説明

配線診断システム

【課題】装置の異常が配線によるものか否かを検出できるとともに、装置の動作に伴うような一時的、間欠的な配線の障害も検出できる配線診断システムを得る。
【解決手段】配線2と、この配線2に接続され、装置またはシステムの一部の機能を果たす機能単位1a、1bと、装置またはシステムの状態を監視し、装置またはシステムの異常を検出する監視手段3と、この監視手段3が装置またはシステムの異常を検出した際に、検出された異常の原因となりうる配線2の断線、短絡などの障害の有無を診断する配線診断手段4a、4bとを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブルやプリント基板の配線、フレキシブルプリント配線基板、半導体集積回路などの有線配線の断線、短絡、誤接続などの障害を検出する配線診断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
略全ての電気的な装置やシステムには、ケーブルやプリント基板配線を用いた有線による相互接続を有しており、アナログ信号やデジタル信号によるデータ伝送や電力供給などに使用され、配線が正しく行われていないと装置やシステムは正常に機能しない。
【0003】
このため、装置やシステムの組み立て時や、定期検査時などに配線の検査が行われており、配線の障害を、より簡単に診断する方法として、抵抗素子とダイオードを組み合わせ、各配線間で所定の抵抗値が観測されるか否かによって断線、短絡などを検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、断線や短絡が生じているか否かだけでなく、どこで障害が発生しているかまで検査する方法としてTDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射)法を用いる方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−264633号公報
【特許文献2】特開平1−152376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
配線の断線や短絡などの障害は恒久的なものに限らず、例えば装置の動作時における稼動部の動作や、振動、温度変化などにより一時的、間欠的に生じるような場合もある。しかしながら、従来の診断方法は装置やシステムの組み立て時や、定期検査時、または何らかの障害が発生した際に、装置やシステムの動作を止めて診断を行うことが一般的であり、装置の動作に関連した一時的、間欠的な障害を検出することは困難である。また、このような一時的、間欠的な配線の障害は、他の回路部や機械部の障害との切り分けが非常に困難でもある。
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、装置の異常が配線によるものか否かを検出できるとともに、装置の動作に伴うような一時的、間欠的な配線の障害も検出できる配線診断システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る配線診断システムは、配線と、前記配線に接続され、装置またはシステムの一部の機能を果たす機能単位と、装置またはシステムの状態を監視し、異常を検出する監視手段と、前記監視手段が異常を検出した際に、検出された異常の原因となりうる前記配線の障害の有無を診断する配線診断手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る配線診断システムによれば、装置の異常が配線によるものか否かを検出することができるとともに、装置の動作に伴うような一時的、間欠的な配線の障害も検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る配線診断システムの構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る配線診断システムの構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態3に係る配線診断システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の配線診断システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0012】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る配線診断システムについて図1を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る配線診断システムの構成を示すブロック図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0013】
図1において、この発明の実施の形態1に係る配線診断システムは、機能単位1a、1bと、配線2と、監視手段3と、配線診断手段4a、4bとが設けられている。
【0014】
機能単位1a、1bは、装置またはシステムの一部の機能を果たすものであり、例えば互いにデータ通信を行う通信ユニットであり、または一方が何らかのセンサであり他方がセンサ入力の処理部であり、または一方が動力供給部であり他方が動力を得て動作するなんらかの装置であるなど、さまざまな機能単位が考えられる。
【0015】
配線2は、機能単位1aと1bの間を接続するものである。図1では、配線2に機能単位1aと1bの2つのみ接続されているが、これに限らず3個以上の機能単位が接続されているような場合もありうる。
【0016】
監視手段3は、装置またはシステムの状態を監視するものであり、装置またはシステムが正常に機能しているか否かを常時監視している。
【0017】
配線診断手段4a、4bは、配線2の断線、短絡等の障害の有無を診断するものである。
【0018】
つぎに、この実施の形態1に係る配線診断システムの動作について図面を参照しながら説明する。
【0019】
監視手段3は、装置またはシステムが正常に機能しているか否かを常時監視している。装置またはシステムに異常が検出された場合、監視手段3は、配線診断手段4a、4bに通知し、配線診断手段4a、4bが配線2の障害の有無の診断を行う。診断の結果は監視手段3に通知され、監視手段3は、装置またはシステムに異常が発生した事、異常の内容、配線診断の結果等を直ちに外部に通知する。
【0020】
なお、配線診断の結果は配線診断手段4a、4bから直接外部に通知するようにしてもよいし、監視手段3は、装置またはシステムに異常が発生した事のみを外部に通知し、配線診断結果は外部からの問い合わせにより通知するようにしてもよい。
【0021】
このように、装置またはシステムに異常を検出した場合に直ちに配線2の診断を行うようにしたので、装置の異常が配線2によるものか否かを検出するとともに、装置の動作に伴うような一時的、間欠的な配線2の障害も検出できる。
【0022】
なお、配線2の障害を診断する方法のひとつは、前述の特許文献1のように配線の一端に既知の抵抗素子やダイオードからなる回路を接続し、他方の端に定電圧源や、定電流源などを接続し、配線間の電圧や抵抗値等を観測する方法があり、このため図1では配線2の両端に配線診断手段4aと4bの2つのブロックを示している。
【0023】
配線2の障害を診断する方法のもうひとつは、TDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射)法を用いるもので、この場合には必ずしも配線2の両端に診断のための回路を設ける必要はなく、このような方法で配線の診断を行う場合には、例えば配線診断手段4aだけのような構成でもよい。
【0024】
さらに、配線2の診断方法は、これら以外にも考えられるため、必ずしも配線2の一端にブロックを配置する必要がない場合や、3つ以上のブロックを異なる位置に配置するような場合も考えられるので、本実施の形態1では配線の診断方法やその構成を規定するものではない。
【0025】
また、図1では、配線診断手段4a、4bは、機能単位1a、1bとは異なるブロックとして示しているが、機能単位1a、1bの中に組み込まれていてもよい。
【0026】
また、配線2は、1本の線で示しているが、実態として1本に限らず複数の線であってもよく、配線診断手段4a、4bも複数の線それぞれに対応した複数の部分で構成されていたり、1つの配線診断手段が診断する線を切り替えて、複数の線を診断できるように構成されていたりしてもよい。
【0027】
また、図1では、機能単位1a、1bの2つと配線2の1つのみを示しているが、装置またはシステムにはもっと多くの機能単位や配線があり、配線診断手段も複数の配線それぞれに対応して複数あってもよく、1つの配線診断手段が診断する配線を切り替えて、複数の配線を診断できるように構成されていてもよい。
【0028】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る配線診断システムについて図2を参照しながら説明する。図2は、この発明の実施の形態2に係る配線診断システムの構成を示すブロック図である。
【0029】
図2において、この発明の実施の形態2に係る配線診断システムは、通信ユニット5a、5bと、通信配線6と、配線診断手段4a、4bとが設けられている。
【0030】
通信ユニット5a、5bは、装置またはシステムに含まれ、互いにデータ伝送を行うものである。
【0031】
通信配線6は、データ伝送の媒体となるものであり、ケーブルであったり、フレキシブルプリント基板配線であったり、プリント基板配線であったり、半導体集積回路の配線などが考えられる。
【0032】
図2では、通信配線6に通信ユニット5a、5bの2つのみ接続されているが、これに限らず3個以上の通信ユニットが接続されているような場合もありうる。なお、配線診断手段4a、4bは、上記の実施の形態1と同様に、通信配線6の断線、短絡等の障害の有無を診断するものである。
【0033】
つぎに、この実施の形態2に係る配線診断システムの動作について図面を参照しながら説明する。
【0034】
通信ユニット5a、5bは、通信配線6を介して互いにデータ通信を行う。通信ユニット5a、5bは、データ伝送が正常に行われたか否かを判定するエラー制御手段(図示せず)を備えており、例えば伝送するデータ内容に応じたパリティ符号などのエラー検出符号を付してデータを伝送し、受信側でデータ受信後にパリティチェックを行い、データの内容が正しいか否かを判定する。
【0035】
通信ユニット5a、5bは、データを正しく受信した場合には、ACK(Acknowledge)を返送し、データ伝送が正常に完了する。データが正しくない場合には、ACKを返送しなかったり、NACK(NoAcknowledge)を返送することで送信側にデータが正しく伝送されなかったことを伝え、送信側は再送処理などを行う。
【0036】
通信ユニット5a、5bは、エラー制御手段によってデータ伝送にエラーが検出された場合、配線診断手段4a、4bに通知し、配線診断手段4a、4bが通信配線6の障害の有無の診断を行ない、通信配線6に障害が検出された場合には、配線診断の結果を外部に通知する。
【0037】
なお、通信配線6の診断は受信側でエラーが検出された場合に直ちに実施する場合や、送信側で再送が必要と判断された直後に実施する場合、再送を行った直後に実施する場合などが考えられる。
【0038】
このように、装置またはシステムにデータ伝送のエラーを検出した場合に直ちに通信配線6の診断を行うようにしたので、データ伝送のエラーが通信配線6によるものか否かを検出するとともに、装置の動作に伴うような一時的、間欠的な通信配線6の障害も検出できる。
【0039】
なお、図2では、配線診断手段4a、4bとして通信配線6の両端に2つのブロックを示していが、上記の実施の形態1と同様に、必ずしも通信配線6の両端に診断のための回路を設ける必要はなく、例えば配線診断手段4aだけのような構成でもよい。また、必ずしも通信配線6の一端に配置する必要がない場合や、3つ以上のブロックを異なる位置に配置するような場合も考えられるので、本実施の形態2では配線の診断方法やその構成を規定するものではない。
【0040】
また、図2では、配線診断手段4a、4bは、通信ユニット5a、5bとは異なるブロックとして示しているが、通信ユニット5a、5bの中に組み込まれていてもよい。
【0041】
また、通信配線6は、1本の線で示しているが、実態として1本に限らず複数の線であってもよく、配線診断手段4a、4bも複数の線それぞれに対応した複数の部分で構成されていたり、1つの配線診断手段が診断する線を切り替えて、複数の線を診断できるように構成されていたりしてもよい。
【0042】
また、図2では、通信ユニット5a、5bの1対と通信配線6の1つのみを示しているが、装置またはシステムにはもっと多くの通信ユニットと通信配線があり、配線診断手段も複数の通信配線それぞれに対応して複数あってもよく、1つの配線診断手段が診断する通信配線を切り替えて、複数の通信配線を診断できるように構成されていてもよい。
【0043】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る配線診断システムについて図3を参照しながら説明する。図3は、この発明の実施の形態3に係る配線診断システムの構成を示すブロック図である。
【0044】
図3において、この発明の実施の形態3に係る配線診断システムは、機能単位1a、1bと、配線2と、記憶手段31を含む監視手段3Aと、配線診断手段4a、4bとが設けられている。
【0045】
図1に示す実施の形態1の構成とは、監視手段3Aに記憶手段31が付加された点が異なり、異なる点についてのみ説明する。なお、上記の実施の形態2にも適用でき、記憶手段31を配線診断手段4a、4bや、通信ユニット5a、5bに付加してもよい。
【0046】
記憶手段31は、装置またはシステムに異常が検出された際の日時や異常の内容、あるいはデータ伝送のエラーが検出された際の日時やエラーの内容とともに、配線2、あるいは通信配線6の診断の結果を蓄積する。これにより、同じ異常や障害、あるいは同じエラーや障害が、ある所定の回数に達した際に外部に通知するようにしたり、同じ異常や障害、あるいは同じエラーや障害が、ある所定の期間に、ある所定の回数に達した際に外部に通知するようにしたり、外部からの要求に対して、異常検出、あるいはエラー検出の有無、診断実施の日時、障害検出の有無、検出した障害内容を出力するなど柔軟なかたちで情報を利用できるようになる。
【0047】
したがって、異常や障害を検出するたびに外部に対処を促すことなく、一定の条件に達した際に配線2の劣化を通知し、完全に断線や短絡を起こす前に配線2を交換するなどの予防措置が可能となる。
【0048】
上記の実施の形態1及び実施の形態2の説明では、動力線や制御線、データ通信線などの電気配線について説明したが、液体や気体を供給する配管や、機械的な構造部品の診断にも利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1a、1b 機能単位、2 配線、3 監視手段、3A 監視手段、4a、4b 配線診断手段、5a、5b 通信ユニット、6 通信配線、31 記憶手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線と、
前記配線に接続され、装置またはシステムの一部の機能を果たす機能単位と、
装置またはシステムの状態を監視し、異常を検出する監視手段と、
前記監視手段が異常を検出した際に、検出された異常の原因となりうる前記配線の障害の有無を診断する配線診断手段と
を備えたことを特徴とする配線診断システム。
【請求項2】
データ伝送の媒体となる通信配線と、
前記通信配線に接続されてデータ伝送を行い、データ伝送が正常に行われたか否かを判定するエラー制御手段を有し、前記エラー制御手段によりデータ伝送のエラーを検出する通信ユニットと、
前記通信ユニットがデータ伝送のエラーを検出した際に、検出されたデータ伝送のエラーの原因となりうる前記通信配線の障害の有無を診断する配線診断手段と
を備えたことを特徴とする配線診断システム。
【請求項3】
前記監視手段、あるいは前記通信ユニット又は前記配線診断手段は、
前記装置またはシステムの異常及び前記配線の診断結果、あるいは前記データ伝送のエラー及び前記通信配線の診断結果を記憶する記憶手段を含む
ことを特徴とする請求項1又は2記載の配線診断システム。
【請求項4】
前記監視手段、あるいは前記通信ユニット又は前記配線診断手段は、
前記装置またはシステムの異常及び前記配線の診断結果、あるいは前記データ伝送のエラー及び前記通信配線の診断結果を検出した際に直ちに外部に通知する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の配線診断システム。
【請求項5】
前記監視手段、あるいは前記通信ユニット又は前記配線診断手段は、
同じ異常又は障害、あるいは同じエラー又は障害が、所定の回数に達した際に外部に通知する
ことを特徴とする請求項3記載の配線診断システム。
【請求項6】
前記監視手段、あるいは前記通信ユニット又は前記配線診断手段は、
同じ異常又は障害、あるいは同じエラー又は障害が、所定の期間に、所定の回数に達した際に外部に通知する
ことを特徴とする請求項3記載の配線診断システム。
【請求項7】
前記監視手段、あるいは前記通信ユニット又は前記配線診断手段は、
外部からの要求に対して、異常又は障害検出の有無、あるいは同じエラー又は障害検出の有無を通知する
ことを特徴とする請求項3記載の配線診断システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−242243(P2011−242243A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114227(P2010−114227)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】