説明

醗酵調味料の製造方法

【課題】安価な竹を原料として、従来設備が利用できる醗酵調味料の製造方法を提供する。
【解決手段】竹粉末に水を加えて浸漬する工程S10と、材料を加熱蒸煮する工程S20と、加熱蒸煮を行った前記材料を冷却する工程S30と、冷却された前記材料中に食塩、水及び種麹を加えて麹を作製する工程S40と、作製した麹をもろみに醸成する工程S50と、前記醸成したもろみを醗酵させる工程S60と、醗酵させたもろみを製品として取り出す工程S70からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調味料の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、竹を原料とした醤油や味噌等の醗酵調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の代表的な調味料として味噌、醤油があり、古くから日本人の食生活に密着している。また、これらは何れも健康に資する醗酵食品として全世界にその使用が広まっている。
一方、多様化する食生活に対応するべく、更なる特徴のある調味料が求められているのも事実である。
【0003】
日本には古来より竹の文化が営々と息づいている。
一方、近隣の竹林を見るに、昨今の人件費の高騰、労働人口の減少等により竹の消費量は減少の一途を辿り、竹林の維持が困難になりつつある。過っては日本の風雅の代表であった竹林も荒廃するに任せている。
食用の竹の子は今でも消費されているが、竹細工職人の減少等によって成竹の消費量は先細ってきている。
【0004】
ところで、竹には食物繊維が多く、蛋白質も含まれている。
しかし、成竹が含有する食物繊維や蛋白質を容易に人体に摂取することのできる食品(食品添加材など)はいまだ開示されていない。
醗酵調味料として、菜種粕を主原料とする(特許文献1参照)が開示されているが、係る従来技術(特許文献1)で製造される発酵食品は、竹が含有する食物繊維や蛋白質を容易に人体に摂取することのできる食品には該当しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−136644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、安価な竹を原料とする醗酵調味料の製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、種々の研究及び実験によって、竹を微粒に粉砕して醗酵すれば、竹に含有の蛋白質も分解されてアミノ酸に変質し、竹の食物繊維及びアミノ酸が人の体内に摂取し易くなることを見出した。
そして、係る知見に基いて、新たな醗酵調味料を製造する方法を創作した。
【0008】
本発明の醗酵調味料の製造方法は、竹粉末に水を加えて浸漬する工程(S10)と、竹粉末に水を加えて浸漬した状態の材料を加熱蒸煮する工程(S20)と、加熱蒸煮を行った材料を冷却する工程(S30)と、冷却した後に食塩、水及び種麹を添加して(S40)もろみに醸成する工程(S50)と、前記醸成したもろみを醗酵させる工程(S60)とを有することを特徴としている。
【0009】
本発明において、前記加熱蒸煮する工程(S20)の後、「ふすま」を竹粉末の80(質量)%〜120(質量)%添加して、前記材料を冷却する工程(S30)では冷却された材料に種麹を適量接種するのが好ましい。
ここで、種麹(菌)として、アスペルギルスオリゼを用いるのが望ましい。
【0010】
或いは、本発明において、前記材料を冷却する工程(S30)の後に、(当該材料中に)「ふすま麹」を竹粉末の80(質量)%〜120(質量)%添加するのが好ましい。
ここで、「ふすま麹」の添加量は、竹粉末の80(質量)%〜120(質量)%であるのが好ましい。
【0011】
本発明の実施に際して、前記竹粉末に水を加えて所定時間浸漬する工程(S10)において、竹粉末に対する水の添加割合を80〜120%とすることが好ましい。
【0012】
また、前記麹を作製する工程(S40)では、竹粉末に対して、1〜15(質量)%の食塩と、50〜150(質量)%の水を添加する(S40)のが好ましい。
そして、前記もろみに醸成する工程(S50)では、耐塩性乳酸菌培養液及び耐塩性酵母培養液を適量添加することが好ましい。
そして、耐塩性乳酸菌培養液の添加適量及び耐塩性酵母培養液の添加適量は、竹粉末1kgに対して、各々、70ml〜150ml(例えば、100ml)であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明の醗酵調味料の製造方法によれば、主材料として竹を用いており、竹は供給量が非常に多く、安価に入手できる。そのため、本発明によれば、材料調達コストを抑制することができる。
更に、本発明の製造方法では、加熱蒸煮の際に加える「ふすま」、或いは冷却工程時に加える「ふすま麹」を用いているが、「ふすま」或いは「ふすま麹」の原料は共に小麦粉の蛋白質(グルテン)を練り固めたものであり、これらも比較的安価で且つ安定的に入手できる。このことも、本発明による調味料の製造コストを低く抑制できる一因である。
【0014】
ここで、竹には食物繊維が多く、蛋白質も含まれている。したがって、上述した製造方法で作られた醗酵調味料を用いた料理或いは醗酵調味料をそのまま食材として用いた場合は、それを食した人体を肥満や高血圧などからまもり、人体を健康に保つことができる。
また、竹を原料とした醗酵調味料である味噌、醤油は、それらの調味料を用いた料理が一種独特な清涼感(風味)を伴い、新たな味の創生を促し、食文化を更に豊かに育てていくことができる。
【0015】
ここで、本発明の製造方法で使用する設備は、従来の醗酵調味料である味噌、醤油の製造設備が殆どそのまま利用可能である。すなわち、新たな設備投資を必要とすること無く、本発明を実施することが出来る。
その結果、簡便かつ容易に、本発明により醗酵調味料を製造できる。
【0016】
ここで、竹(成竹)を材料として用いるため、材料は国内いたるところで豊富且つ安価で安定的に入手できる。
そして、材料である竹を採取するに際しては、現在密集して荒れるに任せた竹林に人の手を入れ、余分な竹を間引くことで材料が安価に得られる。また、それまで荒れていた竹林に人の手が入るために、美林が取り戻せて環境整備にもつながる。
さらに、材料(成竹)採取のための雇用の増加が見込まれるために、国内経済の発展に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態を示す工程図である。
【図2】第1実施形態の手順を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態を示す工程図である。
【図4】第2実施形態の手順を示すフローチャートである。
【図5】第3実施形態を示す工程図である。
【図6】第3実施形態の手順を示すフローチャートである。
【図7】第4実施形態を示す工程図である。
【図8】第4実施形態の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態の説明に際して、竹以外の材料の添加量は、竹1kgに対する質量割合、或いは、竹1kgに対する量(質量、容積、その他)で記載されている。
先ず、図1、図2を参照して第1実施形態を説明する。
第1実施形態は、竹粉末に水を加え、所定時間浸漬した後、加熱蒸煮する際に「ふすま」を添加して、液状の醗酵調味料(醤油)を製造する製造方法に係る実施形態である。
【0019】
図1を参照しつつ、図2のフローチャートに基づいて、第1実施形態を説明する。
図2において、第1実施形態に係る醗酵調味料(醤油)の製造方法は、先ず、ステップS10において、予め竹を粉末に加工する。
【0020】
竹を粉末に加工する手法としては、従来、公知の手法により行なうことが可能である。
図示の実施形態では、例えば微粉末粉砕機により、竹を粉末に加工している。微粉末粉砕機については、公知、市販のものを適用することが出来る。
【0021】
ここで、例えば微粉末粉砕機により粉末に加工された竹の粒径は、0.5〜1.0mm、特に0.7mmが好ましい。
【0022】
そして、粉末に加工された竹(竹粉末)1kgに、水を800〜1200ml加え、所定時間(例えば、2時間以上、好ましくは12時間以上)浸漬させる(図1(a)参照)。
ここで、水の添加量を少なくすれば、濃い味の醤油が得られ、水の量が多ければ薄い味の醤油が得られる。
【0023】
図2において、ステップS10の処理後、次のステップS20の加熱蒸煮工程では、竹粉末1kgに水800〜1200ml加え、2時間以上(好ましくは12時間以上)浸漬させたもの(ステップS10の状態の材料)を、少なくとも90℃(90℃以上)まで昇温した後、その温度(少なくとも90℃)を所定時間(50〜70分)だけ維持する。
この加熱蒸煮工程S20は、材料(竹の粉末)及び添加する「ふすま」の殺菌のために行なわれる。
90℃という温度は、加熱容器の中心部分における水温であり、加熱容器周辺の水温ではない。
【0024】
加熱する際には、竹粉末に対して「ふすま」を80〜120(質量)%添加する(図1(b)参照)。
ここで、ステップS10で、竹粉末と水との混合比率が1:1の場合には、「ふすま」の量を竹粉末に対して質量割合で50%以下にすれば、竹の分解が停滞し、一方、150%以上にすれば製造された醗酵調味料の風味を損なう。
係る理由と、竹を材料とする醗酵調味料の特性を活かすため、竹粉末に対する「ふすま」の添加割合を80〜120(質量)%とした。
【0025】
図2において、ステップS20で、90℃の温度を所定時間(50〜70分)維持する加熱蒸煮工程(ステップS20)が終了したならば、ステップS30の冷却工程に進む。
係る冷却工程では加熱を停止して、徐冷によって材料を40〜30℃の範囲で冷却する。
冷却を開始したら所定時間経過後に種麹を添加(接種)し、麹作製を開始する(ステップS40:図1(c)参照)。
【0026】
種麹を添加するのは、ステップS20で添加した「ふすま」から、「ふすま麹」を生成或いは作製するためである。
ここで、冷却工程における冷却温度が低温過ぎると麹菌は活性化せず、冷却温度が高温過ぎると麹菌は死滅してしまう。
【0027】
ここで、材料に接種する種麹(菌)として、アスペルギルスオリゼを用いることが好ましい。
また、ステップS40の麹作製工程の際には、図示の例では処理容器内の麹作製温度を25℃〜40℃(例えば、35℃)に保ち、2日〜7日(例えば、3日)かけて麹作製を行なう。
ここで、麹作製温度が低温過ぎると麹菌が活性化せず、高温過ぎると麹菌が死滅してしまう。
また、作製期間が短いと麹が出来ず、作製期間が長いと胞子が出てしまい、麹が出来ない。
【0028】
ステップS40の麹作製工程の後、食塩及び水を添加して、もろみを醸成する(ステップS50:もろみ醸成工程)。ここで、食塩の添加量は竹粉末に対して、1(質量)%〜15(質量)%であり(例えば、10質量%)、水の添加量は50(質量)%〜150(質量)%(例えば、100質量%)である。
食塩の添加量が15(質量)%を超えると、後述する乳酸菌及び酵母の活性を妨げるので、上記範囲に留めるべきである。
一方、水の添加量が多すぎると醗酵調味料は薄く仕上がり、少ないと醗酵調味料は硬くなるため、製造中はこれらの状況を見て水の加減を行うとよい。
食塩と水を添加後に、処理容器内の材料を例えば、電動モーター駆動のミキサ、或いは人力によって攪拌する(図1(d)参照)。
【0029】
もろみ醸成工程(ステップS50)の後、耐塩性乳酸菌培養液及び耐塩性酵母培養液を共に70ml〜150ml(例えば、100ml)添加する(図1の(e)参照)。
ここで、耐塩性乳酸菌培養液添加の目的は、乳酸を増殖させ、塩味を緩和し、pHを下げ、雑菌の増殖を抑制する目的がある。そして耐塩性乳酸菌には、ペディオコッカスハローフィルスを用いるのがよい。その時の培養液は麹エキス培地である。
また、耐塩性酵母培養液添加の目的は、香気成分を作り、味・風味を調える。
そして対塩性酵母として、チゴサッカロマイセスルキシを、その培養液として麹エキス培地を用いることが好ましい。
【0030】
図2において、耐塩性乳酸菌培養液及び耐塩性酵母培養液を添加した後、もろみは醗酵して、醗酵工程が行なわれる(ステップS60:図1(f)参照)。
醗酵は、その時期の常温で行なう。
発明者による実験によれば、いわゆる「常温」(1〜37℃)であれば、一年中、醗酵工程は実行することが出来る。
そして発明者の実験によれば、低温時(例えば冬季:常温は1℃〜10℃)には、十分醗酵するまでに約3ヶ月を要し、高温時(例えば夏季:常温は30℃〜37℃)では1日で十分に醗酵する。
【0031】
醗酵工程(ステップS60:図1(f)参照)において、好ましくは、製造エリアの雰囲気温度を35℃に保ち、3日かけてもろみを醗酵させる。
十分に醗酵しているか否かは、例えば、当該材料の単位質量当りにおける耐塩性酵母の数を光学顕微鏡下でカウントすることにより判断することが出来る。この場合、耐塩性酵母の数が所定量以上あれば、「十分に醗酵している」と判断する。
【0032】
第1実施形態の醤油の場合、材料が十分醗酵したことを確認し、材料を圧搾濾過する(ステップS61:図1(g)参照)。
圧搾濾過では、圧力を掛けて搾っている。
そして、いわゆる「オリ引き」を目的として、圧力を掛けて搾った液体を静置して、比重差により「オリ引き」(液体と固体の分離のことで、沈殿した固体部分を除去すること)を行なう。或いは、圧力を掛けて搾った液体を、濾布を用いて濾過し、或いは、遠心分離機により濾過する。
【0033】
図2のステップS62において、濾過した液状の調味料(醤油)を殺菌する(図1(h)参照)。
殺菌については、公知の加熱殺菌法で行なわれる。例えば、常圧で、目標温度(65℃〜105℃)まで加熱し、目標温度まで昇温したならば、5分〜30分加熱状態を維持し、その後、水等により冷却する。
酵素死活、微生物殺菌を目的として、例えば、熱交換器を有するタイプの加熱殺菌装置を使用することが出来る。もちろん、加熱殺菌装置を別途設けることなく、醗酵後の圧搾濾過された液体を貯溜する容器(タンク、釜)自体に加熱機構を持たせても良い。
【0034】
図2において、製品化に際しての容器詰め工程(ステップS70)では、例えば、自動の瓶詰め機等で、容器に醤油を注入して、自動で栓をし、出荷に備える(図1(i)参照)。
【0035】
第1実施形態によれば、調味料(醤油)の製造コストを低く抑制できる。
材料である竹の多くは、その量が無尽蔵に近く、国内いたるところで豊富且つ安価で安定的に入手できるからである。
更に、加熱蒸煮の際に加える「ふすま」、或いは冷却工程時に加える「ふすま麹」の原料は、共に小麦粉の皮と糠部分であり、これらも比較的安価で且つ安定的に入手できるからである。
【0036】
また、竹には食物繊維が多く、蛋白質も含まれている。そのため、第1実施形態により製造された醗酵調味料(醤油)を用いた料理は、その料理を食した人体を肥満や高血圧などからまもり、人体を健康に保つことができる。
そして、第1実施形態により製造された醗酵調味料(醤油)は、竹を原料としているため、係る調味料(醤油)を用いた料理は一種独特な清涼感を伴い、新たな味の創生を促し、食文化を更に豊かに育てていくことができる。
【0037】
さらに、第1実施形態を実施するための設備は、従来の醤油或いは味噌の製造設備を、利用可能であるため、新たな設備投資を必要としない。
そのため、設備導入コスト(或いは、第1実施形態のイニシャルコスト)は殆ど発生しないので、簡便かつ容易に実施することができる。
【0038】
また、第1実施形態の実施に当たって、材料である竹は、既存の竹林から採取することが出来る。
そのため、密集して荒れるに任せた状態の竹林に対して人手が入り、余分な竹が間引かれるので、竹林そのものが良好に保全され、美しい状態を取り戻すことが出来るので、環境整備にもつながる。
さらに、材料である成竹採取のための雇用の増加が見込まれるために、国内経済の発展に寄与することが可能である。
【0039】
次に、図3、図4を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図1、図2の第1実施形態は、醗酵調味料が液状の醤油であった。それに対して、図3、図4の第2実施形態は、醗酵調味料は、固めのペースト状の味噌である。
【0040】
図3、図4の第2実施形態は、図1、図2の第1実施形態に対して、醗酵工程(もろみ醗酵:ステップS60)より後の工程のみが異なる。すなわち、図4のステップS10〜ステップS60は、図2(第1実施形態)と同様である。
以下、第2実施形態の第1実施形態と異なる工程(醗酵工程或いはもろみ醗酵より後の段階:ステップS60より後の工程)について、図3を参照しつつ、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0041】
図4において、ステップS60のもろみの醗酵工程以後に、醗酵工程で用いた醗酵容器内から、例えば、柄杓などを用いて味噌をすくい上げ、販売用の例えば樹脂容器中に所定量だけ詰める(図3(g)参照)。
図3、図4の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1、図2の第1実施形態と同様である。
【0042】
次に、図5、図6に基づいて、第3実施形態を説明する。
図1、図2の第1実施形態では、加熱蒸煮の工程(ステップS20)において「ふすま」を添加し、冷却工程(ステップS30)で種麹を接種することにより、一連の製造工程中で「ふすま麹」を生成している。
それに対して、図5、図6の第3実施形態は、一連の製造工程中で「ふすま麹」を生成することは行なわず、予め生成しておいた「ふすま麹」を冷却工程において添加する。ここで、「ふすま麹」は、竹と「ふすま」の混合麹である。
以下、図5を参照しつつ、図6のフローチャートに基づいて、第3実施形態について、図1及び図2の第1実施形態と異なる点を主体にして説明する。
【0043】
図6において、ステップS20の加熱蒸煮の後、冷却工程S30において、「ふすま麹」を竹粉末に対する質量割合で80〜120%(例えば、1000g:竹粉末に対して100質量%)添加する(図5(c)参照)。
第1実施形態では、ステップS20の加熱蒸煮工程では、竹粉末に対して「ふすま」を80〜120(質量)%添加し、ステップS30の冷却工程で種麹を添加(接種)して、添加した「ふすま」より「ふすま麹」を生成している。
これに対して、図5、図6の第3実施形態では、上述した様に、予め作製しておいた「ふすま麹」を冷却工程S30で添加している。
【0044】
図5、図6の第3実施形態において、上述した以外の構成(ステップS40〜ステップS70の容器詰めまでの工程)と、その作用効果については、図1、図2の第1実施形態と同様である。
【0045】
次に、図7、図8に基づいて、第4実施形態を説明する。
図5、図6の第3実施形態は、醗酵調味料が液状の醤油であった。
それに対して、図7、図8の第4実施形態では、醗酵調味料が固めのペースト状の味噌を製造している。
図7、図8で示す第4実施形態の製造方法は、図5、図6の第3実施形態の製造工程に対して、醗酵工程(もろみ醗酵:ステップS60)より後の工程が異なるのみで、図8のステップS10〜ステップS60は第3実施形態と同様である。
【0046】
以下、図7を参照しつつ図8のフローチャートに基づいて、第4実施形態について、第3実施形態と異なる点を主体に説明する。
図8において、ステップS60のもろみの醗酵工程の後に、醗酵工程で用いた醗酵容器内から、例えば、柄杓などを用いて味噌をすくい上げ、販売用の例えば樹脂容器中に所定量だけ詰める(図7(g)参照)。
それ以外の構成及び作用効果について、図7、図8の第4実施形態は、図5、図6の第3実施形態と同様である。
【0047】
本発明者等は、上述した実施形態に関連して、以下に述べる様な種々の実験を行なった。
以下において、係る実験(実験例1〜実験例14)について説明する。
【0048】
第1実施形態のステップS10で、竹を粒径0.5mm〜1.0mmの粉末状に加工されるが、係る粒径0.5mm〜1.0mmについては、以下の実験(実験例1)により決定した。
[実験例1]
実験例1では、竹を粉末に加工する際における粉末の粒径について検証した。
実験例1では、微粉末粉砕機により、粒径が0.3mm〜1.6mmの範囲で、0.1mmずつ変化させて、上述の実施形態に従って麹を作製する実験を行なった。
実験例1の結果を、下表1に示す。
表1

【0049】
表1において、「○」は麹が良好に作製されたことを示し、「×」は麹が良好に作製されなかったことを示している。
粒径が1.1mm以上の場合に麹作製が良好には行なわれなかったのは、竹粉末の粒径が大き過ぎると、竹の繊維分が上手く醗酵されないことに起因すると推定される。
一方、市販の微粉末粉砕機では、粒径0.4mm以下の粉末状に竹を加工することが出来なかった。そのため、表1では、粒径0.3mm、0.4mmの欄には「−」が標記されている。
従って、竹粉末の粒径は、0.5mm〜1.0mmに決定した。なお、表1では明示はされていないが、竹粉末の粒径が0.7mmの場合が麹作製が最も好適に行なわれた。
【0050】
第1実施形態のステップS10において、竹粉末1kgに対する水の添加量(800〜1200ml)は、以下の実験(実験例2)により決定した。
[実験例2]
実験例2では、竹粉末に対する水の添加量を変化させて、麹の混合状態を目視で判定した。そして、第1実施形態と同一の要領で液体調味料(醤油)を製造し、製造された醤油味の濃淡を10人の検査員により検証(判断)した。
ここで、「醤油味の濃淡」は、含有された塩分の質量ではなく、いわゆる「こく」や「淡白さ」を意味しており、味覚に関する検証である。
【0051】
実験例2では、竹粉末1kgに対して、水添加量を400ml〜1600mlの範囲で、200mlずつ変化させて、竹粉末と水の混合サンプルを7種類作成した。そして、第1実施形態と同一の要領で麹を作製し、7種類のサンプルを攪拌機でよく攪拌して、先ず、麹の混合状態を検証した。
混合状態については、作製した麹が均一に混合していない不適当な状態を「×」、均一性には欠けるが、麹作製を阻害しない程度を「△」、均一に良好に混合しており、麹作製に適切な状態を「○」として、三段階で評価している。
醤油の味(濃淡)については、「淡白」、「やや淡白」、「適正」、「やや濃厚」、「濃厚」の5段階評価で行なった。そして、10人の検査員の平均的な感想を抽出した。
【0052】
表2に実験例2の結果を示す。
表2

【0053】
表1に示すように、麹の混合状態の視認による評価では、水の添加量が400ml、600mlでは均一に混合せず、評価は「×」であった。800mlでは評価は「△」、1000〜1600mlでは評価は「○」であった。
醤油味の濃淡の評価において、水の添加量が400ml、600mlのサンプルは、麹の混合状態の評価が「×」であったため、評価を行なっていない。
水添加量800ml、1000mlのサンプルは「適正」と評価され、水添加量1200mlのサンプルは「やや淡白」と評価され、水添加量1400ml、1600mlは「淡白」と評価されている。
表1で示す結果より、竹粉末1kgに対する水の添加量の範囲は、800〜1200ml、すなわち、80〜120(質量)%と設定した。
【0054】
[実験例3]
第1実施形態のステップS10において、粉末状に加工された竹(粉末)を水に浸漬させる時間は、2時間以上、好ましくは12時間以上としているが、係る浸漬時間については、以下の実験(実験例3)で決定した。
実験例3では、浸漬時間を1時間〜14時間の範囲で1時間ずつ変化して作成したサンプルを、90℃まで昇温して60分加熱し、その後、30℃まで冷却してから、第1実施形態と同様に、麹作製を行ない、醗酵した。そして、各々のサンプルについて、醗酵の程度を調べた。
【0055】
表3に実験例3の結果を示す。
表3

【0056】
表3において、「○」は良好な醗酵が行なわれたことを示し、「△」は調味料製造には問題がない程度に醗酵が行なわれたことを示し、「×」は醗酵が不十分であったことを示している。
表2から明らかな様に、浸漬時間が2時間以上であれば、調味料製造には問題がない程度に醗酵が行なわれる。そして、浸漬時間が12時間以上であれば、醗酵が良好に行なわれることが確認された。
実験例3の結果から、粉末に加工された竹(粉末)を水に浸漬させる時間は、2時間以上、好ましくは12時間以上に決定した。
【0057】
実施形態1におけるステップS20の加熱蒸煮工程において、竹粉末に対して添加する「ふすま」の質量割合については、以下の実験(実験例4)で決定した。
[実験例4]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000mlを添加し、「ふすま」の添加量が0.5kg(質量割合50%)、0.8kg(質量割合80%)、1.0kg(質量割合100%)、1.2kg(質量割合120%)、1.5kg(質量割合150%)、2.0kg(質量割合200%)の6種類のサンプルと作成した。
そして、各サンプルを均一に混合して、滅菌したシャーレ内に50gずつ収容して、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、25℃で3日間保持した。そして、各サンプルにおける麹菌のコロニーの面積により、麹菌発生率を判定した。
【0058】
表4に実験例4の結果を示す。
表4

【0059】
表4において、「○」は麹菌の培養は良好であったことを示し、「×」は麹菌の培養が良好ではなかったことを示している。
実験例4では、「ふすま」添加量が0.5kg(質量割合50%)の場合は、麹菌のコロニーの面積が小さく、麹菌の培養は良好ではなかった。このことは、麹化の時間が長すぎて、採算ベースに合わないことを意味しており、調味料製造には不適当であると判断される。
一方、「ふすま」の含有量が大きい場合、具体的には、「ふすま」添加量が0.8kg(質量割合80%)の場合は、麹菌のコロニーの面積が大きくなり、麹菌の培養が良好に行なわれた。
【0060】
ここで、1.2kg(質量割合120%)、1.5kg(質量割合150%)、2.0kg(質量割合200%)のサンプルにおいては、麹菌のコロニーの面積は殆ど変化がなかった。その結果、原料費の高騰を抑える意味で、「ふすま」の添加量の上限は、竹粉末1kgに対して1.2kg(質量割合120%)とするのが妥当であると判断される。
その結果、加熱蒸煮の際に添加する「ふすま」の量は、竹粉末1kgに対して0.8〜1.2kgの幅に設定した。
【0061】
第1実施形態におけるステップS20の加熱蒸煮工程において、「少なくとも90℃」(90℃以上)という加熱温度は、以下の実験(実験例5)で決定した。
[実験例5]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000mlを添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を所定の温度まで昇温し、その状態を60分間維持した後、35℃まで冷却する。そして種麹を接種し、3日間静置して、雑菌の繁殖の有無を確認した。「所定温度」として、70℃〜100℃の範囲で10℃刻みに変動し、以って、4種類の場合(サンプル)について、実験を行なった。
【0062】
実験例5の結果を、表5で示す。
表5

【0063】
表5において、雑菌の繁殖が確認できない場合が「○」、雑菌が繁殖した場合を「×」で示している。
表5より、第1実施形態におけるステップS20の加熱蒸煮工程において、加熱温度を「少なくとも90℃」(90℃以上)に決定した。
【0064】
第1実施形態のステップS20の加熱蒸煮工程において、90℃の温度を維持する時間(所定時間:50分〜70分)は、以下の実験(実験例6)で決定した。
[実験例6]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、当該水温を90℃に維持する時間(加熱時間)を、30分〜100分の範囲で、10分刻みに変動して、8種類のサンプルを用意した。各サンプルについて35℃まで冷却してから、種麹を接種し、3日間静置して、雑菌の繁殖の有無を確認した。
【0065】
実験例6の結果を、表6で示す。
表6

【0066】
表6において、雑菌の繁殖が確認できない場合が「○」、雑菌が繁殖した場合を「×」で示している。
表6より、加熱時間が50分以上であれば、十分に殺菌が行なわれている。ここで、別途行なわれた実験では、加熱時間を80分以上にすると、燃料消費量が多くなり過ぎて、殺菌処理のためのコストが増大することが判明している。
これ等の結果より、第1実施形態におけるステップS20の加熱蒸煮工程における加熱時間を、50分〜70分に決定した。
【0067】
第1実施形態のステップS30における冷却工程において、材料を徐冷して降温する温度「40℃〜30℃」については、以下の実験(実験例7)により決定した。
[実験例7]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、冷却した。冷却温度を20℃〜50℃の範囲で、5℃刻みに変動して、7種類のサンプルを用意した。そして、7種類のサンプルを、冷却温度に維持した状態で、滅菌したシャーレに充填し、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。そして、各サンプルにおける麹菌のコロニーの面積により、麹菌発生率を判定した。
【0068】
表7に実験例7の結果を示す。
表7

【0069】
表7において、で示すように、冷却温度が30℃よりも低温であれば、において、「○」は麹菌の培養は良好であったことを示し、「×」は麹菌の培養が良好ではなかったことを示している。
実験例7では、冷却温度が30℃よりも低温であれば麹菌が活性化せず、良好に培養されず、冷却温度が40℃よりも高温であれば麹菌は接種された段階で死滅してしまったものと推定される。
実験例7より、第1実施形態のステップS30における冷却工程における冷却温度は、「30℃〜40℃」に決定された。
【0070】
第1実施形態のステップS40における麹作製工程の雰囲気温度(作製温度)「25℃〜40℃」は、以下の実験(実験例8)により決定した。
[実験例8]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
そして、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、3日間静置した。この間の雰囲気温度(麹作製温度)を20℃〜45℃の範囲で、5℃ずつ変動して、6つのサンプルを作成して、醗酵状態を検証した。
【0071】
実験例8の結果を、下表8に示す。
表8

【0072】
表8において、麹作製状態が良好な場合を「○」、不良な場合を「×」で示す。
実験例8では、麹作製温度が25℃よりも低温であれば麹菌が活性化せず、麹作製温度が40℃よりも高温であれば麹菌が死滅してしまったものと推定される。
実験例8より、実施形態における麹作製温度を25℃〜40℃に設定した。
【0073】
ここで、実験例としては記載していないが、その他の実験により、醗酵温度が低温の場合でも醗酵期間を長期化すれば、十分な醗酵が行なわれることを確認している。
例えば、醗酵温度が1℃〜10℃であっても、醗酵期間を3ヶ月にすれば、十分に醗酵することが、実験により確認されている。
【0074】
第1実施形態のステップS40における麹作製工程の作製期間「2日〜7日」は、以下の実験(実験例9)により決定した。
[実験例9]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
そして、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で静置した。ここで、静置する期間(作製期間)を1日〜8日の範囲で、1日ずつ変動して、8つのサンプルを作成して、麹の作製状態を検証した。
【0075】
実験例9の結果を、下表9に示す。
表9

【0076】
表9において、麹作製状態が良好な場合を「○」、不良な場合を「×」で示す。
実験例9では、作製期間が2日よりも短いと麹が出来ず、作製期間が7日よりも長いと胞子が出てしまい、麹が出来なかった。
これにより、麹作製期間を2日〜7日に設定した。
【0077】
第1実施形態のステップS40の麹作製工程の後、食塩の添加量(竹粉末に対する食塩の添加率)「1(質量)%〜15(質量)%」は、以下の実験(実験例10)により決定した。
[実験例10]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
そして、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。その後、水1000mlと食塩とを添加した。
その際に、食塩の添加量は、160g(竹粉末に対して16質量%)以下の範囲で、10g(竹粉末に対して1質量%)ずつ変動した。
その後、耐塩性乳酸菌培養液及び耐塩性酵母培養液を100mlずつ添加して、30℃で3日醗酵して、醗酵状況を検証した。
【0078】
実験例10の結果を、表10で示す。
表10

【0079】
表10において、醗酵が良好な場合を「○」、不良な場合を「×」で示す。
食塩の添加量が150g(15質量%)を超えると、後述する乳酸菌及び酵母の活性を妨げるため、醗酵が不良になると推定される。
なお、食塩を添加しないと(添加量が0g:0質量%)、雑菌或いはカビが繁殖したので、不都合である。
以上より、第1実施形態のステップS40の麹作製工程の後に食塩を添加する量(竹粉末に対する食塩の添加率)は、1(質量)%〜15(質量)%に決定した。
【0080】
第1実施形態のステップS40の麹作製工程の後の、水の添加量は500ml(竹粉末に対して50質量%)〜1500ml(竹粉末に対して150質量%)は、以下の実験(実験例11)により決定した。
[実験例11]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
そして、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。その後、食塩100gと水とを添加した。
その際に、水の添加量は、300ml(竹粉末に対して30質量%)〜1700ml(竹粉末に対して180質量%)の範囲で、200ml(竹粉末に対して20質量%)ずつ変動した。
その後、耐塩性乳酸菌培養液及び耐塩性酵母培養液を100mlずつ添加して、30℃で3日醗酵して、調味料の状況を検証した。
【0081】
実験例11の結果を、表11で示す。
表11

【0082】
表11において、醗酵後の調味料の状態が良好な場合を「○」、不良な場合を「×」で示す。
表11において、水の添加量が1500ml(竹粉末に対して150質量%)を超えると調味料が薄く仕上がってしまう。一方、水の添加量が500ml(竹粉末に対して50質量%)より少ないと、調味料の粘性が高くなり過ぎてしまった。
以上により、第1実施形態のステップS40の麹作製工程の後における水の添加量は、500ml(竹粉末に対して50質量%)〜1500ml(竹粉末に対して150質量%)に決定した。
【0083】
第1実施形態のステップS50の後における耐塩性乳酸菌培養液の添加量70ml〜150mlは、以下の実験(実験例12)により決定した。
[実験例12]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。その後、食塩100gと水1000mlとを添加した。
そして、耐塩性酵母培養液100mlと耐塩性乳酸菌培養液を添加して、30℃で3日醗酵して、醗酵時における雑菌の増殖を検証した。その際に、耐塩性乳酸菌培養液の添加量50ml〜170mlの範囲で、20mlずつ変動させた。
実験例12では、耐塩性乳酸菌はペディオコッカスハローフィルスであり、その培養液は麹エキス培地を用いている。
【0084】
実験例12の結果を表12で示す。
表12

【0085】
表12において、雑菌が増殖しなかった場合が「○」、雑菌が増殖した場合が「×」で示されている。
耐塩性乳酸菌培養液が70mlよりも少ないと、乳酸が十分に増殖せず、pHが下がらなかったものと推定される。
一方、耐塩性乳酸菌培養液が70ml以上の場合には雑菌は増殖しないが、150mlよりも多いと、発酵後の調味料における酸味が強くなり過ぎてしまった。
その結果、第1実施形態のステップS50の後における耐塩性乳酸菌培養液の添加量は、70ml〜150mlに決定した。
【0086】
第1実施形態のステップS50の後における耐塩性酵母培養液の添加量70ml〜150mlは、以下の実験(実験例13)により決定した。
[実験例13]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。その後、食塩100gと水1000mlとを添加した。
そして、耐塩性乳酸菌培養液100mlと耐塩性酵母培養液を添加して、30℃で3日醗酵して、醗酵後の調味料の味・風味を検証した。その際に、耐塩性酵母培養液の添加量50ml〜170mlの範囲で、20mlずつ変動させた。
実験例13では、耐塩性酵母はチゴサッカロマイセスルキシであり、その培養液は麹エキス培地を用いている。
【0087】
実験例13の結果を表13で示す。
表13

【0088】
表13において、味・風味が良好な場合が「○」、不良な場合が「×」で示されている。
耐塩性酵母培養液が70mlよりも少ないと、醗酵後の調味料の香気成分が不足するため、味・風味が良くなかった。
一方、耐塩性酵母培養液が150ml以上の場合には、香気が強くなり過ぎて、味・風味に悪影響を与えることが分った。
その結果、第1実施形態のステップS50の後における耐塩性酵母培養液の添加量は、70ml〜150mlに決定した。
【0089】
第3実施形態のステップS30の冷却工程の後に、「ふすま麹」を添加するが、その添加量(竹粉末に対する質量割合で80〜120%)については、以下の実験例(実験例14)で決定した。
[実験例14]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000mlを添加し、水温を90℃まで昇温して60分維持し、35℃に冷却した。そして、ふすま麹を0.7kg(竹粉末に対して70質量%)〜1.5kg(竹粉末に対して150質量%)の範囲で0.1kg(竹粉末に対して10質量%)ずつ変化して、複数のサンプルを作成した。
そして、35℃で3日間静置した後、食塩100gと水1000mlとを添加し、耐塩性乳酸菌培養液100mlと耐塩性酵母培養液100mlを添加して、30℃で3日醗酵して、醗酵状況を検証した。
【0090】
表14に実験例14の結果を示す。
表14

【0091】
表14において、「○」は醗酵が良好であったことを示し、「×」は醗酵が不良だったことを示している。
実験例4では、「ふすま麹」添加量が0.8kg(竹粉末の80質量%)の場合は、麹そのものが不足しており、醗酵が十分に行なわれなかったことが推定される。
一方、「ふすま麹」の量が多い場合、具体的には、「ふすま麹」添加量が0.8kg(竹粉末の80質量%)の場合は、醗酵は良好であった。ただし、「ふすま麹」添加量が1.2kg(竹粉末の120質量%)、1.3kg(竹粉末の130質量%)、1.4kg(竹粉末の140質量%)、1.5kg(竹粉末の150質量%)のサンプルにおいては、醗酵の状態に有意な差がなかった。その結果、原料コストを抑制する意味で、「ふすま麹」の添加量の上限は、竹粉末1kgに対して1.2kg(質量割合120%)とするのが妥当であると判断される。
その結果、第3実施形態のステップS30の冷却工程の後において、「ふすま麹」の添加量は、竹粉末1kgに対して0.8〜1.2kgに設定した。
【0092】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹粉末に水を加えて浸漬する工程と、竹粉末に水を加えて浸漬した状態の材料を加熱蒸煮する工程と、加熱蒸煮を行った材料を冷却する工程と、冷却した後に食塩、水及び種麹を添加してもろみに醸成する工程と、前記醸成したもろみを醗酵させる工程とを有することを特徴とする醗酵調味料の製造方法。
【請求項2】
前記加熱蒸煮する工程の後、ふすまを竹粉末の80質量%〜120質量%添加して、前記材料を冷却する工程では冷却された材料に種麹を接種する請求項1の醗酵調味料の製造方法。
【請求項3】
前記材料を冷却する工程の後に、ふすま麹を竹粉末の80質量%〜120質量%添加する請求項1の醗酵調味料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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