説明

酒類及びその製造方法

【課題】ショウガの有している多様な機能性成分を最大限活用することで酒類にショウガの保有する風味並びに生理活性成分を付与して改質するとともに、該ショウガにより醗酵を促進して酒の製造期間を短縮することができる酒類及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】主原料と酵母その他の副原料の添加による醗酵によりアルコールを生成する酒類において、主原料の醗酵前に副原料の一つとしてショウガを添加して醗酵させた酒類とその製造方法を基本手段としている。上記副原料の一つとして、微細化したショウガ又はショウガの搾汁液を用いる。ショウガの添加量は、醪(もろみ)容量当たり0.1〜50%(w/v)の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショウガを醗酵原料の一部として添加して醗酵させることにより、酒類にショウガの有する風味及び生理活性成分を付加して改質するとともに、該ショウガにより主原料の醗酵を促進して、醗酵時間を短縮することで効率的に製造することができる酒類及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から世界中で多種類の酒類が製造されているが、酒の種類に応じて米等の穀類,ブドウ等の果実類その他の主原料及び副原料が用いられている。例えば日本酒を例にとると、日本酒はビールやブドウ酒と同じ醸造酒に分類され、主原料及び副原料として米,水,麹,酵母が使用され、主原料としての米を糖化,醗酵させてアルコールを得ている。具体的に述べると、主原料である米の精米,洗米・浸漬・蒸し,麹造り,酒母造り,醪(もろみ)造り,上漕・火入れ・熟成という工程を経て製造される。
【0003】
他方で従来から保健機能を有する漢方薬の原料として利用されているショウガを副原料として用いた酒類も製造されている。これらの酒類は、アルコールにショウガを浸漬した後に再蒸留するか、もしくはアルコール飲料にショウガから抽出したエキスを再配合して製造されている。古来からショウガには健康維持促進作用とともに細菌類の殺菌作用があることが知られており、非特許文献1にはショウガの主成分の一つであるギンゲロールがある種の枯草菌に対しても殺菌作用があることが報告されている。
【0004】
酒類製造における醗酵時間を短縮させるため、非特許文献2,3には、例えば高屋らの報告によるメンブランバイオリアクタによるドライワインの製造において、精密濾過膜の使用で高密度の酵母を得ることで、バッチ法により醗酵速度が従前より28倍高い高速化を達成していると記載されている。
【非特許文献1】Yasumasa Yamada et al J.Antibact.Antifung.Agents 20(6),309-311(1992)
【非特許文献2】科学の領域,第37巻第1号,PP36-44(1983)
【非特許文献3】Masamitu Takaya et al. J Biosci. Bioeng.,Vol.93 No2,240-244(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記したようにショウガを副原料として用いた酒類は、アルコールにショウガを浸漬した後に再蒸留するか、もしくはアルコール飲料にショウガから抽出したエキスを再配合して製造しているので、ショウガの有している多様な機能性成分を部分的に利用しているにすぎない。更に酒類製造時に用いられる酵母に対してショウガがどのような作用を及ぼすか、また、ショウガを酵母その他の副原料の一部として添加した場合の醗酵特性に関しては不明であって、醗酵を促進させて効率よくアルコールを生成する手段に関しては従来から言及されていないのが実情である。
【0006】
前記非特許文献2,3に記載された方法では、精密濾過膜などに関連する特殊な設備装置を必要とし、しかも一般に使用途中で膜の目詰りを生じる危険性が極めて高いなどの実用上での深刻な課題がある。
【0007】
そこで本発明は上記従来の問題点に鑑みて、ショウガの有している多様な機能性成分を最大限活用し、酒類にショウガの保有する風味並びに生理活性成分を付与することで改質するとともに、該ショウガにより醗酵を促進して酒類の製造期間を短縮することができる酒類及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、酒類として、主原料及び副原料を用いて製造する酒類であって、副原料の一部としてショウガを添加して醗酵させた酒類と、主原料と酵母その他の副原料の添加による醗酵によりアルコールを生成する酒類において、主原料の醗酵前に副原料の一つとしてショウガを添加して醗酵させたことを特徴とする酒類を提供する。ショウガを添加することにより、酒類にショウガの保有する風味並びに生理活性成分を付与するとともに、これらの酒類を他の製造方法により製造した酒類に配合する。
【0009】
また、酒類の製造方法として、主原料及び副原料を用いて製造する酒類であって、副原料の一部としてショウガを添加して醗酵させる酒類の製造方法、および主原料と酵母その他の副原料の添加による醗酵によりアルコールを生成する酒類において、主原料の醗酵前に副原料の一つとしてショウガを添加して醗酵させる酒類の製造方法を提供する。そして、ショウガを添加することにより、主原料の醗酵を促進させ、又酒類にショウガの保有する風味並びに生理活性成分を付与する。更に、副原料の一つとして、微細化したショウガ又はショウガの搾汁液を用い、ショウガの添加量を、醪(もろみ)容量当たり0.1〜50%(w/v)の範囲とし、酒類として醸造酒又は蒸留酒とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる酒類及びその製造方法によれば、酒類製造時に用いられる酵母に対してショウガの及ぼす影響と、ショウガを酵母その他の副原料の一部として添加した場合の醗酵特性とに基づいてショウガの有している多様な機能性成分を最大限活用することができるので、製造する酒類にショウガの保有する風味並びに生理活性成分を付与して改質することが可能となり、しかも該ショウガにより主原料の醗酵を促進して酒の製造期間を短縮することができる。製造に際しても従来法の精密濾過膜などに関連する特殊な設備装置は必要でなく、しかも使用途中での膜の目詰りを生じるといった危険性もなく、極めて実用性が大きいという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明にかかる酒類及びその製造方法の最良の実施形態を説明する。本発明は主原料の醗酵前の段階から、副原料としてのショウガを添加して主原料の醗酵を促進させるとともに、製造する酒類の改質作用をもたらすことを特徴としている。本発明で定義する酒類とは、醗酵液を濾過処理してそのまま飲用に供する醸造酒と、醗酵液を蒸留して飲用に供する蒸留酒と、これらの醸造酒と蒸留酒を混合もしくはスピリッツ等の他の酒類とを混合した酒類を指している。
【0012】
本発明で定義するショウガとは、ショウガ科に属する植物の生根茎を指している。本発明者らは、摩り下ろし器等によって微細化したショウガもしくは該ショウガの搾汁液を用いて、ショウガの添加量と醗酵特性の関係について精査した。その結果、主原料の醗酵前の段階でショウガを添加すると、添加しない場合に較べて酵母によるアルコール醗酵が顕著に促進され、香味成分による酒類の改質効果が得られるという知見を得た。
【0013】
上記現象はショウガが酵母の醗酵生理、即ち酵母の代謝活性に影響を及ぼしていることを意味しており、ショウガを添加することによってショウガが持つ本来の香味に加えて、ショウガが酵母の代謝活性に影響を及ぼすことに起因する香味成分の生成変化による酒類の改質効果をもたらすものと考えることができる。このような傾向は主原料の相違によって若干程度の差はあるものの、何れの酒類でも同様な作用が得られる。
【0014】
ショウガの使用に際しては、生ショウガの根茎をよく洗浄し、そのままもしくは80℃〜90℃で1分〜10分間加熱処理してから摩り下ろし器等を利用して微細化もしくは圧搾機等により搾汁液とする。このようにして調製した微細なショウガもしくは搾汁液をそのまま醗酵前の主原料に添加するか、70℃〜140℃で1分〜30分間(好ましくは80℃〜120℃で1分〜10分間)加熱処理した後に主原料に添加する。ショウガの使用量は、主原料の酒類,目標とする品質により、醪容量当たり0.1〜50%(w/v)(好ましくは0.1〜25%(w/v))の範囲の何れかを選択する。
【0015】
また、本願発明はショウガを添加して主原料とともに醗酵させて製造した酒類を他の製造方法により製造した酒類に一定量配合した酒類も含むものであり、酒類としては醸造酒,蒸留酒その他の酒類或いはこれらを混合した酒類であってもよい。
【0016】
以下に記す実施例1〜6に基づいて本発明にかかる酒類の製造方法を説明する。なお、本発明はこれら実施例の記載内容に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
生根茎ショウガを洗浄後、90℃で3分間加熱処理した後に摩り下ろして微細化し、このショウガをオレンジ搾汁液に0.4%,2%,4%,8%(何れも%(w/v))添加して試料を作成し、次に各試料に酵母を3×10cell/ml加えて28℃で醗酵させた。この場合、初発のモロミ容量は560mlの一定とした。図1は実施例1による炭酸ガス発生量(g)と醗酵時間(hr)の関係を示すグラフである。図1中のコントロールとはショウガを添加していないオレンジ搾汁液の試料を醗酵させた結果を示している。
【0018】
図1によれば、コントロール試料に較べてショウガを添加した各試料は何れも醗酵速度が大であり、特にショウガの添加量が4%までは、添加量が増すにつれて醗酵速度が顕著に増大していることが分かる。ショウガの添加量が8%の場合でもショウガの添加量が4%の場合とほぼ同等の醗酵特性が得られた。また、図1の醗酵データからコントロール試料に較べてショウガをオレンジ搾汁液に添加したことによって醗酵時間は40%〜50%短縮可能であることが判明した。表1に前記コントロールの試料とショウガを添加した各試料の醗酵終了後のpH,総酸(ml),生成アルコール濃度(%)を測定した結果を示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表1によれば、生成アルコール濃度はコントロールの試料に較べてショウガを添加した試料の方がやや高い傾向となっている。得られた醗酵終了液を遠心分離して官能評価したところ、ショウガの添加量が0.4%の試料は僅かにショウガの香りを呈し、ショウガの添加量が2%の試料はほのかなショウガの香りを呈し、ショウガの添加量が4%と8%の試料ははっきりしたショウガの香りを呈しており、何れも好ましい結果が得られた。味覚としてはショウガの添加量が8%と多い試料はショウガ独特の刺激が感じられた。
【実施例2】
【0021】
生根茎ショウガを洗浄後、加熱処理せずに摩り下ろして微細化した後に80℃,10分間加熱処理を行い、冷却したショウガをブドウ搾汁液に8%,15%,23%(何れもw/v)添加して試料を作成し、次に各試料に酵母を4×10cell/ml加えて28℃で醗酵させた。この場合、初発のモロミ容量は660mlの一定とした。図2は実施例2による炭酸ガス発生量(g)と醗酵時間(hr)の関係を示すグラフである。図2中のコントロールとはショウガを添加していないブドウ搾汁液の試料を醗酵させた結果を示している。
【0022】
図2によれば、コントロール試料に較べてショウガを8%,15%添加した試料は何れも醗酵速度が大であり、その度合いは添加量8%の方が15%のものよりも大きくなっている。ショウガの添加量が23%とした場合は最初の24時間までの醗酵速度はコントロール試料より小となっているが、その後の24時間の伸びが大きく、醗酵開始から48時間の時点ではコントロール試料を超えて前記8%,15%添加の試料の醗酵速度と同等となっている。
【0023】
図2の醗酵データからコントロール試料に較べてショウガをブドウ搾汁液に添加したことによって醗酵時間は約30%短縮可能であることが判明した。表2に前記コントロール試料とショウガを添加した各試料の醗酵終了後のpH,総酸(ml),生成アルコール濃度(%)を測定した結果を示す。
【0024】
【表2】

【0025】
表2によれば、生成アルコール濃度はコントロールの試料に較べてショウガを添加した試料の方がやや高い傾向となっている。得られた醗酵終了液を遠心分離して官能評価したところ、何れもショウガの香味的特徴が強く現れており、特にショウガの添加量が23%の試料はショウガの刺激が強すぎる結果となった。しかしショウガの添加量が23%の試料の醗酵終了液をそのまま単式蒸留器で蒸留した溜液はショウガの香りが最適で好ましい結果が得られた。
【実施例3】
【0026】
乾燥麹35g,水77ml,乳酸0.07mlからなる水麹で酵母を18℃,2日間培養した酒母に、120gのα米,仕込水を入れて摩り下ろした後、90℃〜95℃で3分間加熱処理した微細化ショウガを0.4%,2.7%,10.8%(何れもw/v)添加して醗酵させ、試料を作成した。初発のモロミ容量は370mlの一定とし、醗酵温度は仕込み初日10℃とし、以降は1日毎に1℃ずつ温度を上げて15℃となった時点で昇温を停止し、15℃で12日間醗酵を継続した。図3は実施例3による炭酸ガス発生量(g)と醗酵時間(hr)の関係を示すグラフである。図3のコントロールとはショウガを添加していない試料を醗酵させた結果を示している。
【0027】
図3によれば、コントロール試料に較べてショウガを0.4%,2.7%,10.8%添加した試料は何れも炭酸ガスの発生量が増える傾向にあり、醗酵速度が大となっている。従ってショウガを酒母に添加したことにより、コントロール試料に較べて醗酵時間は約20%短縮可能であることが判明した。表3に前記コントロール試料とショウガを添加した各試料の醗酵終了後のpH,総酸(ml),生成アルコール濃度(%)を測定した結果を示す。
【0028】
【表3】

【0029】
表3によれば、生成アルコール濃度はコントロールの試料に較べてショウガを添加した試料の方がやや高い傾向となっている。得られた醗酵終了液を遠心分離して官能評価したところ、ショウガの添加量が0.4%では僅かにショウガの香りがする程度であったが、ショウガの添加量が2.7%の試料はほのかなショウガの香りと味を呈し、10.8%の場合は比較的強いショウガの香りと味を呈した。
【実施例4】
【0030】
コーングリッツ185g,グルコアミラーゼ剤(商品名グルターゼ6000),酵母培養液25ml及び所定量の水を加えた系に、生根茎ショウガを洗浄後、加熱処理せずに摩り下ろして微細化した後に圧搾して得たショウガ搾汁液を1%,8%(何れもw/v)添加して、系全体を加熱処理せずに28℃で醗酵させ、試料を作成した。初発のモロミ容量は525mlの一定とした。図4は実施例4による炭酸ガス発生量(g)と醗酵時間(hr)の関係を示すグラフである。図4中のコントロールとはショウガを添加していない試料を醗酵させた結果を示している。
【0031】
図4によれば、コントロール試料に較べてショウガを1%添加した試料は、醗酵の全期間に亘って炭酸ガスの発生量が増えており、醗酵速度が大となっている。ショウガを8%添加した試料は、醗酵開始24時間の時点でコントロール試料に較べて炭酸ガス発生量は少なかったが、醗酵開始48時間の時点ではコントロール試料よりも炭酸ガス発生量が大きくなり、醗酵開始72時間の時点ではショウガの添加量1%の場合よりも炭酸ガス発生量が大きくなり、その後も醗酵は順調に進行していることからコントロール試料よりも醗酵時間が約20%短縮可能であることが判明した。表4に前記コントロール試料とショウガを添加した各試料の醗酵終了後のpH,総酸(ml),生成アルコール濃度(%)を測定した結果を示す。
【0032】
【表4】

【0033】
表4によれば、生成アルコール濃度はコントロールの試料に較べてショウガを添加した試料の方がやや高い傾向となっている。得られた醗酵液は何れもショウガの風味がする好ましい結果が得られた。ショウガの添加量が8%の醗酵液を単式蒸留器で蒸留し、溜液を官能評価したところ、ショウガの香りがする好ましい結果が得られた。
【実施例5】
【0034】
大麦麦芽から調製した麦芽汁に0.4%のホップを加えて煮沸した後に冷却した系に、生根茎ショウガを洗浄後、摩り下ろして微細化した後に遠心分離処理し、次に90℃〜95℃で3分間加熱処理した後に冷却したショウガ搾汁液を1.5%,3%(何れもw/v)添加し、酵母を4×10cell/mlになるように加えて15℃で醗酵させた。初発のモロミ容量は325mlの一定とした。図5は実施例5による炭酸ガス発生量(g)と醗酵時間(hr)の関係を示すグラフである。図5中のコントロールとはショウガを添加していない試料を醗酵させた結果を示している。
【0035】
図5によれば、コントロール試料に較べてショウガを1.5%,3%添加した試料は、醗酵の全期間に亘って炭酸ガスの発生量が増えており、顕著な醗酵促進効果が認められ、コントロール試料よりも醗酵時間が約20%短縮可能であることが判明した。表5にコントロール試料とショウガを添加した各試料の醗酵終了後のpH,総酸(ml),生成アルコール濃度(%)を測定した結果を示す。
【0036】
【表5】

【0037】
表5によれば、生成アルコール濃度はコントロール試料に較べてショウガを添加した試料の方がやや高い傾向となっている。得られた醗酵液を遠心分離した後、珪藻土を用いて濾過してから官能評価したところ、ショウガの香りがする好ましいものが得られた。
【実施例6】
【0038】
生根茎ショウガを洗浄後、加熱処理せずに摩り下ろして微細化、圧搾した後、遠心分離して得た搾汁液を120℃,10分間加熱処理後、冷却したショウガ搾汁液をオレンジ搾汁液に7.1%(w/v)添加して試料を作成し、次に各試料に酵母を1×10cell/ml加えて28℃で醗酵させた。この場合、初発のモロミ容量は565mlの一定とした。図6は実施例6による炭酸ガス発生量(g)と醗酵時間(hr)の関係を示すグラフである。図6中のコントロールとはショウガを添加していないオレンジ搾汁液の試料を醗酵させた結果を示している。
【0039】
図6によれば、コントロール試料に較べてショウガを7.1%添加した試料は醗酵速度が大きくなっている。また、図6の醗酵データからコントロール試料に較べてショウガをオレンジ搾汁液に添加したことによって醗酵時間は約30%短縮可能であることが判明した。表6に前記コントロール試料とショウガを添加した試料の醗酵終了後のpH,総酸(ml),生成アルコール濃度(%)を測定した結果を示す。
【0040】
【表6】

【0041】
表6によれば、生成アルコール濃度はコントロールの試料に較べてショウガを添加した試料の方が高かった。得られた醗酵終了液を官能評価したところ、ショウガのほのかな香りのする好ましいものであった。
【0042】
上記したように、本発明にかかる酒類及びその製造方法によれば、醗酵液の官能検査をした結果からショウガを添加した何れの醗酵液もショウガの有する好ましい風味が付加されており、前記醗酵効率の向上作用に加えて品質的にも新しい酒質を有する酒類が製造可能になることが判明した。また、ショウガを添加したことによる醗酵時間の短縮作用は、酒類製造の効率アップに貢献するだけではなく、近年の地球温暖化対策の一つとして注目されている糖質やデンプン質を原料とする燃料用アルコール製造における醗酵プロセスの効率アップにも有用である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上詳細に説明したように、本発明によればショウガの有している多様な機能性成分を最大限活用することで酒類にショウガの保有する風味並びに生理活性成分を付与することが可能となり、しかも該ショウガにより主原料の醗酵を促進して酒の製造期間を短縮するとともに改質することができるので、米等の穀類,ブドウ等の果実類を主原料とする全ての酒類の製造に適用して効果が得られる。従って日本酒等の清酒はもとより、各種の洋酒類、醗酵液を濾過処理して得られる醸造酒、醗酵液を蒸留して得られる蒸留酒、これらの醸造酒と蒸留酒を混合もしくは他の酒類を混合した酒類に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明にかかる実施例1による炭酸ガス発生量と醗酵時間の関係を示すグラフ。
【図2】実施例2による炭酸ガス発生量と醗酵時間の関係を示すグラフ。
【図3】実施例3による炭酸ガス発生量と醗酵時間の関係を示すグラフ。
【図4】実施例4による炭酸ガス発生量と醗酵時間の関係を示すグラフ。
【図5】実施例5による炭酸ガス発生量と醗酵時間の関係を示すグラフ。
【図6】実施例6による炭酸ガス発生量と醗酵時間の関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料及び副原料を用いて製造する酒類であって、副原料の一部としてショウガを添加して醗酵させたことを特徴とする酒類。
【請求項2】
主原料と酵母その他の副原料の添加による醗酵によりアルコールを生成する酒類において、
主原料の醗酵前に副原料の一つとしてショウガを添加して醗酵させたことを特徴とする酒類。
【請求項3】
ショウガを添加することにより、酒類にショウガの保有する風味並びに生理活性成分を付与した請求項1又は2記載の酒類。
【請求項4】
副原料の一つとして、微細化したショウガ又はショウガの搾汁液を用いた請求項1,2又は3記載の酒類。
【請求項5】
ショウガの添加量を、醪(もろみ)容量当たり0.1〜50%(w/v)の範囲とした請求項1,2,3又は4記載の酒類。
【請求項6】
酒類が醸造酒又は蒸留酒である請求項1,2,3,4又は5記載の酒類。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5又は6記載の酒類を他の製造方法により製造した酒類に配合してなる酒類。
【請求項8】
主原料及び副原料を用いて製造する酒類であって、副原料の一部としてショウガを添加して醗酵させることを特徴とする酒類の製造方法。
【請求項9】
主原料と酵母その他の副原料の添加による醗酵によりアルコールを生成する酒類において、
主原料の醗酵前に副原料の一つとしてショウガを添加して醗酵させることを特徴とする酒類の製造方法。
【請求項10】
ショウガを添加することにより、主原料の醗酵を促進させる請求項8又は9記載の酒類の製造方法。
【請求項11】
ショウガを添加することにより、酒類にショウガの保有する風味並びに生理活性成分を付与する請求項8,9又は10記載の酒類の製造方法。
【請求項12】
副原料の一つとして、微細化したショウガ又はショウガの搾汁液を用いる請求項8,9,10又は11記載の酒類の製造方法。
【請求項13】
ショウガの添加量を、醪(もろみ)容量当たり0.1〜50%(w/v)の範囲とする請求項8,9,10,11又は12記載の酒類の製造方法。
【請求項14】
酒類が醸造酒又は蒸留酒である請求項8,9,10,11,12又は13記載の酒類の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−166918(P2007−166918A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364747(P2005−364747)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(502365265)株式会社坂田信夫商店 (2)
【出願人】(597154966)学校法人高知工科大学 (141)
【Fターム(参考)】