説明

酸水素ガスの生成および利用を通じた廃液の流体の処理

【課題】凝集、焼却、脱水、エネルギ効率、安定化、流出体の殺菌、および廃水処理プラントにおける高品質な処理水の生成のため、ならびに、他の種類の廃液の流体を処理するシステムの提供。
【解決手段】廃液処理システム204において廃液の流体202を処理する方法およびシステムは、酸水素ガス生成器207によって現場で生成された酸水素の多いガス214に廃液の流体202を接触させることにより、ユニットプロセス206を実施することを含む。ガス生成器207は、好ましくは、廃液の流体202に沈められる、狭い間隔をおかれた一連の電極にパルス化電気信号を与えることを含み、廃液の流体202の水成分を解離し、それにより酸水素の多いガス214,220を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本願は、ここに引用により援用される、2002年11月19日出願の米国仮特許出願第60/427,921号の利益の享受を主張する。
【0002】
本願は、産業廃水、都市廃水などの廃液の流体を処理するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多くの廃液の流体に見られる有毒な物質は、処理されずに放置されると、環境および/または人間の健康に多大な危険を与え得る。政府規制はしばしば、廃液の流体のさまざまな有機的、無機的、化学的、および微生物成分が、廃液の流体が環境に排出され得る前に処理されるべきことを義務付ける。このような廃液の流体の例としては、産業廃水および都市廃水、化学処理流出物、家畜排泄物、製紙工場の流出物などが含まれる。
【0004】
図1は、都市廃水を処理するための先行技術システムを表す処理施設の概略を示す。図1を参照すると、廃水の流入体100は、廃水処理施設の1次浄化槽102に入り、そこで生スラッジ104が、凝集、沈降、および他の1次沈殿手法を介して廃水から分離される。1次浄化槽102からの廃水は次にエアレーション槽106に送られ、エアレーション槽106にポンプで送られる空気110の存在下で好気性微生物108が廃水の処理を助ける。次に、廃水は2次浄化槽112に移され、そこでさらなる沈殿が起こり得る。さらに2次浄化槽でも2次スラッジ114が集められ、処理された廃水116は、水の流出体または他の供給源に(ときには、たとえば殺菌などのいくつかの高度な処理手順を受けた後にのみ)送られる。
【0005】
2次スラッジ114のうちいくらかは118として再循環されてエアレーション槽106に戻り、好気性生分解プロセスを続行するのを助ける。2次浄化槽112からの残りの2次スラッジ114と1次浄化槽102からの生スラッジ104とは、消化槽送り120を介して嫌気性消化槽122に送られる。嫌気性消化槽122において、嫌気性微生物124がスラッジをさらに分解し、メタン128などの副生成ガス126を生じる。嫌気性消化槽122からの消化スラッジは液体130として運び出され、農地に直接与えられ得るか、または、脱水プロセス132に送られ得る。脱水プロセスからは、典型的には、分離液または液体画分134が処理のために処理プラント100の前工程に戻され、脱水スラッジケーキ136は、焼却、土地での利用、または他の適切な用途に用いられ得る。
【0006】
バイオソリッドは、水と極めて小さな固形粒子(主に細菌および原虫)との混合体である。粒子は、凝集、すなわち小さな粒子からより大きな複合粒子へのアグロメレーションに対して抵抗する正味の負電荷を有する。水がそれを通って動けるような十分な気孔率を有するマトリックスを生成し、脱水を達成するために、バイオソリッドには、典型的には有機高分子電解質またはポリマーがコンディショニング助剤として加えられる。簡潔に述べるとこれらのポリマーは、実質的に長い有機的ストランドまたはリボンであって、正味の正電荷を有する多くの活性部位を伴う。ポリマーはバイオソリッドの負電荷を中和し、ポリマーの各活性部位に粒子を結びつける。ポリマーは互いに粘着する傾向を有し、その正味の効果としてより大きな粒子が作られ、結果的に、脱水プロセスにおいて水がそれを通じて排出できるような多孔性のマトリックスができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
伝統的なポリマーコンディショニングは、関連する多くの問題を有する。ポリマーは高価であり、バイオソリッド処理の予算のうち運営コストのかなりの部分を占め得る。バイオソリッドの性質は絶えず変化するので、ポリマーを過量に使用して無駄にすることなく適切な性能の達成を確保するように、所与のいかなる時にも求められるポリマーの正確な量を与えるのは困難である。バイオソリッドのコンディショニングに通常用いられるポリマーは、高分子量、高電荷密度の物質であって、生分解に耐性であり、水生生物に有毒であることが知られている。ポリマーの過度の使用は、魚および他の水生生物に毒性作用を有する余剰分を環境に放出する結果となり得るという懸念がある。保存されるバイオソリッド内のポリマーの分解も、著しい悪臭の生成を伴ってきた。
【0008】
廃液の流体は、焼却によっても処理され得る。焼却は、病原体、ウィルス、および毒性有機物の完全な破壊のために技術的根拠のある解決法を提示する、数少ない技術のうちの1つである。加えて、焼却によれば、高レベルの汚染物質を含み、そのために農業的利用には容認されないバイオソリッドを処理することができる。しかしながら、従来の焼却炉の資本コストが高いことと、バイオソリッドの膨大な前処理(たとえば脱水)とが、このプロセスを非常に高額なものにしている。したがって焼却は、典型的には、量産効果を得ることができる極めて大きな廃水処理施設においてのみ経済的であった。
【0009】
先行技術の焼却システムにおける燃焼プロセス中に、法外に高額となるほどの量の移入エネルギを消費することを避けるために、バイオソリッドは、約30%の固形物を有するケーキになるまで脱水されなければならない。この乾燥レベルでは、ケーキは可塑性、粘着性の半固形物質であり、脱水装置から焼却炉へケーキを移すことに関連して著しい作業上の問題があり得る。ケーキの固形内容物の変動およびそれに伴う熱需要の変動も、また燃焼プロセスを非常に制御困難なものにし得る。
【0010】
バイオソリッドの安定化は、廃液スラッジの農業的利用のために義務として課せられており、具体的な場所に依存して、連邦、州、または地方政府によって規制され得る。この規制は、バイオソリッドに含まれる病原体に関連する潜在的な危機から人間の健康および環境を保護する。規制機関は、典型的には、容認できる処理プロセス、および/または、処理済みの生成物における特定の病原体の許容できる水準について規定する。従来は、安定化は、有機物の生分解、pHの上昇、湿度の低減、および、特定の時間/温度状況に従った廃液の取扱いプロセスのうち、1つ以上を通じて起る。これらのプロセスのすべてが比較的高額であって、エネルギ集約型であり、大量の混合物を必要とし、または制御が困難であり得る。
【0011】
従来の廃水処理施設を操業するのに必要な電気は、伝統的には配電網から購買されてきた。現場で電気を生成する誘因がほとんどなかったのは、配電網からの電力が安価で確実であり、発電装置のための資本コストは高く、電力生成のための唯一の安価な燃料源が消化ガスだからである。しかし、エネルギ源として消化ガスを利用することには多くの問題がある。消化ガスは高い割合でメタンを含んでいるが、さらに水で飽和しており、かつ、著しい量の硫化水素を含む。これにより消化ガスは極めて腐食性が高く、使用する前に大規模な浄化が必要である。さらに、消化ガスはそれ自体が生産プロセスである場合とは対照的に、廃液処理プロセスの副生成物に過ぎない。生成されるガスの量はバイオソリッド安定化プロセスの関数であり、変化する需要に合わせて変えることはできない。メタンの多いバイオガスの燃焼は、さらに、著しい温室効果ガスの排出を生じる。
【0012】
ほとんどの固形物が流入する廃水から分離された後、残りの流出体は、環境への放出に備えて典型的には殺菌される。廃水流出体の殺菌は、歴史的に、塩素化合物の添加を通じて達成されてきた。塩素化合物を扱うことに関連する健康上および安全上の重大な懸念がある。近年では、塩素は、流出体内の有機物質と結びついて、有毒かつ潜在的に発癌性がある塩素化有機物を生成する可能性があるという懸念が増大してきている。より毒性の少ない塩素化合物に代替するよういくらかの努力がなされてきたが、業界全体の風潮としては、殺菌剤としての塩素の使用を段階的に廃止しようとしている。
【0013】
廃水処理で採用される他の殺菌技術は、紫外(UV)光またはオゾンを用いた病原体の破壊を含む。これらのプロセスのいずれも、環境に影響するほどの明らかな残余分を処理済み流出体に残すことはない。しかしながら、これらの両方のシステムにおける資本コストおよび運営コストは比較的高い。UVプロセスの場合、資本コストは、流水式機構の建設と必要となる複数のUVバルブ(ランプ)とを含む。運営コストは、電力、バルブの交換、およびバルブの定期的洗浄を含む。オゾンによる殺菌のための主要なコストは、オゾン生成器と供給源として用いられる市販の酸素とを含む。供給源として空気が用いられると、オゾン生成器のサイズは約2倍となり、そのため資本コストも2倍とならざるを得ない。
【0014】
廃液処理施設における水の用途の多くは、浮遊粒子状物質のない比較的高品質の水を必要とするが、飲用水の場合のように、水が塩素処理されているか、または残量塩素が存在している必要はない。最終的な流出体は、浮遊物質の存在によりこれらの基準を満たさないので、ポリマーを生成するなどの用途に対する代替としては不適切である。なぜなら、浮遊物質は補給水自体においてポリマーの需要を作り出すからである。現在のところ廃液処理プラントは、飲用水を使用する以外には、これらのより高品質な最終用途に対する代替を有しておらず、その飲用水は都市給水系から購買しなくてはならない。
【0015】
本発明の発明者は、凝集、焼却、脱水、エネルギ効率、安定化、流出体の殺菌、および廃水処理プラントにおける高品質な処理水の生成のため、ならびに、他の種類の廃液の流体を処理するための、改善された方法およびシステムの必要性を認識してきた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
廃液処理システムにおける廃液の流体を処理するための方法およびシステムは、水分解離技術を実現する酸水素ガス生成器によって現場で生成される、酸水素の多いガスに廃液の流体を接触させることによって、廃液処理システムのユニットプロセスを実行することを伴う。好ましい一実施形態においては、酸水素ガス生成器が、廃液の流体に沈められた、狭い間隔をおかれた一連の電極にパルス化電気信号を与え、廃液の流体の水成分から酸水素の多いガスを生成することを含む。廃液の流体における酸水素ガス生成器の動作は、特にコンディショニング、安定化、濃縮、脱水など、廃液処理のための1つ以上のユニットプロセスを達成し得る。
【0017】
酸水素の多いガスの少なくとも一部は、たとえば焼却または発電のための可燃燃料源などとして、廃液処理システムでの第2の使用のために運ばれ得る。酸水素の多いガスから酸素が分離されることもでき、廃液処理システムのエアレーション槽で使用されるか、または廃液処理システムの流出体の殺菌に利用され得るオゾン生成器に供給される。酸水素の多いガスの燃焼からの排出物は凝縮して、処理システム内のさまざまな使用のための水を回収することができる。
【0018】
本発明のさらなる局面および利点は、添付の図面を参照しながら進行する、下記の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】先行技術による廃水処理施設の構成要素を示す概略図である。
【図2】第1の好ましい実施形態による、廃液処理システムを介した廃液の流れの処理を示す概略図である。
【図3】好ましい実施形態による、1つの廃液処理システムにおいて複数の酸水素ガス生成装置を用いて1つ以上のユニットプロセスを実施し得る、廃水処理システムを示す概略図である。
【図3A】酸水素ガス生成装置が、コンディショニングユニットプロセスおよび/または凝集ユニットプロセスを実施するために、廃水処理施設の嫌気性消化槽と脱水プロセスとの間に組込まれる、廃水処理施設を示す概略図である。
【図3B】安定化ユニットプロセスを実施するための嫌気性消化槽の代わりに酸水素ガス生成装置を利用する、廃水処理施設を示す概略図である。
【図3C】焼却ユニットプロセスの前に脱水するために酸水素ガス生成装置を利用する、廃水処理施設を示す概略図である。
【図4】図2、図3A、図3B、図3Cおよび図5による、酸水素ガス生成装置を採用する1つ以上のユニットプロセスによって生成される、酸水素の多いガスの典型的な二次使用を示す概略図である。
【図5】多様な実施形態と一致する装置を示し、廃水処理施設の廃水バイオソリッド処理における、たとえば図3A、図3Bおよび図3Cの実施形態などにおけるような、その装置の用途を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書を通じて、「一実施形態」「ある実施形態」または「いくつかの実施形態」への言及は、説明される特定の特徴、構造、または性質が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを示す。したがって、本明細書を通じてさまざまなところに現われる「一実施形態において」「ある実施形態において」または「いくつかの実施形態において」という文言は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照しているのではない。さらに、説明される特徴、構造、または性質は、1つ以上の実施形態において、いずれかの適切な態様で組合わされてもよい。
【0021】
さらに、説明される特徴、構造、性質、および方法は、1つ以上の実施形態においていずれかの適切な態様で組合わされることができる。当業者は、1つ以上の具体的な詳細なしに、または、他の方法、構成要素、材料などを伴って、多様な実施形態が実施され得ることを認識するであろう。他の場合においては、実施形態の局面を不明瞭にすることを回避するため、周知の構造、材料、もしくは動作は示されず、または詳細には説明されない。
【0022】
図2は、第1の好ましい実施形態による簡略化された廃液処理システム204を介した、廃液の流体202の処理を示す概略図である。図2を参照すると、廃液の流体202は、たとえば、産業廃水または都市廃水(生汚水)などの流入する廃液の流体を含み得る。代替的に、廃液の流体202は、より大きな廃液処理プロセスの状況においては、たとえば、上澄み液またはバイオソリッドなどの中間的な廃液の流体を含み得る。さらに他の実施形態において、廃液の流体202は、たとえば化学処理流出物、家畜排泄物、製紙工場の流出物、埋立てゴミ、海洋廃水、雨水流出水、地下水、地表水、処理プロセスの現場流出物、環境汚染改善プロセスの流出物などを含み得る。廃液の流体202は、下記に説明されるように、ユニットプロセス206に入る前に、スクリーニングおよびグリット除去などの予備処理ステップを受け得る。スクリーニングおよびグリット除去は、廃液の流体202が生汚水流入体を含む場合に特に重要であり得る。
【0023】
ある好ましい実施形態において、ユニットプロセス206は、廃液処理システム204における入口210および出口212の間の流路208に配置される酸水素ガス生成器207(GG1)を含み、これは、廃液の流体202の水成分から、酸水素の多いガス214を生成する。廃液の流体202から生成される酸水素の多いガス214は、好ましくは泡立ちながら、または他の状態で流路208の少なくとも一部を通り、それにより廃液の流体202の少なくとも一部に接触する。いくつかの実施形態において、半透膜を使用して、または他の分離技術を通じて廃液の流体207から水成分が分離され、ガス生成器207は分離された水成分に浸漬される。他の実施形態において、酸水素の多いガスは流路208の外部で生成され、ユニットプロセス206において加えられてもよく、廃液の流体202の少なくとも一部に接触する。たとえば、酸水素ガス生成器207の水源は、水道水、地表水、または廃液の流体から分離された水成分を含み得る。
【0024】
ユニットプロセス206は、シングルステップの廃水処理プロセスとして好ましくは動作でき、そこでバイオソリッド216は、流路208のガス生成装置の動作を介して廃液の流体202から取除かれ、処理された廃液の流体は、流出体218として規制基準および業界基準を満たすよう同時に殺菌される。その後、流出体218は、たとえば川などの地表水の本流に直接放出されることができ、または、廃液処理システム204で再使用されることができる。代替的な実施形態において、流出体218は、ユニットプロセス206の後、放出または再使用の前に、さらなる処理を受け得る。
【0025】
有利なことに、バイオソリッド216はガス生成器207の動作によって安定化され、農業的使用または土地での他の利用のために適切となり得る。代替として、取除かれたバイオソリッド216は、廃液処理システム204内、または別の場所に移された後のいずれかにおいて、脱水されるか、焼却されるか、または他の方法で処分され得る。
【0026】
廃液の流体202に接触した後、酸水素の多いガス220の流出分は、ユニットプロセス206から、廃液処理システム204のたとえば焼却ユニットなどの二次プロセスモジュール222へ運ばれ得る。図4は、下記に説明されるように、ユニットプロセス206で利用された後の酸水素の多いガス220の、他のさまざまな二次使用を示す。酸水素の多いガス220が用られる二次使用の種類に依存して、使われなかった酸水素の多いガスまたは二次プロセス222の副生成物224は、回収されるか、または回収されなければ1つ以上の他のプロセスモジュール226に運ばれることができ、廃液処理システム204の三次局面、または外部で使用される。
【0027】
酸水素ガス生成器207は、両方がここに引用にて援用され、エクソジェン・パワー・インコーポレイテッド(Xogen Power Inc.)に発行された、チェンバーズ(Chambers)の米国特許第6,419,815号および第6,126,794号(今後「エクソジェン特許」とする)に開示されるような種類の水分解離技術を実現し得る。エクソジェン特許の第3〜5欄で説明されたように、好ましい実施形態によるガス生成装置は、電極「セル」を含み、各セルは、水を含む作動流体に浸漬されるよう適合された、間隔をあけた2つ以上の電極を含む。ここで説明される好ましい実施形態においては、作動流体は廃液の流体202を含む。電極は好ましくは、同じ材料でできている。好ましい電極材料は、低コストで耐久性があるのでステンレス鋼であるが、他の導電性金属を使用することも可能である。電極間は等間隔に維持され、電極間の間隔は最小にされることが好ましい。しかしながら、電極間にアーク放電が起こり得るので、電極間の間隔はあまりに近く位置決めされてはならない。酸水素の多いガスの生成のためには1ミリメートル以下の間隔が最適な間隔であると決められてきたが、間隔を約5ミリメートルまで増大しても効果的に働き得、電極間の固形物の堆積による汚損を受けることもより少なくなる。5ミリメートル超の間隔も実行可能であるが、酸水素ガスの出力を低減し、所要電力を増大する傾向にある。
【0028】
各セル内に多くの電極の対(たとえば数ダースまたは数百)を含むことが好ましい。電極はほぼいかなる形状でもよいが、好ましくは互いに狭い間隔でかつ平行な平板を含む。代替的実施形態は、同軸に並べられた円筒を含み得る。隣接する電極間に絶縁スペーサが配置されて電極間の等間隔を維持し、そこでの電流の漏れを防ぐ。
【0029】
エクソジェン特許にさらに記載されるように、高周波のパルス化直流(DC)電気信号が電極に与えられる。パルス化信号は、ほぼいかなる波形でもよく、電流レベル、電圧レベル、周波数およびマーク−スペース比(すなわち、2つの連続するパルス間の間隔に対するパルスの幅の比)が可変であってもよい。電源のための電力源は、110ボルトの本線電源または12ボルトのカーバッテリなどのバッテリを含み得る。たとえば電源は、24ボルトを供給するために直列に配置された2つの12ボルトのバッテリを含み得る。都市廃水処理プラントなどの大きな廃液処理システムにおける大規模なガス生成器GG1に電力供給するためには、要求される大きなセルを駆動するのに十分な出力を有する24ボルトのパルス化DC信号を生成するために、より複雑な電源が必要とされ得る。代替として、複数のより小さな電極セルが、反応槽または他の反応ゾーンの中に間隔をあけて余分に与えられてもよく、その場合、それらのセルはより単純な個別の電源によって駆動され得る。
【0030】
バッテリまたは他の電源と関連してコントローラが用いられ、方形波、鋸歯状波、または三角波などの多様なパルス化出力波形のうち1つを生成し、それが電極に与えられ得る。方形波を用いると、酸水素の多いガスの生成に最良の結果が得られている。好ましいパルス化信号のマーク−スペース比は約1対1から10対1の間であり、パルス周波数は約10kHzから250kHzである。
【0031】
電源からのパルス化信号が開始した後、電極は連続的に、かつほぼ瞬時に、酸水素の多いガスの気泡を相互作用ゾーンの水分子から生成する。相互作用ゾーンは電極間に、およびわずかに電極の端部を超えて延在する。生成された気泡は電極のまわり、または電極の上でまとめられることはなく、反応槽または他の反応ゾーン内で容易に流体の表面に浮遊する。したがって、溶液の伝導を補助するために、または、電極のまわり、もしくは電極の上で気泡がまとまることを阻止するために、化学的触媒を添加する必要はない。したがって、地表水および通常の水道水などの他の水源と同様、多くの異なる種類の廃液の流体が作動流体として用いられ得る。
【0032】
図3は、廃液処理システム240を示す概略図であり、酸水素ガス生成器GG2,GG3,GG4,およびGG5が、廃液処理システム240の1つ以上のユニットプロセス242a,242b,242c,および242d(集合的にユニットプロセス242)の実施において用いられ得る。酸水素ガス生成器GG2,GG3,GG4,およびGG5は、たとえば、図2および図5を参照してここで説明される装置(装置207および500)と同様の装置を含み得る。図3を参照すると、廃液処理システム240は、都市廃水(生汚水)を含む廃液の流体244を処理するための廃水処理プラントとして実現される。しかしながら他のさまざまな実施形態と同様に、廃液処理システムは、代替的に、たとえば産業廃水、化学処理流出物、家畜排泄物、製紙工場の流出物、埋立てごみ、海洋廃水、雨水流出水、地下水、地表水、処理プロセスの現場流出物、および、環境汚染改善処理プロセスの流出物などの異なる種類の廃液の流体を処理するために配置され、構成されることができる。廃水の流入体は、1次浄化槽246、エアレーション槽248、および最終浄化槽250の使用によって既知の方法に従って処理されることができ、そこでバイオソリッド252は、生スラッジ254および廃液活性化スラッジ256の形状で、廃液の流体244から取除かれる。
【0033】
処理された廃水が流出体258として放出され得る前に、健康に害を与え得る病原体が受取る水に入ることを防止するため、典型的には殺菌されなければならない。上述のように、従来の殺菌プロセスは、紫外(UV)放射、塩素、またはオゾンを利用する。一実施形態によれば、殺菌プロセス260は、処理された廃液の流体の流路で最終浄化槽250と流出体の流出口258との間に配置された酸水素ガス生成器GG2によって置換されるか、または補充されるかのいずれかである。酸水素ガス生成器GG2に与えられたパルス化電気信号が酸水素の多いガスを生成するよう動作し、その動作によって、処理された廃水を殺菌する。酸水素の多いガス(H2/O2)262の余剰分は、下記に図4を参照して説明されるように、次に廃液処理システム240内の二次使用に運ばれ得る。代替として、殺菌ユニットプロセス242a以外の1つ以上のユニットプロセス242によって生成された酸水素の多いガス(H2/O2)の酸素成分は、殺菌プロセス260のオゾン生成器への供給源として、殺菌ユニット260に運ばれることができ、その結果として、流出体の殺菌のための全体コストの大幅な節減になり得る。典型的には、酸素成分は、オゾン生成器への供給源として使用される前に酸水素の多いガス(H2/O2)から分離される必要がある。酸水素の多いガスから酸素成分を分離するための1つの可能な技術は、圧力スイング吸着法(「PSA」)として公知であり、その1つの種類が、カナダ(Canada)、ブリティッシュコロンビア(British Columbia)州、バーナービー(Burnaby)市のクエス
トエア・テクノロジーズ・インコーポレイテッド(QuestAir Technologies Inc.)によって販売されているガス分離装置で入手可能である。酸水素の多いガスから酸素成分を分離するために、他の技術および装置もまた用いられ得る。
【0034】
本明細書の図3および他の場所で、「H2/O2」の表記は酸水素の多いガスを表わすのに用いられ、クリーンな酸水素ガス、または二原子水素(H2)と二原子酸素(O2)との純粋なガス状混合体に限定されない。酸水素の多いガスは、典型的には、主に水素と酸素とを含むガス混合体からなるが、少なくともいくらかの酸素および水素を、たとえばヒドロキサイドラジカルなど、二原子酸素(O2)および二原子水素(H2)以外の形状で含んでもよい。酸水素の多いガスは、水素および酸素以外に測定可能な量の成分をさらに含むことができ、それはたとえば、高濃度の汚染物の存在下で酸水素ガス生成器が動作することから生じ得るか、または、生成された酸水素ガスと廃液の流体中の汚染物との反応から生じ得る。たとえば、廃水または水道水から生成される酸水素の多いガスには、少量(たとえばモル分率1%から4%)の二酸化炭素(CO2)ガスがしばしば存在し得る。酸水素の多いガスには、それが特に廃水から生成される場合、微量の窒素もまた存在することがあり、廃水に存在する窒素化合物の分解を示し得る。さらに、ここで用いられる「H2/O2」という簡単な表記には化学量論比または他のガス成分の表示がないが、好ましい実施形態によるガス生成器GG2−GG5で生成される酸素および水素は、化学量論比がそれぞれ約1対2で典型的には生成される。
【0035】
安定化ユニットプロセス242cの前に、廃液活性化スラッジ256の形状のバイオソリッド252は、濃縮ユニットプロセス242bを受けてもよい。好ましい実施形態によれば、たとえば重力帯濾過処理、遠心処理、または起泡分離(DAF)などの従来の濃縮プロセス264は、酸水素ガス生成器GG3によって補充されるか、または置換される。酸水素ガス生成器GG3は、最終浄化槽250と下流にあるバイオソリッド処理プロセス、たとえば安定化242c、コンディショニング242d、脱水266、乾燥268および/または焼却270などとの間の、廃棄活性化スラッジの流れの中に好ましくは配置される。酸水素ガス生成器GG3が動作して、好ましくはバイオソリッドおよび他の浮遊物質(すなわち廃液の流体の表面の固形物の集まり)の浮遊を引起こし、それが結果として濃縮された浮遊層となって、さらなる処理のために廃液の流体から容易に取除かれるか、または分離されることができる。
【0036】
一実施形態において、酸水素ガス生成器GG3は、反応槽に入れられた廃水に沈められ、約60秒から約10分までの期間で動作し、次にガス生成器GG3への電力が停止される。本発明者らは、ガス生成器GG3のある期間の動作の後、著しい量の固形物が廃水の表面に集まることを発見した。ガス生成器GG3の動作中は少量の固形物が廃水の表面に集まり得る一方で、ガス生成器GG3の電源を切り、反応槽を通る再循環の流れ(ポンプ526によって与えられる再循環の流れの詳細については下記の図5の説明を参照)を停止した後ほとんど瞬時に、浮遊固形物が驚くほど大量に増加する。ガス生成器GG3の電源を切り再循環の流れを停止することで、結果的に反応槽内で休止状態となり、そのため固形物は妨害されずに浮遊できる。予備実験によると、約5分間、ガス生成器GG3を動作させ、その後約2分間電源を切り、再循環の流れがない状態では、供給材料中の(すなわちガス生成器GG3の動作前の)濃度0.54%と比べて、浮遊層中の固形物濃度は4.82%であった。これは、もとの供給物質からスラッジ粒子の93.5%を取除いたことを示す。従来の技術と匹敵するこの分離効率が、有機ポリマーなどいかなる凝集剤をも添加せずに達成されたことに注意されるべきである。本発明者らは、このガス生成器の浮選効果を「抽出ガス浮選」と呼ぶ。好ましい抽出ガス浮選ユニットプロセスは1つ以上のサイクルを含み、各サイクルは、(1)ガス生成器GG3を(典型的には高周波のパルス化電気信号を与えることによって)約60秒から約10分の間で動作させるステップと、(2)ガス生成器GG3の電源を切るステップと、(3)固形物が流体の表面に集まるのを(典型的には約30秒から2分の間)待つステップと、(4)表面から(たとえば表面のスキミングによって)固形物を取除くステップとを含む。このサイクルは、所望の固形物量が廃水から取除かれるまで連続的に繰返され得る。
【0037】
農地に適用されるバイオソリッド252は、典型的には、適用の前に病原体の個数および生存率を低減するよう242cで安定化されなければならない。安定化は従来は好気的に(酸化により)、または嫌気的に(有機物質を酸素がない状態でメタンに変換することにより)達成される。好気的安定化はエネルギ集約型であり、嫌気的安定化は資本集約型であって、両方の手法ともに高額である。好ましい実施形態によれば、酸水素ガス生成器GG4を利用して、廃液の流体のバイオソリッド252を安定化し、酸水素の多いガス(H2/O2)272を生成する。ガス生成器GG4は反応槽502に沈められてもよく(図3B)、その場合は、廃液の流体は、ガス生成器GG4によって生成される酸水素の多いガス272と直接接触するようになる。安定化のために酸水素ガス生成器GG4を利用すると、有効量の病原体を殺すかまたは無害にするのに必要となり得る滞留時間は、従来の安定化プロセス274で要する時間よりも短い。そこで、ガス生成器GG4は、バイオソリッドが連続的反応器の処理ゾーンを通って流れる間に処理するために、その反応器内に直接浸漬され得る。ガス生成器GG4のサイズおよび処理ゾーンで要する滞留時間(すなわち連続的反応器を通る流路の長さ)は、規制要件を満たすために要する安定化レベルの関数である。たとえば、米国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency)(「U.S.EPA」)の規則503によって規定される基準を満たす「A級(Class A)」のバイオソリッド生成物を生成することが目的である場合、最終生成物は典型的には、バイオソリッド中の糞便の大腸菌の密度が総固形物1グラム当たり1000最確数(MPN)未満でなければならず、かつ、揮発性固形内容物中で38%の低減などの「ベクタ誘引低減」を有していなければならない。これを達成するために認められた従来の2つの方法は、バイオソリッドを高温性好気性消化によって10日間(240時間)55℃から60℃の温度で処理するか、または、5日間(120時間)50℃という代替的な時間/温度の状況下で処理するかである。これと対照的に、酸水素ガス生成器GG4を利用した実験的研究においては、処理温度25℃、およびバッチ滞留時間4時間から6時間で、安定化およびベクタ誘引低減基準が満たされ得ることが示された。
【0038】
酸水素ガス生成器GG4の動作は、反応槽または流水式処理ゾーン内において、安定化に要する条件と一致する大気を作り出す。酸水素の多いガスが遊離する間、反応器または処理ゾーンの内容物の温度は上昇し、その温度は特定のシステムの既知の滞留時間を鑑みて、安定化のために必要な温度要件を達成するように制御することができる。時間/温度状況は規制要件を満たし、かつ病原体の破壊を必要なだけもたらすようカスタマイズされることができる。液体の滞留時間も温度とは独立に制御可能であり、その結果、時間と温度とのいかなる組合せも達成され得る。安定化の次に、バイオソリッドは農業的利用のために脱水されるか、または直接に液体注入プログラムに利用されるかのいずれかであり得る。ガス生成器GG4によって遊離された酸素が高度に酸化された環境を作り出し、その結果有機物が酸化されて、それ自体で安定化要件を満たすことができる。これらの2つの安定化手法を1つのステップに組合せると、極めて効率的なプロセスになる可能性を示す。これらの条件の組合せは、米国環境保護庁の規則503に特定される「病原体をさらに低減するプロセス(Process to Further Reduce Pathogens)」として十分適格であることができ、かつこの組合せは、農地に液体の形状で直接与えられ得るA級のバイオソリッドを生成し得る。処理された物質は、その後の取扱いおよび再使用の動作において、生成する悪臭をより少なく、ハエおよび齧歯動物などのベクタ誘引をより少なくできる。これらの利点が、酸水素の多い遊離されたガス272の形状で保存されるエネルギの出力と結合されると、安定化ユニットプロセス242cの全体のコストが従来の安定化プロセスよりも大幅に低くなることが期待される。
【0039】
いくつかの実施形態において、別個のコンディショニングステップ242dが、(従来の274、またはガス生成器GG4を介してのいずれかで行なわれる)安定化242cの後、かつ脱水266の前に実施される。従来の化学コンディショニング276は、廃液の流体から固形粒子を取除くための凝集を助けるポリマーまたは有機高分子電解質を添加することを含む。好ましい実施形態と一致するコンディショニングは、酸水素ガス生成器GG5を用いて化学コンディショニング276を補充し、または置換する。ガス生成器GG5は、高度に酸化された、かつ温度が上昇した状況を作り出し、それは、バイオソリッドの周囲の、バイオソリッドの凝集に妨げを与え得る多糖体層を破壊する傾向がある。多糖体の低減はバイオソリッドの表面特性を変え、それにより、必要となるポリマーの量を減らし、またはいくつかの場合には、ポリマー添加剤を全く不要とする。したがって、コンディショニングユニットプロセス242dに酸水素ガス生成器を実現することによってコンディショニングのコストを下げ、毒性および悪臭の生成の問題を減らし、同時に、酸水素の多いガス(H2/O2)278をバイオソリッドの廃液の流体252の水成分から遊離する。酸水素の多いガス278は、次に回収され、廃液処理システム240内または他の場所での二次使用のために運ばれ得る。安定化242cと同様に、コンディショニングプロセス242dのガス生成器GG5は反応槽502に浸漬されてもよく(図3A)、または、廃液の流体が流れるのに通る、導管もしくは他の流路の反応ゾーンに配置されてもよい。さらに、図3Bを参照して下記に説明されるように、酸水素ガス生成器の利用により、安定化およびコンディショニングの両方が、安定化/コンディショニングが組合された単一のユニットプロセスにおいて同時に実施されることが可能になり得る。
【0040】
図3A−図3Cは、バイオソリッドを含む廃液の流体を処理するための、酸水素ガス生成器500を含む廃水処理施設のさらなる例示的な実施形態を示す。図3A−図3Cに関しては、300番台の参照番号は、上述の対応する図1の中の100番台の番号に相関する。たとえば、図3A−図3Cにおいて、1次浄化槽は参照番号302で表わされ、それは図1の対応するユニットプロセスの参照番号102と対応する。図3A−図3Cにおいて500番台の参照番号を付けられた項目は、下記に図5を参照してさらに詳細に説明される。図3Aに関しては、ガス生成器500は嫌気性消化槽322と脱水プロセス332との間で動作するよう図示され、コンディショニングおよび/または凝集ユニットプロセスを実施する。図3Bにおいて、ガス生成器500は、廃液の流体の安定化を目的として嫌気性消化槽(図1の122)の代わりに動作される。図3Bの実施形態において、ガス生成器500は、反応槽502に入る廃液の流体の性質に依存して、コンディショニングユニットプロセスまたは組合された安定化/コンディショニングユニットプロセスとして機能することもできる。図3Cにおいて、ガス生成器500は、好ましい実施形態に一致する組合された脱水および焼却手順の一部として、従来の脱水プロセス(図1の132)の代わりに動作される。
【0041】
廃水バイオソリッドの処理に適用される実施形態が、より詳細に図5で概略的に示される。図5は、図2の酸水素ガス生成器GG2−GG5の一実施形態を表し、より具体的には図3A−図3Cのガス生成器500の実現についての追加的な詳細を示す。図5を参照して、ガス生成器500は水とバイオソリッドとを含む流体懸濁液504を入れた反応槽502に沈められている。流体懸濁液504は、廃水の流入体と同じく希薄であってもよく、または、活性化廃液スラッジ、生スラッジ、または濃縮スラッジと同じく、より濃縮されていてもよい。流体懸濁液504は、典型的には1.0よりもほんの僅かに大きい凝集した比重を有する生物フロック(バイオソリッド)を大部分に含む。
【0042】
ガス生成器500は、1組のフロート522から吊り下がるフレーム510に装着されてもよく、それによりガス生成器500の浸水深さが、流体504の表面の下方で所望のレベルに維持される。代替としてガス生成器500は、反応槽502内で固定された高さに位置決めされ得るよう、固定蓋部または他の固定支持体に装着され得る。図5に示される実施形態において、フロート522は反応槽502の上面を封止するようにも機能し得る。フレーム510は調整可能であり、それにより、反応槽502内の流体504の深さとは独立して、ガス生成器500の浸水深さレベルが、調整され得る。
【0043】
他の実施形態において、ガス生成器500は台座または他の支持体の上に配置され、それにより反応槽502内の流体504の深さの中間より下に位置決めされる。反応槽(または他の反応ゾーン)内の低い位置にガス生成器500を配置することで、酸水素の多いガスの気泡が流体504を通って上昇しなければならない距離を増大し、したがってその滞留時間とバイオソリッド粒子または他の処理可能な分子に接触する可能性とを増大する。好ましくは、ガス生成器500は反応槽502の床部より少なくともわずかに上に位置決めされて、ガス生成器500の電極間に沈降物およびスラッジが堆積するのを回避する。
【0044】
ガス生成器500は狭い間隔をおかれた一連の電極板を含み、電極板は一般に縦に配向され、隣り合う板の間の空間が反応器の内容物に対して、板の上端縁および下端縁の両方において開いているように配置される。電源505からのパルス化電気信号は、送電ワイヤ507を介して電極板に与えられる。パルス化電気信号を印加することで、板の間および板の間の開口部をわずかに超えて延在する相互作用ゾーンにおいて流体懸濁液504の水分子が解離され、それにより、水素および酸素を含む、酸水素の多いガスが形成される。酸水素の多いガスは相互作用ゾーンに集まって、流体懸濁液504を通って上昇する気泡を板の間に形成し、次にガス収容蓋部524の下で流体懸濁液504の表面に集まり得る。流体懸濁液504中の生物フロックの凝集した密度(比重)が1.0よりほんの僅かに大きいために、上昇する気泡はフロックを上向きに移動させ、遊離されたガス気泡中の、および/または収容蓋部524の下に集まる大気中の、酸素および水素と接触させることができる。
【0045】
酸水素の多いガスを生成するプロセスにおいて、ガス生成器500の周囲で熱が生成され、反応槽502内の流体懸濁液504の温度が上昇し得る。反応槽502の内容物の一部は連続的かつ可変的に引出され、送り/再循環ポンプ526を介して熱交換器506を通って再循環されることができ、流体懸濁液504の温度を当該具体的な用途のための所望のレベルに維持する。温度制御の提供に加えて、再循環ループはさらに反応槽502においてある程度の能動的な混合をもたらすことができ、バイオソリッドを懸濁させておき、それにより流体懸濁液504の表面へと上向きに移動されるような位置に、または、バイオソリッドが酸水素の多いガスに接触する可能性がより大きい別の接触ゾーンに、バイオソリッドを保つことを助ける。サンプルポート508を再循環ラインに設けることができ、それによりバイオソリッドのサンプルが集められ、いずれの時点においてもそれまでにどの程度処理が達成されたかを決定するために、さまざまなパラメータについて分析されることが可能になる。
【0046】
都市廃水または産業廃水処理という状況におけるガス生成器500のユニットプロセスの適用例としては、ここで説明されるように、たとえば殺菌、濃縮、コンディショニング、脱水、および安定化を含み得る。動作パラメータレベルの組合せは、各種類のユニットプロセスに対して最適化されることができ、各適用および廃液の各流体源について固有であり得る。個別に変動し得る動作パラメータのうちいくつかは、ガス生成器500の水没深さ、電源505を介してガス生成器500に与えられる電力の大きさ、ガス生成器500の電極へのパルス化電気信号の性質、反応槽502内の流体懸濁液504の温度および滞留時間を含む。電源505により制御され得るパルス化電気信号の性質には、パルス周波数、振幅、パルス幅、マーク−スペース比、波形(すなわち、方波形、鋸歯状波形など)、接地に対する電圧などが含まれる。他の適用および対応する動作パラメータは当業者にはさらに明白であり得る。
【0047】
コンディショニングの目的は、生物フロックの表面に存在して脱水に対する抑止力として作用する天然多糖体層を破壊し、または分解することである。酸水素の多いガスの上昇する気泡によってフロックが上向きに引上げられる間、フロックは、高度に酸化された接触ゾーンにおいてガス生成器によって生成された気泡中の水素および/または酸素と直接に接触するようにされる。多糖体層はフロック粒子の最も外側の境界に相当するので、これらの層は優先的に分解される。この多糖体層の大部分の除去は、後に続く従来の脱水プロセスにおいて、ポリマーの添加の必要性を減じ、または完全になくすという効果を有する。図3、図3A、および図3Bに示されるように、コンディショニングされたバイオソリッドは、従来の脱水装置に直接に移動されることができ、脱水されたケーキは廃棄されるか、または当該技術分野で知られるいずれの従来の態様で利用されてもよい。
【0048】
好ましい実施形態を脱水に適用することは脱水の従来の概念とは異なる。従来の脱水においては、その目的は、バイオソリッドの種類および下流の処理要件に依存して、最小限のケーキ固形物濃度である約20%から30%を達成することである。現在の焼却方法は、バイオソリッドが約20%−30%の固形物にまで脱水されていることを要する。なぜなら、これらの濃度においては補助的な燃料を追加することなく液体部分を蒸発させるほど十分なエネルギがケーキにあるからである。図5の実施形態において、焼却炉512に放出された、バイオソリッドの最終的な固形物濃度は比較的重要ではない。なぜなら焼却プロセス512は、バイオソリッド粒子の燃焼および残りの自由水の蒸発を含むからである。ガス生成器500に電力が供給されると反応槽からの水が酸水素の多いガスに遊離され、脱水の達成される程度は生成される酸水素ガスの量に正比例するであろう。この手法においては、生成されるガスの量が、反応槽502における最終的な固形物濃度よりもさらに重要である。ほんの一部の水がガスに変換されるだけで反応器の残りの内容物を焼却するのに十分なエネルギをもたらすことが期待される。
【0049】
一実施形態において、ガス生成器500を介して十分な量の酸水素ガスを生成すると、固形物濃度において、対応して10%の上昇、たとえば約3.0%の固形物から約3.3%の固形物に上昇することが期待される。他の実施形態においては、固形物濃度は、酸水素ガスを用いた焼却の前に、約10%または20%の固形物濃度にまで上昇され得る。焼却プロセス512の燃料(すなわち酸水素ガス)が内部的に生成され得るので、移入燃料の需要を低減するか、またはなくすことができる。バイオソリッドは、ケーキの形状ではなく液体懸濁液の形状でも焼却され、これは、予備処理ステップとしての従来の脱水の必要性をなくし、かつ、半固形または可塑性のケーキを焼却炉512へ移すことに伴う物質取扱い上の問題をなくすことができる。液体懸濁液の形状でバイオソリッドを焼却することが可能であることは、また、従来とは異なる焼却炉技術を用いる可能性をもたらし、その技術が今度はコストを低減することができるので、より小さな施設で焼却を用いることが経済上有利となる。また、焼却は、安定化および従来の脱水の両方について必要性とコストとをなくし得るので、液体バイオソリッドの焼却は、他の管理上の代替策に対して経済的に有利となり得る。
【0050】
特定の実施形態によって実施されるいかなるユニットプロセスにおいても、エネルギに富むガスが生成される。図5に示されるように、このガスは、焼却512や発電514の燃料として、またはオゾン516の生成のための供給源として(ガス混合体から分離された酸素とともに)用いられ得る。
【0051】
図4は、図2、図3A、図3B、図3Cおよび/または図5による酸水素ガス生成器を採用する1つ以上のユニットプロセスによって生成される、酸水素の多いガス(たとえば220,262,272,278)のいくつかの二次使用を示す概略図である。図4に示されるように、酸水素の多いガスが燃料として用いられ得るのは、(A)スラッジまたはバイオソリッドの焼却、(B)発電(およびそれに続くプラント内使用のための熱回収)、および(C)(乾燥または他の熱処理のための)高温ガスの生成である。また、酸水素の多いガスは、1つ以上の二次プロセスまたは二次使用(D)で用いられるよう、その水素成分および酸素成分に分離され得る。たとえば、酸水素の多いガスの酸素成分は殺菌プロセスのオゾン生成器に供給されるか、または、エアレーション槽にポンプで送られ得る。酸水素の多いガスから酸素が分離されると、水素成分は、たとえば焼却のための燃焼、発電、または乾燥などの異なる二次使用に運ばれ得る。
【0052】
廃水処理における最も重要なユニットプロセスの1つは、好気性細菌による有機物の酸化からなる。酸素は、エアレーション槽に圧縮空気を注入するコンプレッサによってこれらの細菌に供給される。エアレーション槽に空気をポンプで送るための電力が入手可能なことが必要である。コンプレッサは動作するのに相当な電力を要する大きなモータを有し、一般に、水処理プラントの液体部分の総エネルギ所要量の20%から30%を占める。したがって、処理プロセスと一体化した電源を有することは著しい利益となる。ガス生成器500によって生成されるようなエネルギに富むガスが入手可能であれば、それを用いて現場で電気を生成することができるため、施設での電力コストの制御が可能となり、また、十分な電力供給が確実に得られるようになる。
【0053】
好ましい実施形態によって生成されたガスは酸水素の多いガスであって、副生成物としての最小限の温室効果ガスとともに燃焼され得る。このガスは大規模な浄化を必要とせず、生成されるガスの量は電力需要に一致するよう調整され得る。生成されたガスを利用する、処理プラント内での電力生成は、長期的に電気コストが低減する結果となり、かつ外部の市場状況とは独立に確実な電気の供給を提供する。
【0054】
酸水素ガスの燃焼による主な生成物は、熱および水蒸気である。酸水素の多いガスが、乾燥、発電、または他の目的のために燃焼されると、熱燃焼排出物は凝縮プロセス518において凝縮されることができ、廃水処理施設内でさまざまな用途に使用できるよう520に保存され得る、高品質な水を回収することができる。しかしながら、飲用水を除いては、これらの用途の多くは飲用水品質を必要とするのではなく、二次流出体として入手可能である以上の高い品質を必要とする。これらの用途の例は、トイレおよび小便器のフラッシュ、ポリマー溶液および他の化学溶液を調整するための希釈水を含む。したがって、燃焼排出物からの凝縮水518は、それがなければ都市給水から購買してきたであろう、飲用水が要件ではない用途のための水に取って代わることができ、それにより運営コストを低減する。
【0055】
上述の実施形態の詳細について、本発明の基礎となる原理から逸脱することなく、多くの変形がなされ得ることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液処理システムにおける廃液の流体を処理するための方法であって、
狭い間隔をおかれた2つ以上の電極を前記廃液の流体に沈めるステップと、
酸水素の多いガスを生成するために前記電極のうち少なくとも1つにパルス化電気信号を与えるステップとを含み、前記酸水素の多いガスが廃液の流体に接触して前記廃液の流体が殺菌され、
前記廃液処理システムでの二次使用のために、前記酸水素の多いガスの少なくとも一部を運ぶステップを含む、方法。
【請求項2】
前記廃液の流体は水成分を含み、前記酸水素の多いガスは前記廃液の流体の水成分から生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記廃液の流体は水成分を含み、
前記方法は、前記廃液の流体から前記水成分の少なくとも一部を分離するステップをさらに含み、
前記酸水素の多いガスは、前記水成分の分離された一部から生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸水素の多いガスは、前記廃液の流体の外部の水源から生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸水素の多いガスは前記廃液の流体の水成分中に気泡を形成し、前記気泡は、前記廃液の流体中の固形物に付着し、前記固形物が除去される廃液の流体の表面に上昇する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
廃液の流体を処理するためのシステムであって、
狭い間隔をおかれた2つ以上の電極を有する酸水素の多いガスの生成器を備え、前記電極は、酸水素の多いガスを生成するために前記廃液の流体に沈められるように構成され、前記電極および酸水素の多いガスが前記廃液の流体に接触し酸化化合物を生成して前記廃液の流体が殺菌され、
前記電極のうち1つ以上にパルス化電気信号を与えるために、前記電極のうち前記1つ以上に動作可能に接続された電源を備える、システム。
【請求項7】
前記酸化化合物は少なくともヒドロキサイドラジカルを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記酸水素の多いガスの生成器に動作可能に接続された前記廃液の流体の外部の水源をさらに備える、請求項6に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−16129(P2011−16129A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176516(P2010−176516)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【分割の表示】特願2004−552315(P2004−552315)の分割
【原出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願人】(505183392)エクソジェン・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】XOGEN TECHNOLOGIES INC.
【Fターム(参考)】