説明

酸素富化装置

【課題】周囲温度の変動があった場合でも、酸素富化空気の供給量や酸素濃度が変動しにくい酸素富化装置を提供する。
【解決手段】酸素富化膜11を有し酸素富化空気を生成する酸素富化手段1と、酸素富化空気を供給する供給口2と、酸素富化手段1に接続され、酸素富化手段1で生成された酸素富化空気を供給口2に導入する流路A及びその分岐流路である流路Bを形成し、流路Bには上記流路Aより流動抵抗を高める流動抵抗部31が設けられる配管3と、液体流れにより真空圧を発生させ、その真空圧を酸素富化手段1に作用させて酸素富化手段1で生成された酸素富化空気を配管3を通して供給口2に導入する真空圧発生手段4と、前記配管3の流路Aと分岐流路Bを切り換える切換手段5と、配管3内の圧力又は酸素富化手段1の周囲温度を検知する検知手段6を備え、前記検知手段6で検知された圧力又は温度に応じて前記切換手段5により配管3の流路を切り換えて供給口2から供給される酸素富化空気の流量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素富化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸素富化装置としては、酸素富化膜と、真空ポンプと、酸素富化膜表面の空気を換気する換気ファンとから構成されるものが知られており、真空ポンプで発生させた真空圧を酸素富化膜に作用させて酸素濃度の高い酸素富化空気を生成している。このような構成の酸素富化装置は、酸素富化膜の特性とそれに接続される真空ポンプの特性でつり合うポイント一点で酸素富化空気の流量が決定されるため、使用者が自由に流量を変えることができなかった。
【0003】
そこで、真空ポンプを複数台設けて一台の真空ポンプを経由して酸素富化空気を供給する流路と複数台の真空ポンプを直列に又は並列に経由して酸素富化空気を供給する流路を形成し、これらの流路が切り換え可能な酸素富化装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この酸素富化装置によれば、流路を切り換えることによって酸素富化膜の特性とそれに接続される真空ポンプの特性でつり合うポイントが変化して酸素富化空気の流量を変えることができる。
【特許文献1】特開2006−212245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、酸素富化膜は、周囲温度が高くなればその透過流量は増大し、酸素富化膜透過後の空気の酸素濃度は低下し、逆に周囲温度が低くなれば透過流量が低下し、酸素富化膜透過後の空気の酸素濃度は高くなるという特性を有している。そのため、周囲温度の変動によって、酸素富化空気の供給量や酸素濃度が変動するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、周囲温度の変動があった場合でも、酸素富化空気の供給量や酸素濃度が変動しにくい酸素富化装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0007】
酸素富化膜を有し酸素富化空気を生成する酸素富化手段と、酸素富化空気を供給する供給口と、酸素富化手段に接続され、酸素富化手段で生成された酸素富化空気を供給口に導入する流路及びその分岐流路を形成し、分岐流路には上記流路より流動抵抗を高める流動抵抗部が設けられる配管と、液体流れにより真空圧を発生させ、その真空圧を酸素富化手段に作用させて酸素富化手段で生成された酸素富化空気を配管を通して供給口に導入する真空圧発生手段と、前記配管の流路と分岐流路を切り換える切換手段と、配管内の圧力又は酸素富化手段の周囲温度を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知された圧力又は温度に応じて前記切換手段により配管の流路を切り換えて供給口から供給される酸素富化空気の流量を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配管内の圧力又は酸素富化手段の周囲温度に応じて配管において流動抵抗が異なる流路の切り換えが行われるため、酸素富化手段の周囲温度等の変化により酸素富化空気の流量が変化しても、供給口から供給される酸素富化空気を所望の流量に制御することができる。さらに真空ポンプが不要になりコスト安になるほか、真空ポンプの故障等を原因とする酸素富化空気の供給停止の心配がなくなる。また真空ポンプの設置空間を確保することが不要になり、装置としての小型化設計が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は前記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
図1は本発明の酸素富化装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0011】
本実施形態に係る酸素富化装置は、酸素富化空気を生成する酸素富化手段1と、酸素富化空気を供給する供給口2と、酸素富化手段1に接続される配管3と、液体流れにより真空圧を発生させる真空圧発生手段4と、前記配管3で形成される流路を切り換える切換手段5と、供給される酸素富化空気の流量を制御するための情報を検出する検知手段6を備えている。
【0012】
酸素富化手段1は窒素と酸素を分離して酸素を選択的に透過させる酸素富化膜11で構成されており、真空圧発生手段4で発生させた大気圧より低い真空圧をこの酸素富化膜11の酸素が透過する側(酸素富化膜11の下流側)に作用させることによって酸素富化膜11の上流側の空気から酸素が選択的に多く取り込まれて相対的に酸素濃度の高い空気(酸素富化空気)が生成されるようになっている。
【0013】
この酸素富化膜11は一般に次のような特性を有している。すなわち、真空圧発生手段4で発生させる真空圧を一定とした場合、酸素富化膜11の周囲温度が高くなればその透過流量は増大し、酸素富化膜11透過後の空気の酸素濃度は低下する。逆に周囲温度が低くなれば透過流量が低下し、酸素富化膜11透過後の空気の酸素濃度は高くなる。そして酸素富化膜11透過後の空気の酸素濃度と透過流量との積で決定される酸素富化空気の供給量は、一般的に周囲温度が高いほど増大する傾向にある。また真空圧発生手段4で発生させる真空圧が大きくなる(より負圧側になる)ほど透過流量が増大し、酸素富化膜11透過後の空気の酸素濃度が高くなり、酸素富化空気の供給量は一般的に増大する傾向にある。
【0014】
酸素を透過させている酸素富化膜11の近傍には透過しにくい窒素が富化された空気が滞留する。このため本実施形態では酸素富化膜11の表面を換気する換気ファン12が設けられている。
【0015】
酸素富化手段1に接続される配管3は、その下流側端部が酸素富化空気を供給する供給口2に接続されており、酸素富化手段1で生成された酸素富化空気を供給口2に導入する流路Aを形成している。この配管3は途中から二手に分岐されて下流部で合流する構造を有しており、前記流路Aを迂回する分岐流路(以下、流路Bとする)を形成している。またこの配管3には流路A又は流路Bを切り換える切換手段5としての電磁弁51が配設されており、酸素富化空気は前記流路A又は流路Bを経由して供給口2に導入されるようになっている。
【0016】
本実施形態では流路Bには流動抵抗部31が設けられている。例えば、流路Bを形成する配管3に絞り弁やオリフィス等を配設して流動抵抗部31を設け、流路Bを経由する酸素富化空気の流量を、流路Aを経由する酸素富化空気の流量よりも抑制するようにしている。
【0017】
図1に示すように、供給口2は真空圧発生手段4であるエジェクタ41が配設された通水管7に接続されている。エジェクタ41の上流側又は下流側には循環ポンプが配設されており、循環ポンプを駆動させることで通水管7に水流を発生させ、この水流がエジェクタ41を通過するに伴い真空圧を発生させている。本実施形態ではエジェクタ41で発生した真空圧を酸素富化膜11に作用させて酸素富化膜11で生成された酸素富化空気を配管3を通して供給口2から水流に混入するようにしている。通水管7の水流は、循環ポンプに拠らずに、例えば水道管と連結して水道水による高圧水流とされていてもよい。
【0018】
このように本実施形態では、従来、酸素富化空気の供給に必要であった真空ポンプが不要になりコスト安になるほか、真空ポンプの故障等を原因とする酸素富化空気の供給停止の心配がなくなる。また真空ポンプの設置空間を確保することが不要になり、装置としての小型化設計が可能になる。
【0019】
検知手段6は、供給口2から通水管7の水流に供給される酸素富化空気の流量を制御するための情報を検出する手段であり、本実施形態では例えば図1に示すように、配管3の流路Aと流路Bの合流部の下流にダイヤフラム型の圧力センサ61を設けて配管内の圧力を検知するようにしている。
【0020】
本実施形態に係る酸素富化装置は、圧力センサ61によって検知された圧力情報に応じて配管3の流路を切換手段5である電磁弁51で切り換えて供給される酸素富化空気の流量を制御している。このような酸素富化空気の流量の制御は、例えば、配管3の電磁弁51及び圧力センサ61と電気的に接続されている制御部によって行われる。
【0021】
図2は本実施形態に係る酸素富化装置で供給される酸素富化空気の流量−真空圧特性を示す図である。横軸は配管内の真空圧であり右に向かうほど真空圧が大きくなり(より負圧側になり)、縦軸は供給される酸素富化空気の流量を示している。直線aが図1に示した流路Aを経由する酸素富化空気の流量−真空圧特性であり、直線bが流路Bを経由する酸素富化空気の流量−真空圧特性である。ここで直線bの傾きは、流路Bに設けられている流動抵抗部31により酸素富化空気の流量が抑制されているために直線aの傾きよりも小さくなっている。
【0022】
図2に示すように、流路Aを経由する酸素富化空気の流量は真空圧がPのときはF、PのときはFとなるが、真空圧がPより大きい場合にはFを超える流量となる。そこで供給される酸素富化空気の流量をF〜Fの範囲に制御する場合には、真空圧力がPになった時点で制御部によって電磁弁で流路Aから流路Bに切り換えることにより供給される酸素富化空気の流量を抑え、酸素富化空気中の酸素濃度の低下を抑えることができる。このときの流量はF〜Fの間のFとなる。流路Bを経由する酸素富化空気の流量は、真空圧がPのときにはFとなる。ここでPは考慮される最大の真空圧を超える真空圧であり、本実施形態では真空圧Pのときに目的とする酸素富化空気の流量の上限値(図2ではF)を超えないように、流路Bに設けられる流動抵抗部31をあらかじめ調整しておく。
【0023】
図3は本実施形態に係る酸素富化装置の動作を説明するためのフローチャートである。まず電磁弁で流路Aに切り換えておき、次いで循環ポンプの駆動により通水管に水流を発生させる。この水流がエジェクタを通過するに伴い真空圧を発生させ、通水管への酸素富化空気の供給が開始される。循環ポンプの駆動と同時に圧力センサによる配管内の真空圧の検知を開始する。このとき圧力センサで検知した真空圧が図2に示したPよりも大きければ電磁弁で流路Aから流路Bに切り換えを行い、検知した真空圧がPよりも小さい場合には流路の切り換えを行わずに酸素富化装置の運転を続ける。これによって通水管に供給される酸素富化空気の流量を所望の流量(F〜F)の範囲に制御すると共に、酸素富化空気中の酸素濃度を所望の範囲に制御することができる。通水管への酸素富化空気の供給を停止する場合には循環ポンプの駆動を停止し、再び酸素富化空気の供給を開始する場合には、循環ポンプを駆動させ上記の一連の動作を行えばよい。
【0024】
図4は本発明の酸素富化装置の別の一実施形態を示す概略構成図である。なお、図1に示した部分と同一の部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0025】
本実施形態に係る酸素富化装置の検知手段が酸素富化手段の周囲温度を検知するものである点で、配管内の圧力を検知する図1の酸素富化装置とは異なっている。
【0026】
図4に示すように、本実施形態では酸素富化膜11の表面近傍に温度センサ62を設けて酸素富化膜11の周囲温度を検知し、温度センサ62によって検知された温度情報に応じて配管3の流路を電磁弁51で切り換えて供給される酸素富化空気の流量を制御している。このような酸素富化空気の流量の制御は、例えば、配管3の電磁弁51及び温度センサ62と電気的に接続されている制御部によって行われる。
【0027】
図5は本実施形態に係る酸素富化装置で供給される酸素富化空気の流量−温度特性を示す図である。横軸は酸素富化膜の周囲温度であり、縦軸は供給される酸素富化空気の流量を示している。直線cが図4に示した流路Aを経由する酸素富化空気の流量−温度特性であり、直線dが流路Bを経由する酸素富化空気の流量−温度特性である。ここで直線dの傾きは、流路Bに設けられている流動抵抗部31により酸素富化空気の流量が抑制されているために直線cの傾きよりも小さくなっている。
【0028】
図5に示すように、流路Aを経由する酸素富化空気の流量は周囲温度がTのときはF、TのときはFとなるが、周囲温度がTより高い場合にはFを超える流量となる。そこで供給される酸素富化空気の流量をF〜Fの範囲に制御する場合には、周囲温度がTになった時点で制御部によって電磁弁で流路Aから流路Bに切り換えることにより供給される酸素富化空気の流量を抑え、酸素富化空気中の酸素濃度の低下を抑えることができる。このときの流量はF〜Fの間のFとなる。流路Bを経由する酸素富化空気の流量は、周囲温度がTのときにはFとなる。ここでTは考慮される周囲温度の最高値を超える温度であり、本実施形態では周囲温度Tのときに目的とする酸素富化空気の流量の上限値(図5ではF)を超えないように、流路Bに設けられる流動抵抗部31をあらかじめ調整しておく。
【0029】
図6は本実施形態に係る酸素富化装置の動作を説明するためのフローチャートである。まず電磁弁で流路Aに切り換えておき、次いで循環ポンプの駆動により通水管に水流を発生させる。この水流がエジェクタを通過するに伴い真空圧を発生させ、通水管への酸素富化空気の供給が開始される。循環ポンプの駆動と同時に温度センサによる酸素富化膜の周囲温度の検知を開始する。このとき温度センサで検知した周囲温度(温度値)が図5に示したTよりも高ければ電磁弁で流路Aから流路Bに切り換えを行い、検知した周囲温度がTよりも低い場合には流路の切り換えを行わずに酸素富化装置の運転を続ける。これによって酸素富化手段の周囲温度等の変化により酸素富化空気の流量が変化しても、通水管に供給される酸素富化空気の流量を所望の流量(F〜F)の範囲に制御すると共に、酸素富化空気中の酸素濃度を所望の範囲に制御することができる。通水管への酸素富化空気の供給を停止する場合には循環ポンプの駆動を停止し、再び酸素富化空気の供給を開始する場合には、循環ポンプを駆動させ上記の一連の動作を行えばよい。
【0030】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、上記実施形態では分岐流路が1つの場合を説明したが、さらに第2の分岐流路、第3の分岐流路等、複数の分岐流路を形成するようにしてもよい。この場合には流動抵抗が異なる流動抵抗部をそれぞれに設けるようにして検知手段で検知された圧力又は温度に応じて切換手段によって流路を切り換えて酸素富化空気の流量を所望の流量に制御することが考慮される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の酸素富化装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の実施形態に係る酸素富化装置で供給される酸素富化空気の流量−真空圧特性を示す図である。
【図3】図1の実施形態に係る酸素富化装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の酸素富化装置の別の一実施形態を示す概略構成図である。
【図5】図4の実施形態に係る酸素富化装置で供給される酸素富化空気の流量−温度特性を示す図である。
【図6】図4の実施形態に係る酸素富化装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 酸素富化手段
11 酸素富化膜
12 換気ファン
2 供給口
3 配管
31 流動抵抗部
4 真空圧発生手段
41 エジェクタ
5 切換手段
51 電磁弁
6 検知手段
61 圧力センサ
62 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素富化膜を有し酸素富化空気を生成する酸素富化手段と、酸素富化空気を供給する供給口と、酸素富化手段に接続され、酸素富化手段で生成された酸素富化空気を供給口に導入する流路及びその分岐流路を形成し、分岐流路には上記流路より流動抵抗を高める流動抵抗部が設けられる配管と、液体流れにより真空圧を発生させ、その真空圧を酸素富化手段に作用させて酸素富化手段で生成された酸素富化空気を配管を通して供給口に導入する真空圧発生手段と、前記配管の流路と分岐流路を切り換える切換手段と、配管内の圧力又は酸素富化手段の周囲温度を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知された圧力又は温度に応じて前記切換手段により配管の流路を切り換えて供給口から供給される酸素富化空気の流量を制御することを特徴とする酸素富化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−51841(P2010−51841A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216392(P2008−216392)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】