説明

酸性豆乳飲料

【課題】酸性条件下においても、豆乳由来のタンパク質が凝集することなく安定に保持し、不溶性固形分を含有する場合には、長期間の保存中不溶性固形分を均一に分散することが出来る酸性豆乳飲料を提供する。
【解決手段】酸性豆乳飲料中、平均直径0.01〜1μmの繊維状の不溶性セルロースを含有する。好ましくは、水溶性ヘミセルロースを併用する。酸性豆乳飲料に対する添加量が、前記セルロースが0.005〜0.2重量%、水溶性ヘミセルロースが0.01〜5重量%である。更に、不溶性固形分を均一に分散して含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性条件下において、豆乳のタンパク質の凝集、沈殿等を抑制し、保存安定性に優れ、また、飲用してもざらつきなど感じられず、優れた飲用感を有し、不溶性固形分を含有する場合には長期間の保存中不溶性固形分を均一に分散することが出来る固形分分散性に優れた酸性豆乳飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向により、豆乳が注目され、豆乳を原料とした様々な豆乳加工製品が上市されている。中でも、酸性豆乳飲料については、豆乳を酸性にすると、豆乳由来のタンパク質が凝集してしまうという問題点があり、その解決策として、ハイメトキシルペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の増粘安定剤を配合することが広く行われている(特許文献1、特許文献2)。しかし、これら安定剤だけでは不溶性固形分の分散には不充分である。
【0003】
更に、牛乳などの乳成分由来の酸性乳飲料については、各種不溶性固形分を安定に分散させる方法も検討されている。例えば、不溶性固形分を含有する酸性乳飲料として、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び微結晶セルロースを含有する方法(特許文献3)、酸性化した乳、増粘安定剤、水中で分散させた時の平均粒径が20μm以下である微細セルロースを含有する微細セルロース含有酸性乳飲料(特許文献4)があるが、未だ不溶性固形分の分散効果は充分でなく、酸性下での乳タンパク質の安定性と言った観点からも改善の余地がある。
【0004】
一方、不溶性セルロースの一種として発酵セルロースが知られているが、乳飲料中の分散安定効果について、微生物由来のセルロースと高分子物質(キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)との複合化物が、カルシウム強化飲料、ココア飲料、コーヒー飲料などの食品の分散性に安定に利用できること(特許文献5)、発酵セルロースと、ネイティブジェランガム、ペクチン(ハイメトキシルペクチン)又は大豆多糖類といった高分子物質を併用することによって、ホットベンダーでの保存や振動等のショックによっても上相が透くことなく分散安定性すること(特許文献6)が記載されている。これらの方法は、中性の飲料、例えば、ミルクコーヒーやミルクティーでは効果は認められる。しかし、酸性乳飲料に発酵セルロースを添加すると、乳原料中のタンパク質の凝集・沈殿が起こり、もはや飲料製品としての価値はなくなってしまう。
【0005】
このように、酸性豆乳飲料において、ハイメトキシルペクチンや大豆多糖類などが酸乳安定に寄与しているのは知られている一方、不溶性固形分を分散させるには不充分であった。一方、中性飲料の固形分分散安定剤として、微結晶セルロースや発酵セルロースなどのセルロース類を使用することは知られているが、これらを酸性乳飲料に添加すると、乳タンパク質成分の凝集・沈殿が起こり、固形分の分散どころか、酸性飲料中のタンパク質を安定化させる効果が全くなく、飲料製品としての価値が無くなってしまう。
【0006】
【特許文献1】特許第3280768号公報
【特許文献2】特開2004−261139号公報
【特許文献3】特開2002−345401号公報
【特許文献4】特開平10−56960号公報
【特許文献5】特開平9−121787号公報
【特許文献6】特開平11―178517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、酸性豆乳飲料に関し、豆乳由来のタンパク質の凝集や沈殿も有意に抑制され、かつ、不溶性固形分を含有していても、該固形分が長期間分散安定化されており、安定な不溶性固形分を含有する酸性豆乳飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、酸性豆乳飲料を調製する際、平均直径0.01〜1μmの繊維状の不溶性セルロース、好ましくは、発酵セルロースを含み、更に好ましくは、水溶性ヘミセルロースを含有することで、意外にも、酸性豆乳飲料中のタンパク質を安定化させる効果が従来の安定化剤を用いた場合と比べて劣ることなく、しかも当該セルロース無添加品よりも良くなり、更には、酸性豆乳飲料にコク味を付与でき、また果肉などの不溶性固形分を添加した際の固形分の分散性が格段に良くなることを見いだした。
【0009】
すなわち本発明は以下の態様を有するものである;
項1.平均直径0.01〜1μmの繊維状の不溶性セルロースを含む酸性豆乳飲料。
項2.前記繊維状の不溶性セルロースが発酵セルロースである、請求項1に記載の酸性豆乳飲料。
項3.更に、水溶性ヘミセルロースを添加する、項1又は2に記載の酸性豆乳飲料。
項4.更に、不溶性固形分を均一に分散して含有する項1乃至3に記載の酸性豆乳飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、酸性下でも豆乳由来のタンパク質の凝集・沈殿が有意に抑制され、また、不溶性固形分を含有していても、不溶性固形分が沈殿せず、長期間にわたり安定に均一分散した、不溶性固形分を含有する酸性豆乳飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の酸性豆乳飲料は、平均直径0.01〜1μmの繊維状不溶性セルロースを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明で言う酸性豆乳飲料とは、豆乳を原料とする酸性の飲料であれば特に限定されず、例えば、豆乳ドリンクヨーグルト、発酵豆乳(生菌、及び殺菌タイプ両者を含む)、及びそれらを凍結させたフローズンヨーグルト等の、発酵工程を含む豆乳飲料及びその豆乳飲料を含む食品(ドリンクヨーグルトタイプ)や、豆乳や大豆全粒粉に、乳酸、クエン酸等の有機酸を添加することで酸性化した飲料(直接酸乳タイプ)等があげられ、そのpHは3.0〜6.0、好ましくは3.3〜4.5程度のものをいう。
【0013】
更に、酸性豆乳飲料中の豆乳の含有量としては、大豆固形分換算で0.5重量%以上含有することが好ましく、更には、1〜9重量%程度含有することが好ましい。豆乳の含有量として当該範囲含むことにより、豆乳の風味が充分得られ、更には、保存安定性に優れた豆乳飲料となる。
【0014】
本発明の酸性豆乳飲料に含有させる成分は、平均直径0.01〜1μm、好ましくは0.01〜0.1μmの範囲の微細な繊維状のセルロースである。具体的には、発酵セルロース、微小繊維状セルロースと言われるものを挙げることができる。なお、不溶性セルロースの1種として、微結晶セルロースの非結晶領域を除いて得られたセルロースが知られているが、本発明においては微結晶セルロースを添加しても本願発明の効果を奏さない。
【0015】
発酵セルロースは、セルロース生産菌が生産するセルロースである。通常、セルロース生産菌を既知の方法、例えば、特開昭61−212295号公報、特開平3−157402号公報、特開平9−121787号公報に記載される方法に従って培養し、得られる発酵セルロースを所望に応じて適宜精製することによって製造することができる。
【0016】
セルロース生産菌としては、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に属する細菌が挙げられるが、好適にはアセトバクター属である。発酵セルロースを生産するアセトバクター属の細菌として、より具体的には、アセトバクター・パスツリアヌス株(例えば、ATCC10245等)、アセトバクター・エスピーDA株(例えば、FERM P−12924等)、アセトバクター・キシリナム株(例えば、ATCC23768、ATCC23769、ATCC10821、ATCC1306−21等)を挙げることができる。好ましくは、アセトバクター・キシリナム株である。
【0017】
かかるセルロース生産菌を培養する培地及び条件としては、特に制限されず、常法に従うことができる。例えば、培地は、基本的に窒素源、炭素源、水、酸素及びその他の必要な栄養素を含有しており、上記微生物が増殖して目的の発酵セルロースを産生することができるものであればよく、例えばHestrin-Schramm培地を挙げることができる。なお、セルロースの生産性を向上させるために、培地中にセルロースの部分分解物、イノシトール、フイチン酸等を添加することもできる(特開昭56−46759号公報、特開平5−1718号公報)。培養条件としては、例えばpH5〜9、培養温度20〜40℃の範囲が採用され、発酵セルロースが十分産生されるまで培養が続けられる。培養方法は、静置培養、撹拌培養、通気培養のいずれでもよいが、好適には通気撹拌培養である。
【0018】
発酵セルロースを大量生産するためには、多段階接種法が好ましい。この場合、通常、2段階の予備接種プロセス、一次接種発酵プロセス、二次接種発酵プロセス及び最終発酵プロセスからなる5段階の発酵プロセスが採用され、各プロセスで増殖された細菌について細胞の形態およびグラム陰性であることを確認しながら、次プロセスの発酵器に継代される。
【0019】
発酵後、産生された発酵セルロースは培地から分離処理され、洗浄されて、適宜精製される。精製方法は特に制限されないが、通常、培地から回収した発酵セルロースを洗浄後、脱水し、再度水でスラリー化した後に、アルカリ処理によって微生物を除去し、次いで該アルカリ処理によって生じた溶解物を除去する方法が用いられる。具体的には、次の方法が例示される。
【0020】
まず微生物の培養によって得られる培養物を脱水し、固形分約20%のケーキとした後、このケーキを水で再スラリー化して固形分を1から3%にする。これに水酸化ナトリウムを加えて、pH13程度にして撹拌しながら数時間、系を65℃に加熱して、微生物を溶解する。次いで、硫酸でpHを6〜8に調整し、該スラリーを脱水して再度水でスラリー化し、かかる脱水・スラリー化を数回繰り返す。精製された発酵セルロースは、必要に応じて乾燥処理を施すことができる。乾燥処理としては特に制限されることなく、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、スプレードライ、ドラムドライ等の公知の方法を用いることができる。好ましくはスプレードライ法、ドラムドライ法である。
【0021】
かくして得られる発酵セルロースは、白色から黄褐色の無臭の物質であり、水に急速に分散できる非常に微細な繊維性粒子からなる。なお、本発明で用いられる発酵セルロースは、上記方法で調製される発酵セルロースと同一若しくは類似の性質を有し、本発明の目的を達成しえるものであれば、その調製方法によって限定されるものではない。
【0022】
また、本発明の発酵セルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン等の高分子物質の一種もしくは二種以上と複合化したものを使用しても構わない。このような物質は商業上入手することが出来、例えば、シーピーケルコ社製のプリマセル等を挙げることができる。
【0023】
微小繊維状セルロースは、原料のセルロース性物質、好ましくは、野菜、芋、豆、木綿、麻、木材等の植物の骨格構造を形成する細胞壁の主成分であるセルロース性物質原料を、繊維状に加工したものである。微小繊維状セルロースは高度に精製した純植物繊維を原料とし、これに超高圧ホモジナイザー処理による強力な機械的せん断力を加えて微小繊維状にしたものであり、原料の繊維が、当該処理により、約4万〜8万本程度に引き裂かれ、繊維の太さは0.01〜1μm、好ましくは0.01〜0.1μmまで微小化されている。
【0024】
さらに、本発明で用いる微小繊維状セルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン等の高分子物質の一種もしくは二種以上と複合化したものを使用しても構わない。このような物質は商業上入手することが出来る。
【0025】
なお、本発明では、平均直径0.01〜1μmの繊維状の不溶性セルロースとして、特に、前記発酵セルロースを使用するのが好ましい。
【0026】
本発明に係る前記不溶性セルロースの添加量は、酸性豆乳飲料に対して、0.005〜0.3重量%、より好ましくは0.02〜0.2重量%、更に好ましくは0.04〜0.1重量%である。これよりも当該セルロースの添加量が多いと、粘度が高くなり、飲料としては不向きであり、また、これよりも少ないと、不溶性固形分の分散能力が十分でなく沈殿を引き起こす。
【0027】
更に、本発明の酸性豆乳飲料には前述の微細な繊維状のセルロースに加えて、水溶性ヘミセルロース、ハイメトキシルペクチン(HMペクチン)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールなどの酸乳安定剤を併用することができる。これら酸乳安定剤の添加量は、酸性豆乳飲料中0.01〜1重量%程度を例示することが出来る。更には、酸乳安定剤の中でも水溶性ヘミセルロースを使用するのが好ましい。
【0028】
本発明で使用する水溶性ヘミセルロースは、植物由来のラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、グルコース、ウロン酸の1種もしくは2種以上を含むものであればよいが、豆類由来、特に大豆、中でも子葉由来のものが好ましい。本発明で使用する水溶性ヘミセルロースは、その分子量がどの様なものでも使用可能であるが、高分子であることが好ましく、平均分子量が数千〜数百万、具体的には5千〜100万であるのが好ましい。なお、この水溶性ヘミセルロースの平均分子量は標準プルラン(昭和電工(株))を標準物質として0.1MのNaNO溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。かかる水溶性ヘミセルロースは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のSM−700,SM−900、SM−1200などを挙げることができる。
【0029】
なお、本発明における水溶性ヘミセルロースの添加量は、酸性豆乳飲料中0.01〜5重量%、好ましくは、0.05〜1重量%である。
【0030】
本発明では、(1)平均直径0.01〜1μmの繊維状不溶性セルロース及び(2)水溶性ヘミセルロースの配合割合について、(1):(2)=1:100〜10:1、好ましくは1:50〜1:1となるように添加するのが好ましい。
【0031】
更に、本発明の酸性豆乳飲料は、豆乳由来のタンパク質成分の凝集・沈殿を起こすことなく、不溶性固形分を安定に分散することが出来る。さらに、長期保存により発生するタンパク質の沈殿も顕著に少なくすることが出来る。
【0032】
本発明で酸性豆乳飲料に含有する不溶性固形分は、酸性豆乳飲料に添加可能な水に不溶もしくは水に難溶性である固形分であれば特に限定されないが、例えば、野菜・果実の果肉、ピューレ等の繊維分、黄粉、ココア粉、抹茶粉末、ごま、あずき、ゼリー粒、卵殻、貝殻等の天然成分由来或いは合成された炭酸カルシウム等の不溶性カルシウム成分、酵母等の粉末等を例示することが出来る。本発明では、具体的には、平均直径で0.1μm〜20mm程度の不溶性固形分を良好に分散することが出来、特に、果肉、あずき、ゼリー粒などの例えば1〜10mm程度の比較的大きな粒子の固形分を安定に分散することができる。
【0033】
本発明における不溶性固形分の酸性豆乳飲料への添加量であるが、不溶性固形分の種類によって適宜選択することが出来るが、酸性豆乳飲料100重量%に対して0.01〜50重量%、好ましくは、5〜30重量%を例示することができる。
【0034】
また、本発明の酸性豆乳飲料は、例えば、直接酸乳タイプの製法で製造する場合には、前述の繊維状不溶性セルロース又は、前述の繊維状不溶性セルロース及び水溶性ヘミセルロースを添加して、pHを酸性に調整した豆乳含有溶液に均質化処理を施す工程により製造することが出来る。また、発酵豆乳を使用する場合には、豆乳を予め常法により乳酸発酵させた後、この発酵豆乳に、前述の繊維状不溶性セルロース又は、前述の繊維状不溶性セルロース及び水溶性ヘミセルロースを添加して、必要に応じて均質化処理工程を行い製造することが出来る。本方法で製造することで、更に豆乳由来のタンパク質成分の凝集・沈殿を抑制し、更には、不溶性固形分を安定に分散することが出来る。更には、前述の繊維状不溶性セルロースを活性化させてから添加してもよい。
【0035】
セルロースを活性化させる方法であるが、水又は分散媒体に当該セルロースを投入後、適度な強度の剪断力を加えて撹拌することが好ましい。適度な強度の剪断力を加えた撹拌の方法としては、特に制限されることなく一般に採用される方法が広く用いられるが、例えば、ミキシング(プロペラ撹拌、ミキサーによる高撹拌等)、ホモゲナイズ、コロイドミル等の処理が挙げられる。好ましくは、約9800〜19600kPaのホモゲナイズ圧力の範囲でホモゲナイズする方法である。撹拌する際の温度は特に制限されず、通常10〜90℃の温度範囲を採用することができる。このような方法で活性化した当該セルロースを、常法により水に豆乳及び必要に応じて水溶性ヘミセルロース及を加熱攪拌した溶液に添加し、更に均質化処理を施す。
【0036】
その他の方法は、活性化した当該のセルロースを使用する場合も、未活性の当該セルロースを使用する場合も同様の方法で製造できる。即ち、(1)豆乳、当該セルロース及び必要に応じて水溶性ヘミセルロースを溶解する工程、(2)pHを酸性にする工程、(3)均質化を行う工程、(4)必要に応じて不溶性固形分を添加する工程、(5)加熱殺菌を行う工程により、酸性豆乳飲料/不溶性固形分が分散された酸性豆乳飲料を製造することが出来る。
【0037】
中でも、(1)豆乳及び当該セルロース、水溶性ヘミセルロースを溶解する工程として、同時に溶解してもよいし、豆乳と水溶性ヘミセルロースを先に合わせて溶解した後、セルロースを添加しても良い。(2)のpHを酸性にする工程は、前記の通り、クエン酸等の有機酸を添加することにより調製する方法を挙げることができる。(3)の均質化工程について、70〜90℃程度まで加熱した後、均質化処理を行うのが好ましい。均質化の方法としては、約9800〜19600kPaのホモゲナイズ圧力の範囲で処理する方法を例示することができる。撹拌する際の温度は特に制限されず、通常10〜90℃の温度範囲を採用することができる。なお、(4)の工程について、果肉などの不溶性固形分を添加する場合には、均質化した後、添加することが好ましい。(5)の加熱殺菌工程については、通常の酸性豆乳飲料の殺菌条件、例えば95℃30分間程度の殺菌条件を例示することができる。
【0038】
本発明の酸性豆乳飲料には、本発明の効果に影響を与えない限度において、必要により、更に、前記以外の増粘多糖類、乳化剤、砂糖、果糖、糖アルコール、スクラロース、アスパルテーム、ステビア等の各種甘味料、果汁やココアパウダー等の風味付け素材;色素、香料等を添加することもできる。
【0039】
前記以外の増粘多糖類として、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドシードガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン、アラビアガム、寒天、トラガントガム、カラヤガム、ガティガム、プルラン、ラムザンガム、水溶性セルロースエーテル(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロースなど)などを挙げることができる。また、ゼラチン、乳清タンパク質、小麦グルテンなどのタンパク質成分も添加しても良い。
【0040】
乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸塩、ユッカ抽出物、サポニン、レシチン、ポリソルベート等を挙げることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、処方中、特に記載のない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を示すものとし、文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標を示す。
なお、以下の実施例、比較例において、発酵セルロースはシーピーケルコ社製、微小繊維状セルロースは旭化成社製のものを使用した。
【0042】
実施例1〜4,比較例1〜2:果肉入り酸性豆乳飲料の調製
1.準備:各溶液の調製
a)14%砂糖、1%水溶性ヘミセルロース(またはHMペクチン)含有溶液の調製
水に砂糖及び水溶性ヘミセルロースの混合物を添加後、80℃10分間加熱攪拌溶解後、室温(25℃)まで冷却して、14%砂糖・1%水溶性ヘミセルロース(またはHMペクチン)含有溶液を調製した。
【0043】
b)0.3%活性発酵セルロース溶液の調製
水に発酵セルロース(平均直径0.01〜0.1μmの繊維状の不溶性セルロース)を添加し、室温(25℃)にて、10分間2500rpm攪拌溶解後、均質化処理(第一段 9800kPa=100kgf/cm、第二段 4900kPa=50kgf/cm)を行い、0.3%活性発酵セルロース溶液を調製した。
【0044】
2.調製方法
1で調製したa)、b)を添加後、豆乳を添加し、50%クエン酸溶液にてpH3.8に調製した後、80℃まで加熱した後、均質化処理(第一段 9800kPa=100kgf/cm、第二段 4900kPa=50kgf/cm)を行った後、約3mm角にカットした黄桃を添加し、93℃まで過熱し、スクリュー瓶にホットパック充填し、果肉入り酸性豆乳飲料を調製した(実施例1〜3は水溶性ヘミセルロース使用、実施例4はHMペクチン使用)。
【0045】
比較例として、発酵セルロースの代わりに微結晶セルロース0.4%を使用して酸性豆乳飲料を調製した(比較例1、2)。また、発酵セルロース無添加の酸性豆乳飲料を調製した(比較例3,4)。即ち、水に微結晶セルロースを添加し、室温(25℃)にて、10分間2500rpm攪拌溶解後、均質化処理(第一段 9800kPa=100kgf/cm、第二段 4900kPa=50kgf/cm)を行い、2%活性微結晶セルロース溶液を調製したものを使用、或いは当該溶液を無添加した以外は発酵セルロース使用と同様の方法で調製した。
【0046】
【表1】

【0047】
3.評価方法
評価方法について、飲料調製日に、10℃での粘度を測定し、飲用感について、10℃で食し、のどごし、飲みやすさ、コク味などの飲用感を評価した。結果を表2に示す。更に、5℃にて1ヶ月保存後の外観の状態を目視観察した。沈殿は、横から観察した沈殿量を評価し、上透き・沈殿は上記処方中果肉無添加にて目視観察、分散状態は果肉の分散状態を目視観察し評価した。結果を表3に示す。
【0048】
表中の符号の説明:
上透き・沈殿について:少ない − < ± < + < ++ < +++ 多い
果肉分散状態について、分散性が高い順に、◎ > ○ > ×
◎:容器全体に果肉が均一に分散している状態。
○:容器下部2/3〜ほぼ全体に、果肉が均一に分散している状態。
△:容器下部2/3〜1/3の間に、果肉が均一に分散している状態。
×:容器下部に果肉が沈殿した状態。
【0049】
【表2】

【0050】
表2より、水溶性ヘミセルロース、HMペクチンを安定剤として使用した際、発酵セルロース0.02%添加(実施例1、実施例4)は、完全分散しないものの、無添加よりは明らかに分散力あり、沈殿量が減少しているが、実施例1の水溶性ヘミセルロース使用系の方が上透き、沈殿量の点で良好であった。更に、水溶性ヘミセルロース使用系で、発酵セルロース0.04〜0.06%添加系(実施例2〜3)は、分散力があり、沈殿量も減少した。上透きおよび凝集は、発酵セルロースの添加量に関係なく、生じなかった。
【0051】
また、水溶性ヘミセルロースを安定剤として使用した際、発酵セルロース0.02〜0.06%添加系(実施例1〜3)は、粘度があるものの、無添加と比較し、コク味を付与し、飲料として違和感なく飲めた。HMペクチンを安定剤として使用した系(実施例4)も無添加と比較し、コク味を付与し、飲料として違和感なく飲めた。なお、微結晶セルロースについては、果肉分散効果は見られず、また凝集を生じており、飲料に適さなかった(比較例1〜2)。
【0052】
更に、水溶性ヘミセルロースを安定剤として使用し、発酵セルロースの添加量を0.02〜0.06%添加して製造した酸性豆乳飲料(実施例1〜3)は、飲料としても違和感なく飲用でき、また、果肉の分散性が高く、豆乳由来のタンパク質の凝集も生じず、安定な酸性豆乳飲料となった。
【0053】
実施例5、比較例5:ミカン砂嚢入り酸性豆乳飲料
下記表3に掲げる処方のうち、水に、砂糖、水溶性ヘミセルロース及び発酵セルロースの混合物を添加後、80℃10分間加熱攪拌溶解後、室温(25℃)まで冷却して、砂糖・水溶性ヘミセルロース・発酵セルロース含有溶液を調製した。
【0054】
前記溶液に豆乳を添加後、50%クエン酸溶液を添加してpH3.8に調整した後、80℃まで加熱し、均質化処理(第一段 9800kPa=100kgf/cm、第二段 4900kPa=50kgf/cm)を行った後、ミカン砂嚢を添加し、93℃まで加熱し、スクリュー瓶にホットパック充填し、ミカン砂嚢入り酸性豆乳飲料を調製した(実施例5)。得られた酸性豆乳飲料は、砂嚢の分散性が高く、また、豆乳タンパク質の凝集も見られず、良好な酸性豆乳飲料であった。
【0055】
比較例として、下記処方のうち発酵セルロースの代わりに、微結晶セルロース0.4部を添加して、ミカン砂嚢入り酸性豆乳飲料を調製した(比較例5)。しかし、比較例のミカン砂嚢入り酸性豆乳飲料は、ミカン砂嚢が均一に分散せず沈殿し、また、豆乳タンパク質の凝集も起こり、飲用してもざらざらとしており、また、ミカン砂嚢が沈殿しているため、飲料と砂嚢を一緒に飲用することが困難であった。
【0056】
【表3】

【0057】
実施例6:抹茶入り酸性豆乳飲料
下記表4に掲げる処方のうち、水に果糖ブドウ糖液糖、スクラロース、ソーマチン、エリスリトール、水溶性ヘミセルロース、発酵セルロースを加えて、80℃10分間加熱攪拌溶解後、室温(25℃程度)に冷却し、豆乳を添加して、全量補正後、第一乳酸にてpH4.0に調製した。この溶液に大豆エキスパウダー、抹茶を添加後に80℃まで加熱し、均質化処理(第一段 9800kPa=100kgf/cm、第二段 4900kPa=50kgf/cm)を行い、93℃まで加熱し、酸化防止剤、香料を添加し、ホットパック充填し酸乳豆飲料を調製した(実施例6)。得られた酸性豆乳飲料は、抹茶の分散性が高く、また、豆乳タンパク質の凝集も見られず、良好な酸性豆乳飲料であった。
【0058】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明により、酸性条件下において、豆乳のタンパク質の凝集、沈殿等が抑制され、保存安定性に優れ、また、飲用してもざらつきなど感じられず、優れた飲用感を有し、不溶性固形分を含有する場合には長期間の保存中不溶性固形分を均一に分散することが出来る固形分の分散性に優れた酸性豆乳飲料を提供することが可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均直径0.01〜1μmの繊維状の不溶性セルロースを含む酸性豆乳飲料。
【請求項2】
前記繊維状の不溶性セルロースが発酵セルロースである、請求項1に記載の酸性豆乳飲料。
【請求項3】
更に、水溶性ヘミセルロースを添加する、請求項1又は2に記載の酸性豆乳飲料。
【請求項4】
更に、不溶性固形分を均一に分散して含有する請求項1乃至3に記載の酸性豆乳飲料。







【公開番号】特開2007−68410(P2007−68410A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255655(P2005−255655)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】