説明

酸化防止剤水系分散溶液の製造方法及び酸化防止剤水系分散溶液

【課題】粒径の小さな酸化防止剤を、工業的に安全でかつ保存安定性に優れ、また、収率が高く、メンテナンス性に優れた酸化防止剤水系分散溶液の製造方法及び酸化防止剤水系分散溶液を提供する。
【解決手段】酸化防止剤水系分散溶液の製造方法は、下記(1)〜(3)の工程を有する。
(1)酸化防止剤を有機溶剤に溶解させ、酸化防止剤溶液を形成する工程
(2)前記酸化防止剤溶液と水系媒体とを混合し、酸化防止剤分散溶液を製造する工程
(3)前記酸化防止剤分散溶液から有機溶剤を留去し、酸化防止剤水系分散溶液を製造する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化防止剤水系分散溶液の製造方法及び酸化防止剤水系分散溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸化防止剤を粉末化し、粉末状の酸化防止剤を乳化剤又は懸濁剤をそれぞれ単独であるいは乳化剤、懸濁剤を併用して水中に分散させて酸化防止剤分散溶液を製造する方法が知られている。
このような酸化防止剤分散溶液は、塩化ビニル樹脂やABS樹脂、MBS樹脂等の製造時に、空気中の酸素や光により酸化されるのを防ぐために添加する用途や、その他、トナーの製造時にも添加する用途がある。
塩化ビニル樹脂等の製造時に添加する用途として使用される酸化防止剤分散溶液の場合、分散される酸化防止剤はボールミル等を使用して所望の粒径となるように機械的に分散し、これを水系媒体中に分散させている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−159483号公報
【特許文献2】特開平1−296259号公報
【特許文献3】特開平4−239592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の酸化防止剤分散溶液中に分散された酸化防止剤は、機械的に粉砕しているため、その粒径が2μm程度と大きく、長期間の保存によって、酸化防止剤が沈殿する場合もあり、500nm以下といったより小さな粒径の酸化防止剤分散溶液が要求されている。
また、従来の酸化防止剤分散溶液の製法では、酸化防止剤を粉体のまま小径化するので、容器への静電的付着力が強すぎて収量が悪く、機械清掃に手間がかかるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、粒径の小さな酸化防止剤を、工業的に安全でかつ保存安定性に優れ、また、収率が高く、メンテナンス性に優れた酸化防止剤水系分散溶液の製造方法及び酸化防止剤水系分散溶液を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、酸化防止剤水系分散溶液の製造方法において、
下記(1)〜(3)の工程を有することを特徴とする酸化防止剤水系分散溶液の製造方法が提供される。
(1)酸化防止剤を有機溶剤に溶解させ、酸化防止剤溶液を形成する工程
(2)前記酸化防止剤溶液と水系媒体とを混合し、酸化防止剤分散溶液を製造する工程
(3)前記酸化防止剤分散溶液から有機溶剤を留去し、酸化防止剤水系分散溶液を製造する工程
【0006】
請求項2の発明によれば、前記酸化防止剤として、ヒンダードフェノール化合物、アミン系化合物、硫黄系化合物、リン系化合物のうち、いずれかを使用することを特徴とする請求項1に記載の酸化防止剤水系分散溶液の製造方法が提供される。
【0007】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2に記載の酸化防止剤水系分散溶液の製造方法によって製造された酸化防止剤水系分散溶液において、
体積基準のメディアン径が50〜500nmであることを特徴とする酸化防止剤水系分散溶液が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記(1)〜(3)の工程を有し、酸化防止剤を有機溶剤を用いてミセル化するので、従来のように酸化防止剤を機械的に粉砕するよりも、単時間にかつ容易に小粒径・シャープ化が可能となり、工業的に安全でかつ保存安定性に優れた酸化防止剤水系分散溶液を製造することができる。また、収量が高く、機械清掃も容易でメンテナンス性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の酸化防止剤水系分散溶液及びその製造方法について説明する。
酸化防止剤水系分散溶液の製造方法は、下記(1)〜(3)の工程を有する。
(1)酸化防止剤を有機溶剤に溶解させ、酸化防止剤溶液を形成する工程
(2)前記酸化防止剤溶液と水系媒体とを混合し、酸化防止剤分散溶液を製造する工程
(3)前記酸化防止剤分散溶液から有機溶剤を留去し、酸化防止剤水系分散溶液を製造する工程
【0010】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物を用いることが好ましく、アミン系化合物、硫黄系化合物、リン系化合物を用いても構わない。
(ヒンダードフェノール系化合物)
本発明において、ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノール化合物の水酸基に対してオルト位置に一つ以上のt−ブチル基を有する化合物類及びその誘導体を言い、下記一般式(1)で表される基を有する化合物を言う。このとき、フェノール化合物の水酸基、及びそのオルト位のt−ブチル基以外に、有機基を有しても良い。
このヒンダードフェノール系化合物は、例えば、トナーの材料に使用する場合には、画像形成装置内における感光体の表面上に発生したオゾンや窒素酸化物などの酸化性物質による酸化作用を防止又は抑制する酸化防止剤として機能する。
【0011】
【化1】

上記一般式(1)において、R1、R2は水素原子又は有機基であり、R1、R2のいずれか一方は、t−ブチル基であることが好ましい。
【0012】
ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、例えば、下記式(2)〜式(10)に示すものが挙げられる。
【化2】

本発明の酸化防止剤水系分散溶液における酸化防止剤微粒子の粒径は、体積基準のメディアン径で50〜500nmであり、好ましくは100〜300nmである。
酸化防止剤微粒子の粒径が、50nm未満である場合においては、疎水化度が低下し、画像ボケなどの画像不良の発生を十分に抑制できないおそれがある。一方、酸化防止剤微粒子の粒径が500nmを超える場合においては、当該酸化防止剤微粒子のトナー粒子に対する分散性が低下し、酸化防止剤化合物が酸化防止剤としての機能を十分に発揮することができないおそれがある。
【0013】
本発明において、酸化防止剤微粒子の粒径(体積基準のメディアン径)は、「UPA−EX150」(日機装社製)を用いて測定されるものである。
具体的には、50mlのメスシリンダーに酸化防止剤水系分散溶液を数滴滴下し、純粋25mlを加えて超音波洗浄機「US−1」(as one 社製)を用いて3分間分散させ測定用試料を作製し、この測定用試料3mlを「UPA−EX150」(日機装社製)に投入して、Sample Loadingの値が0.1〜100の範囲にあることを確認して、下記条件により測定される。
−測定条件−
Trasnparency(透明度):Yes
Refractive Index(屈折率):1.59
Particle Density(粒子比重):1.05/cm
Spherical Particle(球形粒子):Yes
−溶媒条件−
Refractive Index(屈折率):1.33
Viscosty(粘度):
Hight(temp)0.797×10−3Pa・S
Low(temp)1.002×10−3Pa・S
【0014】
(アミン系化合物)
アミン化合物としては、4位に置換基を有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジンに代表されるヒンダードアミン類、ヒドロキシアミン類、水溶性の脂肪族3級アミンが挙げられる。
【0015】
(硫黄系化合物)
硫黄化合物としては、好ましくは下記一般式(11)で表される有機化合物が好まし間用いられる。
一般式(11):R12−S−R13
上記一般式(11)中、R12およびR13は、アルキル基またはアリール基を表す。
一般式(11)においてR12およびR13で表されるアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよく、置換基としては、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0016】
(リン系化合物)
リン系化合物としては、有機リン化合物が好ましく用いられる。例えば、トリフェニルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)フォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリステアリルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニルモノデシルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、ジフェニルモノトリデシルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、ジフェニルノニルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジフォスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト及びポリフォスファイト等の第三級フォスファイト類、ジラウリルハイドロゼンフォスファイト、ジフェニルハイドロゼンフォスファイト、ジオレイルハイドロゼンフォスファイト等の第二級フォスファイト類、メチルアシッドフォスファイト、イソデシルアシッドフォスファイト、オレイルアシッドフォスファイト、オクチルアシッドフォスファイト等のリン酸エステル類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド等の環状フォスファイト類等を挙げることができる。
【0017】
以下に、酸化防止剤水系分散溶液の製造方法について、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系化合物を使用した場合を例に挙げて説明する。
(a)ヒンダードフェノール系化合物を有機溶剤に溶解させ、ヒンダードフェノール化合物溶液を形成する工程
有機溶剤として好ましいものは、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、2−ブタノン、酢酸エチルなどである。溶解にあたり、液温を40℃付近まで上げることが好ましい。濃度は、ヒンダードフェノール系化合物が溶解している限り特に限定されないが、5〜15%が好ましい。
【0018】
(b)ヒンダードフェノール系化合物溶液と水系媒体とを混合し、ヒンダードフェノール系化合物分散溶液を製造する工程
ヒンダードフェノール系化合物溶液と水系媒体とを混合し、水系媒体にヒンダードフェノール系化合物溶液の液滴が分散されたヒンダードフェノール系化合物溶液分散液を製造する。このとき、水系媒体に対し、攪拌しながらヒンダードフェノール系化合物溶液を添加することが好ましい。あるいは、ヒンダードフェノール系化合物溶液に水系媒体を添加し、転相乳化の形をとっても良い。具体的には界面活性剤をヒンダードフェノール系化合物溶液中に溶解又は分散させ、そこに水系媒体を添加し、油中水滴(W/O型)エマルションを得る。乳化の途中で連続相が油相から水相へと変化(転相)し、水中油滴(O/W型)エマルションである「ヒンダードフェノール系化合物分散溶液」を得ることができる。
ここで、水系媒体とは、界面活性剤などの分散剤を含む水をいうが、アルコールやケトン類など有機溶剤を50%未満、水に溶解されていてもよい。
界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなどのスルフォン酸塩、ステアリン酸カリウムなどの脂肪酸塩に代表されるアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤、等が挙げられる。
【0019】
(c)有機溶剤を留去したヒンダードフェノール系化合物水系分散溶液を製造する工程
水系媒体中で、(b)の工程で得られたヒンダードフェノール系化合物分散溶液から有機溶剤を留去する。好ましくは減圧下、例えばロータリーエバポレーターなどを用いて行う。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の下記の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
[酸化防止剤溶液A1の作製]
300mlビーカーに、下記に示す酸化防止剤1とトルエンを以下の割合で加え、攪拌して溶解した。この溶液を酸化防止剤溶液A1とする。
酸化防止剤1 3質量部
トルエン 35質量部
【0021】
[酸化防止剤分散溶液B1の作製]
300mlビーカーに、エチレンオキサイド2モル付加物と水を以下の割合で加え、界面活性剤水溶液を調整した。
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 15%水溶液 2.2質量部
イオン交換水 84質量部
次に、界面活性剤水溶液に酸化防止剤溶液A1を加え、超音波分散機「US−1」(as one社製)にて10分間分散させ、酸化防止剤分散溶液B1を作製した。
【0022】
[酸化防止剤水系分散溶液C1の作製]
上記酸化防止剤分散溶液B1をエバポレーターにてトルエンを留去し、酸化防止剤水系分散溶液C1を作製した。ビーカー、およびエバポレーターに付着、残存する酸化防止剤は認められず、収率は99%以上であった。
【0023】
(実施例2)
[酸化防止剤溶液A2の作製]
300mlビーカーに、下記に示す酸化防止剤2とトルエンを以下の割合で加え、攪拌して溶解させた。この溶液を酸化防止剤溶液A2とする。
酸化防止剤2 3質量部
トルエン 35質量部
【0024】
[酸化防止剤分散溶液B2の作製]
300mlビーカーに、 ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムとイオン交換水を以下の割合で加え、界面活性剤水溶液を調整した。
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 15%溶液 2.2質量部
イオン交換水 84質量部
そして、界面活性剤水溶液に酸化防止剤溶液A2を加え、超音波分散機「US−1」(as one社製)にて10分間分散させ、酸化防止剤分散溶液B2を作製した。
【0025】
[酸化防止剤水系分散溶液C2の作製]
上記酸化防止剤分散溶液B2をエバポレーターにてトルエンを留去し、酸化防止剤水系分散溶液C2を作製した。ビーカー、およびエバポレーターに付着、残存する酸化防止剤は認められず、収率は99%以上であった。
【0026】
(実施例3)
[酸化防止剤溶液A3の作製]
300mlビーカーに、下記に示す酸化防止剤1とメチルエチルケトンを以下の割合で加え、攪拌して溶解した。この溶液を酸化防止剤溶液A3とする。
酸化防止剤1 3質量部
メチルエチルケトン 35質量部
【0027】
[酸化防止剤分散溶液B3の作製]
300mlビーカーに、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムとイオン交換水を以下の割合で加え、界面活性剤水溶液を調整した。
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 15%溶液 2.2質量部
イオン交換水 84質量部
そして、界面活性剤水溶液に酸化防止剤溶液A3を加え、超音波分散機「US−1」(as one社製)にて10分間分散させ、酸化防止剤分散溶液B3を作製した。
【0028】
[酸化防止剤水系分散溶液C3の作製]
上記酸化防止剤分散溶液B3をエバポレーターにてメチルエチルケトンを留去し、酸化防止剤水系分散溶液C3を作製した。ビーカー、およびエバポレーターに付着、残存する酸化防止剤は認められず、収率は99%以上であった。
【0029】
(実施例4)
[酸化防止剤溶液A4の作製]
300mlビーカーに、下記に示す酸化防止剤1とトルエンを以下の割合で加え、攪拌して溶解した。この溶液を酸化防止剤溶液A4とする。
酸化防止剤1 3質量部
トルエン 35質量部
【0030】
[酸化防止剤分散溶液B4の作製]
300mlビーカーに、ドデシル硫酸ナトリウムとイオン交換水を以下の割合で加え、界面活性剤水溶液を調整した。
ドデシル硫酸ナトリウム 15%溶液 2.2質量部
イオン交換水 84質量部
そして、界面活性剤水溶液に酸化防止剤溶液A4を加え、超音波分散機「US−1」(as one社製)にて10分間分散させ、酸化防止剤分散溶液B4を作製した。
【0031】
[酸化防止剤水系分散溶液C4の作製]
上記酸化防止剤分散溶液B4をエバポレーターにてトルエンを留去し、酸化防止剤水系分散溶液C3を作製した。ビーカー、およびエバポレーターに付着、残存する酸化防止剤は認められず、収率は99%以上であった。
【0032】
(比較例1: 特開平4−239592 実施例1の様態)
体積基準のメディアン径5μmの酸化防止剤1 50g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム3g、メチルセルロース0.2g、イオン交換水46.8gおよび1.5mm径の球状ガラスビーズ150gを300ml容ビーカーにとり、スリーワンモーターにて17時間高速攪拌し、80メッシュの篩によりビーズと分散液を濾別した。得られた水分散液は体積基準のメディアン径2.2μmであった。球状ガラスビーズ150gに酸化防止剤1 5gが付着し残存したため、収率は90%であった。
【0033】
(実施例5)
実施例1において、酸化防止剤1を用いたところを2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを用いた以外は同様にして、酸化防止剤水系分散溶液C5を作成した。ビーカー、およびエバポレーターに付着、残存する酸化防止剤は認められず、収率は99%以上であった。
【0034】
(実施例6)
実施例1において、酸化防止剤1を用いたところをトリフェニルフォスファイトを用いた以外は同様にして、酸化防止剤水系分散溶液C6を作成した。ビーカー、およびエバポレーターに付着、残存する酸化防止剤は認められず、収率は99%以上であった。
【0035】
【化3】

:酸化防止剤1
上記式1において、R1がt−ブチル基、R2が水素基である。
【化4】

:酸化防止剤2
上記式1において、R1がt−ブチル基、R2は、R2を中心に同じものが4つ付いた4量体である。
【0036】
(評価)
《分散粒径》
実施例1〜4、比較例1において、分散粒径(体積基準のメディアン径)を測定し、その結果を下記表1に示した。分散粒径の測定方法は、上述した通り「UPA−EX150」(日機装社製)を用いて、上述の測定条件で測定したものである。
なお、比較例1の酸化防止剤水系分散溶液C5は、沈殿したため、分散粒径を測定することができなかった。
【0037】
《分散安定性》
実施例1〜6、比較例1の分散液の分散安定性を、目視にて観察し、下記の基準で評価した。なお、評価は、酸化防止剤分散液を調製した後、室温で4週間ごとに目視にて観察し分離沈澱が発生するまでの時間を評価した。
優良:43週まで評価し、分離沈澱が発生しない。
良好:16週以上43週未満に分離沈澱が発生する。
不良:16週未満に分離沈澱が発生する。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果から明らかなように、本発明の酸化防止剤水系分散溶液は、分散粒径が微細であり、分散安定性が優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化防止剤水系分散溶液の製造方法において、
下記(1)〜(3)の工程を有することを特徴とする酸化防止剤水系分散溶液の製造方法。
(1)酸化防止剤を有機溶剤に溶解させ、酸化防止剤溶液を形成する工程
(2)前記酸化防止剤溶液と水系媒体とを混合し、酸化防止剤分散溶液を製造する工程
(3)前記酸化防止剤分散溶液から有機溶剤を留去し、酸化防止剤水系分散溶液を製造する工程
【請求項2】
前記酸化防止剤として、ヒンダードフェノール化合物、アミン系化合物、硫黄系化合物、リン系化合物のうち、いずれかを使用することを特徴とする請求項1に記載の酸化防止剤水系分散溶液の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の酸化防止剤水系分散溶液の製造方法によって製造された酸化防止剤水系分散溶液において、
体積基準のメディアン径が50〜500nmであることを特徴とする酸化防止剤水系分散溶液。

【公開番号】特開2012−136617(P2012−136617A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289326(P2010−289326)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】