説明

配線基板の製造方法

【課題】支持基板の両主表面に形成された複数の配線基板層を有する積層体を、ストレス無く支持基板から剥離させることができる製造方法を提供する。
【解決手段】紫外線を透過可能な2枚の支持基板を、紫外線の照射により接着力が消失または低下する第1接着剤層で貼合せた貼合せ支持基板を形成する工程(S1)と、貼合せ支持基板の両主表面の上に同じ接着剤を塗布して第2接着剤層を形成する工程(S2)と、第2接着剤層の上に導体層と絶縁層とから成る配線基板用の積層体を形成する工程(S4)と、貼合せ支持基板の側面から紫外線を照射する工程(S5)と、貼合せ支持基板を剥離させる工程(S8)とを有する配線基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の電子部品を搭載するために用いられる高密度多層配線基板として、
コア基板の両面に絶縁層と配線導体とを交互に積層して成るビルドアップ配線基板が知られている。
【0003】
しかしながら、このようなビルドアップ配線基板は、コア基板の両面に樹脂から成る絶縁層とめっき膜から成る配線導体とを交互に積層することから、これらの絶縁層と配線導体とを順次多層化して積層体を形成することにより高密度配線が可能であるものの、コア基板として厚みが0.2〜2.0mm程度のガラス−樹脂板を使用することから、配線基板の全体厚みを薄くすることが困難であるという問題があった。
【0004】
配線基板の全体厚みを薄くする方法として、次のように積層体からコア基板(支持基板)を取り去って薄型基板として使用することが提案された(例えば、特許文献1参照)。
(1)紫外線が透過可能な材料で形成された支持基板の一方の主表面上に紫外線の照射により接着力が消失または低下する接着剤層を被着させる。
(2)その後、該接着剤層上に配線導体層と絶縁層とを交互に複数層積層して前記配線導体層と前記絶縁層とから成る配線基板用の積層体を形成する。
(3)しかる後、支持基板の他方の主表面側から紫外線を前記接着剤層に照射してその接着力を消失または低下させた後、該接着剤層から前記積層体を剥離する。
このようにして、紫外線の照射のみで短時間かつ簡単に配線基板用の積層体を分離でき、それにより薄型で高密度な配線基板を効率よく製造することができる。
【0005】
また、特許文献1には、支持基板の両方の主表面にそれぞれ前記接着剤層と前記積層体とを同時に形成した後、支持基板の横方向(側面)から前記接着剤層に紫外線を照射して両主表面の積層体を分離させる方法が紹介されている。この場合、1回の処理により上下面に2個の積層体を形成できるので、前記積層体の生産効率を2倍にすることができる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−150171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法で支持基板の上下面に形成された2個の積層体を側面から紫外線を照射して分離させる場合は、入射した紫外線が接着剤の層に到達する量が少なく、紫外線の透過経路における反射時等の減衰が多い。その場合、接着力の消失または低下が充分行われず、又は、接着力を均一に消失または低下できない場合があるので、紫外線の照射時間及び/又は照射出力を増加させないと、積層体の分離が困難になる場合がある。また、接着剤層への紫外線の照射が不十分で積層体の分離が困難になると、積層体を分離する場合に、積層体にストレスがかかり、積層体にクラック、断線等の不良が発生しやすくなり、生産効率が低下する。
【0008】
例えば、開口数の大きい光学レンズ等により光源からの紫外線を集光させる等により入射角が大きい場合には、支持基板の中を進む入射光束は、支持基板の中の両主表面間で反射を何回も繰り返しながら進み、すなわち反射回数が多い。入射光束は、いずれかの主表面に達すると、そこから接着剤層又はさらにその奥の金属層にまで達してそこで反射する。そして、接着剤層における紫外線の反射率及び透過率は小さいので、反射の度に照度が徐々に弱まり、入射光束は減衰する。つまり、支持基板内での入射角が大きいと反射回数も多くなるので、減衰量が大きくなる。従って、入射角が大きい場合には、支持基板中心部等の、入射側から見て奥側の接着剤層に十分な紫外線を照射できない場合があった。
【0009】
そこで、例えば光学系を追加して入射角を小さくすることで、支持基板内での反射回数を少なくすることが考えられる。入射角が小さい場合で、例えば、支持基板の屈折率よりも接着剤層の屈折率が大きい場合、ほとんどが支持基板と接着剤面との境界面で反射してしまう。この場合の接着剤層には、その接着力を消失するのに十分な紫外線が照射されない。また、支持基板の屈折率よりも接着剤層の屈折率の方が小さい場合には、例えば、入射角が小さくなってブリュースター角を超えると、入射光束が接着剤層との境界面で全反射され、接着剤層に紫外線が到達しなくなる場合がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、上記の課題を解決するために、配線基板の製造方法において、支持基板の両主表面に形成された複数の配線基板層を有する積層体を剥離させる場合に、積層体にストレス無く支持基板から積層体を剥離させることができ、配線基板を効率よく製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様に係る配線基板の製造方法においては、紫外線を透過可能な材料を用いて平板状に形成された2枚の支持基板の対向する各一方の表面の間に、紫外線の照射により接着力が消失または低下する第1接着剤層を形成して貼合せることで貼合せ支持基板を形成する工程と、前記貼合せ支持基板の両主表面の上に、紫外線の照射により接着力が消失または低下する接着剤を塗布して第2接着剤層を形成する工程と、前記第2接着剤層の上に絶縁層と導体層とを交互に複数層積層して前記導体層と前記絶縁層とから成る配線基板用の積層体を形成する工程と、前記貼合せ支持基板の側面から前記第1接着剤層の接着力を消失または低下させる紫外線を照射する工程と、前記貼合せ支持基板の側面から接着力が消失または低下した前記第1接着剤層から前記各支持基板を剥離させる工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
本製造方法では、貼合せ支持基板の側面から接着剤層に紫外線を照射する場合に、接着剤層の両面側から紫外線を照射させることができるので、支持基板側面から入射した紫外線が接着剤層に照射される量を充分な量に増加させることができ、接着力の消失または低下を促進させることができる。これにより、さらに積層体の分離を容易にすることができ、積層体の分離時に積層体にストレスがかからないようにでき、積層体にクラック、断線等の不良が発生しにくくでき、生産効率を向上させることができる。
【0013】
なお、この方法では、前記積層体を最終的に支持基板から分離するので、数mmの厚い支持基板を採用することができ、支持基板側面から入射する紫外線の量を増加させることができる。支持基板の側面からは紫外線の照射量が十分でない場合には、積層体を分離する場合にストレスがかかってしまうが、ストレスに強い厚い2枚の支持基板を予め貼合せることで、照射量を増やすと共に、2枚の支持基板の剥離時のストレスも減らすことができる。
【0014】
本発明の実施態様に係る配線基板の製造方法においては、前記各支持基板を剥離させる工程の後に、前記剥離された各支持基板の剥離面側から前記第2接着剤層の接着力を消失または低下させる紫外線を照射する工程と、前記前記第2接着剤層から前記積層体を剥離させる工程を有するようにしてもよい。
【0015】
本製造方法においては、剥離された各支持基板は、従来の特許文献1に示された方法と同様な方法により、積層体の形成された面の裏面側から紫外線を垂直に照射して短時間で均一に接着剤の接着力を消失または低下させることができ、積層体を剥離する際のストレスを小さくするのに十分な照射を行う事ができる。
【0016】
本発明の実施態様に係る配線基板の製造方法においては、前記2枚の支持基板の各々の少なくとも一方の表面上に、紫外線が拡散する拡散パターンを形成する工程を有し、前記貼合せ支持基板を形成する工程では、前記拡散パターンが形成された面を対向させて各支持基板を貼合せるようにしてもよい。
【0017】
本発明に係る配線基板の製造方法においては、2枚の貼合せ面に該接着剤層の接着力を消失または低下させるのに有効な拡散パターン加工を施す事ができる。従って、支持基板の側面からの入射角が大きい紫外線の照射であっても、貼り合わされた面が光を拡散するので、その面を照射した光は拡散される事で反対側主表面を小さい入射角で照射する。照射角が小さい場合、ほとんど全ての紫外線が支持基板の表面を透過して接着剤層に到達するので、積層体を剥離する際に、ストレスが小さくなるのに十分な照射を行う事ができる。つまり、支持基板の中で反射して進む照射光束が接着剤層に十分に照射されない事態が無いように、各部分における紫外線を拡散して照射ムラを減少させることができる。これにより、剥離時に積層体にかかるストレスを減少させることができ、短時間で接着力を消失または低下させる事が可能となる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様に係る配線基板の製造方法においては、紫外線を透過可能な材料を用いて平板状に形成された支持基板の両方の表面上に、紫外線が拡散する拡散パターンを形成する工程と、前記支持基板の各拡散パターンの上に、紫外線の照射により接着力が消失または低下する接着剤を塗布して第2接着剤層を形成する工程と、前記第2接着剤層の上に絶縁層と導体層とを交互に複数層積層して前記導体層と前記絶縁層とから成る配線基板用の積層体を形成する工程と、前記支持基板の側面から前記第2接着剤層の接着力を消失または低下させる紫外線を照射する工程と、前記支持基板の側面から接着力が消失または低下した前記第2接着剤層から前記積層体を剥離させる工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本製造方法においては、支持基板の両面に拡散パターンを形成することで、支持基板の側面方向から紫外線を照射する場合で、入射角が大きい場合に、支持基板の対向する各表面が光を拡散する。すると、その面を照射した光束は拡散され、一部が主表面を透過し、接着剤層に到達すると共に、残りの反射された光束も対向する面に小さい入射角で照射する。
【0020】
照射角が小さい場合、ほとんど全ての紫外線が支持基板の表面を透過して接着剤層に到達する。従って、その側面から入射した紫外線が接着剤層に到達する量を増加させることができ、支持基板の中で反射して進む照射光束を接着剤層に十分に照射することができ、接着力の消失または低下を促進させることができる。これにより、積層体の分離を容易にすることができ、積層体の分離時に積層体にストレスがかからないようにでき、積層体にクラック、断線等の不良が発生しにくくでき、生産効率を向上させることができる。
【0021】
本発明の実施態様に係る配線基板の製造方法においては、第2接着剤層を形成する工程と、積層体を形成する工程との間に、前記各第2接着剤層の上に後工程で形成される積層体を形成する際の露光光を遮光する金属層を形成する工程と、前記前記積層体を剥離させる工程の後に、前記金属層をエッチングにより除去する工程とを有し、前記積層体を形成する工程では、前記積層体を、前記金属層の上に形成するようにしてもよい。
【0022】
本製造方法においては、積層体を形成する際のフォト・ビア等の露光光を金属層により遮断することができる。
【0023】
本発明の実施態様に係る配線基板の製造方法においては、前記支持基板の表面上に拡散パターンを形成する工程では、前記拡散パターンが、前記支持基板において、前記紫外線が入射される側面側近傍では拡散が少なく、支持基板の中心付近で拡散が大きくなるようにパターン形状が形成されるようにしてもよい。
【0024】
本製造方法においては、拡散パターンを紫外線の照射される側面側では拡散量を少なくし、中心部付近では多いようにすることで、側面近傍と中心部とで紫外線の照射量を均一に近づけることができる。
【0025】
本発明の実施態様に係る配線基板の製造方法においては、前記各剥離させる工程において、剥離させるために鋭角の先端部を有する所定の工具を用いるようにしてもよい。
本製造方法においては、安価な工具により容易に剥離させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施態様の配線基板の製造方法によれば、支持基板側面から入射した紫外線が接着剤層に到達する時間あたりの量を増加させることができ、接着力の消失または低下を促進させ、紫外線の照射時間を短縮させることができる。これにより、さらに積層体の分離を容易にすることができ、積層体の分離時に積層体にストレスがかからないようにできる。従って、本発明の配線基板の製造方法では、積層体にクラック、断線等の不良が発生しにくくでき、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る第1実施形態の配線基板の製造方法のフローチャートである。
【図2】(a)〜(c)は、第1実施形態の配線基板の製造方法の一部工程の例を示す断面図である。
【図3】(a)、(b)は、第1実施形態の配線基板の製造方法の一部工程の例を示す断面図である。
【図4】(a)、(b)は、第1実施形態の配線基板の製造方法の一部工程の例を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)は、第1実施形態の配線基板の製造方法の一部工程の例を示す断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、第1実施形態の配線基板の製造方法の一部工程の例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る第2実施形態の配線基板の製造方法のフローチャートである。
【図8】第2実施形態の配線基板の製造方法の一部工程の例を示す断面図である。
【図9】第2実施形態の配線基板の製造方法の一部工程の例を示す断面図である。
【図10】本発明に係る第3実施形態の配線基板の製造方法のフローチャートである。
【図11】第3実施形態の配線基板の製造方法の一部工程の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の配線基板の製造方法を説明する前に、多層(ビルドアップ)配線基板の製造方法と各用語の定義について簡単に説明する。
<<ビルドアップ配線基板の製造方法>>
ビルドアップ配線基板は、例えば、次に述べる方法により製作される。
<コア基板の構成>
ビルドアップ配線基板のコア基板は、例えば、厚みが0.2〜2.0mm程度のガラス−樹脂板である。配線導体は、例えば、銅箔である。絶縁層は、例えば、厚みが10〜100μm程度の樹脂から成る。配線導体は、例えば、厚みが10〜100μm程度のめっき膜から成る。
【0029】
<コア基板の製造>
まず、ガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた絶縁シートを準備する。
次にこの絶縁シートの両面に銅箔を貼着するとともに絶縁シート中の熱硬化性樹脂を熱硬化させて両面銅張り板を得る。次にこの両面銅張り板にその上下面を貫通するスルーホールを穿孔するとともに前記スルーホール内壁にめっき膜を被着させて上下面の銅箔をスルーホール内のめっき膜で電気的に接続する。
次にスルーホール内を樹脂で充填した後、上下面の銅箔を所定パターンにエッチングすることにより、ガラス−樹脂板の両面に銅箔から成る配線導体を有するコア基板を得る。
【0030】
<コア基板の上下表面上へ絶縁層の形成>
次に、このコア基板の上下面にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂に無機絶縁性フィラーを分散させた樹脂フィルムを貼着するとともに樹脂フィルム中の熱硬化性樹脂を熱硬化させて絶縁層を形成する。
【0031】
<絶縁層表面上へ配線導体の形成>
次に前記絶縁層にレーザ加工によりビアホールを穿孔するとともにビアホール内を含む絶縁層の表面にセミアディティブ法によりめっき膜から成る配線導体を上下面同時に形成する。
【0032】
<絶縁層表面上へ配線導体の形成>
そしてさらに、次層の絶縁層や配線導体の形成を複数回繰り返すことによりガラス−樹脂板の両面に銅箔から成る配線導体を有するコア基板の両面に樹脂から成る絶縁層とめっき膜から成る配線導体とを交互に積層して成るビルドアップ配線基板が製作される。
【0033】
以下、本発明の投影露光装置の実施の形態について、以下に図面を用いて詳細に説明する。
<第1実施形態>
本発明における第1実施形態の配線基板の製造方法ついて、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る第1実施形態の配線基板の製造方法のフローチャートである。図2〜図6は、各々が本実施形態の配線基板の製造方法の工程の一部の例を示す断面図である。
【0034】
図1のフローチャートにおけるステップS1では、まず、図2(a)に示すように、平板状の支持基板1、支持基板2を準備する。支持基板1と支持基板2は、例えば、紫外線を透過可能であるガラス、セラミックス、硬質樹脂等の硬質な透光性の材料から形成される。また、支持基板1と支持基板2は、例えば、その厚みが3〜10mm程度で1辺の長さが300〜1000mm程度の略四角平板である。支持基板1と支持基板2は、その主表面上に後述する配線基板用の積層体10、11を仮支持するための仮支持体として機能する。
【0035】
次に、図2(b)に示す様に支持基板2の一方の主表面に紫外線の照射によりその接着力が消失または低下する接着剤を被着させて接着剤層3を形成する。接着剤層3は、紫外線が照射された場合にラジカルが生成され、光開始剤から紫外線硬化型オリゴマーへのラジカル反応が開始されるタイプの接着剤である。生成されたラジカルがオリゴマーに作用すると、紫外線硬化型オリゴマーが重合し、その結果、接着剤層3の接着力が消失または低下する特性を有する。
【0036】
接着剤層3は、例えば、アクリル系粘着ポリマー(例えば、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸)、紫外線硬化型オリゴマー(例えばウレタンアクリエートオリゴマー)、光開始剤(例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを含有させた接着性樹脂材料から形成される。接着性樹脂材料は、例えば、ペースト状に加工されて支持基板2の主表面に塗布され、その後乾燥される。または、接着性樹脂材料は、フィルム状に加工されて、支持基板2の主表面に貼着されることにより被着される。
【0037】
支持基板2上に接着剤層3が形成されたら、図2(c)に示す様に支持基板1の一方の主表面を接着層3に押し付けて貼合せ、貼合せ支持基板(201)を形成する。このようにしてステップS1では、紫外線を透過可能な材料を用いて平板状に形成された2枚の支持基板1、2の対向する各一方の表面の間に、紫外線の照射により接着力が消失または低下する第1の接着剤層3を形成して貼合せることで貼合せ支持基板201を形成している。
【0038】
次に、図1のフローチャートにおけるステップS2では、図3(a)に示す様に、貼合せ支持基板(201)における各支持基板1と支持基板2のもう一方の主表面に前述と同様の接着剤を用いて接着剤層4及び接着剤層5を積層して形成する。このようにしてステップS2では、貼合せ支持基板201の両主表面の上に、紫外線の照射により接着力が消失または低下する接着剤を塗布して第2の接着剤層4、5を形成している。
【0039】
次に、図1のフローチャートにおけるステップS3では、図3(b)に示す様に、第2の接着剤層4、5の上に、金属層6及び金属層7を形成していく。金属層6及び金属層7は、例えば、後述する配線基板用の積層体10、11における積層されるフォト・ビアを形成するための露光光を遮光する為に形成される。この金属層6及び7は、厚みが3〜20μm程度の金属箔から形成される。また、金属層6及び金属層7は、後述する積層体10、11を接着剤層4、5から剥離する際にその剥離を容易とするための境界層としても機能する。このようにしてステップS3では、積層体10、11を形成する工程の前に、各第2の接着剤層4、5の上に後工程で形成される積層体10、11を形成する際の露光光を遮光する金属層6、7を形成している。この金属層6、7により、積層体10、11を形成する際のフォト・ビア等の露光光を遮断することができる。
【0040】
次に、図1のフローチャートにおけるステップS4では、図4(a)に示す様に、複数の絶縁層と導体層とを交互に複数層積層して積層体10、11を形成する。積層体10、11の形成方法は、特許文献1等にも記載されたように公知であるが、次に簡単に説明する。
【0041】
次に、金属層6、7上にソルダーレジスト層用の第1の絶縁層を積層する。第1の絶縁層は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂にシリカやタルク等の無機物粉末フィラーを30〜70質量%程度分散させた電気絶縁材料から成り、アクリル変性エポキシ樹脂等の感光性樹脂と光重合開始剤等とからなる混合物にシリカやタルク等の無機絶縁性フィラーを含有させた感光性樹脂ペーストを、スクリーン印刷やロールコート法により10〜30μm程度の厚みに塗布する。
【0042】
その後、フォトリソグラフィー技術を採用して所定のパターンに露光・現像した後、それを紫外線硬化および熱硬化させることにより形成される。なお、第1の絶縁層には、本実施形態の製造方法によって得られる配線基板における半導体素子接続パッドを形成するための第1の開口部を形成しておく。
【0043】
次に、第1の絶縁層の表面および第1の開口部内に第1の配線導体層を所定のパターンに形成する。第1の配線導体層は、例えば無電解銅めっき膜および電解銅めっき膜から成り、周知のセミアディティブ法によって形成される。具体的には、先ず、第1の絶縁層の表面を必要に応じて粗化し、次にその表面に無電解銅めっき膜を0.1〜2.0μm程度の厚みに被着させる。
【0044】
次に、前記無電解銅めっき膜の表面に第1の配線導体層に対応した開口部を有するめっきレジスト層を形成する。なお、前記めっきレジスト層は、感光性の樹脂フィルムを前記無電解銅めっき膜上に貼着するとともにその樹脂フィルムにフォトリソグラフィー技術を採用して露光・現像処理を施すことにより前記開口部を有するように形成される。
次に、めっきレジスト層の開口部内に露出する前記無電解銅めっき膜上に電解銅めっき膜を5〜30μm程度の厚みに被着させる。次に、めっきレジスト層を剥離する。最後に、前記無電解銅めっき膜および電解銅めっき膜の露出部を電解銅めっき膜間の無電解銅めっき膜が消失するまで全体的にエッチングして第1の配線導体層を形成する。
【0045】
次に、第1の絶縁層および第1の配線導体層の上に配線導体層間絶縁用の第2の絶縁層を形成する。第2の絶縁層は、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂に無機絶縁性フィラーを分散させた電気絶縁材料から成り、エポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂の未硬化物に無機絶縁性フィラーを分散させた厚みが10〜100μm程度の樹脂フィルムを第1の絶縁層および第1の配線導体層上に貼着するとともにその樹脂フィルム中の熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより形成される。なお、第2の絶縁層には、第1の配線導体層の一部を露出させるビア用の第2の開口部を形成しておく。第2の開口部は、レーザ加工により形成する。または、第2の樹脂層用のフィルムに感光性を持たせておき、それにフォトリソグラフィー技術を採用して露光・現像処理を施すことにより形成する。
【0046】
引き続き、第2の絶縁層上に第2の配線導体層を、その上に第3の絶縁層を、さらにその上に第4の配線導体層、第4の絶縁層、第5の配線導体層、第5の絶縁層を順次形成して配線基板用の積層体10、11を形成する。なお、第2〜第5の配線導体層は、第1の配線導体層と同様の無電解銅めっき膜および電解銅めっき膜から成り、第1の配線導体層と同様のセミアディティブ法によって形成される。また、第3および第4の絶縁層は、第2の絶縁層と同様の電気絶縁材料から成り、第2の絶縁層と同様の方法により形成される。さらに、第5の絶縁層は、第1の絶縁層と同様の電気絶縁材料から成り、第1の絶縁層と同様の方法により形成される。以上の工程にて積層体10、11が両面に順次形成されていく。
【0047】
このようにしてステップS4では、貼合せ支持基板201の両主表面上の第2接着剤層4、5上に形成された金属層6及び金属層7の上に、絶縁層と導体層とを交互に複数層積層することにより、導体層と絶縁層とから成る配線基板用の積層体10、11を形成している。積層体10、11は、金属層6、7の上に形成される。なお、図4(a)は、貼合せ支持基板201の両主表面上の金属層6及び金属層7の上への、積層体10、11の積層が終了した時の状態を示す。
【0048】
次に、図1のフローチャートにおけるステップS5では、図4(b)に示す様に、貼合せ支持基板201(支持基板1、2)の側面から第1接着剤層3の接着力を消失または低下させる紫外線を照射光31として照射する。照射光31は、図に示した様に、紫外線を絞り込んで、広い角度方向から貼合せ支持基板201の側面を照射する。その場合の紫外線は、透過光53、73、93、103、123等となって透明な支持基板1、2を透過しながら、接着剤層3に照射される。透過光53は、接着剤層3の照射部63に到達すると、一部は反射して透過光73になり、残りは接着剤層3を透過して透過光103になる。透過光73は、接着剤層4の照射部83に到達すると、金属層6で反射されて透過光93になる。透過光103は、接着剤層5の照射部113に到達すると、金属層7で反射されて透過光123になる。透過光93と透過光123は再び接着剤層3に照射される。このように接着剤層3は、裏面からも紫外線が照射される為、接着剤層4、5よりも早い段階で接着力が消失する。
【0049】
紫外線は、接着剤層3の接着力を消失または低下させるまでの時間で照射される。より具体的には、紫外線は、接着剤層3の接着力が、貼合せ支持基板201の支持基板1と2を剥離可能な程度まで消失した時点で照射を止められる。このようにしてステップS5では、貼合せ支持基板201の側面から紫外線を照射し、貼合せ支持基板201の支持基板1と2間の接着力を消失または低下させ、剥離を可能にする。
【0050】
これにより、貼合せ支持基板201の側面から接着剤層3に紫外線の照射光31を照射する場合に透過光93と123のように、接着剤層3の両面側から紫外線を照射させることができるので、支持基板1、2の側面から入射した紫外線が接着剤層3に照射される量を充分な量に増加させることができ、接着力の消失または低下を促進させることができる。
【0051】
次に、図1のフローチャートにおけるステップS6では、図5(a)、(b)に示す様に、貼合せ支持基板201の側面から接着力が消失または低下した第1接着剤層3に対して鋭角の先端部を有する工具41を用いて各支持基板1、2を剥離させる。より詳しくは、先端が鋭角の工具41を用いて、その鋭角の先端を接着剤層3の側面に当て、接着力が消失また低下した接着剤層3に平行に押圧することで支持基板1と支持基板2を剥離していく。このとき、接着剤層3は紫外線の照射によりその接着力が消失または低下しているので、支持基板1は支持基板2から短時間の間に容易に剥離することができる。また、その他にも、2つの積層体をバキュームにより吸着し引き剥がす方法や、側面から接着力の低下した接着層に空気を送り込んで剥がす方法等が考えられる。このようにしてステップS6では、貼合せ支持基板201における接着剤層3の側面から鋭角の工具41を用いて、支持基板1と2を剥離する。なお、支持基板1、2は元々厚く、接着剤層3の接着力が完全に消失していなくても、この様な工具を用いた剥離が可能である。従って、この作業で、積層体10、11がダメージを受ける事は無い。
【0052】
次に、図1のフローチャートにおけるステップS7以降では、別の剥離工程が実施される。なお、剥離した支持基板1、2に対しては同様の処理を実施するので、以下の説明では、代表例として支持基板1(と接着剤層4、金属層6、積層体10)の場合のみについて説明する。支持基板2(と接着剤層5、金属層7、積層体11)については、支持基板1の説明中の符号を読み替えることで対応する。
【0053】
まずステップS7では、図6(a)に示す様に、支持基板1、2の裏面側(剥離面:積層体10、11が形成されていない側)から支持基板1、2の主表面に垂直に紫外線の照射光32を照射する。この方法では強い紫外線を接着剤層4に当てる事ができるので、接着剤層4の接着力を短時間で消失させる事ができる。このようにしてステップS7では、剥離された支持基板1、2の剥離面側から紫外線を照射する。
【0054】
次にステップS8では、図6(b)に示す様に、図6(b)に示す様に、ステップS6と同様に、工具41を接着力が消失また低下した第2の接着剤層4に用いて支持基板1から金属層6及び積層体10を剥離させる。その際に接着剤層4に粘性等が残る場合は、加熱を併用する事で、支持基板1から金属層6及び積層体10を図6(b)に示す様に簡単に剥離させる事ができる。尚、この場合は、金属層6を強い力で支持基板1から引き離す必要がないので、積層体10がダメージを受ける事は無い。このようにしてステップS8では、工具41を用いて支持基板1から金属層6及び積層体10を剥離させている。このとき、接着剤層2は紫外線の照射によりその接着力が消失または低下しているので、配線基板用の積層体10を接着剤層2から短時間の間に容易に剥離することができる。
【0055】
次にステップS9では、図6(c)に示す様に、エッチングにより、積層体10の裏面から金属層6を除去する。金属層6はその厚みが3〜20μm程度と薄いので、短時間でエッチング除去することができる。これにより、コアレスの配線基板を製造する事ができる。このようにしてステップS9では、金属層6をエッチングにより除去する。
【0056】
従って、本実施態様に係る配線基板の製造方法においては、各支持基板1、2を剥離させる工程(S7)の後に、剥離された各支持基板1、2の剥離面側から第2接着剤層4、5の接着力を消失または低下させる紫外線を照射する工程(S8)と、第2接着剤層4、5に対して鋭角の先端部を有する工具を用いて積層体10、11を剥離させる工程(S9)を有する。ステップS7〜S9の製造方法は、従来の特許文献1に示された方法と同様な方法であり、剥離された各支持基板1、2は、積層体10、11の形成された面の裏面側から紫外線を垂直に照射することにより、短時間で均一に接着剤の接着力を消失または低下させることができる。また、紫外線を垂直に照射できることにより、積層体10、11を剥離する際のストレスを小さくするのに十分な照射を行う事ができる。
【0057】
これにより支持基板1、2を分離できるので、剥離面側から第2接着剤層4、5の接着力を消失または低下させる紫外線を照射できることから、さらに積層体の分離を容易にすることができる。積層体の分離時に積層体にストレスがかからないようにでき、積層体にクラック、断線等の不良が発生しにくくでき、生産効率を向上させることができる。
【0058】
なお、この方法では、前記積層体を最終的に支持基板から分離するので、数mmの厚い支持基板を採用することができ、支持基板側面から入射する紫外線の量を増加させることができる。支持基板の側面からの紫外線の照射量が十分でない場合には、積層体を分離する場合にストレスがかかってしまうが、ストレスに強い厚い2枚の支持基板を予め貼合せることで、照射量を増やすと共に、2枚の支持基板の剥離時のストレスも減らすことができる。
【0059】
このように本実施形態の配線基板の製造方法によれば、支持基板1、2の側面から入射した紫外線が接着剤層3に到達する時間あたりの量を増加させることができ、接着力の消失または低下を促進させ、紫外線の照射時間を短縮させることができる。支持基板1、2が分離できることで、支持基板1、2の裏面側から垂直に紫外線を当てることができるようになり、さらに積層体10、11の分離を容易にすることができ、積層体10、11の分離時に積層体10、11にストレスがかからないようにできる。従って、本発明の配線基板の製造方法では、積層体10、11にクラック、断線等の不良が発生しにくくでき、生産効率を向上させることができる。
【0060】
<第2実施形態>
本発明における第2実施形態の配線基板の製造方法ついて、図面を参照して詳細に説明する。図7は、本発明に係る第2実施形態の配線基板の製造方法のフローチャートである。図8、図9は、各々が本実施形態の配線基板の製造方法の工程の一部の例を示す断面図である。なお、本発明の第2実施形態では、第1実施形態に対して、図7のフローチャートにおける最初のステップS11が追加されているのみである。本発明の第2実施形態では、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態と同様な構成及び効果については記載を省略する。
【0061】
第2実施形態について説明する前に、まず、第1実施形態の紫外線の照明光31の側面への入射角度を大きくした場合と小さくした場合について、図8を用いて紫外線の照明光33の場合で説明する。
図8に示した例の場合は、照射光33の入射角度が大きいと、支持基板内での反射回数が多くなる。すると、金属層6、7での反射率が小さい場合には、照度が徐々に弱まり、支持基板中心まで光が到達しない可能性が出てくる。
【0062】
そこで照射光33の入射角を小さくすると、支持基板1、2内における反射回数を少なくすることができる。しかし、支持基板1、2の屈折率よりも接着剤層14、4、5の屈折率の方が小さい場合には、小さくなった照射光33の入射角がブリュースター角を超える事で全反射となる。その場合、紫外線が接着剤層14、4、5に到達しなくなってしまう。例えば、図8に示したように、透過光53は、接着剤層3の照射部63に到達すると、全反射して透過光73になる。
【0063】
また、支持基板1、2の屈折率よりも接着剤層14、4、5の屈折率の方が大きい場合も、紫外線の照射光33は殆どが支持基板1、2における接着剤層14、4、5との境界面で反射してしまい、接着剤層14、4、5には入射しない。従って、支持基板1、2の屈折率よりも接着剤層14、4、5の屈折率の方が大きくても、接着剤層14、4、5の接着力を消失するのに十分な照射を行なうことができない。そこで第2実施形態としては、図9(a)に示したように、少なくとも一方が拡散面21、22として処理してある支持基板12、13を用いた。
【0064】
図7のフローチャートにおけるステップS11では、2枚の支持基板1、2の各々の少なくとも一方の表面上に、紫外線が拡散する拡散パターンを形成する。拡散パターンは、例えば、支持基板1、2において、紫外線が入射される側面側近傍では拡散が少なく、支持基板1、2の中心付近では拡散が大きくなるようにパターン形状が形成される。
【0065】
そして、次のステップS12では、拡散パターンが形成された面を対向させて各支持基板を貼合せるようにして貼合せ支持基板201を形成する。ここでは、支持基板12、13が第1実施形態と同様に接着剤層14により貼り合わされる。
【0066】
図7のフローチャートにおけるステップS16では、支持基板12、13の側面から入射角の小さい確度で入射した紫外線は、接着剤層14に達する前に、紫外線を拡散可能に表面処理された拡散面21、22に達する。そして、図9(a)に示したように、透過光54は、支持基板12の拡散面21における照射部64に到達すると、一部は反射して透過光74になり、残りは接着剤層14を透過した透過光74になる。つまり、紫外線の照射光34は拡散面21、22で拡散され、小さい角度で接着剤層14、4、5を照射する。小さい角度で照射すれば、屈折率に関係なく、紫外線にて接着剤層14、4、5を照射する事が可能となる。この方法によれば、支持基板12、13中心まで光を到達させる事が可能になる。図7のフローチャートにおける他のステップは、第1実施形態と同様であるので記載を省略する。
【0067】
また、この方法では十分な紫外線を接着剤層14、4、5に当てる事ができるので、接着剤層14にて剥離した後に、主表面に改めて紫外線を垂直に当てなくても良い。即ち、接着剤層14は紫外線の照射により接着力が消失または低下する接着剤では無くても良い。
【0068】
また、接着剤層14、4、5の接着力が完全に消失するまで支持基板の側面から紫外線照射を行い、金属層6、7及び積層体10、11を図9(b)に示したようにダメージ無く直接剥がす事も可能になる。
【0069】
更に拡散面21、22による拡散については、支持基板12、13の側面付近では紫外線も強いので、拡散が少なく、紫外線が弱まる中心付近で拡散が大きくなる様な拡散パターン形状とすることで、接着剤層14のみならず接着剤層4と5に対しても均一な紫外線を照射する事が可能となる。
【0070】
この場合には、拡散パターンを紫外線の照射される支持基板12、13の側面側では拡散量を少なくし、中心部付近では多いようにすることで、側面近傍と中心部とで紫外線の照射量を均一に近づけることができる。
【0071】
このように本実施形態の配線基板の製造方法によっても、支持基板1、2側の面から入射した紫外線が接着剤層3に到達する時間あたりの量を増加させることができ、接着力の消失または低下を促進させ、紫外線の照射時間を短縮させることができ、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0072】
<第3実施形態>
【0073】
上記した第2実施形態では、拡散面21、22を支持基板12、13の接着剤層14側の主表面に設けているが、例えば、拡散面21、22を支持基板12、13の積層体10、11側の主表面に設けても、同様に紫外線の拡散効果を得ることができる。その場合、紫外線の照射により接着力が消失または低下する接着剤層14は無くても、紫外線を拡散させることで、支持基板12、13の中心部まで照射させることができる場合がある。以下に拡散面を1枚の支持基板の積層体側の主表面に設けた場合を第3実施形態として説明する。
【0074】
本発明における第3実施形態の配線基板の製造方法ついて、図面を参照して詳細に説明する。図10は、本発明に係る第3実施形態の配線基板の製造方法のフローチャートである。図11は、本実施形態の配線基板の製造方法の工程の一部の例を示す断面図である。なお、本発明の第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態との相違点について説明し、第1実施形態又は第2実施形態と同様な構成及び効果については記載を省略する。
【0075】
図10のフローチャートにおけるステップS21では、支持基板15の両主表面が拡散面となるように表面上に、紫外線が拡散する拡散パターンを形成して拡散面23、24とする。次に、拡散パターンが形成されて拡散面23、24となった支持基板15の両主表面上に第2接着剤層4及び接着剤層5を積層する(S22)。その後、第2接着剤層4及び接着剤層5の上に、第1実施形態のステップ3、4と同様な金属層6、7を同様に形成し(S23)、更に同様な積層体10、11を同様に形成し(S24)、支持基板15の側面から、第2実施形態と同様に入射角の小さい紫外線の照射光35を照射する(S25)。
【0076】
紫外線が支持基板15の両主表面に到達すると、照射光35は、拡散面23、24により拡散され、その殆どは反射するが、一部の光束は拡散反射され、反対側の拡散面23、24を小さい角度で照明する。また一部の光束は拡散され、同じ拡散面23、24を透過して接着剤層4、5を照射する。支持基板15の側面から紫外線照射は、接着剤層4、5の接着力が完全に消失するまで行われる。より具体的には図11(a)に示したように、透過光55は、支持基板15の拡散面24における照射部65に到達すると、金属層7で反射して透過光75になり、反対側の拡散面23、24と接着剤層4、5を照射する。この様にして、到達したのと同じ拡散面23、24を透過した光と、小さい角度で反対側の拡散面23、24を照射した光の透過光は、接着剤層4、5に、その接着力を消失又は低下させるのに十分な照射量を与えることができる。
【0077】
その後は、第1及び第2実施形態とは異なり支持基板15は貼り合わせていないので、2枚の支持基板を剥離させる処理は実施せず、再度の紫外線照射も実施しないで、第2接着剤層を剥離し(S26)、金属層を除去する(S27)。上記紫外線照射により拡散面23、24の接着力は無くなっていることから、図11(b)に示したように金属層6、7及び積層体10、11をダメージ無く直接剥がす事も可能になる。
【0078】
なお、拡散パターンについては、第2実施形態と同様に本実施形態においても、支持基板15の側面付近では紫外線も強く、中心付近では紫外線が弱まるので、側面付近では紫外線の拡散が少なく、中心付近で拡散が大きくなる様な拡散パターン形状とする。この方法で均一な紫外線を接着剤層4、5に照射する事が可能となる。
【0079】
従って、紫外線を透過可能な材料を用いて平板状に形成された支持基板15の両方の表面上に、紫外線が拡散する拡散パターンを形成する工程(S21)と、支持基板15の各拡散パターンの上に、紫外線の照射により接着力が消失または低下する接着剤を塗布して第2接着剤層4、5を形成する工程(S22)と、各第2の接着剤層4、5の上に後工程で形成される積層体10、11を形成する際の露光光を遮光する金属層6、7を形成する工程(S23)と、第2接着剤層4、5の上に絶縁層と導体層とを交互に複数層積層して導体層と絶縁層とから成る配線基板用の積層体10、11、を形成する工程(S24)と、支持基板15の側面から第2接着剤層4、5の接着力を消失または低下させる紫外線を照射する工程(S25)と、支持基板15の側面から接着力が消失または低下した第2接着剤層4、5に対して鋭角の先端部を有する工具を用いて積層体10、11を剥離させる工程(S26)とを有する。
【0080】
本製造方法においては、支持基板15の両面に拡散パターンを形成することで、支持基板15の側面方向から紫外線を照射する場合で、入射角が大きい場合に、支持基板15の対向する各表面が光を拡散する。すると、その面を照射した光束は拡散され、一部が主表面を透過し、接着剤層4、5に到達すると共に、残りの反射された光束も対向する面に小さい入射角で照射する。
【0081】
照射角が小さい場合、ほとんど全ての紫外線が支持基板15の表面を透過して接着剤層4、5に到達する。従って、その側面から入射した紫外線が接着剤層4、5に到達する量を増加させることができ、支持基板15の中で反射して進む照射光束を接着剤層4、5に十分に照射することができ、接着力の消失または低下を促進させることができる。これにより、積層体10、11の分離を容易にすることができ、積層体10、11の分離時に積層体10、11にストレスがかからないようにでき、積層体10、11にクラック、断線等の不良が発生しにくくでき、生産効率を向上させることができる。
【0082】
なお、第1及び第2実施形態では支持基板1、2の一方の主表面に配線基板用の積層体10を形成した場合について説明したが、第3実施形態の図11に示すように、支持基板15の両方の主表面に配線基板用の積層体10を形成してもよい。この場合、支持基板15の一方の主表面のみに積層体10を形成する場合と比較して積層体10を形成する効率を約2倍に高めることができる。なお、この場合、支持基板15の側面から紫外線を照射することにより接着剤層2の接着力を消失または低下させる。
【0083】
このように本発明の各実施形態の配線基板の製造方法によれば、支持基板の側面から入射した紫外線が接着剤層に到達する時間あたりの量を増加させることができ、接着力の消失または低下を促進させ、紫外線の照射時間を短縮させることができる。また、それによって積層体の分離を容易にすることができ、積層体の分離時に積層体にストレスがかからないようにできる。さらに、本発明の配線基板の製造方法では、積層体にクラック、断線等の不良が発生しにくくでき、生産効率を向上させることができ、薄型で高密度な配線基板を効率よく製造することができる。なお、本発明は、上述の実施の形態例に限定されるものではなく、の本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1、2 支持基板、
3〜5 接着剤層、
6、7 金属層、
10、11 積層体、
21〜24 拡散面、
31〜35 照射光、
41 工具、
53〜55、73〜75、93、103、123 透過光、
63〜65、83、113 照射部
201 貼合せ支持基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を透過可能な材料を用いて平板状に形成された2枚の支持基板の対向する各一方の表面の間に、紫外線の照射により接着力が消失または低下する第1接着剤層を形成して貼合せることで貼合せ支持基板を形成する工程と、
前記貼合せ支持基板の両主表面の上に、紫外線の照射により接着力が消失または低下する接着剤を塗布して第2接着剤層を形成する工程と、
前記第2接着剤層の上に絶縁層と導体層とを交互に複数層積層して前記導体層と前記絶縁層とから成る配線基板用の積層体を形成する工程と、
前記貼合せ支持基板の側面から前記第1接着剤層の接着力を消失または低下させる紫外線を照射する工程と、
前記貼合せ支持基板の側面から接着力が消失または低下した前記第1接着剤層から前記各支持基板を剥離させる工程と、
を有する配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記各支持基板を剥離させる工程の後に、
前記剥離された各支持基板の剥離面側から前記第2接着剤層の接着力を消失または低下させる紫外線を照射する工程と、
前記前記第2接着剤層から前記積層体を剥離させる工程を
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記2枚の支持基板の各々の少なくとも一方の表面上に、紫外線が拡散する拡散パターンを形成する工程
を有し、
前記貼合せ支持基板を形成する工程では、前記拡散パターンが形成された面を対向させて各支持基板を貼合せる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
紫外線を透過可能な材料を用いて平板状に形成された支持基板の両方の表面上に、紫外線が拡散する拡散パターンを形成する工程と、
前記支持基板の各拡散パターンの上に、紫外線の照射により接着力が消失または低下する接着剤を塗布して第2接着剤層を形成する工程と、
前記第2接着剤層の上に絶縁層と導体層とを交互に複数層積層して前記導体層と前記絶縁層とから成る配線基板用の積層体を形成する工程と、
前記支持基板の側面から前記第2接着剤層の接着力を消失または低下させる紫外線を照射する工程と、
前記支持基板の側面から接着力が消失または低下した前記第2接着剤層から前記積層体を剥離させる工程と
を有する配線基板の製造方法。
【請求項5】
第2接着剤層を形成する工程と、積層体を形成する工程との間に、前記各第2接着剤層の上に後工程で形成される積層体を形成する際の露光光を遮光する金属層を形成する工程と、
前記前記積層体を剥離させる工程の後に、
前記金属層をエッチングにより除去する工程と
を有し、
前記積層体を形成する工程では、前記積層体を、前記金属層の上に形成する
ことを特徴とする請求項2又は4に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記支持基板の表面上に拡散パターンを形成する工程では、前記拡散パターンが、前記支持基板において、前記紫外線が入射される側面側近傍では拡散が少なく、支持基板の中心付近で拡散が大きくなるようにパターン形状が形成される
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記各剥離させる工程において、剥離させるために鋭角の先端部を有する所定の工具を用いる
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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