説明

配線構造

【課題】ノイズや不要輻射を抑えることができ、テレビ等の薄型化を妨げることがなく、ケーブル保持部品を使用しないでフレキシブルケーブルを保持、固定することができる配線構造を提供する。
【解決手段】板金5にサブ基板4を浮かせた状態で支持させ、板金5をメイン基板3の上に隙間をあけて固定し、メイン基板3とサブ基板4を接続する電源ラインのフレキシブルケーブル7と信号ラインのフレキシブルケーブル8を交差させて引回し、双方のフレキシブルケーブル7,8の交差部分7a,8aに板金5の一部を挟み込んだ配線構造とする。双方のフレキシブルケーブルの交差部分7a,8aを板金5の一部でシールドしてノイズを抑え、交差部分7a,8aの間隔を板金5の厚さに保って薄型化を妨げないようにする。板金5に形成した開口部5c,5c,5d,5dにフレキシブルケーブル7,8を通して保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイン基板とサブ基板を接続する電源ラインのフレキシブルケーブルと信号ラインのフレキシブルケーブルを交差させて引き回す配線構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
カードを挿入してスクランブルを解除するデジタルテレビモジュール(以下、DTVモジュールと記す)の付いた薄型のテレビ等においては、その内部にメインのアナログ基板を設け、このメイン基板の上にサブのDTVモジュール基板を板金に支持させて取付けている。このようにメイン基板の上にサブ基板を取付けた薄型テレビ等は、双方の基板を接続する電源ラインのフレキシブルケーブルと信号ラインのフレキシブルケーブルを交差させて引き回す配線構造を採用する場合が多い。
【0003】
一方、フレキシブルフラットケーブルとチューナーとの間にスペーサを介在させて両者を一定の距離以上に保ち、相互間のノイズの侵入を防止するようにした携帯テレビジョン受像機が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、チューナーユニットとリニアユニット及びシャーシユニットを一つのフレキシブルケーブルで接続し、電源回路ユニットと表示ユニット及びリニアユニットを他の一つのフレキシブルケーブルで接続するようにしたポケッタブルテレビジョン受像機(特許文献2)や、シャーシを独立した複数のシャーシとして構成し、回路基板を複数のブロック基板に分割して複数のシャーシにそれぞれ取付けることによって、熱膨張率差で生じる位置関係の変化に起因するフレキシブルケーブルへの負担を軽減させるようにしたフラット表示装置(特許文献3)も提案されている。
【特許文献1】特開2000−175127号公報
【特許文献2】特開昭62−10976号公報
【特許文献3】特開2006−195177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにメイン基板とサブ基板を接続する電源ラインのフレキシブルケーブルと信号ラインのフレキシブルケーブルを交差させて引き回す配線構造では、電源ラインのフレキシブルケーブルから信号ラインのフレキシブルケーブルへの誘起が生じ、ノイズが入って信号が劣化するという問題があり、電源ラインのフレキシブルケーブルからの不要輻射も抑えられないという問題があった。
【0006】
また、上記の配線構造では、ケーブル保持部品を用いて双方のフレキシブルケーブルを保持、固定することが必要となるため、部品点数や組立工数が増加し、製造コストの増大を招くという問題もあった。
【0007】
上記の問題は、特許文献2,3の技術によって解決されるものではないが、そのうちノイズの問題については、特許文献1におけるノイズ防止技術を応用して双方のフレキシブルケーブルの交差部分にスペーサを介在させ、交差部分の間隔を一定以上に保つようにすると、一応、解決することは可能となる。しかしながら、双方のフレキシブルケーブルの交差部分を一定以上の間隔に保っても、交差部分がシールドされるわけではないので、ノイズ防止効果は充分と言い難く、かと言って交差部分の間隔を大きく広げると、テレビの薄型化の妨げになるという問題があり、また、スペーサを用いるので、部品点数が増え、コストの増加を招くという問題もある。
【0008】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、ノイズや不要輻射を抑えることができ、テレビ等の薄型化を妨げることがなく、ケーブル保持部品を使用しないでフレキシブルケーブルを保持、固定することができる配線構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る配線構造は、板金にサブ基板を浮かせた状態で支持させ、この板金をメイン基板の上に隙間をあけて固定し、メイン基板とサブ基板を接続する電源ラインのフレキシブルケーブルと信号ラインのフレキシブルケーブルを交差させて引回した配線構造において、上記電源ラインのフレキシブルケーブルと上記信号ラインのフレキシブルケーブルとの交差部分に上記板金の一部を挟み込んだことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の配線構造においては、上記板金に、対向する位置関係にある一組の開口部と、この開口部の対向方向と交差する方向に対向する位置関係にある他の一組の開口部を形成し、一組の開口部と他の一組の開口部に上記電源ラインのフレキシブルケーブルと上記信号ラインのフレキシブルケーブルを挿通して、双方のフレキシブルケーブルの交差部分に上記板金の一部を挟み込むことが好ましい。
【0011】
そして、上記電源ラインのフレキシブルケーブルの交差部分が上記板金の上側となるように、且つ、上記信号ラインのフレキシブルケーブルの交差部分が上記板金の下側となるように、双方のフレキシブルケーブルを上記一組の開口部と上記他の一組の開口部に挿通し、双方のフレキシブルケーブルの交差部分に上記板金の一部を挟み込むことが更に好ましい。
【0012】
また、上記開口部に、双方のフレキシブルケーブルを固定するケーブル固定片を形成することも好ましい。
【0013】
本発明の配線構造が採用される電子機器の代表例は、DTVモジュール付きの薄型テレビであるから、上記メイン基板の好ましい具体例は、薄型テレビに組み込まれたアナログ基板であり、上記サブ基板の好ましい具体例は、上記板金に支持されてアナログ基板の上に取付けられたDTVモジュール基板である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配線構造のように、電源ラインのフレキシブルケーブルと信号ラインのフレキシブルケーブルとの交差部分に、サブ基板を支持する板金の一部が挟み込まれていると、この板金の一部によって双方のフレキシブルケーブルの交差部分がシールドされるため、電源ラインのフレキシブルケーブルから信号ラインのフレキシブルケーブルへの誘起が抑えられ、ノイズによる信号の劣化が殆ど生じなくなる。しかも、サブ基板を支持する板金の一部をシールド板として利用しているため、別途シールド部品を使用することが不要となり、コストの増加を抑えることができる。また、双方のフレキシブルケーブルの交差部分の間に板金の一部が挟み込まれるだけであるため、スペーサで双方の交差部分の間隔を大きく広げる場合のようにテレビの薄型化を妨げる心配は生じない。
【0015】
そして、上記板金に、対向する位置関係にある一組の開口部と、この開口部の対向方向と交差する方向に対向する位置関係にある他の一組の開口部を形成し、一組の開口部と他の一組の開口部に電源ラインのフレキシブルケーブルと信号ラインのフレキシブルケーブルを挿通して、双方のフレキシブルケーブルの交差部分に板金の一部を挟み込んだ配線構造では、双方のフレキシブルケーブルがこれらの開口部に保持されることになるため、別途ケーブル保持部品を用いて双方のフレキシブルケーブルを保持する必要がなくなり、コストの増加を抑えることができる。
【0016】
更に、電源ラインのフレキシブルケーブルの交差部分が板金の上側となるように、且つ、信号ラインのフレキシブルケーブルの交差部分が板金の下側となるように、双方のフレキシブルケーブルを一組の開口部と他の一組の開口部に挿通し、双方のフレキシブルケーブルの交差部分に板金の一部を挟み込んだ配線構造では、電源ラインのフレキシブルケーブルが交差部分を除いて板金の下側に引き回されることになるため、電源ラインのフレキシブルケーブルからの不要輻射を抑えることができる。
【0017】
また、板金の上記開口部にケーブル固定片を形成したものは、ケーブル固定片によって確実にフレキシブルケーブルを固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0019】
図1は本発明の配線構造を採用したDTVモジュール付きの薄型テレビの概略説明図、図2はDTVモジュール基板を省略した本発明の一実施形態に係る配線構造を示す平面図、図3は同配線構造における板金の部分拡大断面図、図4は同配線構造の概略説明図である。
【0020】
本発明の配線構造は、例えば図1に示すようなDTVモジュール付きの薄型テレビに好ましく採用されるものであって、このDTVモジュール付きの薄型テレビは、フロントキャビネット1の前面開口部に液晶モジュール2が取付けられており、この液晶モジュール2の背面にメイン基板3としてアナログ基板が一定の間隔をあけて固定されている。そして、このメイン基板3の上(背面側)に、サブ基板4としてDTVモジュール基板が板金5に支持されて取付けられている。
【0021】
もう少し詳しく説明すると、このサブ基板(DTVモジュール基板)4は、図4,図2に示すように、方形の板金5の四隅に形成された支持片5aに支持されて板金5から浮いた状態でビス止めされており、その上から不要輻射を抑える板金の蓋6が被せられている。そして、この板金5は、5箇所の脚片5bをメイン基板3にビス止めして、メイン基板3のコーナー部の上に隙間をあけて固定されている。
【0022】
上記の板金5には、図2,図3に示すように、対向する位置関係ある一組の矩形開口部5c,5cと、この開口部5c,5cの対向方向と直角に交差する方向に対向する位置関係にある他の一組の矩形開口部5d,5dが形成されており、これらの矩形開口部5c,5c,5d,5dには、切出しによってケーブル固定片5eが形成されている。このケーブル固定片5eは、後述するようにフレキシブルケーブル7,8を矩形開口部5c,5c,5d,5dに挿通するときに撓み、挿通されたフレキシブルケーブル7,8を押圧して、その摩擦力でフレキシブルケーブル7,8を固定するものである。
【0023】
図2に示すように、電源ラインのフラットなフレキシブルケーブル7は、信号ラインのフレキシブルケーブル8と直角に交差する交差部分7aが板金5の上側となるように、一組の矩形開口部5c,5cに挿通されて板金5の下側に引き回されており、その両端のコネクタ部7b,7cがメイン基板(アナログ基板)3とサブ基板(DTVモジュール基板)4にそれぞれ接続されるようになっている。
【0024】
これに対し、信号ラインのフラットなフレキシブルケーブル8は、電源ラインのフレキシブルケーブル7と直角に交差する交差部分8aが板金5の下側となるように、他の一組の矩形開口部5d,5dに挿通されて板金5の上側に引き回されており、その両端のコネクタ部8b,8cがメイン基板3とサブ基板4にそれぞれ接続されるようなっている。
【0025】
上記のように、電源ラインのフレキシブルケーブル7と信号ラインのフレキシブルケーブル8を交差させ、電源ラインのフレキシブルケーブル7の交差部分7aが板金の上側となるように、且つ、信号ラインのフレキシブルケーブル8の交差部分8aが板金5の下側となるように、双方のフレキシブルケーブル7,8を矩形開口部5c,5c,5d,5dに挿通して引き回すと、双方のフレキシブルケーブル7,8の交差部分7a,8aの間に、板金5の一部、即ち、4つの矩形開口部5c,5c,5d,5dによって囲まれる部分が挟み込まれた構造となる。
【0026】
この配線構造は、上記のように双方のフレキシブルケーブル7,8の交差部分7a,8aの間に挟み込まれた板金5の一部によって双方の交差部分7a,8aがシールドされるため、電源ラインのフレキシブルケーブル7から信号ラインのフレキシブルケーブル8への誘起が抑えられ、ノイズによる信号の劣化が殆ど生じなくなる。そして、電源ラインのフレキシブルケーブル7が、その交差部分7aを除いて板金5の下側に引き回されているので、不要輻射を充分抑えることもできる。また、双方のフレキシブルケーブルの交差部分の間に板金の一部が挟み込まれるだけであるから、スペーサで双方の交差部分の間隔を大きく広げる場合のようにテレビの薄型化を妨げる心配は生じない。
【0027】
また、この配線構造のように、板金5の一部をシールド板として利用すると、別途シールド部品を用いてフレキシブルケーブル7,8の交差部分7a,8aをシールドすることが不要となるので、コストの増加を抑えることができる。しかも、この配線構造のように、双方のフレキシブルケーブル7,8を矩形開口部5c,5c,5d,5dに挿通して引き回すと、双方のフレキシブルケーブル7,8がこれらの矩形開口部によって保持されるため、別途ケーブル保持部品を用いてフレキシブルケーブル7,8を保持することが不要となり、コストの増加を更に抑えることができる。特に、この実施形態のようにケーブル固定片5eが矩形開口部5c,5c,5d,5dに形成されていると、矩形開口部に挿通されたフレキシブルケーブル7,8が、撓んだケーブル固定片5eによって押圧され、その摩擦力で確実に保持、固定される利点がある。
【0028】
尚、双方のフレキシブルケーブル7,8の引き回しを上下逆転させ、電源ラインのフレキシブルケーブル7の交差部分7aが板金5の下側となるように該フレキシブルケーブル7を板金5の上側に引き回し、信号ラインのフレキシブルケーブル8の交差部分が板金5の上側となるように該フレキシブルケーブル8を板金の下側に引き回すことも可能であるが、その場合は不要輻射の抑制が難しくなるので好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の配線構造を採用したDTVモジュール付きの薄型テレビの概略説明図である。
【図2】DTVモジュール基板を省略した本発明の一実施形態に係る配線構造を示す平面図である。
【図3】同配線構造における板金の部分拡大断面図である。
【図4】同配線構造の概略説明図である。
【符号の説明】
【0030】
3 メイン基板(アナログ基板)
4 サブ基板(DTVモジュール基板)
5 板金
5a 支持片
5b 脚片
5c,5c 一組の開口部
5d,5d 他の一組の開口部
5e ケーブル固定片
7 電源ラインのフレキシブルケーブル
8 信号ラインのフレキシブルケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金にサブ基板を浮かせた状態で支持させ、この板金をメイン基板の上に隙間をあけて固定し、メイン基板とサブ基板を接続する電源ラインのフレキシブルケーブルと信号ラインのフレキシブルケーブルを交差させて引回した配線構造において、上記電源ラインのフレキシブルケーブルと上記信号ラインのフレキシブルケーブルとの交差部分に上記板金の一部を挟み込んだことを特徴とする配線構造。
【請求項2】
上記板金に、対向する位置関係にある一組の開口部と、この開口部の対向方向と交差する方向に対向する位置関係にある他の一組の開口部を形成し、一組の開口部と他の一組の開口部に上記電源ラインのフレキシブルケーブルと上記信号ラインのフレキシブルケーブルを挿通して、双方のフレキシブルケーブルの交差部分に上記板金の一部を挟み込んだことを特徴とする請求項1に記載の配線構造。
【請求項3】
上記電源ラインのフレキシブルケーブルの交差部分が上記板金の上側となるように、且つ、上記信号ラインのフレキシブルケーブルの交差部分が上記板金の下側となるように、双方のフレキシブルケーブルを上記一組の開口部と上記他の一組の開口部に挿通し、双方のフレキシブルケーブルの交差部分に上記板金の一部を挟み込んだことを特徴とする請求項2に記載の配線構造。
【請求項4】
上記開口部に、双方のフレキシブルケーブルを固定するケーブル固定片を形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の配線構造。
【請求項5】
上記メイン基板がデジタルテレビモジュール付きのテレビに組み込まれたアナログ基板であり、上記サブ基板が上記板金に支持されてアナログ基板の上に取付けられたデジタルテレビモジュール基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−44503(P2009−44503A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207791(P2007−207791)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】