説明

酸性の液体母乳栄養補助食品

本発明は、たんぱく質成分、脂肪成分、炭水化物成分、ビタミン、及び、ミネラルを含む液体の母乳栄養補助食品に関する。ここで、母乳栄養補助食品のpHは、約4.0〜約6.0である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児用の液体母乳栄養補助食品(human milk supplement)に関する。
【背景技術】
【0002】
早産児は、妊娠37週前に生まれた赤ちゃん、及び/又は、出生時における体重が2500g未満の赤ちゃんに区分することができる。早産児の成長速度は、年齢特異的子宮内発育速度に合わせ、又は、それを超えて、満期産児に追いつくことを促すものでなければならない。しかしながら、早産児における未発達の消化系及び全体的な発育上の未熟に起因して、多くの早産児には、特別な栄養的ニーズが存在する。
【0003】
一般的に、(ヒトの)母乳は、その栄養組成及び免疫学的特性に起因して、幼児(あかちゃん)には最も良いものと考えられている。母乳を与えることによって得られる大きな利点があるにもかかわらず、早産児の未熟な消化系、並びに、限られた吸引及び嚥下反射のために、早産児はその栄養的なニーズを満たす程度の十分な母乳を飲むことができない場合がしばしばある。
【0004】
また、母乳は、通常たんぱく質、及び、特定のミネラルがあまりにも少ないために、早産児に要求される迅速な成長を促すことができない。したがって、成長、及び、体重の維持に重要で、かつ、その他の生合成のメディエーター(例えば、酵素、免疫因子、及び、一部のホルモン)として機能するたんぱく質を、母乳授乳の幼児に補充しなければならない。また、適法な骨の発達及び骨密度に必要なカルシウム又は燐のようなミネラル、及び、ビタミンDのようなビタミン類をも、母乳授乳の幼児のダイエット中に補充しなければならない。
【0005】
また、母乳のエネルギー密度(energy density)は、通常(密度が高くて)幼児にとって耐えられない体積の母乳が早産児に与えられることを要求する。一般的に、早産児は、一日100〜150ml/kg(体重)の授乳に耐えられる。母乳におけるカロリー量は約67kcal/100ml(液体ミルク1オンスあたり20kcal)であり、かつ、早産児は一日当たり120kcal/kgを必要とするために、これらの早産児にとって許容される母乳の量は、早産児のエネルギー要求量の80%未満を提供する。したがって、早産児に許容される量のミルクで早産児の特殊な栄養的要求を満たすカロリー摂取を可能にするためには、母乳のカロリー量に加えて脂肪又は炭水化物といったエネルギー源が補充されるべきである。
【0006】
また、保管中又は配分条件の下で製品の中で増殖することができる公衆保健上重要な微生物及び健康に重要でない微生物を減少させ、又は、無害化した母乳栄養補助食品又は母乳強化剤を提供することが重要である。したがって、早産児に必要とされる余分のカロリー、たんぱく質、ビタミン、及び、ミネラルを提供しながらも、製品の保存期間を通じて微生物学的質(microbiological quality)を提供することができる母乳栄養補助食品に対するニーズが存在することは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な幼児用の液体母乳栄養補助食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡単に、本発明は、たんぱく質成分、脂肪成分、炭水化物成分、ビタミン、及び、ミネラルを含む新規な液体母乳栄養補助食品に関する。この母乳栄養補助食品のpHは、約4.0〜約4.6であり得る。
【0009】
この発明は、前述した母乳栄養補助食品と、母乳との組み合わせを含む幼児に投与するための組成物に関する。この組成物において、栄養補助食品:母乳の比率は、約1:2〜約1:10であり、約1:4〜約1:6であり、又は、約1:5である。
【0010】
また、本発明は、脂肪成分及び炭水化物成分を含む液体母乳栄養補助食品に関する。この栄養補助食品のpHは、約4.0〜約6.0である。一の具体例において、脂肪成分はこの栄養補助食品のカロリー量の約30%より多くを占め、そして、炭水化物成分は、この栄養補助食品のカロリー量の約10%未満を占める。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、早産児に必要とされる余分のカロリー、たんぱく質、ビタミン、及び、ミネラルを提供しながらも、製品の保存期間を通じて微生物による汚染の恐れがないか又は軽減された母乳栄養補助食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体例について詳細に説明していく。各々の具体例は、本発明を説明するために提示されたものに過ぎず、本発明がこれらの具体例に制限されるものではない。本発明の本質を逸脱しない範囲における本発明に対する変形及び変更は当業者にとって明らかであろう。例えば、一の具体例の一部として記載された特徴が、別の具体例において使用されて、更なる別の具体例を構成することもあり得る。
【0013】
したがって、本発明は、特許請求の範囲の技術的範囲、及び、その均等物に属する全ての変形例及び変更例を含む。本発明に係る別の目的、特徴、及び、側面は、次の発明の詳細な説明に記載されているか、又は、そこから自明であるために、当業者であれば、本明細書について言及されたものが、専ら具体的な実施形態を説明するに過ぎず、本発明により把握される概念を制限するものでないと理解するであろう。
【0014】
本明細書に使用された用語「母乳栄養補助食品(human milk supplement)」、又は、「母乳強化剤(human milk fortifier)」は、母乳の添加剤を意味する。一部の具体例において、その母乳栄養補助食品又は哺乳強化剤は、母乳における特定の成分の(栄養学的な)含量を向上させるものであり得る。
【0015】
本明細書に用いられた用語「液体」は、液体又はゲルのような水系組成物を含む。
【0016】
用語「体に良いバクテリア(probiotic)」とは、宿主の健康に有利な効果を奏し得る微生物をいう。
【0017】
用語「前生物物質(prebiotic)」とは、胃腸の有利な微生物相の成長及び活性を刺激する成分をいう。
【0018】
本発明は、酸性化した液体母乳栄養補助食品に関する。より具体的に、母乳栄養補助食品は、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ビタミン、及び、ミネラルを含有し、一の具体例によれば、そのpHは約4.0〜約4.6である。別の実施例において、母乳栄養補助食品のpHは、約4.6より低い。具体例によっては、そのpHは、約4.2〜約4.4であり得る。特に、そのpHは、約4.3であり得る。
【0019】
大部分の微生物は、pH4.6超において最適な成長を示す。pH約4.6未満の酸性の母乳栄養補助食品を提供することによって、多くのヒト病原体(例えば、ボツリヌス菌(C. botulinum)及びE. sakazakii)、及び、腐敗微生物(food spoilage microorganism)の成長を減少させ、又は、防止することができる。したがって、本発明によって、製品が配送、貯蔵、又は、陳列棚に置かれている間に微生物の成長が起こる可能性が下がる。
【0020】
pH4.6以下で成長する微生物集団は、製品を熱処理すると、死滅するのが通常である。しかしながら、酸性の液体母乳栄養補助食品を提供することによって、微生物の耐熱性が減少されるので、より緩和された条件の熱処理でも製品を微生物から守り貯蔵安定性を保つことができる。幼児用の調剤及び母乳栄養補助食品を加熱滅菌することによって、製品の褐色化(browning)、並びに、ビタミン、及び、熱に敏感な成分の分解(劣化)が起こることは珍しくない。これは、製品の色、風味、臭い、及び、栄養(質)に影響を与える。したがって、より緩和された条件下における加熱滅菌を必要とする酸性の母乳栄養補助食品を提供することによって、製品の褐色化、及び、劣化(degradation)を軽減し、又は、回避することができる。
【0021】
本発明の母乳栄養補助食品を母乳に加えると、幼児に与えられるべき栄養補充された母乳のpHが下がっても、酸性の母乳栄養補助食品の添加によって栄養成分の伝達が損なわれることはない。また、栄養補助食品が加えられた母乳は、低い粘度を保持し、目に見える塊をほとんど含まないか、又は、全く含まないし、増強された栄養成分を伝達し、そして、標準的な早産児用の供給装置及び方法を用いて幼児に与えられる。
【0022】
一の具体例によれば、この栄養補助食品は、母乳に約1:2〜約1:10の比率で加えられる。別の具体例によれば、栄養補助食品:母乳の比率は、約1:4〜約1:6であり得る。特に、栄養補助食品:母乳の比率は、約1:5であり得る。
【0023】
したがって、一の具体例によれば、約5mlの栄養補助食品を約10〜50mlの母乳に加えることができる。別の具体例によれば、約5mlの栄養補助食品を約20〜30mlの母乳に加えることができる。特に、約5mlの栄養補助食品を約25mlの母乳に加えることができる。
【0024】
別の具体例によれば、本発明の栄養補助食品は、母乳と共に、又は、それとは別途投与され得る。したがって、幼児に対し母乳授乳とは別途約5mlの栄養補助食品を与えることができる。この具体例における栄養補助食品:母乳の割合は、約1:2〜約1:10であり、約1:4〜約1:6であり、約1:5である。
【0025】
母乳栄養補助食品に関する具体例によれば、脂肪成分は、その栄養補助食品のカロリー量の約30%超を占め、炭水化物成分は、その栄養補助食品のカロリー量の約10%未満を占める。脂肪及び炭水化物のレベル(含量)が、早産児に求められる増加されたカロリー量を提供する一方で、母乳の浸透圧(osmolarity)における不要な増加を最小化する。
【0026】
浸透圧(オスモル濃度、osmolality)とは、溶媒の単位重量あたり水性溶液における浸透圧活性粒子(osmotically-active particle)の濃度をいい、mOsm/kg(溶媒)で表される。同じ溶媒を用いるが異なる浸透圧を有する2つの溶液を、溶媒のみが透過可能なメンブレーンを通して接触させた場合、溶媒は、浸透圧の低い溶液から浸透圧の高い溶液の方に流れる。この現象は、溶解化合物が特定の種類(浸透圧活性が高いと知られているもの)、例えば、単炭水化物(simple carbohydrate)及び電解質である場合、特に目立つ。一方で、それ以外の種類、例えば、エマルジョン化された脂肪、栄養補助食品に加えられた脂肪の形態は、より低い浸透圧活性を有するか、又は、全く浸透圧活性を有さない。高浸透圧溶液(hyperosmolar solution)、即ち、正常な体液(約300mθsm/kg(水))よりも高い浸透圧を有する水性溶液を摂取した場合、胃腸における望まれない副作用が起こり得る。高浸透圧溶液は、胃及び小腸において浸透圧効果を引き起こす。すると、胃腸管の上皮を横切って内腔の方に水が引かれる。胃腸管への水の流入は、浸透圧活性粒子の濃度を希釈して、下痢、吐き気、筋けいれん、腹部膨満嘔吐などを引き起こす。
【0027】
炭水化物は、母乳栄養補助食品へ取り入れ易いエネルギー源である。しかしながら、炭水化物、特に、単炭水化物(simple carbohydrate)又は容易に加水分解される炭水化物は、高い浸透圧活性を有し得る。複雑な炭水化物、例えば、スターチ又はマルトデキトストリン(maltodextrin)であっても、アミラーゼ(通常母乳に存在する酵素)によって迅速に加水分解され得るので、栄養補充された母乳の浸透圧を著しく増加させることができる。
【0028】
本発明に係る一具体例によれば、栄養補助成分のカロリー量の約30%以上を脂肪から得ると共に、前記カロリー量の約10%未満を炭水化物から得る母乳栄養補助食品は、補充されない母乳の浸透圧に近い浸透圧を有し、かつ、大部分の早産児に良好な耐容性を示す補充された母乳を生じさせる。一の具体例において、本発明の母乳栄養補助食品を母乳に加えることにより生じる浸透圧の増加は、約80mOsm/kg(水)よりも少ない。別の具体例によれば、本発明に係る母乳栄養補助食品を母乳に加えることによって生じる浸透圧の増加は、約50mOsm/kg(水)より少ない。更なる別の具体例によれば、本発明に係る母乳栄養補助食品を母乳に加えることによって生じる浸透圧の増加は、約30〜約80mOsm/kg(水)である。
【0029】
本発明に係る脂肪成分は、一の具体例によれば、カロリー量の約30%以上を占める。別の具体例によれば、脂肪成分は、カロリー量の約50%以上を占める。更なる別の具体例によれば、脂肪成分は、カロリー量の約50〜約75%を占める。特に、脂肪成分は、カロリー量の約65%を占める。
【0030】
別の具体例において、脂肪成分は、乾燥重量に基づいて、母乳栄養補助成分の約55重量%以下を占める。脂肪成分は、母乳栄養補助成分の約10〜約55重量%、約15〜約50重量%、及び、約35〜約45重量%を占めることもできる。
【0031】
一の具体例によれば、本発明における炭水化物成分は、カロリー量の約10%未満を占める。別の具体例によれば、炭水化物成分は、カロリー量の約7%未満を占める。更なる別の具体例によれば、炭水化物成分は、カロリー量の約2〜約7%を占める。別の具体例によれば、炭水化物成分は、カロリー量の約4〜約7%を占める。特に、炭水化物成分は、カロリー量の約4.5〜約6.5%を占める。また、別の具体例によれば、炭水化物成分は、カロリー量の約5.0〜約5.5%を占める。
【0032】
別の具体例によれば、炭水化物成分は、乾燥重量に基づいて、母乳栄養補助食品の約65重量%以下を占める。また、炭水化物成分は、母乳栄養補助食品の約5〜約30重量%、約5〜約15重量%を占め得る。
【0033】
前述の内容に加えて、早産児には、十分な量のカルシウムを与えることが特に重要である。胎児(human fetus)は、妊娠の第3期に分娩時に存在するカルシウムの80%を獲得するので、それに類似した速度(割合)を達成し、正常的な成長及び骨石灰化(bone mineralization)を促すためには、早産児には、満期産児よりも体重kgあたりより多量のりカルシウムの摂取が必要とされる。早産児の食事(ダイエット)を通じたカルシウムの供給が不十分になれば、骨折のリスクが高まり、かつ、骨減少症が起こり得る。文献[American Academy of Pediatrics Committee on Nutrition. "Nutritional Needs of Preterm Infants", In, Kieinman RE, ed. Pediatric Nutrition Handbook. 4th ed. Elk Grove Village, IL; 1998:55-87]参照
【0034】
一の具体例において、母乳栄養補助食品に存在するカルシウムの含量は、その食品5mlあたり約20〜約40mgである。別の具体例において、その食品中に存在するカルシウムの含量は、その食品5mlあたり約25〜約35mgである。別の具体例によれば、その食品中に存在するカルシウムの含量は、その食品5mlあたり約29mgである。カルシウムは、その製品中に可溶性カルシウム、不溶性カルシウム、又は、これらの組み合わせとして存在し得る。
【0035】
満期産児(新生児)は、約75mg/kgの鉄(そのうち75%がヘモグロビンの形態である。)を有する。平均すると、幼児は最初の1年の間に血液容量をほぼ3倍にするので、その時期において十分な貯蔵量(store)を保つために毎日0.4〜0.6mgの摂取が必要となる。テストのために取られた血液の損失、及び、生後における迅速な成長率によって、満期産児(遅発性)よりも食事を通じて摂取すべき鉄の要求量は高くなる。文献[Nutrition Committee, Canadian Paediatric Society (CPS), Canadian Medical Association Journal 744:1451-1454 (1991)]参照。鉄分不足の結果として、貧弱な体重増加、免疫反応の損傷、胃腸管の障害、過敏性、集中力の持続時間の低下、及び、認識能力の損傷などが起こり得る。
【0036】
本発明の栄養補助食品は、早産児における貧血の発症を防ぐと共に、鉄分不足に関連した発育異常を回避するのに十分な量の鉄を含有する。一の具体例において、鉄は、栄養補助食品7.5kcalあたり約0.1〜1.0mg(含量)存在し得る。別の具体例において、鉄は、栄養補助食品7.5kcalあたり約0.2〜約0.75mg(含量)存在し得る。特に、鉄は、栄養補助食品7.5kcalあたり約0.44mg存在し得る。
【0037】
本発明に係る母乳栄養補助食品は、母乳に加えられたときに、その補充された母乳が、液体1オンス当たり約24kcal(100mlあたり約81kcal)を幼児に伝達することができるように、調剤(処方)される。具体例によっては、本発明に係る母乳栄養補助食品には、母乳に通常存在するものよりも多くのたんぱく質及びミネラルが含まれている。このようにより高濃度の栄養成分(栄養素)によって、前記栄養補助食品が加えられた母乳のオバーダイリュ−ション(over-dilution)を回避することができる。
【0038】
一部の具体例によれば、本発明に係る液体栄養補助食品は、栄養補助食品5mlあたり少なくとも7.5kcalを含有する。具体例によっては、栄養補助食品は、その栄養補助食品5mlあたり約6〜約9kcalを含有する。一の具体例において、栄養補助食品は、その栄養補助食品5mlあたり約7.5kcalを含有する。別の具体例において、その栄養補助食品は、その栄養補助食品5mlあたり約6.25〜約30kcalを含有する。
【0039】
本発明には、(その脂肪が前記栄養補助食品におけるそれ以外の成分と組み合わせるのに適したものであれば)従来技術に知られているいかなる脂肪をも用いることができる。その脂肪の例として、大豆油、中鎖トリグリセリド(MCTオイル)、コーンオイル、オーリブオイル、構造化トリグリセリド(structured triglyceride)、パームオイル、ひまわり油、紅花油、ココナツオイル、綿実油、高オレイン酸の紅花油、及び、キャノーラオイルなどがある。脂肪源は、1以上のこれらのオイルを含み得る。レシチンのような乳化剤が、脂肪組成の一部に置き換えて使われることもあり得るが、その量は通常3%以下である。
【0040】
本発明には、(その炭水化物がその栄養補助食品におけるそれ以外の成分と組み合わせられるものであれば)いかなる炭水化物をも用いることができる。これらの炭水化物源(商業的)は当業者に知られている。使用されうる炭水化物の一つの例として、固体コーンシロップがある。本発明に使用可能な別の炭水化物として、スターチ(例えば、コーン、タピオカ、ライス、又は、ジャガイモ)、コーンスターチ、マルトデキストリン、グルコースポリマー、スクロース、コーンシロップ、グルコース、ライスシロップ、フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、又は、消化しにくいオリゴ糖などがある。炭水化物は、(部分的に又は全体として)加水分解されても良く、又は、そのままで(intact)あってもよく、そして、化学的に修飾されても良く、又は、化学的に修飾されなくても良い。
【0041】
本発明において使用するに適したたんぱく質源として、(そのたんぱく質又は窒素源が本発明に係る栄養補助食品におけるそれ以外の成分と組み合わせられるものであれば)幼児用に適したいかなるたんぱく質又は窒素源をも用いることができる。本発明に使用可能なたんぱく質源の例として、遊離アミノ酸、ミルクたんぱく質、カゼイン、乳清、動物性たんぱく質、穀物たんぱく質、野菜たんぱく質、又は、これらの組み合わせ(混合物)がある。そのままのたんぱく質又は加水分解たんぱく質、例えば、加水分解乳清たんぱく質単離物を本発明において用いることができる。たんぱく質が加水分解されると、それは部分的に又は全体的に加水分解され得る。用いられるたんぱく質として、例えば、BioZate3(ダヴィスコフーズ社製)、WPH8350(ヒルマーイングラジエンツ社製)、又は、WPH NZMP 917若しくはWPH Alacen893(フォンテライングラジエンツ社製)のような乳清たんぱく質単離物を挙げることができる。一部の具体例において、たんぱく質源が、完全なたんぱく質(intact protein)と、加水分解されたたんぱく質との組み合わせであっても良い。
【0042】
一部の具体例において、たんぱく質成分は、この栄養補助食品のカロリー量の約30%を占めることもあり得る。別の具体例において、たんぱく質成分がこの栄養補助食品のカロリー量の20〜40%を占めることもあり得る。別の具体例において、たんぱく質成分が、母乳栄養補助食品の約15〜約45%を占めることもあり得る。特に、たんぱく質成分が、乾燥重量に基づいて、母乳栄養食品成分の約20〜約35%、及び、約28〜約33%を占めることもあり得る。
【0043】
本発明に用いられるビタミンとして、例えば、ビタミンA,ビタミンD,ビタミンE,ビタミンK1、チアミン、リボフラビン、ビタミンB6,ビタミンB12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、及び、ビタミンCなどが挙げられる。本発明の栄養補助食品に加えられるミネラル成分として、カルシウム、燐、マグネシウム、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、塩素、鉄、セレニウム、クロム、及び、モリブデンなどがある。使用可能な更なるビタミン及びミネラルは、当業者(アメリカ小児科学会委員会等の勧告に基づいてビタミン及びミネラルの適量を決めることができる者である。)の知識範囲内である。
【0044】
特に、栄養補助食品における脂肪源は、1以上の長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)、及び、エイコサペンタエン酸(EPA)を含み得る。脂肪源として、LCPUFA前駆体(例えば、リノール酸、α−リノレン酸、及び、γ-リノレン酸)を含んでも良い。
【0045】
本発明に係る一の具体例において、脂肪源は、DHAを含む。本発明に係る別の具体例において、脂肪源は、ARAを含む。更なる別の具体例として、脂肪源は、DHA及びARAの両方を含み得る。この具体例において、ARA:DHAの重量比は、約1:3〜約9:1であり得る。本発明に別の具体例において、その比率は、約1:2〜約4:1である。更なる別の具体例において、その比率は、約2:3〜約2:1である。とくに、その比率は、約2:1である。本発明に係る別の具体例において、その比率は、約1:1.5である。別の具体例において、その比率は、約1:1.3である。更なる別の具体例において、その比率は、約1:1.9である。特に、その比率は約1.5:1である。別の具体例に置いて、その比率は、約1.67:1である。更なる別の具体例に置いて、その比率は、約1.47:1である。
【0046】
本発明に係る一の具体例において、DHAのレベル(含量)は、総脂肪に基づいて、約0.0重量%〜約1.00重量%である。別の具体例において、DHAのレベル(含量)は、総脂肪に基づいて、約0.32重量%である。別の具体例において、DHAのレベル(含量)は、総脂肪に基づいて、約0.33重量%である。一部の具体例において、DHAのレベル(含量)は、総脂肪に基づいて、約0.64重量%である。別の具体例において、DHAのレベルは、総脂肪に基づいて、約0.67重量%である。さらなる別の具体例によれば、DHAのレベル(含量)は、総脂肪の約0.96重量%である。別の具体例において、DHAのレベル(含量)は、総脂肪の約1.00重量%である。
【0047】
別の具体例によれば、DHAのレベル(含量)は総脂肪に基づいて約0.25重量%〜約0.75重量%である。特に、DHAのレベルは、総脂肪の約0.5重量%である。別の具体例において、DHAのレベルは、総脂肪の約0.53重量%である。
【0048】
本発明に係る別の具体例において、ARAのレベル(含量)は、総脂肪に基づいて約0.0重量%〜約1.00重量%である。別の具体例において、ARAのレベルは、総脂肪に基づいて約0.5重量%である。別の具体例において、DHAのレベルは、総脂肪に基づいて約0.47重量%〜約0.48重量%である。
【0049】
別の具体例において、ARAのレベル(含量)は、総脂肪に基づいて、約0.5重量%〜0.90重量%である。別の具体例において、ARAのレベルは、総脂肪に基づいて、約0.75重量%〜約0.90重量%である。別の具体例において、ARAのレベルは、総脂肪に基づいて、約0.88重量%である。
【0050】
本発明に用いられるDHAは、母乳と組み合わせられたときに、幼児に約3mg/kg(体重)/日〜約150mg/kg(体重)/日を伝えるのに十分な量でなければならない。本発明に係る一の具体例において、伝達量(投与量)は、母乳と組み合わせられたときに、約6mg/kg(体重)/日〜約100mg/kg(体重)/日である。別の具体例において、伝達量は、母乳と組み合わせられたときに、約10mg/kg(体重)/日〜約60mg/kg(体重)/日である。更なる別の具体例において、伝達量は、母乳と組み合わせられたときに、約15mg/kg(体重)/日〜約30mg/kg(体重)/日である。
【0051】
本発明に用いられるARAは、母乳と組み合わせられたときに、約5mg/kg(体重)/日〜約150mg/kg(体重)/日である。本発明に係る一の具体例において、その伝達量(投与量)は、母乳と組み合わせられたときに、約10mg/kg(体重)/日〜約120mg/kg(体重)/日である。別の具体例において、伝達量は、母乳と組み合わせられたときに、約15mg/kg(体重)/日〜約90mg/kg(体重)/日である。更なる別の具体例において、伝達量は、母乳と組み合わせられたときに、約20mg/kg(体重)/日〜約60mg/kg(体重)/日である。
【0052】
本発明に係る母乳栄養補助食品に含まれたDHAの量は、通常約5mg/100kcal〜約80mg/100kcalである。本発明に係る一の具体例によれば、前記量は、約10mg/100kcal〜約50mg/100kcalである。別の具体例によれば、前記量は、25mg/100kcal〜約60mg/100kcalである。特に、DHAは約40mg/100kcalである。
【0053】
本発明に係る母乳栄養補助食品に含まれたARAの量は、通常約10mg/100kcal〜約100mg/100kcalである。本発明に係る一の具体例によれば、前記量は、約15mg/100kcal〜約80mg/100kcalである。別の具体例によれば、前記量は、40mg/100kcal〜約70mg/100kcalである。特に、DHAは約67mg/100kcalである。
【0054】
本発明に用いるためのDHA及びARAを含有するオイルが補充された母乳栄養補助食品は、周知技術を用いて製造(調剤)することができる。例えば、栄養補助食品に含まれたMCTオイルのようなオイルの対応量(equivalent amount)に代えて、前記オイルを母乳栄養食品に加えることができる。別の具体例によれば、栄養補助食品に含まれたDHA及びARAでない脂肪分の対応量に代えて、DHA及びARAを前記栄養補助食品に加えることも可能である。
【0055】
ARA及びDHAの供給源として、海産油(marine oil)、魚油、単一細胞オイル(single cell oil)、卵黄脂質、脳脂質などといった周知のものを挙げることができる。DHA及びARAは、LCPUFA源の残り(余分)が幼児に実質的に悪影響(有害)を与えない限り、いかなる形態であっても良い。あるいは、精製したDHA及びARAを用いることもできる。
【0056】
DHA源及びARA源が米国特許第5,374,657号、第5,550,156号、及び、第5,397,591号に記載された単一細胞オイル(single cell oil)であっても良い。これらの特許文献の記載内容は、参考までに本明細書に含まれる。
【0057】
LCPUFA源は、EPA(eicosapentaenoic acid)を含んでもよく、含まなくても良い。一部の具体例において、本発明に用いられるLCPUFAは、EPAをほとんど含んでないか、又は、全く含んでいない。一部の具体例において、ここに使用された母乳栄養補助食品は、EPAを約20mg/100kcalより少なく含み、別の具体例において、EPAを約10mg/100kcalより少なく含む。別の具体例において、EPAを約5mg/100kcalより少なく含む。更なる別の具体例においては、EPAを実質的に含まない。
【0058】
一の具体例において、母乳栄養補助食品は、体に良いバクテリア(probiotic)を含んでいる。当業者に知られた体に良いバクテリアは、(それが前記栄養補助食品に含まれたそれ以外の別の成分と組み合わせられるものであれば)加えることができる。例えば、体に良いバクテリアは、乳酸菌属(genera Lactobacillus)、及び、ビフィズス菌(Bifidobacterium)から選ばれ得る。或いは、体に良いバクテリアは、LGG乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus GG)である。
【0059】
一の具体例において、本発明に係る栄養補助食品は、1以上の前生物物質(prebiotic)をさらに含む。この具体例において、当業者に知られた前生物物質は、(それが栄養補助食品に含まれたそれ以外の別の成分と組み合わせられるのであれば)加えることができる。別の具体例において、前生物物質は、フラクト−オリゴ糖、グルコ−オリゴ糖、ガラクト−オリゴ糖、インスリン、ポリデキストロース、イソマルト−オリゴ糖、キシロ−オリゴ糖、及び、ラクツロースからなる群から選ばれ得る。
【0060】
別の具体例において、本発明に係る酸性の母乳栄養補助食品は、ペクチンを含有する。特定の理論に拘束されることを望むわけではないが、本発明にペクチンを加えることによって、低いpHでたんぱく質源を安定化することができる。ペクチンを加えると、酸性の母乳栄養補助食品の粘度が低くなる。酸性の液体母乳栄養補助食品にペクチンを加えると、泡の発生、クリーム分離(creaming)、又は、脂肪分離、及び/又は、ミネラル及び/又はたんぱく質の沈殿が減少されるので、製品の包装に役に立つ。その他、ペクチンを含む製品では、不溶性物質、例えば、たんぱく質の大きさをより小さくすることができる。それにより、より良い外観の製品が実現される。この製品はより凝固しにくく、そこに含まれた栄養製品をより良く幼児に伝達することができる。その栄養成分は、沈みにくく、及び/又は、チューブ又はボトルにくっつき難い。
【0061】
本発明に係る酸性の母乳栄養補助食品は、早産児、又は、低体重児に授乳する際に有用である。また、この栄養補助食品は、低成長児(failure to thrive infant)の授乳に有用である。一部の具体例において、本発明は、本発明に係る母乳栄養補助商品を投与することによって幼児の成長を支持すると共に成長を促す方法に関する。
【0062】
「低成長(failure to thrive (FTT))」とは、単なる記述用語であり、明確な臨床診断を指すものではないが、幼児及び子供の体重が、1)持続的に同年齢の第3パーセンタイルを下回り、2)持続的に減少し続けて、第3パーセンタイルを下回るようになり、3)身長及び年齢に対し理想的な体重の80%であり、又は、4)個人の以前の成長曲線に基づいて予想外に減る(第3パーセンタイルを下回るか否かに関係なく)ことを説明するときに使われる。FTTの原因として、口唇裂及び/又は、口蓋、胃食道逆流又は反芻症(rumination)による栄養摂取減少;セリアック病、嚢胞性線維症又は二糖類分解酵素欠損症のような疾病に起因した吸収不良;果糖不耐症又は古典的ガラクトース血症といった代謝損傷;糖尿病、及び、タンパク尿のような病気などで見られる排泄増加;並びに、気管支肺異形成症、嚢胞性線維症、又は、甲状腺機能高進症のようなエネルギー要求量の増加などを挙げることができるが、それらに制限されるものではない。三次医療センターに入院した子供の約3〜5%において、そして、病院に入院した子供の約1%においてFTTが見られる。早産児と同様に、FTT幼児は、母乳のみでは満たされない更なる栄養要求量を有している。したがって、本発明の母乳栄養補助食品は、FTT幼児の授乳又は治療にも用いられる。
【0063】
本発明に係る母乳栄養補助食品は、当業者に知られた周知の技術を用いて製造(調剤)することができる。母乳栄養補助食品を製造する一の具体例が、実施例3に示されている。しかしながら、製造工程における変更及び変形は、栄養食品分野の当業者にとって自明であるので、必ずしも具体例3に記載された製造方法に制限されるものではない。
【0064】
具体例において、栄養補助食品は、製造工程において殺菌され(無菌)、かつ、包装される。本発明の母乳栄養補助食品は、包装される前に、超高温(UHT)プロセス(製品を迅速に加熱し、その後冷却する。)を用いて、殺菌され得る。このプロセス用の装置では、安全性を保証しながらも製品に最小量の熱的ストレスを与えるように、その時間(約3〜15秒)、及び、温度(195〜185°F)が調整できるようになっている。実施例3は、UHT工程を用いる本発明の具体例である。その後、この製品は、微生物による製品の再汚染を防ぐ環境下において滅菌パッケージに注入され、かつ、密封され得る。したがって、この実施例において、液体母乳強化剤は、貯蔵安全性(shelf stable)を有する。
【0065】
従来のレトルト滅菌(製品がパッケージ内で5〜50分間加熱される。)に比べて、UHT加熱冷却法は、従来の滅菌法におけるエネルギー使用量及び栄養損失(量)を著しく減少(軽減)させる。その結果、無菌で包装された栄養補助食品は、より高い栄養的な価値を保持し、かつ、より少ないエネルギーを用いながらもより天然に近い組織(texture)、色、及び、風味を引き出すことができる。
【0066】
様々な種類の包装容器は、当業者に知られている。容器タイプの例には、紙で作られたパケット(packet)若しくは小袋(sachet)、フォイル、及び、プラスチックフィルム、又は、フォイル若しくはプラスチックフィルム被覆紙、並びに、プラスチック、強化紙、若しくは、ガラスで造られ得るアンプルなどが挙げられる。
具体例によっては、母乳栄養補助食品は、型枠(form)又はブロー−フィール−シールパッケージ(blow-fill-seal package)に注入され、かつ、微生物による製品の再汚染を防ぐ環境下でシールされる。この具体例において、容器を形成し、それに母乳栄養補助食品で供給(注入)し、そして、連続的な工程にて人間の介入なしに、微生物による汚染の可能性を最小化するために設計されかつ動作される囲まれた領域においてシールする。このようなパッケージは、母乳栄養補助食品の単位容量であり得る。したがって、このパッケージは、約5mlの母乳栄養補助食品(母乳に直接加えることができるようになっている。)を含有し得る。
【0067】
以下の実施例は、本発明に係る様々な具体例を説明する。特許請求の範囲内に属する別の具体例については、明細書及び明細書に記載された本発明の実施形態を考慮すれば、当業者にとって明らかであろう。実施例を含めて明細書の記載は、専ら特許請求の範囲によって定まる本発明の範囲及び精神を制限するものではない。実施例において、全てのパーセント(%)は、(特に言及しない限り)体積あたりの重量(weight per volume)に基づくものである。
【実施例1】
【0068】
この実施例は、本発明に係る酸性の液体母乳栄養補助食品の一の具体例を説明する。表1は、母乳栄養補助食品5ml中に存在する主要栄養素(たんぱく質、脂肪、及び、炭水化物)、ビタミン、及び、ミネラルの量を示す。5ml中のカロリー量は、約7.5kcalである。母乳強化剤5mlを母乳約25mlに加えて、幼児に与える。
【0069】
【表1】

【0070】
表2は、10000リットル当たり実施例1の酸性の液体母乳栄養補助食品に含まれた成分を示したものである。
【0071】
【表2】


【0072】
組成物のpHを制御するために、クエン酸の量を調整することができる。この組成物における加工助剤(processing aid)として消泡剤エマルジョン(antifoam emulsion)を用いることができる。例えば、ダウコーニング社製の1520−USのような食品用消泡剤エマルジョンを10000リットル当たり0.466kgの割合で加えることによって、製造時における泡の発生を減少させることができる。
【0073】
表2に代えて、母乳栄養補助食品は、乾燥ビタミンプリミックス(dry vitamin premix)を含むことができる。このプリミックスは、100kgあたりアスコルビン酸77.219kg、ナイアシンアミド11.048kg、固体コーンシロップ(ナトリウムを制限したもの)5.000kg、パントテン酸カルシウム3.029kg、1%ビオチン粉末1.007kg、リボフラビン0.809kg、ビタミンB12(スターチ中0.1%)0.714kg、チアミン塩酸塩0.566kg、ピリドキシン塩酸塩0.506kg、及び、葉酸0.102kgを含有する。
【0074】
1gのプリミックスに含まれるチアミンの量は、約4.97mg〜約6.28mgであり得る。1gのプリミックス中リボフラビンの量は、約7.34mg〜約9.28mgであり得る。1gのプリミックス中ピリドキシンの量は、約3.78mg〜約4.77mgであり得る。1gのプリミックス中ビタミンB12の量は、約4.97〜約6.28mcgであり得る。1gのプリミックス中ナイアシンの量は、約100mg〜約127mgであり得る。1gのプリミックス中葉酸の量は、約845〜約1070mcgであり得る。1gのプリミックス中パントテン酸の量は、約24.8mg〜約31.4mgであい得る。1gのプリミックス中ビオチンの量は、約91.9〜約116mcgであり得る。1gのプリミックス中ビタミンCの量は、約702mg〜約887mgであり得る。
【0075】
同様に、前記表2に代わって、母乳栄養補助食品は、100kgあたり酢酸トコフェロール(dl−α)51.997kg、大豆オイル40.000kg、パルミチン酸ビタミンA6.203kg、コレカルシフェロール濃縮物1.746kg、及び、ビタミンK1(液体フィトナジオン)0.054kgを含有する液体ビタミンプリミックスを含み得る。ビタミンAの量は、プリミックス1gあたり約98000〜約124000IUであり得る。ビタミンD3の量は、プリミックス1gあたり約15900〜約20100IUであり得る。ビタミンEの量は、プリミックス1gあたり約473〜約598IUであり得る。ビタミンK1の量は、プリミックス1gあたり約494〜624mcgであり得る。
【0076】
表3は、実施例1の母乳栄養補助食品に対する近似分析(proximate analysis)情報を示す。
【0077】
【表3】

【0078】
母乳栄養補助食品の密度は、約1.05g/mlである。pHは滅菌(86°F)前後において約4.25〜約4.40である。組成物の粘度は、30rpm及び86°Fのブルックフィルド#2スピンドル上で測定したときに、滅菌前において約200cpであり、滅菌後において約400cpである。水で希釈した製品(25mlの水と5mlの製品)の浸透圧は、68mOsm/kg(水)である。
【実施例2】
【0079】
この実施例は、本発明に係る酸性の液体母乳栄養補助食品に関する別の実施例である。表4は、5mlの母乳栄養補助食品中に含まれた主要栄養素(たんぱく質、脂肪、及び、炭水化物)、ビタミン、及び、ミネラル成分の量を示す。5ml中のカロリー量は、約7.5kcalである。使用の際に、5mlの母乳強化剤を約25mlの母乳に加えて、それを幼児に与えることができる。
【0080】
【表4】

【0081】
表5は、10000リットル当たり実施例2の酸性の液体母乳栄養補助食品に含まれた成分を示したものである。
【0082】
【表5】


【0083】
表6は、実施例2の母乳栄養補助食品に対する近似分析情報を示す。
【0084】
【表6】

【0085】
実施例2の母乳栄養補助食品の密度は、約1.05g/mlである。pHは滅菌(86°F)前後において約4.25〜約4.40である。組成物の粘度は、30rpm及び86°Fのブルックフィルド#2スピンドル上で測定したときに、滅菌前において約800cpであり、滅菌後において約100cpである。水で希釈した製品(25mlの水と5mlの製品)の浸透圧は、68mOsm/kg(水)である。
【実施例3】
【0086】
この実施例は、本発明に係る酸性化した液体母乳栄養補助食品の製造方法の一例に相当する。たんぱく質製剤は、1241.331kgの加水分解乳清たんぱく質単離物を量り、それを1500Fの水中に溶かして(逆浸透作用にさらされる。)、用意した。30分経過後、このたんぱく質製剤を、ミックスタンクに移した。ポリジメチルシロキサン系消泡剤成分を前記混合物に加えた(10000Lあたり約0.466kg)。
【0087】
ペクチン製剤は、52.656kgのペクチンを量り、それをミネラル調剤タンク(mineral preparation tank)において16O0Fの水中に溶かして(逆浸透作用が起こる。)、用意した。5分経過後、このペクチン製剤を、たんぱく質製剤を含んだミックスタンクに移した。
【0088】
ミネラル製剤は、実施例1又は2にもあるように様々なミネラル塩(mineral salt)を量り、別のミネラル製造タンク内においてそれを1200Fの水に溶いて(逆浸透作用にさらされる。)、製造することができた。その後、このミネラル製剤を、ミックスタンクに移した。このミックスタンクに酸味財(acidulant)であるクエン酸105.012kgを加えた。
【0089】
オイル製剤は、植物オイル、菌性の(fungal)/藻類オイル、及び/又は、脂溶性のビタミンを量り、オイル製造タンクにおいてこれらのオイルを混合して、製造した。より具体的に、MCTオイル883.000kg、大豆オイル225.026g、単一細胞(single cell)ドコサヘキサエン酸オイル16.157kg、単一細胞アラキドン酸26.928kgを混ぜた。その後、様々な脂溶性のビタミン、例えば、実施例1又は2に示したものを前記オイルに混ぜた。このオイル製剤を1500Fに加熱して、前記ミックスタンクに加えた。
【0090】
ミックスタンク内の混合物を1500Fにすると、全固形分は約30%であった。ホモジナイザーを通っての前記混合物の流速は、約1.5ガロン/分であった。その後、この混合物に対し2段単一パス均質化工程(2-stage pass homogenization process)を行った。均質化の第1段階は、3500psi(pound per square inch)で行われ、そして、第2段階は、500psiで行われた。この混合物を冷却して、非殺菌サージタンク(non-sterile surge tank)の方に移した。
【0091】
水溶性ビタミンを量り、それを水に溶かして、前記サージタンクに加えた。全固形分は、約27.4%であった。その混合物を1800Fに予熱した後、最後に2700Fに加熱し、それを約3.3秒間維持させた。この混合物を1000Fに冷却した後、800Fまでの最後の冷却を行った。そのように加熱処理された製品を、滅菌(事前)タンク内に供給して、そこでブロー−フィール−シールバイアル(blow-fill-seal vial)内に包装した(無菌)。
【0092】
この明細書に引用された文献全ては、それが論文であれ、特許文献であれ、その全体として参考までに本明細書に含まれるものとする。この明細書において引用文献を言及した理由は、それらの著者によってなされた主張を要約することに留まり、決して前記文献が先行技術を構成することを認めているわけではない。出願人は、前記引用文献の正確さ及び適切性に挑戦する権利を留保する。
【0093】
具体的な用語、装置、及び、方法を用いて、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、それらはあくまで例示の目的で提供されたものに過ぎない。使用された用語は、必ずこれらに制限されない。当業者であれば、本発明の技術的範囲(特許請求の範囲によって定まる。)から逸脱することなく変更及び変形が可能であることと理解すべきである。また、様々な具体例は、全体的に又は部分的に互換可能であることと理解すべきである。例えば、特定の具体例を挙げた場合、その他の用途もまた考えられる。したがって、特許請求の範囲の精神及び範囲は、この明細書に記載された好ましい具体例の説明に制限されないものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たんぱく質成分と、脂肪成分と、炭水化物成分と、ビタミンと、ミネラルと、を含むpH約4.0〜約4.6の液体母乳栄養補助食品。
【請求項2】
前記食品のpHが、約4.2〜約4.4であることを特徴とする請求項1に記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項3】
前記食品のpHが、約4.6より低いことを特徴とする請求項1に記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項4】
前記脂肪成分が、前記食品のカロリー量の約30%より多く含まれていることを特徴とする請求項1の記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項5】
前記脂肪成分が、前記食品のカロリー量の約50%より多く含まれていることを特徴とする請求項1の記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項6】
前記脂肪成分が、DHA、ARA、及び、これらの混合物からなる群から選ばれた脂肪源を含むことを特徴とする請求項1に記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項7】
前記脂肪成分が、中鎖トリグリセリドを含むことを特徴とする請求項1に記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項8】
前記炭水化物が、前記食品のカロリー量の約10%より少なく含まれることを特徴とする請求項1に記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項9】
前記炭水化物成分が、前記食品のカロリー量の約7%より少なく含まれていることを特徴とする請求項1に記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項10】
前記たんぱく質成分が、前記食品のカロリー量の約30%を占めることを特徴とする請求項1に記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項11】
前記たんぱく質成分が、乳清、カゼインたんぱく質、及び、これらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項12】
前記食品が、ペクチンを含むことを特徴とする請求項1の記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項13】
前記食品が、前記食品10000リットル当たり約40〜約60kgのペクチンを含むことを特徴とする請求項12の記載の液体母乳栄養補助食品。
【請求項14】
前記食品が、前記食品10000リットル当たり約50〜約56kgのペクチンを含むことを特徴とする請求項12の記載の液体母乳栄養補助食品。

【公表番号】特表2010−527590(P2010−527590A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508481(P2010−508481)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/061001
【国際公開番号】WO2008/144145
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509270074)ミード ジョンソン ニュートリション カンパニー (4)
【氏名又は名称原語表記】MEAD JOHNSON NUTRITION COMPANY
【Fターム(参考)】