説明

酒石酸耐性酸性ホスファターゼB5(TRAP5B)の基質としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用

本発明は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)の基質としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用に関する。基質は、骨吸収率、ひいては骨粗鬆症等の状態の可能性の指標としての被験体の試料中のTRAP5bの量の測定値を得るためのアッセイに使用される。また、フタレイン化合物の一リン酸エステルと、必要に応じて、全TRAPに結合する抗体とを備えるキットおよび方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)、好ましくはTRAP5bの基質としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用に関する。本発明はまた、骨吸収率の指標としての被験体の試料中のTRAP5bの量の測定値を得ること、およびそれに関する方法に関する。また、試料中のTRAP5bの測定値を得ることにおけるフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用、および本発明の方法の実行のためのキットが提供される。
【背景技術】
【0002】
骨は、2つの主要な細胞の種類である、骨形成を担う骨芽細胞、および骨破壊(吸収)を担う破骨細胞からなる。破骨細胞は、石灰化した骨に潜り込んでその構成部分に分解する多核細胞である。吸収プロセスは、骨単位に対する破骨細胞の付着を含む。次いで破骨細胞は、その細胞膜の陥入を誘発し、コラゲナーゼおよび吸収プロセスにおいて重要なその他の酵素を分泌する。骨が吸収されると、高レベルのカルシウム、マグネシウム、ホスフェートおよびコラーゲンの生成物が細胞外液中に放出される。通常、骨芽細胞および破骨細胞は、形成される量と同じ量の骨が吸収されるように平衡を保っている。小児期には骨形成が吸収を上回るが、老化プロセスが生じるにつれて吸収が形成を上回る。
【0003】
いくつかの病状が骨吸収率の変化と関連していることが知られており、おそらく最も広く発生しているのは骨粗鬆症である。この特定の状態は、破骨細胞の活性の増加の結果であると考えられ、特に更年期後の女性において骨量の低下をもたらす。これは、骨の弱体化および骨折し易さの増加をもたらす。この年齢層の女性における骨折は深刻となる可能性があり、これらの、および骨粗鬆症により引き起こされる他の症状の治療は高額となり得、医療専門家にとって難しいものとなる。骨粗鬆症に感受性の者の診断は、状態が深刻な結果となる可能性を防止するために、長年重要であると認識されている。骨粗鬆症は、例えばエストロゲン補充療法またはビスホスホネート治療により、次第に成功裏に治療されるようになってきている。
【0004】
骨粗鬆症またはその感受性の指標は、被験体における骨密度の測定値であり、低い骨密度は、骨の過剰な吸収、ひいては骨粗鬆症またはその他の状態の可能性を示唆する。この層の人々は、特に西欧諸国においては商業的に重要な市場であると認識されているため、骨密度を測定するための多くの方法および機器が開発されている。これらのうち、特異的で、迅速で、また安価なものが好ましい。
【0005】
酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)は、電気泳動移動度による酸性ホスファターゼの5型クラスに属する。TRAPは、同定されている7種の酸性ホスファターゼのうち最も酸性であり、唯一酒石酸による阻害に対する耐性を有する。TRAPは、分子の活性部位にけるスピン結合鉄単位を含有する塩基性糖タンパク質である。TRAPの二核鉄単位は、タンパク質を紫色とする2個の第二鉄イオンを含有し、その結果これは紫色酸性ホスファターゼとしても知られる。このタンパク質は、32kdの分子量を有する。例えばβ−メルカプトエタノールにより酵素が還元されると、第二鉄イオンの1つが還元され、酵素はピンク色になる。TRAPは、インビトロでタンパク質チロシンホスファターゼとして機能することができ、そのアミノ酸配列は、リンタンパク質ホスファターゼの領域と相同性の領域を含有する。しかしながら、TRAPの天然基質はまだ未知である。
【0006】
いくつかの研究は、骨吸収プロセスにおいてTRAPを関連付けている。マウスにおけるTRAP遺伝子の破壊(Hayman,A.Rら、Development第122巻:3151〜3162頁、1996)は、軟骨内骨化の途絶および軽度の骨粗鬆症をもたらし、これは成長する骨における軟骨の正常な石灰化、ならびに骨基質吸収への重要な寄与による成人骨格の完全性および代謝回転の維持には、TRAPが必要であることを示唆している。
【0007】
ヒトにおいては、TRAPが見られる唯一の正常な細胞は、破骨細胞および活性化マクロファージである。骨吸収の間、破骨細胞から血液内にTRAPが分泌されることが見出されている。したがって、血清中のTRAPの濃度は骨吸収のマーカーとして提案されており、血清中のTRAPの濃度は骨吸収率に関連していることが見出されている(Kraenzlin M.Eら、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism第71(2)巻:442〜451頁、1990;Cheung C.Kら、Clin.Chem第41(5)巻:679〜686頁、1995;Chamberlain P.ら、Clin.Chem.第41(10)巻:1495〜1499頁、1995およびHalleen J.ら、Journal of Bone and Mineral Research第11(10)巻:1444〜1452頁、1996)。
【0008】
TRAP5aおよびTRAP5bとして知られる、TRAPの2つのアイソフォームが同定されている(Lam W.K.W.ら、(Clin.Chem.第24(7)巻:1105〜1108頁、1978))。TRAP5aは、TRAP5bよりも低い最適pHで活性であり、それによりTRAPの各アイソフォームに対する機能アッセイが可能である。例えば骨吸収率の決定を目的としたTRAP5bの血清または血漿中濃度の測定における大きな課題は、主としてマクロファージおよび樹状細胞により産生される酵素の5aアイソフォームの存在である。両方のアイソフォームは、acp5遺伝子の産物であり、翻訳後の改質における変動の点でのみ異なる。TRAP5bは、TRAP5aに存在するある特定のシアル酸残基(タンパク質の炭水化物基上にある)を欠いている。このアイソフォームはまた、約14残基セグメントのアミノ酸鎖がTRAP5bからタンパク質分解により切り離されている点で異なる。その他、コアタンパク質は同一であり、純粋に免疫学的に2つの型を区別する方法は得られていない。結果として、TRAP5bに対する現行の商業的イムノアッセイは、2つの型の間の生化学的な差異を利用している。
【0009】
TRAP活性は、分光光度法により、例えば、その他の酸性ホスファターゼのほとんどを阻害する酒石酸塩の存在下で、p−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)を基質として供給することにより決定することができる。しかしながら、この方法はあまり特異的ではなく、したがってより特異的な方法すなわちイムノアッセイがTRAPの決定のために開発されている。ポリクローナル抗体を使用したTRAPの様々なアッセイが開発されている(Stepan J.Jら、(Biochem, Biophs.Res.Commun.第165巻:1027〜1034頁、1989)、Kraenzlin M.Eら(Journal of Clinical Endrocrinology and Metabolism第71(2)巻:442〜451頁、1990)およびCheung C.Kら(Clin.Chem.第41(5)巻:679〜686頁、1995))。TRAPに対してポリクローナル抗体を使用した研究では、小児および更年期後の女性が血清中に高濃度のTRAPを有していたことが示された(Halleen J.ら、Journal of Bone and Mineral Research第11巻(10:1444〜1452頁、1996)。
【0010】
Chamberlain P.ら(Clin.Chem.第41(10)巻:1495〜1499頁、1995)は、組換えにより生成されたTRAPに対しモノクローナル抗体を使用したアッセイを説明している。
【0011】
TRAP5bが、全TRAPよりも特異的な骨吸収の生化学的マーカーであるという所見に基づき、国際特許出願WO1999/050662は、TRAP5aによる干渉を低減しながら5bアイソフォームの活性を最大化するために、一般的なホスファターゼ基質であるパラ−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)を決められたpH域の緩衝液中で使用した、TRAP5bのアッセイを記載している。
【0012】
欧州特許第1598670号は、TRAP5bの測定に好適な酸性ホスファターゼ基質を記載しているが、例示的基質のうちの1つである2−クロロ−4−ニトロフェニルホスフェートの、TRAP5aを上回るTRAP5bに対する相対活性は、上述のWO1999/050662において達成された相対活性よりも0.8倍大きいにすぎない。
【0013】
米国特許第7,074,903号は、TRAP5aを上回るTRAP5bに対する特異性を示すと主張されているモノクローナル抗体を記載している。しかしながら、抗体は、(ヒト血清から単離された)TRAP5bよりも天然TRAP5aにより類似していると考えられる組換えヒトTRAP5と同等の交差反応を示す。したがって、記載されたアッセイにおける抗体の機能的特異性は、TRAP5aと5bとを区別する上で、WO1999/050662または欧州特許第1598670号に記載の活性アッセイよりも著しく有利であるわけではない。
【0014】
TRAP5aの酵素活性は5bの酵素活性より著しく低い(臨床的に有用な型)ため、既知の商業的アッセイは、ある特定の臨床的用途における使用に好適である。しかしながら、広範な数多くの研究において公開されているデータを評価すると、正常試料における5aによる干渉は50%もの高さとなり得ることが推測され得る。これは、TRAP5bレベルの変化が大きいいくつかの臨床的用途では著しい課題となることはないが、既知の方法は、TRAP5bレベルのより微妙な変化を区別する能力に欠けている可能性がある。
【0015】
既知のアッセイにおいて使用される基質pNPPおよびその4−ハロ−置換誘導体は、溶液中で安定ではない。アッセイが手作業で行われ、また基質が使用直前に溶解される固体として提供される場合は、これは問題ではない。しかしながら、基質の不安定性は、基質が溶液中で数週間安定であることを必要とする自動化免疫測定プラットフォーム上でのこれらの化合物の使用を困難とする。
【0016】
米国特許第3,975,405号は、o−クレゾールフタレインの一リン酸エステルおよび血清試料中のアルカリ性ホスファターゼ測定用の基質としてのその使用を記載しており、ビリルビンによりもたらされる干渉を回避すること、ならびにチモールフタレイン一リン酸よりも腸および胎盤のアルカリ性ホスファターゼのアイソフォームに対し敏感であることの利点を主張している。記載された方法は、アルカリ性ホスファターゼまたは酸性ホスファターゼ酵素の各種アイソフォームを区別せず、またTRAP5bの基質としてのその使用を記載していない。
【0017】
米国特許第4,045,290号は、適切なpH条件下での血清中の全アルカリ性ホスファターゼの測定、および血清中の全酸性ホスファターゼの測定のためのホスファターゼ基質としてのチモールブルー一リン酸の調製および使用を記載している。記載された方法は、アルカリ性ホスファターゼまたは酸性ホスファターゼ酵素の各種アイソフォームを区別しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第1999/050662号
【特許文献2】欧州特許第1598670号明細書
【特許文献3】米国特許第7,074,903号明細書
【特許文献4】米国特許第3,975,405号明細書
【特許文献5】米国特許第4,045,290号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Hayman,A.Rら、Development第122巻:3151〜3162頁、1996
【非特許文献2】Kraenzlin M.Eら、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism第71(2)巻:442〜451頁、1990
【非特許文献3】Cheung C.Kら、Clin.Chem第41(5)巻:679〜686頁、1995
【非特許文献4】Chamberlain P.ら、Clin.Chem.第41(10)巻:1495〜1499頁、1995
【非特許文献5】Halleen J.ら、Journal of Bone and Mineral Research第11(10)巻:1444〜1452頁、1996
【非特許文献6】Lam W.K.W.ら、(Clin.Chem.第24(7)巻:1105〜1108頁、1978)
【非特許文献7】Stepan J.Jら、(Biochem, Biophs.Res.Commun.第165巻:1027〜1034頁、1989)
【非特許文献8】Halleenら、JBMR第15巻1335〜1434頁(2000)
【非特許文献9】Tissjen(編集)、Practice and Theory of Enzyme Immunoassay.Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、第15巻第5章)
【非特許文献10】Halleenら、JMBR第14巻(464〜9頁(1999))
【非特許文献11】Janckillaら、Hybridoma第16巻、175〜82頁(1997)
【非特許文献12】Data for Biochemical Research第3版、RMC Dawsonら、Clarendon Press、Oxford 1989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、現行のアッセイと比較してTRAP5aによる干渉が実質的に低減され、また自動化方式に容易に適応可能な、TRAP5bをアッセイするための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b(TRAP5b)の基質としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用を提供する。
【0022】
本明細書において、フタレイン化合物の一リン酸エステルは、下記式:
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、
Aは、置換または非置換O−リン酸化パラ−フェノールであり、
Bは、置換または非置換リン酸パラ−フェノールであり、
Xは、COまたはSOであり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
式中、
nは、0、1または2であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはRであり、
は、ヒドロカルビル、−(CH−ヘテロシクリル、−(CH−C(O)−ヘテロシクリル(これらのいずれも、必要に応じて、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、−COOHおよびそのエステル(例えば−C(O)−C1〜6アルキル)から独立して選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基で置換されていてもよい)、ホスホルアミダイト、C1〜6アルキルならびにC1〜6アルコキシから選択され、kは0、1、2、3、4、5または6である)の化合物として定義される。
【0025】
好ましくは、フタレイン化合物の一リン酸エステルは、下記式:
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、
Xは、COまたはSOであり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
各Rは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
各Rは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
各R10は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
各R11は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
式中、
nは、0、1、または2であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはRであり、
は、ヒドロカルビル、−(CH−ヘテロシクリル、−(CH−C(O)−ヘテロシクリル(これらのいずれも、必要に応じて、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、−COOHおよびそのエステル(例えば−C(O)−C1〜6アルキル)から独立して選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基で置換されていてもよい)、ホスホルアミダイト、C1〜6アルキルならびにC1〜6アルコキシから選択され、kは、0、1、2、3、4、5または6である)の化合物として定義される。
【0028】
好ましくは、本発明の一リン酸エステルが誘導されるフタレイン化合物は、フェノールフタレインまたはスルホフタレイン、好ましくはフェノールスルホフタレインである。
【0029】
本発明はまた、試料中のTRAP5bの量の測定値を得るための方法であって、基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイするステップを含む方法を提供する。
【0030】
本発明はまた、被験体における骨吸収率を測定するための方法であって、基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイすることにより、被験体からの試料中のTRAP5bの量の測定値を得るステップを含み、試料中に存在するTRAP5bの量は骨吸収率を反映する方法を提供する。
【0031】
本発明はまた、被験体における骨吸収率の変化に関連した障害を診断するための方法であって、基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイすることにより、被験体の試料中に存在するTRAP5bの量の測定値を得るステップを含み、TRAP5bの異常な量は障害を有する被験体を示す方法を提供する。
【0032】
本発明はまた、骨吸収率の変化に関連した障害の予防または治療用の薬物の、薬物を摂取している被験体における効果をモニターする方法であって、(a)基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイすることにより、被験体の試料中に存在するTRAP5bの量の測定値を得るステップと、(b)試料中のTRAP5bの量を対照試料中のTRAP5bの量と比較するステップとを含む方法を提供する。
【0033】
本発明はまた、骨吸収率の変化に関連した障害に対する被験体の感受性をスクリーニングする方法であって、基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイすることにより、被験体の試料中に存在するTRAP5bの量の測定値を得るステップを含み、TRAP5bの異常な量はそのような障害に対する感受性を示す方法を提供する。
【0034】
好ましくは、本発明の方法は、(a)試料中に存在する全TRAPを、全TRAP、TRAP5aまたはTRAP5bに特異的な抗体に結合させるステップと、(b)未結合分画を溶離するステップと、(c)基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用して、抗体に結合したTRAP5bの活性、または未結合分画中のTRAP5bの量をアッセイすることにより、試料中のTRAP5bの量の測定値を得るステップとを含む。
【0035】
好ましくは、試料中のTRAP5bの活性をアッセイするステップは、順次的ステップ:
(a)試料を基質としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルとともにインキュベートしてTRAP5bに基質を代謝させるステップと、
(b)代謝を停止させるステップと、
(c)必要に応じて試料のpHを調節するステップと、
(d)TRAP5bによる代謝からもたらされる基質の特性の変化を測定するステップとを含む。
【0036】
また、フタレイン化合物の一リン酸エステルと、必要に応じて全TRAP、TRAP5aまたはTRAP5bに特異的な抗体とを備える、本発明の方法を実行するためのキットも提供される。
【0037】
また、TRAP5bの基質として作用することによる、骨吸収率の指標としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用も提供される。好ましくは、一リン酸エステルを被験体からの試料と接触させ、続いて前記一リン酸エステルの特性の任意の変化を測定することによる、骨吸収率の指標としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用が提供される。好ましくは、本発明の方法において、TRAP5bの基質として作用することによる、骨吸収率の指標としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1a】TRAP5aによるPTMP加水分解の経過を示す図である。各チャート内の凡例は、アッセイ毎に使用されたTRAP5の量を示す。
【図1b】TRAP5bによるPTMP加水分解の経過を示す図である。各チャート内の凡例は、アッセイ毎に使用されたTRAP5の量を示す。
【図1c】TRAP5aによるTTMP加水分解の経過を示す図である。各チャート内の凡例は、アッセイ毎に使用されたTRAP5の量を示す。
【図1d】TRAP5bによるTTMP加水分解の経過を示す図である。各チャート内の凡例は、アッセイ毎に使用されたTRAP5の量を示す。
【図2】PTMP基質を使用したTRAP5aおよびTRAP5bの、pH対活性のプロファイルを示す図である。
【図3】CM−セファロースでのヒト血清由来TRAP5aおよびTRAP5bの分画を示す図である。
【図4】pNPPベースアッセイにより測定された血清TRAP5濃度とPTMPベースアッセイにより測定された血清TRAP5濃度との間の相関関係を示す図である。
【図5】基質としてp−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)およびフェノールフタレイン一リン酸を使用した、TRAP5aおよびTRAP5bのアッセイの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書において、TRAPは、酸性ホスファターゼの5型クラスのメンバーである酒石酸耐性酸性ホスファターゼを指す。特に指定されない限り、「TRAP」または全TRAPは、酵素の両方のアイソフォーム、すなわちTRAP5aおよびTRAP5bを含む。TRAP5bは、その炭水化物鎖においてシアル酸を欠いているTRAP酵素のアイソフォームであり、pH5.7から6.1においてpNPP基質に対し最適な酵素活性を示す。TRAP5aは、その炭水化物鎖においてシアル酸残基を有する酵素の型であり、約pH4.9においてpNPPに対し最適な酵素活性を示す。TRAP、TRAP5aおよびTRAP5bという用語は、それぞれ、TRACP、TRACP5aおよびTRACP5bと交換可能に使用される。
【0040】
フタレイン化合物の一リン酸エステルは、上に定義されるような式(I)または好ましくは式(II)を有する化合物として定義される。
【0041】
一実施形態において、RからRおよびRからR11のそれぞれは、H、F、Cl、Br、−CF、−OCF、−C≡N、−OH、−NO、−SOHまたはそのエステル、−NH、−COOHまたはそのエステル、−CONH、−C1〜4アルキル(例えばMe、Et、PrもしくはBu)あるいは−C1〜4アルコキシ(例えば−OMe、−OEt、−OPrもしくは−OBu)から独立して選択される。好適なエステルには、アルキルエステル、例えばC〜Cアルキル、および活性化エステル、例えばN−ヒドロキシコハク酸イミドが含まれた。
【0042】
一実施形態において、RからRのそれぞれはHである。
【0043】
別の実施形態によれば、Rは、H、Me、Et、Pr、ハロゲンまたはトリフルオロメチルである。別の実施形態によれば、Rは、H、ブロモ、クロロ、フルオロ、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシおよびt−ブトキシから選択される。必要に応じて、RはHである。この段落において言及された実施形態のある特定の化合物において、R、RおよびRはすべてHである。いくつかの他の化合物において、それらは、H、ハロゲンおよびC〜Cアルキルから選択される。
【0044】
「ヒドロカルビル」という用語は、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有する基を含む。この用語は、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有する非環式脂肪族基、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有する環式脂肪族基、および6個の炭素原子を有する芳香族基を含む。典型的には、「ヒドロカルビル」という用語は、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。しかしながら、ヒドロカルビルという用語はまた、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルケニルおよびアルキニル基を含むように意図される。
【0045】
「ヘテロシクリル」という用語は、3個、4個、5個または6個の環員を有する環式基を含み、少なくとも1個はヘテロ原子(例えばN、OまたはS)である。
【0046】
一実施形態によれば、各Rは、H、メチル、エチル、イソ−プロピル、ブロモ、クロロ、フルオロ、またはメトキシ、エトキシ、i−プロポキシおよびt−ブトキシから独立して選択される。必要に応じて、各Rは、H、Me、Br、イソ−プロピル、またはClである。
【0047】
一実施形態によれば、各Rは、H、メチル、エチル、イソ−プロピル、ブロモ、クロロ、フルオロ、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシおよびt−ブトキシから独立して選択される。必要に応じて、各Rは、H、Me、またはBrである。
【0048】
一実施形態によれば、各R10は、HまたはMeから独立して選択される。
【0049】
一実施形態によれば、各R11は、HまたはMeから独立して選択される。
【0050】
本明細書において、独立してとは、同じかまたは異なる。
【0051】
Aが置換O−リン酸化パラ−フェノールである場合、好適な置換基には、F、Cl、Br、CH、CF、OCF、−C≡N、−OH、−NO、−SOH、−NH、−COOH、−CONH、−C1〜4アルキル(例えばMe、Et、PrもしくはBu)または−C1〜4アルコキシ(例えば−OMe、−OEt、−OPrもしくは−OBu)等が含まれる。
【0052】
Bが置換リン酸パラ−フェノールである場合、好適な置換基には、F、Cl、Br、CH、CF、OCF、−C≡N、−OH、−NO、−SOH、−NH、−COOH、−CONH、−C1〜4アルキル(例えばMe、Et、PrもしくはBu)または−C1〜4アルコキシ(例えば−OMe、−OEt、−OPrもしくは−OBu)等が含まれる。
【0053】
実施形態の1つのクラスにおいて、化合物は、別の分子、例えば生体分子、タンパク質、ポリペプチド等に直接的または間接的に結合した反応性官能基を含むRからR11から選択される少なくとも1つの置換基を有する。
【0054】
一実施形態において、RからRはそれぞれHであり、XはCOであり、R、R、R10およびR11は、第1表に定義される通りである。別の実施形態において、RからRはそれぞれHであり、XはSOであり、R、R、R10およびR11は、第2表に定義される通りである。
【0055】
一実施形態において、各R基は、独立して、ブロモ、クロロまたはフルオロであり、各R基は、独立して、メチル、エチル、イソ−プロピルまたはt−ブチルである。必要に応じて、各R基は、独立して、ブロモまたはクロロであり、各R基は、独立して、メチル、エチルまたはイソ−プロピルである。
【0056】
一実施形態において、RからR11のうちの1つ、2つまたは3つのみが、H以外である。
【0057】
一実施形態において、各R基は、独立して、ブロモ、クロロまたはフルオロであり、各R基は、独立して、ブロモ、クロロまたはフルオロである。必要に応じて、各R基は、独立して、ブロモまたはクロロであり、各R基は、独立して、ブロモまたはクロロである。
【0058】
一実施形態において、各R基は、独立して、メチル、エチル、イソ−プロピルまたはt−ブチルであり、各R10基は、メチル、エチル、イソ−プロピルまたはt−ブチルである。必要に応じて、各R基は、独立して、メチル、エチルまたはイソ−プロピルであり、各R10基は、メチル、エチルまたはイソ−プロピルである。
【0059】
本発明における好ましいフタレイン化合物の一リン酸エステルには、フェノールフタレイン一リン酸、クレゾールフタレイン一リン酸、チモールフタレイン一リン酸、o−クロロフェノールフタレイン一リン酸、フェノールレッド一リン酸、o−クレゾールレッド一リン酸、m−クレゾールパープル一リン酸、ブロモクレゾールパープル一リン酸、ブロモクレゾールグリーン一リン酸、ブロモフェノールブルー一リン酸、チモールブルー一リン酸、ブロモチモールブルー一リン酸、キシレノールブルー一リン酸、およびクロロフェノールレッド一リン酸が含まれる。
【0060】
また、本発明における基質として、TRAP5bによる代謝後に特性の変化を示す、本発明のフタレイン化合物の一リン酸エステルの官能性誘導体または塩が含まれる。
【0061】
フタレイン化合物の一リン酸エステルは、式Iのいずれかのヒドロキシル基のエステル化により生成され得る。フタレイン化合物の一リン酸エステルは、当技術分野において知られた方法、例えば米国特許第3,975,405号および米国特許第4,045,290号に記載の方法により調製することができる。
【0062】
被験体は、任意の脊椎動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトであってもよい。実施形態において、被験体は女性である。
【0063】
被験体からの試料は、被験体から得られた任意の体液試料、好ましくは血液試料、例えば血漿または血清であってもよい。他の好適な体液試料には、滑液、唾液および尿が含まれる。
【0064】
本発明において使用されるTRAPに対する抗体には、全TRAPに結合し、いずれかのアイソフォームに特異的ではない抗体、およびTRAPアイソフォームへの優先的な結合を示し、したがってTRAP5aまたはTRAP5bに特異的と言われる抗体が含まれる。抗TRAP抗体の特異性を決定するための方法は当技術分野において、例えばHalleenら、JBMR第15巻1335〜1434頁(2000)において説明されている。本発明において使用される抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであってもよいが、好ましくは後者である。抗体は、任意の種からのTRAP5bに対して惹起させてもよいが、好ましくはマウス、ラットまたはヒトからのTRAP5bに対して成長させる。好ましくは、抗体は、免疫原としてネイティブTRAP5bを使用して、また当技術分野において利用可能な方法を使用して、任意の好適な動物源、例えばマウス、ウサギ、ヒツジ、ヤギから得られる(Tissjen(編集)、Practice and Theory of Enzyme Immunoassay.Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、第15巻第5章)。本発明における使用に好ましいモノクローナル抗体には、4E6、01A、およびJ1B(Halleenら、JMBR第14巻(464〜9頁(1999))、14G6および9C5(Janckillaら、Hybridoma第16巻、175〜82頁(1997))が含まれる。
【0065】
本発明は、被験体における骨吸収率の指標として試料中のTRAPの量の測定値を得るために、TRAP5bの基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用することに基づく。これは、フタレイン化合物の一リン酸エステルがTRAP5aよりもTRAP5bにより優先的に代謝され、したがって試料中のTRAP5b活性の特異的な測定値を得るために使用することができるという観察に基づく。基質に対するTRAP5bの活性は、TRAP5bによる基質の代謝とも呼ばれるが、基質の特性を変化させ、この変化がTRAP5bの活性の測定値として、ひいては試料中のTRAP5bの量の測定値として使用される。特性は、任意の測定可能な特性、例えば構造または機能の変化であってもよい。好ましくは、変化は構造的変化であり、好ましくはTRAP5bによる基質からのリン酸基の除去、好ましくは式(I)におけるAまたはBのリン酸の除去、より特に好ましくは式(II)のリン酸エステル基の除去である。この構造的変化は、基質の色の変化をもたらし、これを測定して存在するTRAP5bの量を示すことができる。
【0066】
したがって、TRAP5bの量の測定値を得るステップは、基質に対するTRAP5bの活性をアッセイするステップを含む。アッセイは、被験体からの試料を本発明の基質とインキュベートするステップを含む。
【0067】
好ましくは、アッセイは、まず試料中のTRAPを抗体に結合させ、試料からTRAPを単離するステップを含む。使用される抗体の特異性に依存して、全TRAP、TRAP5aまたはTRAP5bのいずれかが単離され得る。次いで、使用される抗体の特異性に依存して、試料の未結合分画または結合分画に基質を添加することより、TRAP5b活性を測定することができる。非アイソフォーム特異的抗体が使用される場合、例えばTRAP5b活性に有利な条件下で活性アッセイを行う等、TRAP5b活性を特異的に決定するために他の方法が追加的に使用されてもよい。したがって、好ましくは、TRAP5bの活性をアッセイするステップは、i)TRAP5aに特異的な抗体に結合させ、TRAP5bを含む非結合分画の基質に対する活性をアッセイするステップ、(ii)TRAP5bに特異的な抗体に結合させ、TRAP5bを含む結合分画の基質に対する活性をアッセイするステップ、または(iii)非アイソフォーム特異的なTRAP抗体に結合させ、TRAP5b活性に有利な条件下で、TRAP5aおよびTRAP5bを含む結合分画の基質に対する活性をアッセイするステップを含む。好ましい実施形態において、TRAP5b活性のアッセイの特異性をさらに増加させるために、上記(i)および/または(ii)もまたTRAP5b活性に有利な条件下で行ってもよい。
【0068】
TRAP5a活性を上回るTRAP5b活性に影響する条件には、pHが含まれる。例えば、TRAP5a活性よりもTRAP5b活性に優先的なpHでアッセイを行うことができる。したがって、好ましくは、TRAP5bの活性をアッセイするステップは、pH6.8から7.6、好ましくはpH6.8から7.4、最も好ましくはpH7から7.2で行われる。
【0069】
好ましくは、基質の代謝は、反応条件を変更することにより、例えば、水酸化ナトリウム、塩酸、オルトリン酸水素二ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウムまたは1Mグリシン/NaOH pH11等の試薬を添加することにより停止される。
【0070】
TRAP5bの代謝に起因した基質の特性の変化は、任意の好適な手段を使用して測定することができる。変化が色の変化となる場合、これは好ましくは分光光度計を使用して測定される。得られた値は、TRAP5bによる活性の量の指標として使用することができ、したがって試料中のTRAP5bの量の測定値として使用することができる。この値は、較正された標準またはチャートとの比較により、TRAP5bの量に変換することができる。
【0071】
分光光度計を使用して基質の色の変化を測定する場合、フタレイン生成物が最大吸光度を有する波長で吸光度を測定する。好ましくは、吸光度は、450nm、540nm、550nm、592nmまたは595nmで測定される。
【0072】
いくつかの基質は、試料中の任意の色の変化を観察するために、pHの調節を必要とし得る。したがって、本発明の方法は、試料中の任意の色の変化を測定する前に試料のpHを調節するステップを含んでもよい。pHは、適切な量の酸またはアルカリを添加して、試料のpHを特定の基質の任意の色の変化が観察されるpHにすることにより、調節することができる。基質の色の変化が観察されるpHは、「Data for Biochemical Research第3版、RMC Dawsonら、Clarendon Press、Oxford 1989に記載されている。
【0073】
したがって、本発明の方法は、得られたTRAP5bの測定値を、較正された標準またはチャートと比較することにより、存在するTRAP5bの量の絶対値を得ることをさらに提供し得る。絶対値は、1分当たり加水分解される基質のミクロ分子の単位で測定されるTRAP5bの量である。
【0074】
好ましくは、例えばアレイ、チップまたはマルチウェルプレート上で、複数の試料を同時にアッセイすることができる。本発明のアッセイは、好ましくは、自動化プラットフォーム上の固定化マトリックス上で行われる。好ましくは、固定化マトリックスは抗体で被覆されている。最も好ましくは、マトリックスが使用される場合、マトリックスは、例えばロボットまたはその他の自動化機器による試料のハイスループットアッセイを可能とするために、抗体が被覆される磁性ビーズを備える。
【0075】
骨吸収率の変化に関連した障害には、典型的には異常な骨密度をもたらす、骨吸収率が異常な任意の障害を含む。そのような障害には、骨粗鬆症、骨パジェット病、多発性骨髄腫、代謝性骨疾患、転移、骨病変、変形性関節症、関節リウマチおよび心臓血管障害、特に動脈硬化性プラーク形成と関連したものが含まれ得る。骨吸収率の変化は、骨が破壊または吸収される程度の変化を意味し、したがってこれは骨の密度に影響し得る。
【0076】
骨吸収率は、試料中のTRAP5bの量またはTRAP5bの活性と、骨吸収率の較正された標準またはチャートとの比較により決定することができる。得られた骨吸収率は、骨吸収率の変化と関連した障害を診断するため、またはそのような障害に対する感受性を決定するために使用することができる。好ましい実施形態において、本発明の方法は、試料中のTRAPの測定値をチャートと比較し、前記測定値を特定の障害に対する感受性、またはその存在と直接関連付けるステップを含む。
【0077】
「障害を診断する」とは、被験体における骨吸収率を評価することにより障害の存在を決定することを意味する。方法はまた、特定の障害または骨吸収率と関連していることが知られている他の症状の存在または不在を特定するステップを含んでもよい。
【0078】
「障害に対する感受性を決定する」とは、骨吸収率を評価することにより被験体における障害の発症の可能性を決定することを意味する。方法は、追加的に、前記障害の発症の可能性のその他任意の指標を特定するステップを比較してもよい。
【0079】
異常な骨吸収率と関連した障害の治療または予防における使用のための薬物の有効性をモニターすることに関連する本発明の方法は、薬物が投与された被験体からの試料中のTRAP5b活性の量を、薬物が与えられていない被験体からの対照試料と比較するステップを含む。したがって、対照試料は、好ましくはそのTRAP5b活性が異常であり、より好ましくは薬物が試験されている被験体と同じ障害を有する、試験される薬物が与えられていない被験体から採取されたものとして定義することができる。被験体は、薬物が投与された被験体と同じであっても異なっていてもよいが、好ましくは同じである。被験体が同じである場合、対照試料は、好ましくは薬物の任意の投与前に被験体から採取される。薬物の有効性をモニターする方法において、対照試料は、好ましくは好適な時間間隔で薬物の投与後に被験体から採取された、1つまたは複数の試料と比較されてもよい。薬物の有効性は、その有効性が決定される被験体からの試料における、薬物の投与後の骨吸収率の任意の変化を評価することにより決定される。
【0080】
本発明によるキットは、フタレイン化合物の一リン酸エステルと、必要に応じて、TRAP、TRAP5aおよび/またはTRAP5bに結合する抗体とを備える。好ましくは、これらは本発明のアッセイにおける使用のための別個の試薬として提供される。キットはまた、本明細書に記載のものを含む本発明の方法における使用のための試薬、使用説明書、較正チャート、その上でアッセイを行う基材、ピペット、ディスペンサ、および/またはキュベットを提供し得る。
【0081】
本発明の第1の態様に関連して本明細書に記載される実施形態は、必要な変更を加えて他の態様にも適用される。
【0082】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「備える(comprise)」および「含有する(contain)」という単語およびこれらの単語の変化形、例えば「備えている(comprising)」および「備える(comprises)」は、「含むがそれに限定されない」を意味し、他の部分、添加剤、成分、整数またはステップを除外することは意図されない(かつ除外しない)。
【0083】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、文脈により他の意味が求められない限り、単数形は複数形を包含する。具体的には、不定冠詞が使用される場合、文脈により他の意味が求められない限り、明細書は、単数形と同様複数形も企図するものとして理解されたい。
【0084】
本発明の具体的な態様、実施形態または実施例と併せて説明される特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、不適合でない限り、本明細書に記載のその他任意の態様、実施形態または実施例にも適用されるものと理解されたい。
【0085】
実施例
以下の形態の置換フェノールフタレイン一リン酸エステルまたは塩
【0086】
【化3】

【0087】
(式中、Xは、COまたはSOであり、
は、H、アルキル(メチル、エチル、イソプロピル)、ハロゲン(ブロモ、クロロ、フルオロ)、またはアルコキシ(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、t−ブトキシ)から選択され、
は、H、アルキル(メチル、エチル、イソプロピル)、ハロゲン(ブロモ、クロロ、フルオロ)、またはアルコキシ(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、t−ブトキシ)から選択され、
10は、Hまたはメチルから選択され、
11は、Hまたはメチルから選択され、
は、H、ハロゲン(ブロモ、クロロ、フルオロ)またはアルコキシ(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、t−ブトキシ)から選択され、
、RおよびRは、Hである)。
【0088】
実施例は、置換「フェノールフタレイン様」一リン酸エステルまたは塩を含み、式中、XはC=Oであり、R、R、RはHであり、R、R〜R11は第3表に定義される。
【0089】
【表1】

【0090】
実施例は、置換「フェノールスルホンフタレイン様」一リン酸エステルまたは塩を含み、式中、XはSOであり、R、R、RはHであり、R、R〜R11は第4表に定義される。
【0091】
【表2】

【0092】
本発明における使用のための一リン酸エステルは、米国特許第3,975,405号および米国特許第4,045,290号に記載のような方法により調製することができる。フェノールフタレイン一リン酸は、Sigma−Aldrich社(品番P5758)から購入し、チモールフタレイン一リン酸は、TCI社(品番T0863)から購入した。
【実施例1】
【0093】
フェノールフタレイン一リン酸およびチモールフタレイン一リン酸がTRAP5aおよびTRAP5bの基質であることの実証
マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp)を、3.0mg/L精製Mab IgGの10mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中溶液から、1ウェル当たり100μLでマウス抗TRAP5(クローンO1A)で被覆し、室温で一晩インキュベートした。被覆したプレートを、10mMリン酸緩衝生理食塩水、0.05%Tween20で3回洗浄した。5%乳糖、0.5%BSAの安定化試薬を1ウェル当たり250μLで添加し、少なくとも10分間インキュベートし、次いで液体を吸引した。被覆されたプレートを35℃で一晩乾燥させ、次いで水分から保護して2〜8℃で保存した。
【0094】
Lamら、Clin.Chem.第24(7)巻:1105〜1108頁、1978に記載の手順を修正した手順を用いて、血清由来TRAP5aおよびTRAP5bをイオン交換クロマトグラフィーで分離した。100〜500mLのヒト血清を100%酢酸で約pH5.0に調節し、必要に応じて等体積の10mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH4.9で希釈した。遠心分離および濾過による清澄化の後、酸性化した血清をCM−セファロース(Sigma社製、品番CCF100)の1cm×100〜150cmカラムに適用し、150〜800mMの線形NaCl勾配でカラムを展開した。TRAP5aおよびTRAP5b活性を含有する分画を、原則的にLamら、Clin.Chem.第24(7)巻:1105〜1108頁、1978に記載の非捕捉アッセイを使用して同定した。いくつかの場合において、後述のイムノアッセイにより分画をさらにTRAP5に関してアッセイした。TRAP5aまたはTRAP5bのピークレベルを含有する分画を、さらなるアッセイのために別個にプールした。
【0095】
TRAP5aおよびTRAP5b調製物中のTRAP5タンパク質濃度を、サンドイッチイムノアッセイにより決定した。1ウェル当たり100〜200μLの試料をO1A被覆マイクロタイタープレートに適用し、4℃で一晩インキュベートした。プレートを10mMリン酸緩衝生理食塩水、0.05%Tween20で3回洗浄し、1:4000の希釈率でウサギ抗TRAP5抗体を含有する溶液100〜200μLをウェル毎に添加した。周囲温度で60分のインキュベーション後、プレートを上記のように洗浄し、1:5000の希釈率で抗ウサギIgG−ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を含有する溶液100〜200μLを添加し、周囲温度で30分間インキュベートした。さらに上述のように洗浄した後、TMB(BioFx Inc製、品番TMBW−0100−01)200μLを添加し、周囲温度で30分間インキュベートした。0.5M HCl100μLの添加により反応を停止させ、450nmでの吸光度を測定した。TRAP5タンパク質濃度は、バキュロウイルス由来組換えヒトTRAP5から作成された較正曲線を参照することにより計算した。
【0096】
基質としてフェノールフタレイン一リン酸(PTMP)およびチモールフタレイン一リン酸(TTMP)を使用するTRAP5aおよびTRAP5bの能力を、1ウェル当たり100μLの試料をO1A被覆マイクロタイタープレートに適用し、周囲温度で60分間インキュベートしてから10mMリン酸緩衝生理食塩水、0.05%Tween20で3回洗浄することにより実証した。PTMPに対する活性を試験するために、125mM MOPS緩衝液、pH7.0に溶解させた6mg/mL PTMPを含有する溶液100μLをウェル毎に添加し、37℃で0〜40分間インキュベートした。1ウェル当たり50μLの1Mグリシン/NaOH、pH11の添加により、示された時間で反応を停止させ、550mmでの吸光度を測定した。TTMPに対する活性を試験するために、80mM MOPS緩衝液、10%エタノール、pH7.0に溶解させた5mg/mL TTMPを含有する溶液100μLをウェル毎に添加し、37℃で0〜40分間インキュベートした。1ウェル当たり50μLの0.25M NaOHの添加により、示された時間で反応を停止させ、592mmでの吸光度を測定した。結果を図1に示す。
【0097】
酵素活性測定はpH7.0で行ったことから、酸性ホスファターゼのアイソフォームであるTRAP5aおよびTRAP5bの両方が、それぞれ550nmおよび592nmにおける吸光度の時間依存的な増加により判断されるように、中性pHにおいてPTMPおよびTTMP基質を容易に加水分解し得ることが判明したのは驚きであった。すべての場合において、反応速度はアッセイにおいて使用されたTRAP5aまたはTRAP5bの量とともに増加した。さらに、図1aのデータを図1bのデータと比較すると、基質としてPTMPをpH7.0で使用することで、TRAP5bの比活性がTRAP5aの比活性の約50倍であることが明らかである。同様に、図1cのデータを図1dのデータと比較すると、基質としてTTMPをpH7.0で使用することで、TRAP5bの比活性がTRAP5aの比活性の約70倍であることが明らかである。
【実施例2】
【0098】
基質としてPTMPを使用したTRAP5aおよびTRAP5bのpHプロファイル
TRAP5は、通常酸性条件下でのみ活性な酸性ホスファターゼであるため、基質としてPTMPを使用して、pH値の範囲にわたるTRAP5aおよびTRAP5b酵素活性と基質pHとの間の関係を調査した。TRAP5アッセイは、原則的に実施例1に関して記載したように行ったが、PTMP基質は、示されたpH値を得るために、一連の100mM MESまたは100mM MOPS緩衝液中6mg/mLで溶解させた。結果を図2に示す。
【0099】
TRAP5bは約pH7.0のpHで基質としてのPTMPとの最大活性を示し、TRAP5aの対応する値は約pH6.0であることが判明したのは驚きであった。これらのデータは、TRAP5の両方の型に対して一貫して酸性の最適pHを報告している本分野における以前のすべての研究者の結果とはきわめて対照的である。例えば、WO1999/050662において開示されているデータは、pNPPを使用したTRAP5aおよびTRAP5bの最適pHが、それぞれ約4.9および5.9であると示している。同様に、欧州特許第1598670号に開示されているデータは、2−クロロ−4−ニトロフェニルホスフェートを使用したTRAP5bの最適pHが6.4であることを示している。
【実施例3】
【0100】
フタレイン一リン酸ベースのTRAPbアッセイと現行の商業的TRAPbアッセイとの比較
TRAP5aおよびTRAP5bの調製物を調製し、実施例3に記載のようにTRAP5質量に関して定量化した。バキュロウイルス由来組換えヒトTRAP225μgを12Uキモトリプシンとともに周囲温度で6時間インキュベートし、この材料から一連の希釈物を調製し、WO1999/050662に基づき商業的TRAP5bイムノアッセイを使用してこれらの希釈物にTRAP5濃度(U/L)を割り当てることにより、一組のTRAP5較正物質を調製した。基質としてpNPPをpH6.1で使用するWO1999/050662に基づく商業的TRAP5bイムノアッセイに、上述のキモトリプシン処理較正物質を製造者により提供されたものと置換するよう修正を加えて、TRAP5aおよびTRAP5bの調製物をアッセイした。また、実施例3に記載のPTMPおよびTTMPベースイムノアッセイに、上述のキモトリプシン処理較正物質から作成された較正曲線を参照することによりTRAP5濃度(U/L)を計算するという追加の修正を加えて使用し、TRAP5aおよびTRAP5bの調製物をアッセイした。各基質とのTRAP5aおよびTRAP5bの調製物のU/μgでの比活性を計算したが、これらを第1表に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
pNPP基質に対する結果は、WO1999/050662に開示されたデータと一致しており、TRAP5bの比活性はTRAP5aの比活性より9倍大きく、また結果は、PTMPおよびTTMPベースアッセイにおける対応する値がそれぞれ47.5倍および65.3倍であることを明らかにしている。したがって、PTMPおよびTTMPベースアッセイにおけるTRAP5aを上回るTRAP5bの特異性は、商業的なpNPPベースアッセイよりも、約4.75倍および6.5倍高い。第1表の結果はまた、この特異性の改善が、TRAP5bの検出量の増加ではなく、PTMPおよびTTMPベースアッセイにより検出されるTRAP5aの量の減少に起因することを示している。
【実施例4】
【0103】
PTMPベースアッセイの特異性の実証
正常ヒト血清からのTRAP5aおよびTRAP5bをCM−セファロースカラムで分離し、実施例3で説明したpNPPおよびPTMPベースアッセイを使用して、分画をTRAP5bに関して評価した。結果を図3に示す。
【0104】
結果は、pNPPベースアッセイがTRAP5の2つの明確な集団を検出することを示している。分画53にピークを有する第1の集団はTRAP5aであり、分画61にピークを有する第2の集団はTRAP5bである。このデータセットは、相当量のTRAP5aを検出するという現行の商業的TRAP5bイムノアッセイの大きな欠点を明確に示しており、本実施例においてはTRAP5bとして測定された材料の約40%は実際にはTRAP5aである。しかしながら、PTMPベースアッセイは、pNPPベースアッセイよりも検出するTRAP5aが実質的に少ないことが明確に認められ、確かに、TRAP5a分画53ピークにおいて測定された量により判断されるように、本実施例において、PTMPベースアッセイは、pNPPベースアッセイにより検出されたTRAP5aのわずか16%を検出する。また、PTMPおよびpNPPベースアッセイが、同様の量のTRAP5bを検出することが明らかである。
【実施例5】
【0105】
pNPPベースアッセイにより測定された血清TRAP5bレベルとPTMPベースアッセイで測定された血清TRAP5bレベルの相関関係
商業的pNPPベースアッセイにより測定された血清TRAP5bの量と、PTMPベースアッセイにより測定された血清TRAP5bの量とを、32血清試料のパネルを使用して比較した。正確に製造者から提供された通りの商業的pNPPベースアッセイを用いて、また実施例4で説明したPTMPベースアッセイを用いて、試料をアッセイした。2つのアッセイの間の相関関係を、図4に示す。
【0106】
結果は、PTMPベースアッセイとpNPPベースアッセイとの間に良好な相関関係がある(r=0.96)ことを示している。2つのデータセットの間の関係は、以下の通りである:
(PTMPベースアッセイ)=1.09×(pNPPベースアッセイ)−0.62。
【0107】
これは、PTMPベースアッセイで得られた値が、pNPPベースアッセイを用いて得られた値よりも、約0.62U/Lだけ若干低いことを示している。この差は、PTMPベースアッセイがpNPPベースアッセイよりも検出するTRAP5aが少ないことにより説明することができる。したがって、データは、臨床的に関連した試料中のTRAP5b濃度の決定におけるPTMPベースアッセイの実用性を実証している。
【実施例6】
【0108】
酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b(TRAP5b)は、破骨細胞によってのみ分泌される。血清中のTRAP5bのレベルは、破骨細胞の存在量の測定値であり、したがって骨吸収の間接的指標である。血清中のTRAP5bの測定は、主にマクロファージおよび樹状細胞により産生される約10倍過剰(質量で)のTRAP5aの存在により、複雑である。現行の商業的TRAP5bイムノアッセイは、固定化抗体によるTRAP5の捕捉、続いてTRAP5bの比活性がTRAP5aの比活性の10〜17倍となるpHでの活性測定を含む。BoneTRAP(商標)アッセイを3×3自動化プラットフォームに移そうとした際、液相中の基質pNPPの安定性に関連した問題が生じた。
【0109】
このため、TRAP5b基質としてのフタレイン一リン酸の実用性を検査することとなった。血清由来TRAP5aおよびTRAP5b(CM−セファロースでのクロマトグラフィーにより分離された)、ならびにバキュロウイルス由来組換えTRAP5の、フタレイン一リン酸を加水分解する能力を検査した。すべてのTRAP5調製物がフェノールフタレイン一リン酸(PTMP)およびチモールフタレイン一リン酸(TTMP)を加水分解した。pNPPを用いて決定されたものと比較して、フタレイン一リン酸基質を用いたこれらの調製物の最適pHの間には、劇的で驚異的な差が観察された。例えば、PTMPを使用すると、TRAP5aおよびTRAP5bの最適pHは、それぞれ6.0および7.0であった。これらの値は、pNPPを使用して得られた値(それぞれ4.9および5.9)より著しく高い。
【0110】
次に、PTMPをpH7.0で使用して酵素活性を測定するTRAP5bのイムノアッセイを確立し、これを、pNPPをpH6.1で使用するイムノアッセイと比較した。ネイティブTRAP5形態に対して得られた典型的な比活性は、TRAP5a(PTMP);0.035U/μg:TRAP5a(pNPP);0.177U/μg:TRAP5b(PTMP);1.68U/μg:TRAP5b(pNPP);1.60U/μgであった。これらのデータは、PTMPおよびpNPPベースアッセイは同様の量のTRAP5bを検出するが、PTMPベースアッセイはpNPPベースアッセイにより検出されるTRAP5aのわずか20%を検出することを示している。34の患者試料のパネルでは、PTMPベースアッセイとpNPPベースアッセイとの間に良好な相関関係があり、R=0.96であった。さらに、PTMPベースアッセイで得られた値は、pNPPベースアッセイを用いて得られた値より若干低かった(y=1.09x−0.62)が、これはこのアッセイがより少ないTRAP5aを検出することに一致する。
【0111】
本発明者らの結果は、TRAP5bの比活性がTRAP5aの比活性の47.5倍であるアッセイを提供することにより、フタレイン一リン酸がpNPPおよび関連化合物よりもTRAP5bに特異的な基質であることを実証している。この結果はまた、TRAP5が本質的には酸性ホスファターゼではなく、酵素の最適pHは少なくとも部分的に基質の性質により決定されることを明示している。
【実施例7】
【0112】
フタレイン一リン酸エステルが市販されていない場合について、BulbenkoおよびWoodbridge(米国特許第4,045,290号)の方法により、適切なフタレイン化合物(Sigma−Aldrich社製)とオキシ塩化リン(CAS10025−87−3)との反応、続いて加水分解および精製によって一リン酸エステルを調製した。一リン酸エステルは、使用前にHPLCクロマトグラフィーによりさらに精製して未反応フタレイン染料を除去した。HPLCカラムは10mm×150mm ACE 5 C18(Advance Chromatography Technologies社製、UK)であり、注入溶媒組成は0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含有する30%メタノールおよび70%水であり、生成物は、30%メタノール0.1%TFAから100%メタノール0.1%TFAの勾配により、3mL/分で45分間にわたり溶離した。
【実施例8】
【0113】
実施例7で調製したフタレイン一リン酸エステルを、100mM MES pH7.4緩衝液中に0.47mg/mLまで希釈し、実施例1のようにアッセイに適用した。
【0114】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b(TRAP5b)の基質としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用。
【請求項2】
試料中のTRAP5bの量の測定値を得るための方法であって、基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイするステップを含む方法。
【請求項3】
被験体における骨吸収率を測定するための方法であって、基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイすることにより、被験体からの試料中のTRAP5bの量の測定値を得るステップを含み、試料中に存在するTRAP5bの量は骨吸収率を反映する方法。
【請求項4】
被験体における骨吸収率の変化に関連した障害に対する感受性を診断するための方法であって、基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイすることにより、被験体の試料中に存在するTRAP5bの量の測定値を得るステップを含み、TRAP5bの異常な量は障害を有する被験体を示す方法。
【請求項5】
骨吸収率の変化に関連した障害の予防または治療用の薬物の、薬物を摂取している被験体における効果をモニターする方法であって、(a)基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイすることにより、被験体の試料中に存在するTRAP5bの量の測定値を得るステップと、(b)試料中のTRAP5bの量を対照試料中のTRAP5bの量と比較するステップとを含む方法。
【請求項6】
骨吸収率の変化に関連した障害に対する被験体の感受性をスクリーニングする方法であって、基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用してTRAP5bの活性をアッセイすることにより、被験体の試料中に存在するTRAP5bの量の測定値を得るステップを含み、TRAP5bの異常な量はそのような障害に対する感受性を示す方法。
【請求項7】
(a)試料中に存在するTRAPを、全TRAP(TRAP5aおよびTRAP5b)に結合する抗体に結合させるステップと、(b)基質としてフタレイン化合物の一リン酸エステルを使用して抗体に結合したTRAP5bの活性をアッセイすることにより、試料中のTRAP5bの量の測定値を得るステップとを含む、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
TRAP5bの活性をアッセイするステップが、pH6.8から7.6、好ましくはpH6.8から7.4、最も好ましくはpH7で行われる、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
TRAP5bの量の測定値が、TRAP5b活性後の試料の色の測定値として得られる、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
試料中のTRAP5bの活性をアッセイするステップが、順次的ステップ:
(e)試料をフタレイン化合物の一リン酸エステルとともにインキュベートしてTRAP5bに基質を代謝させるステップと、
(f)代謝を停止させるステップと、
(g)必要に応じて試料のpHを調節するステップと、
(h)TRAP5bによる代謝からもたらされる基質の特性の変化を測定するステップと
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
試料の色が、分光光度計を使用して測定される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項のいずれか一項において得られたTRAP5bの測定値を、較正された標準またはチャートと比較することにより、試料中に存在するTRAP5bの量の絶対値を得るステップをさらに含む、請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
TRAP5bの活性をアッセイするステップが、固体基材、好ましくはプラットフォーム、またはマルチウェルプレートもしくはアレイ上で行われる、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
プラットフォームが自動化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
自動化されたプラットフォームが、磁性ビーズを備える、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
フタレイン化合物の一リン酸エステルと、必要に応じて、全TRAPに結合する抗体とを備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を実行するためのキット。
【請求項17】
TRAP5bの基質として作用することによる、骨吸収の指標としてのフタレイン化合物の一リン酸エステルの使用。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法における、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
一リン酸エステルを被験体からの試料に接触させるステップと、続いて試料の色を測定するステップとを含む、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
フタレイン化合物が、フェノールフタレインまたはスルホフタレインである、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用、方法またはキット。
【請求項21】
フタレイン化合物が、フェノールスルホフタレインである、請求項19に記載の使用、方法またはキット。
【請求項22】
フタレイン化合物が、式I:
【化1】

(式中、
Aは、置換または非置換O−リン酸化パラ−フェノールであり、
Bは、置換または非置換リン酸パラ−フェノールであり、
Xは、COまたはSOであり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
式中、
nは、0、1または2であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはRであり、
は、ヒドロカルビル、−(CH−ヘテロシクリル、−(CH−C(O)−ヘテロシクリル(これらのいずれも、必要に応じて、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、−COOHおよびそのエステル(例えば−C(O)−C1〜6アルキル)から独立して選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基で置換されていてもよい)、ホスホルアミダイト、C1〜6アルキルならびにC1〜6アルコキシから選択され、kは、0、1、2、3、4、5または6である);あるいは、
【化2】

(式中、
Xは、COまたはSOであり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
各Rは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
各Rは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
各R10は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
各R11は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−N(R)R、−C(O)N(R)RおよびRから選択され、
式中、
nは、0、1または2であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはRであり、
は、ヒドロカルビル、−(CH−ヘテロシクリル、−(CH−C(O)−ヘテロシクリル(これらのいずれも、必要に応じて、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、−COOHおよびそのエステル(例えば−C(O)−C1〜6アルキル)から独立して選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基で置換されていてもよい)、ホスホルアミダイト、C1〜6アルキルならびにC1〜6アルコキシから選択され、kは、0、1、2、3、4、5または6である)を有する化合物である、請求項1から21のいずれか一項に記載の使用、方法またはキット。
【請求項23】
フタレイン化合物の一リン酸エステルが、フェノールフタレイン一リン酸、クレゾールフタレイン一リン酸、チモールフタレイン一リン酸、o−クロロフェノールフタレイン一リン酸、フェノールレッド一リン酸、o−クレゾールレッド一リン酸、m−クレゾールパープル一リン酸、ブロモクレゾールパープル一リン酸、ブロモクレゾールグリーン一リン酸、ブロモフェノールブルー一リン酸、チモールブルー一リン酸、ブロモチモールブルー一リン酸、キシレノールブルー一リン酸、およびクロロフェノールレッド一リン酸からなる群から選択される、請求項1から22のいずれか一項に記載の使用、方法またはキット。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2011−517571(P2011−517571A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504537(P2011−504537)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050344
【国際公開番号】WO2009/127855
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(510266804)イムノディアグノスティック システムズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】