説明

配色シミュレーションシステム、プログラムおよび記録媒体

【課題】 配色知識のないユーザでも、直感的で詳細な配色設計を効率的に行うことが出来る配色シミュレーションシステムを提供する。
【解決手段】 モデル画像データ、モデル画像データについての複数個の配色領域データ、及び各配色領域データの各代表色データを格納したモデル画像データベースと、モデル画像データを表示するモデル画像表示部304と、各代表色データが貼り付けられた所定の色立体を表示する色立体表示部308と、感性語によって各代表色データを変更させる指示をする指示部305と、変更指示に従ってモデル画像表示部304の表示を変更するとともに、色立体表示部308の各代表色データの表示を変更させる制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを利用して、ディスプレイ上の表示物である画像の配色を変更する技術に関係し、ユーザが直感的で詳細な配色設計を効率的に行うのに最適な配色シミュレーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、配色パターンは、様々な色彩学者による配色理論が提唱されており、それらにもとづいた配色例がある(非特許文献1)。
【0003】
また、主要な形容詞のイメージと対応する配色パターンを調査して、心理軸を基に作った2次元のイメージマップにプロットする方法が提唱されている(非特許文献2)。
【0004】
他方、近年、コンピュータを利用した配色設計に関する技術として、例えば、色コードと色感による言語と対応する画像変更技術(特許文献1)、配色に関する一般感情語句と対応させる技術がある(特許文献2)。また、感情語句ではなく、見本画像を用いて画像の印象によって配色を支援する技術がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】清野恒介、島森功著、「配色事典」新紀元社、2006
【非特許文献2】小林重信著、日本カラーデザイン研究所編集、「カラーイメージスケール」講談社、2001
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−128525
【特許文献2】特開平7−28874
【特許文献3】特開2002−373344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、配色理論を具体的な生活シーンの中で適応させたり、応用したりするのは、カラーコーディネーター等の色彩知識やデザインに熟練した専門家ではないと困難であった。
【0008】
なぜなら、色彩は、従来、色の3属性と言われる色相、彩度、明度による立体概念として表されるが、配色理論は色立体を前提としながらも、主に色相によるものと、彩度と明度の組み合わせであるトーン(色調)によるものに大別され、それらのパターンを直感的に把握することは非常に難しいからであるからである。
【0009】
特に、トーンは、明度と彩度という2つの属性を組み合わせた2次元表示にしていることが多いが、色立体にトーンを表した場合リング状になり、トーン名称からそれらの特徴や形態を想像するのは難しい。
【0010】
トーンは、JIS規格(物体色の色名 JIS Z 8102)では、「有彩色の明度及び彩度に関する修飾語を付けた色の範囲」ということになっており、対応する感情語句は、「あざやかな」「明るい」「つよい」「こい」「うすい」「やわらかい」「くすんだ」「暗い」「ごくうすい」「明るい灰みの」「灰みの」「暗い灰みの」「ごく薄い」の13種類ある。それらは色相別に色空間領域が設定されているものの、立体的には表現されていない。
【0011】
また、トーンを含めた様々な配色理論も、2次元表示を前提としているため、単純化されたルールになっており、3次元上の複雑な配色パターンを作ることが困難である。例えば、トライアド(正三角形)、スプリットコンプリメンタリー(二等辺三角形)、ダイアード(正四角形)など、色相環上に幾何学形態を作る配色ルールがあるが、色相別に調和感覚が異なるためすべての組み合わせについて調和性が高いわけはないし、それらをそのまま適用すると、今日のようなカラーバリエーションが多い時代では差別化できないという問題点があった。
【0012】
また、配色パターンとして提唱されている配色を、様々な分野に適応させようとする場合に、分野によって存在する色バリエーションなどの制限があるので、微調整をする必要性がある。例えば、3色配色中の1色を変えるだけで、全体的な印象が損なわれるということもあるため、3色のバランスを見ながら調整しなければならないが、そのような微調整がしにくいという問題点があった。
【0013】
また、上記した非特許文献2による形容詞と配色パターンでは、感性語に対応した3色配色が開示しされているが、独自の心理的な2属性による平面図にプロットしているため、配色パターンの色立体での分布傾向がわかりにくいという問題点があった。
【0014】
また、上記提案されている特許は、それぞれ色感や感情語句と色立体、画像と色立体の関連性がないため、配色パターンの色立体における分布の類似性を確認したり、微細な配色の調整を行ったりすることができないという問題点があった。
【0015】
本発明は、上述した従来技術の課題を考慮し、配色知識のないユーザでも、直感的で詳細な配色設計を効率的に行うことが出来、簡便でインタラクティブにシミュレーションすることが可能になることにより、大幅に配色選択の手間を削減出来る、配色シミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の本発明は、
モデル画像データ、前記モデル画像データについての複数個の配色領域データ、及び前記各配色領域データの各代表色データを格納したモデル画像データベースと、
前記モデル画像データを表示するモデル画像表示部と、
前記各代表色データが貼り付けられた所定の色立体を表示する色立体表示部と、
前記各代表色データを変更させる指示をする指示部と、
前記変更指示に従って前記モデル画像表示部の表示を変更するとともに、前記色立体表示部の各代表色データの表示を変更させる制御部と、を備えたことを特徴とする配色シミュレーションシステムである。
【0017】
第2の本発明は、
前記指示部は、各代表色データの明度、彩度、色相の少なくとも一つに関連する変数を変更させる指示部であり、
前記制御部は、前記指示部からの変更指示に従って変更制御を行う、第1の本発明の配色シミュレーションシステムである。
【0018】
第3の本発明は、
複数の感性語と、前記感性語のそれぞれについて、前記配色領域の数だけ割り当てられている、感性語対応色データとを格納した感性語データベースと、
前記感性語と前記感性語対応色データとを表示する感性語表示部とを備え、
前記指示部は、この感性語表示部に対して、表示されている前記感性語の中から前記感性語を選択することによって、変更指示を行う、第2の本発明の配色シミュレーションシステムである。
【0019】
第4の本発明は、
前記感性語データベースには、それぞれの感性語に対応する感性語対応色データについて、面積値等の特性データを有しており、
その特性データをキーとして感性語をソートできる、第3の本発明の配色シミュレーションシステムである。
【0020】
第5の本発明は、
明度、彩度、色相の少なくとも一つを変更出来る変更部を備え、
前記指示部は、この変更部に対して、少なくとも一つを変更して、変更指示を行う、第2の本発明の配色シミュレーションシステムである。
【0021】
第6の本発明は、
前記変更部は、明度、彩度、色相の少なくとも一つの数値を直接入力出来る数値入力部、あるいは、明度、彩度、色相の少なくとも一つの数値を入力出来るカーソル部である、第5の本発明の配色シミュレーションシステムである。
【0022】
第7の本発明は、
前記指示部は、前記色立体表示部の各代表色データを直接変更するものであり、
前記制御部は、前記指示部からの指示に従って、前記色立体表示部の表示を変更するとともに、前記モデル画像表示部の表示を変更する、第2の本発明の配色シミュレーションシステムである。
【0023】
第8の本発明は、
少なくとも、前記指示部と、前記画像表示部と、前記色立体表示部とが、通信ネットワークを介して通信可能なユーザ端末側に設けられている、第1の本発明の配色シミュレーションシステムである。
【0024】
第9の本発明は、
モデル画像データ、前記モデル画像データについての複数個の配色領域データ、及び前記各配色領域データの各代表色データを格納したモデル画像データベースを用いて、配色シミュレーションを行う方法であって、
モデル画像表示部によって、モデル画像データを表示し、
色立体表示部によって、前記各代表色データが貼り付けられた所定の色立体を表示し、
指示部によって、前記各代表色データを変更させる指示を行い、
制御部によって、前記変更指示に従って前記モデル画像表示部の表示を変更するとともに、前記色立体表示部の各代表色データの表示を変更させる、配色シミュレーション方法である。
【0025】
第10の本発明は、
第9の本発明の配色シミュレーション方法の、モデル画像表示部によって、モデル画像データを表示するステップと、色立体表示部によって、前記各代表色データが貼り付けられた所定の色立体を表示するステップと、指示部によって、前記各代表色データを変更させる指示を行うステップと、制御部によって、前記変更指示に従って前記モデル画像表示部の表示を変更するとともに、前記色立体表示部の各代表色データの表示を変更させるステップとをコンピュータに実行させるプログラムである。
【0026】
第11の本発明は、
第10の本発明のプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータにより処理可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、配色知識のないユーザでも、直感的で詳細な配色設計を効率的に行うことが出来、簡便でインタラクティブにシミュレーションすることが可能になることにより、大幅に配色選択の手間を削減出来る。
【0028】
例えば、ファッション、グラフィック、プロダクト、景観などの配色設計においてデザイナーが画像の中の配色を変更するにあたり、色立体上の感性語と対応した配色パターンを変更することで、クライアントの要望に応じた詳細な配色設計を行うと同時に、感性語の選択により配色知識のないユーザでも、簡便でインタラクティブにシミュレーションすることが可能になることにより、大幅に配色選択の手間を削減することが出来る。
【0029】
さらに、例えば、ファッションやインテリア等の色が重要な要素を占める商品をメーカーが開発したり、ユーザが選択したりする場面において、配色の組み合わせが、色立体上の分布で確認できることで、配色傾向が明確になると同時に、それらの分布を1色または複数色を同時に変化させることで、選択したモデル画像を変更できることにより、微妙な配色調整ができる。例えば、基本的な配色の印象は良いと判断しているが、配色の印象が変わらないままで少し明るめにしたり、鮮やかめにしたり、躍動的にしたりすることは、色の数値を変えるという操作ではその度合いの調整や判断が難しいが、色立体の配色分布を、色相を回転させたり、明度を上下させたり、彩度を拡大縮小したり、配色が作る面積を拡大縮小したりするレンジバーを操作することでそれが容易になる、
また、例えば、配色パターンとあらかじめ感性語を対応させることにより、直感的なイメージから配色パターンを選択し、モデル画像を変更できると同時に、感性語の配色傾向を色立体から確認することが可能になる。それによって、新たな感性語に対応した配色パターンを作ることも容易になるという効果が得られる。また、例えば、感性語と配色パターンの一覧を見ることで、どのような感性語がどのような配色パターンと対応しているかが、直感的に理解でき、それらを選択することで、モデル画像をリアルタイムに変更させることができ、変更されたモデル画像の印象と感性語を確認することができるという効果が得られる。
【0030】
また、例えば、感性語と配色パターンの一覧は、膨大なパターン数になったときに一度に確認することができないが、配色幾何学から得られる様々な数値から、配色パターンを並び替えることによって似た感性傾向のもの順番に見ることができる。例えば、色立体の中で、3色配色の3点を結ぶことによってできる三角形の面積は、サイズが大きい程、活動的な印象を与えるという感性傾向が見られるため、並び替え条件である「面積の大きい順」に並び替えることで、感性語で言えば、「活気のある」配色パターンや「アクティブな」配色パターン、「活動的な」配色パターンを、順番に見ることができる。それよって、配色パターン選択の効率を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係る配色シミュレーションシステム図
【図2】本発明の一実施の形態に係る配色シミュレーションシステムの装置図
【図3】本発明の一実施の形態における配色シミュレーションシステムのモデル画像データベース作成フローチャート
【図4】本発明の一実施の形態における配色シミュレーションシステムのモデル画像の配色領域の配色変更フローチャート
【図5】本発明の一実施の形態における配色シミュレーションシステムのユーザインタフェースの一例を示す図
【図6】本発明の一実施の形態における、色立体上に表示する配色幾何学の変更例
【図7】本発明の一実施の形態における、配色パターン一覧の並び替え一例
【図8】本発明の一実施の形態における、色立体配色幾何学が複数の場合の一例
【図9】本発明の一実施の形態における、配色パターンデータベースの構造例
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、本実施の形態にかかる配色シミュレーションシステムの全体図である。
【0034】
配色シミュレーションシステム10は、色を特徴とする商品画像の配色領域を設定し、その配色領域の配色パターンを画面上で変更することで、例えば感性語に対応した商品のカラーバリエーションを容易に選択できる配色シミュレーションシステムである。
【0035】
ここで配色シミュレーションシステム10は、配色シミュレーション装置11、通信ネットワーク12、およびユーザ端末16(複数可能)等を含む。
【0036】
配色シミュレーション装置11は、商品のモデル画像データや、配色パターンの並び替えや検索に必要な文字情報などの入出力手段を備えたコンピュータ機器である。たとえば、キーボード、マウス、USBメモリ、デジタルカメラ、スキャナー、モニター、テレビ、プリンターなどの装置に接続可能なインターフェースを持つコンピュータ機器を、配色シミュレーション装置11として使用することが可能である。
【0037】
この配色シミュレーション装置11は、第1のデータベースとしてモデル画像データベース13、第2のデータベースとして配色パターンデータベース14、第3のデータベースとして色情報データベース15という三つのデータベースを備えているが、別々のコンピュータに分散させてもよい。その場合、配色シミュレーション装置11は、別々のコンピュータに備えられているデータベースを連結して処理する手段を備える。
【0038】
また、図示していないが、配色シミュレーション装置11には通信ネットワークとの接続を可能にする通信制御装置が含まれている。
【0039】
モデル画像データベース13は、モデル画像データや配色領域を検索して色立体に表示するための、膨大な画像データを蓄積している。
【0040】
配色パターンデータベース14は、配色パターン一覧を構成する色情報を蓄積する。たとえば、感性語名称と、感性語名称に対応した配色パターンを構成する色値、色値を色立体にプロットした場合に占める面積、などの情報を含む。
【0041】
色情報データベース15は、画像データを検索して色立体に表示するための、色立体を構成するさまざまな色情報が蓄積される。すなわち、マンセル表色系、L*A*B*表色系、RGB色空間、HSV色空間、HLS色空間等の色立体を表示するために必要な色値、色差等の色情報である。
【0042】
通信ネットワーク12は、配色シミュレーション装置11(モデル画像データベース13、配色パターンデータベース14、色情報データベース15)と、ユーザ端末16とを相互に接続可能なコンピュータネットワークである。通信ネットワーク12はローカルエリアネットワークでもよく、インターネット等広域ネットワークでもよい。
【0043】
ユーザ端末16はたとえば、通信ネットワーク12に接続可能なネットワークインターフェースを備えた末端装置である。任意であり、一つでも複数でも構わない。ユーザ端末16は、通信ネットワーク12を介して配色シミュレーション装置11の備える第1から第3のデータベースにアクセスして、配色シミュレーション装置11が備えるモデル画像データの配色領域を検索して、配色幾何学を色立体に表示する手段の結果を取得して閲覧することが可能である。
【0044】
図2は、本実施の形態における配色シミュレーションシステム100を単体のコンピュータで実現した場合の装置図である。
【0045】
この配色シミュレーションシステム100は、入力手段として入力装置101、表示手段として出力装置102、CPU103、及び主記憶部104、バス105を備える。
【0046】
また、配色シミュレーションシステム100は、検索キー入力制御部106、並べ替えキー入力制御部107、画像情報入力制御部108、配色情報入力制御部109、色情報入力制御部110、画像データ出力制御部111、色立体出力制御部112、配色パターン出力制御部113等の制御部を備える。
【0047】
また、配色シミュレーションシステム100は、モデル画像データベース114、配色パターンデータベース115、色情報データベース116が接続される。図9は、配色パターンデータベース115の構造例である。
【0048】
また、配色シミュレーションシステム100には、配色領域蓄積演算部117、色値変更演算部118、配色変更演算部119、配色幾何学変更演算部120、配色パターン並び替え演算部121、画像色解析演算部122等の演算部を備える。
【0049】
図5は、本実施の形態におけるユーザインターフェース300の一例である。上述した入力手段として入力装置101、表示手段として出力装置102を兼ねている。301,302,303はモデル画像の3つの配色領域を表示する部分であり、304はモデル画像を表示する部分であり、305は1000語程度の感性語を利用する場合のそれぞれの感性語の3つの配色パターンを示す部分であり、306は色相、明度、彩度、面積の変更を増減キーで指示する指示部であり、307はRGB色空間、HSV色空間、マンセル表色系における、具体的な数値を入力する部分である。308はマンセル表色系の色立体を表示する部分である。
【0050】
このように、ユーザインターフェース300は、モデル画像と、モデル画像の配色領域をそれぞれ表示し、配色パターン一覧と、配色幾何学を表示した色立体とを表示する領域を持つ。また、色立体上の配色幾何学を移動するために設定する配色移動要素である色相回転、明度上下、彩度大小、面積大小、を調節するコントロールを配置している。
【0051】
また、RGB、HSV、マンセルなど色立体の種類を変更する設定コントロールも配置されている。
【0052】
次に、本実施の形態の動作の概要を説明する。
【0053】
図3は、本実施の形態における、モデル画像データベースの作成フローチャートである。
【0054】
画像入力処理(S101)は、入力装置101から出力される信号、すなわちデジタル画像を画像情報入力制御部108がモデル画像データベース114に蓄積することで行われる。デジタルカメラの撮像データでも、図形描画ソフトによる画像データでもかまわない。
【0055】
配色領域Pの選択処理(S102)は、入力された画像データの配色領域を選択する。Pは1から配色領域の最大値までの値を取り、本実施の形態では三色で一つの配色パターンを構成するため、配色領域の最大値は3を設定している。
【0056】
配色領域Pの代表色の算出処理(S103)は、選択した配色領域の色情報をすべて読み込み、画像色解析演算部122が代表色を解析することで、代表色のデータを取得するものである。
【0057】
代表色抽出するにあたっては、画像色解析演算部122において、色差によって選択された配色領域の全画素のRGB値をR、G、B別に全画素の母数で割って平均化して抽出する手法などが用いられる。
【0058】
平均色抽出するにあたっては、画像色解析演算部122において、画像に含まれている全画素のRGB値をR、G、B別に全画素の母数で割って平均化して抽出する手法などが用いられる。
【0059】
Pをインクリメントする処理(S104)によって、Pの値を一つ加算する。
【0060】
Pが配色領域の最大値より小さいか否かを判断し(S105)、小さい場合は再び、配色領域Pの選択処理(S102)から繰り返す。
【0061】
Pが配色領域の最大値より大きい場合は、モデル画像データと配色領域と各配色領域の代表色を、モデル画像データベースへ蓄積する(S106)。本実施の形態では配色領域の数は3つであるのでPが4になった時点でデータを蓄積することになる。
【0062】
図4は本実施の形態におけるモデル画像の配色領域の変更フローチャートである。
【0063】
ユーザは入力装置101から、一応の一つの感性語を入力し(S200)、入力した感性語に対応する色値を配色パターンデータベース115から取得し(S201)、取得した色値に近い順に配色パターンデータベース115を、色値を基準に並び替える(S202)。
【0064】
その近い順の判定基準としては、例えば、入力装置101から配色幾何学の面積(後述する色立体上における3つの代表色で出来る三角形の面積)を昇順で並び替えるか降順で並び替えるかを入力し(S203)、入力した順になるように配色パターンデータベース115を、配色幾何学の面積を基準に並び替える(S204)。
【0065】
並び替えた配色パターンデータベース115の一覧から、ユーザはより望ましそうな別の配色パターンを選択し(S205)、選択した配色パターンの色値を配色バターンデータベース115から取得する(S206)。
【0066】
あるいはまた、全く別のやり方として、ユーザは、入力装置101から、より望ましそうな、色相の変更値を入力し(S207)、明度の変更値を入力し(♯208)、彩度の変更値を入力出来るようにしてあってもよい(S209)。
【0067】
このようにして望ましと思われる変更指示をすると、色立体における配色幾何学を移動する処理(S210)では、感性語を利用する変更方法では、(S200)から(S206)の処理によって取得した配色パターンの色値に従って、色立体上に表示している配色幾何学の頂点を移動する。あるいは、色相、明度、彩度の変更値で変更する場合は、(S207)から(S209)の処理によって取得した変更後の色相、明度、彩度の値によって、色立体上に表示している配色幾何学の頂点を移動する。
【0068】
また、モデル画像の配色領域の配色を変更する処理(S211)は、色立体上の配色幾何学の移動が完了したあと、新たに形成された配色幾何学に対応した配色パターンで、モデル画像の配色領域の配色を変更して表示する。
【0069】
図6は、色立体上に表示される配色幾何学の変更例である。
【0070】
マンセル表色系の色立体の一例であるため、任意の配色の色相の値を変化させることは、任意の配色の座標を色立体上で底面に対して水平に回転移動することと等しい。明度の値を変化させることは、任意の配色の座標を色立体上で上下に平行移動することと等しい。彩度の値を変化させることは、任意の配色の面積を形状は保ったまま色立体上で拡大縮小することと等しい。図6(a)から(b)の変更は、明度と彩度はそのままで、色相を変化させた場合の一例である。3つの代表色が形成する三角形が回転している様子を示している。
【0071】
次に、本発明の実施の形態をより具体的に説明する。
【0072】
予めモデル画像について準備を行う。
【0073】
配色シミュレーションシステムの入力装置101に、モデル画像を撮像したデジタルカメラを直接接続する。あるいはデジタルカメラから抜いたSDカードの接続でもよい。対象となる配色領域は、モノクロの文書や図案のようなものでも良いし、写真やイラストなど、画像の中に色がすでに含まれているものでも良い。本実施の形態では、薄いピンクのワイシャツに、焦げ茶のスラックスを身につけ、黒い革靴を履いている男性の写真を画像情報入力制御部108で読み込んだ。
【0074】
次に色値変更演算部118を起動する。
【0075】
配色領域の選択は、マウスでモデル画像の任意の一点をクリックする。クリックされたピクセルの色値をコンピュータが読み取り、抽出した色値と同色の範囲を色差のレベル調によって判断し、一つの配色領域として認識する。配色領域は配色パターンを構成する数だけ選択するが、ここでは配色パターンは三色から構成されるので、配色領域1から3まで選択する。
【0076】
まず配色領域1としてスラックスの部分を選択した。焦げ茶色はスラックスしかないように考慮して撮影した写真のため、一回のマウスクリックでスラックス全体を選択することができた。その結果は配色領域1の表示部分301に表示される。同時に、モデル画像のスラックスの部分の色が1点のピクセルの色値で表示される。
【0077】
次に配色領域2としてワイシャツの部分を選択した。一部、影になった部分が選択されなかったので、同色の範囲をL:*a*b*表色系に基づく色差のレベルを△E0.5から△E0.55に変更する。その結果、少し色が濃いピンクになっていた影の部分をワイシャツと同じ薄いピンクと同色としてコンピュータが認識し、選択している部分を配色領域2に設定した。なお、さらにカーソルを用いて領域を拡大、縮小なども可能である。その結果は配色領域2の表示部分302に表示される。同時に、モデル画像のスラックスの部分の色も1点のピクセルの色値で表示される。
【0078】
次に配色領域3として革靴の部分を同様に選択した。その結果は配色領域3の表示部分303に表示される。同時に、モデル画像のスラックスの部分の色も1点のピクセルの色値で表示される。
【0079】
これらの配色領域の特定の仕方は公知の技術を用いることが出来る。
【0080】
次に、各配色領域1,2,3から各々の代表色を算出する。
【0081】
代表色抽出するにあたっては、画像色解析演算部122において、色差によって選択された各配色領域の全画素のRGB値をR、G、B別に全画素の母数で割って平均化して抽出する手法などが用いられる。
【0082】
このように、人間の感覚で感じる代表色と自動抽出した代表色の印象が変わらないように誤差を調整する。なお、他の代表色の算出の方法でもかまわない。
【0083】
次に、算出した配色領域1から3の各々の代表色を色立体に次にように表示する。
【0084】
色立体そのものは、色値変更演算部118が画面上に選択されているマンセル表色系、L*a*b*表色系、RGB色空間、HSV色空間、HLS色空間のいずれかに応じた色値を色情報データベース116から読み込んで、色立体出力制御部112が画面の色立体表示部分308に表示する。色値変更演算部118が配色領域1から3の各々の代表色を選択している表色系に対応する色値に変換する。配色パターン出力制御部113が各配色領域の代表色を変換された色値で色立体上に表示する。
【0085】
配色領域蓄積演算部117が、算出した配色領域1から3の各々の代表色と、配色領域1から3と、モデル画像とをひも付けしてモデル画像データベースに蓄積する。
【0086】
次にこのようにして準備されたモデル画像データの配色領域の配色パターンを変更することにする。
【0087】
まず、配色パターン一覧の表示部分305から変更したい配色パターンを選択する。この配色パターン一覧には、1000語程度の感性語が縦に配列され、それぞれの感性語に対応する3色の色が横に対応して配列されており、さらにソートすることでその縦配列の順番が入れ替わり可能となっている。
【0088】
今、配色パターン一覧の中から、「味わい深い」を選択するとする。この「味わい深い」という感性語は、代表色1(R233、G228、B228)、代表色2(R73、G44、B40)、代表色3(R2080、G106、B57)で構成されている。図9は、配色パターンデータベースの構造例であって、この表の左端の代表色1が配色領域1に適用され、中央の代表色2が配色領域2に適用され、右端の代表色3が配色領域3に適用されるようになっている。なお、この適用関係を入れ換えるための操作部(図示省略)をユーザインターフェース300に持たせておいて、変更出来るようにしてもよい。
【0089】
従って、「味わい深い」を選択すると、左端の茶色がモデル画像の配色領域1に選択されているスラックスの色となる。同様に、中央の白色がワイシャツの色となり、焦げ茶が革靴の色となる。画面上の左縦に三つ並んでいる配色領域1から3の配色部分301,302,303が、「味わい深い」配色パターンで表示変更される。同時に、モデル画像の表示部分304も対応して色が変更される。さらに、色立体の表示部308での3つの代表色の三角形も対応して移動する。
【0090】
なお、さらに、「味わい深い」という感性語よりも少しだけ異なる感性語に変更したい場合、まず、配色パターン一覧の表示部分305においてソートを行っておく。すなわち、もともと3色の代表色のデータに関しては、面積や角度、明度差、彩度差、色相差、平均色相、平均明度、平均彩度、最大内角差、最小内角差など配色幾何学から算出される各特性数値が演算出来ている。そこで、いずれかの特性数値を並び変えキーとして、降順、昇順などソートを行い、配色パターン一覧の並び替えを行っておく。これは配色パターン並び替え演算部121で行われる。例えば、面積とは図6に示すような3色で出来る三角形の面積である。
【0091】
このように予め並べ替えておけば、「味わい深い」に近い感性語が、1000語など多くの感性語があっても簡単に見つけることが出来る。図7は、面積が大きい順に配色パターンの一覧を並び替えた結果の一例である。
【0092】
さらに説明すると、例えば、配色パターン一覧から配色パターンを選択するにあたって、「ういういしい」に似た感じの配色を並べて比較して選択するために、「ういういしい」で昇順に配色パターン一覧を並び替えることにする。
【0093】
「ういういしい」の配色パターンは、配色パターンデータベースから、
面積 6289.40
色差 2.83
平均明度 5.62
平均彩度 2.79
などの情報が得られる。
【0094】
これらの数値は、マンセル値、RGB値、HSV値、L*a*b*値等のいずれかの色値で配色パターンデータベースに保持している色値を色立体の種類によって変換を行い、算出することができる。
【0095】
平均明度の高さは軽重感、平均彩度の高さは派手地味感、明度差の大きさは硬軟感、3色配色が作る三角形の面積が大きさは、活動感などに対応するなど、色立体における幾何学的特性と明確な相関関係にある。配色パターン並び替え演算部は、配色同士の相関関係を解析して、「ういういしい」という感性語で配色パターンを並び替える。
【0096】
次に、感性語を用いずに、色立体を使って配色パターンを変更する方法を説明する。すなわち、画面上の色相、明度、彩度の値を、配色移動の部分305のボタンをクリックして加減する。
【0097】
今「味わい深い」の配色パターンで表示されているとして、そのマンセル色立体における座標は次のとおりである。
1. 配色領域1の代表色の色座標
H=4.7GY
V=9.1
C=0.6
2. 配色領域2の代表色の色座標
H=2.4YR
V=2
C=3.1
3. 配色領域3の代表色の色座標
H=2.5YR
V=5.5
C=10.6
上記の配色を色相、明度、彩度の値を配色移動の部分306を直接変更して、「ういういしい」の配色パターンに近づけたいとする。
【0098】
すなわち、「ういういしい」の配色パターンのマンセル色立体における座標
1. 配色領域1の代表色の色座標
H=9.6GY
V=6.2
C=7.4
2. 配色領域2の代表色の色座標
H=4.7GY
V=9.1
C=0.6
3. 配色領域3の代表色の色座標
H=4.6RP
V=1.6
C=0.3
であるから、そのような数値にHVCがなるように変更した。
【0099】
色立体上の配色幾何学を変更が完了すると、画面上の左縦に三つ並んでいる配色領域1から3の配色が、色立体上で変更した配色幾何学に対応する配色パターンで表示変更される。
【0100】
また、モデル画像の表示領域の304の表示も変更される。
【0101】
なお、図8は、感性語を複数種類選ぶと、色立体上に表示する配色幾何学が複数現れる場合の一例を示す。
【0102】
なお、本発明のプログラムは、上述した本発明の配色シミュレーション方法の各ステップの動作をコンピュータにより実行させるプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0103】
また、本発明の記録媒体は、上述した本発明の画像検索色立体表示方法の各ステップの全部又は一部の動作をコンピュータにより実行させるプログラムを記録した記録媒体であり、コンピュータにより読み取り可能且つ、読み取られた前記プログラムが前記コンピュータと協動して前記動作を実行する記録媒体である。
【0104】
また、本発明のプログラムの一利用形態は、コンピュータにより読み取り可能な、ROM等の記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
【0105】
また、本発明のプログラムの一利用形態は、インターネット等の伝送媒体、光・電波・音波等の伝送媒体中を伝送し、コンピュータにより読みとられ、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
【0106】
また、上述した本発明のコンピュータは、CPU等の純然たるハードウェアに限らず、ファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであっても良い。
【0107】
なお、以上説明した様に、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現しても良いし、ハードウェア的に実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、配色知識のないユーザでも、直感的で詳細な配色設計を効率的に行うことが出来、簡便でインタラクティブにシミュレーションすることが可能になることにより、大幅に配色選択の手間を削減出来るので、ファッションやインテリア等の色が重要な要素を占める商品をメーカーが開発したり、ユーザが選択したりする場面において有効である。
【符号の説明】
【0109】
10 配色シミュレーションシステム
11 配色シミュレーション装置
12 通信ネットワーク
13 モデル画像データベース
14 配色パターンデータベース
15 色情報データベース
16 ユーザ端末
100 配色シミュレーションシステム
101 入力装置
102 出力装置
CPU 103
104 主記憶部
105 バス
106 検索キー入力制御部
107 並べ替えキー入力制御部
108 画像情報入力制御部
109 配色情報入力制御部
110 色情報入力制御部
111 画像データ出力制御部
112 色立体出力制御部
113 配色パターン出力制御部








【特許請求の範囲】
【請求項1】
モデル画像データ、前記モデル画像データについての複数個の配色領域データ、及び前記各配色領域データの各代表色データを格納したモデル画像データベースと、
前記モデル画像データを表示するモデル画像表示部と、
前記各代表色データが貼り付けられた所定の色立体を表示する色立体表示部と、
前記各代表色データを変更させる指示をする指示部と、
前記変更指示に従って前記モデル画像表示部の表示を変更するとともに、前記色立体表示部の各代表色データの表示を変更させる制御部と、を備えたことを特徴とする配色シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記指示部は、各代表色データの明度、彩度、色相の少なくとも一つに関連する変数を変更させる指示部であり、
前記制御部は、前記指示部からの変更指示に従って変更制御を行う、請求項1記載の配色シミュレーションシステム。
【請求項3】
複数の感性語と、前記感性語のそれぞれについて、前記配色領域の数だけ割り当てられている、感性語対応色データとを格納した感性語データベースと、
前記感性語と前記感性語対応色データとを表示する感性語表示部とを備え、
前記指示部は、この感性語表示部に対して、表示されている前記感性語の中から前記感性語を選択することによって、変更指示を行う、請求項2記載の配色シミュレーションシステム。
【請求項4】
前記感性語データベースには、それぞれの感性語に対応する感性語対応色データについて、面積値等の特性データを有しており、
その特性データをキーとして感性語をソートできる、請求項3記載の配色シミュレーションシステム。
【請求項5】
明度、彩度、色相の少なくとも一つを変更出来る変更部を備え、
前記指示部は、この変更部に対して、少なくとも一つを変更して、変更指示を行う、請求項2記載の配色シミュレーションシステム。
【請求項6】
前記変更部は、明度、彩度、色相の少なくとも一つの数値を直接入力出来る数値入力部、あるいは、明度、彩度、色相の少なくとも一つの数値を入力出来るカーソル部である、請求項5記載の配色シミュレーションシステム。
【請求項7】
前記指示部は、前記色立体表示部の各代表色データを直接変更するものであり、
前記制御部は、前記指示部からの指示に従って、前記色立体表示部の表示を変更するとともに、前記モデル画像表示部の表示を変更する、請求項2記載の配色シミュレーションシステム。
【請求項8】
少なくとも、前記指示部と、前記画像表示部と、前記色立体表示部とが、通信ネットワークを介して通信可能なユーザ端末側に設けられている、請求項1記載の配色シミュレーションシステム。
【請求項9】
モデル画像データ、前記モデル画像データについての複数個の配色領域データ、及び前記各配色領域データの各代表色データを格納したモデル画像データベースを用いて、配色シミュレーションを行う方法であって、
モデル画像表示部によって、モデル画像データを表示し、
色立体表示部によって、前記各代表色データが貼り付けられた所定の色立体を表示し、
指示部によって、前記各代表色データを変更させる指示を行い、
制御部によって、前記変更指示に従って前記モデル画像表示部の表示を変更するとともに、前記色立体表示部の各代表色データの表示を変更させる、配色シミュレーション方法。
【請求項10】
請求項9記載の配色シミュレーション方法の、モデル画像表示部によって、モデル画像データを表示するステップと、色立体表示部によって、前記各代表色データが貼り付けられた所定の色立体を表示するステップと、指示部によって、前記各代表色データを変更させる指示を行うステップと、制御部によって、前記変更指示に従って前記モデル画像表示部の表示を変更するとともに、前記色立体表示部の各代表色データの表示を変更させるステップとをコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
請求項10記載のプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータにより処理可能な記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−248641(P2011−248641A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121360(P2010−121360)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(500119916)ビバコンピュータ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】