説明

酸素発生装置および酸素発生用材料

【課題】 酸素を発生させる際に同時に発生する塩素ガス等の発生を抑制し、発生した酸素を用いる装置への影響、および、人体への影響の軽減を図ることができる酸素発生装置および酸素発生用材料を提供する。
【解決手段】 酸素発生用材料2aを内部に貯蔵する貯蔵容器3と、内部で酸素発生用材料2aを分解して酸素を発生させる分解容器4と、酸素発生用材料2aを貯蔵容器3から分解容器4に供給する供給管5と、を備え、酸素発生用材料2aが、過塩素酸リチウムまたは塩素酸リチウムの少なくとも1つからなり、酸素発生用材料2aに、塩素発生抑制材料2bとしてアルカリ金属、アルカリ金属の酸化物またはアルカリ金属の水酸化物の少なくとも1つが添加されたものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素発生装置および酸素発生用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば深海探査船などの水中航走体において用いられる燃料電池や蒸気機関などでは、外部から酸素を得ることが困難なため、酸素を供給する酸素供給装置が用いられている。この酸素供給装置には、スペースの限られた水中航走体内で大量の酸素を燃料電池や蒸気機関などに供給することが要求される場合があった。
【0003】
従来、大量の酸素を供給する酸素供給装置としては、液体または気体の酸素をボンベに充填したものが用いられていた。
しかし、ボンベに気体酸素を充填する方法では、ボンベ内に大量の気体酸素を充填させることが難しい。そのため、蒸気機関や燃料電池等に必要な量の気体酸素を充填させるためには、ボンベを大型化しなければならないという問題があった。
また、ボンベに液体酸素を充填する方法では、温度を極低温に保つ必要があり、安全上、運搬や取り扱いが難しくなるというも問題があった。
そこで、上述の問題点を解決するため、水を電気分解して酸素を得る技術や、所定物質の化学反応により酸素を得る技術等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−75411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1においては、酸素発生剤である過塩素酸リチウムを分解反応させることにより酸素を得る技術が開示されている。
しかしながら、過塩素酸リチウムを分解反応では、酸素の他に不純ガスとして塩素ガスが発生していた。塩素ガスは、上記燃料電池や蒸気機関等のシステム性能に影響を及ぼしたり、酸素を導く金属配管類を腐食させたりする等の不具合を発生させるという問題があった。
また、塩素ガスは、配管等から漏れると、人体に対して頭痛や吐き気を引き起こす等の影響を与える恐れがあるという問題があった。
【0005】
また、上述した問題を引き起こす塩素ガスを除去する方法として活性炭素を用いる方法も知られている。活性炭素は常温常圧の環境下であれば塩素ガスを有効に除去することができる。しかし、上記燃料電池や蒸気機関等においては、温度条件、圧力条件等が異なる(略500℃、略14.7MPa)ため、活性炭素を用いることが困難であり、塩素ガスを有効に除去することが困難であるという問題があった。
【0006】
さらに、酸素発生剤である過塩素酸リチウムの分解反応は、過塩素酸リチウムが溶融状態で起きている。溶融状態における、塩素ガスの発生する状態および発生量の予測が困難であるため、塩素ガス発生量の抑制が困難となるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、酸素を発生させる際に同時に発生する塩素ガス等の発生を抑制し、発生した酸素を用いる装置への影響、および、人体への影響の軽減を図ることができる酸素発生装置および酸素発生用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の酸素発生装置は、酸素発生用材料を内部に貯蔵する貯蔵容器と、内部で前記酸素発生用材料を分解して酸素を発生させる分解容器と、前記酸素発生用材料を前記貯蔵容器から前記分解容器に供給する供給管と、を備え、前記酸素発生用材料が、過塩素酸リチウムまたは塩素酸リチウムの少なくとも1つからなり、前記酸素発生用材料に、塩素発生抑制材料としてアルカリ金属、アルカリ金属の酸化物またはアルカリ金属の水酸化物の少なくとも1つが添加されたものであることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、酸素発生用材料に塩素発生抑制材料を添加することにより、酸素発生用材料の分解反応により生じる塩素ガスの発生量を、塩素発生抑制材料を添加しない場合と比較して、抑制することができる。
そのため、酸素発生装置から供給された酸素を用いる燃料電池等の装置への塩素ガスによる影響を低減することができる。また、酸素発生装置から発生した酸素が漏れた場合において、人体に与える塩素ガスによる影響を低減することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記塩素発生抑制材料が、酸化リチウムまたは水酸化リチウムの少なくとも1つであることが望ましい。
本発明によれば、アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物またはアルカリ金属の水酸化物の中で、酸化リチウムまたは水酸化リチウムを前記塩素発生抑制材料として酸素発生用材料に添加することにより、塩素ガス発生量をより抑制することができる。
【0011】
さらに、上記発明においては、前記塩素発生抑制材料が、前記貯蔵容器内に貯蔵されていることが望ましい。
本発明によれば、貯蔵容器内に酸素発生用材料および塩素発生抑制材料が混合した状態で貯蔵される。そのため、一度、酸素発生用材料に対する塩素発生抑制材料の混合割合が決定されると、同一の混合割合の酸素発生用材料および塩素発生抑制材料を分解容器に供給することができる。
【0012】
上記発明においては、前記塩素発生抑制材料が前記分解容器内に貯蔵されていることが望ましい。
本発明によれば、酸素発生用材料と塩素発生抑制剤とが、分解容器内で始めて接触する。そのため、分解容器への酸素発生用材料の供給量を制御することにより、分解反応中の酸素発生用材料における塩素発生抑制材料の割合を制御することができる。その結果、塩素ガスの発生量をリアルタイムに制御することができる。
【0013】
上記発明においては、前記酸素発生用材料に添加される前記塩素発生抑制材料の割合が、略6wt%であることが望ましい。
本発明によれば、酸素発生用材料を分解したときに発生する塩素ガスの量を、他の割合の場合と比較して、より抑制することができる。
【0014】
本発明の酸素発生用材料は、過塩素酸リチウムまたは塩素酸リチウムの少なくとも1つからなる酸素発生用材料であって、酸化リチウムまたは水酸化リチウムの少なくとも1つが添加されていることを特徴とする。
本発明によれば、酸化リチウムまたは水酸化リチウムを加えることにより、酸素発生用材料の分解反応により生じる塩素ガスの発生量を、酸化リチウムまたは水酸化リチウムを加えない場合と比較して、抑制することができる。
また、酸素発生用材料中における酸化リチウムまたは水酸化リチウムの割合を、略6wt%とすることにより、塩素ガスの発生量をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸素発生装置および酸素発生用材料によれば、塩素発生抑制材料を加えることにより、酸素発生用材料の分解反応により生じる塩素ガスの発生量を抑制することができる。そのため、酸素発生装置から供給された酸素を用いる燃料電池等の装置への塩素ガスによる影響を低減することができるという効果を奏する。また、酸素発生装置から発生した酸素が漏れた場合において、人体に与える塩素ガスによる影響を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の本発明の第1の実施形態に係る酸素発生装置について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る酸素発生装置1を説明する概略図である。
酸素発生装置1は、図1に示すように、酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを貯蔵する貯蔵容器3と、その内部で酸素発生用材料2の分解反応により酸素を発生させる分解容器4と、貯蔵容器3から分解容器4に酸素発生用材料2および塩素発生材料2bを供給する供給管5と、から概略構成されている。
【0017】
酸素発生用材料2aは過塩素酸リチウム(LiClO)からなり、酸素発生用材料2aに酸化リチウム(LiO)または水酸化リチウム(LiOH)からなる塩素発生抑制材料2bが添加されている。酸素発生用材料2aに塩素発生抑制材料2bが添加される量は、酸素発生用材料2aに対する割合で6wt%程度が望ましい。
なお、酸素発生用材料2aとしては、上述のように過塩素酸リチウムに塩素発生抑制材料2bを添加したものでも良いし、塩素酸リチウム(LiClO)に塩素発生抑制材料2bを添加したものでもよい。ただし、単位堆積あたりの酸素発生量は、過塩素酸リチウムのほうが多いため、過塩素酸リチウムを用いる方が望ましい。
【0018】
なお、塩素発生抑制材料2bとしては、上述のように酸化リチウムまたは水酸化リチウムのどちらを用いてもよいが、後述するように、酸素発生材料2aに対する添加量が6wt%程度の場合では、水酸化リチウムの塩素発生抑制効果が大きいため水酸化リチウムを用いることが望ましい。また、上記添加量が略6wt%から外れる場合では、塩素発生抑制効果の低下量が少ない酸化リチウムを用いることが望ましい。
【0019】
貯蔵容器3は貯蔵容器3を密閉する蓋6を備え、貯蔵容器3および蓋6はステンレス鋼等の耐熱耐食鋼から形成されている。貯蔵容器3の開口側端部にはフランジ7が形成されている。フランジ7と蓋6とがボルト8およびナット9により固定されることにより、貯蔵容器3は密閉される。
また、貯蔵容器3の周囲には、内部に貯蔵された酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを加熱し、酸素発生用材料2aを溶融状態にするヒータ(図示せず)が配置されている。
【0020】
蓋6の略中央には、酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを分解容器4に導く供給管5の一方の端部が気密的に取り付けられている。供給管5の一方の端部は、蓋6を貫通して貯蔵容器3内の底面近傍領域(図中の下方領域)にまで延びている。
また、蓋6には、押圧ガスを貯蔵容器3内に導入する押圧ガス導入口(図示せず)が設けられている。押圧ガスは、溶融した酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを供給管5内に押し入れるために、貯蔵容器3内に圧力をかけるガスである。また、押圧ガスとしては、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガスが望ましい。
【0021】
分解容器4は分解容器4を密閉する蓋10を備え、分解容器4および蓋10はステンレス鋼等の耐熱耐食鋼から形成されている。分解容器4の開口側端部にはフランジ11が形成されている。フランジ11と蓋10とがボルト8およびナット9により固定されることにより、分解容器4は密閉される。
また、分解容器4の周囲には、内部に供給された酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを加熱し、分解反応が維持される温度に保つヒータ(図示せず)が配置されている。
【0022】
蓋10の略中央には、酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを分解容器4内に噴射する噴射管(供給管)12が気密的に取り付けられている。噴射管12の分解容器4外の端部は、供給管5の他方の端部と結合されている。また、噴射管12の分解容器4内の端部には、分解容器4の底面(図中の下方)に向けて酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを噴射するノズル13が備えられている。
また、蓋10には、酸素発生用材料2aから発生した酸素ガスを外部に導き出す導出口14が配置されている。導出口14の流入口近傍領域には、上記分解反応により形成される固形反応物の流入を防ぐフィルタ(図示せず)が配置されている。
【0023】
なお、上述のように供給管5および噴射管12の周囲に何も配置しなくてもよいし、酸素発生用材料2aを溶融状態に保持するためのヒータを配置してもよい。
なお、酸素発生用材料2aを溶融状態に保つヒータおよび酸素発生用材料2aの分解反応を維持するためのヒータは、電力が供給されることにより熱を発生する電熱線であってもよいし、他の電気加熱装置であってもよいし、電気を用いない加熱装置であってもよい。
【0024】
次に、上記の構成からなる酸素発生装置1における酸素の発生に係る作用について説明する。
貯蔵容器3内の酸素発生用材料2aは、室温においては固体の状態になっている。そのため、まず、貯蔵容器3内の酸素発生用材料2aの温度を過塩素酸リチウムの融点(250℃)以上、かつ、分解温度(440℃)未満となるように加熱する。例えば、酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを略300℃に加熱して、酸素発生用材料2aを溶融状態にする。
【0025】
酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを溶融状態にするとともに、分解容器4内を過塩素酸リチウムの分解温度(440℃)以上に加熱する。例えば、分解容器4内を、過塩素酸リチウムの分解温度以上の温度であって、かつ、後述する分解反応の副生成物(塩化リチウム)の融点以上である、略610℃に加熱する。
【0026】
その後、貯蔵容器3内に押圧ガスを導入し、貯蔵容器3内の溶融状態の酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを供給管5に流入させる。供給管5に流入した酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bは、噴射管12を介して、ノズル13から分解容器4内に噴射される。
分解容器4内に噴射された酸素発生用材料2a(過塩素酸リチウム)は下記に示す分解反応により自己分解し、酸素ガスと塩化リチウムを生成する。
LiClO → LiCl+2O+Q
この分解反応は発熱反応であり、Qは略40kJである。したがって、酸素発生装置1の起動時において分解容器4内を過塩素酸リチウムの分解温度以上に加熱しておけばよい。分解反応が開始されると、反応熱により上記分解温度を維持することができ、分解反応が持続される。そのため、分解容器4の加熱を中断、または、加熱を弱めることができる。
【0027】
なお、分解容器4の周囲の温度環境によっては、放熱損失が大きく上記反応熱のみでは分解反応を維持できない場合も存在する。この場合には、分解容器4の加熱を継続し、分解反応を継続させることが望ましい。
なお、分解容器4に供給される酸素発生用材料2aの量が変動すると、上記反応熱のみでは分解反応を維持できない場合も存在する。この場合には、分解容器4の加熱を継続し、分解反応を継続させることが望ましい。
【0028】
分解容器4で発生した酸素ガスは、導出口14から分解容器4外に取り出される。取り出された酸素ガスは、配管(図示せず)等により導かれ、例えば、水中航走体の駆動装置に供給される。
【0029】
次に、酸素発生用材料2aに添加される塩素発生抑制材料2bの添加量を変化させた場合の塩素ガス発生量の変化ついて説明する。
酸素発生用材料2aの主材料は過塩素酸リチウムであり、そこに添加する塩素発生抑制材料2b(酸化リチウムまたは水酸化リチウム)の添加量をさせている。測定する対象は、酸素発生用材料2aから発生する酸素ガスと塩素ガスの量(質量)であり、塩素ガスと酸素ガスとの質量比を求めている。比較対象は、酸化リチウムまたは水酸化リチウムを添加していない酸素発生用材料2、つまり、過塩素酸リチウム単体から発生する塩素ガスと酸素ガスとの質量比となる。
上記の測定結果を以下の表に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
酸化リチウムは、添加量が3wt%、6wt%、9wt%の測定条件で各2点ずつ測定し(a1からa6)、水酸化リチウムは、添加量が3wt%の測定条件が2点(b1,b2)、6wt%の測定条件が1点(b3)で測定されている。
酸化リチウムの場合、測定の結果にばらつきはあるものの、その添加量が3wt%(a1,a2)および9wt%(a5,a6)では、塩素ガスと酸素ガスとの質量比(CL/O)が0.0009から0.0006となっている。酸化リチウムが無添加の場合と比較すると、塩素ガスの発生量は10.3%から6.5%となり、平均では8.75%に減少している。
【0032】
また、酸化リチウムの添加量が6wt%(a3,a4)では、CL/Oが0.0005から0.0004となっている。酸化リチウムが無添加の場合と比較すると、塩素ガスの発生量は5.5%から4.2%となり、平均では4.75%に減少している。つまり、酸化リチウムの添加量が6wt%(a3,a4)では、塩素ガスの発生量が、上述した添加量が3wt%(a1,a2)および9wt%(a5,a6)の場合の略半分となっている。
【0033】
水酸化リチウムの場合、その添加量が3wt%(b1、b2)では、塩素ガスと酸素ガスとの質量比(CL/O)が0.0016から0.0017となっている。水酸化リチウムが無添加の場合と比較すると、塩素ガスの発生量は19.5%から17.5%となり、平均では18.5%に減少している。
また、水酸化リチウムの添加量が6wt%(b3)では、水酸化リチウムが無添加の場合と比較すると、塩素ガスの発生量は1.7%に減少している。つまり、水酸化リチウムの添加量が6wt%(b3)では、塩素ガスの発生量が、上述した添加量が3wt%(b1,b2)の場合の略10分の1となっている。
【0034】
上記の構成によれば、酸素発生用材料2aに塩素発生抑制材料2bを添加することにより、酸素発生用材料2aの分解反応により生じる塩素ガスの発生量を、塩素発生抑制材料2bを添加しない場合と比較して、抑制することができる。
そのため、酸素発生装置1から供給された酸素を用いる水中航走体の駆動装置等への塩素ガスによる影響を低減することができる。また、酸素発生装置1から発生した酸素が漏れた場合において、人体に与える塩素ガスによる影響を低減することができる。
【0035】
塩素発生抑制材料2bとして酸化リチウムまたは水酸化リチウムを用いることにより、塩素発生抑制材料2bを添加しない場合と比較して、塩素ガスの発生量を略2割から1割に低減することができる。
さらに、酸化リチウムまたは水酸化リチウムの添加量を略6wt%にすることにより、塩素ガスの発生量をさらに低減することができる。
【0036】
貯蔵容器3内に酸素発生用材料2aおよび塩素発生用材料2bを混合して貯蔵するため、同一の混合割合の酸素発生用材料2aおよび塩素発生抑制材料2bを分解容器4に供給することができる。そのため、塩素ガスの発生抑制効果を一定に保つことができ、塩素ガスの含有割合が常に低い酸素ガスを供給することができる。
【0037】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図2を参照して説明する。
本実施の形態の酸素発生装置の基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、分解容器内の構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図2を用いて分解容器周辺のみを説明し、貯蔵容器等の説明を省略する。
図2は、本実施形態に係る酸素発生装置21を説明する概略図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
酸素発生装置21は、図2に示すように、酸素発生用材料2aを貯蔵する貯蔵容器3と、その内部で酸素発生用材料2aの分解反応により酸素を発生させる分解容器24と、貯蔵容器3から分解容器24に酸素発生用材料2aを供給する供給管5と、から概略構成されている。
【0039】
分解容器24は分解容器24を密閉する蓋10を備え、分解容器24および蓋10はステンレス鋼等の耐熱耐食鋼から形成されている。分解容器24の開口側端部にはフランジ11が形成されている。フランジ11と蓋10とがボルト8およびナット9により固定されることにより、分解容器24は密閉される。分解容器24内の底面には、塩素発生抑制材料2bを含むコーティング層2cが形成されている。
なお、塩素発生抑制材料2bは、上述のように、分解容器24内の底面にコーティングされていてもよいし、単に分解容器24内に配置されていてもよく、特に限定するものではない。
【0040】
次に、上記の構成からなる酸素発生装置21における酸素の発生に係る作用について説明する。
貯蔵容器3内の酸素発生用材料2aは、室温においては固体の状態になっている。そのため、まず、貯蔵容器3内の酸素発生用材料2aの温度を融点(250℃)以上、かつ、分解温度(440℃)未満となるように加熱する。例えば、酸素発生用材料2aを略300℃に加熱して、酸素発生用材料2aを溶融状態にする。
【0041】
その後、貯蔵容器3内に押圧ガスを導入し、貯蔵容器3内の溶融状態の酸素発生用材料2aを供給管5に流入させる。供給管5に流入した酸素発生用材料2aは、噴射管12を介して、ノズル13から分解容器24内に噴射される。
分解容器24内に噴射された酸素発生用材料2aは、コーティングされた塩素発生抑制材料2bと接触するとともに、下記に示す分解反応により自己分解し、酸素ガスと塩化リチウムを生成する。
LiClO → LiCl+2O+Q
分解容器24で発生した酸素ガスは、導出口14から分解容器4外に取り出される。取り出された酸素ガスは、配管(図示せず)等により導かれ、例えば、水中航走体の駆動装置に供給される。
【0042】
上記の構成によれば、酸素発生用材料2aと塩素発生抑制剤2bとを、分解容器3内で始めて接触させている。そのため、分解容器24への酸素発生用材料2aの供給量を制御することにより、分解容器24内の酸素発生用材料2aにおける塩素発生抑制材料2bの割合を制御することができる。その結果、塩素ガスの発生量をリアルタイムに制御することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
また、上記の実施の形態においては、本発明の酸素発生装置を水中航走体の駆動装置に適用して説明したが、水中航走体に限られることなく、酸素を使用する駆動装置を用いる他の装置に適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る酸素発生装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る酸素発生装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1,21 酸素発生装置
2a 酸素発生用材料
2b 塩素発生抑制材料
3 貯蔵容器
4,24 分解容器
5 供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素発生用材料を内部に貯蔵する貯蔵容器と、
内部で前記酸素発生用材料を分解して酸素を発生させる分解容器と、
前記酸素発生用材料を前記貯蔵容器から前記分解容器に供給する供給管と、を備え、
前記酸素発生用材料が、過塩素酸リチウムまたは塩素酸リチウムの少なくとも1つからなり、
前記酸素発生用材料に、塩素発生抑制材料としてアルカリ金属、アルカリ金属の酸化物またはアルカリ金属の水酸化物の少なくとも1つが添加されたものであることを特徴とする酸素発生装置。
【請求項2】
前記塩素発生抑制材料が、酸化リチウムまたは水酸化リチウムの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の酸素発生装置。
【請求項3】
前記塩素発生抑制材料が、前記貯蔵容器内に貯蔵されていることを特徴とする請求項1または2に記載の酸素発生装置。
【請求項4】
前記塩素発生抑制材料が前記分解容器内に貯蔵されていることを特徴とする請求項1または2に記載の酸素発生装置。
【請求項5】
前記酸素発生用材料に添加される前記塩素発生抑制材料の割合が、略6wt%であることを特徴とする請求項2から3のいずれかに記載の酸素発生装置。
【請求項6】
過塩素酸リチウムまたは塩素酸リチウムの少なくとも1つからなる酸素発生用材料であって、
酸化リチウムまたは水酸化リチウムの少なくとも1つが添加されていることを特徴とする酸素発生用材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−96580(P2006−96580A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281742(P2004−281742)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】