説明

酸素濃縮装置

【課題】エアーフィルタに付着した塵埃を自動的に除去することができる酸素濃縮装置を提供する。
【解決手段】空気取入口に、エアーフィルタ601の表面に付着した塵埃を吸引除去するための吸引ノズル602を備え、塵埃の分離回収手段604を介して空気供給手段103に接続され、酸素濃縮装置の停止シーケンス時に、空気供給手段の吸引能力を利用してエアーフィルタに付着した塵埃を吸引除去することで、低コストにエアーフィルタの自動清掃機能を付与した酸素濃縮装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着材を用いた圧力変動吸着型の酸素濃縮装置に関するものであり、特に慢性呼吸器疾患患者などに対して行われる酸素吸入療法に使用する医療用酸素濃縮装置に関するものである。さらに詳細には、原料空気中の塵埃を除去するエアーフィルタで分離された塵埃を除去する自動清掃装置を搭載した酸素濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、喘息、肺気腫症、慢性気管支炎等の呼吸器系器官の疾患に苦しむ患者が増加する傾向にあるが、その治療法として最も効果的なもののひとつに酸素吸入療法がある。かかる酸素吸入療法とは、酸素ガスあるいは酸素富化空気を患者に吸入させるものである。その供給源として、酸素濃縮装置、液体酸素、酸素ガスボンベ等が知られているが、使用時の便利さや保守管理の容易さから、在宅酸素療法には酸素濃縮装置が主流で用いられている。
【0003】
酸素濃縮装置は、空気中に存在する約21%の酸素を濃縮して供給する装置であり、それには酸素を選択的に透過する膜を用いた膜式酸素濃縮装置と、窒素または酸素を優先的に吸着しうる吸着材を用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置があるが、得られる酸素濃度の点から圧力変動吸着型酸素濃縮装置が主流になっている。
【0004】
圧力変動吸着型酸素濃縮装置は、酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着材として5A型や13X型、Li−X型などのモレキュラーシーブゼオライトを充填した吸着筒に、コンプレッサで圧縮された空気を供給することにより加圧条件下で窒素を吸着させ、未吸着の酸素濃縮ガスを得る加圧・吸着工程と、前記吸着筒内の圧力を大気圧またはそれ以下に減じて、吸着材に吸着された窒素をパージすることで吸着材の再生を行う減圧・脱着(再生)工程を交互に繰り返し行うことで、高濃度酸素ガスを連続的に生成することができる。
【0005】
このような酸素濃縮装置では原料である空気を装置内に取り込むため、吸入口に除塵を目的としたエアーフィルタが設けられており、エアーフィルタは使用者によって取り外し可能な構造となっている。清浄な空気を原料として装置内に取り込むためには、使用者は定期的にエアーフィルタを取り外して、水洗いの実施や掃除機での清掃を実施する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−262949号公報
【特許文献2】特開2008−54805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エアーフィルタの清掃が不十分で、塵埃が大量に付着した状態で装置を使用すると、原料空気の供給量が不十分となり、使用者に供給される製品酸素ガスの酸素濃度が低下するという問題がある。また、エアーフィルタを通して酸素濃縮装置内に供給される原料空気は筐体内部を冷却する役割も担っているため、原料空気の供給低下はすなわち、筐体内部の冷却不足を引き起こし、筐体内部の高温化とそれに伴う性能の低下を引き起こすという問題もある。さらに、エアーフィルタの目詰まりによる原料空気の供給量の低下をコンプレッサの能力アップによって補償する制御がなされている場合には、装置の消費電力が増加するという問題もある。そのため、酸素濃縮装置を安定的に性能を保つためには、頻繁にエアーフィルタを清掃する必要があり、使用者には面倒な作業を強いていた。
【0008】
かかる問題の解決手段として、エンドレスのループ式エアーフィルタを備え、エアーフィルタを自動的に清掃する方法と、送風手段を備え、エアーフィルタから除塵した塵埃をその送風手段によって回収する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、ループ式のエアーフィルタでは、清掃頻度は減少させる事が可能ではあるが、やはり使用者に対してエアーフィルタの清掃を強いることに変わりはなく、フィルタ形状が複雑なため、さらに面倒な作業となってしまう。また、送風手段を新たに設ける必要があり、装置の小型化が困難で、コスト削減も困難である。
【0009】
また特開2008−54805号公報では、ブラシでエアーフィルタを清掃する方法が開示され、吸引手段によって塵埃を回収する方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら本方法でも吸引手段を新たに設けているため、装置の小型・軽量化を実現する事ができず、コストの低減も困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる問題の解決方法として、以下の発明を見出した。すなわち、本願発明は、酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着材を充填した少なくとも1つの吸着筒と、該吸着筒へ原料空気を供給する空気供給手段、外部から取り入れる原料空気中の塵埃を除去するエアーフィルタを筐体の空気取入口に備えた酸素濃縮装置において、該空気取入口に、該エアーフィルタの表面に付着した塵埃を吸引除去するための吸引ノズルを備え、塵埃の分離回収手段を介して該空気供給手段に接続され、該エアーフィルタの清掃指令信号に基づき、該空気供給手段の吸引力により塵埃を吸引除去することを特徴とする酸素濃縮装置を提供するものであり、特に該エアーフィルタにより塵埃を除去した後の原料空気の取入流路及びエアーフィルタ表面の塵埃を吸引除去する為の吸引流路を該空気供給手段の上流側に備え、該清掃指令信号に基づき該取入流路と該吸引流路を切り替える流路切替弁を備えることを特徴とする酸素濃縮装置を提供するものである。
【0011】
また本願発明は、かかる分離回収手段が、該空気供給手段の前段に設けられ、該吸引ノズルから吸引した塵埃を分離除去するサイクロン、或いは不織布フィルタであることを特徴とする酸素濃縮装置を提供するものである。
【0012】
また本願発明は、かかるエアーフィルタに沿って該吸引ノズルを掃引される駆動装置を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置を提供するものである。
【0013】
さらに本願発明は、該エアーフィルタの清掃指令信号が、該酸素濃縮装置の停止指令信号と共に自動的に発報されること、或いは酸素濃縮装置の積算運転時間をカウントする積算運転時間計を備え、予め決められた積算時間毎に、該エアーフィルタの清掃指令信号が自動的に発報されることを特徴とする酸素濃縮装置を提供するものである。
【0014】
また、該酸素濃縮装置の積算運転時間をカウントする積算運転時間計を備え、予め決められた積算時間毎に、該エアーフィルタを使用者が清掃するように促す表示装置および/または警報ブザーを備えたことを特徴とする酸素濃縮装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、酸素濃縮装置のエアーフィルタを自動で清掃する機能を付与した酸素濃縮装置を提供できる。また本発明の酸素濃縮装置では、低コストで使用者によるフィルタ清掃の負担を軽減することができ、フィルタの清掃不足による装置の性能低下の予防と長寿命化を図る事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の酸素濃縮装置の実施態様例である圧力変動吸着型酸素濃縮装置の模式図。
【図2】本発明の酸素濃縮装置の実施態様例であるエアーフィルタ部の詳細図。
【図3】本発明の酸素濃縮装置の実施態様例である塵埃吸引システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の酸素濃縮装置の実施態様例を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である圧力変動吸着型酸素濃縮装置を例示した概略装置構成図である。
【0018】
この図1において、1は酸素濃縮装置、3は加湿された酸素富化空気を吸入する使用者(患者)を示す。圧力変動吸着型酸素濃縮装置1は、原料空気取り込み口に備えられたエアーフィルタ6を通り、細かな塵埃を取り除くHEPAフィルタ101、吸気消音器102、コンプレッサ103、流路切換弁104、吸着筒105、逆止弁107、製品タンク108、調圧弁109、流量設定手段110、パーティクルフィルタ111を備える。これにより外部から取り込んだ原料空気から酸素ガスを濃縮した酸素富化空気を製造することができる。また、酸素濃縮装置の筐体内には、生成された酸素富化空気を加湿するための加湿器201、前記流量設定手段110の設定値と、酸素濃度センサ301、流量センサ302の測定値を用いて、コンプレッサや流路切換弁を制御する制御手段401、コンプレッサの騒音を防音するためのコンプレッサボックス501、コンプレッサを冷却するための冷却ファン502が内蔵されている。
【0019】
まず外部から取り込まれる原料空気は、塵埃などの異物を取り除くための外部空気取り込みフィルタ101、吸気消音器102を備えた空気取り込み口から取り込まれる。このとき、通常の空気中には、約21%の酸素ガス、約77%の窒素ガス、0.8%のアルゴンガス、水蒸気ほかのガスが1.2%含まれている。かかる装置では、呼吸用ガスとして必要な酸素ガスのみを濃縮して取り出す。
【0020】
この酸素ガスの取り出しは、原料空気を酸素ガス分子よりも窒素ガス分子を選択的に吸着するゼオライトなどからなる吸着材が充填された吸着筒に対して、流路切換弁104によって対象とする吸着筒を順次切り換えながら、原料空気をコンプレッサ103により加圧して供給し、吸着筒内で原料空気中に含まれる約77%の窒素ガスを選択的に吸着除去する。
【0021】
かかる吸着筒としては、前記吸着材を充填した円筒状容器で形成され、通常、1筒式、2筒式の他に3筒以上の多筒式が用いられるが、連続的かつ効率的に原料空気から酸素富化空気を製造するためには、多筒式の吸着筒を使用することが好ましい。また、前記のコンプレッサとしては、揺動型空気圧縮機が用いられるほか、スクリュー式、ロータリー式、スクロール式などの回転型空気圧縮機が用いられる場合もある。また、このコンプレッサを駆動する電動機の電源は、交流であっても直流であってもよい。
前記吸着筒105で吸着されなかった酸素ガスを主成分とする酸素富化空気は、吸着筒へ逆流しないように設けられた逆止弁107を介して、製品タンク108に流入する。
【0022】
また、吸着筒内に充填された吸着材に吸着された窒素ガスは、新たに導入される原料空気から再度窒素ガスを吸着するために吸着材から脱着させる必要がある。このために、コンプレッサによって実現される加圧状態から、流路切換弁によって減圧状態(例えば大気圧状態又は負圧状態)に切り換え、吸着されていた窒素ガスを脱着させて吸着材を再生させる。この脱着工程において、その脱着効率を高めるため、吸着工程中の吸着筒の製品端側或いは製品タンクから酸素富化空気をパージガスとして逆流させるようにしてもよい。通常、窒素を脱着させるときには大きな気流音が発生するため、一般的には窒素排気消音器503が用いられる。
【0023】
原料空気から生成された酸素富化空気は、製品タンク108へ蓄えられる。この製品タンクに蓄えられた酸素富化空気は、例えば95%といった高濃度の酸素ガスを含んでおり、調圧弁109や流量設定手段110などによってその供給流量と圧力とが制御されながら、加湿器201へ供給され、加湿された酸素富化空気が患者に供給される。かかる加湿器には、水分透過膜を有する水分透過膜モジュールによって、外部空気から水分を取り込んで乾燥状態の酸素富化空気へ供給する無給水式加湿器や、水を用いたバブリング式加湿器、或いは表面蒸発式加湿器を用いることが出来る。
【0024】
また、流量設定手段110の設定値を検知し、制御手段401によりコンプレッサ103の電動機の回転数を制御することで吸着筒への供給風量を制御する。設定流量が低流量の場合には回転数を落とすことで生成酸素量を抑え、且つ消費電力の低減を図ることができる。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態である圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、エアーフィルタ部を詳細に例示した概略図である。原料となる空気と装置冷却に使用される空気は、吸気口に備えられたエアーフィルタ601を通過してから酸素濃縮装置筐体内に取り込まれる。エアーフィルタ601は一般的にメッシュフィルタが好んで使用される。
【0026】
エアーフィルタ清掃シーケンスに入ると、コンプレッサの吸気口と吸引ノズル602が直結され、トラバース機構603によって吸引ノズル602はエアーフィルタ601上を移動し、付着した塵埃を吸引していく。この吸引ノズルは別途モータでエアーフィルタ601上を掃引駆動させてもよいし、エアータービンを設けてコンプレッサの吸引力を利用して動作させてもよい。吸気ノズル602は一方向だけに動かしても往復で動かしてもよい。
【0027】
図3は本発明の酸素濃縮装置において、塵埃吸引システムの構成図を示したものである。通常運転時にはエアーフィルタ601を通過して比較的大きな塵埃が取り除かれた空気は、HEPAフィルタ101を通過して微細な塵埃が取り除かれ、吸気消音器102を通過した後、コンプレッサ103に供給される。
【0028】
エアーフィルタ清掃指令信号が発報されると、切換弁(電磁弁)605によってHEPAフィルタ101から直接外気を取り込む原料空気の取入流路が遮断され、吸引ノズル602から空気を吸込み、エアーフィルタ601に付着した塵埃を吸引し、塵埃回収装置604にて塵埃を回収する吸引流路に切り替わる。
【0029】
塵埃回収装置にはサイクロンの他、不織布を利用したフィルタ等、様々な種類が選択できる。塵埃回収装置604を通過した空気はHEPAフィルタ、吸気消音器、コンプレッサを通過し、流路切換弁104によって消音器503から排出される。
【0030】
エアーフィルタの清掃指令信号は、酸素濃縮装置の停止指令信号と共に自動的に発報されることで、酸素濃縮装置の停止時に自動的にフィルタ清掃を行うことが出来る。また、酸素濃縮装置の積算運転時間をカウントする積算運転時間計を備え、予め決められた積算時間毎に、エアーフィルタの清掃指令信号が自動的に発報されることで、フィルタの塵埃が溜まるであろう所定時間経過後に自動清掃を行うことも可能である。その他、予め決められた積算時間毎に、エアーフィルタを使用者が清掃するように促す表示装置および/または警報ブザーを備えることで、マニュアル操作でのフィルタ清掃を使用者に促すことも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願発明の酸素濃縮装置は医療用酸素濃縮装置として、喘息、肺気腫症、慢性気管支炎等の呼吸器系器官疾患に苦しむ患者に対する酸素吸入療法のための酸素供給源に使用される。また本願発明が特徴とするエアーフィルタの自動清掃機能により、使用者のフィルタ清掃負担を軽減すると共に、フィルタ目詰まりによる機器負荷の低減を実現する装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1:酸素濃縮装置
3:使用者
6:エアーフィルタ
101:HEPAフィルタ
102:吸気消音器
103:コンプレッサ
104:流路切換弁
105:吸着筒
106:均圧弁
107:逆止弁
108:製品タンク
109:調圧弁
110:流量設定手段
111:パーティクルフィルタ
201:加湿器
301:酸素濃度センサ
302:流量センサ
401:制御手段
501:コンプレッサボックス
502:冷却ファン
503:消音器
601:エアーフィルタ(メッシュフィルタ)
602:吸気ノズル
603:トラバース装置
604:塵埃回収装置
605:切換弁(電磁弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着材を充填した少なくとも1つの吸着筒と、該吸着筒へ原料空気を供給する空気供給手段、外部から取り入れる原料空気中の塵埃を除去するエアーフィルタを筐体の空気取入口に備えた酸素濃縮装置において、該空気取入口に、該エアーフィルタの表面に付着した塵埃を吸引除去するための吸引ノズルを備え、塵埃の分離回収手段を介して該空気供給手段に接続され、該エアーフィルタの清掃指令信号に基づき、該空気供給手段の吸引力により塵埃を吸引除去することを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
該エアーフィルタにより塵埃を除去した後の原料空気の取入流路及びエアーフィルタ表面の塵埃を吸引除去する為の吸引流路を該空気供給手段の上流側に備え、該清掃指令信号に基づき該取入流路と該吸引流路を切り替える流路切替弁を備えることを特徴とする請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
該分離回収手段が、該空気供給手段の前段に設けられ、該吸引ノズルから吸引した塵埃を分離除去するサイクロンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
該分離回収手段が、該空気供給手段の前段に設けられ、該吸引ノズルから吸引した塵埃を分離除去する不織布フィルタであることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
該エアーフィルタに沿って該吸引ノズルを掃引される駆動装置を備えたことを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項6】
該エアーフィルタの清掃指令信号が、該酸素濃縮装置の停止指令信号と共に自動的に発報されることを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項7】
該酸素濃縮装置の積算運転時間をカウントする積算運転時間計を備え、予め決められた積算時間毎に、該エアーフィルタの清掃指令信号が自動的に発報されることを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項8】
該酸素濃縮装置の積算運転時間をカウントする積算運転時間計を備え、予め決められた積算時間毎に、該エアーフィルタを使用者が清掃するように促す表示装置および/または警報ブザーを備えたことを特徴とする、請求項1から5記載の酸素濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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