説明

酸素製造装置

【課題】 窒素製造プロセスにおける排出流体および副生流体を利用するとともに、もとの窒素製造プロセスに影響を与えることなく、有圧の液化酸素および酸素ガスを効率的に製造する装置を提供すること。
【解決手段】 酸素製造装置であって、(1)窒素製造装置の酸素リッチ液化空気の一部を、窒素精留塔または窒素精留塔コンデンサから抜き出して、下部にリボイラ9を有するサブ精留塔8中間段に導入し、(2)圧縮空気を前記サブ精留塔8の下部リボイラ9に導入して該リボイラ9で液化空気を生成し、その一部を前記窒素精留塔に戻すとともに、残りを前記サブ精留塔8の搭頂部に還流液として供給し、(3)前記サブ精留塔8下部から酸素を製造する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素製造装置に関するもので、特に、窒素製造プロセスにおける排出流体および副生流体を利用して酸素ガスおよび液化酸素を効率的に製造するために有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素の製造装置としては、低温空気分離プラントは広く知られており、一般に複数の蒸留塔を使用して順次分離効率を上げて、最終製品として、主として窒素、酸素及びアルゴンを生産している。一方、半導体プロセスを含めた窒素の需要は、酸素などに比べ非常に大きく、市場での使用量と生産量とのバランスから、窒素製造装置が多く用いられている。窒素製造装置では、主として空気を原料とし、圧縮・精製プロセスを経由して窒素ガスおよび液化窒素を効率的に製造するとともに、酸素分を豊富に含んだ清浄ガスを廃ガスとして排出していた。
【0003】
しかしながら、当初窒素のみの需要が主である工場あるいは地域であっても、既存の窒素製造装置の近傍に酸素の需要が現れる場合があり、上記の窒素製造装置からの廃ガス等を有効に生かした酸素製造装置の設置、あるいは別途新たな原料空気を利用し常温分離法や深冷分離法などによる酸素製造装置の設置を行っていた。
【0004】
既存の窒素製造装置を利用した方法としては、1つには、図4に例示するように、原料空気と液化酸素を熱交換させて上昇ガスを作る副凝縮器(リボイラ)7を内蔵した副精留塔8を設け、該副精留塔8に凝縮器5の液化空気の一部を導くとともに原料空気の一部を上記副凝縮器(リボイラ)7に導くようにしたことによって少量の酸素ガスおよび液化酸素を採取する方法Aが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、図5に例示するように、底部に蒸発器(リボイラ)7を有する副精留塔3を設け、該塔上部に、窒素製造用単式精留塔1の底部より該塔用凝縮蒸発器2に供給される液化空気の一部が供給されるように導管により連絡するとともに、副精留塔3の底部の蒸発器(リボイラ)7の一端は、前記単式精留塔1の下部の空気供給導管と、他端は、弁を介して前記単式精留塔用凝縮蒸発器2へ導入される液体空気用導管と連設して酸素ガスおよび液化酸素を採取する方法Bが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
さらに、図6に例示するように、原料空気中の水分及び炭酸ガスを除去した後の原料空気の全量を窒素精留塔10内に導入して冷却液化させ、この窒素精留塔10から製品としての窒素を採取し、前記窒素精留塔10にて得られる酸素リッチ液体空気を窒素凝縮器14の冷熱源として使用した後、成出した酸素リッチ空気を酸素精留塔20のリボイラ24の加熱源として使用し、それにより凝縮して成出した酸素リッチ液体空気を前記酸素精留塔20の酸素原料及び還流液として使用することにより、窒素の回収率を維持しながら酸素を製造する方法Cが提案されている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭54−163797号公報
【特許文献2】実開昭55−140990号公報
【特許文献3】特許第3203181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、新規の酸素製造装置の設置では、経済的な負担が大きく、また、既存の窒素製造装置および新設の酸素製造装置の両方から副生された酸素ガスあるいは窒素ガスが廃出されることになり、エネルギーを含め非常に大きなロスが生じることとなる。
【0008】
また、窒素製造装置に付帯的に酸素製造装置を設置する場合においても、上記のような従来法については、いくつかの課題があった。
【0009】
つまり、方法Aあるいは方法Bについては、いずれも窒素製造装置の原料空気を、また、方法Cについては、窒素精留塔の凝縮蒸発器(コンデンサ)での廃ガスを、酸素精留塔のリボイル源として利用しており、その液化温度に見合うまで酸素リッチ液化空気を減圧し、結果として酸素精留塔の運転圧が低下し発生する酸素ガスの圧力が低下することとなる。
また、既存の窒素製造装置に新規に酸素製造装置を付設する場合には、窒素製造装置の能力に影響を与えないような改造が容易でない。
【0010】
従って、本発明の目的は、窒素製造プロセスにおける排出流体および副生流体を利用するとともに、もとの窒素製造プロセスに影響を与えることなく、有圧の酸素ガスおよび液化酸素ガスを効率的に製造する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す酸素製造装置により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
本発明は、酸素製造装置であって、(1)窒素製造装置の酸素リッチ液化空気の一部を、窒素精留塔または窒素精留塔コンデンサから抜き出して、下部にリボイラを有するサブ精留塔中間段に導入し、(2)圧縮空気を前記サブ精留塔の下部リボイラに導入して該リボイラで液化空気を生成し、その一部を前記窒素精留塔に戻すとともに、残りを前記サブ精留塔の搭頂部に還流液として供給し、(3)前記サブ精留塔下部から酸素を製造する、ことを特徴とする。
【0013】
つまり、本発明は、単に窒素製造装置と酸素製造装置の組合せではなく、双方で余剰となる部分を利用し合うとともに、そのときに双方が求める気液の状態あるいは温度および圧力とを合致させることで、非常に効率の高い窒素・酸素製造システム構成を目指したものである。窒素精留塔にサブ精留塔(酸素精留塔)を設置し、原料として窒素製造装置によって副生される酸素リッチ液化空気(以下「R/L」という)の一部をサブ精留塔中間段に導入するとともに、別途昇圧した空気をサブ精留塔下部のリボイラに導入し、液化した液体空気の一部(前記R/L相当量)は窒素精留塔に戻して残りをサブ精留塔頂部に還流液として供給することによって、もとの窒素製造装置に影響を与えることなく、酸素を効率的に製造することが可能となる。
【0014】
具体的には、窒素製造装置からその副生物であるR/L(窒素製造装置にとっては、低濃度成分)をサブ精留塔に供給し、逆にサブ精留塔において生成した略同量の液化空気(窒素製造装置にとっては、上記R/Lよりも高濃度成分)の供給を受けることによって、窒素製造装置としてはその生産量を加増することができる。同時に、サブ精留塔にはR/L(酸素製造装置にとっては、高濃度成分)が供給され、上記液化空気の一部が還流されることによって、酸素製造装置としては少段数で高濃度酸素の製造が可能となる。このように、本発明によれば、窒素の製造と酸素の製造で両方のプロセスに対して同時補完的に原料や副生物などの利用を図ることが可能となる。
【0015】
本発明は、上記酸素製造装置であって、前記サブ精留塔頂部からの窒素富化ガスを、酸素製造装置用の原料空気に合流、あるいは窒素精留塔の原料空気の一部またはリサイクル空気の一部に合流することを特徴とする。
【0016】
空気を原料とした場合、物質収支の面からは、窒素製造装置からの酸素リッチな副生物が酸素の製造原料となり、酸素製造装置からの窒素リッチな副生物が窒素の製造原料となることによって、空気の導入量および廃ガス排出量を軽減することができることが好ましい。さらに理想的には、そうした還流時の供給元の状態が、供給先が求める気液の状態あるいは温度および圧力と合致することによって、非常に効率の高い窒素・酸素製造システムを構成することができる。本発明においては、サブ精留塔頂部からの冷却・加圧状態の窒素富化ガスを、原料となる圧縮空気あるいは原料にも利用されるリサイクル空気に合流させることによって、窒素の収率の向上を図ることができるとともに、エネルギー的にも原料空気の処理工程における付加を軽減することができるという優れた効果を生み出すことができる。従って、もとの窒素製造プロセスに影響を与えることなく、酸素を効率的に製造する装置を提供することが可能となる。ここで、リサイクル空気(RA)とは、本明細書では、酸素分が21Vol%以下の場合を含み使用される。
【0017】
本発明は、上記酸素製造装置であって、前記酸素リッチ液化空気の一部を加圧手段によって圧縮し、前記サブ精留塔に供給することを特徴とする。
【0018】
上述のように、従来の窒素製造装置に付加される酸素製造装置からは、有圧の酸素の要請に対応することが困難であった。本発明においては、上記のように、窒素精留塔からのR/Lを昇圧された状態でサブ精留塔に供給することによって、効率よく精留が行われ、かつ有圧の酸素ガスあるいは液化酸素を製造することが可能となる。ここで、窒素精留塔からのR/Lを原料とすることで多少の加圧状態にはなっているが、さらなる昇圧のためには、本発明のように、加圧手段によって圧縮し、前記サブ精留塔に供給することが好ましい。
【0019】
本発明は、上記酸素製造装置であって、前記サブ精留塔下部から一部の液化酸素を抜き出した後、蒸発して、酸素ガスを製造することを特徴とする。
【0020】
酸素ガスのみを産出する場合にはサブ精留塔下部に炭化水素等が濃縮し爆発する恐れがある。これは、サブ精留塔下部から一部の液化酸素を抜き出すことにより防止される。この液化酸素の寒冷は原料あるいは中間生成物との熱交換に生かすことによって、さらにエネルギー効率の高い酸素ガスの製造が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
上記のように、本発明によれば、単に窒素製造装置と酸素製造装置の組合せではなく、双方で余剰となる部分を利用し合うとともに、そのときに双方が求める気液の状態あるいは温度および圧力とを合致させることで、非常に効率の高い窒素・酸素製造システムを構成することが可能となる。つまり、窒素製造プロセスにおける排出流体および副生流体を利用するとともに、もとの窒素製造プロセスに影響を与えることなく、有圧の酸素を効率的に製造する装置を提供することができる。
【0022】
特に、既設の窒素製造装置に酸素製造プロセスを付設する場合において、窒素製造装置の改造をほとんどすることなく、効率の高い酸素製造装置を提供することができる点、従来にない優位性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に、本発明に係る窒素製造プロセスを利用した酸素製造装置の1の構成例を示す。窒素製造プロセスNと酸素製造プロセスPとが、主として窒素製造プロセスNからのR/L供給路と酸素製造プロセスPからの液化空気供給路によって結合した構成である。例えば既設の窒素製造プロセスNに酸素製造プロセスPを付設した場合に適用することが可能である。
【0025】
窒素製造プロセスNにおいては、原料空気供給手段(MAC)1によって加圧状態となって原料空気精製手段(APU)2を介して供給された空気を、後述の圧縮手段(RAC)4からのリサイクル空気とともに、空気分離手段3に導入し、高純度窒素(GN2)を生成する。また、廃ガス(WG)が生成され、リサイクル空気が戻される。このとき、空気分離手段3からR/Lを取り出し、酸素製造の原料として酸素製造プロセスPに供給される。リサイクル空気の一部(G.Airで示す)は、リボイラの温熱源として酸素製造プロセスPに供給され、それ以外は、窒素製造のリサイクル原料として還流するため上記APU2で処理後の原料空気と合流される。WGについては、熱交換手段(図示せず)に導入して常温に戻され、APU2の再生ガスに利用された後排出される。
【0026】
一方、酸素製造プロセスPにおいては、供給されたR/Lを加圧手段5によって圧縮し、原料としてコールドボックス6に導入され、所定の処理工程を経て、高純度酸素ガス(GO2)および高純度液化酸素(図示せず)を生成する。前記G.Airは酸素製造プロセスPから帰還したリサイクル空気(RA)とともに圧縮手段7によって圧縮後コールドボックス6に供給される。このとき、副生物として生成する酸素21%以下の窒素リッチ液化空気(L.Air)は、R/Lおよびリサイクル空気の補充として、窒素製造プロセスPに戻される。なお、図1では、加圧手段5として加圧ポンプのような機械的手段を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば液ヘッドを利用することも可能である。
【0027】
以上のように、本装置によれば、窒素の製造プロセスと酸素の製造プロセスの両方に対して、同時補完的に原料や副生物などの利用を図ることが可能となる。
【0028】
また、上記は、別々に各プロセスにおける原料、生成物および副生成物について述べたが、これを両者が一体化した空気分離プロセスとして捉えることも可能である。つまり、製品製造工程からすれば、第1工程においてMAC1およびAPU2によって圧縮・精製された原料空気から、空気分離手段3によって窒素を抽出する。第2工程では、その残余を加圧手段5によって圧縮後コールドボックス6によって酸素を抽出し、その残余を再度空気分離手段3に還流する。これによって非常に原料を効率的に利用することができる。また、リサイクル空気に関しても、窒素製造プロセス用RAC4と酸素製造プロセス用RAC7を上手く組み合わせることにより有効利用を図ることができる。
【0029】
なお、図1では酸素製造プロセスPのリサイクル空気の補充用ガスとして窒素製造プロセスNの高圧リサイクル空気の一部を利用する場合を示した。製品窒素および製品酸素の圧力の関係によっては窒素製造プロセスNの低圧リサイクル空気の一部を利用することもできる。また、窒素製造プロセスNの原料空気の一部を利用したり、新たに、酸素製造プロセスP用原料空気圧縮手段および原料空気精製手段を追加し、これらで処理後の圧縮空気を利用することも可能である。
【0030】
本発明に係る酸素製造装置の1の実施形態の詳細を、図2に例示する。既設の高回収型窒素製造装置(例えば高純度窒素生産量15,000Nm/hrとする)に、この酸素製造プロセスP(例えば高純度酸素生産量3,000Nm/hr,0.5MPaAとする)を併設した場合を例にとって説明する。
【0031】
(1)窒素製造プロセスNから供出された、例えば酸素濃度約80.8%のR/L約3,625Nm/hrを、昇圧ポンプによって0.53MPaAまで圧縮し、サブ精留搭(酸素精留塔)8の中間段に導入する。
【0032】
(2)サブ精留塔8の下部にはリボイラ9が設置され、窒素製造プロセスNから戻されたG.Airを含む約7,000Nm/hrの空気(RA、酸素21%以下のリサイクルガス)が、リボイラ9の温熱源として供給される。RAは、圧縮手段7によって約1.52MPaAに加圧され(高圧RA)、熱交換器10(図2では10aおよび10bが相当)を介して露点(DP)付近まで冷却された後、リボイラ9に導入される。これは、サブ精留塔8のリボイラ9において、塔底液(液酸)の蒸発に使われ、自らは液化し、約7,000Nm/hrの高圧の液化空気が生成する。
【0033】
(3)該高圧の液化空気の内、約4,072Nm/hrは、R/Lに相当する寒冷源L.Airとして窒素製造プロセスNに戻される。残りの約2,928Nm/hrは、サブ精留塔8の塔頂部へ還流液として供給される。
【0034】
(4)サブ精留塔8では、上記塔頂の還流液、中間段に導入されたR/Lは塔内を流下し、サブ精留塔8の塔底部からの上昇蒸気と気液接触することにより精留され、塔底には液体酸素が生成される。このとき、サブ精留塔8の塔底部からは約3,107Nm/hrの95%酸素ガスと約50Nm/hrの炭化水素等濃縮防止用液化97.5%酸素が取り出される。また、サブ精留塔8の塔頂部からは、約3,396Nm/hrの中圧のリサイクル空気が取り出される。
【0035】
(5)上記酸素ガスおよび液化酸素は、上記高圧RAと向流する熱交換器10(図2では10aおよび10bが相当)によって常温まで加熱され、GO2として供出される。また、中圧の空気も同様に熱交換器10aによって常温まで加熱され、本システムでは上記RAの一部としリサイクル利用される。一方、図2では、高圧RAは2つの流路に分岐して、熱交換器10aおよび10bにおいて放熱し冷却された後、再度合流してリボイラ9に導入する方法を例示した。
【0036】
(6)以上によって、本発明の酸素製造装置は、既設の窒素製造装置と非常に効率よく機能する組合せを形成することができる。
【0037】
例示した数値をもとに、本装置の必要電力を概算すると、圧縮手段7における消費電力391kW(7,000Nm/hのRAを0.5MPaAから1.52MpaAまで圧縮)加圧手段5(加圧ポンプ)における消費電力1kW以下、原料空気(G.Air)の圧縮動力417kW(3,604Nm/hを大気圧から1MPaAまで圧縮)合計約809kW程度であり、純酸素ベースの原単位としては約0.27kW/Nmとなる。通常このサイズの酸素分離装置に必要とされる電力は、0.45〜0.5kW/Nmといわれる。従って、本装置におけるこの数値は、酸素を0.53MPaAまで圧縮する動力を含んでいるにもかかわらず、通常の装置に比べはるかに低く、優位性を示している。
【0038】
次に、図3に、本発明に係る窒素製造プロセスを利用した酸素製造装置の他の構成例を示す。新設の窒素製造装置に、この酸素製造プロセスPを応用した場合を例にとって説明する。
【0039】
基本的には上記1の実施形態と同様であるが、窒素製造プロセスの具体例を明示し、主熱交換器などが統合されている点相違する。図3に基づいて、本発明に係る酸素製造装置を上記1の構成例と相違する点を中心に説明する。
【0040】
原料空気は、フィルター(図示せず)で除塵後、MAC1aで約1MPaAに圧縮され、常温精製部(図示せず)で不純物を除去、リサイクル空気と合流後、熱交換器10aで後述する冷媒との間接熱交換によりほぼ液化温度まで冷却されて、窒素精留塔12の中圧精留部A下部へ供給される。
【0041】
中圧精留部Aへ供給された原料空気は中圧精留部Aの中を上昇して、上方から流下する液体窒素を主成分とする還流液と向流し気液接触を行う。これによって、気相中の酸素が還流液の中に溶け込み、他方、還流液中の窒素が気化して気相中に放出される。この結果、中圧精留部Aの上部には窒素ガスが溜まり、中圧精留部Aの下部には液体空気が溜まる。該液体空気は取り出され、約0.4MPaAに膨張後、補助精留部B上部へ還流液として供給される。
【0042】
中圧精留部Aの上部に溜まった窒素ガスの一部は、中圧精留部Aから供出され、熱交換器10aに導入され、原料空気と熱交換され常温となり、原料空気よりわずかに圧力の低い製品窒素ガスGN2として供給される。
【0043】
中圧精留部Aの上部に溜まった窒素ガスの残部は、窒素凝縮器13に導入され、冷媒としての酸素リッチ液体空気(R/L)との間接熱交換により冷却され、凝縮した液体窒素は、還流液として戻される。
【0044】
補助精留部Bでは、上記液体空気を元に精留が行われ底部に酸素リッチ液体R/Lが生成される。その一部は、上記窒素凝縮器13に冷媒として導入され、自らは蒸発気化される。気化された酸素リッチガスの一部は、塔内の上昇蒸気となる。また、その残部は補助精留部B下部から取り出され、中間温度に加温後、膨張タービンETに供給される。膨張タービンETを出た酸素リッチガスは、上記熱交換器10aで加温され、本プロセスの寒冷源の一部として使われた後、常温精製部(図示せず)の再生手段に利用される。
【0045】
補助精留部Bの塔頂部からはリサイクル空気が戻される。リサイクル空気は、熱交換器10aに導入し、ここで冷媒として原料空気の冷却に使用して常温に戻され、圧縮手段4で圧縮された後、分岐される。分岐された一方は、前述の如く原料空気と合流され、残りのリサイクル空気は、後述の酸素精留塔8塔頂部から帰還したリサイクル空気とともに、さらに圧縮手段7によって圧縮され、酸素精留塔8下部のリボイラ9に供給される。
【0046】
窒素精留塔12において冷媒として用いられたR/Lは、その一部を取り出し、さらに加圧手段5によって約0.53MPaAに圧縮された後、酸素精留塔8の中間段に供給される。酸素精留塔8では還流液として流下し、下方から上昇する気体と向流気液接触により低沸点成分を放出し、酸素濃度を高めて酸素精留塔8の下部に溜まる。酸素精留塔8の下部にはリボイラ9が設置されていて、加熱源として上記RAが圧縮されて導入される。そして、酸素精留塔8の下部に溜まった液体を加熱し、酸素と共に酸素より低沸点の成分(アルゴン、一酸化炭素、窒素等)を選択的に気化させて酸素精留塔8を上昇させる。
【0047】
また、リボイラ9の温熱源として使用された高圧RAは、リボイラ9で凝縮し高圧の液化空気を形成する。これをリボイラ9から取り出して分岐し、一方は、酸素精留塔8の上部に導入され、酸素精留塔8の還流液となる。他方は、R/Lに相当する寒冷源として窒素精留塔12に戻される。
【0048】
この結果、酸素精留塔8の上部には酸素より低沸点の成分を含む窒素ガスが溜まり、酸素精留塔8の下部には酸素ガスおよび液体酸素が溜まる。酸素精留塔8の上部に溜まった窒素チッチガスは、塔頂部から排出され、冷媒として熱交換器10aに導入された後リサイクル空気として利用される。一方、酸素精留塔8の下部に溜まった酸素ガスは、熱交換器10aで熱交換され常温に戻される。また、液体酸素はサブ熱交換器10bで気化され上記酸素ガスと合流し、製品酸素ガスGO2として使用先に供給される。
【0049】
以上のように、本発明の酸素製造装置は、既設の窒素製造設備に付設する場合だけでなく、新設の酸素・窒素製造装置を設置する場合においても適用することが可能であり、また、既設の酸素製造ラインの置き換えにも適用可能である。
【0050】
また、上記においては、窒素製造プロセスとして空気リサイクルを用いた複精留塔による場合を説明したが、他の、例えば、単精留塔によるプロセスにも利用できる。この場合、R/Lは、窒素精留塔のコンデンサから抜き出して酸素製造プロセスPに引渡し、酸素製造プロセスPで生成したL.Airは、膨張後、窒素精留塔のコンデンサに戻すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の酸素製造装置は既設・新設を問わず利用できる。また、実施形態の説明では、低純度酸素の生成の数値例を示したが、これに限定されるものでない。また、組み合わせる窒素製造プロセスの方式に自由度があり、高い汎用性を有する技術といえる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る窒素製造プロセスを利用した酸素製造装置の1の構成例を示す説明図
【図2】上記構成例の詳細を示す説明図
【図3】本発明に係る窒素製造プロセスを利用した酸素製造装置の他の構成例を示す説明図
【図4】従来技術に係る窒素製造プロセスを利用した酸素製造装置の第1の構成例を示す説明図
【図5】従来技術に係る窒素製造プロセスを利用した酸素製造装置の第2の構成例を示す説明図
【図6】従来技術に係る窒素製造プロセスを利用した酸素製造装置の第3の構成例を示す説明図
【符号の説明】
【0053】
1、1a 原料空気供給手段(MAC)
2 原料空気精製手段(APU)
3 空気分離手段
4、7 圧縮手段
5 加圧手段
6 コールドボックス
8 サブ精留塔(酸素精留搭)
9 リボイラ
10a、10b 熱交換器
11a、11b 調整弁
12 窒素精留搭
13 窒素凝縮器
N 窒素製造プロセス
P 酸素製造プロセス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素製造装置であって、(1)窒素製造装置の酸素リッチ液化空気の一部を、窒素精留塔または窒素精留塔コンデンサから抜き出して、下部にリボイラを有するサブ精留塔中間段に導入し、(2)圧縮空気を前記サブ精留塔の下部リボイラに導入して該リボイラで液化空気を生成し、その一部を前記窒素精留塔に戻すとともに、残りを前記サブ精留塔の搭頂部に還流液として供給し、(3)前記サブ精留塔下部から酸素を製造する、ことを特徴とする酸素製造装置。
【請求項2】
前記サブ精留塔頂部からの窒素富化ガスを、酸素製造装置用の原料空気に合流、あるいは窒素精留塔の原料空気の一部またはリサイクル空気の一部に合流することを特徴とする請求項1記載の酸素製造装置。
【請求項3】
前記酸素リッチ液化空気の一部を加圧手段によって圧縮し、前記サブ精留塔に供給することを特徴とする請求項1または2記載の酸素製造装置。
【請求項4】
前記サブ精留塔下部から一部の液化酸素を抜き出した後、蒸発して、酸素ガスを製造することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の酸素製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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