配線回路基板およびその製造方法
【課題】めっき用リード部が電気信号の波形に与える影響が低減された配線回路基板およびその製造方法を提供する
【解決手段】サスペンション本体部10上に、ベース絶縁層11が形成される。ベース絶縁層11上に、めっき用リード線Sおよび配線パターン20が一体的に形成される。めっき用リード線Sおよび配線パターン20を覆うように、ベース絶縁層11上に、カバー絶縁層13が形成される。ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分に複数の開口部15が形成されている。この場合、複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrが小さくなる。
【解決手段】サスペンション本体部10上に、ベース絶縁層11が形成される。ベース絶縁層11上に、めっき用リード線Sおよび配線パターン20が一体的に形成される。めっき用リード線Sおよび配線パターン20を覆うように、ベース絶縁層11上に、カバー絶縁層13が形成される。ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分に複数の開口部15が形成されている。この場合、複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrが小さくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路基板の製造時には、基板上にサブトラクティブ法等により導体パターンが配線パターンとして形成される。また、導体パターンの一部に電解めっきを施すことにより接続端子が形成される。電解めっきを行うためには、導体パターンに給電を行う必要がある。そのため、導体パターンの形成時に、接続端子を形成すべき部分から基板上の一端部まで延びる給電用の配線部(以下、めっき用リード線と呼ぶ)が形成される。このめっき用リード線から導体パターンに給電が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1によれば、半導体装置に用いられるBGA(Ball Grid Array)と呼ばれる配線回路基板を製造する場合、サブトラクティブ法により形成された導体パターンのボンディングパッド上に電解ニッケルめっきおよび電解金めっきが施されることにより接続端子が形成される。
【0004】
基板上のボンディングパッドから基板上の一端部まで延びるめっき用リード線を外部のめっき用電極と電気的に接続することにより給電を行う。そして、ボンディングパッド上に電解ニッケルめっきが行われた後、電解金めっきが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−287034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記方法では、電解めっきが終了した後もめっき用リード線が不要な部分として配線回路基板上に残存する。配線回路基板の接続端子に他の電子回路が接続された状態で、導体パターンを電気信号が伝送される場合、上記のめっき用リード線は伝送線路から枝分かれしたスタブとなる。このようなスタブでは、特定の周波数で共振が起こる。それにより、電気信号の特定の周波数成分が減衰する。その結果、電気信号の波形が鈍る等の不都合が生じる場合がある。
【0007】
めっき用リード線は電解めっきの終了後には不要である。そこで、電解めっきの終了後に、めっき用リード線を除去することも考えられる。しかしながら、めっき用リード線を除去する工程が必要となるため製造コストが増加する。
【0008】
本発明の目的は、めっき用リード部が電気信号の波形に与える影響が低減された配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層上に形成される配線パターンと、配線パターンの一部に設けられる端子部と、配線パターンから延びるように形成されるめっき用リード部と、配線パターンを覆うように第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層とを備え、めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりも小さくなるように第1および第2の絶縁層の一方はめっき用リード部と重なりかつ他方はめっき用リード部の少なくとも一部と重ならないように設けられたものである。
【0010】
その配線回路基板においては、配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりもめっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が小さく設定される。この状態で、配線パターンを通して電気信号が伝送される場合、めっき用リード部における共振周波数が高くなり、共振により減衰される信号成分の周波数が高くなる。それにより、めっき用リード部における共振による信号成分の減衰が電気信号の波形に与える影響を低減することができる。その結果、めっき用リード部を除去することなく電気信号の波形の歪みを低減することができる。
【0011】
また、第1および第2の絶縁層の他方はめっき用リード部の少なくとも一部と重ならないように設けられるので、めっき用リード部に重なる領域に空間が形成される。空気(大気)の比誘電率は第1および第2の絶縁層の比誘電率よりも小さいので、めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率を小さくすることができる。それにより、比誘電率が小さい追加の材料を用いることなく共振により減衰される信号成分の周波数を高くすることができる。
【0012】
(2)第1および第2の絶縁層の他方は、1または複数の開口部が形成された低誘電率部を有し、低誘電率部は、めっき用リード部と重なるように設けられてもよい。
【0013】
(3)めっき用リード部に重なる第1および第2の絶縁層の一方または他方の部分の厚さが配線パターンに重なる第1および第2の絶縁層の一方または他方の厚さよりも小さく設定されてもよい。
【0014】
(4)低誘電率部に複数の開口部がメッシュ状に形成されてもよい。
【0015】
(5)1または複数の開口部は、スリット上に設けられてもよい。
【0016】
(6)1または複数の開口部内に第1および第2の絶縁層の他方よりも低い比誘電率を有する材料が充填されてもよい。
【0017】
(7)第1および第2の絶縁層の他方はめっき用リード部と重ならないように形成されてもよい。
【0018】
(8)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、第1の絶縁層上に、配線パターン、配線パターンの一部に設けられる端子部および配線パターンから延びるめっき用リード部を含む導体パターンを形成する工程と、端子部を除いて配線パターンおよびめっき用リード部を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成する工程と、めっき用リード部を通して配線パターンに給電することにより配線パターンの一部にめっき層で被覆された端子部を形成する工程と、配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりもめっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が小さくなるようにめっき用リード部に重なる第1または第2の絶縁層の一方の部分に開口を形成する工程とを備えたものである。
【0019】
その製造方法によれば、配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりもめっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が小さく設定される。この状態で、配線パターンを通して電気信号が伝送される場合、めっき用リード部における共振周波数が高くなり、共振により減衰される信号成分の周波数が高くなる。それにより、めっき用リード部における共振による信号成分の減衰が電気信号の波形に与える影響を低減することができる。その結果、めっき用リード部を除去することなく電気信号の波形の歪みを低減することができる。
【0020】
また、めっき用リード部に重なる第1および第2の絶縁層の一方の部分に開口が形成されるので、めっき用リード部に重なる領域に空間が形成される。空気(大気)の比誘電率は第1および第2の絶縁層の比誘電率よりも小さいので、めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率を小さくすることができる。それにより、比誘電率が小さい追加の材料を用いることなく共振により減衰される信号成分の周波数を高くすることができる。
【0021】
(9)製造方法は、めっき用リード部に重なる第1および第2の絶縁層の一方の部分に形成された開口内に第1または第2の絶縁層よりも低い比誘電率を有する材料を充填する工程をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、めっき用リード部における共振周波数が高くなり、共振により減衰される信号成分の周波数が高くなる。それにより、めっき用リード部における共振による信号成分が電気信号の波形に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】サスペンション基板の上面図である。
【図2】めっき用リード線およびその周辺部分の模式的縦断面図である。
【図3】めっき用リード線およびその周辺部分の模式的縦断面図である。
【図4】サスペンション基板の製造工程を示す模式的工程断面図である。
【図5】サスペンション基板の製造工程を示す模式的工程断面図である。
【図6】サスペンション基板の製造工程を示す模式的工程断面図である。
【図7】FPC基板の模式的断面図である。
【図8】サスペンション基板の電極パッドとFPC基板の端子部との接続状態を示す模式的断面図である。
【図9】サスペンション基板の配線パターンとFPC基板の配線パターンの間において、差動モード入力および差動モード出力(Sdd21)での損失をシミュレーションにより算出した結果を示す図である。
【図10】第1の実施の形態に係るサスペンション基板の断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係るサスペンション基板の断面図である。
【図12】第3の実施の形態に係るサスペンション基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の参考形態および実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。以下の参考形態および実施の形態においては、配線回路基板の一例として、ハードディスクの読み取りおよび書き込みに用いられるサスペンション基板について説明する。
【0025】
(1)参考形態
(1−1)サスペンション基板の構造
図1は本発明の参考形態に係るサスペンション基板の上面図である。図1に示すように、サスペンション基板1は、金属製の長尺状基板により形成されるサスペンション本体部10を備える。サスペンション本体部10には複数の孔部Hが形成されている。サスペンション本体部10上には、複数の配線パターン20が形成されている。各配線パターンの一端部および他端部には、電極パッド23,30がそれぞれ設けられている。
【0026】
サスペンション本体部10の先端部には、U字状の開口部21を形成することにより磁気ヘッド搭載部(以下、タング部と呼ぶ)12が設けられている。タング部12は、サスペンション本体部10に対して所定の角度をなすように破線Rの箇所で折り曲げ加工される。タング部12の端部に複数の電極パッド23が形成されている。
【0027】
タング部12上に、ハードディスクに対して読み取りおよび書き込みを行う磁気ヘッドが実装される。磁気ヘッドの端子部は、複数の電極パッド23にそれぞれ接続される。
【0028】
サスペンション本体部10の他端部に複数の電極パッド30が形成されている。また、複数の電極パッド30から配線パターン20と逆側に延びるように複数のめっき用リード線Sが形成されている。
【0029】
製造時には、金属製の支持基板50に複数のサスペンション基板1が同時に形成された後、各サスペンション基板1が支持基板50の他の領域から分離される。この場合、サスペンション本体部10は支持基板50の一部分からなる。
【0030】
各サスペンション基板1の複数のめっき用リード線Sは、各サスペンション基板1の外側の支持基板50上の領域まで延び、給電端子に接続されている。各サスペンション基板1が完成した後、一点鎖線Z1において各サスペンション本体部10が支持基板50の他の領域から分離される。
【0031】
図2および図3は、めっき用リード線Sおよびその周辺部分の模式的縦断面図である。なお、図2には、めっき用リード線Sに垂直な方向における断面が示され、図3には、めっき用リード線Sおよび配線パターン20に沿った方向における断面が示される。
【0032】
図2および図3に示すように、例えばステンレス鋼(SUS)からなるサスペンション本体部10上に、例えばポリイミドからなるベース絶縁層11が形成される。
【0033】
ベース絶縁層11上に、例えば銅からなる複数のめっき用リード線S(配線パターン20)が互いに所定距離を隔てて形成される。なお、図3に示すように、各配線パターン20と各めっき用リード線Sとは互いに一体的に形成される。
【0034】
複数のめっき用リード線Sおよび複数の配線パターン20を覆うように、ベース絶縁層11上に、例えばポリイミドからなるカバー絶縁層13が形成される。複数のめっき用リード線Sが形成されるベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みは、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さく設定される。
【0035】
図3に示すように、各配線パターン20の電極パッド30上におけるカバー絶縁層13の部分には、各電極パッド30の上面に達する孔部14が形成される。孔部14を埋めるように、例えば金からなるめっき層30aが形成される。
【0036】
(1−2)サスペンション基板の製造方法
以下、参考形態に係るサスペンション基板1の製造方法について説明する。ここでは、図1のタング部12、複数の電極パッド23および孔部Hの形成工程についての説明は省略する。
【0037】
図4〜図6は、本発明の参考形態に係るサスペンション基板1の製造工程を示す模式的工程断面図である。なお、図4には、図2と同じ箇所の断面における製造工程が示され、図5および図6には、図3と同じ箇所の断面における製造工程が示される。
【0038】
最初に、例えばステンレス鋼(SUS)からなる支持基板50を用意する。次に、図4(a)および図5(a)に示すように、支持基板50上に、例えばポリイミドからなるベース絶縁層11を形成する。
【0039】
支持基板50の材料としては、ステンレス鋼に代えてアルミニウム等の他の材料を用いてもよい。支持基板50の厚みは、5μm以上2000μm以下であることが好ましく、10μm以上1000μm以下であることがより好ましい。
【0040】
ベース絶縁層11の材料としては、ポリイミドに代えてエポキシ等の他の絶縁材料を用いてもよい。ベース絶縁層11の厚みは、5μm以上2000μm以下であることが好ましく、10μm以上1000μm以下であることがより好ましい。
【0041】
次に、図4(b)および図5(b)に示すように、ベース絶縁層11上に例えば銅からなる複数の配線パターン20および複数のめっき用リード線Sを形成する。この場合、各配線パターン20の端部に電極パッド30が設けられ、各電極パッド30から配線パターン20と逆側に延びるようにめっき用リード線Sが設けられる。
【0042】
配線パターン20およびめっき用リード線Sは、例えばセミアディティブ法を用いて形成してもよく、サブトラクティブ法等の他の方法を用いて形成してもよい。配線パターン20およびめっき用リード線Sの材料としては、銅に代えて金、アルミニウム等の他の金属、または銅合金、アルミニウム合金等の合金を用いてもよい。
【0043】
配線パターン20およびめっき用リード線Sの厚みは、例えば4μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。配線パターン20およびめっき用リード線Sの幅は、例えば10μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。
【0044】
次に、図4(c)および図5(c)に示すように、複数の配線パターン20およびめっき用リード線Sを覆うように、ベース絶縁層11上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層13を形成する。カバー絶縁層13の材料としては、ポリイミドに代えてエポキシ等の他の材料を用いてもよい。
【0045】
次に、図4(d)および図5(d)に示すように、複数のめっき用リード線Sが形成されるベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の上面をエッチングすることにより、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さくする。
【0046】
エッチング深さは、エッチングを行わないカバー絶縁層13の部分の厚みの70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みは、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、2μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0047】
なお、エッチングの代わりに、階調露光技術またはレーザ加工によりベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを小さくしてもよい。
【0048】
なお、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを小さくする代わりに、ベース絶縁層11の領域R1の厚みを小さくしてもよい。
【0049】
次に、図5(e)に示すように、例えばエッチングまたはレーザ加工により、各配線パターン20の電極パッド30上におけるカバー絶縁層13の部分に、電極パッド30の上面に達する孔部14を形成する。
【0050】
次に、図6に示すように、電解めっきにより、孔部14を埋めるように例えば金からな
るめっき層30aを形成する。この場合、めっき用リード線Sを通して、電解めっきのための給電が行われる。めっき層30aが形成された後、一点鎖線Z1において、支持基板50、ベース絶縁層11、めっき用リード線Sおよびカバー絶縁層13を切断する。それにより、サスペンション本体部10を有するサスペンション基板1が完成する。
【0051】
(1−3)サスペンション基板とFPC基板との接合
サスペンション基板1の複数の電極パッド30は、他の配線回路基板(例えばフレキシブル配線回路基板)の端子部と接合される。以下、サスペンション基板1の電極パッド30とフレキシブル配線回路基板(以下、FPC基板と呼ぶ)の端子部との接合例について説明する。
【0052】
図7は、FPC基板の模式的断面図であり、図8は、サスペンション基板1の電極パッド30とFPC基板の端子部との接続状態を示す模式的断面図である。なお、図8においては、図7のFPC基板の上下が逆に示される。
【0053】
図7に示すように、FPC基板100aは、例えばポリイミドからなるベース絶縁層41を備える。ベース絶縁層41上に、例えば銅からなる複数の配線パターン42が形成される。なお、図7および図8には、1つの配線パターン42のみが示される。
【0054】
各配線パターン42の端部に、端子部45が形成される。複数の配線パターン42を覆うように、ベース絶縁層41上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層43が形成される。各配線パターン42の端子部45上におけるカバー絶縁層43の部分には、孔部44が形成される。各孔部44を埋めるように、例えば金からなるめっき層45aが形成される。
【0055】
図8に示すように、サスペンション基板1の電極パッド30とFPC基板100aの端子部45とが互いに接触するようにサスペンション基板1およびFPC基板100aが配置され、例えば超音波または半田を用いて電極パッド30と端子部45(めっき層45a)とが互いに接合される。
【0056】
(1−4)めっき用リード線Sによる周波数成分の減衰
ここで、サスペンション基板1とFPC基板100aとの間で電気信号が伝送される際のめっき用リード線Sによる周波数成分の減衰について説明する。
【0057】
サスペンション基板1の配線パターン20およびFPC基板100aの配線パターン42を電気信号が伝送される場合、配線パターン20および配線パターン42が伝送経路となり、めっき用リード線Sは伝送経路から枝分かれするスタブとなる。
【0058】
この場合、スタブにおいて特定の周波数で共振が起こる。それにより、伝送経路を伝送する電気信号の共振周波数の成分が減衰する。
【0059】
デジタル信号には複数の周波数成分が含まれる。例えば、矩形波からなるデジタル信号の周波数をfとすると、そのデジタル信号には周波数fの整数倍の複数の周波数成分が含まれる。そのため、デジタル信号に含まれる特定の周波数成分が減衰すると、デジタル信号の波形が鈍り、立上がりエッジおよび立下がりエッジの傾きが穏やかになる。
【0060】
ここで、サスペンション基板1の配線パターン20およびFPC基板100aの配線パターン42を電気信号が伝送する場合におけるめっき用リード線Sの有無による電気信号の透過性の違いをシミュレーションにより求めた。
【0061】
図9は、めっき用リード線Sがある場合およびない場合の電気信号の透過特性のシミュレーション結果を示す図である。
【0062】
縦軸は、差動モード入力および差動モード出力(Sdd21)での減衰量を示し、横軸は周波数を示す。
【0063】
図9において、サスペンション基板1にめっき用リード線Sが形成されている
場合の電気信号の透過特性が実線で示され、めっき用リード線Sが形成されていない場合の電気信号の透過特性が点線で示される。
【0064】
図9に示すように、めっき用リード線Sが形成されていない場合は、全周波数領域でほとんど減衰が生じない。一方、めっき用リード線Sが形成されている場合、特定の周波数領域(共振周波数領域)で大きな減衰が生じる。
【0065】
ここで、めっき用リード線Sの長さをLとし、波長をλとすると、L=λ/4を満たす周波数で共振が起こる。共振周波数をfrとし、電気信号の伝送速度をvとすると、めっき用リード線Sによる共振周波数frは次式(1)で表される。
【0066】
fr=v/(4L)・・・(1)
めっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率をεrとすると、電気信号の伝送速度vは、次式(2)で表される。ここで、実効比誘電率εrは、めっき用リード線Sの周囲の要素(例えば、ベース絶縁層11、カバー絶縁層13および大気を含む)の比誘電率の合成値である。
【0067】
v=3×108/(√εr)・・・(2)
式(1)および式(2)から次式(3)が導かれる。
【0068】
fr=3×108/(4L√εr)・・・(3)
式(3)からわかるように、実効比誘電率εrを小さくすることにより、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数frを高くすることができる。それにより、めっき用リード線Sの共振周波数frを、電気信号の波形に与える影響が小さい値に設定することが可能となる。
【0069】
(1−5)参考形態の効果
本参考形態に係るサスペンション基板1においては、複数のめっき用リード線Sが形成されるベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の厚みよりも小さく設定される。それにより、複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrが小さくなり、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数が高くなる。したがって、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響が小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが抑制される。
【0070】
(2)第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態に係るサスペンション基板について、上記参考形態と異なる点を説明する。
【0071】
図10は、第1の実施の形態に係るサスペンション基板1aの断面図である。図10に示すように、第1の実施の形態に係るサスペンション基板1aにおいては、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みがベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の厚みよりも小さく設定される代わりに、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分に複数の開口部15が形成されている。例えば、メッシュ状に複数の開口部15が形成されてもよく、スリット状に複数の開口部15が形成されてもよい。
【0072】
ここで、ベース絶縁層11の領域R1とは、ベース絶縁層11上のめっき用リード線Sが形成された部分の領域をいう。
【0073】
サスペンション基板1aの製造時には、上記参考形態における図4(c)および図5(c)の工程の後、例えばエッチングにより、カバー絶縁層13に複数の開口部15を形成する。なお、フォトリソグラフィー技術またはレーザを用いてカバー絶縁層13に複数の開口部15を形成してもよい。めっき用リード線Sに重なる開口部15の部分の面積の合計は、めっき用リード線Sに接するベース絶縁層11の部分の面積の3割以上であることが好ましく、5割以上であることがより好ましい。
【0074】
この場合も、上記参考形態と同様に複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrが小さくなり、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数が高くなる。したがって、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響が小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが抑制される。
【0075】
なお、ベース絶縁層11の領域R1に複数の開口部15を形成してもよい。
【0076】
(3)第2の実施の形態
本発明の第2の実施の形態に係るサスペンション基板1bについて、上記参考形態と異なる点を説明する。
【0077】
図11は、第2の実施の形態に係るサスペンション基板1bの断面図である。図11に示すように、第2の実施の形態に係るサスペンション基板1bにおいては、ベース絶縁層11の領域R1上にカバー絶縁層13が形成されない。
【0078】
サスペンション基板1bの製造時には、上記参考形態における図4(c)および図5(c)の工程の後、例えばエッチングにより、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分を取り除く。
【0079】
この場合、上記参考形態および第1の実施の形態に比べて複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrがより小さくなり、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数がより高くなる。したがって、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響がより小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが十分に抑制される。
【0080】
なお、カバー絶縁層13の部分を取り除く代わりにベース絶縁層11の領域R1を取り除いてもよい。
【0081】
(4)第3の実施の形態
本発明の第3の実施の形態に係るサスペンション基板1cについて、上記第1の実施の形態と異なる点を説明する。
【0082】
図12は、第3の実施の形態に係るサスペンション基板1cの断面図である。図12に示すように、第3の実施の形態に係るサスペンション基板1cにおいては、カバー絶縁層13の開口部15内にカバー絶縁層13よりも低い誘電率を有する誘電体16が充填されている。誘電体16としては、例えば、複数の気孔を有する多孔体状の誘電材料(例えば、ポリイミド)が用いられる。
【0083】
この場合、複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrが小さくなり、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数が高くなる。したがって、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響が小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが抑制される。また、めっき用リード線Sが露出しないので、めっき用リード線Sの腐食が防止される。
【0084】
なお、ベース絶縁層11に開口部15を形成した後、開口部15内部に誘電体16を充填してもよい。
【0085】
(5)他の実施の形態
上記参考形態および第1〜第3の実施の形態の構成が組み合わされてもよい。例えば、複数のめっき用リード線Sが形成されるベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分に複数の開口部15が形成されてもよい。また、その開口部15内にカバー絶縁層13よりも低い誘電率を有する誘電体16が充填されてもよい。
【0086】
また、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層11の領域R1に複数の開口部15が形成されてもよい。また、その開口部15内にベース絶縁層11よりも低い誘電率を有する誘電体16が充填されてもよい。
【0087】
また、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層11の領域R1が取り除かれてもよい。
【0088】
また、ベース絶縁層11の領域R1の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分に複数の開口部15が形成されてもよい。また、その開口部15内にカバー絶縁層13よりも低い誘電率を有する誘電体16が充填されてもよい。
【0089】
また、ベース絶縁層11の領域R1の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分が取り除かれてもよい。
【0090】
(6)参考例および比較例
(6−1)参考例
次の条件で上記参考形態のサスペンション基板1を作製した。
【0091】
サスペンション本体部10(支持基板50)の材料としてステンレス鋼を用い、ベース絶縁層11の材料としてポリイミドを用い、配線パターン20およびめっき用リード線Sの材料として銅を用い、カバー絶縁層13の材料としてポリイミドを用い、めっき層30aの材料として金を用いた。
【0092】
また、サスペンション本体部10(支持基板50)の厚さを18μmとし、ベース絶縁層11の厚さを10μmとし、配線パターン20およびめっき用リード線Sの厚さを12
μmとし、配線パターン20およびめっき用リード線Sの幅を35μmとし、めっき用リード線Sの長さを9μmとした。
【0093】
また、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを3μmとし、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを6μmとした。
【0094】
(6−2)比較例
カバー絶縁層13の厚みを均一に6μmとした点を除いて上記参考例と同様にサスペンション基板1を形成した。
【0095】
(6−3)評価
図8に示したように、参考例および比較例のサスペンション基板1の電極パッド30とFPC基板100aの端子部45とを接合し、サスペンション基板1の配線パターン20からFPC基板100aの配線パターン42に電気信号を伝送した。
【0096】
参考例においては、電気信号の波形の鈍りがほとんど生じなかった。一方、比較例においては、電気信号の波形に鈍りが生じた。
【0097】
これにより、ベース絶縁層11の領域R1上のカバー絶縁層13の部分の厚みをベース絶縁層11の他の領域上のカバー絶縁層13の部分の厚みよりも薄く形成することにより、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響が小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが抑制される。
【0098】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0099】
上記実施の形態においては、ベース絶縁層11が第1の絶縁層の例であり、配線パターン20が配線パターンの例であり、電極パッド30が端子部の例であり、めっき用リード線Sがめっき用リード部の例であり、カバー絶縁層13が第2の絶縁層の例であり、サスペンション基板1が配線回路基板の例であり、開口部15が開口部の例である。また、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分が低誘電率部の例である。
【0100】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は種々の配線回路基板に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0102】
1 サスペンション基板
10 サスペンション本体部
11 ベース絶縁層
12 タング部
13 カバー絶縁層
14,H 孔部
14a 電解めっき
14b 接続端子
15,21 開口部
16 誘電体
20 配線パターン
23,30 電極パッド
30a,45a めっき層
50 支持基板
100a FPC基板
S めっき用リード線
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路基板の製造時には、基板上にサブトラクティブ法等により導体パターンが配線パターンとして形成される。また、導体パターンの一部に電解めっきを施すことにより接続端子が形成される。電解めっきを行うためには、導体パターンに給電を行う必要がある。そのため、導体パターンの形成時に、接続端子を形成すべき部分から基板上の一端部まで延びる給電用の配線部(以下、めっき用リード線と呼ぶ)が形成される。このめっき用リード線から導体パターンに給電が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1によれば、半導体装置に用いられるBGA(Ball Grid Array)と呼ばれる配線回路基板を製造する場合、サブトラクティブ法により形成された導体パターンのボンディングパッド上に電解ニッケルめっきおよび電解金めっきが施されることにより接続端子が形成される。
【0004】
基板上のボンディングパッドから基板上の一端部まで延びるめっき用リード線を外部のめっき用電極と電気的に接続することにより給電を行う。そして、ボンディングパッド上に電解ニッケルめっきが行われた後、電解金めっきが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−287034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記方法では、電解めっきが終了した後もめっき用リード線が不要な部分として配線回路基板上に残存する。配線回路基板の接続端子に他の電子回路が接続された状態で、導体パターンを電気信号が伝送される場合、上記のめっき用リード線は伝送線路から枝分かれしたスタブとなる。このようなスタブでは、特定の周波数で共振が起こる。それにより、電気信号の特定の周波数成分が減衰する。その結果、電気信号の波形が鈍る等の不都合が生じる場合がある。
【0007】
めっき用リード線は電解めっきの終了後には不要である。そこで、電解めっきの終了後に、めっき用リード線を除去することも考えられる。しかしながら、めっき用リード線を除去する工程が必要となるため製造コストが増加する。
【0008】
本発明の目的は、めっき用リード部が電気信号の波形に与える影響が低減された配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層上に形成される配線パターンと、配線パターンの一部に設けられる端子部と、配線パターンから延びるように形成されるめっき用リード部と、配線パターンを覆うように第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層とを備え、めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりも小さくなるように第1および第2の絶縁層の一方はめっき用リード部と重なりかつ他方はめっき用リード部の少なくとも一部と重ならないように設けられたものである。
【0010】
その配線回路基板においては、配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりもめっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が小さく設定される。この状態で、配線パターンを通して電気信号が伝送される場合、めっき用リード部における共振周波数が高くなり、共振により減衰される信号成分の周波数が高くなる。それにより、めっき用リード部における共振による信号成分の減衰が電気信号の波形に与える影響を低減することができる。その結果、めっき用リード部を除去することなく電気信号の波形の歪みを低減することができる。
【0011】
また、第1および第2の絶縁層の他方はめっき用リード部の少なくとも一部と重ならないように設けられるので、めっき用リード部に重なる領域に空間が形成される。空気(大気)の比誘電率は第1および第2の絶縁層の比誘電率よりも小さいので、めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率を小さくすることができる。それにより、比誘電率が小さい追加の材料を用いることなく共振により減衰される信号成分の周波数を高くすることができる。
【0012】
(2)第1および第2の絶縁層の他方は、1または複数の開口部が形成された低誘電率部を有し、低誘電率部は、めっき用リード部と重なるように設けられてもよい。
【0013】
(3)めっき用リード部に重なる第1および第2の絶縁層の一方または他方の部分の厚さが配線パターンに重なる第1および第2の絶縁層の一方または他方の厚さよりも小さく設定されてもよい。
【0014】
(4)低誘電率部に複数の開口部がメッシュ状に形成されてもよい。
【0015】
(5)1または複数の開口部は、スリット上に設けられてもよい。
【0016】
(6)1または複数の開口部内に第1および第2の絶縁層の他方よりも低い比誘電率を有する材料が充填されてもよい。
【0017】
(7)第1および第2の絶縁層の他方はめっき用リード部と重ならないように形成されてもよい。
【0018】
(8)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、第1の絶縁層上に、配線パターン、配線パターンの一部に設けられる端子部および配線パターンから延びるめっき用リード部を含む導体パターンを形成する工程と、端子部を除いて配線パターンおよびめっき用リード部を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成する工程と、めっき用リード部を通して配線パターンに給電することにより配線パターンの一部にめっき層で被覆された端子部を形成する工程と、配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりもめっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が小さくなるようにめっき用リード部に重なる第1または第2の絶縁層の一方の部分に開口を形成する工程とを備えたものである。
【0019】
その製造方法によれば、配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりもめっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が小さく設定される。この状態で、配線パターンを通して電気信号が伝送される場合、めっき用リード部における共振周波数が高くなり、共振により減衰される信号成分の周波数が高くなる。それにより、めっき用リード部における共振による信号成分の減衰が電気信号の波形に与える影響を低減することができる。その結果、めっき用リード部を除去することなく電気信号の波形の歪みを低減することができる。
【0020】
また、めっき用リード部に重なる第1および第2の絶縁層の一方の部分に開口が形成されるので、めっき用リード部に重なる領域に空間が形成される。空気(大気)の比誘電率は第1および第2の絶縁層の比誘電率よりも小さいので、めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率を小さくすることができる。それにより、比誘電率が小さい追加の材料を用いることなく共振により減衰される信号成分の周波数を高くすることができる。
【0021】
(9)製造方法は、めっき用リード部に重なる第1および第2の絶縁層の一方の部分に形成された開口内に第1または第2の絶縁層よりも低い比誘電率を有する材料を充填する工程をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、めっき用リード部における共振周波数が高くなり、共振により減衰される信号成分の周波数が高くなる。それにより、めっき用リード部における共振による信号成分が電気信号の波形に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】サスペンション基板の上面図である。
【図2】めっき用リード線およびその周辺部分の模式的縦断面図である。
【図3】めっき用リード線およびその周辺部分の模式的縦断面図である。
【図4】サスペンション基板の製造工程を示す模式的工程断面図である。
【図5】サスペンション基板の製造工程を示す模式的工程断面図である。
【図6】サスペンション基板の製造工程を示す模式的工程断面図である。
【図7】FPC基板の模式的断面図である。
【図8】サスペンション基板の電極パッドとFPC基板の端子部との接続状態を示す模式的断面図である。
【図9】サスペンション基板の配線パターンとFPC基板の配線パターンの間において、差動モード入力および差動モード出力(Sdd21)での損失をシミュレーションにより算出した結果を示す図である。
【図10】第1の実施の形態に係るサスペンション基板の断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係るサスペンション基板の断面図である。
【図12】第3の実施の形態に係るサスペンション基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の参考形態および実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。以下の参考形態および実施の形態においては、配線回路基板の一例として、ハードディスクの読み取りおよび書き込みに用いられるサスペンション基板について説明する。
【0025】
(1)参考形態
(1−1)サスペンション基板の構造
図1は本発明の参考形態に係るサスペンション基板の上面図である。図1に示すように、サスペンション基板1は、金属製の長尺状基板により形成されるサスペンション本体部10を備える。サスペンション本体部10には複数の孔部Hが形成されている。サスペンション本体部10上には、複数の配線パターン20が形成されている。各配線パターンの一端部および他端部には、電極パッド23,30がそれぞれ設けられている。
【0026】
サスペンション本体部10の先端部には、U字状の開口部21を形成することにより磁気ヘッド搭載部(以下、タング部と呼ぶ)12が設けられている。タング部12は、サスペンション本体部10に対して所定の角度をなすように破線Rの箇所で折り曲げ加工される。タング部12の端部に複数の電極パッド23が形成されている。
【0027】
タング部12上に、ハードディスクに対して読み取りおよび書き込みを行う磁気ヘッドが実装される。磁気ヘッドの端子部は、複数の電極パッド23にそれぞれ接続される。
【0028】
サスペンション本体部10の他端部に複数の電極パッド30が形成されている。また、複数の電極パッド30から配線パターン20と逆側に延びるように複数のめっき用リード線Sが形成されている。
【0029】
製造時には、金属製の支持基板50に複数のサスペンション基板1が同時に形成された後、各サスペンション基板1が支持基板50の他の領域から分離される。この場合、サスペンション本体部10は支持基板50の一部分からなる。
【0030】
各サスペンション基板1の複数のめっき用リード線Sは、各サスペンション基板1の外側の支持基板50上の領域まで延び、給電端子に接続されている。各サスペンション基板1が完成した後、一点鎖線Z1において各サスペンション本体部10が支持基板50の他の領域から分離される。
【0031】
図2および図3は、めっき用リード線Sおよびその周辺部分の模式的縦断面図である。なお、図2には、めっき用リード線Sに垂直な方向における断面が示され、図3には、めっき用リード線Sおよび配線パターン20に沿った方向における断面が示される。
【0032】
図2および図3に示すように、例えばステンレス鋼(SUS)からなるサスペンション本体部10上に、例えばポリイミドからなるベース絶縁層11が形成される。
【0033】
ベース絶縁層11上に、例えば銅からなる複数のめっき用リード線S(配線パターン20)が互いに所定距離を隔てて形成される。なお、図3に示すように、各配線パターン20と各めっき用リード線Sとは互いに一体的に形成される。
【0034】
複数のめっき用リード線Sおよび複数の配線パターン20を覆うように、ベース絶縁層11上に、例えばポリイミドからなるカバー絶縁層13が形成される。複数のめっき用リード線Sが形成されるベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みは、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さく設定される。
【0035】
図3に示すように、各配線パターン20の電極パッド30上におけるカバー絶縁層13の部分には、各電極パッド30の上面に達する孔部14が形成される。孔部14を埋めるように、例えば金からなるめっき層30aが形成される。
【0036】
(1−2)サスペンション基板の製造方法
以下、参考形態に係るサスペンション基板1の製造方法について説明する。ここでは、図1のタング部12、複数の電極パッド23および孔部Hの形成工程についての説明は省略する。
【0037】
図4〜図6は、本発明の参考形態に係るサスペンション基板1の製造工程を示す模式的工程断面図である。なお、図4には、図2と同じ箇所の断面における製造工程が示され、図5および図6には、図3と同じ箇所の断面における製造工程が示される。
【0038】
最初に、例えばステンレス鋼(SUS)からなる支持基板50を用意する。次に、図4(a)および図5(a)に示すように、支持基板50上に、例えばポリイミドからなるベース絶縁層11を形成する。
【0039】
支持基板50の材料としては、ステンレス鋼に代えてアルミニウム等の他の材料を用いてもよい。支持基板50の厚みは、5μm以上2000μm以下であることが好ましく、10μm以上1000μm以下であることがより好ましい。
【0040】
ベース絶縁層11の材料としては、ポリイミドに代えてエポキシ等の他の絶縁材料を用いてもよい。ベース絶縁層11の厚みは、5μm以上2000μm以下であることが好ましく、10μm以上1000μm以下であることがより好ましい。
【0041】
次に、図4(b)および図5(b)に示すように、ベース絶縁層11上に例えば銅からなる複数の配線パターン20および複数のめっき用リード線Sを形成する。この場合、各配線パターン20の端部に電極パッド30が設けられ、各電極パッド30から配線パターン20と逆側に延びるようにめっき用リード線Sが設けられる。
【0042】
配線パターン20およびめっき用リード線Sは、例えばセミアディティブ法を用いて形成してもよく、サブトラクティブ法等の他の方法を用いて形成してもよい。配線パターン20およびめっき用リード線Sの材料としては、銅に代えて金、アルミニウム等の他の金属、または銅合金、アルミニウム合金等の合金を用いてもよい。
【0043】
配線パターン20およびめっき用リード線Sの厚みは、例えば4μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。配線パターン20およびめっき用リード線Sの幅は、例えば10μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。
【0044】
次に、図4(c)および図5(c)に示すように、複数の配線パターン20およびめっき用リード線Sを覆うように、ベース絶縁層11上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層13を形成する。カバー絶縁層13の材料としては、ポリイミドに代えてエポキシ等の他の材料を用いてもよい。
【0045】
次に、図4(d)および図5(d)に示すように、複数のめっき用リード線Sが形成されるベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の上面をエッチングすることにより、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さくする。
【0046】
エッチング深さは、エッチングを行わないカバー絶縁層13の部分の厚みの70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みは、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、2μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0047】
なお、エッチングの代わりに、階調露光技術またはレーザ加工によりベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを小さくしてもよい。
【0048】
なお、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを小さくする代わりに、ベース絶縁層11の領域R1の厚みを小さくしてもよい。
【0049】
次に、図5(e)に示すように、例えばエッチングまたはレーザ加工により、各配線パターン20の電極パッド30上におけるカバー絶縁層13の部分に、電極パッド30の上面に達する孔部14を形成する。
【0050】
次に、図6に示すように、電解めっきにより、孔部14を埋めるように例えば金からな
るめっき層30aを形成する。この場合、めっき用リード線Sを通して、電解めっきのための給電が行われる。めっき層30aが形成された後、一点鎖線Z1において、支持基板50、ベース絶縁層11、めっき用リード線Sおよびカバー絶縁層13を切断する。それにより、サスペンション本体部10を有するサスペンション基板1が完成する。
【0051】
(1−3)サスペンション基板とFPC基板との接合
サスペンション基板1の複数の電極パッド30は、他の配線回路基板(例えばフレキシブル配線回路基板)の端子部と接合される。以下、サスペンション基板1の電極パッド30とフレキシブル配線回路基板(以下、FPC基板と呼ぶ)の端子部との接合例について説明する。
【0052】
図7は、FPC基板の模式的断面図であり、図8は、サスペンション基板1の電極パッド30とFPC基板の端子部との接続状態を示す模式的断面図である。なお、図8においては、図7のFPC基板の上下が逆に示される。
【0053】
図7に示すように、FPC基板100aは、例えばポリイミドからなるベース絶縁層41を備える。ベース絶縁層41上に、例えば銅からなる複数の配線パターン42が形成される。なお、図7および図8には、1つの配線パターン42のみが示される。
【0054】
各配線パターン42の端部に、端子部45が形成される。複数の配線パターン42を覆うように、ベース絶縁層41上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層43が形成される。各配線パターン42の端子部45上におけるカバー絶縁層43の部分には、孔部44が形成される。各孔部44を埋めるように、例えば金からなるめっき層45aが形成される。
【0055】
図8に示すように、サスペンション基板1の電極パッド30とFPC基板100aの端子部45とが互いに接触するようにサスペンション基板1およびFPC基板100aが配置され、例えば超音波または半田を用いて電極パッド30と端子部45(めっき層45a)とが互いに接合される。
【0056】
(1−4)めっき用リード線Sによる周波数成分の減衰
ここで、サスペンション基板1とFPC基板100aとの間で電気信号が伝送される際のめっき用リード線Sによる周波数成分の減衰について説明する。
【0057】
サスペンション基板1の配線パターン20およびFPC基板100aの配線パターン42を電気信号が伝送される場合、配線パターン20および配線パターン42が伝送経路となり、めっき用リード線Sは伝送経路から枝分かれするスタブとなる。
【0058】
この場合、スタブにおいて特定の周波数で共振が起こる。それにより、伝送経路を伝送する電気信号の共振周波数の成分が減衰する。
【0059】
デジタル信号には複数の周波数成分が含まれる。例えば、矩形波からなるデジタル信号の周波数をfとすると、そのデジタル信号には周波数fの整数倍の複数の周波数成分が含まれる。そのため、デジタル信号に含まれる特定の周波数成分が減衰すると、デジタル信号の波形が鈍り、立上がりエッジおよび立下がりエッジの傾きが穏やかになる。
【0060】
ここで、サスペンション基板1の配線パターン20およびFPC基板100aの配線パターン42を電気信号が伝送する場合におけるめっき用リード線Sの有無による電気信号の透過性の違いをシミュレーションにより求めた。
【0061】
図9は、めっき用リード線Sがある場合およびない場合の電気信号の透過特性のシミュレーション結果を示す図である。
【0062】
縦軸は、差動モード入力および差動モード出力(Sdd21)での減衰量を示し、横軸は周波数を示す。
【0063】
図9において、サスペンション基板1にめっき用リード線Sが形成されている
場合の電気信号の透過特性が実線で示され、めっき用リード線Sが形成されていない場合の電気信号の透過特性が点線で示される。
【0064】
図9に示すように、めっき用リード線Sが形成されていない場合は、全周波数領域でほとんど減衰が生じない。一方、めっき用リード線Sが形成されている場合、特定の周波数領域(共振周波数領域)で大きな減衰が生じる。
【0065】
ここで、めっき用リード線Sの長さをLとし、波長をλとすると、L=λ/4を満たす周波数で共振が起こる。共振周波数をfrとし、電気信号の伝送速度をvとすると、めっき用リード線Sによる共振周波数frは次式(1)で表される。
【0066】
fr=v/(4L)・・・(1)
めっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率をεrとすると、電気信号の伝送速度vは、次式(2)で表される。ここで、実効比誘電率εrは、めっき用リード線Sの周囲の要素(例えば、ベース絶縁層11、カバー絶縁層13および大気を含む)の比誘電率の合成値である。
【0067】
v=3×108/(√εr)・・・(2)
式(1)および式(2)から次式(3)が導かれる。
【0068】
fr=3×108/(4L√εr)・・・(3)
式(3)からわかるように、実効比誘電率εrを小さくすることにより、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数frを高くすることができる。それにより、めっき用リード線Sの共振周波数frを、電気信号の波形に与える影響が小さい値に設定することが可能となる。
【0069】
(1−5)参考形態の効果
本参考形態に係るサスペンション基板1においては、複数のめっき用リード線Sが形成されるベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の厚みよりも小さく設定される。それにより、複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrが小さくなり、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数が高くなる。したがって、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響が小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが抑制される。
【0070】
(2)第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態に係るサスペンション基板について、上記参考形態と異なる点を説明する。
【0071】
図10は、第1の実施の形態に係るサスペンション基板1aの断面図である。図10に示すように、第1の実施の形態に係るサスペンション基板1aにおいては、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みがベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の厚みよりも小さく設定される代わりに、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分に複数の開口部15が形成されている。例えば、メッシュ状に複数の開口部15が形成されてもよく、スリット状に複数の開口部15が形成されてもよい。
【0072】
ここで、ベース絶縁層11の領域R1とは、ベース絶縁層11上のめっき用リード線Sが形成された部分の領域をいう。
【0073】
サスペンション基板1aの製造時には、上記参考形態における図4(c)および図5(c)の工程の後、例えばエッチングにより、カバー絶縁層13に複数の開口部15を形成する。なお、フォトリソグラフィー技術またはレーザを用いてカバー絶縁層13に複数の開口部15を形成してもよい。めっき用リード線Sに重なる開口部15の部分の面積の合計は、めっき用リード線Sに接するベース絶縁層11の部分の面積の3割以上であることが好ましく、5割以上であることがより好ましい。
【0074】
この場合も、上記参考形態と同様に複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrが小さくなり、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数が高くなる。したがって、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響が小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが抑制される。
【0075】
なお、ベース絶縁層11の領域R1に複数の開口部15を形成してもよい。
【0076】
(3)第2の実施の形態
本発明の第2の実施の形態に係るサスペンション基板1bについて、上記参考形態と異なる点を説明する。
【0077】
図11は、第2の実施の形態に係るサスペンション基板1bの断面図である。図11に示すように、第2の実施の形態に係るサスペンション基板1bにおいては、ベース絶縁層11の領域R1上にカバー絶縁層13が形成されない。
【0078】
サスペンション基板1bの製造時には、上記参考形態における図4(c)および図5(c)の工程の後、例えばエッチングにより、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分を取り除く。
【0079】
この場合、上記参考形態および第1の実施の形態に比べて複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrがより小さくなり、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数がより高くなる。したがって、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響がより小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが十分に抑制される。
【0080】
なお、カバー絶縁層13の部分を取り除く代わりにベース絶縁層11の領域R1を取り除いてもよい。
【0081】
(4)第3の実施の形態
本発明の第3の実施の形態に係るサスペンション基板1cについて、上記第1の実施の形態と異なる点を説明する。
【0082】
図12は、第3の実施の形態に係るサスペンション基板1cの断面図である。図12に示すように、第3の実施の形態に係るサスペンション基板1cにおいては、カバー絶縁層13の開口部15内にカバー絶縁層13よりも低い誘電率を有する誘電体16が充填されている。誘電体16としては、例えば、複数の気孔を有する多孔体状の誘電材料(例えば、ポリイミド)が用いられる。
【0083】
この場合、複数のめっき用リード線Sの周囲の実効比誘電率εrが小さくなり、めっき用リード線Sにおける電気信号の共振周波数が高くなる。したがって、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響が小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが抑制される。また、めっき用リード線Sが露出しないので、めっき用リード線Sの腐食が防止される。
【0084】
なお、ベース絶縁層11に開口部15を形成した後、開口部15内部に誘電体16を充填してもよい。
【0085】
(5)他の実施の形態
上記参考形態および第1〜第3の実施の形態の構成が組み合わされてもよい。例えば、複数のめっき用リード線Sが形成されるベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分に複数の開口部15が形成されてもよい。また、その開口部15内にカバー絶縁層13よりも低い誘電率を有する誘電体16が充填されてもよい。
【0086】
また、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層11の領域R1に複数の開口部15が形成されてもよい。また、その開口部15内にベース絶縁層11よりも低い誘電率を有する誘電体16が充填されてもよい。
【0087】
また、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層11の領域R1が取り除かれてもよい。
【0088】
また、ベース絶縁層11の領域R1の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分に複数の開口部15が形成されてもよい。また、その開口部15内にカバー絶縁層13よりも低い誘電率を有する誘電体16が充填されてもよい。
【0089】
また、ベース絶縁層11の領域R1の厚みが、ベース絶縁層11の他の領域の厚みよりも小さく設定されるとともに、ベース絶縁層の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分が取り除かれてもよい。
【0090】
(6)参考例および比較例
(6−1)参考例
次の条件で上記参考形態のサスペンション基板1を作製した。
【0091】
サスペンション本体部10(支持基板50)の材料としてステンレス鋼を用い、ベース絶縁層11の材料としてポリイミドを用い、配線パターン20およびめっき用リード線Sの材料として銅を用い、カバー絶縁層13の材料としてポリイミドを用い、めっき層30aの材料として金を用いた。
【0092】
また、サスペンション本体部10(支持基板50)の厚さを18μmとし、ベース絶縁層11の厚さを10μmとし、配線パターン20およびめっき用リード線Sの厚さを12
μmとし、配線パターン20およびめっき用リード線Sの幅を35μmとし、めっき用リード線Sの長さを9μmとした。
【0093】
また、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを3μmとし、ベース絶縁層11の他の領域上におけるカバー絶縁層13の部分の厚みを6μmとした。
【0094】
(6−2)比較例
カバー絶縁層13の厚みを均一に6μmとした点を除いて上記参考例と同様にサスペンション基板1を形成した。
【0095】
(6−3)評価
図8に示したように、参考例および比較例のサスペンション基板1の電極パッド30とFPC基板100aの端子部45とを接合し、サスペンション基板1の配線パターン20からFPC基板100aの配線パターン42に電気信号を伝送した。
【0096】
参考例においては、電気信号の波形の鈍りがほとんど生じなかった。一方、比較例においては、電気信号の波形に鈍りが生じた。
【0097】
これにより、ベース絶縁層11の領域R1上のカバー絶縁層13の部分の厚みをベース絶縁層11の他の領域上のカバー絶縁層13の部分の厚みよりも薄く形成することにより、めっき用リード線Sにおける共振が電気信号の波形に与える影響が小さくなる。その結果、めっき用リード線Sでの共振による電気信号の波形の鈍りが抑制される。
【0098】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0099】
上記実施の形態においては、ベース絶縁層11が第1の絶縁層の例であり、配線パターン20が配線パターンの例であり、電極パッド30が端子部の例であり、めっき用リード線Sがめっき用リード部の例であり、カバー絶縁層13が第2の絶縁層の例であり、サスペンション基板1が配線回路基板の例であり、開口部15が開口部の例である。また、ベース絶縁層11の領域R1上におけるカバー絶縁層13の部分が低誘電率部の例である。
【0100】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は種々の配線回路基板に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0102】
1 サスペンション基板
10 サスペンション本体部
11 ベース絶縁層
12 タング部
13 カバー絶縁層
14,H 孔部
14a 電解めっき
14b 接続端子
15,21 開口部
16 誘電体
20 配線パターン
23,30 電極パッド
30a,45a めっき層
50 支持基板
100a FPC基板
S めっき用リード線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に形成される配線パターンと、
前記配線パターンの一部に設けられる端子部と、
前記配線パターンから延びるように形成されるめっき用リード部と、
前記配線パターンを覆うように前記第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層とを備え、
前記めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が前記配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりも小さくなるように前記第1および第2の絶縁層の一方は前記めっき用リード部と重なりかつ他方は前記めっき用リード部の少なくとも一部と重ならないように設けられた、配線回路基板。
【請求項2】
前記第1および第2の絶縁層の他方は、1または複数の開口部が形成された低誘電率部を有し、
前記低誘電率部は、前記めっき用リード部と重なるように設けられた、請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記めっき用リード部に重なる前記第1および第2の絶縁層の一方または他方の部分の厚さが前記配線パターンに重なる前記第1および第2の絶縁層の一方または他方の厚さよりも小さく設定された、請求項2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記低誘電率部に前記複数の開口部がメッシュ状に形成された、請求項2または3記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記1または複数の開口部は、スリット上に設けられた、請求項2または3記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記1または複数の開口部内に前記第1および第2の絶縁層の他方よりも低い比誘電率を有する材料が充填された、請求項2〜5のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項7】
前記第1および第2の絶縁層の他方は前記めっき用リード部と重ならないように形成された、請求項1記載の配線回路基板。
【請求項8】
第1の絶縁層上に、配線パターン、前記配線パターンの一部に設けられる端子部および前記配線パターンから延びるめっき用リード部を含む導体パターンを形成する工程と、
前記端子部を除いて前記配線パターンおよび前記めっき用リード部を覆うように前記第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成する工程と、
前記めっき用リード部を通して前記配線パターンに給電することにより前記配線パターンの一部にめっき層で被覆された端子部を形成する工程と、
前記配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりも前記めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が小さくなるように前記めっき用リード部に重なる前記第1または第2の絶縁層の一方の部分に開口を形成する工程とを備えた、配線回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記めっき用リード部に重なる前記第1および第2の絶縁層の一方の部分に形成された前記開口内に前記第1または第2の絶縁層よりも低い比誘電率を有する材料を充填する工程をさらに備えた、請求項8記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に形成される配線パターンと、
前記配線パターンの一部に設けられる端子部と、
前記配線パターンから延びるように形成されるめっき用リード部と、
前記配線パターンを覆うように前記第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層とを備え、
前記めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が前記配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりも小さくなるように前記第1および第2の絶縁層の一方は前記めっき用リード部と重なりかつ他方は前記めっき用リード部の少なくとも一部と重ならないように設けられた、配線回路基板。
【請求項2】
前記第1および第2の絶縁層の他方は、1または複数の開口部が形成された低誘電率部を有し、
前記低誘電率部は、前記めっき用リード部と重なるように設けられた、請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記めっき用リード部に重なる前記第1および第2の絶縁層の一方または他方の部分の厚さが前記配線パターンに重なる前記第1および第2の絶縁層の一方または他方の厚さよりも小さく設定された、請求項2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記低誘電率部に前記複数の開口部がメッシュ状に形成された、請求項2または3記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記1または複数の開口部は、スリット上に設けられた、請求項2または3記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記1または複数の開口部内に前記第1および第2の絶縁層の他方よりも低い比誘電率を有する材料が充填された、請求項2〜5のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項7】
前記第1および第2の絶縁層の他方は前記めっき用リード部と重ならないように形成された、請求項1記載の配線回路基板。
【請求項8】
第1の絶縁層上に、配線パターン、前記配線パターンの一部に設けられる端子部および前記配線パターンから延びるめっき用リード部を含む導体パターンを形成する工程と、
前記端子部を除いて前記配線パターンおよび前記めっき用リード部を覆うように前記第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成する工程と、
前記めっき用リード部を通して前記配線パターンに給電することにより前記配線パターンの一部にめっき層で被覆された端子部を形成する工程と、
前記配線パターンに重なる領域の実効比誘電率よりも前記めっき用リード部に重なる領域の実効比誘電率が小さくなるように前記めっき用リード部に重なる前記第1または第2の絶縁層の一方の部分に開口を形成する工程とを備えた、配線回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記めっき用リード部に重なる前記第1および第2の絶縁層の一方の部分に形成された前記開口内に前記第1または第2の絶縁層よりも低い比誘電率を有する材料を充填する工程をさらに備えた、請求項8記載の配線回路基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−85004(P2013−85004A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−24925(P2013−24925)
【出願日】平成25年2月12日(2013.2.12)
【分割の表示】特願2009−170960(P2009−170960)の分割
【原出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月12日(2013.2.12)
【分割の表示】特願2009−170960(P2009−170960)の分割
【原出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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