説明

配管支持装置

【課題】配管の熱変位を拘束せず、熱変位が大きくても熱変位を吸収する配管支持装置を提供する。
【解決手段】高温流体を移送する配管2を天井壁などの固定壁3から支持するための配管支持装置1において、配管2と固定壁3との間に、一端部が配管2に固定支持され、他端部が固定壁3に対して配管2の熱変形移動を許容させるように走行自在に構成した配管支持部材4を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の自重を支え、かつ配管の熱変位(熱移動)を吸収するように支持するための配管支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラントや原子炉などの生産設備で使用される配管は、天井壁などの固定壁から所定の間隔をおいて配管支持装置で支持され、所望の長さずつ順次継ぎ足して接続される。
【0003】
特に配管支持装置は、配管の自重に耐えつつ、配管内を流通する流体の温度による配管の熱変位に対処できるものでなければならない。配管支持装置で配管の熱変位を拘束すると、熱変位による反力が配管支持装置自体や配管に働くことになる。
【0004】
そのため、従来の配管支持装置としては、配管の熱変位に追従してこれを吸収するようにしたものや、配管の熱変位を拘束して反力に耐えうるようにしたものがある。
【0005】
例えば、図2に示すような配管の熱変位に追従するタイプの配管支持装置31では、天井壁32に固定金具33を取り付け、その固定金具33からラグプレート34を吊り下げ、ラグプレート34とハンガロッド35とをピン継手36で連結し、ハンガロッド35の先端に取り付けた把持具37で配管38を把持している。
【0006】
この配管支持装置31では、配管38の熱変位を、ハンガロッド35を長くしてハンガロッド35の傾き(ハンガロッド35を揺動させること)で吸収させていた。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0008】
【特許文献1】特開平11−257541号公報
【特許文献2】特開2000−55242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の配管支持装置31では、配管38の熱変位が大きい場合や、配管38の配置上ハンガロッド35を長くできない場合、ハンガロッド35の傾きが大きくなり、鉛直方向に配管38を変位させる力が発生する。
【0010】
このため、従来の配管支持装置31では、配管38が持ち上がったりして配管支持装置31自体や配管38に応力が加わりやすく、配管支持装置31や配管38が損傷したり、配管支持装置31や配管38の寿命が短くなったりするなどの問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、配管の熱変位を拘束せず、熱変位が大きくても熱変位を吸収する配管支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、高温流体を移送する配管を天井壁などの固定壁から支持するための配管支持装置において、上記配管と上記固定壁との間に、一端部が上記配管に固定支持され、他端部が上記固定壁に対して上記配管の熱変形移動を許容させるように走行自在に構成した配管支持部材を設けた配管支持装置である。
【0013】
請求項2の発明は、上記配管支持部材は、上記固定壁に設けられた走行軌道と、その走行軌道上に走行自在に支持された走行体と、その走行体に基端部が取り付けられ、他端部が上記配管に連結された支持アームとから構成された請求項1記載の配管支持装置である。
【0014】
請求項3の発明は、上記支持アームは、上記走行体に連結される上部アームと、その上部アームにピン継手により連結され、上記配管の熱変形移動方向に揺動自在に支持させて上記配管に取り付けられた下部アームとを備えると共に、その下部アームに取り付けられ、上記配管の上記固定壁側への移動を緩衝するダンパ部材を有する請求項2記載の配管支持装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管の熱変位を拘束せず、熱変位が大きくても熱変位を吸収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0017】
図1(a)は本発明の好適な実施形態を示す配管支持装置の正面側(配管の軸方向)から見た部分横断面図、図1(b)はその1B−1B線部分断面図である。
【0018】
図1(a)および図1(b)に示すように、本実施形態に係る配管支持装置1は、高温流体(加熱流体)を移送する配管2と天井壁などの固定壁3との間に、一端部が配管2に固定支持され、他端部が固定壁3に対して配管2の少なくとも軸方向に対する熱変形移動を許容させるように走行自在に構成した配管支持部材4を設けたものである。この配管支持装置1は、配管支持部材4と、後述する配管把持具22とからなる。
【0019】
配管支持装置1は、固定壁3の壁面に沿った方向(長手方向や斜め方向など)に、所定の間隔をおいて設けられる。高温流体としては、水、水蒸気、液体Naなどがある。配管2はSUSなどの金属で形成される。配管2としては、ボイラ、復水器、蒸気熱交換器などの伝熱管や、原子炉の1次系配管、2次系配管などが挙げられる。
【0020】
ここで、熱変形移動を許容させるとは、配管2内を流通する流体の温度やその温度変化、あるいは配管2内に流体を流す場合と流さない場合などにより、配管2が熱膨張・熱収縮することで配管2が熱変位しても、配管支持装置1自体や配管2に応力が加わらないようにさせることをいう。
【0021】
より詳細には、配管支持部材4は、固定壁3の下部に設けられて配管2の軸方向に沿って形成された走行軌道5と、その走行軌道5上に走行自在に支持された走行体としてのスライドプレート6と、そのスライドプレート6に基端部が取り付けられ、他端部が配管2に連結される支持アーム7とを主に備えて構成される。本実施形態では、コンクリート壁の表面に設ける固定壁3として鋼製のものを用いた。
【0022】
固定壁3の下面には、走行軌道5が区画形成されると共に、スライドプレート6が収容されるケーシング8が固定金具9により取り付けられる。ケーシング8は、配管2の軸方向が長手方向となるように形成されると共に、その下部中央に配管2の軸方向に沿って開口部10が形成されて外観がほぼ角形に形成される。
【0023】
開口部10の両側には、スライドプレート6を配管2の軸方向(開口部10の長手方向)に沿って案内するガイド11,11が設けられる。これらガイド11,11、ケーシング8の内底面、両側の内側壁により、ケーシング8内に走行軌道5が区画形成される。
【0024】
スライドプレート6の下面の両側には、ガイド11,11をまたいで走行軌道5上にスライドプレート6を走行させるための転動体12がそれぞれ設けられる。本実施形態では、転動体12として、球状のコロ13を配管2の軸方向に沿って複数個(図1(a)および図1(b)では3個)並べたものを用いた。
【0025】
両側の転動体12間の距離L1は、スライドプレート6を配管2の軸方向と交差する方向(図1(a)および図1(b)では左右方向)にスライド可能に設けるため、ガイド11,11間の距離L2よりも長くする。
【0026】
支持アーム7は、基端部がスライドプレート6の下面中央に吊り下げられて固定される。この支持アーム7は、スライドプレート6に連結固定される上部アームとしてのラグプレート14と、そのラグプレート14にピン継手15により連結され、配管の熱変形移動方向に揺動自在(本実施形態では、配管2の軸方向に揺動自在)に支持させて配管2に取り付けられる下部アームとしてのハンガロッド16と、そのハンガロッド16の上部に取り付けられ、配管2の固定壁3側(図1(a)および図1(b)では鉛直上方向)への移動を緩衝して吸収するダンパ部材17とを備える。
【0027】
ピン継手15は、ラグプレート14の下方と両側を覆うU字形に形成されたクレビス18と、これらラグプレート14とクレビス18を締結するボルト19およびナット20とからなる。ダンパ部材17は、ケース内に圧縮スプリング21を収容したスプリングハンガである。ハンガロッド16の下端部である先端部には、配管2を両側から把持する二つ割りの配管把持具22が取り付けられて固定される。
【0028】
ラグプレート14中心(スライドプレート6)のスライド可能範囲は、図1(a)および図1(b)の例では、配管2の軸方向でXであり、配管2の軸方向と交差する方向でYである。このスライド可能範囲は、あらかじめ設計段階で、配管系の熱変位解析を行って決定しておく。
【0029】
本実施形態の作用を説明する。
【0030】
配管2内に高温流体を流通させて移送すると、配管2が主に軸方向に熱膨張する(配管2の軸方向に対して斜めの方向にも若干熱膨張する)ことで、伸びて熱変位する。このとき、配管支持装置1では、配管2と固定壁3との間に配管支持部材4を設けているため、転動体12を有するスライドプレート6がケーシング8内を配管2の軸方向に沿って小さな力でスライドする。すなわち、配管支持装置1は、スライドプレート6が配管2の小さな熱変位にも直ちに追従して走行軌道5上を走行することで、配管2の熱変位を吸収できる。
【0031】
配管支持装置1では、スライドプレート6のスライド可能範囲が配管2の軸方向でXであり、このXを配管2の熱膨張による最大熱変位と同等以上にしているため、スライドプレート6がスライドすることにより、配管2の通常の熱膨張だけではハンガロッド16が傾くこともなく、鉛直方向に配管2を熱変位させる力は発生しない。配管2が熱収縮する場合も同様である。
【0032】
したがって、配管支持装置1によれば、配管2が熱膨張・熱収縮することで配管2が熱変位しても、配管支持部材4により配管支持装置1自体や配管2に応力が加わらないため、配管2の熱変位を拘束せず、熱変位が大きくても熱変位を吸収できる。配管支持装置1は、いわば熱変形を拘束しないハンガ取付金物である。
【0033】
配管支持装置1は、配管支持部材4が、ラグプレート14に配管2の軸方向に揺動自在に支持されるハンガロッド16を備えており、何らかの原因で配管2が異常に大きく熱変位し、スライドプレート6のスライド可能範囲が配管2の軸方向でXを超えたとしても、ハンガロッド16が傾くので配管2の熱変位を吸収できる。
【0034】
さらに配管支持装置1は、配管支持部材4が配管2の固定壁3側への移動を緩衝するダンパ部材17を備えているため、配管支持装置1自体や配管2に上下振動が加わっても、配管2の鉛直方向の変位を吸収できる。
【0035】
高温流体として液体Naを使用する場合は、液体Naが約500℃にもなることがあり、また配管2としてSUS製のものを使用する場合には、SUS製の配管2が熱により約100〜200mmも大きく伸縮することがある。このような場合に配管支持装置1を使用すると、特に有用である。
【0036】
また、配管支持装置1は、主に配管2の直線部に設けられて使用されるが、曲がり部に使用しても同じ作用効果が得られる。
【0037】
上記実施形態では、スライドプレート6を走行させるための転動体12として球状のコロ13を用いたが、転動体としては、円柱状や円筒状のコロや、走行軌道5上を走行する車輪を用いてもよい。
【0038】
ケーシングを角形ではなく丸形に形成し、その丸形のケーシングに合わせてスライドプレートも円盤状に形成すれば、スライドプレートのスライド方向をフリーすることもできる。
【0039】
また、上記実施形態では、スライドプレート6の下面に転動体12を設けた例で説明したが、スライドプレート6の上面に転動体を設ければ、下置き用のハンガロッドにも使用できる。固定壁3を貫通した上面に走行軌道を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(a)は本発明の好適な実施形態を示す配管支持装置の正面側から見た部分横断面図、図1(b)はその1B−1B線部分断面図である。
【図2】従来の配管支持装置の正面側から見た部分断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 配管支持装置
2 配管
3 固定壁
4 配管支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体を移送する配管を天井壁などの固定壁から支持するための配管支持装置において、上記配管と上記固定壁との間に、一端部が上記配管に固定支持され、他端部が上記固定壁に対して上記配管の熱変形移動を許容させるように走行自在に構成した配管支持部材を設けたことを特徴とする配管支持装置。
【請求項2】
上記配管支持部材は、上記固定壁に設けられた走行軌道と、その走行軌道上に走行自在に支持された走行体と、その走行体に基端部が取り付けられ、他端部が上記配管に連結された支持アームとから構成された請求項1記載の配管支持装置。
【請求項3】
上記支持アームは、上記走行体に連結される上部アームと、その上部アームにピン継手により連結され、上記配管の熱変形移動方向に揺動自在に支持させて上記配管に取り付けられた下部アームとを備えると共に、その下部アームに取り付けられ、上記配管の上記固定壁側への移動を緩衝するダンパ部材を有する請求項2記載の配管支持装置。

【図1】
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【図2】
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