説明

醗酵システム

【課題】低コストで高い脱臭効果を得ることができ、悪臭物質を資源として有効利用することができる有機質廃棄物醗酵方法および醗酵システムを提供する。
【解決手段】移動架台13が、架台移動レール12に沿って移動する。吊上移動レール14が、架台移動レール12と交差する方向に延びるよう移動架台13に設けられている。吊上装置15が、醗酵槽11を保持して解放可能な保持手段35と、保持手段35を昇降可能な昇降手段34と、昇降手段34を吊上移動レール14に沿って移動させる移動手段33とを有する。回転装置16が、吊上移動レール14の下方で移動架台13に取り付けられている。醗酵槽11に有機質廃棄物3および醗酵菌を入れて回転装置16により回転させる。その醗酵槽11から発生する醗酵ガスを、ミスト分離器17によりミストを分離した後、醗酵を終了し臭気吸着剤を投入した他の醗酵槽の内部に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機質廃棄物醗酵方法および醗酵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機質廃棄物醗酵方法として、有機質廃棄物および醗酵菌を醗酵槽に入れ、醗酵槽を第1軸線を中心として回転装置により回転させながら醗酵槽の内部の送気および排気を行うとともに、攪拌羽根を醗酵槽の内部で第1軸線と平行の第2軸線を中心として第1軸線と反対方向に回転させるものが、本発明者により開発されている(特許文献1参照)。この方法によれば、原料を十分に攪拌して原料が大きなダンゴ状になるのを防ぎ、原料を十分に醗酵させることができる。
【0003】
【特許文献1】特許第3506382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の有機質廃棄物醗酵方法では、有機質廃棄物を醗酵分解する過程で発生する悪臭物質の脱臭を行う必要があるため、脱臭設備に設備費が嵩むという課題があった。また、脱臭設備では、脱臭後の悪臭物質が資源として利用されず、無駄になるという課題もあった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、低コストで高い脱臭効果を得ることができ、悪臭物質を資源として有効利用することができる有機質廃棄物醗酵方法および醗酵システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る有機質廃棄物醗酵方法は、醗酵槽に有機質廃棄物および醗酵菌を入れて回転させる第1工程と、第1工程後の醗酵槽から発生する醗酵ガスを、第1工程後に醗酵を終了し臭気吸着剤を投入した他の醗酵槽の内部に供給する第2工程とを、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る有機質廃棄物醗酵方法では、第1工程で醗酵槽に有機質廃棄物および醗酵菌を入れて回転させることにより、有機質廃棄物および発酵菌を攪拌混合して醗酵させることができる。醗酵槽内では、第1工程後、有機質廃棄物の醗酵分解が進行し、これに伴いアンモニアや硫化水素などの悪臭物質を含む醗酵ガスが発生する。第2工程で、この醗酵ガスを他の醗酵槽の内部に供給し、醗酵ガスに含まれる悪臭物質を臭気吸着剤に吸着させることにより、脱臭することができる。
【0008】
こうして、脱臭設備を設けることなく、高い脱臭効果を得ることができる。また、脱臭設備を設ける場合に比べ、低コストで脱臭を行うことができる。臭気吸着剤に吸着された悪臭物質は、醗酵が終了した原料とともに肥料として利用することができる。このため、脱臭後の悪臭物質を廃棄することなく、資源として有効利用することができる。
【0009】
臭気吸着剤は、例えば陽イオン交換能が大きいゼオライトから成る。この場合、ゼオライトの陽イオン交換能により、醗酵ガスに含まれる悪臭物質のアンモニウムイオンをゼオライトに吸着させることができる。これにより、脱臭効果を得ることができ、アンモニアをアンモニア態窒素として肥料に利用することができる。
【0010】
本発明に係る有機質廃棄物醗酵方法は、第2工程で、第1工程後の醗酵槽から発生する醗酵ガスを、ミストを分離した後に他の醗酵槽の内部に供給することが好ましい。ミストは、醗酵で発生する熱により原料中から蒸発した水蒸気や粉塵から成っている。この場合、ミストを分離することにより、醗酵により減少した他の醗酵槽内部の水分含有量が、ミスト中の水蒸気で増加するのを防止することができる。また、ミストが詰まって、醗酵ガスの供給が止まるのを防止することができる。
【0011】
本発明に係る醗酵システムは、醗酵槽を移動させて醗酵を行うための醗酵システムであって、架台移動レールと移動架台と吊上移動レールと吊上装置とを有し、前記移動架台は前記架台移動レールに沿って移動する構成を有し、前記吊上移動レールは前記架台移動レールと交差する方向に延びるよう前記移動架台に設けられ、前記吊上装置は醗酵槽を保持して解放可能な保持手段と、前記保持手段を昇降可能な昇降手段と、前記昇降手段を前記吊上移動レールに沿って移動させる移動手段とを有することを、特徴とする。
【0012】
本発明に係る醗酵システムは、本発明に係る有機質廃棄物醗酵方法で好適に使用される。まず、複数の醗酵槽を架台移動レールに沿って並べて配置する。吊上装置の保持手段により醗酵槽を保持して昇降手段により上昇させ、移動手段で吊上移動レールに沿って醗酵槽の回転攪拌位置まで移動させ、昇降手段により醗酵槽を下降させ回転攪拌位置で保持手段から醗酵槽を解放する。移動させた醗酵槽の内部に有機質廃棄物および醗酵菌を入れて攪拌混合した後、逆の手順で、その醗酵槽を吊上装置の保持手段により保持して昇降手段により上昇させ、移動手段でもとの場所に移動させ、もとの場所に醗酵槽を戻す。その場所で、醗酵槽の内部の醗酵を進行させる。
複数の醗酵槽に対し、架台移動レールに沿って並んだ順に前述の工程を繰り返し、効率的に醗酵処理を行うことができる。
【0013】
なお、醗酵が終了したならば、その醗酵槽の内部に臭気吸着剤を投入し、その醗酵槽の内部に、醗酵進行中の醗酵槽から発生する醗酵ガスを供給することが好ましい。これにより、醗酵ガスに含まれる悪臭物質を臭気吸着剤に吸着させて脱臭することができる。醗酵が終了した醗酵槽と醗酵進行中の醗酵槽とを隣り合わせて醗酵進行中の醗酵槽の脱臭処理を行うことにより、効率的に脱臭を行うことができる。
【0014】
こうして、脱臭設備を設けることなく、高い脱臭効果を得ることができる。また、脱臭設備を設ける場合に比べ、低コストで脱臭を行うことができる。臭気吸着剤に吸着された悪臭物質は、醗酵が終了した原料とともに肥料として利用することができる。このため、脱臭後の悪臭物質を廃棄することなく、資源として有効利用することができる。
【0015】
本発明に係る醗酵システムは、前記吊上移動レールの下方で前記移動架台に取り付けられ、前記吊上装置により運搬された醗酵槽を載せて回転可能な回転装置と、送られたガスからミストを分離して排出するミスト分離器と、一方の醗酵槽から発生する醗酵ガスを、前記ミスト分離器を介して他方の醗酵槽に供給する送気装置とを、有することが好ましい。回転装置は、移動架台とともに架台移動レールに沿って移動し、吊上装置により吊上移動レールに沿って運搬された醗酵槽を載せて回転させる。回転装置を移動架台とともに移動させることにより、醗酵槽から回転装置までの移動距離を短くし、処理の円滑化を図ることができる。回転により有機質廃棄物および発酵菌を攪拌混合して醗酵を促進することができる。送気装置は、内部で醗酵が進行している一方の醗酵槽から発生する醗酵ガスを、隣り合って並べられ、醗酵を終了し臭気吸着剤を投入した他方の醗酵槽に供給するのに好適に使用される。この場合、ミスト分離器でミストを分離して排出することにより、醗酵により減少した他方の醗酵槽内部の水分含有量が、ミスト中の水蒸気で増加するのを防止することができる。また、送気装置内でミストが詰まって、醗酵ガスの供給が止まるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低コストで高い脱臭効果を得ることができ、悪臭物質を資源として有効利用することができる有機質廃棄物醗酵方法および醗酵システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図7は、本発明の実施の形態の有機質廃棄物醗酵方法および醗酵システムを示している。
図1乃至図6に示すように、醗酵システム10は、醗酵槽11と3本の架台移動レール12a,12b,12cと移動架台13と吊上移動レール14と吊上装置15と回転装置16とミスト分離器17と送気装置18と排出用ベルトコンベア19とを有している。
【0018】
図1、図2、図3および図5に示すように、醗酵槽11は、円柱状の槽から成る。醗酵槽11は、密閉可能であって原料投入口21と送気口22と送気管23と排気口24と排気管25と攪拌羽根26とを有している。図3に示すように、原料投入口21は、醗酵槽11の周囲側面に形成されている。原料投入口21には、開閉式で取り外すこともできる蓋21aが設けられている。送気口22は、5つから成り、醗酵槽11の一方の端面11aの縁部に円弧の一部に沿って形成され、互いに等間隔で配置されている。送気口22は、原料投入口21を上に向けて醗酵槽11を設置したとき、端面11aの下部に位置するよう配置されている。
【0019】
送気管23は、各送気口22に接続された5本の支管23aと、醗酵槽11の外部で各支管23aに接続された1本のヘッダー管23bとを有している。各支管23aは、醗酵槽11の内部で側面に沿って互いに平行に配置されている。各支管23aは、醗酵槽11の内部で複数の通気孔(図示せず)を有している。各支管23aは、醗酵槽11の外部で送気量を調整するためのバルブ23cが設けられている。ヘッダー管23bは、端部に継手23dを有している。
【0020】
排気口24は、醗酵槽11の一方の端面11aの縁部に形成されている。排気口24は、原料投入口21を上にして醗酵槽11を設置したとき、端面11aの上部に位置するよう配置されている。排気管25は、排気口24に接続されている。排気管25は、醗酵槽11の内部の端部に設けられた開閉弁25aと、醗酵槽11の外部で開閉弁25aを開閉操作するための開閉レバー25bとを有している。排気管25は、醗酵槽11の外部の端部に継手25cを有している。
【0021】
図1に示すように、攪拌羽根26は、1対から成り、醗酵槽11の内部に設けられている。各攪拌羽根26は、それぞれ醗酵槽11の円柱の中心線を挟んで、その中心線から等距離の位置に配置されている。各攪拌羽根26は、攪拌用モータ26aを有している。各攪拌羽根26は、攪拌用モータ26aにより醗酵槽11の中心線と平行の軸線を中心として、同じ方向に回転可能に設けられている。
【0022】
図1乃至図4に示すように、各架台移動レール12a,12b,12cは、鋼鉄製の平底レールから成り、互いに平行に配置されている。各架台移動レール12a,12b,12cは、互いに醗酵槽11の直径より広い間隔を空けてほぼ等間隔で設置されている。
【0023】
移動架台13は、積載台27と6本の柱材28a,28b,28c,28d,28e,28fと6本の梁材29a,29b,29c,29d,29e,29fと駆動用台30と駆動用モータ31とを有している。積載台27は、平面形状が矩形状で、長さが各架台移動レール12a,12b,12cの間隔よりわずかに長く形成されている。積載台27は、長さ方向の中央部に、幅方向に平行な溝27aを有している。溝27aは、積載台27の一方の縁部27bで開放している。積載台27は、幅方向を架台移動レール12a,12b,12cに対して平行にして、一端側の架台移動レール12aと中央の架台移動レール12bとに架け渡されて配置されている。積載台27は、架台移動レール12a,12b上を移動可能に、架台移動レール12a,12bに対応する位置に4個の架台用車輪32aを有している。各架台用車輪32aはそれぞれ積載台27の四隅付近に設けられ、架台移動レール12a,12bに沿って積載台27を移動可能となっている。
【0024】
柱材28a,28b,28c,28dは、積載台27の上で、それぞれ積載台27の四隅に設けられている。柱材28e,28fは、それぞれ柱材28a,28cを結ぶ延長線または柱材28b,28dを結ぶ延長線と、他端側の架台移動レール12cとの交差位置に設けられている。柱材28e,28fは、下部に架台移動レール12cに沿った方向に回転する架台用車輪32bが設けられている。各柱材28は、上端が同じ高さで、積載台27の上に回転装置16および醗酵槽11を載せたときの高さより高くなっている。
【0025】
梁材29a,29bは、それぞれ柱材28a,28c,28e、および柱材28b,28d,28fの上端を連結して設けられている。梁材29c,29d,29eは、それぞれ柱材28a,28b、柱材28c,28d、および柱材28e,28fの上端を連結して設けられている。梁材29f(図示せず)は、柱材28e,28fの下部を連結して設けられている。
【0026】
駆動用台30は、積載台27と同じ長さを有し、積載台27の他方の縁部27cに沿って取り付けられている。駆動用台30は、架台移動レール12a,12b上を移動可能に、架台移動レール12a,12bに対応する位置に2個の駆動用車輪30aを有している。
【0027】
駆動用モータ31は、駆動用台30の上で、各駆動用車輪30aの間に設けられている。駆動用モータ31は、各駆動用車輪30aを回転駆動可能である。移動架台13は、駆動用モータ31により各駆動用車輪30aを回転して、架台移動レール12a,12b,12cに沿って移動するよう構成されている。
【0028】
図1乃至図4に示すように、吊上移動レール14は、2本から成り、それぞれ梁材29c,29d,29eの上に梁材29a,29bに沿って平行に設けられている。各吊上移動レール14は、架台移動レール12a,12b,12cと交差する方向に延びている。
【0029】
吊上装置15は、移動手段33と昇降手段34と保持手段35とを有している。移動手段33は、矩形枠状の移動台36と4つの移動車輪37と移動用モータ38とベルト39とを有している。各移動車輪37は、移動台36を吊上移動レール14に沿って移動可能に、移動台36の4隅に設けられている。移動用モータ38は、梁29cの上部中央に取り付けられている。移動用モータ38は、回転軸に移動用スプロケット38aが固定されている。ベルト39は、移動用スプロケット38aおよび梁29c,29eに掛けられて、移動台36の端部同士を接続している。ベルト39は、梁29c,29eに設けられた滑車39aを介して、梁29c,29eに掛けられている。移動手段33は、移動用モータ38の回転によりベルト39を移動させて、移動台36を移動可能である。
【0030】
昇降手段34は、油圧ジャッキ40と吊上シャフト41とを有している。油圧ジャッキ40は、移動台36の上に設けられている。吊上シャフト41は、油圧ジャッキ40に接続され、移動台36の枠の間から各吊上移動レール14の間を通ってぶら下がっている。昇降手段34は、油圧ジャッキ40により吊上シャフト41を昇降可能である。
【0031】
保持手段35は、両端に1対の爪42が設けられた水平の棒から成っている。保持手段35は、長さが醗酵槽11の円柱の高さよりやや長く、吊上シャフト41の先端に水平に取り付けられている。保持手段35は、積載台27の幅方向に平行になっている。各爪42は、下方に向かって伸び、鉛直下方の位置と互いに少し開いた位置との間で開閉可能に設けられている。保持手段35は、両端の爪42を開閉することにより、醗酵槽11の両端面11a,11bを挟んで醗酵槽11を保持して解放可能である。
【0032】
図1および図3に示すように、回転装置16は、吊上移動レール14の下方で、積載台27の上に設けられている。回転装置16は、回転用ローラー43と回転用モータ44とチェンベルト45とを有している。回転用ローラー43は、4つのゴムタイヤから成り、軸43aで接続された2つを1組として、2組設けられている。回転用ローラー43は、各組が積載台27の両端部から等距離の位置に、醗酵槽11の直径より狭い間隔で配置されている。回転用ローラー43は、各組の軸43aが積載台27の幅方向に平行で、軸43aを中心として回転可能に設けられている。回転用ローラー43は、各組の軸43aにローラー側スプロケット43bが固定されている。
【0033】
回転用モータ44は、2つから成り、それぞれ積載台27の各組の回転用ローラー43より端部側に設けられている。各回転用モータ44は、回転軸にギアから成るモータ側スプロケット44aが固定されている。チェンベルト45は、2つから成り、それぞれローラ側スプロケット43bおよびモータ側スプロケット44aに掛けられている。各チェンベルト45は、各回転用モータ44の回転を各回転用ローラー43に伝達するようになっている。各チェンベルト45は、ベルトカバー45aで覆われている。回転装置16は、醗酵槽11の円柱の中心線が回転用ローラー43の軸43aと平行になるよう醗酵槽11を載せて、攪拌羽根26と反対方向に回転可能である。
【0034】
図6に示すように、ミスト分離器17は、排気用パイプ46と冷却フィン47と冷却用ファン48とを有している。排気用パイプ46は、蛇行して設けられ、一端に導入接続口46aを有し、他端に排出接続口46bを有している。排気用パイプ46は、排出接続口46b側の端部に水受タンク46cを有している。冷却フィン47は、排気用パイプ46の側面に設けられている。冷却用ファン48は、排気用パイプ46の側面に送風可能に固定用架台48aに取り付けられている。ミスト分離器17は、送られたガスを冷却フィン47や冷却用ファン48で冷却し、ガス中の水蒸気を粉塵とともに結露させてガスからミストを分離し、ミストを水受タンク46cの内部に溜めて排出するよう構成されている。
【0035】
図4に示すように、送気装置18は、送気ブロワー49と排気パイプ50と送気パイプ51とを有している。送気ブロワー49は、吸引した流体を直接排出する機能を有している。排気パイプ50は、一方の醗酵槽11の排気管25の継手25cと送気ブロワー49とを接続可能である。送気パイプ51は、ミスト分離器17を介して、送気ブロワー49と他方の醗酵槽11のヘッダー管23bの継手23dとを接続可能である。送気装置18は、送気ブロワー49により、一方の醗酵槽11から発生する醗酵ガスを、ミスト分離器17を介して他方の醗酵槽11に供給するよう構成されている。
【0036】
排出用ベルトコンベア19は、積載台27の溝27aに設けられている。排出用ベルトコンベア19は、積載台27の幅方向に平行に設けられ、一端19aが積載台27の一方の縁部27bで移動架台13からはみ出している。排出用ベルトコンベア19は、回転用ローラー43の上に載せられた醗酵槽11の原料投入口21を下に向けて開けたとき、原料投入口21から落ちる原料を受け止めて、移動架台13の外部に搬出可能である。
【0037】
次に、作用について説明する。
本発明の実施の形態の醗酵システム10は、以下に示す本発明の実施の形態の有機質廃棄物醗酵方法で好適に使用される。まず、複数の醗酵槽11を中央の架台移動レール12bと他端側の架台移動レール12cとの間に、架台移動レール12b,12cに沿って設置面に並べて配置する。このとき、各醗酵槽11の一方の端面11aを移動架台13の移動方向の同じ側に向け、原料投入口21を上に向けておく。また、醗酵槽11が転がらないよう、醗酵槽11の両脇の設置面にストッパ1を置く。
【0038】
図1に示すように、吊上装置15の保持手段35により醗酵槽11を保持して昇降手段34により上昇させる。移動手段33で吊上移動レール14に沿って回転装置16の回転用ローラー43の上方まで移動させる。昇降手段34により醗酵槽11を下降させ回転用ローラー43に載せて、保持手段35から醗酵槽11を解放する。図7(a)に示すように、移動させた醗酵槽11の原料投入口21を開けて、ベルトコンベア2により内部に有機質廃棄物3および醗酵菌を入れる。図7(b)に示すように、回転用ローラー43と攪拌羽根26とを回転させて、攪拌混合を行う。これにより、醗酵を促進することができる。
【0039】
その後、図7(c)に示すように、逆の手順で、その醗酵槽11を吊上装置15の保持手段35により保持して昇降手段34により上昇させる。移動手段33でもとの場所に移動させ、もとの場所に醗酵槽11を戻す。その場所で、醗酵槽11の内部の醗酵を進行させる。このとき、醗酵槽11内では、醗酵の進行に伴いアンモニアや硫化水素などの悪臭物質を含む醗酵ガスが発生する。
【0040】
複数の醗酵槽11に対し、架台移動レール12b,12cに沿って並んだ順に前述の工程を繰り返し、効率的に醗酵処理を行うことができる。また、回転装置16を移動架台13とともに移動させることにより、醗酵槽11から回転装置16までの移動距離を短くし、処理の円滑化を図ることができる。
【0041】
なお、醗酵菌などの微生物による醗酵は、一度最高温度に達すると水分と有機物の減少により、徐々に醗酵温度が低下して終了する。醗酵終了後、図7(e)に示すように、再び醗酵槽11を回転装置16に載せて、攪拌混合して切返し運転を行う。これにより、未醗酵部分と醗酵菌とが攪拌混合され、再び醗酵が進行する。切返し運転終了後、図7(f)に示すように、再び醗酵槽11をもとの場所に戻して、2次醗酵を行う。この切返し運転と醗酵とを数回繰り返す。これにより、醗酵槽11の内部の有機質廃棄物3が十分に腐熟されて、コンポスト状態になる。
【0042】
醗酵が終了して醗酵槽11の内部の有機質廃棄物3がコンポスト状態になったならば、その醗酵槽11の内部に、臭気吸着剤として陽イオン交換能の大きいゼオライトを投入する。ゼオライトは、コンポスト状態になった有機質廃棄物3の乾燥重量の10〜20%程度の量を添加する。その醗酵槽11を再び回転装置16に載せて回転させ、ゼオライトと有機質廃棄物3とを均一に攪拌混合する。攪拌終了後、その醗酵槽11を再びもとの場所に戻す。
【0043】
図4および図7(d)に示すように、内部で醗酵が進行している醗酵槽11Aを、隣り合って並べられ、醗酵終了後臭気吸着剤が投入された醗酵槽11Bに、送気装置18により接続する。このとき、排気パイプ50を醗酵槽11Aの排気管25の継手25cに接続し、送気パイプ51を醗酵槽11Bのヘッダー管23bの継手23dに接続する。醗酵進行中の醗酵槽11Aのヘッダー管23bの継手23dに送気ブロワー4を接続し、新鮮な空気を醗酵槽11A内に送気して醗酵を促進させる。また、醗酵槽11Bの排気管25の継手25cに排気パイプ5を接続し、排気を行う。こうして、醗酵槽11Bの内部に、醗酵進行中の醗酵槽11Aから発生する醗酵ガスを供給する。
【0044】
このとき、送気装置18に接続されたミスト分離器17で、醗酵ガス中のミストを分離して醗酵槽11Bに排出するため、醗酵により減少した醗酵槽11B内部の水分含有量が、ミスト中の水蒸気で増加するのを防止することができる。また、送気装置18内でミストが詰まって、醗酵ガスの供給が止まるのを防止することができる。
【0045】
このように送気装置18により醗酵ガスを供給することにより、醗酵ガスに含まれる悪臭物質のアンモニウムイオンをゼオライトに吸着させて脱臭することができる。また、コンポスト状態の材料中にはアンモニアを硝酸に変える硝化細菌などが存在するため、この硝化細菌などがアンモニアや硫化水素などの悪臭物質を栄養源として分解し、脱臭することができる。醗酵が終了した醗酵槽11Bと醗酵進行中の醗酵槽11Aとを隣り合わせて醗酵進行中の醗酵槽11Aの脱臭処理を行うため、効率的に脱臭を行うことができる。
こうして、脱臭設備を設けることなく、高い脱臭効果を得ることができる。また、脱臭設備を設ける場合に比べ、低コストで脱臭を行うことができる。
【0046】
全ての処理が終了した醗酵槽11を、原料投入口21を下に向けて回転装置16に載せる。原料投入口21を開け、醗酵槽11の内部の原料を排出用ベルトコンベア19に落として排出する。排出された原料は、肥料として利用可能である。このとき、ゼオライトに吸着されたアンモニアは、醗酵が終了した原料とともにアンモニア態窒素として肥料に利用することができる。このように、醗酵システム10および有機質廃棄物醗酵方法は、資源循環型のシステムであり、脱臭後の悪臭物質を廃棄することなく、資源として有効利用することができる。
【0047】
なお、従来のロータリーキルン型の醗酵方式は、有機質廃棄物3の処理量の増減に対応するために、装置全体の増設を行う必要がある。また、堆積型の醗酵方式は、コンクリート製の醗酵槽を増設する必要があり、大がかりな土木工事が必要となる。これに対し、醗酵システム10および有機質廃棄物醗酵方法は、醗酵槽11の数を増減するだけで、有機質廃棄物3の処理量の増減に低コストで容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態の醗酵システムを示す正面図である。
【図2】図1に示す醗酵システムの平面図である。
【図3】図1に示す醗酵システムの右側面図である。
【図4】図1に示す醗酵システムの使用状態を示す平面図である。
【図5】図1に示す醗酵システムの醗酵槽を示す(a)正面図、(b)側面図である。
【図6】図1に示す醗酵システムのミスト分離器を示す(a)冷却用ファンを取り外した状態の正面図、(b)冷却用ファンを取り付けた状態の正面図、(c)底面図、(d)右側面図である。
【図7】図1に示す醗酵システムを使用した本発明の実施の形態の有機質廃棄物醗酵方法を示す正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ストッパ
2 ベルトコンベア
3 有機質廃棄物
4 送気ブロワー
5 排気パイプ
10 醗酵システム
11 醗酵槽
12a,12b,12c 架台移動レール
13 移動架台
14 吊上移動レール
15 吊上装置
16 回転装置
17 ミスト分離器
18 送気装置
19 排出用ベルトコンベア
21 原料投入口
22 送気口
23 送気管
24 排気口
25 排気管
26 攪拌羽根
27 積載台
28a,28b,28c,28d,28e,28f 柱材
29a,29b,29c,29d,29e,29f 梁材
30 駆動用台
31 駆動用モータ
32a,32b 架台用車輪
33 移動手段
34 昇降手段
35 保持手段
36 移動台
37 移動車輪
38 移動用モータ
39 ベルト
40 油圧ジャッキ
41 吊上シャフト
42 爪
43 回転用ローラー
44 回転用モータ
45 チェンベルト
46 排気用パイプ
47 冷却フィン
48 冷却用ファン
49 送気ブロワー
50 排気パイプ
51 送気パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
醗酵槽に有機質廃棄物および醗酵菌を入れて回転させる第1工程と、
第1工程後の醗酵槽から発生する醗酵ガスを、第1工程後に醗酵を終了し臭気吸着剤を投入した他の醗酵槽の内部に供給する第2工程とを、
有することを特徴とする有機質廃棄物醗酵方法。
【請求項2】
第2工程で、第1工程後の醗酵槽から発生する醗酵ガスを、ミストを分離した後に他の醗酵槽の内部に供給することを、
特徴とする請求項1記載の有機質廃棄物醗酵方法。
【請求項3】
醗酵槽を移動させて醗酵を行うための醗酵システムであって、
架台移動レールと移動架台と吊上移動レールと吊上装置とを有し、
前記移動架台は前記架台移動レールに沿って移動する構成を有し、
前記吊上移動レールは前記架台移動レールと交差する方向に延びるよう前記移動架台に設けられ、
前記吊上装置は醗酵槽を保持して解放可能な保持手段と、前記保持手段を昇降可能な昇降手段と、前記昇降手段を前記吊上移動レールに沿って移動させる移動手段とを有することを、
特徴とする醗酵システム。
【請求項4】
前記吊上移動レールの下方で前記移動架台に取り付けられ、前記吊上装置により運搬された醗酵槽を載せて回転可能な回転装置と、
送られたガスからミストを分離して排出するミスト分離器と、
一方の醗酵槽から発生する醗酵ガスを、前記ミスト分離器を介して他方の醗酵槽に供給する送気装置とを、
有することを特徴とする請求項3記載の醗酵システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
醗酵槽を移動させて醗酵を行うための醗酵システムであって、
架台移動レールと移動架台と吊上移動レールと吊上装置とを有し、
前記移動架台は前記架台移動レールに沿って移動する構成を有し、
前記吊上移動レールは前記架台移動レールと交差する方向に延びるよう前記移動架台に設けられ、
前記吊上装置は醗酵槽を保持して解放可能な保持手段と、前記保持手段を昇降可能な昇降手段と、前記昇降手段を前記吊上移動レールに沿って移動させる移動手段とを有することを、
特徴とする醗酵システム。
【請求項2】
前記吊上移動レールの下方で前記移動架台に取り付けられ、前記吊上装置により運搬された醗酵槽を載せて回転可能な回転装置と、
送られたガスからミストを分離して排出するミスト分離器と、
一方の醗酵槽から発生する醗酵ガスを、前記ミスト分離器を介して他方の醗酵槽に供給する送気装置とを、
有することを特徴とする請求項1記載の醗酵システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−55707(P2006−55707A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238032(P2004−238032)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【特許番号】特許第3701298号(P3701298)
【特許公報発行日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(303010256)
【Fターム(参考)】