説明

配電システム

【課題】分散型電源装置側が、配電系統が停電し単独運転の状態にあることを高速かつ確実に検出できるようにする配電システムを提供する。
【解決手段】本配電システムは、高圧配電線1に介装された区分開閉器3と、一次側端子7a,7bが高圧配電線1b1,1c1に接続され、二次側端子7c〜7eが低圧配電線9a〜9cに接続された柱上トランス7とを含む。この配電システムにおいては、柱上トランス7の一次側端子7a,7b間に並列にトランス一次側短絡スイッチ13を設ける。トランス一次側短絡スイッチ13は、区分開閉器3が開路しているときは閉路して、柱上トランス7の一次側端子7a,7b間を短絡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電システムに係り、詳しくは、区分開閉器が介装されている高圧配電線に例えば柱上トランス一次側を接続し、この柱上トランス二次側の低圧配電線に太陽光発電等の分散型電源装置を接続した配電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統における配電用変電所は、一般に、6600Vの高圧を高圧配電線で配電し、この高圧配電線に柱上トランスの一次側を接続し、その二次側に100V、200Vなどの低圧を生成し、低圧配電線を介して例えば家庭内負荷に供給するようにしている。
【0003】
近年では、太陽光発電、風力発電、燃料電池発電などの発電設備、いわゆる分散型電源装置が低圧配電線に接続され、配電系統に連系して、配電系統への電力の逆潮流や家庭内負荷への電力供給ができるようになってきている。
【0004】
分散型電源装置は、一般に、太陽電池等の直流電源と、この直流電源の直流出力を交流出力に変換して出力するパワーコンディショナとを備え、このパワーコンディショナが配電系統との連系運転を制御することができるようになっている。
【0005】
このような分散型電源装置は、配電系統に停電が起きると、分散型電源装置を配電系統から解列して分散型電源装置の単独運転を防止することが必要である(例えば、特許文献1参照)。単独運転は、配電系統が停電しているときに、分散型電源装置が負荷に電力を供給している状態である。
【0006】
分散型電源装置の単独運転検出にはその検出条件において各種方式があり、例えば単独運転移行時における周波数や電圧位相等の電気量変化を検出することで単独運転を検出する、いわゆる受動方式(例えば、特許文献2参照)や、常時から微量の電気量の変動を電力系統に与えておき、単独運転に移行した際に生じる周波数変化またはそれから計算されるインピーダンス等の変化を検出することで単独運転を検出する、いわゆる能動方式(例えば、特許文献3参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−185079号公報
【特許文献2】特開平08−082646号公報
【特許文献3】特開平10−248168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いずれの方式でも、配電系統が停電して、分散型電源装置が単独運転すると、その単独運転を高速検出し、分散型電源装置を配電系統から迅速に解列することが必要である。しかしながら、従来から、分散型電源装置においては、単独運転を高速でかつ確実に検出することは難しい。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、分散型電源装置側がその単独運転の状態を高速かつ確実に検出可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による配電システムは、高圧配電線に介装された区分開閉器と、一次側が高圧配電線に接続され、二次側が低圧配電線に接続されたトランスとを含む配電システムにおけるものである。
【0011】
このような配電システムにおいて、従来では、区分開閉器が開路するとトランス一次側への配電が停止されても、前記トランス一次側が短絡されていないから、トランスの一次側両端間は高圧配電線に接続された開放状態であり、電力エネルギは急速には消費されずに残留している。そのため、トランス二次側電圧は急速にゼロには下降しないから、配電系統の停電検出までには時間がかかることとなる。このことが、従来では配電系統が停電しても、分散型電源装置側が単独運転していることを高速で検出することを困難にしていた。
【0012】
本発明ではそのような配電システムにおいて、前記トランスの一次側に並列にトランス一次側短絡スイッチを設け、前記トランス一次側短絡スイッチは、前記区分開閉器が開路しているときは閉路して、トランス一次側両端間を短絡するようにしたものである。
【0013】
本発明によれば、区分開閉器が開路するとトランス一次側への配電が停止される。このとき、前記トランス一次側短絡スイッチが閉路して、前記トランスの一次側両端間はこのトランス一次側短絡スイッチにより短絡される。トランスはその一次側両端間が短絡されると、トランス一次側に残留する電力エネルギは急激に消費されてしまう。その結果、トランスの二次側電圧は、急速に、0V(ゼロボルト)に低下する。そのため、分散型電源装置側からは、配電系統の停電を高速で検出することが極めて容易となる。
【0014】
このように、本発明では、区分開閉器が開路して配電系統が停電すると、トランスの一次側両端を短絡して、二次側電圧をゼロ電圧に高速で低下させるようにしたので、分散型電源装置側では、そのトランスの二次側電圧の変化に基づき、単独運転状態を高速で検出することができる。
【0015】
本発明の好ましい態様は、親局である電力設備遠隔監視装置からの指令に応答する配電用子局を備え、前記配電用子局は、前記親局からの指令に応答して前記区分開閉器を閉路から開路に切り替えると、前記トランス一次側短絡スイッチを開路から閉路に切り替える、ことである。
【0016】
本発明の別の好ましい態様は、前記トランスの両一次側端子のうちの少なくとも一方の端子と、該一方の端子が接続される前記負荷側高圧配電線との間に、短絡防止スイッチを介装し、前記配電用子局は、前記短絡防止スイッチの開路および閉路を制御して、前記区分開閉器と、前記トランス一次側短絡スイッチとが同時に閉路する期間を無くす、ことである。
【0017】
本発明のさらに別の好ましい態様は、前記配電用子局は、前記短絡防止スイッチを開路の状態に維持して、前記区分開閉器が開路から閉路に切り替え制御してから、一定期間の経過後に、前記トランス一次側短絡スイッチを閉路から開路に切り替え、その後で、前記短絡防止スイッチを開路から閉路に切り替える、ことである。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、トランスの一次側に並列にトランス一次側短絡スイッチを設け、前記区分開閉器が開路しているときは、前記トランス一次側短絡スイッチを閉路してトランス一次側両端を短絡するので、配電系統が停電するときのトランス二次側電圧を0Vに高速で変化させることができる。そして、分散型電源装置側では、そのトランス二次側電圧の前記変化に基づき、配電系統が停電して単独運転の状態にあることを検出するので、当該単独運転の検出を高速で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る配電システムの概略を示す図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係る配電システムの概略を示す図である。
【図3】図3は、本発明のさらに他の実施形態に係る配電システムの概略を示す図である。
【図4】図4は、図3の配電システムの動作説明に供するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る配電システムを説明する。
【0021】
図1を参照して、高圧配電線1は、6600V三相交流の配電線である。高圧配電線1は、区分開閉器3により、電源側の線路1a〜1cと、負荷側の線路1a1〜1c1とに区分される。
【0022】
区分開閉器3は、線路1a〜1c側の接点と、線路1a1〜1c1側の接点と、これら両接点間を接続、遮断する開閉接触子3a〜3cとを備える。
【0023】
区分開閉器3は、制御システム5からの信号に応じて開閉接触子3a〜3cを開閉駆動される。なお、区分開閉器3は、開閉接触子3a〜3c以外に、その開閉接触子を開閉駆動する励磁コイルや、この励磁コイルに通電するための制御装置や、その他を備えるが、図解の都合でその図示を略している。
【0024】
高圧配電線1の負荷側の各線路1a1〜1c1のうち、線路1b1,1c1に、柱上トランス7の一次側端子7a,7bが接続されている。柱上トランス7は、前記交流6600Vの高圧を交流100、交流200Vの低圧に変圧し、二次側端子7c〜7e間に出力する。二次側端子7c,7d間および7d,7e間の各電圧は交流100V、二次側端子7c,7e間の電圧は交流200Vの電圧である。二次側端子7c〜7eは低圧配電線9の各線路9a〜9cに接続される。各線路9a〜9cは、単相3線式の線路を構成する。分散型電源装置11は、各線路9a〜9cに接続される。
【0025】
分散型電源装置11は、図示例では、連系遮断器11a、インバータ(パワーコンディショナ)11b、太陽電池等の直流電源11cを備える。分散型電源装置11は、柱上トランス7の二次側電圧の情報を、図示略の電圧検出器から得る。分散型電源装置11は、この検出に基づき、区分開閉器3が開路して配電系統に停電が起きて単独運転しているか否かを判断する。分散型電源装置11は、単独運転状態にあると判断すると、連系遮断器11aを開いて配電系統から解列すると共に、必要に応じてインバータ11bを停止するなどして単独運転を停止する。
【0026】
実施形態では、柱上トランス7の一次側端子7a,7b側に並列にトランス一次側短絡スイッチ13を設ける。トランス一次側短絡スイッチ13は、閉路することで、柱上トランス7の一次側端子7a,7b間を短絡することができる。
【0027】
制御システム5は、例えば区分開閉器3の負荷側を停電させる指令入力に応答して、区分開閉器3を開路する。区分開閉器3が開路すると、配電系統の負荷側線路1a1〜1c1は停電状態となる。制御システム5は、区分開閉器3の開路と同時に、トランス一次側短絡スイッチ13を閉路する。制御システム5における区分開閉器3とトランス一次側短絡スイッチ13の開閉は、該制御システム5に内蔵する励磁コイルにより行うようにしてよい。この励磁コイルは内蔵しないで、区分開閉器3とトランス一次側短絡スイッチ13側に設け、制御システム5はそれら励磁コイルに通電制御して、区分開閉器3、トランス一次側短絡スイッチ13を開閉制御できるようにしてもよい。
【0028】
トランス一次側短絡スイッチ13が閉路すると、前記したように、柱上トランス7の一次側端子7a,7b間が短絡される。柱上トランス7の一次側端子7a,7b間が短絡されると、上記したように、二次側端子7c〜7e間の電圧は0Vに高速で立ち下がる。
【0029】
上述したように、従来では、区分開閉器3が開路して負荷側の配電が停電しても、柱上トランス7の一次側端子7a,7b間が短絡されずに、高圧配電線の線路1b1,1c1に接続された開放状態であり、柱上トランス7に蓄積の電力エネルギは急速には消費されず残留している。そのため、柱上トランス7の二次側端子7c〜7e間の電圧は急速にゼロには下降することができない。このことが、分散型電源装置11が、配電系統が停電して単独運転していることを高速で検出することを困難にしていた。
【0030】
これに対して、本実施例では、柱上トランス7の一次側端子7a,7b間が短絡されるため、柱上トランス7の二次側端子7c〜7e間の電圧が急速に0Vに立ち下がる。これにより、分散型電源装置11側では、配電系統の負荷側線路1a1〜1c1の停電、つまり、分散型電源装置11が単独運転状態にあることを高速で検出することができる。
【0031】
制御システム5は、区分開閉器3の開路と、トランス一次側短絡スイッチ13の閉路とを同時に行うことが好ましい。
【0032】
この際、制御システム5は、トランス一次側短絡スイッチ13の閉路状態を所定時間の間、継続させる。この所定時間は、分散型電源装置11が単独運転を検出し、単独運転を停止させるまでの時間とすることが好ましい。
【0033】
制御システム5は、分散型電源装置11との間の点線で示すように、分散型電源装置11と通信できるようにしてもよい。通信は配電線を使用してもよいし、配電線とは別の通信線を使用してもよい。
【0034】
分散型電源装置11は、単独運転を検出し、その検出に基づき、単独運転を停止させると、その停止の情報を制御システム5に通知する。制御システム5は、分散型電源装置11側から単独運転停止の情報を通知されると、トランス一次側短絡スイッチ13を閉路から開路に切り替えるようにしてもよい。
【0035】
図2を参照して本発明の他の実施形態の配電システムを説明する。図2は、本発明の他の実施形態の配電システムの概略を示す図である。図2の配電システムにおいては、親局である電力設備遠隔監視装置5aと、配電用子局5bとを備える。電力設備遠隔監視装置5aは、例えば、配電用変電所に配置される。配電用子局5bは、例えば柱上トランス7側に配置される。電力設備遠隔監視装置5aは、配電用子局5bに負荷側の停電を指令する。配電用子局5bは、この指令に応答して、区分開閉器3を開路側に、また、トランス一次側短絡スイッチ13を閉路側に駆動する制御を行う。これにより、柱上トランス7の一次側両端子7a,7b間は、短絡される。
【0036】
なお、実施形態では柱上トランス7であるが、これに限定されず、地上設置型トランスや、その他のトランスでもよい。
【0037】
図3および図4を参照して、本発明のさらに他の実施形態にかかる配電システムを説明する。図3は、同実施形態の配電システムの概略を示す図であり、図4はその動作の説明に供するタイミングチャートである。この配電システムにおいては、柱上トランス7の一次側両端子7a,7b間に、トランス一次側短絡スイッチ13と共に短絡電流突入防止のための抵抗15を挿入し、また、柱上トランス7の一次側端子7aと高圧配電線1の負荷側線路1c1との間に、短絡防止スイッチ17を介装している。
【0038】
配電用子局5bは、電力設備遠隔監視装置5aからの指令により、配電用開閉器3、トランス一次側短絡スイッチ13、短絡防止スイッチ17の開路および閉路のタイミングを図4に示すタイミングで制御する。
【0039】
すなわち、図4で示すように、配電用子局5bは、信号S1により区分開閉器3と短絡防止スイッチ17とを開路し、期間T1の経過後に、信号S2によりトランス一次側短絡スイッチ13を開路から閉路に切り替える。配電用子局5bは、信号S3により区分開閉器3を開路から閉路に切り替える。そして、期間T2の経過後に、信号S4によりトランス一次側短絡スイッチ13を閉路から開路に切り替える。配電用子局5bは、トランス一次側短絡スイッチ13を閉路から開路に切り替えてから、期間T3の経過後に、信号S5により短絡防止スイッチ17を開路から閉路に切り替える。
【0040】
すなわち、配電用子局5bによる図4で示すタイミング制御により、まず、期間T1の確保、つまり、短絡防止スイッチ17が開路の状態で、区分開閉器3の開路とトランス一次側短絡スイッチ13の開路とが同時に発生する期間T1の確保で、高圧配電線1の電源側線路1b,1cに、トランス一次側が、トランス一次側短絡スイッチ13で短絡された状態で接続されないようにしている。
【0041】
また、期間T2の確保、つまり、短絡防止スイッチ17が開路の状態を維持している状態で、区分開閉器3が開路から閉路に切り替わってから、トランス一次側短絡スイッチ13が閉路から開路に切り替わるまでの期間T2の確保で、一般電気事業者が要求する停電時間が確保される。
【0042】
さらに、期間T3の確保、つまり、短絡防止スイッチ17が開路の状態において、区分開閉器3が閉路の状態にあり、この状態で、トランス一次側短絡スイッチ13が閉路から開路に切り替わってから、短絡防止スイッチ17が開路から閉路に切り替わるまでの期間T3の確保で、トランス一次側両端子7a,7b間が開放後に、当該トランス一次側両端子7a,7bが負荷側の高圧配電線1b1,1c1に接続されるようにする。
【符号の説明】
【0043】
1 高圧配電線
3 区分開閉器
5 制御システム
7 柱上トランス
9 低圧配電線
11 分散型電源装置
13 トランス一次側短絡スイッチ
17 短絡防止スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧配電線に介装された区分開閉器と、一次側が高圧配電線に接続され、二次側が低圧配電線に接続されたトランスとを含む配電システムにおいて、前記トランスの一次側端子間に並列にトランス一次側短絡スイッチを設け、前記トランス一次側短絡スイッチは、前記区分開閉器が開路しているときは閉路して、前記トランスの一次側端子間を短絡することを特徴とする配電システム。
【請求項2】
親局である電力設備遠隔監視装置からの指令に応答する配電用子局を備え、前記配電用子局は、前記親局からの指令に応答して前記区分開閉器を閉路から開路に切り替えると、前記トランス一次側短絡スイッチを開路から閉路に切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の配電システム。
【請求項3】
前記トランスの両一次側端子のうちの少なくとも一方の端子と、該一方の端子が接続される前記負荷側高圧配電線との間に、短絡防止スイッチを介装し、
前記配電用子局は、前記短絡防止スイッチの開路および閉路を制御して、前記区分開閉器と、前記トランス一次側短絡スイッチとが同時に閉路する期間を無くす、ことを特徴とする請求項1または2に記載の配電システム。
【請求項4】
前記配電用子局は、前記短絡防止スイッチを開路に維持した状態で、前記区分開閉器を開路から閉路に切り替え(第1切り替え)、この第1切り替えから、一定期間の経過後に、前記トランス一次側短絡スイッチを閉路から開路に切り替え(第2切り替え)、この第2切り替えから一定期間の経過後に、前記短絡防止スイッチを開路から閉路に切り替える、ことを特徴とする請求項3に記載の配電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−191756(P2012−191756A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53303(P2011−53303)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】