説明

重合体の製造方法

【課題】オレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体を、ハロゲン化剤を用いることなく製造する方法の提供。
【解決手段】オレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体を、工程(1):ラジカル開始剤の存在下、オレフィン系重合体(A)と下記一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体とを反応させ、ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を製造し、さらに工程(2):前記ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を開始剤として、周期律表第3族〜第11族から選ばれる遷移金属元素を含む金属化合物(B)存在下で、ラジカル重合性単量体を重合して製造する。


(一般式(1)においてAおよびBの少なくともどちらか一方はハロゲン原子である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性単量体を精密重合させる方法の一つとして、リビングラジカル重合の開発が進んでいる。リビングラジカル重合は、分子量分布が狭く、モノマー配列が精密に制御された重合体が得られるという特徴を有しており、これまでに原子移動ラジカル重合法やニトロキシド媒介ラジカル重合法、可逆的付加開裂連鎖移動重合法などが報告されている。
【0003】
例えば、有機ハロゲン化物などを開始剤とし、遷移金属化合物を触媒とする原子移動ラジカル重合法は、上記の特徴に加えて、分子鎖の末端に特定の官能基を導入できたり、ブロック構造やグラフト構造、星形構造などのトポロジー制御も容易である。そのため近年、原子移動ラジカル重合法は積極的に研究が進められている。特に原子移動ラジカル重合法は、ブロックポリマーやグラフトポリマーなどの異種セグメント同士が化学結合した重合体の製造に有利である。原子移動ラジカル重合法を用いて、ポリオレフィンの末端あるいは主鎖中に導入した重合開始点から原子移動ラジカル重合を行うことによって、ポリオレフィンセグメントと極性セグメントとからなるブロック・グラフトポリマーを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1〜特許文献3)。
【0004】
特許文献3に開示されている方法によれば、工業的に入手可能な多くのポリオレフィンを直接ハロゲン化して、分子鎖中に重合開始点となるアリルハライド構造を導入することが可能である。そして、得られたハロゲン化ポリオレフィンを、マクロ開始剤として原子移動ラジカル重合に用いることができるため、目的とするブロック・グラフトポリマーを工業的に有利な方法で製造することができる。
【0005】
しかしながら、ポリオレフィンのハロゲン化反応は、ハロゲンラジカルの高反応性のために、得られるハロゲン化ポリオレフィン中に開始点構造以外のハロゲン化構造が導入され、ラジカル重合が阻害されたりポリマーが着色したりする場合があった。さらに、ハロゲン化反応に用いられる臭素やN−ブロモスクシンイミドは腐食性が強いため、反応器や押出機の内壁を傷める恐れがあり、また反応溶媒がハロゲン化されるなど、環境負荷の点では改善が求められることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−131620号公報
【特許文献2】特開2007−169318号公報
【特許文献3】国際公開第2006/088197号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、腐食性が強く環境負荷の大きいハロゲン化剤を用いることなく、オレフィン系重合体の分子鎖中に効率的にラジカル重合開始点を導入し;そのオレフィン系重合体を原料として、オレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、特定の無水マレイン酸誘導体をオレフィン系重合体と反応させることで、効率的にハロゲン含有オレフィン系重合体を合成することができ、さらに得られた重合体をマクロ開始剤として用いることで、上記課題を解決しうることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、以下に示すオレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体の製造方法に関する。
<1>:オレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体の製造方法であって、
ラジカル開始剤の存在下、オレフィン系重合体(A)と下記一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体とを反応させ、ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を製造する工程(1)と、
前記ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を開始剤として、周期律表第3族〜第11族から選ばれる遷移金属元素を含む金属化合物(B)存在下で、ラジカル重合性単量体を重合する工程(2)と、を含む重合体の製造方法。
【0010】
【化1】

(一般式(1)においてAおよびBは、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基からなる群から選ばれる原子または基であり、AおよびBの少なくともどちらか一方はハロゲン原子である)
【0011】
<2>:前記オレフィン系重合体(A)が、下記(A1)〜(A5)からなる群から選ばれ、かつ重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)が1×10〜1×10の範囲である、<1>に記載の重合体の製造方法。
(A1):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体。
(A2):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体。
(A3):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と、下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体。
(A4):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と、不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体。
(A5):前記重合体(A1)〜(A4)を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性したもの。
【0012】
【化2】

(式(2)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表し、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい)
【0013】
<3>:前記金属化合物(B)が、チタン、ジルコニウム、モリブデン、レニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅から選ばれる金属を含む、<1>または<2>に記載の重合体の製造方法。
<4>:前記一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体が、クロロマレイン酸無水物またはブロモマレイン酸無水物である、<1>〜<3>のいずれかに記載の重合体の製造方法。
<5>:前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸系単量体、スチレン系単量体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド系単量体、マレイン酸系単量体、マレイミド系単量体およびビニルエステル系単量体からなる群から選ばれる単量体である、<1>〜<4>のいずれかに記載の重合体の製造方法。
<6>:前記オレフィン系重合体(A)が、前記(A1)群から選ばれる重合体であり、前記金属化合物(B)が銅化合物であり、かつ一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体がブロモマレイン酸無水物である、<2>〜<5>のいずれかに記載の重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、オレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体の製造方法であり、ハロゲン化剤を使用することなく効率的に重合開始点を導入したオレフィン系重合体を重合開始剤として、原子移動ラジカル重合を実施することを特徴とする。したがって本発明の方法によれば、反応性が高く腐食性の強いハロゲン化剤を使用しないので、着色や劣化の少ない重合体を製造することができる。また、反応器の腐食や溶媒の汚染が低減されることから、製造プロセスの簡素化や環境負荷低減という点でも非常に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、オレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体の製造方法である。
【0016】
本発明の重合体の製造方法は、ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を製造する工程(1)と;ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を開始剤としてラジカル重合性単量体を重合する工程(2)と、を含むことを特徴とする。
【0017】
工程(1)について:
工程(1)では、ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を製造する。ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)は、オレフィン系重合体(A)を、ラジカル開始剤の存在下で、ハロゲン化剤と反応させてハロゲン化することにより製造されるが;本発明は、前記ハロゲン化剤を下記一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体としたことを特徴とする。
【化3】

【0018】
無水マレイン酸を示す下記一般式(1)におけるAおよびBは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、および炭化水素基からなる群から選択される。ただし、AおよびBのどちらか一方または両方は、ハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、塩素または臭素が好ましい。一般式(1)で示される無水マレイン酸の具体例には、クロロマレイン酸無水物や、ブロモマレイン酸無水物が含まれる。
【0019】
工程(1)でハロゲン化されるオレフィン系重合体(A)は、特に制限されないものの、炭素−炭素二重結合を一つだけ有するモノオレフィン化合物、あるいは芳香環を有するモノオレフィン化合物から構成される重合体であることが好ましい。一方、炭素−炭素二重結合を複数有する化合物(例えばヘキサジエンやオクタジエンなどの直鎖状ジエン化合物、ジビニルベンゼンなどのスチレン系ジエン化合物、ビニルノルボルネンやエチリデンノルボルネンなどの環状ジオレフィン化合物など)の重合体や、これらを共重合成分とする共重合体は、ハロゲン化の段階で、ジエン化合物に由来する不飽和結合同士が架橋してゲル化するため好ましくない場合がある。
【0020】
したがって、工程(1)でハロゲン化されるオレフィン系重合体(A)は、例えば以下に示されるオレフィン系重合体(A1)〜(A5)が用いられ、これらを単独で、または2種以上組み合わせて用いられうる。
【0021】
(A1):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体。
(A2):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体。
(A3):CH2=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体。
(A4):CH2=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体。
(A5):前記重合体(A1)〜(A4)を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性したもの。
【0022】
【化4】

一般式(2)における各符号の定義は、後述する。
【0023】
単独重合体または共重合体(A1)について:
工程(1)でハロゲン化されるオレフィン系重合体(A)の一態様である重合体(A1)は、CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体である。
【0024】
CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の具体例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素数が4〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが含まれる。これらの例示オレフィン類の中では、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンを使用することが好ましく、より好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテンである。
【0025】
単独重合体または共重合体(A1)は、上記α−オレフィン化合物を単独重合または共重合して得られるものであればよく特に制限はない。単独重合体または共重合体(A1)の好ましい例には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのエチレン系重合体;プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー、プロピレンブロックコポリマーなどのプロピレン系重合体;ポリブテン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ヘキセン)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-(4−メチル−1−ペンテン)共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-(4-メチル-1−ペンテン)共重合体、プロピレン-ヘキセン共重合体、プロピレン-オクテン共重合体などが含まれる。
なかでも、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体がより好ましい。
【0026】
共重合体(A2)について:
工程(1)でハロゲン化されるオレフィン系重合体(A)の一態様である重合体(A2)は、CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と、芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体である。
【0027】
CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の例には、上記(A1)の項で記載したα−オレフィン化合物が含まれる。一方、芳香環を有するモノオレフィン化合物の具体例には、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系化合物や、ビニルピリジンなどが含まれる。
【0028】
共重合体(A2)は、上記α-オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物とを共重合して得られるものであればよく特に制限はない。共重合体(A2)の好ましい例には、エチレン−スチレン共重合体、プロピレン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体、エチレン−ブテン−スチレン三元共重合体が含まれる。
【0029】
共重合体(A2)中に含まれるα−オレフィン化合物に由来するユニットの含量は、オレフィン系重合体としての性質を保持するために50モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上である。
【0030】
共重合体(A3)について:
工程(1)でハロゲン化されるオレフィン系重合体(A)の一態様である重合体(A3)は、CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と、下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体である。
【0031】
CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の例には、上記(A1)で記載したα−オレフィン化合物が含まれる。
【0032】
【化5】

【0033】
環状モノオレフィンを示す一般式(2)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1である。qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。上記一般式(2)において、R〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表す。qが1の場合には、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。
【0034】
上記一般式(2)におけるR〜R18ならびにRおよびRが示すハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。R〜R18ならびにRおよびRが示す炭化水素基の例には、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、または炭素原子数3〜15のシクロアルキル基が含まれる。炭化水素基のより具体的な例には、メチル基、エチル基、プロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基などのアルキル基;上記アルキル基を形成している水素原子の少なくとも一部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されたハロゲン化アルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基などが含まれる。
【0035】
上記一般式(2)において、R15とR16とが、R17とR18とが、R15とR17とが、R16とR18とが、R15とR18とが、あるいはR16とR17とがそれぞれ結合して(互いに共同して)、単環または多環を形成していてもよい。ここで形成される単環または多環の具体例には、以下に示される環が挙げられる。
【化6】

【0036】
上記単環または多環の例示において、1の番号を付した炭素原子は、一般式(2)においてR15およびR16が結合している炭素原子を示し;2の番号を付した炭素原子は、一般式(2)においてR17およびR18が結合している炭素原子を示す。
【0037】
上記一般式(2)で表される環状モノオレフィンの具体例には、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2- エン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3- ウンデセン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,3.19,12.08,13]-3-ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16 ]-4-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]-5-ペンタコセン誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]-5-ヘキサコセン誘導体などが含まれる。
【0038】
一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物は、シクロペンタジエンと、対応する構造を有するオレフィン類とを、ディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。これらの環状オレフィンは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物から誘導される構成単位は、下記一般式(3)で示される。
【化7】

【0040】
式(3)において、n、m、q、R1 〜R18ならびにRa 、Rb は、式(2)と同様に定義される。
【0041】
共重合体(A3)は、上記α−オレフィン化合物と、一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物とを共重合して得られるものであればよく、特に制限はない。共重合体(A3)の好ましい例には、エチレンとビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンとの共重合体、もしくはエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとの共重合体が含まれる。
【0042】
共重合体(A3)中に含まれるα−オレフィン化合物に由来するユニットの含量は、オレフィン系重合体としての性質を保持するために50モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上である。
【0043】
ランダム共重合体(A4)について:
工程(1)でハロゲン化されるオレフィン系重合体(A)の一態様である重合体(A4)は、CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と、不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体である。
【0044】
CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の例には、上記(A1)の項で記載したα−オレフィン化合物が含まれる。
【0045】
不飽和カルボン酸またはその誘導体は、例えば、不飽和モノカルボン酸およびその誘導体、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体、ビニルエステル類などでありうる。不飽和カルボン酸またはその誘導体の具体例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸アミド、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、マレイン酸ハライド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド、酢酸ビニルや酪酸ビニルなどの脂肪族ビニルエステル類などが含まれる。
【0046】
ランダム共重合体(A4)は、上記α−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体であればよく、特に制限はない。ランダム共重合体(A4)の好ましい例には、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が含まれる。
【0047】
共重合体(A4)中に含まれるα−オレフィン化合物に由来するユニットの含量は、オレフィン系重合体としての性質を保持するために50モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上である。
【0048】
不飽和カルボン酸またはその誘導体による変性重合体(A5)について:
工程(1)でハロゲン化されるオレフィン系重合体(A)の一態様である重合体(A5)は、前記重合体(A1)〜(A4)を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性した変性重合体である。
【0049】
前記重合体(A1)〜(A4)を変性するために用いられる不飽和カルボン酸またはその誘導体の具体例には、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、マレイン酸ハライド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどが含まれる。これらのうち、好ましくはマレイン酸無水物である。
【0050】
前記重合体(A1)〜(A4)で表される重合体を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性する方法としては、例えば、有機過酸化物などのラジカル発生剤の存在下、あるいは紫外線や放射線の存在下に、不飽和カルボン酸またはその誘導体を前記(A1)〜(A4)で表される重合体と反応させる方法などが挙げられる。
【0051】
前記重合体(A1)〜(A5)を製造する条件や方法については特に制限はないが、例えばチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒、ポストメタロセン触媒などのような公知の遷移金属触媒を用いた配位アニオン重合や、高圧下あるいは放射線照射下でのラジカル重合などの方法を用いることができる。また、上記方法で製造したオレフィン系重合体を熱やラジカルで分解したものを用いることもできる。
【0052】
工程(1)でハロゲン化されるオレフィン系重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1×10〜1×10であることが好ましく、5×10〜1×10であることがより好ましく、1×10〜5×10であることがさらに好ましい。
【0053】
工程(1)における、オレフィン系重合体(A)と一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体との反応は、ラジカル開始剤の存在下で行われる。
ラジカル開始剤の例には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス-2-アミジノプロパン塩酸塩、アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、および4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、2,4-ジクロル過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジイソプロピルジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、tert-ブチルペルオキシラウレート、ジ-tert-ブチルペルオキシフタレート、ジベンジルオキシド、および2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシドなどの過酸化物系開始剤;ならびに過酸化ベンゾイル-N,N-ジメチルアニリン、およびペルオキソ二硫酸−亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤などが含まれる。
【0054】
これらのうちラジカル開始剤は、アゾ系開始剤または過酸化物系開始剤が好ましい。ラジカル開始剤は、さらに好ましくは、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジイソプロピルジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチルなどである。これらのラジカル開始剤は、単独でもまたは2種以上を同時にまたは順次に使用することもできる。
【0055】
工程(1)において、オレフィン系重合体(A)と、一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体とを反応させる方法については、従来公知の種々の方法が採用できる。例えば、a)オレフィン系重合体(A)を、溶媒に懸濁させ、あるいは溶解させて、通常−80℃〜250℃の温度、好ましくは室温以上溶媒の沸点以下の温度で、無水マレイン酸誘導体とラジカル開始剤を添加混合して反応させる方法;b)オレフィン系重合体(A)を、その融点以上(例えば、180〜300℃の温度)で溶融混練しながら、無水マレイン酸誘導体とラジカル開始剤を接触させる方法、などが挙げられる。
【0056】
工程(1)において、オレフィン系重合体(A)と、一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体との反応により、ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)が製造される。ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)は、下記一般式(4)で示される構成単位を含みうる。当該構成単位は、一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体に由来する
【化8】

【0057】
上記一般式(4)において、X,Y,Zはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基であり、そのうち少なくとも一つはハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、塩素または臭素が好ましい。
【0058】
ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)のハロゲン含有率は、0.01〜20重量%、好ましくは0.02〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。ハロゲン含有率は、オレフィン系重合体(A)と反応させる無水マレイン酸誘導体(一般式(1))の量を調整することにより、制御されうる。導入されるハロゲン原子は、工程(1)で使用した無水マレイン酸誘導体に応じてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれでも構わないが、好ましくは塩素と臭素であり、より好ましくは臭素である。また、これらの複数のハロゲンの組み合わせであってもよい。ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)中に存在するハロゲン原子の含有量は、例えば元素分析やイオンクロマトグラフィーなどの方法により測定することができる。
【0059】
製造されたハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)は、後述する工程(2)において開始剤として使用される。工程(1)から工程(2)に移行する間に、任意の工程を介在させてもよい。任意の工程とは、例えば、重合体(A’)が溶解しない溶媒中に、重合体(A’)を懸濁させて一定時間撹拌した後に、ろ過などをして単離・精製する工程などである。かかる工程により、反応に用いた溶媒や未反応の無水マレイン酸誘導体、ラジカル開始剤、およびそれらの化合物に由来する反応残渣などを除去することができる。
【0060】
工程(2)について:
工程(2)では、前記ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を開始剤として、ラジカル重合性単量体を重合する。
【0061】
工程(2)で開始剤として用いられるハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)は、工程(1)の後に、単離・精製工程を経たものであることが好ましいが、工程(1)の反応後の溶液またはスラリーをそのまま工程(2)に用いることも可能である。
【0062】
工程(2)において、1種以上のラジカル重合性単量体を、ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)をマクロ開始剤として、いわゆる「原子移動ラジカル重合」する。この原子移動ラジカル重合は、周期律表第3族〜第11族から選ばれる遷移金属元素を含む金属化合物(B)の存在下にて行われる。
【0063】
マクロ開始剤とは、原子移動ラジカル重合の開始能を有する重合体であり、分子鎖中に原子移動ラジカル重合の開始点となりうる部位を有する重合体をいう。
【0064】
一般的に、原子移動ラジカル重合とはリビングラジカル重合の一態様であり、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として、遷移金属を中心金属とする金属錯体である触媒の存在下で、ラジカル重合性単量体をラジカル重合する方法である。原子移動ラジカル重合については、例えば、Matyjaszewskiら、Chem. Rev., 101, 2921 (2001);WO96/30421号公報;WO97/18247号公報;WO98/01480号公報;WO98/40415号公報;WO00/156795号公報;あるいは澤本ら、Chem. Rev., 101, 3689 (2001);特開平8−41117号公報;特開平9−208616号公報;特開2000−264914号公報;特開2001−316410号公報;特開2002−80523号公報;特開2004−307872号公報などに記載されており、これらを参照して行うことができる。
【0065】
一般的に、原子移動ラジカル重合に用いられる開始剤は、例えば有機ハロゲン化物やハロゲン化スルホニル化合物などである。前記開始剤には、炭素−炭素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合構造;炭素−酸素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合構造;あるいは一つの炭素原子上に複数のハロゲンが付加した構造、を含むことが好ましく、これらの構造を開始剤構造として利用することができる。
【0066】
前述のハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)も、炭素−酸素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合構造を有しており、これを原子移動ラジカル重合の開始剤構造として利用することができる。
【0067】
工程(2)におけるラジカル重合性単量体の重合反応は、周期律表第3族〜第11族から選ばれる遷移金属元素を含む金属化合物(B)を触媒として行われる。
【0068】
工程(2)で用いられる金属化合物(B)は、好ましくはチタン、ジルコニウム、モリブデン、レニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅から選ばれる金属を含む化合物である。更に好ましい金属化合物(B)の例には、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、または2価のニッケルの錯体が含まれ、なかでも銅錯体が好ましい。
【0069】
金属化合物(B)の一態様である1価の銅化合物の具体例には、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などが含まれる。
【0070】
2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も、金属化合物(B)として好適である。金属化合物(B)をルテニウム化合物とする場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を、重合反応系にさらに添加する。
【0071】
2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、および2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、金属化合物(B)として好適である。
【0072】
金属化合物(B)の触媒活性を高めるために、配位子となる化合物を組み合わせて用いてもよい。配位子となる化合物の例には、2,2'-ビピリジルまたはその誘導体;1,10-フェナントロリンまたはその誘導体;テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどが含まれる。これらのうち、配位子となる化合物は、好ましくはペンタメチルジエチレントリアミンやヘキサメチルトリエチレンテトラミンである。
【0073】
配位子となる化合物であるポリアミンの使用量が少なすぎると、金属化合物(B)の溶媒またはモノマーへの溶解性が低くなるため、触媒活性が極端に低下するか、もしくは持続しない場合がある。一方、ポリアミンの使用量が多すぎると、得られるポリマー中に残留して着色や臭いの原因となる場合がある。よって、ポリアミンの使用量は、上記金属化合物(B)に対して通常0.1〜1,000等量の範囲であり、好ましくは1〜800等量、より好ましくは10〜300等量の範囲である。
【0074】
工程(2)で重合されるラジカル重合性単量体の例には、(メタ)アクリル酸系単量体、スチレン系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、マレイン酸系単量体、マレイミド系単量体、ビニルエステル系単量体などが含まれる。
【0075】
(メタ)アクリル酸系単量体の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどが含まれる。
【0076】
スチレン系単量体の例には、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩などが含まれる。
【0077】
(メタ)アクリルアミド系単量体の例には、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどが含まれる。
【0078】
マレイン酸系単量体の例には、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステルなどが含まれる。
【0079】
マレイミド系単量体の例には、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどが含まれる。
【0080】
ビニルエステル系単量体の例には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどが含まれる。
【0081】
これらのうち、好ましいラジカル重合性単量体は、(メタ)アクリル酸系単量体、スチレン系単量体、(メタ)アクリロニトリルなどである。これらの化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0082】
工程(2)において、ラジカル重合性単量体を重合する方法は特に限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状・懸濁重合などを適用することができる。
【0083】
工程(2)の原子移動ラジカル重合において溶媒を使用することができ、反応を阻害しないものであれば何れの溶媒を使用してもよい。使用できる溶媒の具体例には、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒などが含まれる。
【0084】
また、工程(2)の原子移動ラジカル重合において水を溶媒として使用して、懸濁重合、乳化重合することもできる。
【0085】
これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0086】
工程(2)の原子移動ラジカル重合の反応温度は、ラジカル重合反応が進行する温度であれば限定されず、所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量に応じて適宜設定する。反応温度は、例えば、通常は−100℃〜250℃であり、好ましくは−50℃〜180℃であり、更に好ましくは0℃〜160℃である。場合に応じて、減圧、常圧または加圧条下の何れでも重合反応を行うことができる。上記重合反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0087】
工程(2)のラジカル重合における、各成分の添加順序は任意の順序である。例えば、ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を、溶媒および/またはラジカル重合性単量体中に溶解あるいは懸濁させ;これに、金属化合物(B)と、必要に応じてアミン系配位子やアルミニウムアルコキシドを添加して;それを、所定の重合温度で重合を開始する。また、重合体(A’)や金属化合物(B)、ラジカル重合性単量体の種類や性状に応じてこれらの順序を入れ替えたり、一部をあらかじめプレミックスして用いたりすることも可能である。
【0088】
工程(2)で得られた重合体は、好ましくは後処理工程に付される。例えば後処理工程として、公知の方法により、重合に用いた溶媒や未反応のモノマーを留去したり、あるいは貧溶媒による再沈殿をするなどして、得られた重合体を精製したり単離したりする。さらには、後処理工程として、得られた重合体をソックスレー抽出装置を用い、アセトンやTHFなどの極性溶媒で処理することで、副生したホモラジカル重合体を除去することも可能である。
【実施例】
【0089】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0090】
本実施例中の各物性の測定は以下のように行なった。
(i)分子量および分子量分布の測定
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を使用して以下の条件で測定した。
測定装置:allianceGPC2000(Waters社製)
解析装置:Empowerプロフェッショナル(Waters社製)
カラム:TSKgel GMH6HT×2+TSKgel GMH6HTL×2
カラム温度:140℃
移動相:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
検出器:示差屈折率計
流速:1mL/min
試料濃度:30mg/20mL−ODCB
注入量:500μL
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
【0091】
(ii)ポリマーの組成分析
H−NMRを使用して以下の条件で測定した。
測定装置:JNMGSX−400型核磁気共鳴装置(日本電子製)
試料管:5mmφ
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン−d4
測定温度:120℃
測定幅:8000Hz
パルス幅:7.7μs(45°)
パルス間隔:6.0s
測定回数:〜8000回
【0092】
(iii)ハロゲン含量分析
試料を石英製試料ボートに精秤し、Ar/O気流中、900℃で燃焼分解した。発生ガスを吸収液に吸収させ、純粋で定容した。本検液中に含まれるハロゲン量をイオンクロマトグラフ法にて定量した。
イオンクロマトグラフ:DX−500(Dionex社製)
カラム:IonPacAS12A(Dionex社製)
【0093】
[実施例1]
(1)臭素含有ポリエチレン(PE)の合成
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリエチレン(PE)(Mn=28,800)80gおよびクロロベンゼン800mLを入れ、攪拌下120℃で2時間窒素バブリングした。その後、ブロモマレイン酸無水物10mL、および2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)558mgを加えて、100℃で2時間加熱撹拌を行った。反応液を冷却して析出した固体をグラスフィルターでろ過し、アセトンで洗浄後減圧乾燥して臭素含有PEの白色粉末78gを得た。
【0094】
得られたポリマー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.32wt%であった。また、該ポリマーの分子量(PE換算)をGPCにより測定したところ、Mw=62,000、Mn=24,600、Mw/Mn=2.5であった。
【0095】
(2)メタクリル酸メチル(MMA)のラジカル重合
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素含有PE30g、トルエン300mL、MMA100mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)(CuBr)350mg、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)1.02mLを加えた後、100℃に加熱して3.5時間重合を行った。冷却後、スラリーをメタノール1.5L中に注いで撹拌し、グラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して32.9gの粉末状ポリマーを得た。
【0096】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPE成分とPMMA成分が含まれており、その組成比はPE/PMMA=91/9(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0097】
[実施例2]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例1の(1)で得た臭素含有PE30g、トルエン200mL、MMA100mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)700mg、PMDETA2.04mLを加えた後、80℃に加熱して1時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して34.6gの粉末状ポリマーを得た。
【0098】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPE成分とPMMA成分が含まれており、その組成比はPE/PMMA=87/13(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0099】
[実施例3]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例1の(1)で得た臭素含有PE15g、アニソール75mL、MMA75mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)350mg、PMDETA1.02mLを加えた後、80℃に加熱して3時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して19.5gの粉末状ポリマーを得た。
【0100】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPE成分とPMMA成分が含まれており、その組成比はPE/PMMA=77/23(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0101】
[実施例4]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例1の(1)で得た臭素含有PE15g、キシレン100mL、MMA50mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム1.17g、アルミニウムイソプロポキシド996mgを加えた後、80℃に加熱して1時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して15.5gの粉末状ポリマーを得た。
【0102】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPE成分とPMMA成分が含まれており、その組成比はPE/PMMA=97/3(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0103】
[実施例5]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例1の(1)で得た臭素含有PE15g、アセトン75mL、MMA75mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)700mg、PMDETA2.04mLを加えた後、55℃に加熱して4時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して16.7gの粉末状ポリマーを得た。
【0104】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPE成分とPMMA成分が含まれており、その組成比はPE/PMMA=90/10(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0105】
[実施例6]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例1の(1)で得た臭素含有PE15g、アセトン75mL、MMA50mL、メタクリル酸グリシジル(GMA)25mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)700mg、PMDETA2.04mLを加えた後、55℃に加熱して4時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して20.0gの粉末状ポリマーを得た。
【0106】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPE成分とMMA−GMA共重合体成分が含まれており、その組成比はPE/MMA−GMA=75/25(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0107】
[実施例7]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例1の(1)で得た臭素含有PE30g、MMA250mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)700mg、PMDETA2.04mLを加えた後、80℃に加熱して1時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して35.1gの粉末状ポリマーを得た。
【0108】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPE成分とPMMA成分が含まれており、その組成比はPE/PMMA=86/14(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0109】
[実施例8]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例1の(1)で得た臭素含有PE30g、MMA170mL、GMA80mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)700mg、PMDETA2.04mLを加えた後、80℃に加熱して1時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して43.5gの粉末状ポリマーを得た。
【0110】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPE成分とMMA−GMA共重合体成分が含まれており、その組成比はPE/MMA−GMA=69/31(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0111】
[実施例9]
(1)臭素含有ポリプロピレン(PP)の合成
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン(PP)(Mn=25,600)80gおよびクロロベンゼン800mLを入れ、攪拌下120℃で2時間窒素バブリングした。その後、ブロモマレイン酸無水物10mLおよびAIBN558mgを加えて100℃で2時間加熱撹拌を行った。反応液を冷却して析出した固体をグラスフィルターでろ過し、アセトンで洗浄後減圧乾燥して臭素含有PPの白色粉末78gを得た。
【0112】
得られたポリマー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.44wt%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=58,700、Mn=29,100、Mw/Mn=2.0であった。
【0113】
(2)メタクリル酸メチル(MMA)のラジカル重合
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素含有PP15g、キシレン250mL、MMA50mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)387mg、PMDETA0.56mLを加えた後、80℃に加熱して2時間重合を行った。冷却後、スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して18.1gの粉末状ポリマーを得た。
【0114】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPP成分とPMMA成分が含まれており、その組成比はPP/PMMA=83/17(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0115】
[実施例10]
(1)臭素含有ポリプロピレン(PP)の合成
AIBNの添加量を1.67gに変更した以外は、実施例9(1)と同様の手順で臭素含有PPの白色粉末79gを得た。得られたポリマー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.70wt%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=58,200、Mn=29,600、Mw/Mn=2.0であった。
【0116】
(2)メタクリル酸メチル(MMA)のラジカル重合
使用する臭素含有PPを実施例10の(1)で得たものに変更した以外は、実施例9の(2)と同様の手順で19.1gの粉末状ポリマーを得た。H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPP成分とPMMA成分が含まれており、その組成比はPP/PMMA=79/21(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0117】
[実施例11]
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、実施例9の(2)で得た臭素含有PP15g、キシレン450mL、メタクリル酸ドデシル(DMA)150mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、塩化銅(I)535mg、PMDETA1.13mLを加えた後、80℃に加熱して8時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをヘプタンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して42.3gの粉末状ポリマーを得た。
【0118】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPP成分とPDMA成分が含まれており、その組成比はPP/PDMA=35/65(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0119】
[実施例12]
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、実施例9の(2)で得た臭素含有PP15g、スチレン(St)960mL、アクリロニトリル(AN)240mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)1.52g、PMDETA4.42mLを加えた後、90℃に加熱して5時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをヘプタンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して70.1gの粉末状ポリマーを得た。
【0120】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPP成分とSt−AN共重合体成分が含まれており、その組成比はPP/St−AN=21/79(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0121】
[実施例13]
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、実施例9の(2)で得た臭素含有PP15g、キシレン450mL、アクリル酸ブチル(nBA)150mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、塩化銅(I)535mg、PMDETA1.13mLを加えた後、80℃に加熱して8時間重合を行った。冷却後、反応スラリーをグラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをヘプタンおよびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して46.0gの粉末状ポリマーを得た。
【0122】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはPP成分とPnBA成分が含まれており、その組成比はPP/PnBA=54/46(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0123】
[実施例14]
(1)臭素含有エチレン−ブテン共重合体(EBR)の合成
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、エチレン−ブテン共重合体(EBR)(Mn=131,000)80gおよびクロロベンゼン800mLを入れ、攪拌下100℃で2時間窒素バブリングした。その後、ブロモマレイン酸無水物10mLおよびAIBN558mgを加えて、100℃で2時間加熱撹拌を行った。冷却後、溶液をアセトン3L中に注いで撹拌し、グラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをアセトンで洗浄後減圧乾燥して、臭素含有EBRの淡黄色ゴム状固体79gを得た。
【0124】
得られたポリマー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.50wt%であった。また、該ポリマーの分子量(PS換算)をGPCにより測定したところ、Mw=192,600、Mn=101,000、Mw/Mn=1.9であった。
【0125】
(2)メタクリル酸メチル(MMA)のラジカル重合
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素含有EBR15g、エチルベンゼン200mL、MMA100mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)287mg、PMDETA0.84mLを加えた後、80℃に加熱して3時間重合を行った。冷却後、溶液をメタノール1.5L中に注いで撹拌し、グラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して19.8gのフレーク状ポリマーを得た。
【0126】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはEBR成分とPMMA成分が含まれており、その組成比はEBR/PMMA=76/24(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0127】
[実施例15]
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、実施例14の(1)で得た臭素含有EBR40g、エチルベンゼン500mL、MMA225mL、GMA75mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)717mg、PMDETA2.09mLを加えた後、80℃に加熱して4時間重合を行った。冷却後、溶液をメタノール3L中に注いで撹拌し、グラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して61.6gのフレーク状ポリマーを得た。
【0128】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはEBR成分とMMA−GMA共重合体成分が含まれており、その組成比はEBR/MMA−GMA=65/35(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0129】
[実施例16]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例14の(1)で得た臭素含有EBR15g、St200mL、AN100mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)287mg、PMDETA0.84mLを加えた後、110℃に加熱して4時間重合を行った。冷却後、溶液をメタノール1.5L中に注いで撹拌し、グラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して24.9gのフレーク状ポリマーを得た。
【0130】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはEBR成分とSt−AN共重合体成分が含まれており、その組成比はEBR/St−AN=60/40(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0131】
[実施例17]
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、実施例14の(1)で得た臭素含有EBR40g、MMA225mL、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)75mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)717mg、PMDETA2.09mLを加えた後、80℃に加熱して4時間重合を行った。冷却後、溶液をメタノール3L中に注いで撹拌し、グラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して52.7gのフレーク状ポリマーを得た。
【0132】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはEBR成分とMMA−HEMA共重合体成分が含まれており、その組成比はEBR/MMA−HEMA=76/24(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0133】
[実施例18]
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、実施例14の(1)で得た臭素含有EBR50g、St800mL、無水マレイン酸(MAH)76gを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)1.00g、PMDETA2.92mLを加えた後、80℃に加熱して4時間重合を行った。冷却後、溶液をメタノール3L中に注いで撹拌し、グラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して58.9gのフレーク状ポリマーを得た。
【0134】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはEBR成分とSt−MAH共重合体成分が含まれており、その組成比はEBR/St−MAH=85/15(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0135】
[実施例19]
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、実施例14(1)で得た臭素含有EBR50g、St700mL、GMA92.6mLを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)1.00g、PMDETA2.92mLを加えた後、80℃に加熱して2.5時間重合を行った。冷却後、溶液をメタノール3L中に注いで撹拌し、グラスフィルターでろ過した。さらにフィルター上のポリマーをメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して75.6gのフレーク状ポリマーを得た。
【0136】
H−NMR分析より、得られたポリマー中にはEBR成分とSt−GMA共重合体成分が含まれており、その組成比はEBR/St−GMA=66/34(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0137】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明により、オレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体が、ハロゲン化剤を使用することなく製造される。したがって、着色や劣化の少ない重合体が得られ、かつ反応器の腐食や溶媒の汚染が低減されることから、製造プロセスの簡素化や環境負荷低減という点でも非常に有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系重合体セグメントとラジカル重合体セグメントとが化学結合した重合体の製造方法であって、
ラジカル開始剤の存在下、オレフィン系重合体(A)と下記一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体とを反応させ、ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を製造する工程(1)と、
前記ハロゲン含有オレフィン系重合体(A’)を開始剤として、周期律表第3族〜第11族から選ばれる遷移金属元素を含む金属化合物(B)存在下で、ラジカル重合性単量体を重合する工程(2)と、を含む重合体の製造方法。
【化1】

(一般式(1)においてAおよびBは、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基からなる群から選ばれる原子または基であり、AおよびBの少なくともどちらか一方はハロゲン原子である)
【請求項2】
前記オレフィン系重合体(A)が、下記(A1)〜(A5)からなる群から選ばれ、かつ重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)が1×10〜1×10の範囲である、請求項1に記載の重合体の製造方法。
(A1):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体。
(A2):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と、芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体。
(A3):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と、下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体。
(A4):CH=CH−C2X+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と、不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体。
(A5):前記重合体(A1)〜(A4)を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性したもの。
【化2】

(式(2)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表し、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい)
【請求項3】
前記金属化合物(B)が、チタン、ジルコニウム、モリブデン、レニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅から選ばれる金属を含む、請求項1または2に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体が、クロロマレイン酸無水物またはブロモマレイン酸無水物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸系単量体、スチレン系単量体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド系単量体、マレイン酸系単量体、マレイミド系単量体およびビニルエステル系単量体からなる群から選ばれる単量体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
【請求項6】
前記オレフィン系重合体(A)が、前記(A1)群から選ばれる重合体であり、前記金属化合物(B)が銅化合物であり、かつ一般式(1)で示される無水マレイン酸誘導体がブロモマレイン酸無水物である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。


【公開番号】特開2010−222463(P2010−222463A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70868(P2009−70868)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】