説明

配管支持金物

【課題】 大荷重作用時にも配管の健全性を維持できるようにする。
【解決手段】 配管1の外周に沿って延びる円弧形状の板状部材7を、配管1の外周に周方向に4つ配置し、隣接する板状部材7の端部同士を引張ばねとして作用する板ばね8を介して連結する。所要の板状部材7の外周面部に連結部10を設けて配管支持金物6を形成する。配管1の所要個所の外周に配管接合金物7を装着し、連結部10に、固定構造物4の所要個所に一端部を取り付けた耐震用支持部材3の他端部を連結して、配管1を配管支持金物6と耐震用支持部材3を介し固定構造物4に支持させる。配管1の熱膨張は、板ばね8の伸長により各板状部材7同士の隙間を広げることで吸収させる。大地震時に配管1に大きな荷重が作用する場合でも、配管1における配管支持金物6の装着部分の管壁の周方向の一部に応力が集中して過大な負担が作用する虞を未然に防止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体側に一端部を支持させてなるスナバー等の耐震用支持部材の他端側に配管の所要個所を取り付けるために用いる配管支持金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラントの配管は、躯体等の固定構造物より各種の支持装置を介して支持されている。
【0003】
この種の支持装置のうち、たとえば、耐震性を考慮した支持装置としては、図3に示す如く、配管1の所要個所にラグ2を溶接により取り付け、更に、固定構造物4の所要個所に一端部を取り付けてなるスナバー等の耐震用支持部材3の他端部を、上記ラグ2に連結して、上記配管1の荷重を、ラグ2と耐震用支持部材3を介して上記固定構造物4に支持させるようにしたものが従来広く用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第2742038号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記図3に示した如き支持装置にて、配管1を支持した構成において、大地震時のように大きな荷重が配管1に作用した際に、配管1の過大な変位を抑えるべく耐震用支持部材3によって配管1が固定されるようになると、その地震荷重がラグ2と配管1に作用するようになる。
【0006】
この際、配管1とラグ2との溶接による接合部5に負担が掛かる場合であっても、破損が生じるとすれば、ラグ2が破損するようにして、配管1の健全性が維持されるようにすることが求められる。しかし、従来は、一体構造のラグ2を、溶接によって配管1に接合するようにしていたため、溶接品質のばらつき等に起因して、万一、ラグ2と配管1との溶接接合部5との脚長が大きい場合、該溶接接合部5における強度が、配管1の管壁の肉厚方向の剪断強さを上回っている部分が存在すると、配管1とラグ2との溶接接合部5に大きな負担が作用するときに、ラグ2ではなく、ラグ2が接合してある部分の配管1の管壁(図3におけるX部)に破損が生じる可能性が懸念されるというのが実状である。
【0007】
そこで、本発明は、配管に大きな荷重が作用する場合に、該配管の管壁に過大な負担が作用する虞を未然に防止できて、配管の健全性を維持することができる配管支持金物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、支持すべき配管と、該配管を支持するため一端部を固定構造物に支持させてなる耐震用支持部材の他端部との間に介在させて上記配管を支持するようにしてある配管支持金物において、上記配管の外周に沿わせて配置できるように円弧形状とした複数の板状部材を周方向に配列させて、該各板状部材の隣接する端部同士を板ばねを介し連結してリング状構造物とし、更に、上記各板状部材のうちの所要の板状部材に、上記耐震用支持部材の他端部に連結するための連結部を備えてなり、支持すべき配管に上記リング状構造物を嵌め且つ上記連結部を耐震用支持部材の他端部に連結して配管を支持するようにした構成とする。
【0009】
又、請求項2に対応して、支持すべき配管と、該配管を支持するため一端部を固定構造物に支持させてなる耐震用支持部材の他端部との間に介在させて上記配管を支持するようにしてある配管支持金物において、上記配管の外周に沿わせて配置できるように円弧形状とした複数の板状部材を周方向に配列させて、該各板状部材の隣接する端部同士を板ばねを介し連結してリング状構造物とし、該リング状構造物を、配管長手方向に沿うように複数配置して該各リング状構造物同士を連結部材で連結してなり、支持すべき配管に上記各リング状構造物を嵌め且つ上記連結部材の所要個所を上記耐震用支持部材の他端部に連結して配管を支持するようにした構成とする。
【0010】
更に、上記各構成において、板ばねのばね定数を200〜700N/mmとした構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配管支持金物によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)支持すべき配管と、該配管を支持するため一端部を固定構造物に支持させてなる耐震用支持部材の他端部との間に介在させて上記配管を支持するようにしてある配管支持金物において、上記配管の外周に沿わせて配置できるように円弧形状とした複数の板状部材を周方向に配列させて、該各板状部材の隣接する端部同士を板ばねを介し連結してリング状構造物とし、更に、上記各板状部材のうちの所要の板状部材に、上記耐震用支持部材の他端部に連結するための連結部を備えてなり、支持すべき配管に上記リング状構造物を嵌め且つ上記連結部を耐震用支持部材の他端部に連結して配管を支持するようにした構成、又は、支持すべき配管と、該配管を支持するため一端部を固定構造物に支持させてなる耐震用支持部材の他端部との間に介在させて上記配管を支持するようにしてある配管支持金物において、上記配管の外周に沿わせて配置できるように円弧形状とした複数の板状部材を周方向に配列させて、該各板状部材の隣接する端部同士を板ばねを介し連結してリング状構造物とし、該リング状構造物を、配管長手方向に沿うように複数配置して該各リング状構造物同士を連結部材で連結してなり、支持すべき配管に上記各リング状構造物を嵌め且つ上記連結部材の所要個所を上記耐震用支持部材の他端部に連結して配管を支持するようにした構成としてあるので、上記各配管支持金物の所定個所を、固定構造部に長手方向一端部が支持された耐震用支持部材の他端部に連結することで、上記配管の荷重を、配管支持金物と耐震用支持部材とを介して上記固定構造物に支持させることができる。この状態にて、大地震時に大きな荷重が配管に作用する際、配管の過大な変位を抑えるべく上記耐震用支持構造物によって固定される配管と、配管支持金物との間に大きな地震荷重が作用するときであっても、該配管における配管支持金物の装着部分の管壁にて、周方向の一部に応力が集中して作用することで過大な負担が作用する虞を未然に防止できて、配管と配管支持金物の接合面の断面係数が上げることができるため、配管の健全性を維持することができる。
(2)板ばねのばね定数を200〜700N/mmとした構成とすることにより、配管の熱膨張は、隣接する板状部材の端部同士を連結している板ばねの伸長変形により板状部材同士の隙間を開くことで逃がすことができる。又、大地震時に大きな荷重が配管に作用する場合であっても、上記配管の外周に配してある各板状部材を、該配管の外周面に密着させた状態で保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の配管支持金物の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0014】
すなわち、上記配管支持金物6は、支持すべき配管1の所要個所の外周に配置できるように、該配管1の外周に沿って延びるリング形状を周方向に複数分割した形状、たとえば、周方向等間隔で4分割した円弧形状の扁平な板状部材7を、周方向に並べて配列すると共に、該各板状部材7の隣接する端部同士を、引張りばねとして作用する板ばね8を介してそれぞれ連結する。これにより、上記各板状部材7と各板ばね8により形成されるリング状構造物9を、上記配管1の外周に装着できるようにする。
【0015】
上記板ばね8のばね定数は、たとえば、200〜700N/mmとしてある。これにより、上記配管1の管壁の熱膨張は、上記隣接する板状部材7の端部同士を連結している上記各板ばね8の伸長変形により板状部材7同士の隙間を開くことで逃がすことができるようにしてある一方、大地震時等に大きな荷重が配管1に作用する場合であっても、上記配管1の外周に配した各板状部材7を該配管1の外周面に密着させた状態に保持できるようにしてある。
【0016】
更に、上記配管1の外周に配された4つの板状部材7のうちの1つの板状部材7の外周面部の所要個所に連結部10を設けて、該連結部10を、固定構造物4の所要個所に一端部を取り付けてなるスナバー等の耐震用支持部材3の他端部に連結することができるようにしてある。
【0017】
その他、図1において図3に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0018】
以上の構成としてある配管支持金物6を使用する場合は、支持すべき配管1の所要個所の外周にて、各板状部材7と板ばね8とをリング状に組み立てて、形成されるリング状構造物9を上記配管1の外周に装着する。次いで、上記板状部材7の一つに予め設けておいた連結部10を、固定構造物4の所要個所に一端部を取り付けてなるスナバー等の耐震用支持部材3の他端部に連結する。これにより、上記配管1の荷重が、上記配管支持金物6における各板状部材7及び板ばね8と、連結部10と、耐震用支持部材3を介して上記固定構造物4に支持されるようになる。
【0019】
この状態で、大地震時のように大きな荷重が配管1に作用する際、配管1の過大な変位を抑えるべく耐震用支持部材3によって配管1が固定されるようになると、その地震荷重が配管支持金物6と配管1に作用するようになる。
【0020】
この際、上記配管支持金物6は、配管1との溶接部分がなく、しかも、各板状部材7が配管1の外周を取り囲むように配置してあるため、上記のように配管支持金物6と配管1との間に大きな荷重が作用するときにも、上記配管1の管壁における周方向の一部に応力が集中して作用する虞がないため、上記配管支持金物6の装着部分における上記配管1の管壁の損傷が未然に防止されるようになる。
【0021】
このように、本発明の配管支持金物によれば、従来のラグの代わりに使用することで、平常時は配管1の支持を行うことができ、又、大地震時等に、配管支持金物6と配管1との間に大きな荷重が作用する場合であっても、該配管1における配管支持金物6の装着部分の管壁にて、周方向の一部に応力が集中して作用することで過大な負担が作用する虞を未然に防止できて、配管1と配管支持金物6の接合面の断面係数が上げることができるため、配管1の健全性を維持することができる。
【0022】
次に、図2は本発明の実施の他の形態として、図1の実施の形態の応用例を示すもので、支持すべき配管の所要個所の外周に、図1に示したものと同様に配管1の外周に周方向に配列される円弧形状の板状部材7と、各板状部材7の隣接する端部同士を連結する板ばね8とからなるリング状構造物9を、配管1長手方向に所要間隔を隔てて複数、たとえば、3つ装着し、該各リング状構造物9にて配管1長手方向に沿って配置されている所要の板状部材7同士を、たとえば、周方向180度対向する位置に配管1の長手方向に沿って延びるよう配した2本の連結部材11で連結して配管支持金物6aを構成して、上記2本の連結部材11のうちの一方の連結部材11の長手方向中間部を、固定構造物4の所要個所に一端部を取り付けてなるスナバー等の耐震用支持部材3の他端部に連結するようにしたものである。
【0023】
その他、図1に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0024】
本実施の形態の配管支持金物6aによっても、上記実施の形態の配管支持金物6と同様の効果を得ることができる。
【0025】
なお、本発明は上記各実施の形態のみに限定されるものではなく、配管支持金物6,6aにおける板状部材7の周方向の分割数は、2又は3、あるいは、5以上の分割数としてもよく、配管1の熱膨張が大きい場合には、分割数を適宜増やすようにすればよい。
【0026】
図2の実施の形態における配管1の長手方向に配列して該配管1の外周に装着するリング状構造物9の数は、2又は4つ以上としてもよい。又、配管1の長手方向に配列されている各リング状構造物9の板状部材7同士を連結する連結部材11は、周方向の1個所あるいは周方向に配されている板状部材7の数に応じた本数とする等、適宜増減してもよい。
【0027】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の配管支持金物の実施の一形態を示すもので、配管を支持した状態を示す配管長手方向の一方から見た該略図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示すもので、配管を支持した状態を示す配管の長手方向及び耐震用支持部材の長手方向の双方と直交する方向の一方から見た該略図である。
【図3】従来の配管支持装置を示す概要図である。
【符号の説明】
【0029】
1 配管
3 耐震用支持部材
4 固定構造物
6,6a 配管支持金物
7 板状部材
8 板ばね
9 リング状構造物
10 連結部
11 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持すべき配管と、該配管を支持するため一端部を固定構造物に支持させてなる耐震用支持部材の他端部との間に介在させて上記配管を支持するようにしてある配管支持金物において、上記配管の外周に沿わせて配置できるように円弧形状とした複数の板状部材を周方向に配列させて、該各板状部材の隣接する端部同士を板ばねを介し連結してリング状構造物とし、更に、上記各板状部材のうちの所要の板状部材に、上記耐震用支持部材の他端部に連結するための連結部を備えてなり、支持すべき配管に上記リング状構造物を嵌め且つ上記連結部を耐震用支持部材の他端部に連結して配管を支持するようにした構成を有することを特徴とする配管支持金物。
【請求項2】
支持すべき配管と、該配管を支持するため一端部を固定構造物に支持させてなる耐震用支持部材の他端部との間に介在させて上記配管を支持するようにしてある配管支持金物において、上記配管の外周に沿わせて配置できるように円弧形状とした複数の板状部材を周方向に配列させて、該各板状部材の隣接する端部同士を板ばねを介し連結してリング状構造物とし、該リング状構造物を、配管長手方向に沿うように複数配置して該各リング状構造物同士を連結部材で連結してなり、支持すべき配管に上記各リング状構造物を嵌め且つ上記連結部材の所要個所を上記耐震用支持部材の他端部に連結して配管を支持するようにした構成を有することを特徴とする配管支持金物。
【請求項3】
板ばねのばね定数を200〜700N/mmとした請求項1又は2記載の配管支持金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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