説明

配電盤の交流電圧回路試験装置およびその方法

【課題】 配電盤の試験においては複数回線の受電方式(常用−予備、スポットネットワークなど)や、発電機との切り替えを有する系統などもあり、これらの受電方式については設備形態に応じて模擬回路を組まねばならなかった。
【解決手段】 主回路に直接低電圧の試験電圧を印加し、計器用変圧器出力を模擬できる装置により、電圧継電器による停復電検出や配電線遮断器の自動開放・投入動作試験を行う場合でも遮断器の状態信号を取り込んだ模擬回路を組む必要がなく、高圧配電盤であっても主回路に印加するのは低電圧(AC110V程度)であり、試験機材も軽微なもので済み安全性が高く、実運用と同等の条件で継電器の動作試験及び、計器の振れを確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電盤の試験用ターミナルに取り付けて配電盤の試験を実電圧を印加せずに配電盤の動作を試験する配電盤試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤の交流電圧回路(計器用変圧器13二次回路132)の試験には、主回路の受電遮断器12を閉路して、実電圧を計器用変圧器13の一次側131に直接印加して試験用ターミナル11の電源側111から確認を行う一次試験と、図2に示すように計器用変圧器二次試験用ターミナル11を開放した後、実系統とは別の試験電源(AC110V)3を用意し、受電遮断器12が投入した条件で補助リレー7等を駆動し、その接点を介して試験用ターミナル11の二次回路112に電圧が印加されるよう模擬回路を組み主回路とは電気的に切り離した状態で試験を行う方法がある。
【0003】
主回路に実電圧を直接印加して確認を行う一次試験は、実加圧による機器の異常有無の他通電時における各計器の振れを確認するために行われており、試験電源を計器用変圧器二次回路132に印加して行う方法は高圧配電盤などで電圧継電器16による停復電検出およびこれに伴う配電線遮断器の自動開放・投入動作の確認試験の際などに用いられ、実電圧の印加による感電事故防止及び、試験の簡素化のため図2の様な模擬回路が組まれている。
【0004】
図2においては主回路には電圧を印加しない状態で試験を行う。この場合、受電遮断器12の状態信号を受電遮断器の補助接点121により補助リレー7で増幅し、その接点14で計器用変圧器二次側の試験用ターミナルに接続された試験電源を開閉すれば、受電用遮断器12の開閉に連動して計器用変圧器二次側に電圧が印加されるため模擬的に停電・復電状態を形成することが出来計器用変圧器二次側に接続されている電圧計及び電圧継電器の動作確認が出来る。
【0005】
電圧継電器16は停電状態を検知すると付随するシーケンス回路により停電表示や警報の発令を行うと共に配電線遮断器17の自動遮断を行っている。同様に復電状態を検知すると復電表示や警報の発令を行うと共に配電線の遮断器17の自動投入を行っている。
計器用変圧器二次回路に接続された試験電源を入り切りすれば、これら一連の動作確認を行うことが出来るが、受電点〜受電遮断器〜計器用変圧器〜テストターミナル間の電気的確認は同時にされず、個別にテスタなどによる導通確認が一般的である。そのため、導通確認に時間を費やし非効率な作業であった。また、導通作業は個別に確認作業をしており、接続確認にミスもあった。
主回路に実電圧を印加して設備を運用状態に保ちながら電流電圧の計測をする方法が知られているが(例えば特許文献1参照)、本発明は配電盤を回線から分離して、より完全に安全に配電盤の試験を行うものであり、このような技術は従来知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開2005−80320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2は受電が1回線の場合を表しているが、配電盤には複数回線の受電方式(常用−予備、スポットネットワークなど)や、発電機との切り替えを有する系統などもあり、これらの受電方式については設備形態に応じて模擬回路を組まねばならない。
主回路に直接実電圧を印加する一次試験は、高圧配電盤などでは試験電圧が高くなるので試験機材が大がかりなものとなり、感電の危険性を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、計器用変圧器二次側132の試験用ターミナルの電源側111に接続する試験装置受電端91と、前記受電端91から試験電流を受ける負荷抵抗5と負荷抵抗を流れる電流を検出する電流検出センサ6と、配電盤の交流電圧回路試験時に主回路に直接試験低電圧を印加する低圧印加端子8と、それに試験電流を供給する試験電源4と、試験電流により計器用変圧器二次側132に発生する電圧により負荷抵抗5に流れる電流を検出する電流検出センサ6と、その出力信号により計器用変圧器二次側に試験電源を供給するための制御信号を出力する補助リレー7と、前記補助リレーの制御信号で前記試験電源の電流を制御する接点14と、前記接点14により制御された、前記試験電源の電流を試験用端末の二次側に接続する試験電圧出力端末9により、計器用変圧器二次側に接続された電圧継電器や計器に主回路に実電圧が印加されたときと同一の電圧が印加される様にした試験装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
配電盤の主回路に直接試験電圧を印加するため、電圧継電器16による停復電検出や配電線遮断器17の自動開放・投入動作試験を行う場合、遮断器12の状態信号を取り込んだ模擬回路を組まなくてもよいので、画一的な試験回路にすることができ、試験の効率化が図れる。
高圧配電盤であっても主回路に印加するのは低電圧(AC110V)であり、試験機材も軽微なもので済み安全性が高く、実運用と同等の条件で継電器の動作試験及び、計器の振れを確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は受電点10に低電圧(AC110V)を印加しても実電圧印加試験と同等の試験が行えることに着目したものであり、低電圧(AC110V)印加により高電圧(ここでは6600Vで説明)印加試験と変わらない試験方法である。
【0011】
受電点10に低電圧(110V)印加した状態で受電遮断器12を投入すると計器用変圧器13一次側131に低電圧(110V)印加され、その二次側132には変圧比に応じた電圧(1.83V)が発生する。この電圧は試験用ターミナル11一次側111にも同様に印加されることになる。試験装置1の電圧出力8を配電盤2の配電盤内部主回路に接続し、試験用ターミナル11の電源側111負荷側112を試験装置1に接続すると電源側111には各相に負荷抵抗5とそれに直列に接続された電流センサ6が接続され、負荷側112には低電圧(110V)が電流検出センサ6の動作接点14を介して接続される。この状態において計器用変圧器13に電圧が印加されると計器用変圧器二次側112には負荷抵抗5を通じて電流検出センサ6に電流が流れ、センサ6が動作し、低電圧(110V)が試験用ターミナル負荷側112に印加される。この試験装置1を使用すれば、主回路に実電圧(6600V)を印加することなく、受電点10〜受電遮断器12〜計器用変圧器13〜テストターミナル11間の電気的な確認が確実に出来る様になる。また、試験用ターミナル11は試験時には開放され電源側111と負荷側112は接続されておらず、受電遮断器12の入り切りにおいて、混触することもない。補助リレー7の左の情報によって、そのまま右の回路の開閉を行っており、主回路に実電圧を印加しなくても同じ条件での試験が可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0012】
配電盤の受電端に実電圧を印加することなく受電端から受電遮断器、計器用変圧器、配電盤制御手段全てを試験することができる配電盤試験装置及び試験方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る配電盤の交流電圧回路(計器用変圧器二次回路)試験回路を示す図である。
【図2】従来の配電盤の交流電圧回路(計器用変圧器二次回路)試験回路を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
1・・・試験装置
2・・・配電盤
3・・・試験電源
4・・・開閉器
5・・・負荷抵抗
6・・・電流検出センサ
7・・・補助リレー
8・・・試験装置1の試験電源電圧出力端
9・・・補助リレー接点を介して引き出された試験電源電圧出力端
91・・試験装置受電端
10・・・受電点
11・・・試験用ターミナル
111・・・試験用ターミナル電源側
112・・・試験用ターミナル負荷側
12・・・・受電遮断器
13・・・計器用変圧器(VT)
131・・VT一次側
132・・VT二次側
14・・・補助リレー接点
15・・・配電盤制御手段
16・・・電圧継電器
17・・・配電線遮断器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電盤に接続されて、停電復電の制御を行う配電盤の機能を試験する試験装置において、主回路の受電遮断器に試験電圧を供給し、試験ターミナルの負荷側に、通常運転の時にかかるであろうと同じ電圧を供給する、試験電源と、試験電源から前記受電遮断器を通して供給され計器用変圧器で変圧された試験電圧を試験装置の取り込む試験装置受電端と、前記試験電源から試験電圧を出力する出力端と前記配電盤の試験用ターミナルの電源側から計器用変圧器で変圧された試験電流を受電する受電端と、受電端に流れる電流の量に応じて、配電盤の計器用変圧器を通さないで直接前記試験電電源の電圧を試験用ターミナルの負荷側に供給する切換手段により構成される試験装置。
【請求項2】
試験用ターミナルの電源側から出力される試験電圧の各相にそれぞれに負荷抵抗と電流検出センサを付し、前記電流センサにより駆動される接点により、試験電源からの電圧を計器用変圧器を通さず前記試験用ターミナルの負荷側に供給することを特徴とする請求項1の試験装置。
【請求項3】
配電盤の受電端から実電圧ではない低圧の試験電圧を供給し、試験用ターミナルの電源側から試験電流を取り出して、その試験電流に応じて、補助リレーにより、実電源を受電したら出るであろう計器用変圧器の二次電圧を試験電源から直接試験用ターミナルの負荷側に供給し、試験電圧に応じた配電盤の機能に異常がないかを試験する配電盤の試験方法。

【図1】
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【図2】
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