説明

配管支持具、配管支持具の取り付け治具、配管支持具の取り付け方法

【課題】狭隘な場所であって既設の制御棒駆動配管に容易に取り付け可能で耐震補強することができる配管支持具を提供する。
【解決手段】本発明の配管支持具10は、第1の配管12のフランジ16から前記第1の配管12の長手方向に沿って隙間15を開けて挟むように延出された一対の第2の配管14の配管支持具10であって、前記第1の配管12の外周に沿って挟持する湾曲部22を有し、平面視して両端が前記フランジ16から突出した一対のクランプ20を備え、前記クランプ20には、前記第1及び第2の配管12,14の間を支持する一対の第1の支持片30と、前記第1の支持片30と対向して前記第2の配管14を挟むように支持する矩形断面の一対の第2の支持片40と、を設け、第1の支持片30は、第2の支持片40よりも短尺であり、第2の支持片40は、第1の配管12に取り付けた状態における前記一対のクランプ20の間隔よりも短く設定していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントの制御棒駆動配管を支持する配管支持具、配管支持具の取り付け具、配管支持具の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来のハウジングと制御棒駆動配管の説明図であり、(A)は側面図を示し、(B)はハウジングのフランジ部分の拡大斜視図であり、(C)はハウジングの平面図である。
【0003】
原子力発電プラントにおける圧力容器の下部には出力制御のための制御棒を容器内に出し入れする制御棒駆動機構(以下、単にCRD(control rod drive)という。)のハウジング120が形成されている。圧力容器の下部から原子炉格納容器に延出されたハウジング120の下端にはフランジ160が形成されている。ハウジング120は圧力容器の下面に所定間隔を開けて多数取り付けられており、(C)に示すように隣接するフランジ同士の隙間が小さい。
【0004】
原子力発電プラントでは、原子炉建屋の水圧制御ユニットから原子炉格納容器のハウジング120のフランジ160の取り合いまでを多数の配管群で接続させている。フランジ160にはCRD配管140が接続されている。CRD配管140は、CRDと外部の水圧制御ユニットを繋ぐ配管であり、挿入配管と引抜配管から構成されている。CRD配管140は、(B)に示すように、ハウジング120のフランジ160からハウジング120の長手方向に沿って、ハウジング120と所定の隙間を開けて、ハウジング120を挟むように延出されている。このような配管群の据付方法として特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−12977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のハウジングに据付けられた既設のCRD配管について、本願発明者が地震発生時の振動を想定した構造解析を検証したところ、CRD配管とハウジングのフランジとの接続箇所に応力が集中し易いことが判明した。特に(B)に示すように一対のCRD配管の軸心を通る直線上(X軸方向)の振動に対して応力が集中し易い。
【0007】
またCRD配管が設置されたハウジングのフランジ部分は、点検作業台の上方に位置しているため、作業者からはフランジの上面側、すなわちCRD配管が接続している箇所は見えず、フランジの下面側しか見えない。そのため既存設備に前述の振動を防止するためにCRD配管の支持具を取り付けようとした場合、取り付けようとする箇所は隣接するハウジング同士の隙間が小さい狭隘な場所であるため非常に困難な作業となる。また一般に配管のサポートに用いられているU字管では、取り付けの際、隙間からの挿入が困難であるばかりか、隣接するハウジングが干渉して取り付けが困難であるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は上記従来技術の問題点を解決するため、狭隘な場所であって既設のCRD配管に容易に取り付け可能で耐震補強することができる配管支持具、配管支持具の取り付け治具、配管支持具の取り付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の問題点を解決するため、本発明の配管支持具は、第1の配管のフランジから前記第1の配管の長手方向に沿って隙間を開けて挟むように延出された一対の第2の配管の配管支持具であって、前記第1の配管の外周に沿って挟持する湾曲部を有し、平面視して両端が前記フランジから突出した一対のクランプを備え、前記クランプには、前記第1及び第2の配管の間を支持する一対の第1の支持片と、前記第1の支持片と対向して前記第2の配管を挟むように支持する断面矩形の一対の第2の支持片と、を設け、前記第1の支持片は、前記第2の支持片よりも短尺であり、前記第2の支持片は、前記第1の配管に取り付けた状態における前記一対のクランプの間隔よりも短く設定していることを特徴としている。
この場合において、前記クランプは、端部から前記フランジの取り付け面に向かって突出した脚を取り付けるとよい。
【0010】
また前記第2の支持片は、前記一対のクランプを固定する締結手段の貫通孔を備え、前記クランプは、前記第1の配管に取り付けた状態において前記締結手段のボルトヘッド及びナットが平面視して前記フランジの外周よりも突出する長さ寸法に設定しているとよい。
【0011】
本発明の配管支持具の取り付け治具は、第1の配管のフランジから前記第1の配管の長手方向に沿って隙間を開けて挟むように延出された一対の第2の配管の配管支持具の取り付け治具であって、プレート本体と、前記プレート本体の当接部に形成し、いずれか一方の前記第2の配管の軸心に向かって当接する凹部と、前記配管支持具の前記第2の支持片を挿入可能な溝と、前記プレート本体のプレート面に対し直交方向に螺合して、前記第2の配管と当接して前記プレート面の鉛直方向を調整する調整ボルトと、を備えたことを特徴としている。
【0012】
本発明の配管支持具の取り付け方法は、第1の配管のフランジから前記第1の配管の長手方向に沿って隙間を開けて挟むように延出された一対の第2の配管の配管支持具の取り付け方法であって、前記配管支持具の取り付け治具の前記凹部をいずれか一方の前記第2の配管に当接させて、前記配管支持具の前記第2の支持片を前記配管支持具の取り付け治具の溝に挿入し、前記一方のクランプと対向する側から他方の前記クランプで前記第1の配管を挟持し、前記クランプを締結して固定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配管支持具、配管支持具の取り付け治具、配管支持具の取り付け方法によれば、狭隘な場所かつ既設のCRD配管であっても、容易に配管支持具を取り付けることができ、第2の配管は第1の配管を支持母体として振動を抑制、耐震補強することができる。
【0014】
また取り付け対象箇所を直接目視できない狭隘な箇所において、手探りで配管支持具を取り付け、設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の配管支持具の斜視図である。
【図2】本発明の配管支持具の構成概略を示す図である。
【図3】本発明の配管支持具の取り付け治具の構成概略を示す図である。
【図4】配管支持具の取り付け治具の説明図である。
【図5】本発明の配管支持具の取り付け方法を示す説明図である。
【図6】従来のハウジングと制御棒駆動配管の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の配管支持具、配管支持具の取り付け治具、配管支持具の取り付け方法を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
本発明の配管支持具について図1、図2を参照しながら説明する。図1は本発明の配管支持具の斜視図である。図2は本発明の配管支持具の構成概略を示す図であり、(A)は構成部品ごとに分解した平面図を示し、(B)は各構成部品を組立てした平面図を示し、(C)はクランプの正面図を示している。
【0017】
本発明の配管支持具10の取り付け対象となる第1及び第2の配管12,14は、図示のように第2の配管14よりも径大の第1の配管12と、第1の配管12を中心として両側から挟むように一対の第2の配管14a、14bから構成されている。鉛直方向に延出されている第1の配管12にはフランジ16が形成されている。フランジ16からは、一対の第2の配管14a、14bが第1の配管12の軸心に沿って所定の間隔15を開けて延出されている。なお第1及び第2の配管12,14の各軸芯は同一平面上(図1中のXZ面)に配置されている。本実施形態では第1の配管12をCRDのハウジングとし、第2の配管14をCRD配管としている。
【0018】
本発明の配管支持具10は、クランプ20と、第1及び第2の支持片30、40と、締結手段50と、脚60を主な基本構成としている。
クランプ20(20a、20b)は、第1及び第2の配管12,14の長手方向(図1のZ軸方向)及び、第1及び第2の配管12,14の各軸芯を通る直線上(図1のX軸方向)と交差する方向、すなわち図1のY軸方向から第1及び第2の配管12,14を挟持する一対の矩形状の取付金物である。クランプ20の中心付近には、第1の配管12の外周に沿って湾曲させて第1の配管12を挟持することができる湾曲部22を形成している。湾曲部22の両端はX軸方向に延出させた平面部23を形成している。一対のクランプ20a、20bの何れか一方には、平面部23に第1及び第2の支持片30、40を形成している。本実施形態ではクランプ20aに形成している。またクランプ20の長さは第1の配管12に湾曲部22を接触させた際に、平面視して端部24がフランジ16よりも外側に突出する長さに設定している。具体的にクランプ20の長さは、第1の配管12に取り付けた状態において後述する締結ボルト52のボルトヘッド又はナット54の対角距離(図2(A)中のL)分だけ、平面視してフランジ16よりも外側に突出するように設定している。
【0019】
第1の支持片30は、第1及び第2の配管12,14の隙間15に挿入可能な板状部材であって、部材の厚みを第1及び第2の配管12,14の隙間15よりも僅かに薄く形成している。第1の支持片30は、クランプ20aの長手方向と直交する方向であって対向するクランプ20bに向けて延出させている。第1の支持片30は、外側すなわち第2の支持片40側の先端に面取り部32を形成している。これにより、一対の第2の配管14の軸心を通る直線と直交する方向から第1の支持片30を第1及び第2の配管12,14の隙間15に挿入する場合に、挿入が容易となると共に、第1の支持片30が第2の配管14と接触して配管を損傷させる虞がない。第1の支持片30と平面部23の接続箇所にはサポート34を形成している。サポート34は第1の支持片30と平面部23の接続箇所を厚肉に形成し、かつ第1の支持片30の先端に向かって先細となるテーパ状に形成している。このような構成により第2の配管14と接触することなく接続箇所(第1の支持片30の付け根部分)を補強することができる。第1の支持片30は、後述する第2の支持片40よりも短く設定している。
【0020】
第2の支持片40は、第1の支持片30と対向して、第2の配管14の外側から第1の支持片30側を挟持するような一対のサポート部材である。第2の支持片40は第1の支持片30よりも外側(端部24側)の平面部23に形成している。第2の支持片40は断面矩形に形成されている。第2の支持片40は、後述する締結手段50の締結ボルト52が挿入される貫通孔42を長手方向に穿孔している。一対のクランプ20a、20bには第2の支持片40と当接する箇所に開口26を形成している。また第2の支持片40の長さはクランプ20を第1の配管12に取り付けた状態における間隔よりも短くなるように設定している。このため、後述する締結手段50で締め付けた際に対向する平面部23が配管側に押えつけられて撓むバネ作用によって配管支持具10全体を第1の配管12に締め付けることができる。
【0021】
第2の支持片40は、断面形状を矩形となるように形成している。これにより円形断面の第1及び第2の配管12,14の接線方向の接触面積が増大して、安定して固定することができる。
【0022】
締結手段50は締結ボルト52及びナット54から構成されている。締結ボルト52は、第2の支持片40よりも長く設定している。締結ボルト52は第2の支持片40の貫通孔42に挿入して、先端をナット54に螺合させて締結する。
【0023】
なお前述のようにクランプ20の長さを、第1の配管12に取り付けた状態において締結ボルト52のボルトヘッド又はナット54の対角距離(図2(A)中のL)分だけ、平面視してフランジ16よりも外側に突出するように設定している。このため、締結ボルト52を第2の支持片40の貫通孔42に挿入して、クランプ20を締結したとき、締結手段50の両端は、平面視してフランジ16よりも外側に突出する構成となる。これによりフランジ16の下面側から配管支持具10を締め付ける際にラチェットなどの工具を嵌め合わせることができる。
【0024】
脚60は、クランプ20の湾曲部22に複数形成されている。脚60は、クランプ20の長手方向と交差する方向であって、一端をクランプ20の側面に固定し、他端をクランプ20からフランジ16に向かって突出するように形成している。クランプ20から突出させた脚60の長さは、第1の配管12のフランジ16面に形成されたフランジボルト又はナット(不図示)とクランプ20が接触しないように、フランジ16とクランプ20の間に隙間が生じる長さに設定している。脚60は、クランプ20を第1の配管12に取り付けた際に、図2(B)に示すように第1の配管12の軸心Cから放射状に分散させて湾曲部22に形成している。また脚60は第1の配管12のフランジ16上のボルト又はナットなどの締結部(不図示)を避けてフランジ16面と当接するように所定の間隔を開けて設けている。これにより、フランジ16上面の障害物に干渉されることなくクランプ20をフランジ16に安定して仮置き、又は固定することができる。
【0025】
なお配管支持具10を構成するクランプ20、第1および第2の支持片30、40、脚60、締結手段50の材質は、電食を防止するため、第2の配管14と同質の材料を用いるのが望ましく、一例としてステンレス材を用いることができる。
【0026】
次に上記構成による配管支持具10を第1及び第2の配管12,14に取り付けるための取り付け治具について以下説明する。
図3は本発明の配管支持具の取り付け治具の構成概略を示す図であり、(A)は平面図(鉛直位置調整手段を除く)を示し、(B)は正面図(調整ボルトを除く)を示し、(C)は側面図を示している。図4は配管支持具の取り付け治具の説明図である。本発明の配管支持具の取り付け治具70は、プレート本体72と、当接部74と、凹部76と、凸部78と、溝80と、取っ手82と、鉛直位置調整手段84と、を主な基本構成としている。
【0027】
プレート本体72は略矩形の平板である。本実施形態のプレート本体72は平板の長さを配管支持具10のクランプ20の高さとクランプ20から突出した脚60の長さを足した長さ以上に設定している。プレート本体72は一方の端部(上部)に当接部74と凹部76と凸部78と溝80を形成し、中心付近に鉛直位置調整手段84を形成し、他方の端部(下部)に取っ手82を形成した構成である。
【0028】
当接部74は、前記プレート本体72のプレート面から直角方向に延出されている。当接部74はプレート本体72から延出した先端部に凹部76と下面に凸部78を形成している。なお当接部74の長さは第2の支持片40の厚みよりも長く形成している。
【0029】
凹部76は、図3(A)に示すように第2の配管14の断面方向から外周に倣って当接できるように、第2の配管14の外周に沿って半円状に形成している。これにより、前記一対の第2の配管14の軸心を通る直線上からいずれか一方の前記第2の配管14の軸心に向かって当接した当接部74を一時的に固定することができる。
【0030】
凸部78は、プレート本体72と平行となるように当接部74から下方に延出している。凸部78は、図3(A)に示すようにプレート本体72側の側面が凹部76の頂点S(切り欠きの最深部)と略一致するように形成している。本実施形態の凸部78は、凹部76の最深部の両側に一対形成している。
【0031】
溝80は図3(C)に示すようにプレート本体72を側面視して、プレート本体72と凸部78の間に形成されている。溝80の幅は第2の支持片40の厚みと略一致するように形成している。これにより一対の第2の配管14の軸心を通る直線と直交する方向(図1のY軸方向)から配管支持具10の第2の支持片40を挿入することができる。
なおプレート本体72、当接部74、凸部78はそれぞれ端面を面取り加工している。
【0032】
取っ手82は、プレート本体72から下方に延出するように上端をプレート本体72の下部に接続している。本実施形態では、取っ手82の上端をねじ切り加工している。またねじ切り加工した取っ手82の先端と螺合する長ナット83を長手方向がプレート本体72の長手方向と平行となるようにプレート本体72の下端に溶接で固定している。取っ手82の先端のねじ切り部分を長ナット83に螺合させることにより取っ手82をプレート本体72に取り付けることができる。なお取っ手82はスライド機構、ジョイント機構などにより任意に長さを変えられるように構成するとよい。
【0033】
鉛直位置調整手段84は、プレート本体72に中央付近に形成された貫通孔85の軸心とナット86の孔中心が一致するように取り付け、ナット86に調整ボルト88を挿入した構成である。調整ボルト88の長さは第2の支持片40の厚みよりも長く設定している。なお調整ボルト88をナットに螺合させた後、ボルトの先端のねじ切りを潰すことにより、プレート本体72から調整ボルト88が脱落することを防止できる。
【0034】
本実施形態の配管支持具の取り付け治具70は、凹部76の中心と、鉛直位置調整手段84の調整ボルト88の軸心と、取っ手82の軸心が同一平面上に位置するように配置している。
なお配管支持具の取り付け治具70を構成するプレート本体72、当接部74と、凹部76と、凸部78と、溝80と、取っ手82と、鉛直位置調整手段84は一例としてステンレス鋼を用いることができる。
【0035】
次に上記構成による配管支持具の取り付け治具を用いた本発明の配管支持具の取り付け方法について以下説明する。
図5は本発明の配管支持具の取り付け方法を示す説明図である。前述のように第1の配管12となる複数のハウジングは、圧力容器の下方で所定の隙間を開けて密集して形成されている。このハウジングに配管支持具10を取り付けるためには、ハウジングの下方に設置した点検作業台から行う。このとき、ハウジングのフランジ面の上面は下方から見えず手探りで取り付けを行うことになる。そこでまず第1の配管12の配管群の下端を見上げる位置から上方の第1の配管12間の隙間へ配管支持具の取り付け治具70を挿入する。そしてプレート本体72の上端に設けた当接部74の凹部76を第2の配管14の軸心を結ぶ直線上からいずれか一方の第2の配管14の軸心に向かって当接させる(図5中の(i))。このときプレート本体72から水平方向に延出された当接部74の端面の一部を切り欠きして凹部76を形成しているため、第2の配管14と凹部76が嵌め合うことにより固定することができる。なお凹部76を当接する第2の配管の当接箇所は、フランジ16の上面から少なくともクランプ20の端部(上端)から脚の先端(下端)まで相当する長さよりも高い位置であることが望ましい。
【0036】
凹部76に第2の配管14を当接させた状態で、鉛直方向の位置調整を行う。具体的には鉛直位置調整手段84の調整ボルト88により、プレート本体72の下端が上端よりも第1の配管12の軸心から外側に傾斜している場合には、調整ボルト88を緩めてプレート本体72が鉛直方向(CRD配管の軸芯と並行方向)と一致するようにプレート本体72の下端を内側へ傾斜させる。またプレート本体72の下端が上端よりも第1の配管12の軸心から内側に傾斜している場合には、調整ボルト88を締め込んでプレート本体72が鉛直方向と一致するようにプレート本体72の下端を外側へ傾斜させる。これにより第2の支持片40を挿入する溝80を確保することができ、第2の支持片40を溝80へ容易に挿入することができる。なお予め調整ボルト88の突出量を第2の支持片40の厚みに合わせて鉛直方向を調節してもよい。
【0037】
次に一対のクランプ20a、20bのうち、第1及び第2の支持片30,40が形成されたクランプ20aを第1の配管12のフランジ16間の隙間から挿入して、何れか一方の第2の支持片40を一対の第2の配管14の軸心を通る直線と直交する方向から溝80へ挿入する(図5中の(ii))。このとき第1の支持片30は第2の支持片40よりも短く形成されているため、フランジ16面に対して第2の支持片40が略平行に配置されたクランプ20を溝80に挿入し始める際、第1の支持片30が第1の配管12と接触することがない。従って第1及び第2の配管12,14の軸心を通る平面に対して近いところ、即ち横方向のスペースを小さくして作業することができるため、狭隘なスペースに多数の配管が配列されている場合の配管支持具の取り付け作業が簡易になる。
【0038】
また第1及び第2の支持片30、40の間隔が第2の配管14を挿入可能な長さに設定しているため、手探りの作業であっても第2の支持片40を溝80に挿入することによって、第1の支持片30を第1及び第2の配管12,14の隙間に挿入することができる。
【0039】
第2の支持片40を挿入し、一方のクランプ20aの湾曲部22を第1の配管12の外周に沿って当接させた後、他方のクランプ20bを一方のクランプ20aと対向する側から挿入して第2の支持片40の先端と開口26を一致させる(図5中の(iii))。
【0040】
クランプ20を位置合わせした後、締結手段50の締結ボルト52を第2の支持片40の貫通孔42に挿入し、他方のクランプ20b側から突出したボルトの先端にナット54を嵌め合わせて仮締結する。そしてクランプ20の脚60の先端がフランジ16面に当接するように微調整を行った後、締結手段50を本締めする。これにより一対のクランプ20の湾曲部22間で第1の配管12を挟持することができる。また第1及び第2の支持片30,40により第1及び第2の配管12,14を挟持することができ、第2の配管14の軸心を通る直線方向の振動を防止することができる。
クランプ20を締結して配管支持具10を取り付けた後、配管支持具の取り付け治具70を第1及び第2の配管12,14から取り外す。
【0041】
このような本発明の配管支持具の取り付け方法によれば、狭隘な場所かつ既設のCRD配管であっても、容易に配管支持具を取り付けることができ、第2の配管は第1の配管を支持母体として振動を抑制、耐震補強することができる。また取り付け対象箇所を直接目視できない狭隘な箇所において、手探りで配管支持具を取り付け、設定することができる。
【符号の説明】
【0042】
10………配管支持具、12………第1の配管、14………第2の配管、15………隙間、16………フランジ、20………クランプ、22………湾曲部、23………平面部、24………端部、26………開口、30………第1の支持片、32………面取り部、34………サポート、40………第2の支持片、42………貫通孔、50………締結手段、52………締結ボルト、54………ナット、60………脚、70………配管支持具の取り付け治具、72………プレート本体、74………当接部、76………凹部、78………凸部、80………溝、82………取っ手、83………長ナット、84………鉛直位置調整手段、85………貫通孔、86………ナット、88………調整ボルト、120………ハウジング、140………CRD配管、160………フランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配管のフランジから前記第1の配管の長手方向に沿って隙間を開けて挟むように延出された一対の第2の配管の配管支持具であって、
前記第1の配管の外周に沿って挟持する湾曲部を有し、平面視して両端が前記フランジから突出した一対のクランプを備え、
前記クランプには、前記第1及び第2の配管の間を支持する一対の第1の支持片と、前記第1の支持片と対向して前記第2の配管を挟むように支持する断面矩形の一対の第2の支持片と、を設け、
前記第1の支持片は、前記第2の支持片よりも短尺であり、前記第2の支持片は、前記第1の配管に取り付けた状態における前記一対のクランプの間隔よりも短く設定していることを特徴とする配管支持具。
【請求項2】
前記クランプは、端部から前記フランジの取り付け面に向かって突出した脚を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の配管支持具。
【請求項3】
前記第2の支持片は、前記一対のクランプを固定する締結手段の貫通孔を備え、
前記クランプは、前記第1の配管に取り付けた状態において前記締結手段のボルトヘッド及びナットが平面視して前記フランジの外周よりも突出する長さ寸法に設定していることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管支持具。
【請求項4】
第1の配管のフランジから前記第1の配管の長手方向に沿って隙間を開けて挟むように延出された一対の第2の配管の配管支持具の取り付け治具であって、
プレート本体と、
前記プレート本体の当接部に形成し、いずれか一方の前記第2の配管の軸心に向かって当接する凹部と、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の前記配管支持具の前記第2の支持片を挿入可能な溝と、
前記プレート本体のプレート面に対し直交方向に螺合して、前記第2の配管と当接して前記プレート面の鉛直方向を調整する調整ボルトと、
を備えたことを特徴とする配管支持具の取り付け治具。
【請求項5】
第1の配管のフランジから前記第1の配管の長手方向に沿って隙間を開けて挟むように延出された一対の第2の配管の配管支持具の取り付け方法であって、
請求項4に記載の前記配管支持具の取り付け治具の前記凹部をいずれか一方の前記第2の配管に当接させて、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の前記配管支持具の前記第2の支持片を前記配管支持具の取り付け治具の溝に挿入し、
前記一方のクランプと対向する側から他方の前記クランプで前記第1の配管を挟持し、
前記クランプを締結して固定することを特徴とする配管支持具の取り付け方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−112893(P2012−112893A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263985(P2010−263985)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)