説明

配管支持装置

【課題】容器近傍の配管支持装置であって、容器の熱伸び方向に対して配管を拘束せず過大な荷重発生のない、熱伸び変位の吸収と地震荷重の低減との両立を目指した、既設支持装置にも取り付け可能な安価な支持装置を提供する。
【解決手段】容器、配管、鉄筋コンクリート壁貫通部に設置されたサポートからなる配管支持装置において、容器と配管との共振回避及び地震荷重による過度な変位を抑制するために配管と支持装置の間に、地震振動による容器と配管との共振による損傷を抑制しつつ容器の熱伸びによる変形を逃がす従来の支持装置より柔らかい荷重変位特性の弾性体を設置し、また、弾性体の荷重変位特性を変更可能な構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気体、液体、粉流体等の各種流体を輸送する配管を有する発電プラント、化学プラント等の設備において、コンクリート壁等の構造物を介して配管を支持する配管支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の設備において、従来は配管が地震等の外力により支持部に対し許容範囲、例えば100mmを越えて変位し構造物等に接触して損傷を受けることを防止するために、配管の動きを許容範囲内に拘束する配管支持装置を設けていた。例えば、従来の配管支持装置は変位を完全に拘束する架構構造、あるいはメカニカル防振器等の変位を許容する架構構造を有していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−170680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の流体容器近傍における配管支持装置は、容器の熱伸び方向変位に対して配管を完全に拘束すると容器に過大な荷重が作用してしまうため、容器の熱伸び方向の配管支持は困難であった。配管の熱伸び方向変位の拘束と地震振動に対する制振を兼ね備えた支持機構として、従来メカニカルスナッバが用いられているが、構造が複雑で大型かつ高価であり、既設のプラント設備等への追設はスペース上の制約があり困難であった。そこで、本発明の目的は、配管の熱伸びによる配管の変位の吸収と地震荷重の低減との両立を兼ね備え、既設支持装置にも取り付け可能な安価な支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を解決するために、本発明においては次のような構成を採用する。熱変形を生じる容器に接続された配管と、鉄筋コンクリート壁貫通部に設置されたサポートからなる配管支持装置において、地震振動による容器と配管との共振による損傷、及び熱伸びによる過度な変位を抑制するために配管と支持装置の間に、地震振動による容器と配管との共振による損傷を抑制しつつ容器の熱伸びによる変形を逃がすような、従来の支持装置より柔らかい荷重変位特性をもつ弾性体を有する支持装置を設置し、また弾性体の荷重変位特性を変更可能な構造とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の配管支持装置によれば、簡潔な構成で既設支持構造物に追設可能で、従来の制振機能に加え、今まで困難であった容器の熱伸び方向の地震荷重を弾性体設置による共振回避により安価に低減でき、十分な耐震裕度の確保が可能となる。また、容器の熱伸びを拘束しないため、熱伸びによる配管への荷重を最小限に抑え配管の損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1の配管軸方向から見た正面図である。
【図2】実施例1の配管軸に沿った断面図である。
【図3】実施例2の配管軸方向から見た正面図である。
【図4】実施例3の配管軸方向から見た正面図である。
【図5】弾性体の変形荷重変位特性(線形)を示すグラフである。
【図6】弾性体の変形荷重変位特性(非線形)を示すグラフである。
【図7】弾性体の変形荷重変位特性(ギャップ)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1及び図2に実施例1による配管支持装置を示す。容器1と、容器1に接続された配管2と、鉄筋コンクリート壁3に取り付けられた配管支持装置4において、配管支持装置4に、容器1の熱伸び方向5と平行に弾性体6をサポート部材7によって固定する。次に、弾性体6と配管2の間に支持パッド8を設置し、弾性体6の圧縮復元力により配管2を配管支持装置4に保持する。配管2と支持パッド8は互いに圧接することで配管2に保持荷重が伝達される。Sは鉄筋コンクリート壁3に設けられた配管2を通すスペースである。
【0010】
弾性体の荷重変位特性について、弾性体のバネ定数は1×10N/mmを越えない値に設定する。これ以上のバネ定数にすると、剛性が大きくなり配管に対し過度の荷重を与え過度の変位による損傷を発生するとともに、適当な制振効果が得られない。このとき上記構造により配管2の変位量を100mm程度以下に抑制することが出来る。
【0011】
弾性体6の荷重変位特性は、地震振動に対する制振による配管2の固有振動数と容器1の熱伸び方向の固有振動数の共振回避、および配管2の過度な変位の抑制を目的としたもので、容器1の熱伸び自体を拘束するほどの高い剛性はないものとする。配管のサイズ、材質等に応じて最適のバネ定数をもつ弾性体を選択し、交換することが出来る。
【実施例2】
【0012】
図3に、本発明の実施例2による配管支持装置を示す。既設の配管支持装置4に斜め方向に傾斜した追加支持部材9を設置したうえで、サポート部材7を設置し、弾性体6を装着している。既設の配管支持装置4は容器1の熱伸び方向に対し直角な方向を支持しているため、このように弾性体6を設置することが出来る。
【実施例3】
【0013】
図4に、本発明の実施例3による、配管2の片側方向のみにしか弾性体6を設置できない場合の配管支持装置を示す。配管2を挟み込む形で配管サポート部材10を設置し、弾性体6を接続している。この構造は、単一の弾性体のみで配管2に圧縮及び引張力両方を与え、配管2の制振、変位抑制を実現することが出来る。
〔弾性体荷重変位特性〕
弾性体6の荷重変位特性は線形又は非線形とすることができ、その特性により種々の効果が得られる。図5に示すように弾性体の荷重変位特性を線形とした場合は、配管の固有振動数が変位によらず一定となり配管支持装置の系全体の応答予測がしやすくなる。
【0014】
図6に弾性体の荷重変位特性が非線形の場合の荷重と変位の関係を示す。弾性体の荷重変位特性が非線形の場合は、熱伸びの範囲では弾性体の荷重変位特性を柔らかくして熱伸びによる荷重を抑え、熱伸びを超える範囲では硬くすることで、地震荷重による振動を抑制する制振効果が得られる。
【0015】
また、図7に示すように、熱伸び分のギャップをあらかじめ吸収するように一定変位までは無負荷で変位するよう構成することで、熱伸びによる荷重を無くすことも可能となる。これは弾性体に一定のクリアランスを与えることによっても実現できる。
【符号の説明】
【0016】
1 …容器
2 …配管
3 …鉄筋コンクリート壁
4 …配管支持装置
5 …容器の熱伸び方向
6 …弾性体
7 …サポート部材
8 …支持パッド
9 …追加支持部材
10 …配管サポート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、容器に接続された配管と、支持構造物に設置されて前記配管を支持するサポート部材を有する配管支持装置において、
前記配管とサポート部材の間に、地震振動による容器と配管との共振による損傷を抑制しつつ容器の熱伸びによる変形を逃がす柔らかい荷重変位特性を持つ弾性体を有する支持装置を設置し、前記容器と配管との共振及び支持構造物に対する過度な変位を抑制することを特徴とする配管支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載された配管支持装置において、前記弾性体は異なる荷重変位特性を持つ弾性体に交換可能であることを特徴とする配管支持装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された配管支持装置において、前記弾性体は支持パッドを介して前記配管に押圧されたことを特徴とする配管支持装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された配管支持装置において、前記支持装置は斜め方向に傾斜した追加支持部材を有することを特徴とする配管支持装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された配管支持装置において、前記支持装置は配管を挟み込む配管サポート部材を介して配管を支持することを特徴とする配管支持装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された配管支持装置において、前記弾性体のバネ定数は10N/mmを越えない値としたことを特徴とする配管支持装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載された配管支持装置において、前記支持構造物に対する変位を100mmを越えない値としたことを特徴とする配管支持装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載された配管支持装置において、前記弾性体の荷重変位特性を線形としたことを特徴とする配管支持装置。
【請求項9】
請求項8に記載された配管支持装置において、前記弾性体の荷重変位特性を無荷重変位特性を含む線形としたことを特徴とする配管支持装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載された配管支持装置において、前記弾性体の荷重変位特性を非線形としたことを特徴とする配管支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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