説明

配線基板及びその製造方法

【課題】簡易かつ環境への負荷の小さい配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】ノズル3の下方にプラスチック基板1を配置すると共に、これらノズル3とプラスチック基板1との間に、プラスチック基板1を覆うようにしてマスク2を配置する。このマスク2には、所望の配線パターンと同一パターンのスリットが設けられている。図1の矢印A方向にノズル3を移動させ、ノズル3から導電性粉末6を吹き付ける。吹き付けられた導電性粉末6は、マスク2のスリットを通ってプラスチック基板1の表面に衝突し、衝突エネルギーによって基板1上に固着される。このようにして、基板1の表面に配線パターンが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック基板上に配線パターンが形成されてなる配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック基板上に配線パターンが形成されてなる配線基板を製造する方法として、種々のものが知られている。
I. 例えば、導電性微粒子分散液を、インクジェットヘッドからプラスチック基板に向けて噴霧することにより、配線パターンを形成することが行われている。
II. また、特開2005−215616号には、フォトリソグラフィ法によってプラスチック基板上に配線を形成することが記載されている。同号公報では、プラスチック基板上に金属膜を蒸着させた金属蒸着基板において、この金属膜の表面全面にフォトレジストを塗布した後、露光処理及び現像処理を施してマスクを形成し、次いでこのマスクを介してエッチング処理を施すことにより、金属膜パターンを形成させる。
【特許文献1】特開2005−215616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インクジェット法によって配線基板を製造する場合、導電性微粒子分散液には有機溶剤や界面活性剤等が含まれるため、環境への負荷が高いという問題がある。また、厚膜の微細パターンを形成させるには長時間を要し、生産効率に乏しいという問題がある。
【0004】
また、特開2005−215616号のようにフォトリソグラフィ法によって配線基板を製造する場合、製造工程が複雑であるため製造コストが高くつくと共に、レジスト材料及びその洗浄液を使用するため、環境への負荷が高いという問題がある。
【0005】
本発明は、配線基板を簡易かつ環境への負荷を小さくして製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)の配線基板は、プラスチック基板上に配線パターンが形成されてなる配線基板において、該配線パターンは、導電性粉末をノズルから該プラスチック基板の表面に向けて吹き付け、該プラスチック基板の表面に固着させたものであることを特徴とする。
【0007】
請求項2の配線基板は、請求項1において、前記導電性粉末が金属粉末であることを特徴とする。
【0008】
請求項3の配線基板は、請求項1又は2において、前記プラスチック基板の材質が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリイミドであることを特徴とする。
【0009】
本発明(請求項4)の配線基板の製造方法は、プラスチック基板上に配線パターンが形成されてなる配線基板を製造する方法において、導電性粉末をノズルから該プラスチック基板の表面に向けて吹き付け、該プラスチック基板の表面に固着させる吹付工程を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5の配線基板の製造方法は、請求項4において、前記吹付工程において、スリットを有するマスクで前記プラスチック基板の表面を覆い、該マスクの上から前記導電性粉末を吹き付けて、該スリットと同一形状の配線パターンを該表面に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配線基板及びその製造方法では、導電性粉末をノズルからプラスチック基板の表面に向けて吹き付け、該プラスチック基板の表面に該導電性粉末を固着させている。このように、導電性粉末を、インクジェット法のように有機溶剤等に分散させることなく基板に吹き付けるため、簡易かつ環境への負荷を小さくして配線基板を製造することができると共に、厚みの大きい配線パターンを容易に製造することができる。
【0012】
この導電性粉末としては、金属粉末、特にCu粉末、Ag粉末、Ni粉末及びPd粉末よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
このプラスチック基板の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリイミドが好ましい。
【0014】
本発明において、スリットを有するマスクでプラスチック基板の表面を覆い、該マスクの上から導電性粉末を吹き付けて、該スリットと同一形状の配線パターンを該表面に形成することが好ましい。この場合、高効率にて配線基板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は実施の形態に係る配線基板及びその製造方法を説明する模式図である。
【0017】
図1の通り、ノズル3の上端が、ホース4を介して、導電性粉末6を貯留する貯留容器5に接続されている。この貯留容器5には、高圧ガス用配管7を介して空気等の高圧ガスを供給可能となっている。
【0018】
このノズル3の下端部3aには、複数個の噴射孔が設けられている。このノズル3は図1の矢印A方向及びその逆方向に移動可能となっている。
【0019】
上記の導電性粉末6としては、Cu粉末、Ag粉末、Ni粉末及びPd粉末よりなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0020】
この導電性粉末6は、平均粒径3〜30μm特に5〜10μmであることが好ましい。30μm以下であると、配線パターンの細線化を図ることができる。3μm以上であると、ノズル3やホース4などに導電性粉末6が詰まることが防止されると共に、衝突エネルギーを大きくして、プラスチック基板1上に強固に固着させることができる。ここで、平均粒径とは、ふるい分け法による体積平均径のことをいう。
【0021】
このように構成された装置を用いて配線基板を製造する際には、該ノズル3の下方にプラスチック基板1を配置すると共に、これらノズル3とプラスチック基板1との間に、プラスチック基板1を覆うようにしてマスク2を配置する。図示は省略するが、このマスク2には、所望の配線パターンと同一パターンのスリットが設けられている。
【0022】
このプラスチック基板1の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)等が用いられる。
【0023】
このマスク2の材質としては、例えば、SiC、Al、Yなどの各種セラミックス、更には、チタン、タングステンなどの各種高硬度金属等が挙げられる。
【0024】
このマスク2の厚みは、100〜500μm特に200〜300μmであることが好ましい。100μm以上であると、導電性粉末6の衝突等の衝撃によって損傷することが防止される。500μm以下であると、導電性粉末6の通過率が向上する。
【0025】
このマスク2に設けられたスリットの幅は、10〜100μm、特に10〜30μmであることが好ましい。100μm以下であると、配線パターンの細線化が図られる。10μm以上であると、得られた配線パターンの断線が防止される。
【0026】
次いで、高圧ガス用配管7から容器5内に高圧ガスを供給すると共に、図1の矢印A方向にノズル3を移動させる。これにより、該容器5内の導電性粉末6は、ホース4を介してノズル3まで供給され、高圧ガスと共に噴射孔から吹き付けられる。吹き付けられた導電性粉末6は、マスク2のスリットを通ってプラスチック基板1の表面に衝突し、衝突エネルギーによって基板1上に固着される。
【0027】
このようにして、プラスチック基板1の表面に、マスク2のスリットパターンと同一パターンの配線パターンが形成されてなる配線基板が得られる。
【0028】
この配線パターンの幅は、10〜40μm、特に10〜30μmであることが好ましい。30μm以下であると、配線パターンの細線化が図られる。10μm以上であると、断線が防止される。
【0029】
この配線パターンの厚みは、2μm以上、特に5〜20μmであることが好ましい。2μm以上であると、断線が防止されると共に、十分に電流を流すことができる。
【0030】
本実施の形態に係る配線基板の製造方法によると、導電性粉末6を、インクジェット法のように有機溶剤等に分散させることなく基板1に吹き付けるため、簡易かつ環境への負荷を小さくして配線基板を製造することができると共に、厚みの大きい配線パターンを容易に製造することができる。
【0031】
また、マスク2の上から導電性粉末6を吹き付けるため、マスク2を用いずに配線パターンを1本ずつ形成させる場合と比べ、高効率にて配線基板を製造することができる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0033】
実施例1
基板、マスク及び導電性粉末として、以下のものを用意した。
【0034】
基板:ポリエステル基板(厚み125μm)
マスク:SiC製マスク
スリット幅30μm、隣接するスリット同士の間のスペース30μm
導電性粉末:Cu粉末(平均粒径1μm)
【0035】
図1の装置を用いて配線基板を製造した。具体的には、ノズルの下方に基板を配置し、これらノズルと基板の間にマスクを配置した。そして、ノズルを矢印Aの方向に移動させながらノズルから導電性粒子を吹き付けた。
【0036】
その結果、基板上に、厚み3μm、幅30μm、隣接する線同士の間のスペース30μmの格子状配線パターンを形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施の形態に係る配線基板及びその製造方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0038】
1 基板
2 マスク
3 ノズル
3a 下端
4 ホース
5 容器
6 導電性粉末
7 高圧ガス用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基板上に配線パターンが形成されてなる配線基板において、
該配線パターンは、導電性粉末をノズルから該プラスチック基板の表面に向けて吹き付け、該プラスチック基板の表面に固着させたものであることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1において、前記導電性粉末が金属粉末であることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記プラスチック基板の材質が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリイミドであることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
プラスチック基板上に配線パターンが形成されてなる配線基板を製造する方法において、
導電性粉末をノズルから該プラスチック基板の表面に向けて吹き付け、該プラスチック基板の表面に固着させる吹付工程を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、前記吹付工程において、スリットを有するマスクで前記プラスチック基板の表面を覆い、該マスクの上から前記導電性粉末を吹き付けて、該スリットと同一形状の配線パターンを該表面に形成することを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−164343(P2009−164343A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−622(P2008−622)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】