説明

酸素スカベンジャー/インジケーター

本発明は、酸素によってより高度の酸化状態に転化させることができる金属もしくは金属化合物からの少なくとも1種の酸素収着剤物質を含有する酸素スカベンジャー/インジケーターに関する。酸素スカベンジャー/インジケーターはさらに、酸素収着剤のための錯化剤もしくは酸化還元指示薬を含有する。インジケーターの作用は、錯体の形成および/または酸化還元指示薬との相互作用によって引き起こされる酸素収着剤物質の物理的特性の変化によって果たされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素によってより高い酸化レベルに変えることができる金属もしくは金属化合物を含む少なくとも1種の酸素収着剤を含有する酸素スカベンジャー/インジケーターに関する。さらに、収着剤のための錯化剤もしくは酸化還元指示薬、および電解質も含まれる。インジケーターの作用は、錯形成および/または酸化還元指示薬との相互作用によって引き起こされる、酸素収着剤の物理的特性の変化によって果たされる。
【背景技術】
【0002】
スカベンジャーは、酸素を収着することができる物質である。ここで“収着”とは、公知のあらゆる収着可能性[例えば、吸着、吸収、化学吸着、および物理吸着]を含むものとする。最新技術に基づいて現在確立されているシステムは、主として、Oスカベンジャー基体および前記基体の起動メカニズムに従って適格なものにすることができる。これにより、下記のようなグループが区別されている。
【0003】
・無機Oスカベンジャー(例えば、鉄もしくは硫化物をベースとするシステム)
・低分子有機Oスカベンジャー(例えば、アスコルビン酸塩をベースとするシステム)
・高分子有機Oスカベンジャー(例えば、ポリオレフィンもしくはポリアミドをベースとするシステム)
従ってOスカベンジャーは、紫外線照射または水分によって起動される。このことは、紫外線照射または水(すなわち、空気中の水分)に曝露された後にだけOスカベンジャー機能が存在する、ということを意味している。
【0004】
インジケーターシステムは一般に、時間−温度インジケーター(TTI)システム、ガス/漏れインジケーターシステム、および鮮度インジケーターシステムに細分することができる。TTIは、物品の時間−温度履歴を一元化し、従って物品の貯蔵状態に関する直接的な証拠をもたらす。TTIの作用は、化学反応によって、または2種の着色剤の相互拡散によって果たされる。
【0005】
ガス−漏れインジケーターは、包装スペース中のO、CO、またはHOのガス濃度を検出する。従ってガス−漏れインジケーターは、物品の品質に関する直接的な証拠をもたらす。インジケーターの作用は、反応物(O、CO、またはHO)との化学反応によって引き起こされる。
【0006】
鮮度インジケーターは、微生物の代謝産物を検出し、従って物品の品質に関する直接的な証拠をもたらす。鮮度インジケーターの作用は、代謝産物の化学反応によって引き起こされる。
【0007】
これらインジケーターシステムの全てにおいて、インジケーターの作用は、目に見える色の変化によって再現されるのが一般的である。
【0008】
従って当業界においては、ガス漏れインジケーターシステムの数が減少しつつあることを除いて、多くのOスカベンジャーシステムが利用されている。
【0009】
スカベンジャー/インジケーター複合システムは、現在、当業界には知られていない。従来のケースでは、OスカベンジャーがOインジケーターとは無関係に作動する。すなわち、Oインジケーターは、特定のO濃度を超えたということを信号で知らせるだけである。
【発明の開示】
【0010】
したがって本発明の目的は、特定のO濃度を超えたこと、特定のO濃度タイムスパンを超えたこと、およびOスカベンジャーの特定の酸素吸収量を超えたことを、目視的に又は測定学的に信号で知らせることのできるOスカベンジャー/インジケーターシステムを提供することにある。
【0011】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する酸素スカベンジャー/インジケーターによって、および請求項26に記載の特徴を有する複合システムによって達成される。他の従属クレームにより、有利な進歩が明らかにされている。請求項36においては、本発明に従った使用が示されている。
【0012】
本発明によれば、金属もしくは金属化合物を含む少なくとも1種の酸素収着剤を含有する酸素スカベンジャー/インジケーターが提供される。金属もしくは金属化合物は、酸素(すなわち、環境中に見出される酸素)によってより高い酸化レベルに変えることができる。酸素スカベンジャー/インジケーターはさらに、酸化形での金属もしくは金属化合物に対する少なくとも1種の錯化剤および/または酸化還元指示薬を含有する。錯形成および/または酸化還元指示薬との相互作用により、酸素収着剤の少なくとも1つの物理的特性が変化する。酸素スカベンジャー/インジケーターは、酸化還元反応の電子移動を助長する電解質をさらなる成分として含有する。
【0013】
したがって酸素収着剤は、酸素に曝露されるとその物理的特性のうちの1つを変えることがある。関連した物理的特性に関しては、それらが目視的あるいは計測学的に評価可能な変化を示す限り、いかなる制約もない。
【0014】
物理的特性としては、例えば、磁性、導電性、および/または電磁吸収が挙げられる。
【0015】
第1の態様においては、酸素収着剤は、磁性物質または特異的に磁化された物質[例えば、酸素との接触によって非磁性もしくは低磁性化合物(例えばFe)に転化される元素状の鉄]ということになる。これにより、生起する透磁率や残留磁気の変化を、例えばセンサーによって検知することができる。残留磁気の検知に対しては磁気計を使用することができるが、透磁率の変化は、誘導率(inductivity)の測定によって検知することができる。
【0016】
他の好ましい実施態様においては、酸素収着剤が導電性物質(例えば元素状の鉄)であり、酸素に対する曝露によって、非導電性もしくは低導電性化合物(例えばFe)に転化される。したがって導電率の変化は、例えばセンサーによって検知することができる。電流のカップリングは、誘導性ルートもしくは容量性ルートによって果たされる。したがって誘導性カップリング時における検知は、渦電流測定技術によって行うのが好ましい。容量性カップリングの場合、検知はコンデンサーの原理(condenser principle)に従って行うのが好ましい。
【0017】
さらに他の好ましい実施態様においては、酸素収着剤の電磁吸収が変化する。酸素に曝露されると高酸化レベル化合物(Fe)に転化される酸素収着剤として、例えば元素状の鉄が使用される。従って酸素収着剤の電磁吸着が変化する。この変化は、例えばセンサーによって検知することができる。光度計もしくは赤外線測定機器を、紫外線/赤外線領域に対する検知器として使用するのが好ましい。酸素収着剤における、目視認知可能な色の変化が特に好ましい。
【0018】
水(すなわち、環境中に見出される空気中の水分)が、酸素との反応に対する引き金として作用するのが好ましい。空気中の水分によって電解質が液化し、その結果、酸化還元反応のための電子移動が可能になる。特定の相対空気中水分に達すると、システムが起動し、このとき起動のための相対水分は、電解質の選択によって決定することができる。塩化ナトリウムをOスカベンジャー/インジケーターシステムの起動のための電解質として使用する場合の典型的な値は≧75%水分である。
【0019】
本発明の酸素スカベンジャー/インジケーターは、酸化還元対、すなわち金属と錯化剤(これらが、Oスカベンジャー機能とOインジケーター機能とを結びつける)を含む物質をベースとしている。したがって、OスカベンジャーとOインジケーターは同じ速度論を有する。
【0020】
このことは、Oスカベンジャーの酸素吸収量とOインジケーターの色変化とが温度とは無関係である、というさらなる利点を本発明の複合システムが有することを示している。
【0021】
これとは対照的に、Oスカベンジャー機能のための物質およびOインジケーター機能のためのさらなる物質を含むシステムは、2通りの速度論を、したがって2つの異なった温度依存性を有する。このことは、Oスカベンジャーの残留容量とOインジケーターの色変化との相関性が温度依存性である、ということを意味している。
【0022】
少なくとも1種の酸素収着剤は、固体形態または分散的に溶解した形態(dispersely dissolved form)で存在するのが好ましい。
【0023】
酸素収着剤は、鉄、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、クロム、および錫を含む群から選択される金属であるのが好ましい。
【0024】
酸素収着剤のための酸化還元指示薬もしくは錯化剤に関して、酸素スカベンジャー/インジケーターという意味において色の変化を起こすことができる化合物は全て適切である。したがってこれらは、対応する金属もしくは金属化合物に対する酸化還元指示薬として作用する全ての化合物、あるいは金属もしくは金属化合物に対する錯化剤として使用することができる化合物である。2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、1,10−フェナントロリン塩酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、チオシアン酸カリウム、サリチル酸、サリチル酸メチル、スルホサリチル酸、アセチルサリチル酸、アセト酢酸エチル、リン酸、カテキン、ベンズカテキン、ヒドロキノン、レゾルシノール、没食子酸、およびピロガロールを含む群から選択される化合物を酸化還元指示薬もしくは錯化剤として使用するのが好ましい。
【0025】
酸化還元作用の電子移動を助長する化合物は全て、電解質として適している。アルカリ金属ハロゲン化物とアルカリ土類金属ハロゲン化物の群からの化合物を使用するのが好ましい。しかしながら、金属硫酸塩や非金属硫酸塩、および金属リン酸塩や非金属リン酸塩だけでなく、非金属ハロゲン化物(例えば塩化アンモニウム)も同様に使用することができる。
【0026】
これらの電解質は、液状形態で存在しても、あるいは固体形態で存在してもよい。
【0027】
さらなる好ましい態様によれば、酸素スカベンジャー/インジケーターは、ポリマー電解質および/またはゲル電解質を含有する。ポリマー電解質としては、特に、ポリマーと塩との組み合わせ[例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)とLiPFとの組み合わせ、ポリプロピレンオキシド(PPO)とLiCFFOとの組み合わせ、またはポリエチレンオキシドとLiClO(場合によってはTiO)との組み合わせ]を使用することができる。ゲル電解質としては、ポリエーテル、ポリカーボネート、およびLiBFを含むシステム;ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート(PC)、エレクトロクロミックポリマー、およびLiClOを含むシステム;ならびに、ポリ塩化ビニル(PVC)、ジオクチルアジペート(DOA)、およびLiN(SOCFを含むシステム;を使用するのが特に好ましい。
【0028】
酸素スカベンジャー/インジケーターの好ましい実施態様によれば、ゲル電解質はさらに、酸素収着剤のための活性剤を含有する。このような活性剤としては、クロム、銀、銅、または錫を含む群からの化合物が特に好ましい。
【0029】
本発明の目的は、一般には、本明細書に記載の全ての化合物によって達成されるけれども、幾つかの特に好ましい変形実施態様が存在する。
【0030】
第1の好ましい酸素スカベンジャー/インジケーターは、鉄を酸素収着剤として含む。この鉄が酸化還元指示薬と結びついて、Fe(0)からFe(II)に酸化されるか、あるいは錯化剤と結びついてFe(II)に酸化される。鉄が、環境中の酸素によってFe(II)に酸化され、そして次にこのFe(II)が錯化剤と結びついて着色錯体を形成し、こうした着色錯体の形成を観察者が色の変化として認知することができる。
【0031】
他のシステムは、鉄が酸素収着剤として使用されていて、Fe(II)からFe(III)への酸化に対する酸化還元指示薬は、Fe(III)への酸化に対する酸化還元指示薬または錯化剤として含有されている、という事実をベースにしている。このシステムでは、色の変化は、Fe(III)への酸化時に酸化還元指示薬が変色するということ、あるいは着色したFe(III)錯体が形成されるということで果たされる。
【0032】
さらに他の特に好ましい態様は、Fe(II)塩が酸素収着剤として使用されていて、このFe(II)塩が酸化還元指示薬と結びついてFe(II)からFe(III)へと酸化されるか、あるいは錯化剤と結びついてFe(III)に酸化される。この場合、色の変化は、Fe(III)への酸化時に酸化還元指示薬によって、あるいは着色したFe(III)錯体の形成によって果たされる。
【0033】
他の特に好ましい態様によれば、鉄が酸素収着剤として存在し、この酸素収着剤が1種の酸化還元指示薬と結びついてFe(0)からFe(II)に酸化され、そして1種の酸化還元指示薬と結びついてFe(II)からFe(III)に酸化される。それぞれ、Fe(II)への酸化およびFe(III)への酸化に対して1種の錯化剤と結びつく、という他の可能性も存在する。この場合、色の変化は本質的に、Fe(0)からFe(III)への酸化によって達成される。
【0034】
本発明の酸素スカベンジャー/インジケーターの好ましい実施態様は、60〜94.5重量%の少なくとも1種の酸素収着剤、5〜30重量%の少なくとも1種の酸化還元指示薬もしくは錯化剤、および0.5〜10重量%の少なくとも1種の電解質を含む。これらの数値は、酸素スカベンジャー/インジケーターの総重量を基準としている。
【0035】
組成に関して、本発明の酸素スカベンジャー/インジケーターの他の好ましい実施態様は、最大で15〜69.5重量%の少なくとも1種の酸素収着剤、最大で30〜75重量%の少なくとも1種の酸化還元指示薬もしくは錯化剤、および最大で0.5〜10重量%の少なくとも1種の電解質を含む。
【0036】
さらに他の好ましい実施態様は、最大で30〜70重量%の酸素収着剤、最大で10〜20重量%のFe(II)錯化剤、および最大で20〜40重量%のFe(III)錯化剤を含む酸素スカベンジャー/インジケーターに関する。
【0037】
本発明の酸素スカベンジャー/インジケーターは、酸素収着剤と、酸化還元指示薬もしくは錯化剤及び電解質との重量比を、酸素スカベンジャー/インジケーターが、酸素収着剤の残留容量を再現する明確な時点においてその物理的特性の少なくとも1つに変化を示す、というように調整することができる。変色点が、特に好ましい物理的特性として含まれる。
【0038】
本発明の他の態様によれば、酸素収着剤と、酸化還元指示薬もしくは錯化剤及び電解質との重量比が、酸素スカベンジャー/インジケーターが、特定の酸素濃度を超えたことを示す明確な時点においてその物理的特性の少なくとも1つの変化を示す、というように調整される。特に、酸素スカベンジャー/インジケーターの変色点が、こうした物理的特性として含まれる。
【0039】
さらに他の態様によれば、酸素収着剤と、酸化還元指示薬および/または錯化剤及び少なくとも1種の電解質との重量比が、酸素スカベンジャー/インジケーターが、特定の酸素濃度タイムスパンを超えたことを示す明確な時点においてその物理的特性に変化を示す、というように調整される。好ましい物理的特性としてはさらに、電磁吸収(すなわち収着剤の色の変化)がある。変色点によって、酸素収着剤の明確な残留容量が、目視により又は測定機器の助けにより信号で伝えられる。
【0040】
当然のことながら、上記した本発明の3つの態様はいずれも、互いに組み合わせることができる。
【0041】
さらに、酸素スカベンジャー/インジケーターの成分の少なくとも1種が封入形態にて含まれるのが好ましい。特に、酸素スカベンジャー/インジケーターが水を封入形態にて含む、という場合がある。こうしたタイプの水カプセルは、機械的応力によって破壊することができ、その結果、カプセル中に含有されている水が放出され、酸素スカベンジャー/インジケーターのためのキャリヤーとして作用する。
【0042】
本発明の酸素スカベンジャー/インジケーターは、基本的には2種の態様(すなわち、目に見えない態様と目に見える態様)にて存在することができる。目に見える態様は、目視による認知と評価を可能にし、一般には定性的な評価に対して適している。目に見えない態様は、前述したように、対応する測定機器を使用して評価することができる他の物理的特性の変化をベースにしており、したがって定量的な結果をもたらすことができる。特に、物品(食料品)の包装者およびに売り手の場合、包装中の上部空間空気がいかに挙動するかについての情報が重要であることが多い。さらに、Oスカベンジャーを組み込んだアクティブ包装(active packaging)の技術が確立されたことから、包装におけるスカベンジャーの残留消費容量(residual consumption capacity)(例えば、包装時における)に関する情報が最も重要な情報である。これらの要件は、開示のインジケーターシステムを使用することで充分に達成することができる。
【0043】
本発明によれば、少なくとも1つのキャリヤー層と少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターとを含む複合システムが提供される。
【0044】
少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターが、少なくとも1つのキャリヤー層と少なくとも1つのさらなる層との間にサンドイッチの態様にて取り囲まれているのが好ましい。少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターは、層間の箇所に、例えば固体形態、分散形態、または溶解形態にて、配置することができる。同様に、少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターを、層間に、固体形態、分散形態、または溶解形態にて平面態様で(例えば、フィルムの形態で)配置することも可能である。酸素スカベンジャー/インジケーターの点様配置(point−wise arrangement)に関して、酸素スカベンジャー/インジケーターを、酸素スカベンジャーが空間的に互いに隔離した状態で配置することも可能である。空間的に互いに隔離されたこのタイプのシステムの数は限定されない。
【0045】
少なくとも1つのさらなる層を、発泡させること、および/または、延伸することによって変性することができる。したがって、引き続き複合システムの酸素透過性に改良を加えることができる。
【0046】
少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターをポリマー層(例えば、ポリエチレンを含む層)中に埋め込むことができる。同様に、少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターを、接着剤裏地層、ペイント層、または印刷インキ層中に埋め込むこともできる。
【0047】
本発明の複合システムは、あらゆる包装物品(特に食料品)用の包装フィルムとして、そしてさらに、商用電気器具内の単一フィルムとして特に適している。
【0048】
本出願の技術分野は、食品産業、医薬品と医療器具、電子産業、および化学工業だけでなく、栽培分野(cultural field)および軍事分野に関する。
【0049】
以下に、図面と実施例を参照しつつ、本発明の主題の種々の実施態様を説明するが、本発明の主題がこれらの実施態様によって限定されることはない。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
酸素を消費/指示する粉末混合物(Fe+種々の塩)
スカベンジャーと種々の添加剤に対する、添加量比の依存性を、表を参照しつつ説明する。ここに記載のシステムは、酸素収着剤として鉄をベースにしている。
【0051】
塩化ナトリウム(鉄の量に対して1.5重量%)および種々の添加剤(鉄の量に対してそれぞれ3重量%)と鉄との粉末混合物に関する試験を表1に示す。添加剤と、酸素吸収量が215cm/gであるときの変色の程度との相互作用が示されている。
【0052】
【表1】

【0053】
表2には、1.5重量%(鉄の量に対して)の塩化ナトリウムおよび3重量%(鉄の量に対して)のFeSOと鉄との粉末混合物を示す。変色の程度が酸素吸収量に依存している(容量300cm/g)。
【0054】
【表2】

【0055】
表3には、1.5重量%(鉄の量に対して)の塩化ナトリウムおよび3重量%(鉄の量に対して)のCaOと鉄との粉末混合物を示す。変色の程度が酸素吸収量に依存している(容量は高々300cm/g)。
【0056】
【表3】

【0057】
表4には、種々の濃度(鉄の量に対して)を有する塩化ナトリウムと鉄とのポリエチレン押出物を示す。この表は、塩化ナトリウムの濃度と、酸素吸収量が20cm/gであるときの変色の程度との相互作用を示している。
【0058】
【表4】

【0059】
(実施例2)
酸素を消費/指示する粉末混合物(Fe+NaCl+錯化剤)
さらに、酸素消費特性または酸素指示特性を有する粉末混合物について試験を行った。これら粉末混合物の組成は、表5から推定することができる。
【0060】
【表5】

【0061】
図1には、粉末混合物(没食子酸+Fe、没食子酸+Fe+NaCl、およびサリチル酸+Fe+NHCl+NaOH)の酸素吸収量と色の変化(白色から紫に)が示されている。
【0062】
それぞれの混合物に対し、錯化剤と添加剤が異なっているので、酸素吸収の速度論と最大酸素吸収量が影響を受ける。さらに、酸素吸収量の関数としての色の変化は、その結果として調整することができる。適切な粉末混合物によって、酸素吸収速度論、最大酸素吸収量、および特定の酸素吸収量のときの色変化を調整することができる。
【0063】
(実施例3)
Fe(II)塩とFe(III)錯化剤との粉末混合物のOインジケーター特性の試験
鉄(II)塩と鉄(III)塩を含む粉末混合物(表6に記載)を、相対湿度100%、酸素濃度21%、および温度23℃にて保存すると、幾らかの時間が経過した後に、粉末の多くに色の変化が起こる。これは、鉄(II)イオンが、空気中の酸素と水分によって鉄(III)イオンに酸化され、この鉄(III)イオンが、鉄(III)錯化剤と結びついて着色錯体を形成するからである。鉄塩と錯化剤の種類に応じて、色と誘導時間(すなわち、色が変わるまでの継続時間)が異なる(表6を参照)。
【0064】
【表6】

【0065】
表6においては、試験混合物の色が変わるまでの継続時間が、小さな色つきボックスの数によって示されている。時間スケールは、以下のように定めた:1h 3h 9h 18h > 18h
従って、色つきボックス3つは、3〜9時間以内での色の変化に対応している。各粉末混合物に対して示されている“カラー1”は、混合物の最初の色に対応している。“カラー2”はそれぞれ、Fe(III)錯体が形成された後の混合物の色である。
【0066】
表6に記載の結果から、色と誘導時間が、Fe(II)塩とFe(III)錯化剤の関数として大きく変わるということがわかる。Fe(III)錯化剤の種類に応じて、Fe(III)錯体は、実際には特徴的な色を示すが、色調は、使用される鉄塩のカチオンの種類に依存する。没食子酸は、酸化鉄(II)塩と結びついて淡青色〜黒色の錯体を形成し、スルホサリチル酸とサリチル酸は、比較的淡いピンク色〜薄紫色の錯体を形成し、チオシアン酸カリウムは、非常に速やかに暗赤色の錯体を形成し、ヘキサシアノ鉄酸カリウムは、青緑色の種々の色合いを有する錯体を形成する。
【0067】
シュウ酸鉄(II)は極めて反応性が低く、一週間後でも、色の変化は起こらない。グルコン酸鉄(II)との混合物、およびアスコルビン酸鉄(II)との混合物は、これらの塩自体が既に茶色がかった外観を有するので、色の変化はほんのわずかである。他の混合物は、それぞれFe(II)塩およびFe(III)錯化剤との組み合わせに応じて、1時間以下〜18時間以上の誘導時間を有する。
【0068】
(実施例4)
酸素を消費/指示する包装材料
スカベンジャー/インジケーターの変色点は、添加剤とスカベンジャーとの量比によって、そしてさらに、インジケーターとスカベンジャーとの量比によって調整することができる。表7においては、こうした依存性が、没食子酸を種々のNaCl濃度に対するインジケーターとして含むFeスカベンジャーに対する一例として示されている。このシステムは、アクリレートをベースとする接着剤裏地層システム(KK)中に配置され、このようにして配置されたシステムを使用して、多層包装PET/SiO/KK/PAを作製した。
【0069】
アクリレートをベースとする接着剤システムは、10重量%の鉄、5重量%の没食子酸、および種々の濃度のNaClを含有する。色の変化と酸素吸収量との間の相互作用を表7から推定することができる。
【0070】
【表7】

【0071】
図2は、鉄、没食子酸、および種々の濃度を有する塩化ナトリウムをベースとするOスカベンジャー/インジケーターの、時間に対する酸素吸収量を示している。このシステムは、PET/SiO/KK/PAを含む多層包装の接着剤裏地層(KK)中に組み込まれている。
【0072】
スカベンジャー/インジケーターシステムの残留容量の検知は、電気抵抗をOスカベンジャーの酸素吸収量の関数として検知することで可能となる。図3は、鉄をベースとする酸素消耗PEフィルムの電気抵抗が、消耗酸素量[すなわち消耗容量(exhausted capacity)]に依存することを示している。フィルムに対するバルク抵抗は、酸素スカベンジャーの消耗酸素量が増大するにつれて減少する。こうした相互関係の結果、消耗酸素量またはOスカベンジャーの残留容量を測定学的に検知することができる。
【0073】
スカベンジャー/インジケーターシステムの残留容量を測定するには、紫外線/可視光線領域の電磁吸収を、Oスカベンジャーシステムの酸素吸収量の関数として検知する、という他の方法もある。
【0074】
図4は、鉄をベースとする酸素消耗PEフィルムの紫外線/可視光線の吸収が、消耗酸素量(すなわち消耗容量)に依存することを示している。消耗酸素量が増大しているフィルム(すなわち、0から11cm/gへの消耗溶量)は、0.8〜1.2の約260nmにおいて局部的な吸収極大の強度増大を示している。こうした相互関係の結果、消耗酸素量またはOスカベンジャーの残留容量を測定学的に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の酸素スカベンジャー/インジケーターの、酸素吸収量と色の変化との関係を示している。
【図2】本発明による複合システム中に組み込まれた本発明の酸素スカベンジャー/インジケーターの、時間に対する酸素吸収量を示している。
【図3】本発明の酸素スカベンジャー/インジケーターの電気抵抗が、消耗酸素量に対して依存していること示している。
【図4】本発明の酸素スカベンジャー/インジケーターの紫外線/可視光線の吸収が、消耗酸素量に対して依存していること示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素によってより高い酸化レベルに変えることができる金属もしくは金属化合物を含む少なくとも1種の酸素収着剤;酸化形での金属もしくは金属化合物に対する少なくとも1種の錯化剤および/または酸化還元指示薬、ここで錯形成および/または酸化還元指示薬との相互作用によって酸素収着剤の少なくとも1つの物理的特性が変化する;そしてさらに少なくとも1種の電解質;を含有する酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項2】
酸素収着剤の磁性、導電性、および/または電磁吸収が収着時に変化することを特徴とする、請求項1に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項3】
電磁吸収が、マイクロ波領域、赤外線領域、可視光線領域、または紫外線領域に関することを特徴とする、請求項2に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項4】
物理的特性の変化が酸素収着剤における色の変化であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項5】
金属が、鉄、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、クロム、および錫を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項6】
酸化還元指示薬または錯化剤が、2,2’−ビピリジン、フェナントロリン、フェナントロリン塩酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、チオシアン酸カリウム、サリチル酸、サリチル酸メチル、スルホサリチル酸、アセチルサリチル酸、アセト酢酸エチル、リン酸、カテキン、ベンズカテキン、ヒドロキノン、レゾルシノール、没食子酸、およびピロガロールを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項7】
電解質が、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、金属硫酸塩、非金属硫酸塩、リン酸塩、および非金属ハロゲン化物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項8】
電解質が塩を含むポリマー電解質であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項9】
電解質がゲル電解質であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項10】
鉄が、酸素収着剤として、および酸化還元指示薬、すなわちFe(0)からFe(II)への酸化に対する酸化還元指示薬として、あるいはFe(II)に対する錯化剤として含有されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項11】
鉄が、酸素収着剤として、および酸化還元指示薬、すなわちFe(0)からFe(III)への酸化に対する酸化還元指示薬として、あるいはFe(III)に対する錯化剤として含有されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項12】
鉄(II)塩が、酸素収着剤として、および酸化還元指示薬、すなわちFe(II)からFe(III)への酸化に対する酸化還元指示薬として、あるいはFe(III)に対する錯化剤として含有されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項13】
鉄が、酸素収着剤として、および酸化還元指示薬、すなわちそれぞれ、Fe(0)からFe(II)への酸化に対する酸化還元指示薬とFe(II)からFe(III)への酸化に対する酸化還元指示薬として、あるいは錯化剤、すなわちそれぞれ、Fe(II)に対する錯化剤とFe(III)に対する錯化剤として含有されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項14】
酸素スカベンジャー/インジケーターが、最大で60〜94.5重量%の少なくとも1種の酸素収着剤、最大で5〜30重量%の少なくとも1種の酸化還元指示薬もしくは錯化剤、および最大で0.5〜10重量%の少なくとも1種の電解質を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項15】
酸素スカベンジャー/インジケーターが、最大で15〜69.5重量%の少なくとも1種の酸素収着剤、最大で30〜75重量%の少なくとも1種の酸化還元指示薬もしくは錯化剤、および最大で0.5〜10重量%の少なくとも1種の電解質を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項16】
酸素スカベンジャー/インジケーターが、最大で30〜70重量%の酸素収着剤、最大で10〜20重量%のFe(II)錯化剤、および最大で20〜40重量%のFe(III)錯化剤を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項17】
酸素収着剤のための活性剤が含有されていることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項18】
活性剤が、クロム、銀、金、銅、および錫を含む群から選択されることを特徴とする、請求項20に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項19】
酸素収着剤と、酸化還元指示薬および/または錯化剤及び電解質との重量比を、酸素スカベンジャー/インジケーターが、酸素収着剤の残留容量を再現する明確な時点においてその物理的特性の少なくとも1つに変化を示す、というように調整することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項20】
酸素収着剤と、酸化還元指示薬および/または錯化剤及び電解質との重量比を、酸素スカベンジャー/インジケーターが、酸素収着剤の残留容量を再現する変色点を有する、というように調整することを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項21】
酸素収着剤と、酸化還元指示薬および/または錯化剤及び電解質との重量比を、酸素スカベンジャー/インジケーターが、特定の酸素濃度を超えたことを示す明確な時点において少なくとも1つの物理的特性の変化を示す、というように調整することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項22】
酸素収着剤と、酸化還元指示薬および/または錯化剤及び電解質との重量比を、酸素スカベンジャー/インジケーターが、特定の酸素濃度を超えたことを示す変色点を有する、というように調整することを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項23】
酸素収着剤と、酸化還元指示薬および/または錯化剤及び電解質との重量比を、酸素スカベンジャー/インジケーターが、特定の酸素濃度タイムスパンを超えたことを示す明確な時点においてその物理的特性に変化を示す、というように調整することを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項24】
酸素収着剤と、酸化還元指示薬および/または錯化剤及び電解質との重量比を、酸素スカベンジャー/インジケーターが、特定の酸素濃度タイムスパンを超えたことを示す変色点を有する、というように調整することを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項25】
酸素スカベンジャー/インジケーターの成分の少なくとも1種が封入形態にて存在することを特徴とする、請求項1〜24のいずれか一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーター。
【請求項26】
少なくとも1つのキャリヤー層と、少なくとも1つの、請求項1〜25の少なくとも一項に記載の酸素スカベンジャー/インジケーターとを含む複合システム。
【請求項27】
少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターが、少なくとも1つのキャリヤー層と少なくとも1つのさらなる層との間にサンドイッチの態様にて取り囲まれていることを特徴とする、請求項26に記載の複合システム。
【請求項28】
少なくとも1つのキャリヤー層が酸素に対するバリヤー層に相当し、少なくとも1つのさらなる層が酸素に対して少なくともある程度は透過性であることを特徴とする、請求項27に記載の複合システム。
【請求項29】
少なくとも1つのさらなる層を、発泡させること、および/または、延伸することによって変性することを特徴とする、請求項27または28に記載の複合システム。
【請求項30】
少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターが、少なくとも1つのキャリヤー層と少なくとも1つのさらなる層との間の箇所に、固体形態、分散形態、または溶解形態にて配置されていることを特徴とする、請求項26〜29のいずれか一項に記載の複合システム。
【請求項31】
少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターが、少なくとも1つのキャリヤー層と少なくとも1つのさらなる層との間に、固体形態、分散形態、または溶解形態にて、平面態様で配置されていることを特徴とする、請求項26〜30のいずれか一項に記載の複合システム。
【請求項32】
少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターがポリマー層中に埋め込まれていることを特徴とする、請求項26〜31のいずれか一項に記載の複合システム。
【請求項33】
少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターが、接着剤裏地層中に、ペイント層中に、または印刷インキ層中に埋め込まれていることを特徴とする、請求項26〜32のいずれか一項に記載の複合システム。
【請求項34】
少なくとも1つの酸素スカベンジャー/インジケーターを含む層、および/または、少なくとも1つのさらなる層を、極性もしくは無極性添加剤を加えることによって変性することを特徴とする、請求項26〜33のいずれか一項に記載の複合システム。
【請求項35】
包装フィルムまたは部分的に施される単一フィルムの形態での、請求項26〜34のいずれか一項に記載の複合システム。
【請求項36】
請求項26〜35のいずれか一項に記載の複合システムの、食料品用の包装フィルムまたは部分的に施される単一フィルムとしての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−516836(P2009−516836A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541622(P2008−541622)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011075
【国際公開番号】WO2007/059900
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507241894)フラオンホファー−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・アンゲヴァンテン・フォルシュング・エー・ファオ (14)
【Fターム(参考)】