説明

配電機器

【課題】装柱部材と腕金取付部材との両取付装置を設けつつ、軽量化された配電機器を提供する。
【解決手段】配電機器としての開閉器1は、開閉器1本体の上面1bに取り付けられ、電柱上の腕金に吊下げ可能な腕金取付部材2と、開閉器1本体の電柱に取り付けられた際に電柱側となる面である背面1cに取り付けられ、電柱14に装着可能な装柱部材7とが備えられる。開閉器1は、腕金取付部材2の開閉器1の背面側端部と、装柱部材7の開閉器1の上側端部とが連結された一体構造である。このため、電柱に開閉器1を取り付ける場合に開閉器1の背面と上面との二箇所で開閉器1を支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開閉器等の配電機器を電柱と電柱上の腕金とに取り付け可能な配電機器の取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉器等の配電機器には、電柱に取り付けられる際に用いる装柱部材と、電柱上の腕金に取り付けられる際に用いる腕金取付部材との両取付装置を設けたものがある。装柱部材は、通常配電機器の電柱と対向する面(背面)に固定されており、腕金取付部材は、通常配電機器の上面に固定されている。これら装柱部材と腕金取付部材とは、設置場所の状況に応じて選択されるため、それぞれが配電機器の重量を支持できるように配電機器本体と溶接固定又はボルト固定されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−65865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特に上記の配電機器の装柱部材は、配電機器の背面のみ又は背面と上面における背面側の一部、すなわち配電機器の背面側の一部分とで配電機器を片持ち支持している。このため、配電機器の背面側部分に配電機器の荷重が大きく掛かることとなる。そのため、強度を持たせるために配電機器の板厚や装柱部材の肉厚を厚くする必要があり、装柱部材を含めた配電機器の重量が重くなる要因となっていた。
【0004】
一方で、上記のような配電機器の取り付け作業等においては、配電機器の重量の軽い方が運搬や作業が容易となるため、作業者からは配電機器の軽量化が求められていた。
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装柱部材と腕金取付部材との両取付装置を設けつつ、軽量化された配電機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、配電機器本体の上面に取り付けられ、電柱上の腕金に吊下げ可能な腕金取付部材と、配電機器本体の電柱に取り付けられた際に電柱側となる面である背面に取り付けられ、電柱に装着可能な装柱部材とが備えられた配電機器において、前記腕金取付部材の配電機器の背面側端部と、前記装柱部材の配電機器の上側端部とが連結された一体構造であることをその要旨としている。
【0006】
同構成によれば、腕金取付部材の配電機器の背面側端部と、装柱部材の配電機器の上側端部とが連結された一体構造であるため、電柱に配電機器を取り付ける場合に配電機器の背面と上面との二箇所で配電機器を支持することができる。このため、装柱部材が配電機器の背面のみ、又は背面と上面における背面側の一部とで配電機器を支持することと比較して、開閉器の背面部分や装柱部材に掛かる荷重を抑制することができ、配電機器の板厚や装柱部材の肉厚を薄くすることができる。その結果、配電機器自体や装柱部材の重量を軽くすることができ、ひいては配電機器全体を軽量化することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配電機器において、前記装柱部材の上側端部は、配電機器本体の上面よりも上方へ延出し、前記腕金取付部材の背面側端部は、配電機器本体の背面側へ延出し、前記装柱部材の上方において前記腕金取付部材と前記装柱部材とが連結されることをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、装柱部材の上側端部が配電機器本体の上面よりも上方へ延出するため、配電機器を電柱に取り付けた際に、電柱と装柱部材との接触面積が従来の配電機器よりも増える。よって、従来の配電機器よりも取り付けた際に安定させることができる。また、装柱部材の上側端部が配電機器本体の上面よりも上方へ延出するため、電柱に配電機器を取り付ける場合に装柱部材が配電機器本体に隠れず、作業者が目視することができる。このため、取り付け作業時等に配電機器の電柱への取り付け状態を確認することができる。
【0009】
腕金取付部材の背面側端部が配電機器本体の背面側へ延出するため、配電機器を腕金に取り付けた際に、配電機器と腕金との接触面積が従来の配電機器よりも増える。よって、従来の配電機器よりも取り付けた際に安定させることができる。
【0010】
装柱部材の上側端部が配電機器本体の上面よりも上方へ延出するとともに、腕金取付部材の背面側端部は、配電機器本体の背面側へ延出し、装柱部材の上方において腕金取付部材と装柱部材とが連結するようにしたため、装柱部材を用いて開閉器を電柱に取り付けた際に掛かる荷重を装柱部材だけでなく、腕金取付部材にも分担することができ、開閉器の背面部分や装柱部材に掛かる荷重を減らすことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の配電機器において、電柱に固定された電柱取付部材の掛止部に掛止する掛止部材を前記装柱部材の上側端部に固定することをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、電柱に固定された電柱取付部材の掛止部に掛止する掛止部材が装柱部材の上側端部に固定されるため、電柱に開閉器を取り付ける場合、すなわち、装柱部材を電柱取付部材に取り付ける場合に掛止部材が電柱側に最も近い状態となり、装柱部材の掛止部材が配電機器本体に隠れず、電柱取付部材の掛止部への掛止状況を確認しながら作業することができ、取り付け作業時等に配電機器の電柱への取り付けが容易となる。また、電柱取付部材の掛止部としての凹部に掛止部材を掛止すると開閉器本体の自重により装柱部材の下側が電柱取付部材に当接し、配電機器が安定して電柱に装着される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の配電機器において、配電機器を吊り上げる際に吊り上げられる吊部が前記腕金取付部材に設けられ、前記吊部により吊り上げられた際、配電機器本体の背面側が背面側と対向する面である正面側よりも下がった状態に傾斜することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、電柱に配電機器を取り付ける場合、すなわち、装柱部材を電柱取付部材に取り付ける場合に掛止部材が電柱側に最も近い状態となり、電柱に取り付けられた電柱取付部材の掛止部に容易に取り付けられる。また、装柱部材の掛止部材を電柱取付部材の掛止部への掛止状況を確認しながら作業することができるため、取り付け作業時に配電機器の電柱への取り付けが容易になる。また、装柱部材の掛止部材を電柱取付部材の掛止部へ掛止した際、装柱部材及び電柱取付部材の下端部は当接しないため、装柱部材の掛止部材を電柱取付部材の掛止部へ掛止した時、装柱部材、電柱取付部材、及び配電機器を損傷することがない。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の配電機器において、前記吊部の中心は配電機器の重心より前記正面側へ偏移することをその要旨としている。
同構成によれば、吊部の中心が配電機器本体の重心より正面側へ偏移するため、吊部を吊り上げると配電機器本体は背面側が正面側より下がった状態となるため、配電機器を電柱に取り付ける際に、装柱部材の掛止部材が電柱側に最も近い状態となり、電柱に取り付けられた電柱取付部材の掛止部に容易に取り付けられる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の配電機器において、前記吊部の中心は配電機器の前記正面側から見て、配電機器の重心の鉛直上方に位置することをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、吊部の中心が配電機器の正面側から見て、配電機器の重心の鉛直上方に位置するため、配電機器の左右方向、すなわち配電機器の正面に対して垂直方向となるブッシングが突設された両側面に傾くことを抑制することができ、配電機器を容易に取り付けることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の配電機器において、前記腕金取付部材は、両側部に起伏可能に軸支された一対の吊下げボルトを設け、前記吊部と、一対の同吊下げボルトを軸支する軸部と、同吊部及び同軸部を接続する接続部とが一体形成されてなる吊部材を備えることをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、腕金取付部材は、吊部と、一対の吊下げボルトを軸支する軸部と、吊部及び軸部を接続する接続部とが一体に形成されてなる吊部材を備えるため、吊部と軸部とを別部材で設ける必要がない。よって、部品点数を少なくすることができる。また、吊部材は軸部により起伏可能に軸支されるため、使用しない際には倒しておくことができ、小型化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、装柱部材と腕金取付部材との両取付装置を設けた配電機器を軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明にかかる配電機器を開閉器に具体化した一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。なお、図1及び図3は、開閉器を電柱上の腕金に取り付けた状態を示している。
【0022】
図1に示されるように、開閉器1の内部には図示しない固定電極と可動電極とが備えられるとともに、開閉器1の正面1aには前記固定電極に対して前記可動電極を接離させるべく操作される操作ハンドル10が設けられている。操作ハンドル10には、開閉器1の正面1a下部に表記された前記可動電極の接離状態を示す「入」、「切」表示を指す下方に突出した指針が設けられている。開閉器1の操作ハンドル10が設けられている正面1aに対して垂直方向の両側面1d,1eには、ブッシング11,12がそれぞれ突設されている。
【0023】
図2に示されるように、開閉器1本体の上面1bには、同開閉器1をクレーン等により吊り上げられる際に用いるとともに、電柱上の腕金に取り付けられる際に用いる腕金取付部材2が上面1bに沿って配置されて、開閉器1本体に取り付けられた4本のボルト27と4つのナット28とにより開閉器1本体に固定されている。
【0024】
図4に示されるように、腕金取付部材2は、開閉器1の上面1bに固定された本体取付部材20、吊部材32、本体取付部材20に回動可能に軸支される2本の吊下げボルト22、両吊下げボルト22の間に架設される板状の支え部材23、円筒状のスペーサ25、座金24a、ナット24を備えている。右側の吊下げボルト22の支え部材23とスペーサ25との間には、固定金具29が取り付けられている。
【0025】
本体取付部材20は、両側部としての両側壁20aが長方形板材の両端部が上方へ折り曲げられることにより形成され、両側壁20aに軸受孔20bがそれぞれ形成されている。本体取付部材20の上面において前端寄りの部位には、電柱上の腕金を保持する凹部20dが形成された前側腕金保持部材20cが立設されている。本体取付部材20の前端には、前方、すなわち正面1a側へ延出した規制片20eが形成されている。規制片20eは、吊下げボルト22を前側へ吊部材32の軸部31を中心として回動させた際に支え部材23若しくは吊下げボルト22が当接し、回動を規制する。
【0026】
図3に示されるように、本体取付部材20の上面1bにおいて後端寄りの部位には、電柱上の腕金15を保持する凹部20gが形成された後側腕金保持部材20fが立設されている。なお、後側腕金保持部材20fは、腕金取付部材2の開閉器1の背面側端部を構成している。腕金取付部材2の背面側端部は、後述する装柱部材7の背面と同じ位置まで延出して形成されている。すなわち、腕金取付部材2の開閉器1の背面側端部は、開閉器1本体の正面1aの反対側にあたる開閉器1本体の電柱に取り付けられた際に電柱側となる面である背面1cよりも後方へ延出して形成されている。
【0027】
左側の吊下げボルト22と右側の吊下げボルト22との間には、支え部材23が両吊下げボルト22に沿って上下動可能に架設されている。支え部材23には、左側の吊下げボルト22を挿通する孔23aと右側の吊下げボルト22を挿入する溝23bとが形成されている。支え部材23の左側の吊下げボルト22の上方には、円筒状のスペーサ25、座金24a、ナット24が取り付けられている。支え部材23の右側の吊下げボルト22の上方には、固定金具29、円筒状のスペーサ25、座金24a、ナット24が取り付けられている。すなわち、吊下げボルト22の支え部材23とナット24との間にスペーサ25が環装されている。
【0028】
開閉器1が電柱上の腕金15に取り付けられる際には、本体取付部材20の前側腕金保持部材20c、後側腕金保持部材20fの各凹部20d,20gに腕金15を位置させ、左側の吊下げボルト22を中心に支え部材23を回動させ、支え部材23の溝23b内に右側の吊下げボルト22を挿入し、固定金具29を支え部材23に係合させる。そして、両吊下げボルト22に環装されたスペーサ25を介してナット24を締め付けることにより、支え部材23が開閉器1の本体側へ変位され、吊下げ状態で電柱上の腕金15に取り付けられる。
【0029】
図4に二点鎖線で示されるように、収納される際には、支え部材23は規制片20eに当接されるとともに、スペーサ25を介してナット24を締め付けることにより、前側腕金保持部材20cに当接固定されている。なお、両側壁20a、前側腕金保持部材20c、後側腕金保持部材20fの高さ寸法は、支え部材23の幅寸法と同一寸法に形成されている。
【0030】
図1に示されるように、吊部材32は、本体取付部材20の両軸受孔20bに吊下げボルト22を回動可能に軸支する軸部31と、その右端部に連結される接続部34と、接続部34に連結されて吊下げボルト22の先端面よりも下方に位置する環状の吊部33とから構成され、単一の棒材が湾曲されることにより一体に形成されている。
【0031】
具体的には、吊部材32の軸部31は、本体取付部材20の両側壁20aの両軸受孔20bに挿通するとともに、両側壁20aの内側に両吊下げボルト22は回動可能に軸支されている。吊部材32の吊部33は、両吊下げボルト22の間隙の中央、且つ支え部材23の上方に位置している。また、吊部材32の頂部、すなわち吊部33の上部は、両吊下げボルト22の上方先端以下の高さに設定されている。
【0032】
吊部材32の接続部34は、軸部31の右側端部に連結し、同右側端部から右側の吊下げボルト22に沿って支え部材23より上方へ延びる鉛直部34aと、鉛直部34aの上端から支え部材23より上部で、且つナット24より下部の間で左側へ水平に延び、両吊下げボルト22の中間位置で吊部33へ連結する水平部34bとから構成されている。接続部34の鉛直部34aは、吊下げボルト22と接触しないように吊下げボルト22に対して開閉器1の背面1c側へ傾いている。本体取付部材20の両側壁20aの両軸受孔20bに挿通された軸部31は、両側壁20aの外側にピン等を設けて抜け防止されている。
【0033】
そして、図4に示されるように、吊部材32の吊部33は、先端部が吊下げボルト22と同一直線上に位置するように吊下げボルト22に対して開閉器1の正面1a側方へ傾いている。図1に示されるように、吊部33は、操作ハンドル10(正面1a)から見て、吊部33の円の中心Pが開閉器1本体の重心Gの鉛直上方に位置している。また、図4に示されるように、ブッシング11(側面1d)から見て、吊部33の円の中心Pは、開閉器1を水平にした状態において開閉器1の重心Gの鉛直上の位置より正面1a側に偏移されている。これにより、開閉器1を吊部材32の吊部33によって吊り上げると開閉器1本体は背面1c側が正面1a側よりも下がった状態、すなわち装柱部材7側に傾斜している。開閉器1の傾斜角度は、0度超えて5度以下が好ましく、最適な角度は3度である。
【0034】
図3に示されるように、開閉器1本体の背面1cには、開閉器1を電柱に取り付ける際に用いる装柱部材7が背面1cに沿って配置されている。装柱部材7は、開閉器1本体に固定された2本のボルト76と2つのナット77とにより開閉器1本体に固定されている。
【0035】
図2に示されるように、装柱部材7の装柱部材本体70は、長方形板材よりなる取付壁74と、その左右両端部が側方へ折り曲げられた両側壁71と、両側壁71から内側へ折り曲げられた両折曲部71aとから断面C字状に形成されている。装柱部材7は、取付壁74の背面側が開閉器1本体に固定されている。図4に示されるように、装柱部材7の上側端部は、腕金取付部材2の後側腕金保持部材20fの凹部20gの底辺と同じ位置まで延出して形成されている。すなわち、装柱部材7の上側端部は、開閉器1本体の上面1bよりも上方へ延出して形成されている。両側壁71の上側端部の角には両軸孔72がそれぞれ形成され、両軸孔72には棒状の掛止部材73が挿通固定されている。両側壁71の下側端部には、板状の規制部材75が架設固定されている。装柱部材7の上側端部の底面と腕金取付部材2の後側腕金保持部材20fの側面とが当接され、ボルト78とナット79とにより締付固定されて、腕金取付部材2と装柱部材7とが連結されている。すなわち、装柱部材7と腕金取付部材2とは、開閉器1本体の背面1cから上面1bに亘りL字状の一体構造となっている。
【0036】
図2に示されるように、電柱取付部材8の両側壁81は、長方形板材の左右両端部が側方へ折り曲げられた断面コ字状に形成され、その両側壁20aには電柱14の外周に沿って巻装固定するための鎖83が取り付けされている。
【0037】
ここで、図4に矢印で示されるように、装柱部材7は、電柱14に巻装固定された電柱取付部材8に掛止されることにより電柱14に取り付けられる。詳しくは、電柱取付部材8の側壁81上部には、装柱部材7の掛止部材73が掛止される掛止部82としての凹部が形成されている。電柱取付部材8は、鎖83を電柱14の外周に沿って巻装固定される。装柱部材7は、掛止部材73が上方から電柱取付部材8の掛止部82に掛止されて、装柱部材7の両側壁71が電柱取付部材8の両側壁81を覆うように装着され、図示しない固定具により電柱14に取り付けられる。
【0038】
次に、前述のように構成された開閉器1の腕金取付部材2及び装柱部材7との取り付け態様について説明する。
図4に二点鎖線で示されるように、開閉器1の輸送時には、腕金取付部材2は、両側の吊下げボルト22及び吊部材32が腕金取付部材2の上面に対して平行となるように軸部31を回動中心として回動し、収納された状態とされる。この際、吊下げボルト22に取り付けられている支え部材23は、腕金取付部材2の規制片20eに当接し、前側腕金保持部材20cよりも外側に位置している。そして、支え部材23は、両側のナット24が手で締め付けられることで、スペーサ25により前側腕金保持部材20cの外側面に押し付けられ固定されている。また、吊部材32は、支え部材23の上方に位置して、両側のナット24が手で締め付けられることにより、軸部31が両吊下げボルト22により両軸受孔20bの内面に押し付けられ、固定されている。
【0039】
開閉器1を電柱14上の腕金15若しくは電柱14に取り付ける際には、両側のナット24を緩め、吊部材32と両吊下げボルト22とが軸部31に対して回動可能な状態とする。また、固定金具29を支え部材23から外すとともに、右側の吊下げボルト22から支え部材23の溝23bを外し、支え部材23を左側の吊下げボルト22に対して回動可能な状態とする。その後、吊部材32を開閉器1の背面1c側へ回動させ、吊部材32を立設させる。そして、クレーン等のフックを吊部材32の吊部33に引っ掛け電柱の取り付け位置近傍まで持ち上げる。その際、図1に示されるように、開閉器1の正面1a側から見て、開閉器1本体の重心Gの鉛直上方に吊部33の中心Pが位置するため、開閉器1が開閉器1の正面1aに対して垂直方向となるブッシング11,12がそれぞれ突設された両側面1d,1eの方向、すなわち左右方向に傾くことはない。図4に示されるように、吊部材32の吊部33の中心Pは、開閉器1を水平にした状態において開閉器1の重心Gの鉛直上の位置より正面1a側に偏移されているので、開閉器1を吊部材32の吊部33によって吊り上げると開閉器1は背面1c側に傾斜した状態となる。すなわち、開閉器1は、装柱部材7側に傾斜した状態となる。
【0040】
開閉器1を電柱上の腕金15に取り付ける際には、電柱上の腕金15まで開閉器1を持ち上げ、腕金15を本体取付部材20の凹部20d,20gに当接させる。そして、右側の吊下げボルト22を開閉器1の背面1c側へ回動させ、右側の吊下げボルト22を吊部材32の水平部34bに当接させ仮置きする。また、左側の吊下げボルト22を開閉器1の背面1c側へ回動させた後、支え部材23を回動させ、支え部材23の溝23b内に右側の吊下げボルト22を挿入し、固定金具29を支え部材23に係合させる。これにより、本体取付部材20の凹部20d,20gと支え部材23との間に腕金15を挟み、ナット24をラチェット工具により締め付けることにより開閉器1が電柱上の腕金15に取り付けられる。その後、クレーン等のフックを吊部材32の吊部33から外し、吊部材32の吊部33を開閉器1の背面1c側へ回動し、腕金15に当接して倒しておく。
【0041】
電柱に取り付ける際には、鎖83を電柱の外周に沿って巻装して固定された電柱取付部材8の上方まで開閉器1を移動させる。そして、クレーン等のフックを緩め、開閉器1を下方に移動させ、装柱部材7の両側壁71を電柱取付部材8の両側壁81の外面に被せて、装柱部材7の側壁71の折曲部71a及び電柱取付部材8の両側壁81で誘導させる。
【0042】
更に、クレーン等のフックを緩め、規制部材75に当接させ、装柱部材7の両側壁71の内側面及び規制部材75で誘導させながら、電柱取付部材8の掛止部82としての凹部に、装柱部材7の掛止部材73を上方から掛止させる。この時、装柱部材7の掛止部材73を両側壁71の上側端部に設けるとともに、開閉器1が、装柱部材7側に傾斜しているため、電柱取付部材8の掛止部82への掛止状況を確認しながら作業することが可能となる。すなわち、掛止部材73は開閉器1の上部の角に位置させるとともに、開閉器1を装柱部材7側に傾斜させて、掛止部材73の位置を視認できるようにしたため、取り付け作業が容易となる。そして、更にクレーン等のフックを緩め、開閉器1を下方に移動させ、装柱部材7の規制部材75を電柱取付部材8の背面に当接させ、装柱部材7を電柱取付部材8に被せた状態で電柱取付部材8の下部にある図示しない固定具にて固定させる。これにより、開閉器1が電柱に取り付けられる。その後、クレーン等のフックを吊部材32の吊部33から外し、吊部材32を開閉器1の背面1c側へ回動し、腕金15に当接して倒しておく。
【0043】
このように、装柱部材7の上端部を腕金取付部材2に連結固定することにより、装柱部材7を用いて開閉器1を電柱に取り付けた際に掛かる荷重を装柱部材7だけでなく、腕金取付部材2にも分担することができ、開閉器1の背面1c側部分や装柱部材7に掛かる荷重を減らすことができる。これにより、開閉器1の板厚や装柱部材7自体の肉厚を薄くすることができるため、開閉器1の重量を減らすことができ、ひいては開閉器1を軽量化することができる。
【0044】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)腕金取付部材2の後側腕金保持部材20fと、装柱部材7の上面側端部とが連結された一体構造であるため、電柱に開閉器1を取り付ける場合に開閉器1の背面1cと上面1bとの二箇所で開閉器1を支持することができる。このため、装柱部材7が開閉器1の背面1cのみ、又は背面1cと上面1bにおける背面1c側の一部とで開閉器1を支持することと比較して、開閉器1の背面1c部分や装柱部材7に掛かる荷重を抑制することができ、開閉器1の板厚や装柱部材7の肉厚を薄くすることができる。その結果、開閉器1自体や装柱部材7の重量を軽くすることができ、ひいては開閉器1全体を軽量化することができる。
【0045】
(2)装柱部材7と開閉器1本体の背面1cとの固定箇所としてのボルトを少なくすることができる。これにより、ボルト及びボルト固定のための受け側を開閉器1に形成しなくてもよくなるため、開閉器1を軽量化することができる。
【0046】
(3)装柱部材7の上側端部が開閉器1本体の上面1bよりも上方へ延出するようにしたため、開閉器1を電柱に取り付けた際に、電柱と装柱部材7との接触面積が従来の開閉器よりも増えるため、従来の開閉器よりも取り付けた際に安定させることができる。
【0047】
(4)腕金取付部材2の背面側端部は、開閉器1本体の背面1c側へ延出するようにしたため、開閉器1を腕金15に取り付けた際に、開閉器1と腕金15との接触面積が従来の開閉器1よりも増えるため、従来の開閉器1よりも取り付けた際に安定させることができる。
【0048】
(5)装柱部材7の上側端部が開閉器1本体の上面1bよりも上方へ延出するとともに、腕金取付部材2の背面側端部は、開閉器1本体の背面1c側へ延出し、装柱部材7の上方において腕金取付部材2と装柱部材7とが連結するようにしたため、電柱に開閉器1を取り付ける場合に装柱部材7が開閉器1本体に隠れず、目視することができる。このため、取り付け作業時等に開閉器1の電柱への取り付け状態を確認することができる。更には、装柱部材7を用いて開閉器1を電柱に取り付けた際に掛かる荷重を装柱部材7だけでなく、腕金取付部材2にも分担することができ、開閉器1の背面1c部分や装柱部材7に掛かる荷重を減らすことができる。
【0049】
(6)装柱部材7の掛止部材73を両側壁71の上側端部の角に挿通固定した。このため、電柱に開閉器1を取り付ける場合、すなわち、装柱部材7を電柱取付部材8に取り付ける場合に掛止部材73が電柱側に最も近い状態となり、装柱部材7の掛止部材73が開閉器1本体に隠れず、電柱取付部材8の掛止部82への掛止状況を確認しながら作業することができ、取り付け作業時等に開閉器1の電柱への取り付けが容易となる。また、電柱取付部材8の掛止部82としての凹部に掛止部材73を掛止すると開閉器1本体の自重により装柱部材7の下側が電柱取付部材に当接し、開閉器1が安定して電柱に装着される。
【0050】
(7)吊部材32の吊部33の中心Pを開閉器1の重心Gより正面1a側に偏移させ、開閉器1本体の背面1c側が正面1a側よりも下がった状態、すなわち装柱部材7側に傾斜するようにした。このため、電柱に開閉器1を取り付ける場合、すなわち、装柱部材7を電柱取付部材8に取り付ける場合に掛止部材73が電柱側に最も近い状態となり、電柱に取り付けられた電柱取付部材8の掛止部82に容易に取り付けられる。また、装柱部材7の掛止部材73を電柱取付部材8の掛止部82への掛止状況を確認しながら作業することができるため、取り付け作業時に開閉器1の電柱への取り付けが容易になる。また、開閉器1を装柱部材7側に傾斜するようにしたため、装柱部材7の掛止部材73を電柱取付部材8の掛止部82へ掛止した際、装柱部材7及び電柱取付部材8の下端部は当接しない。よって、装柱部材7の掛止部材73を電柱取付部材8の掛止部82へ掛止した時、装柱部材7、電柱取付部材8、及び開閉器1を損傷することがない。開閉器1の傾斜角度は、0度を超えて5度以下が好ましく、最適な角度は3度である。傾斜角度が0度の場合、すなわち吊部材32の吊部33の中心Pが開閉器1の重心Gの鉛直上方に位置する場合では、開閉器1を水平に安定して吊下げることができるが、電柱に固定された電柱取付部材8に取り付ける際には、掛止状況を確認しながら作業することが困難となる。また、装柱部材7、電柱取付部材8、開閉器1を傷つける虞がある。傾斜角度が5度を超える場合、開閉器1の傾斜が大き過ぎ不安定となるうえ、電柱上の腕金15に取り付ける際には、取り付け作業が煩雑となる。
【0051】
(8)吊部材32の吊部33の中心Pが、開閉器1の正面1a側から見て、開閉器1の重心Gの鉛直上方に位置するため、開閉器1の左右方向、すなわち開閉器1の正面1aに対して垂直方向となるブッシング11,12がそれぞれ突設された両側面1d,1e方向に傾くことを抑制することができ、安定して吊下げることができる。よって、開閉器1を容易に取り付けることができる。
【0052】
(9)吊部材32は軸部31、接続部34、及び吊部33が一体に形成されてなるようにしたため、吊部と軸部とを別部材で設ける必要がない。よって、部品点数を少なくすることができ、安価にすることができる。
【0053】
(10)腕金取付部材2の両側壁20aの両軸受孔20bに挿通するとともに、2本の吊下げボルト22は回動可能に吊部材32の軸部31で取り付けるようにした。これにより、部品点数を削減できるので、安価にでき、軽量化することもできる。また、吊部材32は軸部31により起伏可能に軸支されるため、使用しない際には倒しておくことができ、小型化することができる。
【0054】
(11)右側の吊下げボルト22の支え部材23とナット24との間に環装されるスペーサ25により、ナット24の取り付け位置が吊部材32の接続部34より上方に位置するため、開閉器1を電柱の腕金15に取り付ける時のナット24を締め付ける際にラチェット工具が吊部材32の接続部34に接触することを防止することができる。
【0055】
(12)電柱に取り付ける際には、鎖83を電柱の外周に沿って巻装して固定された電柱取付部材8の両側壁81の外面に装柱部材7の両側壁71を被せて、装柱部材7を電柱取付部材8の両側壁81及び装柱部材7の規制部材75で誘導させながら電柱取付部材8の掛止部82としての凹部に、装柱部材7の掛止部材73を上方から掛止させるようにした。このため、電柱への取り付け作業時等に開閉器1は左右方向、電柱方向に揺れることがなくなり安定するので安全に作業することができる。また、開閉器1を傷つけることなく取り付けできる。更には、装柱部材7の掛止部材73の電柱取付部材8の掛止部82への掛止が容易にできる。よって、取り付け作業時等に開閉器1の電柱への取り付けが容易になる。そして、装柱部材7の規制部材75を電柱取付部材8の背面に当接させ、装柱部材7を電柱取付部材8に被せた状態で固定具にて固定させるようにした。このため、上下、前後、左右の各方向の移動が規制されるので、確実に固定することができる。
【0056】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、装柱部材7の上端を腕金取付部材2の後側腕金保持部材20fの凹部20gの底辺と同じ位置まで延出させ、装柱部材7の上側端部の底面と腕金取付部材2の後側腕金保持部材20fとを締付固定し、腕金取付部材2と装柱部材7とを連結するようにした。しかしながら、腕金取付部材2の開閉器1の背面側端部を装柱部材7の上方まで延出させ、腕金取付部材2と装柱部材7とを連結するようにしてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、腕金取付部材2の前端の前側腕金保持部材20cに凹部20d、後端の後側腕金保持部材20fに凹部20gを形成した。しかしながら、いずれか一方の腕金保持部材に凹部を形成するようにしてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、開閉器に具体化したが、遮断器等の配電機器に適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】開閉器の正面図。
【図2】開閉器の上面図。
【図3】開閉器の背面図。
【図4】開閉器の側面図。
【符号の説明】
【0060】
1…開閉器、1a…正面、1b…上面、1c…背面、1d,1e…側面、2…腕金取付部材、7…装柱部材、8…電柱取付部材、10…操作ハンドル、11,12…ブッシング、14…電柱、15…腕金、20…本体取付部材、20a…側壁、20b…軸受孔、20c…前側腕金保持部材、20d…凹部、20e…規制片、20f…後側腕金保持部材、20g…凹部、22…吊下げボルト、23…支え部材、23a…孔、23b…溝、24…ナット、24a…座金、25…スペーサ、27…ボルト、28…ナット、29…固定金具、31…軸部、32…吊部材、33…吊部、34…接続部、34a…鉛直部、34b…水平部、70…装柱部材本体、71…側壁、71a…折曲部、72…軸孔、73…掛止部材、74…取付壁、75…規制部材、76…ボルト、77…ナット、78…ボルト、79…ナット、81…側壁、82…掛止部、83…鎖、G…重心、P…中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電機器本体の上面に取り付けられ、電柱上の腕金に吊下げ可能な腕金取付部材と、
配電機器本体の電柱に取り付けられた際に電柱側となる面である背面に取り付けられ、電柱に装着可能な装柱部材とが備えられた配電機器において、
前記腕金取付部材の配電機器の背面側端部と、前記装柱部材の配電機器の上側端部とが連結された一体構造である
ことを特徴とする配電機器。
【請求項2】
請求項1に記載の配電機器において、
前記装柱部材の上側端部は、配電機器本体の上面よりも上方へ延出し、
前記腕金取付部材の背面側端部は、配電機器本体の背面側へ延出し、
前記装柱部材の上方において前記腕金取付部材と前記装柱部材とが連結される
ことを特徴とする配電機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配電機器において、
電柱に固定された電柱取付部材の掛止部に掛止する掛止部材を前記装柱部材の上側端部に固定する
ことを特徴とする配電機器。
【請求項4】
請求項3に記載の配電機器において、
配電機器を吊り上げる際に吊り上げられる吊部が前記腕金取付部材に設けられ、
前記吊部により吊り上げられた際、配電機器本体の背面側が背面側と対向する面である正面側よりも下がった状態に傾斜する
ことを特徴とする配電機器。
【請求項5】
請求項4に記載の配電機器において、
前記吊部の中心は配電機器の重心より配電機器の前記正面側へ偏移する
ことを特徴とする配電機器。
【請求項6】
請求項5に記載の配電機器において、
前記吊部の中心は配電機器の前記正面側から見て、配電機器の重心の鉛直上方に位置する
ことを特徴とする配電機器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の配電機器において、
前記腕金取付部材は、両側部に起伏可能に軸支された一対の吊下げボルトを設け、
前記吊部と、一対の同吊下げボルトを軸支する軸部と、同吊部及び同軸部を接続する接続部とが一体形成されてなる吊部材を備える
ことを特徴とする配電機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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