説明

酢酸セルローストウのベールを作製する方法

酢酸セルローストウをベール梱包する方法を開示する。この方法は次のステップ:
酢酸セルローストウを缶の中に置くステップと、第1のプラテンおよび第2のプラテンを有するプレスを用いて、置かれたトウを圧縮するステップであり、各プラテンは相互に対向し、各プラテンは起伏面を有しており、起伏面は少なくとも3つの傾斜部分(第1の傾斜を有してプラテンの周縁端に隣接して位置する第1の傾斜部分、第2の傾斜を有して第1の傾斜部分に隣接して位置する第2の傾斜部分、および第3の傾斜を有して第2の傾斜部分に隣接して位置する第3の傾斜部分)を有し、第1の傾斜は第2の傾斜よりも大きく、第2の傾斜は第3の傾斜よりも大きくなっているステップと、圧縮されたトウを梱包および締め付けするステップとを含み、これによって、圧縮されたトウが実質的に平坦な表面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2007年3月5日出願の同時係属米国仮出願シリアル番号第60/892,959号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、酢酸セルローストウなどの平坦または実質的に平坦な表面を有するトウ(連続したフィラメント)のベールを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
酢酸セルローストウはベールの状態で出荷される材料である。トウとはフィラメントの連続した帯(または束)を指す。典型的には、トウはベールから直接引き出されて(すなわち、開梱)、次の処理に供される。したがって、トウをベールから容易に引き出すことができることが重要である。また、これらのベールは積み重ね可能(stackable)でなければならず、このことはこれらのベールが平坦または実質的に平坦な表面を有するべきであることを意味する。
【0004】
上記トウベールの製造においては、トウを小型化(または圧縮)してベールを形成することが必要である。トウの小型化はプレス機で行われるので、幾つかの問題を引き起こすことがある。そのような問題の1つが、上部および底部が丸くなった(すなわち、「平坦でない」または「クラウン状の(crowned)」)ベールである。丸くなったベールは容易には積み重ねることができず倒れ易くなるため、これは保管、取り扱いおよび出荷の際に問題になる。小型化の間に生じる別の問題は、トウはもつれる(entangled)(すなわち、トウの層が混ざり合う(intermingled))ことがあることである。もつれたトウはベールから容易に除去することができないことがあるので、これはトウの開梱中には問題となる。
【0005】
近年、酢酸セルロース産業の幾つかはこの円形ベールの問題に対処している。
【0006】
特許文献1では、実質的に平坦な側部(すなわち、上部と底部)を有するベールが、圧縮されたトウを気密包装(airtight wrap)内に梱包する技法によって作製される。トウへの圧力が開放されてトウが拡大すると、トウは多少跳ね戻って、気密包装内に真空が生まれる。真空によって生まれるこの内圧は、側部を実質的に平坦に保つのに十分なものである。
【0007】
特許文献2では、実質的に平坦な側部(すなわち、上部と底部)を有するベールが、圧縮されたトウを気密包装材料内に包装し、次いで包装されたトウ内を(すなわち、外部真空源から)真空にする技法によって作製される。
【0008】
特許文献3では、実質的に平坦な側部(すなわち、上部と底部)を有するベールが、突出した2つの表面間でトウを圧縮する技法によって作製される。これらの突出表面は、凸形、楕円、球形、多面形(すなわち、4面体またはピラミッド形)でもよいし、曲線形状または真っ直ぐな線形状でもよい。特許文献3のパラグラフ[0036]ならびに図1および4。この技法は10分および20分という長い「プレスサイクル」を用いる。同公報の表1を参照されたい。
【0009】
特許文献4では、実質的に平坦な側部(すなわち、上部および底部)を有するベールが、凸面を有する2つのプラテン間でトウを圧縮する技法によって作製される。この凸面は滑らかな表面(例えば、連続面、切り子面、または段状面)である。特許文献4のパラグラフ[0022]ならびに図2および3。この技法は約1秒〜数分の圧縮期間を用いる。同公報のパラグラフ[0023]を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許公報第2005/0161358号
【特許文献2】米国特許公報第2004/0159658号
【特許文献3】米国特許公報第2006/0243142号
【特許文献4】米国特許公報第2006/0249406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
実質的に平坦な側部(例えば、上部および底部)を有し且つトウを容易に開梱し得る、酢酸セルローストウのベールを作製する方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
酢酸セルローストウをベール梱包する方法を開示する。この方法は次のステップ:
酢酸セルローストウを缶の中に置くステップと、第1のプラテンおよび第2のプラテンを有するプレスを用いて、置かれたトウを圧縮するステップであり、各プラテンは相互に対向し、各プラテンは起伏面(contoured face)を有しており、起伏面は少なくとも3つの傾斜部分(第1の傾斜を有してプラテンの周縁端に隣接して位置する第1の傾斜部分、第2の傾斜を有して第1の傾斜部分に隣接して位置する第2の傾斜部分、および第3の傾斜を有して第2の傾斜部分に隣接して位置する第3の傾斜部分)を有し、第1の傾斜は第2の傾斜よりも大きく、第2の傾斜は第3の傾斜よりも大きくなっているステップと、圧縮されたトウを梱包および締め付けするステップとを含み、これによって、圧縮されたトウが実質的に平坦な表面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明を説明するために、図面には現在好ましい形態を示しているが、本発明は図示された厳密な配置および手段に限定されるものではないことを理解されたい。
【0014】
【図1】トウのベールを示す図である。
【図2】分かり易いように一部を切り欠いた、トウがその中にあるベールプレスを示す略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るプラテンを示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に従って製造されたベールプラテンの一実施形態を示す斜視図である。
【図5】図4に示すプラテンを線5‐5で切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照するが、同じ番号は同じ構成要素を示し、図1にはトウのベール10を示す。ベール10がパレット12上に置かれている。ベール10は包装材料14で囲繞されるのが好ましい。ベール10はストラッピング材料16を含んでもよい。
【0016】
酢酸セルローストウのベールは、高さ30インチ(76cm)〜60インチ(152cm)、長さ46インチ(117cm)〜56インチ(142cm)および幅35インチ(89cm)〜45インチ(114cm)の範囲の寸法を有し得る。酢酸セルロースのベールは、典型的には重さが900ポンド(408Kg)〜2100ポンド(953Kg)の範囲である。
【0017】
図2を参照すると、ベールプレス30の略図が示されている。ベールプレス30は70乃至700psiをトウに及ぼすことができる従来の任意のプレスであってよい。ベールプレス30は下部プラテン36および上部プラテン38を備える。上部プラテンおよび下部プラテンは排気穴(すなわち、プラテンを貫通している穴であり、繊維が圧縮される時にその穴を通って空気が抜ける)を有さず、ストラッピング用細長穴(すなわち、プラテンの面に切り込まれた細長穴であり、ストラッピング材料がその穴を通って、圧縮される時にベールを囲繞する)を含み得る。
【0018】
一般に、トウ32は離れた場所にある缶(図示せず)の中に置かれる。次いで、トウ32は缶から移送され、プレス30のプレス壁34内の、覆われたプラテン間にセットされる(「覆われた(dressed)」とは包装材料14または包装材料14の一部を指す)。トウ32の下面は覆われた下部プラテン36上に置かれる。缶34内のトウ32の上面は、そのプラテンが下げられてトウ32を圧縮するときに覆われた上部プラテン38によって係合される。プラテン36および38を以下で更に詳細に議論する。下部プラテン36は能動(active)プラテンであってもよく、上部プラテン38は静止(stationary)プラテンであってもよいことを理解されたい。次いで、プレス30は所与の時間だけトウを圧縮する(以下で更に議論する)。圧縮後、ベールへの圧力は(例えば、プラテンを引っ込めることによって)解放され、圧縮されたベールはその最大の圧縮高さの2〜25%まで拡大される。拡大されたベールは完全に包装され、ストラッピング材料が適用される。包装され締め付けられたこのベールは、平坦または実質的に平坦な表面を有し、トウは容易に開梱され得る。
【0019】
平坦または実質的に平坦な表面を有し、容易に開梱できるトウのベールは、以下のように作製し得ることが決定された。
【0020】
第1の実施形態では、プラテンの高さ(図3の高さHを参照)は1≦H<3インチ(2.5〜7.6cm)である。標的圧力でのプレスサイクルは2乃至8分である。プラテンの形状は連続した曲線である。
【0021】
第2の実施形態では、プラテンの高さ(図5の高さHを参照)は3≦H<5インチ(7.6〜12.7cm)である。標的圧力でのプレスサイクルは0.1乃至5分である。プラテンの形状は少なくとも2つの線形傾斜部分、好ましくは少なくとも3つの線形傾斜部分を有する起伏面である。図5を参照すると、この起伏面の一例が示されている。第1の(または最初の)傾斜部分42はプラテンの周縁端に隣接する。第2の(または中間の)傾斜部分44は部分42に隣接する。第3の(または最終あるいは頂部(peak)の)傾斜部分46は第2の部分44に隣接し、プラテンの最上面を画定する。第1の部分は5°を超えるが40°未満の傾斜を有するべきである。第2の部分は5°を超えるが20°未満の傾斜を有するべきである。第3の部分は0°〜15°の傾斜を有するべきである。プラテンが対称(または正方形)である場合、各部分の傾斜は等しくなる。プラテンが非対称(または矩形)である場合、その部分の各側部の傾斜は等しくならない(反対側は同じになる)。非対称の場合、傾斜が異なる側部間では遷移部(transition)が先鋭(sharp)にならないように注意すべきであり、これらの遷移部は先鋭な縁部を形成すべきでない。これに代わり、これらの遷移部は緩やか(gradual)、すなわち一方の側から他方側に175°以上でなければならない。対角の遷移部には頂部が存在しない(線になっている)。
【0022】
第2の実施形態の上記説明では、プラテン36および38は木製(例えば、松材)である。しかし、プラテンは他の材料、例えば合成材料(例えば、ナイロン、ポリエステル)または金属(例えば、鋼)で作られていてもよい。プラテンがこれら後者の材料から製造される場合、高さ(H)は3インチ(7.6cm)以下となり得る。
【実施例】
【0023】
上記は以下の実施例によって更に説明することができる。
【0024】
本明細書において以下で詳細に記載する幾つかの繊維ベールサンプルを作製し、各繊維ベールサンプルの上面の成長を測定し、対照物と比較してベールクラウンの低減率を測定した。低減率は、平坦なプラテンから作製した対照ベールと凸形プラテンから作製した試験用ベールとの高さの差から算出する。ベール高さは、ベール表面上の最高地点の高さを用い且つ地面(ground)からの距離を測定することにより測定する。次いで、このベールを開梱し、繊維除去能力(fiber removal performance)を試験した。次いで、除去中の欠陥の数を計数し、欠陥評価指数(fault index rating)を得た。欠陥評価指数とは、加工前の開梱中の繊維の視覚的な品質検査である。ある一定の時間間隔(例えば、5〜10分)にわたって、ベールから出て行く繊維を、下流の装置に入る前に観察した。欠陥の可能性を拡大するために、この試験は一般に高速(例えば、600m/分)で行われる。指数は欠陥の長さ×倍率に基づくものである。表1は規模(scale)と倍率を示す。
【0025】
【表1】

【0026】
好適なベールではクラウン低減率が最高で欠陥指数が最低になる。上記試験結果を以下の表2に示す。生産性ならびに所望の標的ベール圧縮時間(Time at Target Bale Pressure)に基づいて、繊維ベールサンプルを製造する条件を変えた。繊維ベールサンプル1は標準的な平坦なプラテンを用いて製造し、繊維ベールサンプル2〜8は本発明に従って作製したベールプラテン(木製)を用いて製造した。
【0027】
【表2】

【0028】
本発明は、本発明の精神およびその本質的特徴から逸脱しない限り、他の形態で実施してもよく、また、本発明の範囲については、上記明細書ではなく添付の特許請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸セルローストウをベール梱包する方法であって:
酢酸セルローストウを缶の中に置くステップと、
第1のプラテンおよび第2のプラテンを有するプレスを用いて、前記置かれたトウを圧縮するステップであり、各プラテンは相互に対向し、各プラテンは起伏面を有しており、該起伏面は少なくとも3つの傾斜部分(第1の傾斜を有して前記プラテンの周縁端に隣接して位置する第1の傾斜部分、第2の傾斜を有して前記第1の傾斜部分に隣接して位置する第2の傾斜部分、および第3の傾斜を有して前記第2の傾斜部分に隣接して位置する第3の傾斜部分)を有し、前記第1の傾斜は前記第2の傾斜よりも大きく、前記第2の傾斜は前記第3の傾斜よりも大きくなっているステップと、
前記圧縮されたトウを梱包および締め付けするステップとを含み、
これによって、前記圧縮されたトウが実質的に平坦な表面を有する、
酢酸セルローストウをベール梱包する方法。
【請求項2】
前記プラテンの各々には排気穴が無い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の傾斜が40°以下であり、前記第2の傾斜が20°以下であり、前記第3の傾斜が15°以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の傾斜が5°〜40°の範囲にあり、前記第2の傾斜が5°〜20°の範囲にあり、前記第3の傾斜が0°〜15°の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各プラテンの高さが3インチ(7.6cm)より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
圧縮ステップが0.1〜5分の範囲の期間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
傾斜部分の各々が線形傾斜部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プラテンの各々が、木、合成材料または金属からなる群より選択される材料から作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酢酸セルローストウをベール梱包する方法であって:
酢酸セルローストウを缶の中に置くステップと、
第1のプラテンおよび第2のプラテンを有するプレスを用いて、前記置かれたトウを圧縮するステップであり、各プラテンは起伏面を有しており、起伏面は少なくとも2つの傾斜部分を有し、各プラテンには排気穴が無く、圧縮時間が0.1〜5分であるステップと、
前記圧縮されたトウを梱包および締め付けするステップとを含み、
これによって、前記圧縮されたトウが実質的に平坦な表面を有する、
酢酸セルローストウをベール梱包する方法。
【請求項10】
前記起伏面が少なくとも2つの傾斜部分(前記プラテンの周縁端に隣接して位置し、第1の傾斜を有する第1の傾斜部分、および前記第1の傾斜部分に隣接して位置し、第2の傾斜を有する第2の傾斜部分)を有し、前記第1の傾斜が前記第2の傾斜よりも大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の傾斜が40°以下であり、前記第2の傾斜が20°以下である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の傾斜が5°〜40°の範囲にあり、前記第2の傾斜が5°〜20°の範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
各プラテンの高さが3〜5インチの範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
各傾斜部分が線形傾斜部分である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記プラテンの各々が、木、合成材料または金属からなる群より選択される材料から作製される、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−520129(P2010−520129A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552805(P2009−552805)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/055398
【国際公開番号】WO2008/109384
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(506099834)セラニーズ アセテート,エルエルシー (21)
【Fターム(参考)】