説明

配管屈曲部の防音構造

【課題】エルボなどの配管屈曲部の流水音、特に低周波帯を効果的に防音できるようにする。
【解決手段】エルボなどの配管屈曲部1の外表面に重量2kg/m以上、JIS硬度が60〜80(JIS A6253)のゴムシート2を表面に密着させて巻きつけ、更にその上に吸音体と遮音体とからなる防音体を取り付けてある。流水音を測定したところ、500Hz近傍の低周波帯の流水音が管路の外に伝播するのが防止されている結果が得られた。ゴムシートのゴムの種類は特に限定されず、ある程度の重量がありパイプに密着させて被着させることができる柔軟性があればよい。接着剤を使用してゴムシートを配管部材に密着させてもよく、また、ゴムシートを複数枚使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のパイプを使用した配管において、エルボやチーズなどの管路の方向転換や分岐部などの屈曲部において、水流の振動や、水流が管路の壁に衝突することによって発生する流水音が外部拡散するのを低減する配管屈曲部の防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において、水道や排水用の配管は、塩化ビニルなどの樹脂製のパイプが使用されており、ストレートなパイプを継手で接続することにより、建築物内の必要個所に配管されるようにしている。継手などの配管部材としては、エルボ、T字型、Y字型など多様な種類があり、配管の方向を変換するものであるので屈曲部を有する。このような管路の屈曲部分に水が衝突して流水音が発生するのでこの流水音を効果的に防音して、より静かで快適な住空間を実現することが求められている。
【0003】
配管の防音対策としては、パイプの外側の表面に、パイプ内部で発生した流水音の外部への伝達を防止する防音材3を配置することが一般的である。従来の防音材は、図6に示すように、流水音を吸収する吸音体30と、吸音体で吸収しきれなかった音が外部に放射されないように部材内部に閉じ込めて外部への伝達を遮断する遮音体31とから構成される。このような防音材を備えた配管継手の例としては、例えば特許文献1(特開2003−65483号公報)に示すように、射出成形などにより成形された塩化ビニル樹脂を遮音体とし、この遮音体を、ベース部材の表面との間に所定の間隙を形成するように配置し、間隙内に発泡ポリウレタン樹脂が注入されている。また、特許文献2(特開2000−249283号公報)に示すように、パイプ表面に吸音体である発泡体を巻きつけ、更に、吸音体の表面に、発泡ポリウレタン樹脂を注入して遮音体としたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−65483号公報
【特許文献2】特開2000−249283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸音体の発泡ポリウレタン樹脂には高い吸音効果があるものの、図7に示すように、防音カバーを装着しない未対策の配管に比較すると、500kHz以上の高音域において防音効果があるものの、低音域については効果がなく、満足のいく防音効果を得ようとすると、遮音効果を向上させるために遮音体の厚みを増大させるか、吸音体の厚みを増大させなければならず、コストがかかり大型化するという問題があった。(測定条件は後述の実施例と同じである。)
【0006】
本発明は、簡易な手段によって樹脂製配管屈曲部において発生する流水音、特に500Hz以下の低周波帯域を効果的に遮音できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
配管屈曲部の表面に、重量2kg/m以上、JIS硬度が60〜80(JIS A6253)のゴムシート、更にその上に吸音体と遮音体とから構成される防音カバーを取り付けることによって遮音するようにしたものである。
【0008】
ゴムシートは、遮音のためには重量が必要であり、また、パイプに密着させて被着させるために柔軟性が必要であり、重量は2kg/mであることが好ましく、装着のための柔軟性を満足するためには、硬度が60〜80(JIS A6253)である必要がある。
ゴムの種類は特に問わず、イソプレンゴム、天然ゴム、SBR、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンープロピレンゴム、EPDM、塩化ビニル熱可塑性エラストマ(TPE)などが挙げられる。
接着剤を使用してゴムシートを管路部材に密着させてもよく、接着剤はアクリル系、クロロプレン系、ブチル系などが使用できる。ゴムシートは、複数枚使用してもよい。また、ゴムに代えてアスファルトシートを使用することも可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴムシートを配管屈曲部に密着させるだけで低周波帯に対して大きな遮音効果が得られ、防音材を大型化することなく高い防音効果を得ることができ、快適な住環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した屈曲部の断面図。
【図2】遮音効果を確認するための試験体の概要図。
【図3】本発明の配管部材の遮音効果を示すグラフ。
【図4】本発明の配管部材の直近での遮音効果を示すグラフ。
【図5】本発明の配管部材のパイプスペースにおける遮音効果を示すグラフ。
【図6】従来の防音材を施した配管部材の断面図。
【図7】従来の防音材の遮音効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す例は、配管屈曲部が塩化ビニル製のエルボの場合を例示するものであり、その断面構造を示す。
屈曲部の配管部材であるエルボ1の外表面に比重2.3、厚み3mm、硬度65(JIS A6253)のスチレンブタジェンゴムのシート2を二重に巻きつけ、その上に、公知の吸音層30と遮音層31からなる防音カバー3を取り付けたものである。ゴムシート2をエルボ1の外表面に巻きつけることによって径が増大するが、防音材3の取り付けに支障はなかった。
【0012】
この遮音材を設けたエルボ10を使用して図2に示すように、塩化ビニル製の垂直に配管した縦パイプ11、11及び横パイプ12を連結した配管試験体を作成し、配管内に流す水量を1.5L/sの定常水流として騒音レベルを測定した。測定点は、図示のように、縦パイプと横パイプの外面より500mm(L)離れた位置であり、フロア面から1100mm(h)の高さである。比較例として、防音カバーのみの場合についても同様な条件で騒音レベルを測定した。これらの測定結果を図3のグラフに示す。更に、配管試験体のエルボ10の直近において騒音レベルを測定した結果を図4のグラフに示す。
【0013】
図3及び図4のグラフから明らかなように、本発明によると、125Hz〜500Hzの低周波帯域の周波数に対して遮音効果が認められた。
【0014】
更に、配管がパイプスペース内になされていることを想定した場合について、配管をプラスターボードで囲み、プラスターボードで仕切ったパイプスペースを模擬し、同様な測定条件で騒音レベルを測定した。その結果を図5に示す。
なお、図5には本願発明の効果を示すために、図3のグラフも併記してある。
配管が狭い空間のパイプスペース内に収容されており、従来の防音カバーのみでも高音域の遮音は効果的になされているが、低音の周波数帯域(125〜500Hz)については遮音効果はあまり顕著とはいえない。
一方、本発明の実施例は、125〜500Hzの低音域を効果的に遮音していることが認められる。
【符号の説明】
【0015】
1 配管部材
11 縦パイプ
12 横パイプ
2 ゴムシート(遮音材)
3 防音カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量2kg/m以上、JIS硬度が60〜80(JIS A6253)のゴムシートを配管屈曲部に密着させて巻きつけ、その上に吸遮音カバーを取り付けた配管屈曲部の防音構造。
【請求項2】
請求項1において、ゴムシートが複数枚である屈曲部の防音構造。
【請求項3】
請求項2において、配管部材に接触するゴムシートの重量が他のゴムシートより重いものである配管屈曲部の防音構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、ゴムシートが接着剤で配管部材表面に密着させてある配管屈曲部の防音構造。
【請求項5】
請求項4において、接着剤はアクリル系、クロロプレン系、ブチル系のいずれかである配管屈曲部の防音構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−229791(P2012−229791A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100200(P2011−100200)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000232542)日本特殊塗料株式会社 (35)
【出願人】(000187194)昭和電工建材株式会社 (36)
【Fターム(参考)】