説明

酸性液状調味料の製造方法

【課題】 醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料の製造方法を提供する。
【解決手段】 生(なま)醤油を5%以上配合した酸性液状調味料であって、70℃以上100℃未満の0.5〜5%酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液と生(なま)醤油とを混合後、該混合液を60℃以上で加熱処理する酸性液状調味料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油は、日本を代表する発酵調味料の一種である。醤油は刺身や寿司などの液状調味料としてそのまま利用されることが多いが、醤油は独特の旨味を有することから、ドレッシングなどの酸性液状調味料にも利用されている。しかしながら、醤油をベースとした酸性液状調味料を製した場合、醤油を原材料の一部として用いていること、また食酢、柑橘類などの酸材でpHを低くしているためか、醤油のまろやかな風味に欠けるという問題があった。
【0003】
醤油の良好な風味を増強させた液体調味料として、特開平7−313097号公報(特許文献1)には、醤油及びだしを含有する調味料に含硫化合物を添加し加熱する製造方法が開示されている。また、同文献は、だし原料としてかつお節など魚節から水抽出したもの、あるいは醤油中で抽出したものを用いている。しかしながら、スーパーなどで市販されている醤油とかつお節から水抽出しただしを用いて上記液状調味料を製し、当該液状調味料に更に食酢を添加して酸性液状調味料を製したところ、満足できる程の醤油のまろやかな風味を有するとは言い難いものであった。
【0004】
【特許文献1】特開平7−313097号公報
【特許文献2】特開2007−159550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく酸性液状調味料に使用されている様々な配合原料について鋭意研究を重ねた。その結果、特定の醤油と特定の方法より抽出した魚節抽出液とを混合した混合液を加熱して製したところ、意外にも醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)生(なま)醤油を5%以上配合した酸性液状調味料であって、70℃以上100℃未満の0.5〜5%酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液と生(なま)醤油とを混合後、該混合液を60℃以上で加熱処理する酸性液状調味料の製造方法、
(2)混合液中の魚節抽出液と生(なま)醤油の質量比が1:9〜9:1である(1)の酸性液状調味料の製造方法、
(3)前記混合液を1回のみ60℃以上で加熱処理する(1)または(2)の酸性液状調味料の製造方法、
である。
【0008】
なお、特開2007−159550号公報(特許文献2)には、酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液が開示されており、当該魚節抽出液をドレッシングに用いても良い旨が記載されている。しかしながら、特許文献2記載の魚節抽出液は50℃以下で抽出しており、当該明細書の試験例では酢酸濃度が30%未満では魚節の香りが弱いことが記載されている。また、特許文献2には、魚節抽出液と生(なま)醤油の混合液を加熱処理した酸性液状調味料については何ら開示されていない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られることから、醤油をベースとした酸性液状調味料更なる需要の拡大が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0011】
本発明の酸性液状調味料とは、常温流通を可能ならしめるためにpHを4.6以下に調整された液状の調味料であり、本発明においては、サラサラしたタイプばかりでなく、ペースト状のものも含まれる。このような酸性液状調味料としては、例えば、分離液状ドレッシング、乳化液状ドレッシング、ノンオイルドレッシング、マヨネーズ、マヨネーズ様調味料、サラダドレッシング、たれ、ポン酢などが挙げられる。また、上記pHは、分離液状ドレッシングの場合、下層の水相あるいは乳化相、乳化液状ドレッシングなどの乳化タイプの場合、当該乳化相を測定したときの値である。
【0012】
本発明の酸性液状調味料は、醤油をベースとした、具体的には、醤油を5%以上、好ましくは8%以上含有したものにおいて、醤油の一部あるいは全部を生(なま)醤油に置き換えたものであり、生(なま)醤油を製品に対し5%以上、好ましくは8%以上配合したものである。醤油の配合量が前記値より少ないと、醤油風味を有した酸性液状調味料が得られ難い。また、たとえ醤油の配合量が前記値を満たしたとしても、生(なま)醤油の配合量が前記値より少ないと、醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られ難く好ましくない。生(なま)醤油も含め醤油の上限の配合量は、特に規定していないが、酸性液状調味料に用いられている上限量を配合すればよい。具体的には、好ましくは80%以下、より好ましく60%以下である。
【0013】
一般的に市販されている醤油は、例えば、通常の濃口醤油、薄口醤油、溜り醤油などの製造工程において、製造原料の発酵、熟成を行った熟成諸味を圧搾濾過して得られた生揚げ醤油を火入れ工程である加熱殺菌を施したものである。一方、本発明で用いる生(なま)醤油は、火入れ工程である加熱殺菌を施していない醤油のことであり、前記生揚げ醤油を、菌数管理を目的にマイクロフィルター、精密濾過膜などを用いて微生物を取り除いたものを用いることが工業的規模の生産に適し好ましい。
【0014】
本発明の調味料の製造方法は、前記生(なま)醤油に加え特定の方法で製した魚節抽出液を用いる。つまり、本発明は、70℃以上100℃未満、好ましくは75〜95℃に加熱した酢酸濃度0.5〜5%、好ましくは0.7〜4%の酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液を用いる必要がある。魚節抽出液の抽出溶媒として用いる酢酸水溶液の液温が前記範囲より低い場合、あるいは酢酸濃度が前記範囲より低い場合は、得られた魚節抽出液と生(なま)醤油との混合液を加熱処理して酸性液状調味料を製造したとしても、得られる調味料は醤油のまろやかな風味に優れたものとならず好ましくない。一方、酢酸水溶液の液温が前記範囲より高い場合、あるいは酢酸濃度が前記範囲より高い場合は、得られた魚節抽出液がえぐ味を有し、得られる酸性液状調味料は醤油のまろやかな風味に優れたものとならず好ましくない。
【0015】
魚節抽出液の調製方法について詳述する。まず製造で用いる魚節および酢酸水溶液を準備する。魚節とは、魚体を茹で干した「なまり節」、それを燻製した「荒節」、さらに黴付けした「枯節」のことである。特に、「荒節」は、燻煙に由来する重たい香りを有するためか、本発明の製造方法により醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られ易く好ましい。本発明で用いる魚節は市販されているものであればいずれのものでも良く、例えば、鰹節、宗田鰹節、鯖節、鰯節、鰺節、鮪節などが挙げられる。また、家庭では魚節からだしを調理する場合、通常、魚節を削ったものを用いる。本発明も魚節を削ったものを用いても良いが、工業的規模での生産性および抽出効率を考慮すると0.1〜5mm程度に粉砕した魚節を用いたほうが好ましい。
【0016】
酢酸水溶液は、酢酸を含有した原材料に清水などの水を加え0.5〜5%の酢酸濃度に調製する。酢酸を含有した原材料としては、例えば、食酢、氷酢酸などが挙げられるが、コストや入手し易さを考慮し、食酢を用いたほうが好ましい。酢酸水溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で他の原材料、例えば、ショ糖、ブドウ糖果糖液糖、デキストリン、あるいはこれらの還元物などの糖類、エタノール、酒精などのアルコール類、食塩、醤油などの各種調味料などを加えても良いが、酢酸を含有した原材料に清水などの水を単に加えた酢酸水溶液を用いたほうが醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られ易く好ましい。
【0017】
準備した魚節および所定濃度の酢酸水溶液を用いて、70℃以上100℃未満の0.5〜5%酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液を調製する。具体的には、例えば、上記所定温度に加熱した酢酸水溶液100部に魚節を好ましくは1〜30部、より好ましくは2〜20部を投入し、攪拌させながら好ましくは5分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間抽出工程を行う。次いで、ストレーナーなどの濾過器などを用いて抽出後の魚節を除いた後、冷却して魚節抽出液を調製する。魚節の投入量が前記範囲より少ない場合、あるいは抽出時間が前記範囲より短い場合は、得られた魚節抽出液と生(なま)醤油との混合液を加熱処理して酸性液状調味料を製造したとしても、得られる調味料は醤油のまろやかな風味に優れたものとならず好ましくない。一方、魚節の投入量が前記範囲より多い場合、あるいは抽出時間が前記範囲より長い場合は、投入量あるいは抽出時間に応じた本発明の効果が期待するほど得られず経済的でない。なお、本発明は、抽出過程で上記所定温度に加熱した酢酸水溶液で魚節より抽出すれば良く、例えば、70℃未満の酢酸水溶液に魚節を投入して抽出を開始し、その後加熱して上記所定温度の範囲で抽出することも本発明に含まれる。
【0018】
本発明の酸性液状調味料の製造方法は、上記生(なま)醤油を5%以上配合した酸性液状調味料であって、上記魚節抽出液と生(なま)醤油を混合後、当該混合液を60℃以上で加熱処理することを特徴とする。これにより、醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られる。これに対し、例えば、前記60℃での加熱処理を行わない場合や、本発明で用いる生(なま)醤油に換えて生(なま)醤油を60℃以上で先に加熱処理した醤油、つまり、火入れ工程を施した通常の醤油を用いて本発明と同様の製造方法を行った場合は、醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られず好ましくない。
【0019】
ここで、魚節抽出液と生(なま)醤油を混合後、当該混合液を60℃以上で加熱処理するとは、本発明の製造方法において、魚節抽出液と生(なま)醤油との混合工程、および当該混合液を60℃以上で加熱処理する工程を有することを意味する。具体的には、例えば、魚節抽出液と生(なま)醤油のみを混合した後、当該混合液を60℃以上で加熱処理し、これを本発明の調味料の一原料として用いる方法、また、魚節抽出液と生(なま)醤油、さらに本発明の効果を損なわない範囲で他の原料を混合し、当該混合液を60℃以上で加熱処理したもの本発明の一原料として用いたり、前記加熱処理したものをそのまま本発明の調味料として用いる方法などが挙げられる。
【0020】
また、魚節抽出液と生(なま)醤油の混合割合は、醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られる程度の割合で混合すれば良く、具体的には、混合液中の魚節抽出液と生(なま)醤油の質量比が好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜9:1である。混合液の加熱処理は60℃以上で行う必要があり、好ましくは65℃以上である。加熱処理が前記液温より低い場合は、醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られるず好ましくない。加熱処理時間は、混合液が前記所定の温度に達しさえすれば良いが、工業的規模を考慮し好ましくは5秒〜60分、より好ましくは5秒〜30分であり、例えば、プレートヒーター、ニーダーなど食品製造で用いられる加熱装置であればいずれのものでも良い。本発明は上限の加熱温度は特に規定していないが、酸性液状調味料の外観に影響する場合があるので、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。混合液の60℃以上での加熱処理の回数は、特に制限するものではないが、1回のみ行うことが醤油のまろやかな風味がより優れた酸性液状調味料が得られ好ましい。
【0021】
本発明の酸性液状調味料には、上述した生(なま)醤油および魚節抽出液を配合する他、本発明の効果を損なわない範囲で酸性液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し配合させることができる。例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、ゴマ油、魚油、卵黄油等の動植物油及びこれらの精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドなどのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂などの食用油脂、食酢、クエン酸、乳酸などの酸材、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、みりん、醤油、味噌などの各種調味料、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉をアルファ化、架橋などの処理を施した加工澱粉、並びに湿熱処理澱粉などの澱粉類、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、サイリュウムシードガムなどのガム質、動植物のエキス類、からし粉、胡椒などの香辛料、並びに各種蛋白質やこれらの分解物、大根おろし、ゴマペースト、ジンジャーペーストなどの野菜類の粉砕物などが挙げられる。
【0022】
以下、本発明の酸性液状調味料の製造方法について、実施例、比較例並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
<魚節抽出液の調製>
4%酢酸濃度の食酢に清水を加え1%酢酸水溶液を調製した。次いで1%酢酸水溶液100部を液温85℃に加熱し、荒節である鰹節粉砕物(0.1〜5mm)10部を投入し、同温でゆっくり攪拌させながら30分間抽出した。次いで抽出後の鰹節粉砕物をストレーナーで除去し後、常温(約25℃)まで冷却し魚節抽出液を調製した。
【0024】
<酸性液状調味料の調製>
下記の配合割合に準じ、まず生(なま)醤油と魚節抽出液を混合後、当該混合液をニーダーで75℃×5分間加熱処理し、常温(約25℃)まで冷却した。次いで、冷却した前記混合液に残りの原材料を添加し攪拌して酸性液状調味料を調製した。得られた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に大変優れていた。
【0025】
<配合割合>
生(なま)醤油 20%
魚節抽出液 20%
食酢(酢酸5%) 20%
醤油(生(なま)醤油でない) 5%
砂糖 5%
食塩 1%
グルタミン酸ソーダ 0.5%
キサンタンガム 0.1%
清水 残余
――――――――――――――――――――
合計 100%
【0026】
[実施例2]
実施例1と同一の原材料、同一の配合割合で以下の方法により酸性液状調味料の調製した。つまり、全原料を混合後、当該混合液をニーダーで75℃×5分間加熱処理し、常温(約25℃)まで冷却して酸性液状調味料の調製した。得られた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に大変優れていた。
【0027】
[比較例1]
実施例1において、生(なま)醤油を原料の一つとして用いた醤油(生(なま)醤油でない)に置き換えた以外は、実施例1と同様の方法で酸性液状調味料の調製した。得られた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に欠けていた。
【0028】
[比較例2]
実施例1において、生(なま)醤油と魚節抽出液の混合液を加熱処理(75℃×5分間)を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で酸性液状調味料の調製した。得られた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に欠けていた。
【0029】
[比較例3]
実施例1において、魚節抽出液の調製の際に用いた1%酢酸水溶液を清水に換えた以外は、実施例1と同様の方法で酸性液状調味料の調製した。得られた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味にやや欠けていた。
【0030】
[比較例4]
実施例1において、生(なま)醤油と魚節抽出液を混合せずに、生(なま)醤油のみをニーダーで75℃×5分間加熱処理した以外は実施例1と同様の方法で酸性液状調味料の調製した。得られた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に欠けていた。
【0031】
本発明の実施品である実施例1および2で得られた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に大変優れていたが、生(なま)醤油を用いなかった比較例1、加熱処理を施さなかった比較例2、酢酸水溶液で抽出しなかった魚節抽出液を用いた比較例3、生(なま)醤油を魚節抽出液の存在下で加熱処理しなかった比較例4で得られた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に欠けることが理解される。
【0032】
[試験例1]
生(なま)醤油の配合量の違いによる醤油のまろやかな風味への影響を調べた。つまり実施例1において、生(なま)醤油とそうでない醤油の合計配合量は変えずに、生(なま)醤油を下表の配合量とし残りを生(なま)醤油でないものを用いて、実施例1と同様の方法で酸性液状調味料を調製した。得られた各酸性液状調味料を試食して醤油のまろやかな風味について評価した。
【0033】
【表1】

【0034】
<評価基準>
◎:醤油のまろやかな風味に大変優れている。
○:醤油のまろやかな風味に優れている。
△:醤油のまろやかな風味にやや欠ける。
×:醤油のまろやかな風味に欠ける。
【0035】
生(なま)醤油を5%以上配合しないと醤油のまろやかな風味に優れた酸性液状調味料が得られないことが理解される。特に、8%以上配合したものは大変優れていた。
【0036】
[試験例2]
魚節抽出液の抽出温度の違いによる醤油のまろやかな風味への影響を調べた。つまり実施例1において、魚節抽出液の調製の際、下記の液温に加熱した酢酸水溶液を用いてた以外は実施例1と同様の方法で酸性液状調味料を調製した。得られた各酸性液状調味料を試食して醤油のまろやかな風味について評価した。なお、評価基準は、試験例1と同じである。また、液温110℃のものは、酢酸水溶液と鰹節粉砕物を耐熱性パウチに充填密封し、110℃×30分間レトルト処理を行って抽出した。
【0037】
【表2】

【0038】
70℃以上100℃未満の酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液を用いた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に優れたものが得られることが理解される。特に、75〜95℃の酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液を用いた酸性液状調味料は大変優れていた。なお、110℃で抽出した魚節抽出液を用いたものは、ややえぐ味を有していた。
【0039】
[試験例3]
魚節抽出液の抽出溶媒である酢酸水溶液の酢酸濃度の違いによる醤油のまろやかな風味への影響を調べた。つまり実施例1において、魚節抽出液の調製の際、下記の酢酸濃度の酢酸水溶液を用いてた以外は実施例1と同様の方法で酸性液状調味料を調製した。得られた各酸性液状調味料を試食して醤油のまろやかな風味について評価した。なお、評価基準は、試験例1と同じである。
【0040】
【表3】

【0041】
酢酸濃度0.5〜5%の酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液を用いた酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に優れたものが得られることが理解される。特に、酢酸濃度0.7〜4%の酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液を用いた酸性液状調味料は大変優れていた。なお、酢酸濃度8%の酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液を用いたものは、ややえぐ味を有していた。
【0042】
[試験例4]
生(なま)醤油と魚節抽出液の混合液の加熱処理温度の違いによる醤油のまろやかな風味への影響を調べた。つまり実施例1において、混合液の加熱処理温度を下記の温度で行った以外は実施例1と同様の方法で酸性液状調味料を調製した。得られた各酸性液状調味料を試食して醤油のまろやかな風味について評価した。なお、評価基準は、試験例1と同じである。
【0043】
【表4】

【0044】
生(なま)醤油と魚節抽出液の混合液を60℃以上で加熱して製した酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に優れていることが理解される。特に、65〜85℃の範囲で加熱して製した酸性液状調味料は大変優れていた。
【0045】
[試験例5]
魚節抽出液と生(なま)醤油の混合比の違いによる醤油のまろやかな風味への影響を調べた。つまり実施例1において、生(なま)醤油の配合量を8%に変え下記の混合比となるように魚節抽出液の配合量を変えた以外は実施例1と同様の方法で酸性液状調味料を調製した。得られた各酸性液状調味料を試食して醤油のまろやかな風味について評価した。なお、評価基準は、試験例1と同じである。
【0046】
【表5】

【0047】
魚節抽出液と生(なま)醤油の混合比が1:9〜9:1の範囲の酸性液状調味料は、醤油のまろやかな風味に優れていることが理解される。特に、混合比が2:8〜9:1の範囲の酸性液状調味料は大変優れていた。
【0048】
[実施例3]
実施例1で得られた酸性液状調味料を、再度ニーダーで75℃×5分間加熱処理し、常温(約25℃)まで冷却して酸性液状調味料を調製した。得られた酸性液状調味料を実施例1で得られたものと比較したところ、実施例1で得られた酸性液状調味料は醤油のまろやかな風味に大変優れていたが、実施例3で得られたものはやや劣るものの醤油のまろやかな風味に優れていた。
【0049】
[実施例4]
実施例1で得られた酸性液状調味料を250mL容量のガラス瓶に220mL充填し、次いで植物油を30mL充填し分離液状ドレッシングを調製した。得られた分離液状ドレッシングを上下に振って1次乳化させて試食したところ、醤油のまろやかな風味に大変優れていた。
【0050】
[実施例5]
下記の配合割合に準じ、まず生(なま)醤油と魚節抽出液を混合後、当該混合液をニーダーで75℃×5分間加熱処理し、常温(約25℃)まで冷却した。次いで、冷却した前記混合液に植物油以外の残りの原材料を添加し攪拌して全体を均一にした後、植物油を徐々に注加して乳化液状ドレッシングを調製した。得られた乳化液状ドレッシングは、醤油のまろやかな風味に大変優れていた。なお、原料として用いた魚節抽出液は、実施例1で調製したものを用いた。
【0051】
<配合割合>
植物油 30%
生(なま)醤油 10%
魚節抽出液 10%
食酢(酢酸5%) 20%
醤油(生(なま)醤油でない) 5%
砂糖 5%
生卵黄 2%
食塩 1%
グルタミン酸ソーダ 0.5%
キサンタンガム 0.1%
清水 残余
――――――――――――――――――――
合計 100%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生(なま)醤油を5%以上配合した酸性液状調味料であって、70℃以上100℃未満の0.5〜5%酢酸水溶液で抽出した魚節抽出液と生(なま)醤油とを混合後、該混合液を60℃以上で加熱処理することを特徴とする酸性液状調味料の製造方法。
【請求項2】
混合液中の魚節抽出液と生(なま)醤油の質量比が1:9〜9:1である請求項1記載の酸性液状調味料の製造方法。
【請求項3】
前記混合液を1回のみ60℃以上で加熱処理する請求項1または2記載の酸性液状調味料の製造方法。