説明

酸素が減少した弁金属酸化物相の形成方法

【課題】弁金属亜酸化物を提供すること。
【解決手段】第1の亜酸化物相と、場合によっては第2の亜酸化物相、および/または弁金属相、および/または少なくとも1つの第3の亜酸化物相とを有する弁金属亜酸化物がさまざまな量で存在することができる。本発明の弁金属亜酸化物を含むアノードとキャパシタも開示される。1種類以上の出発材料を個別に、または合わせて顆粒化すること、および/または最終生成物を顆粒化することを含む、弁金属亜酸化物を製造する方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年2月26日に出願された先の米国仮特許出願第60/450,536号の35 U.S.C.§119(e)に基づく恩恵を主張するものであり、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0002】
本発明は、電解キャパシタを含む多彩な用途で役立つ材料に関する。さらに詳細には、本発明は、酸素が減少した弁金属酸化物と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ニオブをベースとした電解キャパシタ材料は、低電圧大容量の分野においてコストと性能が優れているためにタンタル電解キャパシタやアルミニウム電解キャパシタに匹敵する潜在力があるということで、大きな注目を集めつつある。しかしこの材料のアノード処理特性とNb2O5/Nb界面特性には、信頼性の高いキャパシタを製造する上で大きな問題がある。
【0004】
エレクトロニクスと通信の分野においてデバイスを小型化する流れも、素子産業に大きな挑戦課題を突きつけている。体積効率が優れていて、信頼性が高く、使用温度範囲が広い固体電解キャパシタは、この挑戦に対する答えの一部である。合理的なコストの高性能キャパシタ基板材料がますます多く要求されるようになっていることに応えるため、代替材料を開発することがより魅力的になってきた。最近、研究者たちは、潜在的な候補としてのニオブ(Nb)を詳細に調べている。しかしこれまでのところ、多くの理由によって市場の大きな興味を引くには至っていない。最近の進歩により、ニオブをベースとした酸化物NbOが、電気化学プロセスを通じて高品質の誘電体層を持つために優れた物理的特性と電気特性を有するキャパシタのアノードになりうることが明らかにされた。さらに、NbOをベースとしたデバイスは一部が酸化されているという性質を持つためにはるかに熱暴走しにくく、その結果としてデバイスに電気的故障が起こったときに回路板が燃えるリスクが顕著に少なくなる。
【0005】
他のどの技術とも同じように、別の実施態様を発見する余地や、電解質キャパシタの分野における使用を含む多彩な用途を持つ材料を作る方法の変更例を提供する余地が、常に存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの特徴は、1つ以上の亜酸化物相及び任意に金属相を含む弁金属亜酸化物を提供することである。
【0007】
本発明の別の特徴は、より均一な弁金属亜酸化物相を形成できる弁金属亜酸化物、または酸素が減少した弁金属酸化物の形成方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の特徴と利点は、一部が以下に記述され、一部はその記述から明らかとなるであろうし、あるいは、本発明を実施することによって知ることができるであろう。本発明の目的と他の利点は、明細書の記述と添付の特許請求の範囲において特に指摘した要素とその組み合わせによって理解できるであろう。
【0009】
本明細書で具体的に記載されかつ広範に記載されているように、これらの利点ならびに他の利点を実現するため、そして本発明の目的によれば、本発明は、1つ以上の亜酸化物相を有する弁金属亜酸化物に関する。
【0010】
特に、本発明は、第1の亜酸化物相と、第2の亜酸化物相と、任意には弁金属相とを含む弁金属酸化物に関する。
【0011】
さらに加えて、本発明は、少なくとも75重量%の純度で第1の亜酸化物相を含む弁金属亜酸化物に関する。
【0012】
本発明はさらに、酸素が減少した弁金属酸化物の製造方法に関する。この方法は、a)弁金属酸化物材料を顆粒化または凝集化すること、b)弁金属材料を顆粒化または凝集化すること、c)a)とb)の材料を別々に、あるいは混合物として顆粒化または凝集化すること、および/またはd)酸素が減少した弁金属酸化物をその形成後に顆粒化することを含んでいる。顆粒化では、湿式顆粒化と乾式顆粒化が可能である。この方法は、次に、顆粒化した材料が弁金属酸化物および/または弁金属である場合には、その顆粒化した材料を熱処理して酸素が減少した弁金属酸化物を形成する操作を含むことができる。顆粒化した材料が、酸素が減少した弁金属酸化物である場合には、後(ポスト)熱処理を実施することができる。以下に詳細に説明するように、顆粒化前のステップ、ならびに酸素が減少した弁金属酸化物を形成するための熱処理の後のステップを利用することができる。
【0013】
本発明はさらに、酸素が減少した弁金属酸化物が例えばサイズが約30ミクロン〜約1000ミクロンである顆粒形態になっていて、任意に流動特性が優れているものに関する。
【0014】
上記した一般的な説明と以下の詳細な説明の両方とも単なる例示であり、特許請求の範囲に記載されている本発明をさらに説明することが目的であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】弁金属亜酸化物を形成するための初期の反応を示す概略図である。
【図2】H2の存在下でNbOに変換される割合(%)を、温度及び金属Nbの初期のモル数の関数として示した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
NbOをベースとした粉末は、Nb2O5の直接的な還元および/または金属Nbの酸化によって得られる。表面積の大きなNbO粉末を製造する方法は、下記の反応(1)に従って金属Nbの粉末をNb2O5の粉末と反応させ、得られた混合物を処理することを含んでいる。
3Nb + Nb2O5 → 5NbO (1)
【0017】
例えば酸素ゲッターである金属Nbの存在下でH2を用いたNb2O5の還元は、平衡及びモデルの計算を利用してすでに評価がなされている。熱力学的平衡の計算は、以下にそれぞれ反応(2)及び(3)として示すように、過剰量のH2を用いるとNb2O5を還元してNbO2にすることができ、それよりも過剰なH2を用いるとNbO2を還元してNbOにできることを示す。
Nb2O5 + H2 → 2NbO2 + H2O (2)
NbO2 + H2 → NbO + H2O (3)
【0018】
一実施態様では、金属Nbを添加すると平衡がNbO形成の方向にシフトする。なぜなら、下記の反応(4)及び(5)に示すように、Nbは副生成物H2Oを消費してH2を再生させるからである。
NbO2 + H2 → NbO + H2O (4)
Nb + H2O → NbO + H2 (5)
【0019】
Nb2O5と金属NbからNbOを形成する反応全体は、一般に自発的に起こり、発熱反応である。反応の第1段階を図1に簡単化して示す。
【0020】
一実施態様では、H2Oが消費されるにつれて、あるいは運び去られるにつれて、中間体であるNbO2がNbOに変換される。反応条件(温度、時間、Nb/Nb2O5の化学量論比、H2の部分圧)が不十分であると、例えばNbO2のような中間体相が存在する可能性がある。図2には、H2の存在下でNbOに変換される割合(%)を、温度と金属Nbの最初のモル数の関数として示してある。すべての実施例において、Nbの代わりに、あるいはNbと組み合わせ、ハイブリッド化したニオブ(またはハイブリッド化した弁金属、ハイブリッド化したゲッター材料)、例えばNbHを用いることができる。ハイブリッド化した金属を用いるか、あるいはプロセスの途中で金属をハイブリッド化することができる。金属のためのゲッター材料に関するあらゆる説明または特徴は、ハイブリッド化したゲッター材料にも同様に当てはまる。
【0021】
上記の説明はNbOに関するものであったが、それは単なる例示である。酸素が減少した他の弁金属酸化物を用いることができる。酸素が減少した弁金属酸化物の具体例とその製造方法、ならびにさまざまな用途は、米国特許第6,462,934号、第6,416,730号、第6,391,275号、第6,373,685号、第6,322,912号に詳細に記載されている。なお、これら特許文献のそれぞれ(及び、本特許出願において参照するあらゆる特許文献および刊行物)は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれており、本発明の一部をなすものとする。本明細書では、さまざまな生成物、方法、出発材料を変更して本発明の目的で用いることができる。
【0022】
本発明の一実施態様は、弁金属亜酸化物、または酸素が減少した弁金属酸化物に関する。この実施態様では、弁金属亜酸化物は、第1の亜酸化物相をある純度で含んでおり、さらに、第2の亜酸化物相、第3の亜酸化物相、弁金属相の任意の組み合わせを含むことができる。本実施態様の弁金属亜酸化物には、2以上、3以上、4以上の異なる亜酸化物相が存在できる。
【0023】
一例として、弁金属亜酸化物は、その純度が少なくとも75重量%である第1の亜酸化物相を含むことができる。この純度は、どのような弁金属亜酸化物を形成したいかによって多少変更することができる。弁金属亜酸化物は、第1の亜酸化物相の純度を少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、あるいは少なくとも95重量%とすることができる。第1の亜酸化物相の他の純度としては、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.9重量%、そして少なくとも99.95重量%あるいはそれ以上を包含することが可能である。
【0024】
上記したように、弁金属亜酸化物は、例えば第2の亜酸化物相のような他の亜酸化物相を含むことができる。第2の亜酸化物相の量は、第1の亜酸化物相の量を考慮して任意の残りの量にすることができる。例えば第2の亜酸化物相は、約0.01重量%以下〜約25重量%以上の量で存在することができる。これ以外の範囲としては、例えば、約0.1〜約10重量%、約0.1〜約5重量%、約0.1〜約1重量%が挙げられる。この第2の亜酸化物相に関しては、他の範囲の量や特定の量が存在することもできる。同様に、第2の亜酸化物相および第1の亜酸化物相とは異なる第3の亜酸化物相が存在することもできる。第1、第2、第3の亜酸化物相に加えて、さらに別の亜酸化物相が存在することもできる。第3の亜酸化物相に関しては、一般に、第2の亜酸化物相と同じかそれよりも少ない量で存在することができる。第2の亜酸化物相に関して説明した上記の量は、第3の亜酸化物相と、存在する可能性のある他のあらゆる相にも当てはまる。
【0025】
弁金属亜酸化物は、オプションとして、弁金属相を含むこともできる。この相は、弁金属亜酸化物ではなく、実質的に純粋な弁金属相である。この弁金属相は、任意の量で、例えば約0.01以下〜約25重量%以上の量で存在できる。これ以外の範囲としては、約0.1〜約10重量%、約0.1〜約5重量%、約0.1〜約1重量%が挙げられる。
【0026】
弁金属亜酸化物と弁金属相を含むさまざまな相が任意の形態で存在する。さまざまなこれらの相は、存在している場合には、粉末状態で検出することができ、たいていは粉末の焼結体または加圧体(プレス成形体)、例えばアノードのようなキャパシタの部品である。さまざまなこれらの相は、同じ凝集体または集合体の中に存在するか、さまざまな材料の焼結体または加圧体の中に存在することができる。さまざまなこれらの相は、弁金属亜酸化物全体に均一に分布すること、あるいは複数の特定の場所に存在することができる。例えば第1の亜酸化物相は、主として加圧体または焼結体の外側領域に存在するのに対し、第2の亜酸化物相は、主として加圧体または焼結体の中心に位置し、場合によっては存在している弁金属相は、加圧体または焼結体のコア領域に存在する。望む性質が何であるかに応じ、本発明では相の位置と均一性の組み合わせを自由に選ぶことができる。相分布の別の一例として、さまざまな凝集体、加圧体、焼結体は、それぞれが複数の相を含むことができる。これらの相は、単なるアナロジーを目的として“コーティング”の形態で存在することができる。したがって1つの相、例えば弁金属相または第1の亜酸化物相がコアのように作用し、そのとき他の相は、異なる相として複数の“層”の形態で、コアを取り囲む“コーティング”のようにしてそのコアを取り囲むことができる。
【0027】
本発明の目的のためには、弁金属亜酸化物として、部分的に還元された弁金属酸化物、または酸素が減少した弁金属酸化物も考えることができる。上記第1の相としては任意の亜酸化物相が可能であり、その具体例を以下に示す。第2の亜酸化物相は、存在している場合には、第1の相とは異なる亜酸化物相である。第3の亜酸化物相も、以下に例示する任意の亜酸化物であり、第2の亜酸化物相および第1の亜酸化物相とは異なっている。弁金属相は任意の弁金属であり、一般に、弁金属亜酸化物におけるのと同じタイプの弁金属である。その具体例も以下に示す。
【0028】
酸素が減少した弁金属酸化物は、出発材料である弁金属酸化物と比べて酸素の含有量が少ないあらゆる金属酸化物である。酸素が減少した典型的な弁金属酸化物としては、NbO、NbO0.7、NbO1.1、NbO2、TaO、AlO、Ta6O、Ta2O、Ta2O2.2、あるいはこれらの組み合わせを含み、これらの酸化物に他の酸化物が含まれている場合と含まれていない場合がある。例えばNbOとNbO2は純粋な相であるのに対し、NbO0.7やNbO1.1などの亜酸化物は純粋な複数の相が混合した結果であると考えることができる。一般に、還元された本発明の金属酸化物は、金属と酸素の分子比が約1:2.5未満である。この比は1:2であることが好ましく、1:1.1、1:1又は1:0.7であることがさらに好ましい。言い換えるならば、還元された金属酸化物は、一般式MxOyを持つことが好ましく、式中、Mは弁金属であり、xは2以下であり、yは2.5x未満である。より好ましいのは、xが1でyが2未満、例えば1.1、1.0、0.7などになっていることである。酸素が減少した弁金属酸化物は、さまざまなレベルの窒素、例えば約100ppm〜約30,000ppmのN2、またはそれ以外のドーパントも含むことができる。弁金属酸化物は任意の形状であることができる。例えば、粉末(例えば凝集していない粉末、凝集した粉末、顆粒状の粉末、ペレット)などが可能である。弁金属酸化物は、本出願に記載する任意の特性、例えば流動性、表面積などを持つことができる。
【0029】
一般に、酸素が減少した弁金属酸化物を製造する方法は、ゲッター材料、好ましくはタンタルおよび/またはニオブ、あるいは被還元金属酸化物によっては別のゲッター材料である、の存在においてかつ酸素原子が金属酸化物からゲッター材料に移動するのを可能にする雰囲気の中で、酸素が減少した弁金属酸化物を形成するのに十分な時間にわたってかつ十分な温度で弁金属酸化物を熱処理することを包含する。すでに指摘したように、ハイブリッド形態のゲッター材料を使用することができる。
【0030】
本発明の目的のためには、出発材料となる弁金属酸化物の具体例として、周期表の4、5、6族(IUPAC命名法)に属する金属であるアルミニウム、ビスマス、アンチモン、ならびにこれらの合金や組み合わせの少なくとも1つの酸化物が挙げられるが、それだけに限られるわけではない。弁金属酸化物は、タンタル、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、および/またはこれらの合金の酸化物であることが好ましい。最も好ましいのは、ニオブ酸化物、タンタル酸化物、またはその合金である。一般に、弁金属酸化物の合金は、その合金酸化物の中に存在している主たる金属として弁金属を含むであろう。出発材料となる弁金属酸化物の特別な具体例は、Nb2O5、Ta2O5及びAl2O3であるが、これだけに限られるわけではない。酸素が減少した弁金属酸化物としては、これらの出発酸化物の酸素が減少した生成物が可能である。
【0031】
金属酸化物としては、低級酸化物としての半導体や、大きな絶縁特性を持つ高級酸化物に変換されるために有用な誘電特性を持つ金属酸化物も可能である。
【0032】
本発明において、出発材料となる弁金属酸化物、ゲッター材料、最終生成物は、任意の形状またはサイズであることができる。弁金属酸化物、ゲッター材料、最終生成物は、粉末の形態、または複数粒子の形態にすることができる。使用できる粉末のタイプの具体例としては、フレーク状、または尖った形状、または小さな塊状、またはこれらの組み合わせやその変形が挙げられる。弁金属酸化物は、粉末の形態であることが好ましく、粉末であると、酸素が減少した弁金属酸化物をより効果的に導くことができる。そのような好ましい金属酸化物粉末の具体例としては、メッシュのサイズが約60/100〜約100/325の粉末と、約60/100〜約200/325の粉末が挙げられる。サイズの別の範囲は、約-40メッシュ〜約-325メッシュである。本発明の目的のためのゲッター材料は、出発材料となる特定の弁金属酸化物を還元できる任意の材料である。出発材料となる金属酸化物がタンタルやニオブの酸化物である場合には、ゲッター材料は、それぞれタンタル、ニオブであることが好ましい。より好ましいのは、ゲッター材料が、出発材料となる金属酸化物と同じタイプのベース金属になっていることである。タンタル・ゲッター材料またはニオブ・ゲッター材料は、金属タンタルまたは金属ニオブを含んでいて、弁金属酸化物に含まれる少なくとも一部の酸素の除去または減少が可能な任意の材料である。したがってタンタル・ゲッター材料またはニオブ・ゲッター材料としては、合金や、金属タンタルと他の成分の混合物を含む材料が可能である。タンタル・ゲッター材料またはニオブ・ゲッター材料では、それぞれ金属タンタルまたは金属ニオブが、すべてを占めていないにしても優勢になっていることが好ましい。金属の純度は重要ではないが、熱処理プロセスに他の不純物が入り込むのを避けるため、ゲッター材料を高純度の金属が構成することが好ましい。したがって金属ゲッター材料中の金属は純度が少なくとも約98%であり、さらに好ましくは少なくとも約99%である。さらに、不純物(酸素と水素以外)は、存在しないか、約100ppm未満の量しか存在しないことが好ましい。また、ゲッター材料としての金属は、大きな表面積および/または大きな空孔度を持つことができる。タンタル、ニオブ、あるいはそれ以外のゲッター材料は、キャパシタ・グレードの材料、例えば約30,000CV/g以上の容量を持つタンタルまたはニオブであることが好ましい。この容量は、約50,000CV/g以上であることがさらに好ましく、約75,000CV/g〜約100,000CV/g以上であることが最も好ましい。ゲッター材料は、使用後に除去すること、あるいは最終生成物の一部として残ることができる。ゲッター材料が、酸素が減少した金属酸化物とともに残る場合には、ゲッター材料は、出発材料となる金属酸化物と同じベース金属であり、しかも出発材料となる金属酸化物と同様の形状およびサイズであることが好ましい。さらに、純度が高く、表面積が大きく、空孔の割合が多いゲッター材料を使用することが好ましい。なぜならこのような材料だと、酸素が減少した金属酸化物と同じかもしくは類似した酸化物の状態が得られるからである。したがって本発明の方法により、酸素が減少した金属酸化物の収率を100%にすることができる。したがってゲッター材料は、ゲッター材料として作用するとともに、酸素が減少した金属酸化物の一部として残ることもできる。
【0033】
ゲッター材料は、任意の形状またはサイズであることができる。例えばゲッター材料は、還元する金属酸化物を含むトレイの形状であること、あるいは粒子または粉末のサイズであることができる。ゲッター材料は、金属酸化物を還元するのに最も効果的な表面積を持つためには、粉末または顆粒の形状であることが好ましい。したがってゲッター材料は、フレーク状、または尖った形状、または小さな塊状、またはこれらの組み合わせやその変形形状にすることができる。
【0034】
同様に、他のゲッター材料を単独で、あるいはタンタル・ゲッター材料またはニオブ・ゲッター材料、例えばマグネシウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタンなどと組み合わせて用いることができる。これらのタイプのゲッター材料は、他のゲッター材料および/または他の成分を再び含むことができる。本発明の目的のためには、ゲッター材料は、熱処理ステップの間を通じて安定であり、還元する出発材料である特定の弁金属酸化物を熱処理するのに用いる温度では揮発しない。また、他の材料がゲッター材料の一部を形成することもできる。
【0035】
一般に、熱処理する弁金属酸化物の少なくとも一部を還元するのに十分な量のゲッター材料(例えば酸素ゲッター材料)が存在する。さらに、ゲッター材料の量は、金属酸化物をどれだけ還元したいかによって異なる。金属酸化物に存在している酸素を実質的にすべて還元する場合には、ゲッター材料は、0.5:1〜1.5:1の重量比(ゲッター材料:金属酸化物の重量比)で存在する。
【0036】
被熱処理出発材料である金属酸化物は、金属、例えばニオブやタンタルの熱処理に一般に用いられる任意の熱処理装置または炉に入れることができる。ゲッター材料の存在下における金属酸化物の熱処理は、酸素が減少した金属酸化物を形成するのに十分な温度で十分な時間にわたって行なう。熱処理の温度と時間は、さまざまな因子、例えば弁金属酸化物の還元量、ゲッター材料の量、ゲッター材料のタイプ、出発材料である金属酸化物のタイプの影響を受ける。熱処理は、出発材料である弁金属酸化物の還元を開始させることができるが、還元する弁金属酸化物の融点よりは低い任意の温度で行なうことができる。一般に、出発材料である金属酸化物の熱処理は、約800℃以下〜約1900℃の温度で約5分間〜約100分間行なうことになろう。これ以外の温度としては、約800℃〜約950℃、例えば約850℃がある。熱処理時間は、約30分間〜約60分間であることが好ましい。本出願に関しては、当業者であれば、ルーチンのテスト法により、金属酸化物を適切に還元する、あるいは望むように還元するための熱処理時間と熱処理温度を容易に制御することができよう。
【0037】
熱処理は、酸素原子が金属酸化物からゲッター材料に移動するのを可能にする雰囲気の中で実施する。熱処理は、水素含有雰囲気、好ましくはまさしく水素そのものの中で行なうことが好ましい。その他のガス、例えば不活性ガスも、そのガスが水素と反応しないのであれば、水素とともに存在することができる。熱処理の間、水素雰囲気は約10トル〜約2000トルの圧力で存在していることが好ましい。この圧力は、約100トル〜約1000トルであることがより好ましく、約100トル〜約930トルであることが最も好ましい。H2と不活性ガス、例えばArの混合物を使用できる。また、弁金属酸化物のN2のレベルを制御するのに、H2をN2中で使用することができる。
【0038】
熱処理プロセスの間、熱処理プロセス全体を通じて熱処理温度を一定にすること、あるいは温度を変化させたり、ステップ状の温度にしたりすることができる。例えば水素を最初に1000℃で導入した後、30分かけて温度を1250℃まで上昇させ、次いで温度を1000℃に低下させ、H2ガスが除去されるまでその温度に維持する。H2またはそれ以外の雰囲気を除去した後、炉の温度を下げることができる。産業上のあらゆる要望に応えるため、このようなステップ状の温度の変形例も利用することができる。
【0039】
出発材料である弁金属酸化物は、揮発成分がすべて除去されるまで例えば1000℃で焼成することによって製造できる。酸化物は、スクリーニングによって分類することができる。酸化物をあらかじめ熱処理することにより、酸化物粒子に制御された空孔度をもたらすことができる。
【0040】
本発明の還元された金属酸化物は、多孔性表面を持つことができ、そしてスポンジ状構造を有することができる。ここで、多数を占める粒子は約1ミクロン以下のサイズである。還元された本発明の金属酸化物は、大きな比表面積と、空孔度が約50%の多孔性構造を持つことができる。さらに、還元された本発明の金属酸化物は、比表面積(BET)が約0.5〜約10.0m2/gまたはそれ以上、例えば約0.5〜約2.0m2/g、または約1.0〜約1.5m2/gという好ましい値であることを特徴とする。金属酸化物粉末の好ましい見かけの密度は、約2.0g/cc未満であり、1.5g/cc未満であることがより好ましく、約0.5〜約1.5g/ccであることがより好ましい。
【0041】
弁金属亜酸化物の複数の相に関するさまざまな実施態様は、例えば出発材料同士を混合する割合を制御することによって実現できる。上記の特許文献に示されているように、一般に、弁金属(または他のゲッター材料)と出発材料である弁金属酸化物を適切な割合で熱処理することにより、望む弁金属亜酸化物、または酸素が減少した弁金属酸化物を実現する。本出願全体を通じ、弁金属のことをゲッター材料と呼ぶことがある。上記の特許文献に記載されているように、弁金属の代わりに適切な任意のゲッター材料を使用できることに注意されたい。ゲッター材料が弁金属であること、そしてその弁金属は、還元される出発材料の弁金属酸化物に存在しているのと同じ弁金属であることが好ましい。また、ゲッター材料と出発材料の弁金属酸化物は最終生成物を含んでいることが好ましい。言い換えるならば、ゲッター材料も、出発材料の弁金属酸化物と同様、酸素が減少した弁金属酸化物になる。これら出発成分は、熱処理の前に混合することが好ましい。非常に高い純度、例えば95%以上のオーダーの純度の単一相を望む場合には、一実施態様では、出発材料を混合し、高純度の相になるのを促進する非常に均一かつ密な成分混合物を形成する。逆に複数相を望む場合には、混合の程度を少なくし、出発材料が密に混合されないようにする。したがって混合の程度、例えば混合時間や混合に利用する方法により、本発明の弁金属亜酸化物の相純度を制御することができる。よく混合するため、湿式粉砕法または乾式粉砕法を利用して密な混合物を形成することができる。緻密度の低い混合物が望ましい場合には、最適混合条件からはずすことによって混合の程度を顕著に少なくすることができる。この場合には、手で成分を混合することや、非効率的な方法で成分を混合することさえできる。相の含有率を制御する別の方法は、熱処理時間を制御することである。熱処理時間を短くすると複数の相を導くことができる。
【0042】
本発明の別の一実施態様では、所望とする酸素が減少した弁金属酸化物の形成を目的として出発材料を熱処理する前に、出発材料の一方または両方、すなわち弁金属酸化物および/または弁金属(例えばゲッター材料)の顆粒化または凝集が可能である。顆粒化は、多数の方法で実現することができる。例えば湿式スクリーニング法、または湿った材料のドラム凝集法を利用できる。凝集法の別の具体例としては、傾斜皿凝集法があり、この方法は、パン・セットをある角度で回転させ、そこに新鮮な粉末を添加し、その上に霧状の水を、場合によっては結合剤とともにスプレーする操作を含んでいる。凝集体が球形の塊としてでき上がり、場合によってはパンから転がり出て回収装置に入る。別の具体例は乾燥ドラム凝集法であり、この方法は、粉末を用意し、それを、リフターを備えたかなり速く回転する大きなドラムに添加する操作を含んでいる。シャワーとして降らせる粒子をペレットと接触させ、両者を一緒に軽く叩く。別の具体例は圧縮機である。これは、粉末とリサイクル粉末を2つのローラーの間で圧縮してスラブにし、それを粉砕してスクリーン・セットに供給する装置である。
【0043】
上記したように、顆粒化は、乾燥状態または湿潤状態で行なうことができる。使用する液体としては、水、水をベースとした液体、アルコール、有機液体などが挙げられる。スクリーニングに関して説明すると、顆粒化は、粉末をスクリーン、例えば、開口部が所望の顆粒サイズ(例えば40メッシュ未満)よりも大きい20メッシュ、を通過させることによって実現される。大半の顆粒は、開口部や、わずかな微細物質(例えば50ミクロン未満)よりもサイズが小さい。この方法は、表面積が大きい(例えば1.5m2/gよりも大きい)粉末で特に良好である。別の方法では、湿った粒子に回転運動をさせて球形の顆粒を形成する。顆粒の最終サイズを制御するには、粉末中の含水量、主要な粒子のサイズ、回転速度、媒体のサイズ、回転時間を利用することができる。典型的な含水量は全成分の50重量%未満であり、さらに好ましくは30重量%未満であり、滞在時間を1時間未満にしてサイズが50ミクロン(平均値)よりも大きな顆粒を形成することが好ましい。過度に大きかったり小さかったりする顆粒を最終生成物から除去するには、材料を分類するスクリーニング操作も利用することができる。大きな顆粒と小さな顆粒はリサイクルすることができ、供給材料として再び使用できる。上記したように、含水量は任意の量が可能である。含水量は、例えば凝集させるのに使用する全材料の約5〜約40重量%が可能であるが、約10〜約30重量%であることがより好ましい。回転(タンブリング)運動を使用する場合の顆粒化時の回転速度は、タンブラーのサイズに応じた任意の回転速度であることができる。例えば実験室用の小さなタンブラーでは、回転速度は約30〜約60rpmである。この回転速度は、約40〜約50rpmであることがより好ましい。顆粒化する材料の量は任意であるが、もちろん、顆粒の形成に用いる装置のサイズに依存する。顆粒化の際には、金属酸化物を形成するのと同じ金属でできた媒体ボールなどの媒体(例えば1/16"〜1/2")も用いることができる。媒体は任意の量が存在できる。媒体は、例えば約1%〜約20容積%、あるいは約5〜約10容積%存在する。湿式顆粒化法を使用する場合には、任意の速度で、例えばゆっくりと連続的に、液体を添加することや、所望サイズの顆粒が得られるまで液体をスプレーすることができる。顆粒化後、液体を使用するのであれば、粉末を任意の乾燥法、例えば真空炉または対流式炉での比較的低温での乾燥、を利用して乾燥させることができる。例えば約85℃〜約100℃で約15分間〜約60分間またはそれ以上の時間にわたって乾燥させることができる。次に、スクリーニングによって顆粒を分類することができる。スクリーニング操作は、乾燥ステップの前または後に実施することができる。このスクリーニングによってあらゆるサイズを実現できるが、具体例は、-40メッシュ(-425ミクロン)または-50メッシュ(-300ミクロン)である。スクリーニングにより、望ましいサイズ分布を基準にして大きな粒子と小さな粒子を除去することができる。
【0044】
好ましいことに、本発明の顆粒化法により、優れた流動特性を有する顆粒が形成される。ここで、優れた流動特性とは、直径3mmのオリフィスを用いてASTM B 213で測定したとき、例えば約100〜約1000mg/秒、より好ましくは約300〜約700mg/秒の流量になることである。本発明の一実施態様は、酸素が減少した弁金属酸化物で、サイズが約5〜約1000ミクロン、より好ましくは約30〜約300ミクロンの顆粒を含むものに関する。一実施態様では、顆粒の10%(D10)が30ミクロン未満である。さらに、別の実施態様では、顆粒は、約100〜約1,000mg/秒またはそれ以上、より好ましくは約300〜約700mg/秒の流量になっている。酸素が減少した弁金属酸化物は、ニオブ酸化物であることが好ましく、ニオブと酸素の原子比が1:2.5未満であるニオブ酸化物がより好ましい。この原子比は、1:1.5未満であることがより好ましく、1:1.1未満であることがさらに好ましく、具体的には、NbO、NbO1.1、NbO0.7、またはこれらの組み合わせが挙げられる。顆粒化された本発明の生成物は、好ましいことに、バルク密度、流動性、圧粉体強さ、粉末の加圧性などに関して優れた物理的特性を示す。本発明の顆粒化法により、形成プロセスの間も物理的特性を保持しつつ、微粉末の所望の微細構造と電気的特性を維持することができる。
【0045】
出発成分のいずれかを顆粒化するとき、出発材料である弁金属と出発材料である弁金属酸化物の混合物が一緒に顆粒化されないのであれば、出発成分を混合することができる。上記のように、顆粒化を個々の出発材料に対して行なうこと、あるいは材料の1つを顆粒化した後に他の出発材料と混合すること、あるいは両方の材料を別々に顆粒化した後に混合することができる。要するに、本発明の目的のためには、顆粒化されていない出発材料と顆粒化された出発材料の任意の組み合わせを利用することができる。
【0046】
所望の顆粒化が終わったとき、出発材料がまだ混合されていないのであれば、上記のようにさまざまな粉砕法または混合法、例えばボール・ミリング、b-ブレンダー、振動ミリング、摩擦ミリングなどを利用してその材料を混合しなければならない。あるいは上記の顆粒化法を最終生成物に対して用いることもできる。言い換えるならば、酸素が減少した弁金属酸化物が形成されると、それに対して顆粒化を行なって上記のような所望の顆粒を形成する。さらに、オプションとして、複数回の顆粒化を行なうことができる。その場合には、例えば最終生成物を顆粒化し、それを出発材料として別々に、あるいはまとめて顆粒化する。
【0047】
酸素が減少した弁金属酸化物を形成する際には、上記特許文献に記載されている反応条件を利用できる。まとめると、出発材料である弁金属酸化物を、ゲッター材料の存在下にて、好ましくは、酸素原子が出発材料である弁金属酸化物からゲッター材料に移動するのを可能にする雰囲気の中で、十分な時間にわたって十分な温度で熱処理することによって弁金属亜酸化物、または酸素が減少した弁金属酸化物を形成する。好ましい一実施態様では、ゲッター材料は、弁金属酸化物に存在しているのと同じタイプの弁金属である。言い換えるならば、出発材料である弁金属酸化物が五酸化ニオブであるときには、ゲッター材料はニオブであることが好ましい。さらに、酸素原子が出発材料である弁金属酸化物からゲッター材料に移動するのを可能にするために存在していることが好ましい雰囲気は、水素雰囲気であるが、不活性雰囲気などの他の雰囲気も利用できる。水素雰囲気、好ましくは高圧水素雰囲気により、単一の第1の弁金属酸化物相が導かれ、第2または第3の亜酸化物相はほとんどあるいはまったく存在しなくなる。
【0048】
酸素が減少した弁金属酸化物を形成した後、任意であるが、それに対して1回以上の後(ポスト)熱処理を行なうことができる。この後熱処理は、顆粒を一体化させてネットワークにするだけでなく、多孔性マトリックスが焼結した顆粒や一体化した顆粒とともに存在することを促進するのに役立つ。後熱処理は、顆粒を一体化するのに十分だが、溶融させない任意の温度で行なうことができる。適切な温度の具体例は約600℃〜約1400℃であるが、この温度範囲に限定されることはない。適切な他の後熱処理温度は、約800℃〜約1200℃である。後熱処理の適切な時間は、約10分間〜約5時間、例えば約1時間〜約2時間である。後熱処理は、真空下で、あるいは不活性ガスの下で、例えば10-5トルの真空下で行なうことが好ましい。
【0049】
本発明では、製品、例えばキャパシタに含まれるタンタルその他の弁金属の量を減らすことができる。なぜなら、酸素が減少したタンタル酸化物(またはキャパシタ・グレードの他の金属酸化物)を含むアノードは、金属タンタルだけを含む同じアノードよりもタンタルの含有量が少ないからである。それでも、得られる特性、例えば容量や漏れ電流などは似ている。この利点があるため、キャパシタの製造業者にはコストの削減その他の利点がある。
【0050】
酸素が減少した本発明のさまざまな弁金属酸化物は、酸素が減少した本発明の弁金属酸化物を用いてキャパシタのアノードを形成することによって生まれる電気的特性によっても特徴づけられる。一般に、酸素が減少した本発明の弁金属酸化物の電気的特性をテストするためには、酸素が減少した金属酸化物の粉末をプレス成形してアノードにし、プレス成形したその粉末からなるアノードを適切な温度で焼結した後、そのアノードをアノード処理して電解キャパシタのアノードにし、次いでそのアノードについて電気的特性をテストする。
【0051】
したがって、本発明の別の一実施態様は、酸素が減少した本発明の弁金属酸化物から形成したキャパシタのアノードに関する。アノードは、還元した酸化物の粉末から、金属アノードを作るのと同様の方法で作ることができる。すなわちアノードは、弁金属リード線を埋め込んだ多孔性ペレットをプレス成形した後、焼結とアノード処理を行なう方法で作られる。酸素が減少した本発明のいくつかの弁金属酸化物から作られるアノードは、容量が、約20,000CV/g以下〜約300,000CV/g以上であることができる。この容量は、約60,000〜150,000CV/gであることが好ましい。本発明によるキャパシタのアノードを形成するとき、所望の性質を持ったキャパシタのアノードを形成できる焼結温度を適用することができる。焼結温度は、酸素が減少した金属酸化物として何を使用するかに基づいて決まることになろう。酸素が減少した金属酸化物が、酸素が減少したニオブ酸化物である場合には、焼結温度は、約1200℃〜約1750℃であり、約1200℃〜約1500℃であることがより好ましく、約1300℃〜約1500℃であることが最も好ましい。酸素が減少した金属酸化物が、酸素が減少したタンタル酸化物である場合の焼結温度は、ニオブ酸化物と同じであることができる。
【0052】
本発明の弁金属酸化物から形成されるアノードは、約1ボルト〜約100ボルトで形成されることが好ましく、約6ボルト〜約70ボルトで形成されることがさらに好ましい。さらに、酸素が減少したニオブ酸化物を使用する場合には、形成時の電圧は約6〜約50ボルトであることが好ましく、約10〜約40ボルトであることがさらに好ましい。形成電圧をこれ以上またはこれ以下にすることもできる。還元された金属酸化物からなるアノードは、リード線その他のコネクタが付いたペレットを作製した後、本発明の粉末化した金属酸化物の場合と同様にしてH2雰囲気または他の適切な雰囲気の中に入れてゲッター材料の近傍で処理し、場合によってはその後に焼結またはアノード処理を行なうことによって作製することができる。この実施態様では、作られるアノード部材は、直接作製することができる。例えば、酸素が減少した金属酸化物とアノードを同時に形成する。リード線などのコネクタは、アノード処理する前の任意の時期に埋め込んだり取り付けたりすることができる。他の金属酸化物を用いるときの形成電圧は、ほぼ同じであると考えられるが、タンタル酸化物などの弁金属酸化物ではより高くすることさえできる。また、酸素が減少した本発明の金属酸化物から形成したアノードは、漏れ電流が約5.0nA/CVであることが好ましい。例えば本発明の一実施態様では、酸素が減少した本発明のいくつかのニオブ酸化物から作られるアノードは、漏れ電流が約5.0nA/CV〜約0.10nA/CVまたはそれ以下である。
【0053】
本発明は、表面に金属酸化物フィルムを有する、本発明によるキャパシタのアノードまたはそれ以外の部分にも関する。酸素が減少した弁金属酸化物が、酸素が減少したニオブ酸化物である場合には、フィルムは五酸化ニオブフィルムであることが好ましい。金属粉末をキャパシタのアノードにする方法は当業者に知られており、例えば米国特許第4,805,074号、第5,412,533号、第5,211,741号、第5,245,514号、ヨーロッパ特許出願第0 634 762 A1号、第0 634 761 A1号に記載されている。なお、これらすべては、その全体が参照の結果としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0054】
本発明によるキャパシタとそのアノードは、さまざまな最終用途、例えば自動車のエレクトロニクス部品、携帯電話、コンピュータ、例えばモニタ、マザー・ボードなど、民生用エレクトロニクス製品、例えばテレビやCRT、プリンタ/コピー機、電源、モデム、ノート型コンピュータ、ディスク・ドライブなどに使用できる。
【0055】
以下の実施例によって本発明がさらに明確となるであろう。なお、実施例は、本発明の単なる例示である。
【実施例】
【0056】
実施例1−NbとNb2O5の混合物
【0057】
最初の混合ステップ
Nb顆粒状材料:100g
Nb2O5:80g
3/16"Nb媒体:30容積%
混合時間=1時間
RPM=80
媒体を除去する。
【0058】
顆粒化ステップ
粉末(Nb+ Nb2O5):175g
3/16"Nb媒体:5容積%
水27.5g(約12%)
RPM=50
水を添加して1時間未満回転させる。
乾燥させる。
スクリーニングする。
顆粒化した粉末を回収する。
【0059】
実施例2−NbとNb2O5の混合物
【0060】
最初の混合ステップ
Nb顆粒状材料:25g
Nb2O5:18.75g
3/16"Nb媒体:30容積%
混合時間=1時間
RPM=85
媒体を除去する。
【0061】
顆粒化ステップ
粉末(Nb+ Nb2O5):45g
3/16"Nb媒体:5容積%
水12g(約21%)
RPM=50
水を添加して1時間未満回転させる。
乾燥させる。
スクリーニングする。
顆粒化した粉末を回収する。
【0062】
実施例3−Nb2O5の粉末
【0063】
顆粒化ステップのみ
Nb2O5:200g
3/16"Nb媒体:5容積%
水90g(約30%)
RPM=50
水を添加して1時間未満回転させる。
乾燥させる。
スクリーニングする。
顆粒化した粉末を回収する。
【0064】
混合の程度が、流量、空孔度、電気的性能、水素雰囲気中の反応性に及ぼす影響を調べるため、いくつかのニオブ出発材料と一定のNb2O5供給原料に対してさまざまな混合法を適用した。以下の表1には、これらの変数についての結果を示してある。表1に示されるように、所定の反応条件に対し、Nb相が安定な領域内で2つの混合レベル、高混合度と低混合度が実現された。表に示したように、高混合度だと電気相の純度が大きかった。
【0065】
【表1】

【0066】
試験条件は、Vfが30ボルトであったことを除き、米国特許第6,391,275号と同じである。表では、DとEは粗い顆粒Nbであり、BETは1.5m2/gである。BとCは細かい顆粒Nbであり、BETは2.6m2/gである。使用したNb2O5は、CBMM社からの光学グレードのものであり、BETは1.5m2/gであった(最後の実施例ではBETが2.0m2/gのものを使用した)。材料をH2(約900トル)の中で60分間にわたって850℃に加熱した。
【0067】
本発明の他の実施態様は、本明細書の考察と、本明細書に開示した本発明の実施とから当業者にとって明らかとなるであろう。本明細書と実施例は単なる例示であり、本発明の真の範囲と精神は、添付の特許請求の範囲とその等価物によって示されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも75重量%の純度で第1の亜酸化物相を含み、BET表面積が0.5〜10m2/gである弁金属亜酸化物粉末。
【請求項2】
第1の亜酸化物相の純度が少なくとも80重量%である、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項3】
第1の亜酸化物相の純度が少なくとも85%重量である、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項4】
第1の亜酸化物相の純度が少なくとも90%重量である、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項5】
第1の亜酸化物相の純度が少なくとも95%重量である、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項6】
第1の亜酸化物相の純度が少なくとも98%重量である、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項7】
第1の亜酸化物相の純度が少なくとも99%重量である、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項8】
第1の亜酸化物相の純度が少なくとも99.5%重量である、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項9】
第1の亜酸化物相の純度が少なくとも99.9%重量である、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項10】
第1の亜酸化物相の純度が少なくとも99.95%重量である、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項11】
弁金属相をさらに含む、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項12】
第2の亜酸化物相をさらに含む、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項13】
弁金属相と第2の亜酸化物相をさらに含む、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項14】
少なくとも1つの第3の亜酸化物相をさらに含む、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項15】
前記弁金属相が、弁金属亜酸化物の約0.01〜約25重量%の量で存在している、請求項11に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項16】
前記弁金属相が、弁金属亜酸化物の約0.01〜約10重量%の量で存在している、請求項11に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項17】
前記弁金属相が、弁金属亜酸化物の約0.01〜約5重量%の量で存在している、請求項11に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項18】
前記弁金属相が、弁金属亜酸化物の約0.01〜約1重量%の量で存在している、請求項11に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項19】
前記第2の亜酸化物相が、0.01〜約25重量%の量で存在している、請求項12に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項20】
前記第2の亜酸化物相が、0.01〜約10重量%の量で存在している、請求項12に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項21】
前記第2の亜酸化物相が、0.01〜約5重量%の量で存在している、請求項12に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項22】
前記弁金属相と前記第2の亜酸化物相が合計で、弁金属亜酸化物の約0.01〜約25重量%の量で存在している、請求項13に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項23】
弁金属酸化物を少なくとも部分的に還元するためのものであって、ゲッター材料の存在下において及び酸素原子がニオブ酸化物からゲッター材料に移動するのを可能にする雰囲気の中で、酸素が減少した弁金属酸化物を形成するのに十分な時間及び温度で弁金属酸化物を熱処理することを含む方法において、この方法が、a)出発材料である上記弁金属酸化物を顆粒化すること、b)上記ゲッター材料を顆粒化すること、c)a)とb)の材料を別々に、あるいは混合物として顆粒化すること、又はd)酸素が減少した上記弁金属酸化物をその形成後に顆粒化することをさらに含む、方法。
【請求項24】
出発材料である上記弁金属酸化物と上記ゲッター材料を混合した後、混合物として顆粒化する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記ゲッター材料が、弁金属、またはハイブリッド化した弁金属、またはその両方である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
出発材料である上記弁金属酸化物が五酸化ニオブを含み、上記ゲッター材料が金属ニオブまたはハイブリッド化したニオブを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
顆粒化が湿式スクリーニングを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
顆粒化が湿式顆粒化を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
顆粒化が乾式顆粒化を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
顆粒化により、-40メッシュのサイズの凝集体を形成する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記混合物をミリングによって形成する、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
ミリングがボール・ミリングである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
顆粒化が、湿潤状態の材料をタンブリングすることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
顆粒化により、サイズが5ミクロン〜約1,000ミクロンの顆粒を形成する、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記雰囲気が、水素雰囲気または不活性雰囲気である、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記水素雰囲気が、約10トル〜約2,000トルの圧力で存在している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記水素雰囲気が、約100トル〜約1,000トルの圧力で存在している、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
真空下または不活性ガス中で少なくとも1回の後熱処理を行なうことをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
後熱処理を約600℃〜約1400℃の温度で行なう、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
弁金属と酸素の原子比が1:2.5未満であり、サイズが約5ミクロン〜約1,000ミクロンの顆粒を含む弁金属酸化物。
【請求項41】
ASTM B213で測定した流量が約100〜約1,000mg/秒である、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項42】
前記流量が約300〜約700mg/秒である、請求項41に記載の弁金属酸化物。
【請求項43】
前記顆粒のサイズが約30〜約300ミクロンである、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項44】
ニオブと酸素の原子比が1:2.5未満のニオブ酸化物である、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項45】
ニオブと酸素の原子比が1:1.5未満のニオブ酸化物である、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項46】
前記原子比が1:1.1である、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項47】
前記原子比が1:0.7である、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項48】
前記原子比が1:0.5である、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項49】
前記弁金属の比表面積が約0.5〜約10m2/gである、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項50】
前記ニオブ酸化物がNbOを含む、請求項44に記載の弁金属酸化物。
【請求項51】
前記ニオブ酸化物が、NbO0.7、またはNbO1.1、またはこれらの組み合わせを含む、請求項44に記載の弁金属酸化物。
【請求項52】
窒素をさらに含む、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項53】
弁金属酸化物の形状が、小さな塊状、フレーク状、尖った形状、またはこれらの組み合わせである、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項54】
前記第1の亜酸化物相がNbOである、請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末。
【請求項55】
請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末を含むキャパシタ。
【請求項56】
請求項1に記載の弁金属亜酸化物粉末を含む、キャパシタ用アノード。
【請求項57】
請求項40に記載の弁金属亜酸化物を含むキャパシタ。
【請求項58】
請求項40に記載の弁金属亜酸化物を含む、キャパシタ用アノード。
【請求項59】
少なくとも75重量%の純度で第1の亜酸化物相を含む、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項60】
少なくとも90重量%の純度で第1の亜酸化物相を含む、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項61】
少なくとも99.95重量%の純度で第1の亜酸化物相を含む、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項62】
弁金属相を含む、請求項40に記載の弁金属酸化物。
【請求項63】
第2の亜酸化物相を含む、請求項40に記載の弁金属酸化物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−31065(P2012−31065A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−242008(P2011−242008)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【分割の表示】特願2006−503885(P2006−503885)の分割
【原出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】