説明

酸性プロピオン酸塩の製造

本発明は、固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物において、式(I)(Mn+)(H+x(CH3CH2C(O)O-(n+x)(I),[式中、Mn+はn価のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを表し、ここで、nは1又は2であり;かつxは0.25〜5の範囲内の数を表すが;但し、Mn+がカリウムを表す場合、xは0.75〜1.75の範囲内にはない]による化合物少なくとも1種を含有することを特徴とする、固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物;該プロピオン酸含有組成物の製造法;並びに、動物用飼料のためのサイレージ添加剤、保存剤、酸性化剤、栄養補助食品、飼料原料又は飼料原料添加剤としての該組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体の形のプロピオン酸含有アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、該塩の製造法、動物用飼料のためのサイレージ添加剤、保存剤、酸性化剤、栄養補助食品、飼料原料又は飼料原料添加剤としての該塩の使用に関する。
【0002】
プロピオン酸含有アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩ないしこれらを含有する(大抵液体の)媒体は、抗真菌作用を有し、かつ例えば保存のため、並びに植物性及び動物性の物質、例えば草、農産物又は肉の酸性化のために、更にはヒト又は動物の食料のための添加物として利用される。特に、該塩ないし媒体はサイレージの製造の際のサイレージ添加剤ないしサイレージ助剤として適しており、それというのも、該塩ないし媒体により生じるpH値の低下は、腐敗性バクテリアの発生を妨害するためである。そのような塩の中に含まれるプロピオン酸は、乳酸発酵を促進し得るか、ないしは二次発酵を妨げ得る。
【0003】
若干の例外を除いて、酸性のプロピオン酸塩とも呼称されるこれらの塩は、これまで溶解された形でのみ記載され、使用され、ないしは使用の提案がなされていた。このことは、特に、前記化合物 − 例えば一般には低分子カルボン酸の酸性金属塩 − の固体形が極めて不安定であると見なされていることに起因するものであり、これによって、該化合物の製造は部分的に比較的高価になる(例えばEP0032807A1、第1頁、第3−14行)。
【0004】
しかしながら、前記化合物の十分な安定性は、取り扱い、貯蔵可能性及び製造に関して特に重要である。特に、該化合物中に含まれるプロピオン酸の、大規模で、又は制御されない規模で生じる遊離は、その腐食作用に基づき、及びその不快な臭気ゆえに望ましくない。
【0005】
DE2653449A1及びDE2722919A1には、とりわけ酸性のアルカリ金属二プロピオン酸塩並びに酸性のアルカリ土類金属四プロピオン酸塩の双方が溶解された形で記載されている。US4,401,624には、例えば遊離プロピオン酸と比較して低下した腐食性を有する二プロピオン酸ナトリウムを含有する緩衝された溶液が記載されている。
【0006】
EP0112080A1には、動物用飼料のためのための保存剤としての固体の酸性のプロピオン酸カリウム(二プロピオン酸カリウム)の使用が記載されているが、但しその製造は記載されていない。
【0007】
DE2432473A1によれば、該刊行物に記載されている流動床法により、とりわけ、固体の酸性のプロピオン酸カリウム(二プロピオン酸カリウム)を製造することもできる。
【0008】
プロピオン酸及び中性のプロピオン酸カリウムの水溶液又はアルコール溶液から、蒸発、濾過及びエタノールでの洗浄によって固体の酸性のプロピオン酸カリウム(二プロピオン酸カリウム)を製造することは、Levi, T. G., Gazzetta Chimica Italiana 1932, 62, 709-716の記載から公知である。前記刊行物において、他の酸性のプロピオン酸カリウム、例えば酸性の三プロピオン酸カリウムは存在していないか、もしくは上記刊行物に記載された方法を用いて得ることはできないことが確認される。
【0009】
EP0123416A1及びEP0032807A1にも、固体の形の酸性のプロピオン酸カリウム(二プロピオン酸カリウム)が記載されており、該化合物は、プロピオン酸及び中性のプロピオン酸カリウムの水溶液からの結晶化により得られたものである。しかしながら、EP0032807A1の場合、二プロピオン酸カリウムは単に副生成物であるに過ぎず、それというのも、該刊行物に記載された方法は、根本的に、固体の五プロピオン酸二カリウムの製造に向けられたものであるためである。EP0123416A1による方法が、強制的に上記出発物質の等モル溶液から出発するのに対して、EP0032807A1による方法の場合、前記出発物質のモル比は変化し得る。しかしながら、これに関してEP0032807A1からは詳細な記載を引用することはできず;実施例では等モル混合物又は1.5倍過剰のプロピオン酸が使用されている。しかしながら後者の場合には、生じる固体は二プロピオン酸カリウムと五プロピオン酸二カリウムとからの混合物である。
【0010】
US3,008,986には、不所望な副成分として二プロピオン酸ナトリウムの痕跡を数百ppmの範囲内で含有する固体の酸性のプロピオン酸ナトリウムの製造が記載されている。
【0011】
動物用飼料の分野で、酸性のプロピオン酸塩は特に、この化合物を介して、所望のカチオンを有利な栄養価と組み合わせることができるという利点を提供する。特に、ナトリウム含有酸性プロピオン酸塩は、微量元素のナトリウムが通常のようにNaClの形で別個に添加される必要がなく、すでにそれ自体がナトリウム源であるという利点を提供する。ナトリウム含有酸性プロピオン酸塩中のプロピオン酸の所定の含分によって、ナトリウムイオンの含分を更に制御ないし制限することができる。カチオン、例えばカリウムイオンのわずかなないし制限された含分は、該含分が特に単胃動物の場合に、及び特に家禽の場合に、高められた液体吸収性(飲水の増加)、ひいては動物の排泄物の希釈を導き、従って利尿作用を発揮し得るという点で望ましい。
【0012】
本発明は、本質的にプロピオン酸とアルカリ金属プロピオン酸塩又はアルカリ土類金属プロピオン酸塩とからなる、固体の、特に結晶及び/又は乾燥した形の出来る限り安定な化合物並びにその製造法を提供するという課題に基づいていた。前記の製造法は特に、目的化合物中のプロピオン酸の含分の制御された調節、及び特に高い含分の調節を可能にするのが望ましい。更に、該製造法は大工業的製造の範囲内で効率的に適用可能であるのが望ましい。前記理由から、本発明による化合物は、特に容易な取り扱い及び特に比較的低い蒸気圧の点でも優れていることが望ましい。
【0013】
前記課題は、意外にも、目的化合物を、プロピオン酸とそれぞれの中性のアルカリ金属プロピオン酸塩又はアルカリ土類金属プロピオン酸塩とからの定義された均質な混合物から取得することによって解決され、その際、該混合物はほぼ無水であるか、又は少なくともわずかな含水量を有するに過ぎない。
【0014】
従って、本発明の対象は、式(I)
(Mn+)(H+x(CH3CH2C(O)O-(n+x) (I),
[式中、
n+はn価のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウム;有利に、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウム;及び特に有利にナトリウム又はカルシウムを表し;
ここで、nは1又は2であり;かつ
xは0.25〜5の範囲内;有利に0.3〜3.5の範囲内;特に有利に0.3〜2.5の範囲内の数を表す]
による化合物少なくとも1種を含有する、固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物の製造法(A)において、
1:0.25〜1:5の範囲内、有利に1:0.3〜1:3.5の範囲内、特に有利に1:0.3〜1:2.5の範囲内のモル比の中性のアルカリ金属プロピオン酸塩ないしアルカリ土類金属プロピオン酸塩とプロピオン酸とから、加熱下に均質な混合物を製造し、この均質な混合物を少なくとも部分的に固化させ、
その際、均質な混合物の含水量は、少なくとも固化の開始時及び特に固化の間にも、該混合物の全質量に対して少なくとも1質量%未満であることを特徴とする、固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物の製造法(A)である。
【0015】
以下で、プロトン含分を有しないものを中性のアルカリ金属プロピオン酸塩ないしアルカリ土類金属プロピオン酸塩と呼称する。有利に、以下の金属の中性のプロピオン酸塩が使用される:リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウム;特に有利に、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウム;及び極めて特に有利にナトリウム又はカルシウム。この種の中性のプロピオン酸塩及びその製造法は当業者に公知であり;部分的に、前記化合物、例えばプロピオン酸ナトリウム(E281)、プロピオン酸カリウム(E283)及びプロピオン酸カルシウム(E282)は市販もされている。
【0016】
使用すべき中性のプロピオン酸塩の慣用の製造法は、例えば、それぞれのアルカリ金属ないしアルカリ土類金属水酸化物、−炭酸塩又は−炭酸水素塩とプロピオン酸とを反応させることである。前記変法の場合、例えば、固体のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物又はその濃縮水溶液を場合により冷却及び/又は撹拌下に溶解させるというように行うことができる。この場合、プロピオン酸は有利に濃縮されている。この混合物を、次いで、場合により過剰の酸の中和後に、例えば混合物の水又は酸の含分を低下させることによって結晶化させるが、これは慣用の当業者に公知の方法、例えば蒸発、抽出、蒸留等により行われる。結晶化された中性のアルカリ金属プロピオン酸塩又はアルカリ土類金属プロピオン酸塩は、次いで、当業者に公知である方法により単離され、固相と液相とに分離される。通常、水と異なる異成分を、中性のプロピオン酸塩の使用される源の全質量に対して0.5質量%以下含有する中性のプロピオン酸塩が使用される。有利に、カリウムイオンをその都度中性のプロピオン酸塩の使用される源の全質量に対して0.1質量%未満、特に0.05質量%未満含有する中性のプロピオン酸塩の源が使用される。
【0017】
通常、均質な混合物の製造のために、全質量に対して少なくとも95質量%、特に少なくとも99質量%のプロピオン酸含分を有する濃縮されたプロピオン酸が使用される。
【0018】
出発物質からの均質な混合物の製造は、慣用の当業者に公知の処理手順により、例えば30℃を上回る高めた温度の適用下に混合、撹拌又は溶解することにより、ないし前記方法を組み合わせて適用することにより行うことができる。出発物質の使用の順序はそれほど重要ではない。有利に、出発物質は、出発物質の均質な液体混合物が所望のモル比で得られるように組合せられる。この組合せの後に全ての成分が完全に溶解しきってはいない場合、有利に撹拌下に、所望の溶融物又は溶液が得られるまで更に温度が高められる。出発物質の組合せの間、反応混合物は有利に運動、例えば撹拌される。この運動は、組合せの終了後に少なくとも溶融物又は溶液が得られるまで、後者の場合には通常結晶化の終了又は中断まで継続される。
【0019】
本発明によれば、出発物質の混合は、均質な液体混合物の製造を目的として通常使用される全ての装置、例えば反応器、釜、フラスコ等中で、特に内部に存在する熱交換器面を有する撹拌容器中で行われてよい。これらは当業者に公知である。例えば鋼製の反応器又は釜の場合に腐食効果を回避するために、プロピオン酸と接触する面及び壁が例えばTeflon(登録商標)からの耐酸性の保護層で被覆されているか、又は特に耐酸性の高合金鋼で被覆されている場合に有利である。
【0020】
本発明によれば、均質な混合物は加熱下に製造される。これは、通常少なくとも30℃、特に少なくとも40℃、特に少なくとも50℃の温度であると解釈され、その際、通常250℃、特に200℃を超えない。均質な混合物の達成のために必要な温度は、個々の事例において、使用される金属カチオンの種類並びに出発物質の使用されるモル比に依存する。加熱により完全に均質な混合物を製造することが製造法(A)における本発明の本質である。この均質な混合物は溶融物であってもよいし、溶液であってもよい。
【0021】
本発明による方法(A)を実施するために、通常、出発物質を室温で組み合わせる。この組合せは、同時にか又は連続して、及び相互に独立してその都度例えば1、2、3、4又はそれを上回る回数で、特に2〜20回で、特に3〜10回に分けて少量ずつ、又は連続的に、即ち同じ、上昇又は低下する速度で行われてよい。引き続き、反応混合物は、溶融物又は溶液の形の均質な混合物が得られるまで加熱される。一種又は双方の出発物質の連続的な添加は、室温に調温された出発物質をすでに加熱された反応混合物に添加するというように行うこともできる。通常、混合物の温度は、例えば添加速度の適合及び/又は混合物及び/又は添加された出発物質の冷却ないし加熱により、混合物中で、温度が30℃〜200℃の範囲内、特に40℃〜180℃の範囲内に保持されるように調節される。
【0022】
本発明によれば、このように得られた均質な混合物は少なくとも部分的に固化される。均質な混合物が溶融物の形で存在するか又は溶液の形で存在するかに応じて、固化工程を変化させることができる。固化とは、ここで、混合物を溶融物の場合には凝固させ(変法1)、又は溶液の場合には結晶化させる(変法2)ことを意味する。凝固される場合(A1)、通常、全ての均質な混合物が凝固され、その際、場合により、残留湿分のわずかな含分、特にプロピオン酸が、凝固された生成物中に、生成物(即ち得られる固体の組成物)の全質量に対して例えば1質量%未満、特に0.5質量%未満存在する。有利に、凝固された生成物は残留湿分の含分を有しない。後者(A2)の場合、通常、固相を液体混合物から晶出させ、その際、液相の一部が母液として得られる。
【0023】
固化は有利に、混合物を例えば30℃未満の温度に、特に室温に冷却し、かつ/又は混合物の揮発性成分、特に水又はプロピオン酸を場合により真空下に蒸発させることにより生じさせる。冷却ないし蒸発は、変法A2の場合、その都度の所望の式(I)の化合物の種晶の存在で行うことができる。冷却ないし蒸発の際に反応混合物が式(I)の化合物を含有する固相に加えて液相も形成するか否か(つまり、固化が変法A1により進行するか又は変法A2により進行するか)は、個々の事例において、使用される金属カチオンの種類並びに出発物質の使用されるモル比ないし得られた式(I)の化合物の化学量論に依存する。これは、当業者が、ここに記載された製造法の追従により個々の事例において容易に調べることができる。
【0024】
均質な混合物を加熱して溶融物にする場合(変法A1)、該溶融物は通常冷却により凝固される。この場合、通常、本質的に式(I)の化合物少なくとも1種、例えば1種又は2種からなる唯一の固相が得られる。本発明による方法のこの変法の利点は、特に、乾燥工程を適用せずに、例えば、生成物の全質量に対して最高で1質量%の水及び/又はプロピオン酸の残留湿分を有する乾燥した生成物が得られることである。以下に記載するように、乾燥工程によってこの残留湿分は更に低減され得る。
【0025】
均質な混合物を加熱して溶液にする場合(変法A2)、該溶液は有利に冷却により結晶化される。この場合、通常、本質的に式(I)の化合物少なくとも1種、例えば1種又は2種、特に1種からなる固相と液相(母液)とが得られる。結晶化の後、得られた固体生成物を母液から分離する。母液からの固相の分離は、このために慣用の当業者に公知の方法、例えば濾過又は遠心分離により、有利に特に押し出し排出型又はヘラ排出型遠心分離装置の使用下での遠心分離により行うことができる。そのように取得された生成物は、通常、なおわずかな量のプロピオン酸、水及び/又は使用された中性のプロピオン酸塩を含有するが、これらは以下に記載するような引き続く乾燥工程により低減されることができる。
【0026】
冷却により凝固(変法(A1))させる場合、これを通常数分以内で行う。冷却により結晶化(変法(A2))させる場合、これは有利にゆっくりと、有利に1又は数時間の期間、例えば1〜48h、特に2〜24h、特に4〜12hの範囲内にわたって行われる。この場合、目的化合物が晶出する。冷却は例えば約1〜約25K/h、例えば約2〜20K/hの範囲内の冷却速度で行うことができる。目的化合物の十分な結晶化を達成するために、反応混合物を上記の期間内で30℃未満の温度に、例えば室温又はそれを下回る温度に冷却することが有利である。この場合通常、0℃、特に5℃の温度を下回らない。
【0027】
変法(A2)において溶液が冷却により結晶化される場合、結晶形成の開始後、まず第一に形成された結晶核ないし微結晶を、再度例えば5〜10℃又は必要であればそれ以上昇温させることにより再度溶解させ、かつ結晶化工程を、引き続き、新たな、場合によりゆっくりとした冷却によって再度開始させることは有利であり得る。
【0028】
更に、変法(A2)の場合、溶液に、既に存在する、例えば本発明による方法により予め製造された式(I)の所望の化合物の結晶を、結晶化工程の促進の目的で、つまりいわゆる「シード添加」の目的で添加することは有利であり得る。この種の結晶は、乾燥又は湿潤した形で、例えば液体、有利にプロピオン酸相中に懸濁されて、又は前記の形の組合せで添加されてよい。しかしながらこの場合、添加は、必ずしもそうでなければならないというわけではないが、通常は、自発的な結晶形成を導く温度を上回って、かついずれにせよ、添加された結晶核が溶解する温度を下回って行われる。反応混合物のその都度適当な温度は、当業者によって、容易にルーチン実験で決定されることができる。次いで、結晶化工程が前記のように継続されてよい。
【0029】
特に変法(A2)の場合にまだ湿潤している生成物は、例えば真空及び/又は適度な加熱下での慣用の乾燥法により乾燥されてよい。このために使用可能な乾燥機及び乾燥法は当業者に公知であり、かつ例えばK. Kroell, Trockner und Trocknungsverfahren, 第2版, Springer出版, ベルリン 1978に記載されている。特に、例えば接触式乾燥機、流動床式乾燥機及び放射熱式乾燥機を使用することができる。噴霧乾燥機の使用も可能であり、その際有利に、結晶化及び乾燥の工程は並行して行われる。乾燥の場合、生成物中に含まれるプロピオン酸が比較的易揮発性であること、並びに、場合により生成物の限定された温度安定性を考慮しなければならない。乾燥の間に、通常、酸性のアルカリ金属プロピオン酸塩の場合には生成物温度は75℃、特に50℃を超えず、酸性のアルカリ土類金属プロピオン酸塩の場合には生成物温度は150℃を超えない。
【0030】
変法(A1)の場合には凝固及び乾燥工程の後に、ないし、(A2)の場合には乾燥工程の後に、生成物中ないしは得られた組成物中に残存する含水量(残留含水量)は、組成物の全質量に対して通常最高で1質量%、有利に最高で0.5質量%であり、かつ通常は約0.5〜0.01質量%の範囲内である。(A1)の場合、含水量は組成物の全質量に対して特に有利に最高で0.3質量%、極めて特に有利に最高で0.2質量%、しばしば0.25〜0.01質量%の範囲内である。この場合、含水量はその都度Karl Fischerによる酸化滴定により測定される(例えばWiland, Wasserbestimmung durch Karl-Fischer-Titration, ダルムシュタット, GIT, 1985に記載されている)。
【0031】
以下で、組成物の全質量という表現は、全乾燥質量という表現と同義で用いられる。全乾燥質量とは、生成物をその分解温度を下回って乾燥させることにより、例えば酸性のアルカリ金属プロピオン酸塩の場合には、温度40℃、圧力50mbarで1hの期間にわたって乾燥させることにより、ないし、酸性のアルカリ土類金属プロピオン酸塩の場合には、温度100℃、圧力1bar〜50mbarの範囲内、特に50mbarで1hの期間にわたって乾燥させることにより生じる組成物の質量と解釈される。
【0032】
本発明による方法(A1)の場合、Mn+は有利にアルカリ金属、特に有利にナトリウム又はカリウムを表し、極めて特に有利にナトリウムを表す。
【0033】
本発明による方法(A1)の場合、均質な混合物中の中性のアルカリ金属プロピオン酸塩とプロピオン酸とのモル比は、有利に1:0.4〜1:3の範囲内、特に有利に1:0.5〜1:2.5の範囲内;例えば約1:1又は1:2である。
【0034】
本発明による方法(A1)の場合、特に、xが0.4〜3の範囲内、特に0.5〜2.5の範囲内であり;例えば約1又は2である式(I)の化合物が得られる。
【0035】
本発明による方法(A1)の特に有利な実施態様において、Mn+はナトリウムであり、かつ均質な混合物中の中性のプロピオン酸ナトリウムとプロピオン酸とのモル比は、1:0.4〜1:3の範囲内、特に有利に1:0.5〜1:2.5の範囲内;例えば約1:1又は1:2である。この実施態様において得られる酸性のプロピオン酸ナトリウムは、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry, DSC)の際に、その組成に応じて、特に温度61℃で、及び場合により90℃で相転移点を示す。更に、前記の酸性のプロピオン酸ナトリウムの粉末X線回折図形は、特に、d=13.63;13.13;13.03;11.09;9.71;9.59;3.94;2.84;2.79[Å](±0.04[Å])から選択された格子面間隔の少なくとも4つ、特に少なくとも5つ、特に少なくとも7つでの回折ピークが特徴的である。他の回折ピークはしばしば以下の格子面間隔で観察される:d=4.88;4.14;3.68;3.46;3.26;3.09及び/又は2.96[Å](±0.04[Å])。極めて接近した格子面間隔は相互に粉末X線回折図形において重なり得ることは、当業者に自明である。このことは、特に、d=13.13及び13.03[Å]ないしd=9.71及び9.59[Å]のピーク位置で起こり得るため、その都度1つのピークのみが上記格子面間隔で観察される。この実施態様において、x=2(以下の実施例1を参照のこと)ないしx=1(以下の実施例3を参照のこと)に関して粉末X線回折図形において得られた典型的な相対強度を第1表に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
本発明による方法(A2)の場合、Mn+は有利にアルカリ土類金属、特に有利にカルシウム又はマグネシウム、極めて特に有利にカルシウムを表す。
【0038】
本発明による方法(A2)の場合、均質な混合物中の中性のアルカリ土類金属プロピオン酸塩とプロピオン酸とのモル比は、有利に1:0.5〜1:10の範囲内、特に有利に1:1〜1:8の範囲内、極めて特に有利に1:2〜1:5の範囲内;例えば約1:3である。
【0039】
本発明による方法(A2)の場合、特に、xが0.25〜0.6の範囲内、特に0.3〜0.5の範囲内であり、例えば約0.4である式(I)の化合物が得られる。
【0040】
本発明による方法(A2)の特に有利な実施態様において、Mn+はカルシウムであり、かつ均質な混合物中の中性のプロピオン酸カルシウムとプロピオン酸とのモル比は、1:1〜1:8の範囲内、特に有利に1:2〜1:5の範囲内、例えば約1:3である。この実施態様で得られる酸性のプロピオン酸カルシウムは、示差走査熱量測定の際に、特に167℃〜168℃の範囲内の温度で相転移点を示す。更に、前記の酸性のプロピオン酸カルシウムの粉末X線回折図形は、d=12.70;9.42;8.91;8.16;6.65;6.38;4.51;4.26;4.03;3.81[Å](±0.04[Å])から選択された格子面間隔の少なくとも5つ、特に少なくとも7つ、特に少なくとも9つ、極めて特に全てでの回折ピークが特徴的である。他の回折ピークはこの場合しばしば以下の格子面間隔で観察される:d=24.86;3.93;3.32;2.83及び/又は2.56[Å](±0.04[Å])。この実施態様において、x=0.4(以下の実施例4を参照のこと)に関して粉末X線回折図形において得られた典型的な相対強度を第2表に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
本発明による方法(A)は、連続的、半連続的又はバッチ式に実施することができる。変法(A1)の場合、乾燥した生成物を乾燥工程の適用なしに得ることができ、かつ、製造された均質な混合物中の出発物質のモル比を選択することによって、得られた式(I)の化合物の化学量論を幅広い範囲にわたって自由に調節することができることが特に有利である。一般に、そのようにして、組成物の全質量に対して5〜70質量%の範囲内、特に10〜65質量の範囲内のプロピオン酸の含分を有する式(I)の化合物を含有する組成物を製造することができる。
【0043】
本発明のもう一つの対象は、式(I)
(Mn+)(H+x(CH3CH2C(O)O-(n+x) (I),
[式中、
n+はn価のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウム;有利に、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウム;及び特に有利にナトリウム又はカルシウムを表し;
ここで、nは1又は2であり;かつ
xは0.25〜5の範囲内;有利に0.3〜3.5の範囲内;特に有利に0.3〜2.5の範囲内の数を表す]による化合物少なくとも1種を含有する、固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物の製造法(B)において、
1:0.25〜1:5の範囲内のモル比の中性のアルカリ金属プロピオン酸塩ないしアルカリ土類金属プロピオン酸塩とプロピオン酸とから、加熱下に均質な混合物を製造し、この均質な混合物を結晶化させ、
その際、均質な混合物の含水量は、少なくとも結晶化の開始時及び特に結晶化の間にも、該混合物の全質量に対して1〜15質量%の範囲内であり;かつ
その際、Mn+がカリウムを表す場合、均質な混合物中での中性のアルカリ金属プロピオン酸塩ないしアルカリ土類金属プロピオン酸塩対プロピオン酸のモル比が1:0.75〜1:1.75の範囲内にないことを特徴とする固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物の製造法(B)である。
【0044】
上記変法(B)で使用可能な中性のアルカリ金属プロピオン酸塩又はアルカリ土類金属プロピオン酸塩に関しては、上記の本発明による方法(A)でなされた記載が当てはまる。
【0045】
変法(B)の場合、均質な混合物の製造のために、変法(A)の場合のような濃縮されたプロピオン酸を使用することもできるし、その水溶液を使用することもできる。後者の場合、使用されるプロピオン酸水溶液は、有利に少なくとも95質量%、有利に少なくとも98質量%の濃度を有する。特に有利に、少なくとも99質量%のプロピオン酸含分を有する濃縮されたプロピオン酸が使用される。プロピオン酸ないしプロピオン酸溶液の濃度は、有利に95〜99質量%の範囲内である。
【0046】
使用すべき中性のアルカリ金属プロピオン酸塩又はアルカリ土類金属プロピオン酸塩が、上記で方法(A)で説明したように水溶液中でのプロピオン酸との反応により製造される場合、ここで、出発物質のモル比は有利に、生じる反応バッチ中のプロピオン酸、中性のアルカリ金属プロピオン酸塩又はアルカリ土類金属プロピオン酸塩及び水の成分がすでに上記の必要なモル比で存在するように直接選択される。変法(B)の場合、結晶化からの母液も均質な混合物の製造に使用することができる。
【0047】
出発物質の組合せ及び反応混合物の加熱による均質な混合物の製造は、変法(A)のために上記したのと同様に行うことができる。ここで特に、結晶化を含水溶液から行うことが本発明の本質である。該溶液は、(A2)のために上記したのと同様に、既に結晶化の開始前に種晶と混合されているか、又は混合されることができる。この含水溶液は、有利に継続された撹拌下に、例えば部分的な蒸発により、又は冷却により、有利に冷却により結晶化される。結晶化が有利に真空下で液相の制御された蒸発により引き起こされるか又は開始されるかもしくは促進される場合、溶液中の成分のモル比が結晶化の開始時に上記で規定された範囲内となるように保証されねばならない。
【0048】
結晶化の後に、(A2)で上記されたような固体の生成物が母液から分離され、かつ有利に同様に(A2)で上記されたような乾燥工程にかけられる。ここで、(A1)ないし(A2)のために上記されたような乾燥分を有する式(I)の化合物を含有する組成物が得られる。組成物の全質量に対して5〜70質量%の範囲内、特に10〜65質量の範囲内のプロピオン酸の含分を有する式(I)の化合物を含有する組成物を製造することができる。
【0049】
本発明による方法(B)の有利な実施態様において、Mn+はアルカリ金属、特に有利にナトリウム又はカリウムを表し、極めて特に有利にナトリウムを表す。
【0050】
本発明による方法(B)の場合、均質な混合物中の中性のアルカリ金属プロピオン酸塩とプロピオン酸とのモル比は、有利に1:8〜1:2.2の範囲内、特に有利に1:1.9〜1:2.1の範囲内;例えば約1:2である。
【0051】
前記変法(B)の場合、特に、xが1.8〜2.2の範囲内、特に2.1〜2.2の範囲内であり、例えば約2である式(I)の化合物が得られる。
【0052】
本発明による方法(B)の特に有利な実施態様において、Mn+はナトリウムであり、かつ均質な混合物中の中性のプロピオン酸ナトリウムとプロピオン酸とのモル比は、1:1.8〜1:2.2の範囲内、特に有利に1:1.9〜1:2.1の範囲内;例えば約1:2である。この実施態様で得られる酸性のプロピオン酸ナトリウムは、示差走査熱量測定(DSC)の際に、特に61℃の温度で相転移点を示す。更に、前記の酸性のプロピオン酸ナトリウムの粉末X線回折図形は、特に、以下:13.63;13.13;13.03;11.09;9.71;9.59;3.94;2.84;2.79[Å](±0.04[Å])から選択された格子面間隔dの少なくとも4つ、特に少なくとも5つ、特に少なくとも7つでの回折ピークが特徴的である。他の回折ピークはこの場合しばしば以下の格子面間隔で観察される:d=4.88;4.14;3.68;3.46;3.26;3.09及び/又は2.96[Å](±0.04[Å])。ここで、x=0.2(以下の実施例5を参照のこと)に関して粉末X線回折図形において得られた典型的な相対強度を第3表に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
本発明による方法(B)のもう1つの有利な実施態様において、Mn+はアルカリ土類金属、特に有利にカルシウム又はマグネシウムを表し、極めて特に有利にカルシウムを表す。
【0055】
本発明による方法(B)の場合、均質な混合物中の中性のアルカリ土類金属プロピオン酸塩とプロピオン酸とのモル比は、有利に1:0.5〜1:10の範囲内、特に有利に1:1〜1:8の範囲内、極めて特に有利に1:2〜1:5の範囲内;例えば約1:3である。
【0056】
前記変法(B)の場合、特に、xが0.25〜0.6の範囲内、特に0.3〜0.5の範囲内であり;例えば約0.4である式(I)の化合物が得られる。
【0057】
本発明による方法(B)の特に有利な実施態様において、Mn+はカルシウムであり、かつ均質な混合物中の中性のプロピオン酸カルシウムとプロピオン酸とのモル比は、1:1〜1:8の範囲内、特に有利に1:2〜1:5の範囲内、例えば約1:3である。この実施態様で得られる酸性のプロピオン酸カルシウムは、示差走査熱量測定の際に、特に167℃〜168℃の範囲内の温度で相転移点を示す。更に、前記の酸性のプロピオン酸カルシウムの粉末X線回折図形は、特にd=12.70;9.42;8.91;8.16;6.65;6.38;4.51;4.26;4.03;3.81[Å](±0.04[Å])から選択された格子面間隔の少なくとも5つ、特に少なくとも7つ、特に少なくとも9つ、極めて特に全てでの回折ピークが特徴的である。他の回折ピークはこの場合しばしば以下の格子面間隔で観察される:d=24.86;3.93;3.32;2.83及び/又は2.56[Å](±0.04[Å])。ここで、x=0.4(以下の実施例6及び実施例7を参照のこと)に関して粉末X線回折図形において得られた典型的な相対強度は、第2表でそれぞれのピーク位置に関して上記された相対強度に相応する。
【0058】
本発明による方法(B)は、連続的、半連続的又はバッチ式に実施することができる。一般に、そのようにして、式(I)の全質量に対して5〜70質量%の範囲内、特に10〜65質量の範囲内のプロピオン酸の含分を有する式(I)の化合物を製造することができる。
【0059】
本発明による方法及び変法により、固体でかつ本質的に純粋な形の式(I)の化合物を含有する組成物が得られる。式(I)の化合物を含有する前記組成物は新規であり、従って本発明のもう1つの対象である。本発明によれば、該組成物は式(I)の化合物を少なくとも1種、例えば1種、2種又はそれ以上含有する。有利に、該組成物は本質的に、特に純粋な形の式(I)の化合物1種、又は式(I)の化合物2種からの混合物を含む。
【0060】
式(I)の化合物は特に遊離プロピオン酸と比較してより低い蒸気圧の点で優れており、従って高められた安定性及び良好な取り扱い可能性が顕著である。本発明による式(I)の化合物を含有する組成物は、組成物の全質量に対して5〜70質量%の範囲内、特に10〜65質量の範囲内のプロピオン酸の含分を有することができる。乾燥した生成物中のプロピオン酸の含分は、通常例えばプロピオン酸を塩基で滴定することにより測定することができる。
【0061】
式(I)の化合物ないし該化合物を含有する組成物は、典型的には結晶形で得られる。これらは、本質的に、又は完全に式(I):(Mn+)(H+x(CH3CH2C(O)O-(n+x),[式中、x及びnは上記の意味を有する]に相応する。これに関連して、前記組成物がアルカリ金属プロピオン酸塩又はアルカリ土類金属プロピオン酸塩及びプロピオン酸を関連づけられた結晶形で有することは、本発明の本質である。本発明により得られた式(I)の化合物の結晶変態は、例えばX線広角散乱により検出することができる。不所望な変態、例えば遊離の中性の金属プロピオン酸塩は、同一の方法で同様に定性的に検出することができる。X線回折ピークの表記は、本願明細書において、使用されたX線の波長と無関係な格子面間隔d[Å]の形で行われ、該格子面間隔dは測定された回折角からBraggの式を用いて算出することができる。
【0062】
通常、本発明による組成物の粉末X線回折図形は、例えば本発明による方法により製造された酸性のプロピオン酸ナトリウムないしプロピオン酸カルシウムに関して既に記載されたような特別な結晶構造の全ての回折ピーク特性を有する。しかしながら、得られた結晶の結晶度及びテクスチャに応じて、粉末X線回折図形中の回折ピークの強度の低下が生じることがあり、この強度の低下は、強度の低い若干の回折ピークがもはや粉末X線回折図形において検出不可能となるまでに達することがある。従って、強度が低下した若干の回折ピークが欠損し得るか、又は粉末X線回折図形中の強度比が変化していることがある。粉末X線回折図形中のその都度記載されている回折ピークの全ての存在は、特に高い結晶性の1種以上の化合物(I)を有する組成物が存在することの表れである。本発明による組成物ないし化合物(I)が、その都度記載された固有の回折ピークの他に他の回折ピークを有し得ることは当業者にとって自明である。更に、本発明による化合物(I)を含有する組成物と他の結晶性化合物との混合物は、通常付加的な回折ピークを有する。
【0063】
示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry, DSC)を用いて、本発明による組成物において、通常1又は2個の相転移点を認めることができる。これは、認められたそれぞれの相転移点を式(I)の別の化合物に割り当てることができることに由来しており、従って、DSCにおける2つのピークの発生は、本発明による組成物中に式(I)の化合物が2種存在することを示している。しかしながら、この解釈はこれに限定されるものと理解されるべきではなく、それというのも、例えば2つの相転移点を有する式(I)の唯一の化合物が存在する可能性があるためである。
【0064】
本発明による方法により得られる、場合により乾燥された組成物中の式(I)の化合物の含分は、その都度乾燥した組成物の全質量に対して通常少なくとも97質量%、特に少なくとも98質量%、特に少なくとも99質量%である。この意味で、「本質的に純粋な形」という表現も、本発明の目的のために、式(I)の1種以上の化合物を含有する本発明による組成物が、他の成分として、例えば残留湿分又は結晶化された残留湿分に基づき、それぞれ組成物の全質量に対して通常1.5質量%までのプロピオン酸、1.5質量%までの中性アルカリ金属プロピオン酸塩又はアルカリ土類金属プロピオン酸塩及び/又は1質量%までの水を含有してよいことを意味するものと解釈すべきである。特に、本発明による組成物中の水の含分は、場合により乾燥工程の実施後に、組成物の全質量に対して最高で0.5質量%である。特に製造変法(A1)の場合、上記の限界値をしばしば明らかに下回る。
【0065】
更に、本発明より得られた式(I)の化合物は、問題のない取り扱い及び(後)加工を保証するのに十分に安定である。更に、得られた組成物のカリウムイオンの含分は、Mn+がカリウムを表さない限り、それぞれ全質量に対して通常最高で1000ppm、特に最高で500ppmである。製造に応じて、本発明により得られる組成物中の塩化物含分は、それぞれ全質量に対して通常1500ppm未満、特に1000ppm未満である。
【0066】
本発明による式(I)の化合物を含有する組成物の水溶液は、通常、同一の濃度のプロピオン酸又は相応する中性のプロピオン酸塩の溶液のpH値とは明らかに異なるpH値を有する。例えば、二プロピオン酸ナトリウムの10質量%溶液は20℃で4.9のpH値を有し、かつ三プロピオン酸ナトリウムの10質量%溶液は4.6のpH値を有するが、その一方で、中性のプロピオン酸ナトリウムの10質量%溶液は20℃で7〜8のpH値を有する。五プロピオン酸二カルシウムの10質量%溶液は20℃で5〜6の範囲内のpH値を有するが、その一方で、中性のプロピオン酸カルシウムの10質量%溶液は20℃で8〜10の範囲内のpH値を有する。それに対して、プロピオン酸の10質量%溶液は20℃で2.5のpH値を有する。
【0067】
得られた固体生成物を、乾燥工程の前及び/又は後に、例えば乳鉢、切断装置、打抜プレス及びシリンダーミルを用いて粉砕し、例えばミキサーを用いて凝集させ、かつ/又は例えばプレス及び圧縮機を用いて圧縮することができる。この種の粉砕のために使用される装置は当業者に公知である。
【0068】
所望の使用目的に応じて、本発明により製造された、式(I)の化合物1種以上を含有する組成物を後加工することができ、特に、所定の粒度の粉末を製造し、製造された粒子をコーティングで被覆することができ、かつ/又は他の添加物との混合物を製造することができる。コーティングないしコーティング材料の例として、油、例えば大豆油、脂肪及び脂肪酸、例えばパルミチン酸又はステアリン酸又は例えばポリアルキレンとその誘導体とからのポリマーコーティングが挙げられる。慣用の添加物は、特に流動助剤、例えばケイ酸等である。被覆に慣用の方法並びに当該の添加物は、それぞれの分野において原則的に当業者に公知である。例えばDE10231891A1を参照のこと。
【0069】
本発明によれば、製造された組成物は固体の形で、特に結晶粉末として、又は顆粒又は圧縮物として存在する。応用技術的要求に応じて、粉末、顆粒ないし圧縮物は、1μm〜10000μm、特に10μm〜1000μm、特に100μm〜500μmの範囲内の平均粒度を有する。
【0070】
本発明により製造された、式(I)の化合物少なくとも1種を含有する固体の組成物ないし該化合物を含有する配合物は、特にサイレージの製造の際のイレージ添加剤ないしサイレージ助剤として適している。これにより引き起こされた例えば約3〜4のオーダーの値へのpH値の低下によって、腐敗性バクテリアの発生が妨害され、特に有害な酵母の発生が防止される。乳酸発酵が促進され得るか、ないしは二次発酵が妨げられ得る。
【0071】
本発明により製造された、式(I)の化合物少なくとも1種を含有する固体の組成物は、いわゆる酸性化剤としても適当である。酸性化剤とは、pH値を低下させる物質であると解釈される。この表現は、基材(例えば動物用飼料)におけるpH値を低下せる物質のみならず、動物の胃腸管内のpH値を低下させる物質をも含む。
【0072】
本発明により製造された、式(I)の化合物少なくとも1種を含有する固体の組成物は、更に保存剤として、特に青刈飼料及び/又は動物用飼料用の保存剤として適当である。
【0073】
更に、本発明により製造された、式(I)の化合物少なくとも1種を含有する固体の組成物は栄養補助食品として適当である。
【0074】
本発明により製造された、式(I)の化合物少なくとも1種を含有する固体の組成物ないし該化合物を含有する配合物は、動物用の飼料原料(動物用飼料原料)における使用に、特に飼料原料添加剤(飼料原料添加物)の形の動物用飼料に対する添加物として、及び特に動物用飼料原料のためのプレミックスに対する添加物として適当である。プレミックスとは、通常無機物質、ビタミン、アミノ酸、微量元素並びに場合により酵素を含有する混合物である。本発明により製造された式(I)の化合物を含有する固体の組成物を含有する動物用飼料原料及び飼料原料添加物は、特に、単胃動物、例えばブタ、特に子ブタ、繁殖用雌ブタ及び肥育豚並びに家禽、特にブロイラー、産卵鶏、七面鳥、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ及びダチョウに適している。
【0075】
飼料原料又は飼料原料添加物中に含まれる残りの物質ないし添加物に応じて、飼料原料ないし飼料原料添加物中での本発明により製造された式(I)の化合物を含有する固体の組成物の含分を十分に変化させることができる。更に、飼料原料添加物の場合、該含分は、配合物の種類、例えば助剤、例えば乾燥剤の添加、場合による被覆及び残留湿分に依存する。通常、飼料原料添加物中での、本発明により製造された式(I)の化合物を含有する固体の組成物の含分は、飼料原料添加物の全乾燥質量に対して例えば0.1〜99.5質量%、特に0.5〜75質量%、特に1〜50質量%の範囲内である。本発明により製造された固体の組成物は、プレミックス中での使用にも好適であり、かつこの場合慣用の量で使用、例えば混合されてよい。
【0076】
特に家禽用の動物用飼料原料及び飼料原料添加物における使用の場合には少ない含分のカリウムイオンが有利であり、それというのも、カリウムはこの場合利尿作用を発揮し得るためである。従って、Mn+が例えばナトリウムを表す本発明により製造された組成物の、上記目的のための使用は、カリウムイオンの含分が必ずしも高められるとは限らずに、酸性のナトリウム及びプロピオン酸塩源を表す。例えば、本発明により製造された固体の組成物ないし化合物(I)を含有し、かつ本質的にカリウムイオン不含である固体の飼料原料添加物を配合することができる。この場合、本質的にカリウムイオン不含である、とは、それぞれ飼料原料添加物の質量に対してカリウムイオンの含分が最高で1000ppm、特に最高で500ppmであることを意味する。
【0077】
動物用飼料原料は、それぞれの動物種のための栄養素に関する相応する要求を満たすように構成される。一般に、植物性飼料原料成分、例えばトウモロコシ粉、小麦粉又は大麦粉、全粒大豆粉、大豆抽出粕、アマニ抽出粕、ナタネ抽出粕、乾燥粉砕動物用飼料又はエンドウ豆粉が粗タンパク質源として選択される。飼料原料の相応するエネルギー分を保証するために、大豆油又は他の動物性又は植物性脂肪が添加される。植物性タンパク源は数種の必須アミノ酸を不十分な量でしか含有していないため、飼料原料においてしばしばアミノ酸が強化される。これはとりわけリジン及びメチオニンである。有用動物への無機物質及びビタミンの供給を保証するために、更に無機物質及びビタミンが添加される。動物種に応じた添加される無機物質及びビタミンの種類及び量は当業者に公知である(例えばJeroch et al., Ernaehrung landwirtschaftlicher Nutztiere, Ulmer, UTBを参照のこと)。栄養素及びエネルギー要求を満たすために、全ての栄養素を相互に要求を満たす割合で含有する完全飼料を使用することができる。これは動物の唯一の飼料であることができる。他には、穀類からの穀粒飼料に栄養補助飼料を添加することができる。これは飼料を補うタンパク質、無機物質及びビタミンに富む飼料混合物である。
【0078】
上記の多くの目的のために、特に動物飼料、栄養剤及び保存剤及びサイレージの分野で、式(I)の化合物少なくとも1種を含有する本発明による組成物を、他の、上記目的のために公知の固形物と組み合わせて配合物とすることは有利であり得る。これには、特に、本出願人のより早期のドイツ特許出願DE102005017089.7において記載された固体の形の酸性の二ギ酸ナトリウムが好適である。
【0079】
以下の実施例は本発明の具体的な説明のためのものであり、決してこれに限定されるものと理解されるべきではない。
【実施例】
【0080】
製造法A
変法A1
実施例1:三プロピオン酸ナトリウム[NaH2(CH3CH2C(O)O)3
プロピオン酸555g及びプロピオン酸ナトリウム350gを、二重ジャケット、底部出口弁、馬蹄形撹拌機及びクライオスタットを備えた0.5Lの撹拌槽中に添加し、均質な溶融物が得られるまで70℃に加熱した。溶融物を金属製シャーレに取り出し、冷却して凝固させた。得られた、粉砕されかつ45℃で6時間水噴射真空下で乾燥された固形物(858g)は、プロピオン酸の含分61.64質量%及び水の含分0.08質量%を有していた。
【0081】
実施例2:酸性のプロピオン酸ナトリウム[NaH1.3(CH3CH2C(O)O)2.3
実施例1の通りに行ったが、その際、プロピオン酸400g及びプロピオン酸ナトリウム400gを使用した。得られた粉砕固形物(762g)は、プロピオン酸の含分49.77質量%及び水の含分0.03質量%を有していた。
【0082】
実施例3:二プロピオン酸ナトリウム[NaH(CH3CH2C(O)O)2
実施例1の通りに行ったが、その際、プロピオン酸390g及びプロピオン酸ナトリウム500gを使用し、均質な液体混合物が得られるまで165℃に加熱した。得られた粉砕固形物(817g)は、プロピオン酸の含分43.46質量%及び水の含分0.19質量%を有していた。
【0083】
変法A2
実施例4:酸性プロピオン酸カルシウム[CaH0.4(CH3CH2C(O)O)2.4
プロピオン酸680g及びプロピオン酸カルシウム590gを、二重ジャケット、底部出口弁、馬蹄形撹拌機及びクライオスタットを備えた1Lの撹拌槽中に添加し、溶液が得られるまで134℃に加熱した。溶液をゆっくりと22℃に冷却し、その際、結晶化が生じた。冷却後、晶出した固形物を遠心分離により取得した(470g、そのうち0.93質量%が水である)。得られ、かつ50℃で一晩水噴射真空下で乾燥された固形物は、プロピオン酸の含分13.86質量%及び水の含分0.42質量%を有していた。
【0084】
製造法B
実施例5:三プロピオン酸ナトリウム[NaH2(CH3CH2C(O)O)3
プロピオン酸800g、プロピオン酸ナトリウム450g及び水100gを、二重ジャケット、底部出口弁、馬蹄形撹拌機及びクライオスタットを備えた1Lの撹拌槽中に添加し、溶液が得られるまで50℃に加熱した。溶液を31℃に冷却し、次いで三プロピオン酸ナトリウム結晶1gをシード添加した。反応混合物を22℃に冷却した。冷却後、晶出した固形物を遠心分離により取得した(349g、そのうち2.18質量%が水である)。得られ、かつ40℃で一晩水噴射真空下で乾燥された固形物は、プロピオン酸の含分61.29質量%及び水の含分0.06質量%を有していた。
【0085】
実施例6:酸性プロピオン酸カルシウム[CaH0.4(CH3CH2C(O)O)2.4
プロピオン酸750g、プロピオン酸カルシウム575.8g及び水38.6gを、二重ジャケット、底部出口弁、馬蹄形撹拌機及びクライオスタットを備えた1Lの撹拌槽中に添加し、溶液が得られるまで125℃に加熱した。溶液を112℃に冷却し、次いで酸性のプロピオン酸カルシウムの結晶をシード添加した。反応混合物を室温に冷却し、その際、109℃で結晶化が生じた。冷却後、晶出した固形物を遠心分離により取得した。得られ、かつ75℃で水噴射真空下で乾燥された固形物(302.6g)は、プロピオン酸の含分13.73質量%及び水の含分0.05質量%を有していた。
【0086】
実施例7:酸性プロピオン酸カルシウム[CaH0.4(CH3CH2C(O)O)2.4
プロピオン酸621.2g、プロピオン酸カルシウム543g及び水155.3gを、二重ジャケット、底部出口弁、馬蹄形撹拌機及びクライオスタットを備えた1Lの撹拌槽中に添加し、溶液が得られるまで77℃に加熱した。溶液を70℃に冷却し、次いで酸性のプロピオン酸カルシウムの結晶をシード添加した。反応混合物を室温に冷却し、その際、65℃で結晶化が生じた。冷却後、晶出した固形物を遠心分離により取得した(129.9g、そのうち1.61質量%が水である)。得られ、かつ75℃で水噴射真空下で乾燥された固形物は、プロピオン酸の含分13.89質量%及び水の含分0.01質量%を有していた。
【0087】
X線構造解析
製造例から得られた化合物の結晶構造[CaH0.4(CH3CH2C(O)O)2.4](構造I)及び[NaH2(CH3CH2C(O)O)3](構造II)をSHELXTLプログラムを用いた直接法により測定した。カルシウムないしナトリウム原子の具体的な位置をE−Mapから導き出した。引き続く「最小二乗」改良(即ち最小二乗法)及び微分電子密度の算出により、残りの非水素原子を割り当てることができる。原子は異方的に改良され、かつ水素原子は理想化された位置に配置された。そのようにして得られた結果を以下の第4表及び第5表にまとめる。
【0088】
[CaH0.4(CH3CH2C(O)O)2.4](構造I)
【表4】

【0089】
構造Iの結晶の非対称単位を図1に示すが、これは4のプロピオン酸Caフラクション及び1の非帯電プロピオン酸フラクションを含む。カルシウムイオンは特別な位置にあり、たった1/2である。カルシウムイオンの配位は対称的でない。OH基の水素は隣接するプロピオン酸塩に対して水素架橋を形成する。複数の単位格子を一緒に観察した場合、結晶がどのように2つの層から構成されているかが分かる。メチル基は上方及び下方に疎水面を形成する。その間に、イオン相互作用を有する層が存在する。一配向において、極性コアと疎水性表面とを有する管状構造が形成される。
【0090】
[NaH2(CH3CH2C(O)O)3](構造II)
【表5】

【0091】
構造IIの結晶の非対称単位を図2に示すが、これは2のプロピオン酸Naフラクション及び4のプロピオン酸フラクションを含む。R因子は0.22で極めて劣悪であるが、ここで本発明の拘束性のある限定がなされることなく構造の正確性が推測される。結晶はわずかに歪曲して重なり合った小片を形成し、これは悪化された溶解を説明し得る。複数の単位格子を観察した場合、ここで、管状構造が構造Iの場合よりも更に顕著であることが特徴的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物において、式(I)
(Mn+)(H+x(CH3CH2C(O)O-(n+x) (I),
[式中、
n+はn価のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを表し、ここで、nは1又は2であり;かつ
xは0.25〜5の範囲内の数を表すが;
但し、Mn+がカリウムを表す場合、xは0.75〜1.75の範囲内にはない]
による化合物少なくとも1種を含有することを特徴とする、固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物。
【請求項2】
式(I)の化合物が結晶形で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物の全質量に対して最高で1質量%の含水量を有する、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
組成物の全質量に対して5〜70質量%の範囲内のプロピオン酸含分を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
n+がアルカリ金属を表す、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
n+がナトリウムを表す、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
xが0.4〜3の範囲内である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
粉末X線回折図形において、以下:13.63;13.13;13.03;11.09;9.71;9.59;3.94;2.84;2.79[Å](±0.04[Å])の格子面間隔dの少なくとも4つで回折ピークを示す、請求項6又は7記載の組成物。
【請求項9】
示差走査熱量測定により測定して、61℃の温度で相転移点を示す、請求項6から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
n+がアルカリ土類金属を表す、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
n+がカルシウムを表す、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
xが0.25〜0.6の範囲内である、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
粉末X線回折図形において、以下:12.70;9.42;8.91;8.16;6.65;6.38;4.51;4.26;4.03;3.81[Å](±0.04[Å])の格子面間隔dの少なくとも5つで回折ピークを示す、請求項11又は12記載の組成物。
【請求項14】
示差走査熱量測定により測定して、167〜168℃の範囲内の温度で相転移点を示す、請求項11から13までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
式(I)
(Mn+)(H+x(CH3CH2C(O)O-(n+x) (I),
[式中、
n+はn価のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを表し、ここで、nは1又は2であり;かつ
xは0.25〜5の範囲内の数を表す]
による化合物少なくとも1種を含有する、固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物の製造法において、
1:0.25〜1:5の範囲内のモル比の中性のアルカリ金属プロピオン酸塩ないしアルカリ土類金属プロピオン酸塩とプロピオン酸とから、加熱下に均質な混合物を製造し、この均質な混合物を少なくとも部分的に固化させ、
その際、均質な混合物の含水量は、該混合物の全質量に対して1質量%未満であることを特徴とする製造法。
【請求項16】
均質な混合物を、場合により式(I)の化合物の種晶の存在で冷却及び/又は蒸発させることによって少なくとも部分的に固化させる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
n+がアルカリ金属を表し、かつ、均質な混合物中での中性のアルカリ金属プロピオン酸塩対プロピオン酸のモル比が1:0.4〜1:3の範囲内である、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
n+がナトリウムを表す、請求項17記載の方法。
【請求項19】
n+がアルカリ土類金属を表し、かつ、均質な混合物中での中性のアルカリ土類金属プロピオン酸塩対プロピオン酸のモル比が1:0.5〜1:10の範囲内である、請求項15又は16記載の方法。
【請求項20】
n+がカルシウムを表す、請求項19記載の方法。
【請求項21】
式(I)
(Mn+)(H+x(CH3CH2C(O)O-(n+x) (I),
[式中、
n+はn価のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを表し、ここで、nは1又は2であり;かつ
xは0.25〜5の範囲内の数を表す]
による化合物少なくとも1種を含有する、固体でかつ本質的に純粋な形のプロピオン酸含有組成物の製造法において、
1:0.25〜1:5の範囲内のモル比の中性のアルカリ金属プロピオン酸塩ないしアルカリ土類金属プロピオン酸塩とプロピオン酸とから、加熱下に均質な混合物を製造し、かつこの均質な混合物を結晶化させ、
その際、均質な混合物の含水量は、該混合物の全質量に対して1〜15質量%の範囲内であり;かつ
その際、Mn+がカリウムを表す場合、均質な混合物中での中性のアルカリ金属プロピオン酸塩ないしアルカリ土類金属プロピオン酸塩対プロピオン酸のモル比が1:0.75〜1:1.75の範囲内にないことを特徴とする製造法。
【請求項22】
均質な混合物を、場合により式(I)の化合物の種晶の存在で冷却及び/又は蒸発させることによって結晶化させる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
n+がアルカリ金属を表し、かつxが1.8〜2.2の範囲内にある、請求項21又は22記載の方法。
【請求項24】
n+がナトリウムを表す、請求項23記載の方法。
【請求項25】
n+がアルカリ土類金属を表し、かつxが0.25〜0.6の範囲内にある、請求項21又は22記載の方法。
【請求項26】
n+がカルシウムを表す、請求項25記載の方法。
【請求項27】
式(I)の化合物を結晶の形で取得する、請求項15から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
式(I)の化合物を、場合により乾燥工程の後に、組成物の全質量に対して最高で1質量%の含水量を有する乾燥した形で取得する、請求項15から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
請求項15から28までのいずれか1項記載の方法により得ることができる、請求項1に定義されている固体でかつ本質的に純粋な形の式(I)の組成物。
【請求項30】
請求項15から18、21又は22のいずれか1項記載の方法により得ることができる請求項29記載の組成物であって、その際、Mn+はナトリウムを表し、xは0.4〜3の範囲内であり、かつその際、該組成物は粉末X線回折図形において、以下:13.63;13.13;13.03;11.09;9.71;9.59;3.94;2.84;2.79[Å](±0.04[Å])の格子面間隔dの少なくとも4つで回折ピークを示し、かつ/又はその際、該組成物は、示差走査熱量測定により測定して、61℃の温度で相転移点を示し;かつその際、該組成物は場合により請求項27及び/又は28に定義されている形で取得される組成物。
【請求項31】
請求項15、16、19から22、25又は26のいずれか1項記載の方法により得ることができる請求項29記載の組成物であって、その際、Mn+はカルシウムを表し、xは0.25〜0.6の範囲内であり、かつその際、該組成物は粉末X線回折図形において、以下:12.70;9.42;8.91;8.16;6.65;6.38;4.51;4.26;4.03;3.81[Å](±0.04[Å])の格子面間隔dの少なくとも5つで回折ピークを示し、かつ/又はその際、該組成物は、示差走査熱量測定により測定して、167〜168℃の範囲内の温度で相転移点を示し;かつその際、該組成物は場合により請求項27及び/又は28に定義されている形で取得される組成物。
【請求項32】
動物用飼料のためのサイレージ添加剤、保存剤、酸性化剤、栄養補助食品、飼料原料又は飼料原料添加剤としての、請求項1から14までのいずれか1項に定義されている組成物の使用。
【請求項33】
動物用飼料のためのサイレージ添加剤、保存剤、酸性化剤、栄養補助食品、飼料原料又は飼料原料添加剤としての、請求項15から28までのいずれか1項記載の方法により得ることができる組成物の使用。

【公表番号】特表2009−522237(P2009−522237A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547977(P2008−547977)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070269
【国際公開番号】WO2007/077200
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】