、外周部の一部が開口され、前記開口が前記膨縮部材で覆われた円筒状の硬質管からなる。
この構成によれば、配管の継手部や支持金具の支持部を、膨縮部材以外の部分、すなわち硬質管の全周が硬質部材からなる部分とすることができ、部分的に強度が必要な箇所にも対応できる。
【0017】
本発明の第9態様に係る配管は、前記膨縮部材は、前記通水部全体を取り囲む管体である。
この構成によれば、膨縮部材の中に通水部を挿入して、配管を作製することができるため、膨縮部材を通水部に取り付ける手間を省くことができる。
【0018】
本発明の第10態様に係る排水構造は、水が流れる通水部と、前記通水部を覆って通水空間を形成し、空気圧により前記通水空間の容積を変える膨縮部材と、を有する配管と、前記配管と連通する排水トラップと、を備える。
この構成によれば、膨縮部材により、配管内の空気圧の変動を吸収することができるため、配管と連通する排水トラップ内の空気圧の変動も吸収できる。このため、排水トラップで噴き出しや破封が生じることを防止することができる。
【0019】
本発明の第11態様に係る排水構造は、前記膨縮部材は、前記通水空間を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材であり、前記硬質部材を下にして前記配管に勾配を付けた支持金具を備える。
この構成によれば、硬質部材を下にしているため、配管が弛むことなく、所定の勾配を保つことが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記構成としたので、空気圧の変動を吸収することが可能な配管及び排水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排水構造の一部構成を概略的に示す部分断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る配管の構成を概略的に示す断面斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る配管50及び排水構造10の作用を説明する図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る配管50及び排水構造10の作用を説明する図である。
【図5】(A)は、本発明の第1実施形態に係る配管50を積み重ねた図である。(B)は、本発明の第1実施形態に係る配管50の構成部品を別々に積み重ねた図である。
【図6】硬質部材としての通水部を下にして配管に勾配を付けながら、支持金具を配管に取り付けた場合の概略構成図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る配管を示す概略図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る配管を示す概略図である。
【図9】本発明に係る配管の変形例を示す概略図である。
【図10】図6に示す支持金具の変形例を示す概略図である。
【図11】配管全体を軟質部材で構成した場合の概略図である。
【図12】従来の配管を積層した場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る配管及び排水構造について図面に基づき説明する。
【0023】
−排水構造の構成−
まず、本発明の第1実施形態に係る排水構造の構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る排水構造の一部構成を概略的に示す部分断面図である。
【0024】
本発明の第1実施形態に係る排水構造は、浴槽、洗濯機、洗面所、トイレ及び台所流し等の排水構造など様々な場所に適用可能であるが、図1では、ユニットバスの排水構造を一例として挙げている。
【0025】
図1に示すユニットバスの排水構造10では、床スラブ12の上部に図示しない支持部材を介してユニットバスの床面としての浴室用防水パン14が配置されている。
浴室用防水パン14の上部には、一方の側に入浴用の湯水を溜める容器としての浴槽16が配置されている。
【0026】
浴槽16には、浴槽16内に溜めた湯水を排出するための排水口18が設けられており、栓20で塞ぐことが可能となっている。
浴室用防水パン14には、排水口18の下側に、排水口18からの湯水等を排出するための排水口22が設けられている。この排水口22には、目皿24が取り付けられている。
【0027】
また、排水口22には、浴槽用排水配管26が接続されている。この浴槽用排水配管26の下流側の端部は、ユニットバスの浴室用防水パン14と床スラブ12との間に設けられた封水式の排水トラップ28に接続されている。
【0028】
排水トラップ28は、床スラブ12の上部にある外筒30を備えている。外筒30の外周壁30Aには、浴槽用排水配管26が接続される流入側接続管32が形成されている。
【0029】
また、外筒30の外周部には、外筒30からオーバーフローした排水が流れる流出部34が形成され、この流出部34につながる流出側接続管36が、本発明の第1実施形態に係る配管50に接続される構成である。
【0030】
さらに、外筒30には、外筒30の内側に環状の貯留空間38を形成するように、浴室用防水パン14側から内筒40が挿入されている。内筒40の下端部と外筒30の底部30Bとの間には、外筒30と内筒40との間を排水が流れる連通部42が形成されている。
【0031】
また、内筒40の上部は、浴室用防水パン14に形成された凹部44に嵌る目皿蓋46で覆われており、内筒40に貯留した排水が直接見えないようになっていると共に、体を洗う際に使用した湯水、浴槽16から溢れた湯水等を目皿蓋46から内筒40へ排水できる構成である。
【0032】
−配管の構成−
次に、本発明の第1実施形態に係る配管について説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る配管の構成を概略的に示す断面斜視図である。
【0033】
本発明の第1実施形態に係る配管50は、排水が流れる通水部52を備えている。具体的には、通水部52は、筒状の管を長さ方向へ切断した樋状のもので、内側を排水が流れる構成となっている。この通水部52は、例えば塩化ビニルのような硬質部材で形成されている。
【0034】
通水部52の長手方向に沿った開口部は、シート状の膨縮部材56で覆われ、配管50の断面形状は、膨縮部材56が膨張したとき、略円形となる。
膨縮部材56の取り付け方法としては、膨縮部材56の幅方向端部を通水部52の開口縁部54に接着剤で貼る方法や、熱融着等が挙げられる。この膨縮部材56と通水部52で通水空間58を形成し、膨縮部材56が空気圧の変動で膨縮し、通水空間58の容積を変えるものである。
【0035】
具体的には、膨縮部材56は、通水空間58内の空気圧が大気圧よりも20Pa程度上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したあたりで通水空間58の容積が、通水空間58内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張するものである。
【0036】
このような膨縮を可能とする膨縮部材56の材料としては、通水部52を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材が挙げられ、例えばゴム、ビニール、ゴム以外のエラストマーなどが挙げられる。また、仮に膨縮部材56がゴムからなる場合、膨縮部材56の厚みとしては、例えば0.1mmである。
【0037】
−作用−
次に、本発明の第1実施形態に係る配管50及び排水構造の作用を説明する。
図3及び図4は、本発明の第1実施形態に係る配管50及び排水構造10の作用を説明する図である。
【0038】
本発明の第1実施形態に係る配管50は、排水トラップ28の周壁に形成された略円形の流出側接続管36に、通水部52と膨縮部材56が接続され、接続部から漏水しないようにシール材で接着されている。
【0039】
配管50の膨縮部材56は、通水空間58内が例えば配管50と連通する不図示の立て管で生じた圧力によって正圧になったときに、図2に示す通水空間58内が大気圧のときの弛んだ状態から(図2の点線で示した膨縮部材56の状態)、図3に示すように膨張する。したがって、一時的に通水空間58内が正圧になっても、膨縮部材56が膨張して通水空間58の容積が拡大し、大気圧に近い状態に戻すことができる。
【0040】
同様に、本発明の第1実施形態に係る配管50の通水空間58内は、例えば配管50と連通する不図示の立て管で生じた圧力によって、負圧となる場合がある。
【0041】
このとき、膨縮部材56は、通水空間58が負圧になったときに、図2に示す通水空間58内が大気圧のときの膨縮部材56の状態から、図4に示すように縮小する。したがって、一時的に通水空間58内が負圧になっても、膨縮部材56が縮小して通水空間58の容積が小さくなり、大気圧に近い状態に戻すことができる。
なお、負圧とは、大気圧よりも低圧であることをいう。
【0042】
以上のように、膨縮部材56により、配管50内の空気圧の変動を吸収することができるため、配管50と連通する排水トラップ28内の空気圧の変動も吸収できる。このため、排水トラップ28で噴き出しや破封が生じることを防止することができる。
例えば、封水深50mmの一般的なトラップでは、±400Pa(安全率もみると、±600Pa)を超すと、噴き出しや破封が生じるが、本発明の第1実施形態に係る配管50を排水トラップ28と連通させれば、±400Paを超えても、噴き出しや破封が生じない。
また、同様に、排水時に他の合流する排水器具の排水トラップで噴き出しや破封が生じたりすることを防止することができる。
【0043】
ここで、通常の配管の口径は、各器具からの排水量や空気圧に対して対応するために、一般的に、下記のように定められている。
一例)
・浴室からの器具排水管の口径:50A
・トイレからの器具排水管の口径:75A
・洗面器からの器具排水管の口径:40A
(排水横枝管は、合流するとワンサイズアップする。)
【0044】
上記の設定は、排水を、通気を含めて十分に行うために必要な口径であるが、本発明の第1実施形態の配管50を使用すれば、配管50自体がある程度空気圧の変動を吸収してくれるため、現在規定されている口径よりも通水部52を形成する筒状の管の口径を小さくして敷設しても問題がない。配管50を細くすることができれば、コストダウンを図ることも可能となる。また、ユニットバスの床下空間(床スラブ12と浴室用防水パン14との間の空間)を縮小することも可能となる。
【0045】
また、配管50自体が空気圧の変動を吸収してくれるため、排水トラップ28は、従来品と比べて封水強度が低くても破封などから耐えることが可能となる。すなわち、封水深hが50mm未満であっても十分、破封などから耐えることができる。このように、本発明の第1実施形態に係る配管50と排水トラップ28を連通させた排水構造10とすれば、ユニットバス自体の低床化などができ、建築的なメリットも向上する。
【0046】
ここで、上述のような膨縮をする膨縮部材56は、通水部52を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材からなる。従来では、複数の配管を保管する時や配送時に、配管を積み重ねると図12に示すように、配管が嵩張っていたが、膨縮部材56を、通水部52を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材とすることにより、図5(A)に示すように、配管50の軟質部材からなる膨縮部材56を縮ませて、膨縮部材56の上に、他の配管50の硬質部材からなる通水部52を下にして積み重ねることにより、配管50が嵩張ることを抑制できる。また、配管する段階で、膨縮部材56を通水部52に取り付けるような場合は、保管時や配送時には、図5(B)に示すように、膨縮部材56と、通水部52を別々にして積み重ねることができる。
【0047】
また、本発明の第1実施形態に係る配管50において、通水部52は、筒状の管を長さ方向へ切断した樋状のものである。すなわち、通水空間58を円形としたときの全周のうち、1/2を構成する。
このため、配管50の強度を高めることができる。
【0048】
さらに、本発明の第1実施形態に係る配管50は、勾配管又は無勾配管のいずれでも使用できるが、例えば、勾配管として使用しても、従来の排水構造と同様問題なく施工ができる。
具体的には、図6に示すように、硬質部の通水部52を下にして配管50に勾配を付けながら、支持金具70を配管50に取り付ける。
【0049】
この構成によれば、通水部52を下にしているため、配管50が弛むことなく、所定の勾配を保つことが可能である。また、膨縮部材56は上に位置するため、排水が配管50に多量に流れた場合においても、排水が膨縮部材56と接触することを抑制することができる。したがって、膨縮部材56が水によって破れること等を防ぐことができる。
【0050】
また、配管50同士を接続するときは、通水部52同士は、ソケットへ挿入して接続し、膨縮部材56は別途貼り合せシートで継目を止水する。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る配管について、図7を用いて説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る配管を示す概略図である。
【0052】
本発明の第2実施形態に係る配管100では、水が流れる通水部102は、円筒状の硬質管で構成されている。通水部102の外周部の中央の一部には、開口部105が形成されている。この開口部105は、膨縮部材106で覆われ通水空間104が形成されている。
この構成によれば、例えば支持金具70で配管50の全周面が保持されるので配管50が抜け落ちない。また、円筒状の硬質管を継手として使用できる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る配管について、図8を用いて説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る配管を示す概略図である。
【0054】
本発明の第3実施形態に係る配管200は、半円形の樋状の通水部202を膨縮部材206で取り囲んで構成されている。この配管200は、膨縮部材206が膨張したら略円筒状となる管体である。
【0055】
この構成によれば、膨縮部材206の中に通水部202を挿入して、配管200を作製することができるため、膨縮部材206を通水部202に取り付ける手間を省くことができる。例えば、通水部202と膨縮部材206を接着する方が好ましい形態ではあるが、通水部202と膨縮部材206を接着しなくても配管200を作製することができる。
【0056】
(変形例)
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【0057】
例えば、本発明の第1実施形態では、配管50の通水部52は、筒状の管を軸方向から半分に切断したもののいずれか片方のような形状となっている場合、すなわち、通水空間58を円形としたときの全周のうち、1/2を構成する場合を説明したが、通水空間58を円形としたときの全周のうち、少なくとも1/3以上を構成すれば、排水や強度の面で実用的となる。
【0058】
また、本発明の第1実施形態では、排水構造がユニットバスの排水構造10である場合を説明したが、本発明の第1実施形態に係る配管50は、トイレや洗面器等の排水構造にも適用できる。
【0059】
また、通水部52の形状は、筒状の管を軸方向から半分に切断したもののいずれか片方のような形状となっている場合となっている場合を説明したが、三角柱や四角柱状の管を軸方向から半分に切断したもののいずれか片方のような形状となっていてもよい。
【0060】
また、本発明の第1実施形態では、配管50が、正圧と負圧のどちらに対しても空気圧の変動を吸収できる場合を説明したが、少なくとも正圧又は負圧のいずれか1つに対して、空気圧の変動を吸収できればよい。
【0061】
また、配管50の膨縮部材56は、通水部52に取り付ける場合を説明したが、二色成形等により通水部52と一体形成することも可能である。また、通水部52と膨縮部材56を別々に成形し、後に膨縮部材56を通水部52に取り付ける場合には、図9に示すように、通水部52の周方向両端部54に、例えば周方向外側に延出する突起部400を設け、同様に、膨縮部材56の両端部にも突起部402を設け、これらを接着剤等で貼り合せるようなことも可能である。
【0062】
また、図9では、筒状の管を長さ方向に切断した半割状のカバー部404を、膨縮部材56と共に、通水部52に取り付けている。このような方法で、例えば、図7に示すような配管100の製造が可能となる。
また、図6に示す支持金具70は、通水部52を支持する下半分の金具だけでなく、膨縮部材56を覆うよう上半分の金具を備えているが、図10に示すように、上半分の金具は省略してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 排水構造
28 排水トラップ
50、100、200 配管
52、102、202 通水部
56、106、206 膨縮部材
58、104、204 通水空間
70 支持金具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れる通水部と、
前記通水部を覆って通水空間を形成し、空気圧により前記通水空間の容積を変える膨縮部材と、
を備える配管。
【請求項2】
前記膨縮部材は、前記通水空間内が正圧になったときに、前記通水空間内が大気圧のときより膨張する請求項1に記載の配管。
【請求項3】
前記膨縮部材は、前記通水空間内の空気圧が大気圧よりも20Pa上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したときに、前記通水空間の容積が、前記通水空間内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張する請求項2に記載の配管。
【請求項4】
前記膨縮部材は、前記通水空間内が負圧になったときに、前記通水空間内が大気圧のときより縮小する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の配管。
【請求項5】
前記膨縮部材は、前記通水部を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の配管。
【請求項6】
前記通水部は、前記通水空間を円形としたときの全周のうち、1/3以上を構成する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の配管。
【請求項7】
前記通水部は、前記通水空間を円形としたときの全周のうち、1/2以上を構成する請求項6に記載の配管。
【請求項8】
前記通水部は、外周部の一部が開口され、前記開口が前記膨縮部材で覆われた円筒状の硬質管からなる請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の配管。
【請求項9】
前記膨縮部材は、前記通水部全体を取り囲む管体である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の配管。
【請求項10】
水が流れる通水部と、前記通水部を覆って通水空間を形成し、空気圧により前記通水空間の容積を変える膨縮部材と、を有する配管と、
前記配管と連通する排水トラップと、
を備える排水構造。
【請求項11】
前記膨縮部材は、前記通水空間を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材であり、
前記硬質部材を下にして前記配管に勾配を付けた支持金具を備える請求項10に記載の排水構造。
【請求項1】
水が流れる通水部と、
前記通水部を覆って通水空間を形成し、空気圧により前記通水空間の容積を変える膨縮部材と、
を備える配管。
【請求項2】
前記膨縮部材は、前記通水空間内が正圧になったときに、前記通水空間内が大気圧のときより膨張する請求項1に記載の配管。
【請求項3】
前記膨縮部材は、前記通水空間内の空気圧が大気圧よりも20Pa上昇したときから膨張し始め、大気圧よりも400Pa上昇したときに、前記通水空間の容積が、前記通水空間内が大気圧のときの容積から1.5倍以上になるように膨張する請求項2に記載の配管。
【請求項4】
前記膨縮部材は、前記通水空間内が負圧になったときに、前記通水空間内が大気圧のときより縮小する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の配管。
【請求項5】
前記膨縮部材は、前記通水部を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の配管。
【請求項6】
前記通水部は、前記通水空間を円形としたときの全周のうち、1/3以上を構成する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の配管。
【請求項7】
前記通水部は、前記通水空間を円形としたときの全周のうち、1/2以上を構成する請求項6に記載の配管。
【請求項8】
前記通水部は、外周部の一部が開口され、前記開口が前記膨縮部材で覆われた円筒状の硬質管からなる請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の配管。
【請求項9】
前記膨縮部材は、前記通水部全体を取り囲む管体である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の配管。
【請求項10】
水が流れる通水部と、前記通水部を覆って通水空間を形成し、空気圧により前記通水空間の容積を変える膨縮部材と、を有する配管と、
前記配管と連通する排水トラップと、
を備える排水構造。
【請求項11】
前記膨縮部材は、前記通水空間を形成する硬質部材より軟らかい軟質部材であり、
前記硬質部材を下にして前記配管に勾配を付けた支持金具を備える請求項10に記載の排水構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−158036(P2011−158036A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20448(P2010−20448)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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