説明

酸性液状調味料

【課題】 味噌を配合した酸性液状調味料において、味噌の風味に優れた酸性液状調味料を提供する。
【解決手段】 味噌を好ましくは0.5〜40%、より好ましくは1〜30%、さらに好ましくは2〜30%配合した酸性液状調味料において、フェンネルの種子粉砕物を好ましくは0.005〜2%、より好ましくは0.01〜1.5%、さらに好ましくは0.02〜1.5%配合している酸性液状調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味噌を配合した酸性液状調味料において、味噌の風味に優れた酸性液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
味噌、醤油は、わが国で昔より親しまれている調味料の一種である。また、豆板醤などの中華味噌も中華料理の調味料として昔より用いられている。これらの調味料は、発酵調味料であり、発酵過程で出来るアミノ酸などにより独特の旨味と風味を有する。特に、中華味噌も含めた味噌は、健康食としても考えられており、種々の生理機能を有することが認められている。例えば、コレステロール低下作用、血圧の上昇を抑制する効果などが挙げられる。そこで、これらの味噌を利用した食品が注目されるようになっており、ドレッシング、たれなどの酸性液状調味料においても同様である。
【0003】
しかしながら、ドレッシングなどの酸性を呈する液状調味料に味噌を配合すると、味噌特有の風味が消失する場合あり、味噌風味に欠けるという問題があった。
【0004】
このような状況下、味噌の風味に優れた酸性液状調味料を得るために種々の方法が提案されている。例えば、特開昭58−81759号公報(特許文献1)には、ガーリックやジンジャーなどの香辛料を加えた乳化物を小袋に所定量充填し、加熱殺菌したドレッシングが開示されている。特許第2747799号公報(特許文献2)には、味噌、胡麻油、食塩および油脂を所定量含有させることで、味噌と胡麻との両者の風味特徴をバランス良く十分に生かした酸性液状調味料が開示されている。特開平8−317772号公報(特許文献3)には、特定の粘性を有した調味液に特定の攪拌力で攪拌させながら中華味噌である豆板醤を加えて攪拌した豆板醤の風味を十分に付与した液状調味料が開示されている。そして、特開平11−113526号公報(特許文献4)には、辛子、わさび、胡椒などの香辛料と味噌などの発酵調味料を加熱処理することなくそのまま配合し、更にリゾ化卵黄を配合することで、香辛料や発酵調味料の本来の風味を呈し、経時的な粘度低下の生じ難いマヨネーズ、ドレッシングなどの水中油型乳化食品が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法で得られたいずれの酸性液状調味料も、ある程度は、味噌の風味に優れているものの、必ずしも満足できるものとは言い難いものであった。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−81759号公報
【特許文献2】特許第2747799号公報
【特許文献3】特開平8−317772号公報
【特許文献4】特開平11−113526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、味噌を配合した酸性液状調味料において、味噌の風味に優れた酸性液状調味料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく酸性液状調味料に使用できる様々な配合原料について鋭意研究を重ねた。その結果、特定の香辛料を配合するならば、意外にも味噌の風味に優れた酸性液状調味料となることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)味噌を配合した酸性液状調味料において、フェンネルの種子粉砕物を配合している酸性液状調味料、
(2)製品に対し味噌の配合量が0.5〜40%である(1)の酸性液状調味料、
(3)製品に対しフェンネルの種子粉砕物の配合量が0.005〜2%である(1)または(2)の酸性液状調味料、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、味噌の風味に優れた酸性液状調味料を提供できることから、原料である味噌および製品である味噌を配合した酸性液状調味料の更なる需要の拡大が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0012】
本発明の酸性液状調味料は、味噌を配合したものである。ここで酸性液状調味料とは、常温流通を可能ならしめるためにpHを4.6以下に調整された液状調味料である。このような酸性液状調味料は、食用油脂の存在の有無や存在の状態によりいくつかのタイプに分類される。例えば、食用油脂が油滴として水相中に略均一に分散して水中油型の乳化状態が維持されたマヨネーズ、マヨネーズ類、乳化ドレッシング等の酸性水中油型乳化液状調味料、あるいは水相部の上に油相部である食用油脂が積層された調味料であって、使用の際に当該調味液が入った容器を上下または左右に振って一時的に乳化して使用する、いわゆるセパレートタイプの調味料である酸性分離液状調味料、あるいは食用油脂を配合していないノンオイルタイプの酸性液状調味料などが挙げられる。
【0013】
また、前記酸性分離液状調味料において、水相部は、一般的に水性媒体(例えば、食酢、醤油、果汁、液糖、清水など)に水溶性原料や水分散性原料が配合された水性原料からなるが、本発明においては、水相部に一部の食用油脂が均一に分散した乳化相であるものも含まれる。
【0014】
特に、上記酸性液状調味料のうち酸性分離液状調味料あるいはノンオイルタイプの酸性液状調味料は、配合した味噌の風味を味わい易く、本発明の効果が発揮し易いことから好ましい。
【0015】
本発明の酸性液状調味料に用いる味噌としては、味噌、あるいは中華味噌と称されるものであればいずれのものでも良い。具体的には、例えば、米味噌、麦味噌、豆味噌、調合味噌、白味噌、赤味噌、白あら味噌、信州味噌、八丁味噌、西京味噌、三州味噌、江戸甘味噌、御膳味噌、越後味噌、薩摩味噌、仙台味噌、長崎味噌、桜味噌、豆板醤、甜麺醤、海鮮醤、コチュジャン、タチウオ、トウチジャンなどが挙げられる。
【0016】
味噌の配合量は、後述するフェンネルの種子粉砕物の配合量にもよるが、味噌の風味がする程度配合すればよい。具体的には、製品に対し味噌の配合量が好ましくは0.5〜40%、より好ましくは1〜30%、さらに好ましくは2〜30%である。味噌の配合量が前記範囲より少ないと後述するフェンネルの種子粉砕物を配合したとしても味噌の風味に優れたものが得られ難い傾向となり好ましくない。一方、配合量が前記範囲より多いと、そもそも味噌の配合量が多いことから、フェンネルの種子粉砕物を配合しなくても十分に味噌の風味を有し、フェンネルの種子粉砕物により味噌の風味に優れたものとする効果が発現し難い傾向となる。
【0017】
本発明は、上述した味噌を配合した酸性液状調味料において、フェンネルの種子粉砕物を配合することを特徴とする。従来の液状調味料は、味噌を配合すると味噌特有の風味が消失する場合あり、味噌風味に欠けるという問題があったが、フェンネルの種子粉砕物を配合することにより、味噌の風味に優れた酸性液状調味料とすることができる。
【0018】
ここで、フェンネルとは、セリ科ウイキョウ属の多年草で和名はウイキョウであり、本発明は、フェンネルの種子を粉砕したものを用いる。種子は、甘い香りと苦味が特徴で香辛料、ハーブとして、食用に古くから用いられている。またフェンネルの種子粉砕物は、市販されているものを用いれば良く、その大きさは通常、0.1〜2mm程度である。
【0019】
フェンネルの種子粉砕物の配合量は、本発明の効果である味噌の風味に優れたものとするという効果を発現する程度配合すれば良く、製品に対し好ましくは0.005〜2%、より好ましくは0.01〜1.5%、さらに好ましくは0.02〜1.5%である。フェンネルの種子粉砕物の配合量が前記範囲より少ないと本発明の効果を十分に発現し難く味噌の風味に優れた酸性液状調味料が得られ難い傾向となり好ましくない。一方、配合量が前記範囲より多いと、配合量に応じた期待するほどの効果が発現し難い傾向となり経済的でなく、また、フェンネル由来の苦味を呈する場合があり好ましくない。
【0020】
本発明の酸性液状調味料には、上述した味噌、およびフェンネルの種子粉砕物を配合させる他に本発明の効果を損なわない範囲で酸性液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し配合させることができる。例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、ゴマ油、魚油、卵黄油等の動植物油及びこれらの精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドなどのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂などの食用油脂、食酢、クエン酸、乳酸、レモン果汁などの酸味材、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、みりん、醤油などの各種調味料、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉をアルファ化、架橋などの処理を施した化工澱粉、並びに湿熱処理澱粉などの澱粉類、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガムなどのガム質、卵黄、ホスホリパーゼA処理卵黄、全卵、卵白、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉などの乳化材、動植物のエキス類、からし粉、胡椒、桂皮、八角、丁子などの香辛料、並びに各種蛋白質やこれらの分解物などが挙げられる。
【0021】
また、本発明の酸性液状調味料の製造方法は、味噌およびフェンネルの種子粉砕物を水系媒体である水相部に分散される他は、常法に則り製造すれば良い。
【0022】
以下、本発明の酸性液状調味料について、実施例、比較例並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
下記の配合割合に準じ、まず全水相原料を均一に混合した。そして、酸性分離液状調味料の容量が250mLとなるように250mL容量のPET容器に水相部を充填した後に、残りの油相部である植物油を充填して水相部に油相部を積層させ、次いで密栓し、酸性分離液状調味料を製した。なお、フェンネルの種子粉砕物は、大きさが0.8mm程度のものを用い、以後の実施例、試験例においても同じ大きさのものを用いた。
【0024】
<酸性分離液状調味料の配合割合>
(油相部)
植物油 30%
(水相部)
食酢(酸度5%) 15%
トウチジャン 5%
食塩 3%
砂糖 3%
醤油 1%
からし粉 1%
グルタミン酸ソーダ 0.2%
フェンネルの種子粉砕物 0.1%
キサンタンガム 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――
合計 100%
【0025】
得られた容器詰め酸性分離液状調味料を上下に振って一時的に乳化させた後、喫食したところ、味噌(豆板醤)の風味に優れていた。
【0026】
[実施例2]
下記の配合割合に準じ、全体を均一に混合した。そして、ノンオイルタイプのドレッシングの容量が250mLとなるように250mL容量のPET容器に充填した後、密栓し、ノンオイルタイプのドレッシングを製した。
【0027】
<ノンオイルタイプのドレッシングの配合割合>
食酢(酸度5%) 20%
ブドウ糖果糖液糖 10%
八丁味噌 8%
食塩 3%
醤油 2%
からし粉 1%
グルタミン酸ソーダ 0.2%
フェンネルの種子粉砕物 0.1%
キサンタンガム 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――
合計 100%
【0028】
得られた容器詰めノンオイルタイプのドレッシングを喫食したところ、味噌(八丁味噌)の風味に優れていた。
【0029】
[実施例3]
下記の配合割合に準じ、まず植物油以外の原料をミキサーで均一に混合し水相部を調製した後、当該水相部を攪拌させながら油相の植物油を徐々に注加して粗乳化物を製した。次いで、得られた粗乳化物をコロイドミルで仕上げ乳化した後、500mL容量の透明三層ラミネートの可撓性容器に充填し、酸性水中油型乳化調味料を製した。
【0030】
<酸性水中油型乳化調味料の配合割合>
(油相)
植物油 30%
(水相)
パインビネガー(酸度5%) 15%
生卵黄 8%
トウチジャン 5%
α化澱粉 3%
食塩 3%
砂糖 3%
からし粉 1%
グルタミン酸ナトリウム 0.2%
フェンネルの種子粉砕物 0.1%
核酸系旨味調味料 0.03%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0031】
得られた容器詰め酸性水中油型乳化調味料を喫食したところ、味噌(豆板醤)の風味に優れていた。但し、実施例1の酸性分離液状調味料や実施例2のノンオイルタイプのドレッシングより、味噌の風味が若干弱いように感じられた。
【0032】
[試験例]
香辛料であるフェンネルの種子粉砕物の配合による味噌の風味への影響を調べた。つまり、実施例1においてフェンネルの種子粉砕物の配合量を表1に示す量を配合した、あるいは配合しなかった以外は、実施例1と同様の方法で容器詰め酸性分離液状調味料を製した。また、フェンネルの種子粉砕物に換えて香辛料である胡椒を配合したものを製した。得られたそれぞれの酸性分離液状調味料を喫食して評価した。
【0033】
【表1】

【0034】
表1より、フェンネルの種子粉砕物を配合させることにより、味噌の風味が増強され味噌風味に優れた酸性液状調味料となることが理解されることが理解される。特に、フェンネルの種子粉砕物の配合量を0.01%以上としたものが好ましく、0.02%以上としたものがさらに好ましかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
味噌を配合した酸性液状調味料において、フェンネルの種子粉砕物を配合していることを特徴とする酸性液状調味料。
【請求項2】
製品に対し味噌の配合量が0.5〜40%である請求項1記載の酸性液状調味料。
【請求項3】
製品に対しフェンネルの種子粉砕物の配合量が0.005〜2%である請求項1または2記載の酸性液状調味料。