説明

重合可能なリン酸エステル誘導体及びそれを用いる歯科用組成物

本発明は、次式(A):


(式中、Zは、COOR、COSR、CON(R、CONR又はCONHRであり、R及びRは、独立して、水素原子、C〜Cシクロアルキル基により任意に置換される置換又は非置換C〜C18アルキル基、置換又は非置換C〜Cシクロアルキル基、置換又は非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、置換又は非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、あるいは置換又は非置換C〜C30アラルキル基であって、2個のR残基は、それらが結合されるN原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し、これはさらに、上記N原子と並んで、さらなる窒素原子又は酸素原子を含有し、そして置換基は1〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数)により置換され得;aは、1〜10、好ましくは1〜5の整数であり;bは、1〜10、好ましくは1〜5の整数であり;そしてRは、第一脂肪族炭素原子及び第二脂肪族炭素原子、第二脂環式炭素原子、ならびに芳香族炭素原子から選択されるa+b個の炭素原子を含有する有機残基を表し、上記炭素原子は各々、ホスフェート又は2−(オキサ−エチル)アクリル誘導体基を連結する)を有する重合可能なリン酸エステル誘導体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合可能なリン酸エステル誘導体、歯科用組成物中のその使用、その製造方法、及びそれを用いる歯科用組成物に関する。より詳細には、重合可能なリン酸エステル誘導体は、酸性媒質中での加水分解に対するその安定性のため、ワン・パート自己エッチング、自己下塗り型の歯科用接着剤組成物の提供を可能にする。
【背景技術】
【0002】
[技術的背景]
今日、自己エッチング、自己下塗り型の歯科用接着剤は、重合可能な酸性モノマーの低加水分解安定性のため、ツー・パート系で構成される。低加水分解安定性は、水又は水/溶媒混合物中での酸性及び接着性モノマーの加水分解から生じる。したがって既知の酸性及び接着性モノマーは、無水で保存され、適用直前に水性部分と混合されねばならない。
【0003】
しばしば、スルホン酸エステル基及びリン酸エステル基が酸性の重合可能な接着性モノマー中に用いられる。しかしながらこれらの酸性基は、モノマー内のアクリル及びメタクリルエステル部分、ならびにリン酸エステル基を加水分解する(Moszner et al. Macromol. Chem. Phys. 200, 1062, (1999)、DE 199 18 974、EP 1 169 996)。これらの不都合を克服するために、重合可能なホスホン酸モノマーが、Moszner et al. Macromol. Chem. Phys. 200, 1062, (1999)、DE 199 18 974及びEP 1 169 996により提案された。さらに米国特許第4,539,382号は、1個のホスホン酸基を有するモノ(メト)アクリルアミドを開示する。しかしながらこれらのモノマーは、依然として加水分解性(メト)アクリル酸エステル部分を含む。したがって2−(オキサアルキル)アクリレートを基礎にしたホスホン酸エステル基を有するモノマーが、DE 197 46 708で示唆された。しかしながらこれらのホスホン酸誘導体もまた、酸性溶液中で加水分解する傾向がある。したがってワン・パート自己エッチング、自己下塗り歯科用接着剤組成物を提供することは可能でなかった。ワン・パート組成物とは、組成物が、保存され得る1個の容器のみに含入される、ということを意味する。これにより、適用前にいかなる混合も伴わずに、そしていかなる特別な設備もなしに、組成物の適用が可能になる。自己エッチングとは、歯科用接着剤組成物が、別個の方法過程において、エナメル質のいかなる予備的エッチングも伴わずに、歯に適用され得る、ということを意味する。このような自己エッチング特徴を含むためには、組成物は酸性でなければならない。自己下塗りとは、歯科用接着剤組成物が、下塗り剤のいかなる予備的適用も伴わずに、歯に塗布され得ることを意味する。
【0004】
実際、従来技術のモノマーは、下塗り部分及び結合部分から成るツー・パート歯科系においてのみ用いられ得る。これらのツー・パート歯科用接着剤系は、逐次的に、又は二部分を混合した後に一過程で適用される。両手法は、逐次過程間に起こり得る臨床的合併症のため(唾液又は血液汚染)、又は自己エッチング接着剤の適用前に混合が必要とされる場合の投与問題のため、固有の不都合を有する。
【0005】
これらの臨床問題を克服するためには、ワン・パート系として自己下塗り及び自己エッチング接着剤を提供して、逐次適用又は予混合の必要性を排除することが望ましい。
【0006】
ホスホン酸誘導体を含有する従来技術のモノマーのさらなる不都合は、以下の通りである:ホスホン酸はリン酸より低酸性である。したがって、歯科用組成物の自己エッチング特徴を得るためには、付加的な酸を要する。しかしながら付加的な酸は一般に、加水分解によるモノマーの分解を増大する。さらに、ホスホン酸誘導体を産生するための中間体は、有毒である。したがって製造方法は危険であり、より複雑になる。さらに、ホスホン酸誘導体はリン酸誘導体より高価である。
【0007】
[発明の説明]
重合可能なホスホン酸誘導体に関する上記の必要性及び不都合は、次式(A):
【0008】
【化35】

【0009】
(式中、Zは、COOR、COSR、CON(R、CONR又はCONHRであり、
及びRは、独立して、水素原子、C〜Cシクロアルキル基により任意に置換される置換又は非置換C〜C18アルキル基、置換又は非置換C〜Cシクロアルキル基、置換又は非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、置換又は非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、あるいは置換又は非置換C〜C30アラルキル基であって、2個のR残基は、それらが結合されるN原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し得、これはさらに、前記N原子と並んで、さらなる窒素原子又は酸素原子を含有し得、そして置換基は1〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数)により置換され得、
aは、1〜10、好ましくは1〜5の整数であり、
bは、1〜10、好ましくは1〜5の整数であり、そして
Rは、第一脂肪族炭素原子及び第二脂肪族炭素原子、第二脂環式炭素原子、ならびに芳香族炭素原子から選択されるa+b個の炭素原子を含有する有機残基を表し、上記炭素原子は各々、ホスフェート又は2−(オキサ−エチル)アクリル誘導体基を連結する)
を有する重合可能なリン酸エステル誘導体により解決される。
【0010】
本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体中の有機残基Rは、さらなる炭素原子、水素原子及び異種原子、好ましくは酸素原子及びイオウ原子を含有し、酸素原子が特に好ましい。さらなる原子の数は変えてもよく、限定されない。本発明の好ましい実施形態によれば、Rは、2〜45個、好ましくは30個まで、より好ましくは18個まで、最も好ましくは10個までの炭素原子を含有し得る。さらなる異種原子の数も限定されない。本発明の好ましい実施形態によれば、Rは、1〜10個の異種原子(単数又は複数)、好ましくは酸素原子(単数又は複数)を含有し得る。さらに、水素原子の量は変化し得る。それは、炭素原子及び異種原子の量に応じて決まる。
【0011】
本明細書中では、アリール基は、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等であってもよく、Cアリール基を代表するフェニル基が好ましいアリール基である。ヘテロアリール基は、例えばCへテロアリール基を代表するフリル基又はチエニル基であってもよく、チエニル基が特に好ましい。
【0012】
本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体は、驚くほど高い加水分解安定性を有するが、しかしホスフェート基が存在する。意外にも、本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体は、2−(オキサ−エチル)基及びリン酸エステル基の両方で加水分解安定性である。本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体は、酸性条件下で加水分解安定性である。特に本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体は、最高でも4、のpHで、好ましくは最高でも2のpHで、最も好ましくは1.0のpHで加水分解安定性である。したがって本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体は、有利なワンパック式自己エッチング及び自己下塗り歯科用接着剤組成物の調製を可能にする。
【0013】
ワンパック組成物とは、保存され得る、そして適用前にいかなる混合もならびにいかなる特別な設備も伴わずに組成物の適用を可能にする1個の容器のみに、本発明の組成物が含入される、ということを意味する。
【0014】
自己エッチングとは、本発明の歯科用接着剤組成物が、別個の方法過程でのエナメル質のいかなる予備的エッチングも伴わずに歯に適用され得る、ということを意味する。特に、本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体は、50℃の貯蔵温度で少なくとも1週間、加水分解安定性である歯科用組成物の調製を可能にし、このような貯蔵後、このような歯科用組成物から調製される接着剤とエナメル質及び/又は象牙質との結合強度は、少なくとも10MPa、好ましくは15MPaである。本発明の化合物の高い加水分解安定性のため、優れた貯蔵寿命を有するワン・パート自己エッチング及び自己下塗り系が調製され得る。
【0015】
本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体のさらなる利点は、以下の通りである:リン酸誘導体はホスホン酸誘導体より強酸性である。したがって、歯科用組成物の自己エッチング特徴を得るために付加的な酸を混入する必要はない。しかしながら本発明の歯科用組成物は、さらなる酸も含み得る。それらはpHの容易な調整を可能にする。意外にも、本発明のより強度のリン酸誘導体も付加的な酸(単数又は複数)も、加水分解安定性を低減しない。さらに、リン酸誘導体を産生するための中間体は有毒でない。したがって製造方法は安全であり、本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体の製造方法は、より容易に実行され得る。さらに、リン酸エステル誘導体は一般に、ホスホン酸誘導体より安価である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、有機残基Rが、少なくとも2個の上記第一脂肪族炭素原子、及び任意に1個又は複数個の上記第二脂肪族炭素原子(単数又は複数)を有する(a+b)価飽和脂肪族C〜C18基(上記(a+b)価基はC〜Cアルキル基(単数又は複数)により置換され得る);又は1〜14個の酸素原子を有し、そして上記第一脂肪族炭素原子及び/又は第二脂肪族炭素原子を有する少なくとも2個のC〜C10脂肪族基(単数又は複数)により置換されるC〜C45モノエーテル、ジエーテル又はポリエーテル(当該エーテルはC〜Cアルキル基(単数又は複数)により任意に置換され得る)である。これらC〜Cアルキル基(単数又は複数)の数は変えてもよい。好ましくは、エーテルは1〜15個、より好ましくは1〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数)で置換され得る。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、有機残基Rが、
0〜4個、好ましくは0〜3個、より好ましくは0又は1個の上記第二脂環式炭素原子を有する飽和C〜C環式、C〜C15二環式又は多環式炭化水素基;及び/又は
0〜5個、好ましくは0〜3個、より好ましくは0又は1個の上記芳香族炭素原子を有するC〜C18アリール基又はヘテロアリール基
を表し、上記飽和炭化水素基、又はアリール基若しくはヘテロアリール基は、以下の:
0〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数);
上記第一脂肪族炭素原子及び/又は第二脂肪族炭素原子を有する0〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個の飽和C〜C10脂肪族基(単数又は複数);及び/又は
次式のうちの1つによる0〜2個の二価残基:
−[O−CHCH−]−(式中、fは1〜10、好ましくは1〜5の整数である);
−[O−CHCHCH−]−(式中、gは1〜10、好ましくは1〜5の整数である);
−[O−R12−(式中、R12は−CH(CH)−CH−又は−CH−CH(CH)−であり、hは1〜10、好ましくは1〜5の整数である);
−[O−R14−[O−R15−又は−[O−R15−[O−R14−(式中、R14は−CHCH−であり、R15は−CH(CH)−CH−又は−CH−CH(CH)−であり、i、j、k及びlは整数であって、2i+3j≦15及び2k+3l≦15であり;
−[O−CHCHCHCH−]−(式中、rは1又は2の整数である);
により置換され、この場合、上記二価残基は上記第一脂肪族炭素原子のうちの1つを有し;そして
上記飽和炭化水素基、アリール基及びヘテロアリール基から選択される2個の基は、任意に単結合、アルキレン基又はO−により連結され得る。上記アルキレン基はC〜Cアルキレン基であり得る。上記アルキレン基は、C〜Cアルキレン基であることが好ましく、イソ−プロピレン基であることが特に好ましい。
【0018】
本発明のさらなる実施形態では、有機残基Rが、
少なくとも2個の上記第二脂環式炭素原子を有する(a+b)価飽和C〜C環式、又はC〜C15二環式若しくは三環式炭化水素基;
2〜6個の上記芳香族炭素原子を有する(a+b)価飽和C〜C18アリール基又はヘテロアリール基;
アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基のアルキル部分の末端に少なくとも1個の上記芳香族炭素原子、少なくとも1個の上記第二脂肪族炭素原子、及び任意に1個の上記第一脂肪族炭素原子を有する(a+b)価C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基;又は
少なくとも1個の上記第一脂肪族炭素原子及び少なくとも1個の上記第二脂肪族炭素原子を有する(a+b)価C〜C30アラルキル基
である。
【0019】
次式:
【0020】
【化36】

【0021】
【化37】

【0022】
【化38】

【0023】
【化39】

【0024】
(式中、Zは上記で定義されたのと同様であり、
は、二価C〜C18アルキレン基、二価C〜Cシクロアルキレン基、二価C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、二価C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、二価C〜C30アラルキル基を意味し、上記の基は各々、1〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数)により置換され得る)
のうちの1つを特徴とする重合可能なリン酸エステル誘導体が好ましい。
【0025】
上記の式における重合可能なリン酸エステル誘導体は、多数の重合可能な2−(オキサ−エチル)アクリル誘導体基及び/又は多数の酸性ホスフェート基が一分子に連結される、という利点を有する。これは、このような化合物を含む歯科用組成物の自己下塗り及び自己エッチング特徴の調整を可能にする。分子当たり多量の重合可能な2−(オキサ−エチル)アクリル誘導体基は、本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体を含む歯科用接着剤組成物の結合強度を増強する。分子当たり多量のホスフェート基は、本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体を含む歯科用組成物の自己エッチング特徴を増強する。
【0026】
本発明のさらなる実施形態では、重合可能なリン酸エステル誘導体は、Rが次式:
−[CHCH−O]−CHCH−(式中、mは1〜14の整数である);
−[CHCHCH−O−]−CHCHCH−(式中、pは1〜14の整数である);
−[R12−O]−R13−(式中、R12及びR13は−CH(CH)−CH−又はCH−CH(CH)−であり、qは1〜14である);
−[R14−O]−[R15−O]−R14−又は[R14−O]−[R15−O]−R15−(式中、R14は−CHCH−であり、R15は−CH(CH)−CH−又はCH−CH(CH)−であり、r、s、t及びuは整数であって、2r+3s≦43及び2t+3u≦42であり;
−[CHCHCHCH−O−]−CHCHCHCH−(式中、rは1又は2である);
【0027】
【化40】

【0028】
【化41】

【0029】
【化42】

【0030】
【化43】

【0031】
【化44】

【0032】
【化45】

又は
【0033】
【化46】

【0034】
(式中、R16及びR17はH又はCHであり、そしてx及びyは、独立して、0〜10、好ましくは0〜5の整数であり得る)
のうちの二価残基である、上記式を有する。
【0035】
上記(a+b)個の炭素原子が第一脂肪族炭素原子である上記で定義された重合可能なリン酸エステル誘導体が特に好ましい。
【0036】
本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体は、酸性条件下で、好ましくは最高でも4のpHで、より好ましくは最高でも2のpHで、加水分解安定性である。
【0037】
本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体は、以下の:
(i)式(HO)−R−(OH)(B)のジオール又はポリオールを、式(C):
【0038】
【化47】

【0039】
(式中、Z、R、a及びbは上記で定義されたのと同様であり、特にRは上記で定義されたようなRであり、そしてXはb個のヒドロキシル基(単数又は複数)/分子を有する化合物(D)を産生するための脱離基である)の化合物と反応させる過程と
(ii)化合物(D)をヒドロキシル基と反応性であるリン酸誘導体(E)と反応させる過程と
を包含する方法により調製され得る。
【0040】
好ましくは脱離基Xは、ハロゲン原子である。Xが塩素原子又は臭素原子であることが特に好ましく、塩素原子が最も好ましい。
【0041】
上記の方法における化合物(C)及びジオール又はポリオール(B)間の当量比は、約a:1であり得る。さらに化合物(E)及び(D)間の当量比は、約b:1であり得る。好ましくはリン酸誘導体(E)は、三塩化リン酸化物である。さらに、上記の方法は、化合物(D)及び(E)の反応生成物を加水分解することを包含し得る。
【0042】
ポリオールが化合物(B)として用いられる場合、ポリオール(B)のb個のヒドロキシル基が保護され、次に化合物(C)と反応させられて、その後、過程(ii)を実行する前に脱保護化されることが有利であり得る。ヒドロキシル基を保護するための任意の既知の保護剤が用いられ得る。第一、第二及び芳香族ヒドロキシル基に適しているため、特に好ましいのは3,4−ジヒドロ−2H−ピランである。酸性条件下での3,4−ジヒドロ−2H−ピランとアルコールとの反応はテトラヒドロピラニルエーテルを生じるが、これは塩基性条件下で安定であり、そして弱酸で容易に切断又は脱保護化され得る。
【0043】
重合可能なリン酸エステル誘導体は、優れた特性を有するために、歯科用組成物中に用いられ得る。このような歯科用組成物は、接着剤、下塗り剤、セメント、複合材料等を含む。特に好ましいのは、ワン・パート自己エッチング、自己下塗り歯科用接着剤組成物である。
【0044】
さらに本発明は、上記のような重合可能なリン酸エステル誘導体を含む歯科用組成物を提供する。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、歯科用組成物は酸性である。歯科用組成物は大きくて4のpH、好ましくは大きくて2のpH、より好ましくは約1.0のpHを有し得る。
【0046】
さらに本発明の歯科用組成物は、硬化系をさらに含み得る。このような硬化系は、重合開始剤、阻害剤及び安定剤を含み得る。重合開始剤は、熱開始剤、レドックス開始剤又は光開始剤であり得る。好ましくは樟脳キノンが用いられる。歯科用組成物を安定化するために、安定剤が適用され得る。このような安定剤は、例えばラジカル吸収モノマー、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、テトラメチルピペリジンN−オキシルラジカル、ガルバノキシルラジカルであり得る。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、歯科用組成物は充填剤を含み得る。この充填剤は、無機充填剤及び/又は有機充填剤であり得る。好ましくは充填剤はナノ充填剤である。
【0048】
さらに本発明の歯科用組成物は、有機水溶性溶媒及び/又は水を含み得る。有機水溶性溶媒は、アルコール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール;及び/又はケトン、例えばアセトン及びメチルエチルケトンから選択され得る。特に好ましいのは、アセトン、エタノール及び/又はtert−ブタノールである。
【0049】
本発明のさらなる実施形態によれば、歯科用組成物は有機酸及び/又は無機酸を含み得る。好ましくは有機酸は、モノカルボン酸又はポリカルボン酸、例えばメタクリル酸、アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、イタコン酸及び/又は蟻酸であり;そして無機酸は好ましくは、リン酸、硫酸、スルホン酸及び/又はフッ化水素酸である。
【0050】
本発明の歯科用組成物は、重合可能なN−置換アルキルアクリル酸アミドモノマー又はアクリル酸アミドモノマーも含み得る。好ましくは、重合可能なN−置換アルキルアクリル酸アミドモノマー又はアクリル酸アミドモノマーは、次式:
【0051】
【化48】

【0052】
【化49】

【0053】
【化50】

【0054】
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、置換又は非置換C〜C18アルキル基、置換又は非置換C〜C18シクロアルキル基、置換又は非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、置換又は非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、置換又は非置換C〜C30アラルキル基を表し、2個のR残基は、それらが結合されるN原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し得、これはさらに、上記N原子と並んで、さらなる窒素原子又は酸素原子を含有し得、そして置換基は1〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数)により置換され得;
は、1〜45個の炭素原子を有する二価の置換又は非置換有機残基を意味し、上記有機残基は1〜14個の酸素原子及び/又は窒素原子を含有し得、そして以下の:
〜C18アルキレン基(ここで、1〜6個の−CH−基は、−N−(C=O)−CR=CH基(式中、Rは、水素原子又はC〜C18アルキル基である)により置き換えられ得る)、
二価の置換又は非置換C〜C18シクロアルキル基又はシクロアルキレン基、
二価の置換又は非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、
二価の置換又は非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、
二価の置換又は非置換C〜C30アラルキル基、及び
1〜14個の酸素原子を有する二価の置換又は非置換C〜C45モノエーテル基、ジエーテル基又はポリエーテル基
から選択され、
は、飽和二価又は多価の置換又は非置換C〜C18炭化水素基、飽和二価又は多価の置換又は非置換環式C〜C18炭化水素基、二価又は多価の置換又は非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換C〜C30アラルキル基、又は1〜14個の酸素原子を有する二価又は多価の置換又は非置換C〜C45モノエーテル残基、ジエーテル残基又はポリエーテル残基を意味し、
nは整数、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜4である)
のうちの1つを有する。
【0055】
より好ましくは、本発明の歯科用組成物は、次式のうちの1つを特徴とするモノ(メト)アクリルアミドモノマー、ビス(メト)アクリルアミドモノマー又はポリ(メト)アクリルアミドモノマーを含有する:
【0056】
【化51】

【0057】
【化52】

【0058】
【化53】

【0059】
【化54】

【0060】
【化55】

【0061】
【化56】

【0062】
【化57】

【0063】
【化58】

【0064】
【化59】

【0065】
【化60】

【0066】
【化61】

【0067】
【化62】

【0068】
【化63】

【0069】
【化64】

【0070】
【化65】

【0071】
【化66】

【0072】
【化67】

【0073】
【化68】

【0074】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、歯科用組成物は加水分解安定性ワン・パート自己エッチング・自己下塗り歯科用接着剤組成物である。このような組成物は、例えば50℃の貯蔵温度で少なくとも1週間、加水分解安定性であることが有利であり、このような貯蔵後、このような歯科用組成物から調製される接着剤とエナメル質及び/又は象牙質との結合強度は少なくとも10MPa、好ましくは15MPaである。
【0075】
歯科用組成物は、5〜90重量%の本発明の重合可能なリン酸エステル誘導体を含有し得る。
【0076】
ここで、以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例〕
【実施例1】
【0077】
エチル2−[4−ヒドロキシ−2−オキサブチル]アクリレート(1)
【0078】
【化69】

【0079】
ジクロロメタン100ml中の32.52gの無水トリフルオロメタンスルホン酸の溶液に、ジクロロメタン200ml中のα−ヒドロキシエチルアクリレート15g(0.115mol)及びトリエチルアミン11.66g(0.115mol)の溶液を、反応混合物の温度が5℃より低いままであるよう、徐々に付加した。得られた溶液を、1,2−エタンジオール210g(1.127mol)に室温で滴下した。反応混合物を室温で12時間撹拌後、溶液を、1×200mlの水、2×250mlの炭酸ナトリウム水溶液(25重量%)及び1×200mlの水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。溶媒の蒸発後、油状未精製物質をBHT15mgで安定化し、真空蒸留(63℃/0.032mbar)により精製した。これにより、無色透明油10.12g(収率:50%)が得られた。
【0080】
IR(フィルム,cm−1)3436(OH)、2979、2931、2871(CH/CH)、1710(CO)、1638(C=C)、1453、1373、1304(CH/CH)、1270、1173、1109、1052、953。
H−NMR(250MHz,CDCl,ppm)1.27(t,3H,CH)、2.52(broad s,1H,OH)、3.54−3.63(m,2H,OCHCHO)、3.67−3.78(m,2H,OCHCHO)、4.15−4.24(m,4H,CH(1)及びOCHCH)、5.84(s,1H,CH=C)、6.28(s,1H,CH=C)。
13C−NMR(63MHz,CDCl,ppm)14.06(CH)、60.74及び61.56(CH(4)及びOCHCH)、69.31及び71.80(CH(1)及びCH(3))、126.21(C=C−CO)、137.03(C=C−CO)、165.82(C=C−CO)。
【0081】
エチル2−[5−二水素ホスホリル−5,2−ジオキサペンチル]アクリレート(2)
【0082】
【化70】

【0083】
ジエチルエーテル280ml中のオキシ塩化リン15.46g(0.1008mol)の撹拌溶液に、ジエチルエーテル250ml中の(1)17.56g(0.1008mol)及びトリエチルアミン10.2g(0.1008mol)の溶液を、温度を5℃より低く保持しながら、滴下した。反応混合物を室温で14時間撹拌後、それを濾過し、0℃で水200mlに徐々に付加した。乳濁液を40分間撹拌後、層を分離し、水層を2×200mlのジエチルエーテルで洗浄した。水層を100mlに減らして、4×100mlのジクロロメタンで抽出した。有機分画を合併し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、蒸発させた。これにより、黄色油19gを生じた。未精製物質を水400ml中に溶解し、3×200mlのジエチルエーテルで洗浄した。回転蒸発器で水を蒸発させ、真空(10−3mbar)下で乾燥して、無色透明油14.18 g(収率:55%)を得た。
【0084】
IR(フィルム,cm−1)3500−2500 broad absorption(OH)、2912(CH/CH)、1709(CO)、1637(C=C)、1456、1374(CH/CH)、1261、1178、1105、1014、949。
H−NMR(250MHz,CDCl,ppm)1.25(t,3H,CH)、3.70(broad s,2H,CH)、4.30−4.13(m,6H,CH)、5.87(s,1H,CH=C)、6.27(s,1H,CH=C)、10.71(broad s,2H,PO)。
13C−NMR(63MHz,CDCl,ppm)13.94(CH)、60.94(OCHCH)、66.01(CH(4))、69.25(CH(1))、69.40(CH(3))、127.11(C=C−CO)、136.28(C=C−CO)、166.00(C=C−CO)。
【実施例2】
【0085】
エチル2−[12−ヒドロキシ−2−オキサドデシル]アクリレート(3)
【0086】
【化71】

【0087】
ジクロロメタン210ml中の54.7gの無水トリフルオロメタンスルホン酸の溶液に、ジクロロメタン400ml中のα−ヒドロキシエチルアクリレート25g(0.192mol)及びトリエチルアミン19.43g(0.192mol)の溶液を、反応混合物の温度が5℃より低いままであるよう、徐々に付加した。溶液を、0℃で45分間撹拌した後、室温で、ジクロロメタン400ml中の1,10−デカンジオール60g(0.344mol)の溶液に滴下した。反応混合物を室温で12時間撹拌後、溶液を、2×300mlの炭酸ナトリウム水溶液(1n)及び1×400mlの水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。溶離液として酢酸エチルを用いたシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、未精製物質を精製した。未精製物質をBHT113mgで安定化した後、それを真空蒸留(>150℃/0.028mbar)により最終的に精製した。これにより、無色透明油11.024g(収率:20%)が得られた。
【0088】
IR(フィルム,cm−1)3425(OH)、2926/2855(CH/CH)、1714(CO)、1638(C=C)、1459/1375/1303(CH/CH)、1270/1172/1102/1031/949。
H−NMR(250MHz,CDCl,ppm)1.08−1.24(m,15H,CH,CH)、1.24−1.49(m,4H,CH)、3.17(broad s,1H,OH)、3.27(t,2H,OCH)3.37(t,2H,OCH)、3.96(s,2H,CH(1))、4.01(q,2H,OCHCH)5.65(s,1H,CH=C)、6.07(s,1H,CH=C)。
13C−NMR(63MHz,CDCl,ppm)13.64(CH)、25.36、25.68、28.98、29.07、29.11、19.17及び32.24(CH(4−11))、60.10及び61.90(CH(12)及びCHCH)、68.31及び70.52(CH(1)及びCH(3))、124.69(C=C−CO)、137.12(C=C−CO)、165.37(C=C−CO)。
【0089】
エチル2−[13−二水素ホスホリル−13,2−ジオキサトリデシル]アクリレート(4)
【0090】
【化72】

【0091】
ジエチルエーテル120ml中のオキシ塩化リン7.082g(46.18mmol)の撹拌溶液に、ジエチルエーテル150ml中の(3)11.024g(38.49mmol)及びトリエチルアミン4.673g(46.18mmol)の溶液を、温度を0℃に保持しながら、滴下した。添加完了後、反応混合物を室温で16時間撹拌後、懸濁液の濾過及び溶媒の蒸発により反応を完了した。溶液を、温度を10℃より低く保持しながら、水300mlに滴下した。混合物を0℃でさらに1.5時間撹拌後、有機層を分離し、水性分画を2×100mlのジエチルエーテルで抽出した。有機層を接合して、5×250mlの炭酸ナトリウム水溶液(25重量%)で洗浄した。併合水性分画を、塩酸水溶液(18重量%)を徐々に添加することにより酸性化した。酸性溶液を4×300mlのジエチルエーテルで洗浄した。有機分画を併合し、1×150mlの水で洗浄した。分離有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、蒸発させた。真空(10−3mbar)下で乾燥して、黄色味を帯びた固体8.57g(収率:60%)を得た。
【0092】
IR(フィルム,cm−1)3500−2500 broad absorption(OH)、2926/2855(CH/CH)、1715(CO)、1639(C=C)、1461/1375(CH/CH)、1265/1169/1101/1023/951。
H−NMR(250MHz,CDCl,ppm)1.15−1.36(m,15H,CH,CH)、1.45−1.77(m,4H,CH)、3.41(t,2H,CH(3))、4.03−4.24(m,4H,CHOPO,OCHCH)、4.11(s,2H,CH(1))、5.79(s,1H,CH=C)、6.22(s,1H,CH=C)、10.74(broad s,2H)。
13C−NMR(63MHz,CDCl,ppm)13.98(CH)、25.08、25.93、28.92、29.19、29.25、29.30及び29.45(CH(4−11))、60.42(CHCH)、68.63及び70.86(CH(1)及びCH(3))、125.08(C=C−CO)、137.38(C=C−CO)、165.69(C=C−CO)。
【実施例3】
【0093】
エチル2−[7−ヒドロキシ−2,5−ジオキサヘプチル]アクリレート(5)
【0094】
【化73】

【0095】
ジクロロメタン200ml中の無水トリフルオロメタンスルホン酸54.7g(0.1919mol)の溶液に、ジクロロメタン400ml中のα−ヒドロキシエチルアクリレート25g(0.192mol)及びトリエチルアミン19.43g(0.1919mol)の溶液を、反応混合物の温度が5℃より低いままであるよう、徐々に添加した。その後、反応混合物を0℃で2時間撹拌した後、それを、ジクロロメタン400ml中のジエチレングリコール104g(0.88mol)の溶液に室温で滴下した。反応混合物を室温で16時間撹拌後、溶液を、2×400mlの炭酸ナトリウム水溶液(1n)及び2×400mlの水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。溶媒の蒸発後、油状未精製物質をBHT160mgで安定化し、真空蒸留(94℃/0.026mbar)により精製した。これにより、無色透明油19.445g(収率:46%)が得られた。
【0096】
IR(フィルム,cm−1)3426(OH)、2871(CH/CH)、1711(CO)、1639(C=C)、1456、1374、1303(CH/CH)、1270、1174、1099、1064、1028、952。
H−NMR(250MHz,CDCl,ppm)1.10(t,3H,CH)、3.29(s,1H,OH)、3.36−3.47(m,2H,CH)、3.47−3.56(m,6H,CH)、3.97−4.11(m,4H,CH)、5.69(s,1H,CH=C)、6.09(s,1H,CH=C)。
13C−NMR(63MHz,CDCl,ppm)13.64(CH)、60.19、61.02、68.78、69.76、69.66、72.15、125.22(C=C−CO)、136.71(C=C−CO)、165.28(C=C−CO)。
【0097】
エチル2−[8−二水素ホスホリル−2,5,8−トリオキサオクチル]アクリレート(6)
【0098】
【化74】

【0099】
ジエチルエーテル240ml中のオキシ塩化リン13.27g(0.086mol)の撹拌溶液に、ジエチルエーテル220ml中の(5)18.90g(0.086mol)及びトリエチルアミン8.76g(0.086mol)の溶液を、温度を5℃より低く保持しながら、滴下した。反応混合物を室温で23時間撹拌後、それを濾過し、0℃で水100mlに徐々に添加した。乳濁液を1時間撹拌後、層を分離し、水層を4×100mlのジエチルエーテルで洗浄した。水層を蒸発させて、ジクロロメタン中に溶解し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。真空(10−3mbar)下で乾燥後、無色透明油17.00g(収率:65%)を単離した。
【0100】
IR(フィルム,cm−1)3500−2500 broad absorption(OH)、2875(CH/CH)、1710(GO)、1637(C=C)、1458、1375(CH/CH)、1245、1176、1088、973。
H−NMR(250MHz,CDCl,ppm)1.26(t,3H,CH)、3.64−3.78(m,6H,CH)、3.95−4.30(m,6H,CH)、5.85(s,1H,CH=C)、6.26(s,1H,CH=C)、10.53(s,2H,OH)。
13C−NMR(63MHz,CDCl,ppm)14.00(CH)、60.66(OCHCH)、65.84(d,CH(7))、69.16、69.72、70.06、70.15、126.30(C=C−CO)、136.65(C=C−CO)、165.77(C=C−CO)。
【実施例4】
【0101】
(2,2(4),4)−トリメチルヘキサメチレンビス(アクリルアミド)
【0102】
【化75】

【0103】
塩化メチレン100ml中の(2,2(4),4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン60g(0.379mol)の溶液に、塩化メチレン130ml中の塩化アクリロイル72.05g(0.796mol)の溶液及び水200ml中の水酸化ナトリウム31.84g(0.796mol)の溶液を、温度が0〜5℃のままであるよう、撹拌下で同時に添加した。その後、混合物を室温でさらに2時間撹拌した。水100mlの添加により、反応を終結させた。有機相を分離し、水溶液を塩化メチレン30mlで2回抽出した。混合した有機液体を1nHCl 150ml、1N NaHCO150ml及び水150mlで洗浄した。生成物の溶液を0.025mol%のBHTで安定化し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を濾過し、蒸発させて、無色高粘度油87g(収率:86%)を得た。
【0104】
IR(フィルム cm−1)3411、3278(NH)、2957(CH2/CH3)、1656(NHCO)、1546(C=C)、1241(CH2/CH3)、984/956(C=C)、703(C=C)。
H−NMR(250MHz,CDCl,ppm)0.7−3.4(several m,18H,CH,CH)、5.51−5.60(m,1H,CH=C−CO)、6.16−6.26(m,2H,CH=C−CO)、7.12、6.84、6.70、6.59(4xt,2H,NH)。
13C−NMR(63MHz,CDCl,ppm)20.80、22.21、25.36、26.01、26.75、27.90、28.02、29.04、30.73、32.80、35.00、35.68、37.21、38.79、40.51、45.16、46.02、47.02、48.70、125.66(C=)、131.08(C=)、165.82(C=O)、166.09(C=O)。
【0105】
適用例1(FBE−02.66.01)
N,N’−ビスアクリルアミド−N,N’−ジエチル−1,3−プロパン1.058g、3,(4),8,(9)−ビス(アクリルアミドメチル)トリシクロ−5.2.1.02,6デカン3.174g、エチル2−[13−二水素ホスホリル−13,2−ジオキサトリデシル]アクリレート0.602g、樟脳キノン0.03667g、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド0.0878g及びジメチルアミノ安息香酸エチルエステル0.04074gを、エタノール3.250g及び水1.750gから成る溶媒混合物中に溶解した。
【0106】
エナメル質及び象牙質との接着測定のために、以下の手法を適用した:
− 200及び500グリット紙やすりにより、歯を研磨した。
− 水中で37℃で歯を保存した。
− 樹脂配合物で処理:20秒
− 空気流により蒸発5秒
− 光硬化20秒
− スペクトルTPH体が20秒間、3回、歯上で硬化。
− 調製した歯を、37℃で2時間、水中に保存した後、測定した。
【0107】
これらの条件下で、以下の値を測定した;エナメル質への接着:15.2±4.5MPa、象牙質への接着:13.7±2.8MPa。
【0108】
適用例2(FBE−03.71.01)
N,N’−ビスアクリルアミド−N,N’−ジエチル−1,3−プロパン1.301g、3,(4),8,(9)−ビス(アクリルアミドメチル)トリシクロ−5.2.1.02,6デカン1.016g、エチル2−[5−二水素ホスホリル−5,2−ジオキサ−ペンチル]アクリレート0.330g、樟脳キノン0.02203g、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド0.05546g、ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル0.02561g及びヒドロキノン0.00313gを、エタノール1.463g及び水0.788gから成る溶媒混合物中に溶解した。
【0109】
エナメル質及び象牙質との接着測定のために、以下の手法を適用した:
− 200及び500グリット紙やすりにより、歯を研磨した。
− 水中で37℃で歯を保存した。
− 樹脂配合物で処理:20秒
− 空気流により蒸発5秒
− 光硬化20秒
− スペクトルTPH体が20秒間、3回、歯上で硬化。
− 調製した歯を、37℃で2時間、水中に保存した後、測定した。
【0110】
これらの条件下で、以下の値を測定した;象牙質への接着:16.0±3.6MPa、エナメル質への接着:10.6±2.8MPa。接着剤を、50℃で1週間、保存後、以下の値を測定した;象牙質への接着:16.1±1.8MPa、エナメル質への接着:12.7±1.7MPa。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(A):
【化1】

(式中、Zは、COOR、COSR、CON(R、CONR又はCONHRであり、
及びRは、独立して、水素原子、C〜Cシクロアルキル基により任意に置換される置換又は非置換C〜C18アルキル基、置換又は非置換C〜Cシクロアルキル基、置換又は非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、置換又は非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、あるいは置換又は非置換C〜C30アラルキル基であって、2個のR残基は、それらが結合されるN原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し得、これはさらに、前記N原子と並んで、さらなる窒素原子又は酸素原子を含有し得、そして前記置換基は1〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数)により置換され得、
aは、1〜10、好ましくは1〜5の整数であり、
bは、1〜10、好ましくは1〜5の整数であり、そして
Rは、第一脂肪族炭素原子及び第二脂肪族炭素原子、第二脂環式炭素原子、ならびに芳香族炭素原子から選択されるa+b個の炭素原子を含有する有機残基を表し、前記炭素原子は各々、ホスフェート又は2−(オキサ−エチル)アクリル誘導体基を連結する)
を有する重合可能なリン酸エステル誘導体。
【請求項2】
前記有機残基Rが、
少なくとも2個の前記第一脂肪族炭素原子、及び任意に1個又は複数個の前記第二脂肪族炭素原子(単数又は複数)を有する(a+b)価飽和脂肪族C〜C18基(前記(a+b)価基はC〜Cアルキル基(単数又は複数)により置換され得る);又は
1〜14個の酸素原子を有し、そして前記第一脂肪族炭素原子及び/又は第二脂肪族炭素原子を有する少なくとも2個のC〜C10脂肪族基(単数又は複数)により置換されるC〜C45モノエーテル、ジエーテル又はポリエーテル(前記エーテルはC〜Cアルキル基(単数又は複数)により任意に置換され得る)
であるか、あるいは有機残基Rが、
0〜4個、好ましくは0〜3個、より好ましくは0又は1個の前記第二脂環式炭素原子を有する飽和C〜C環式、C〜C15二環式又は多環式炭化水素基;及び/又は
0〜5個、好ましくは0〜3個、より好ましくは0又は1個の前記芳香族炭素原子を有するC〜C18アリール基又はヘテロアリール基
を表し、前記飽和炭化水素基、又はアリール基若しくはヘテロアリール基は、以下の:
0〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数);
前記第一脂肪族炭素原子及び/又は第二脂肪族炭素原子を有する0〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個の飽和C〜C10脂肪族基(単数又は複数);及び/又は
次式のうちの1つによる0〜2個の二価残基:
−[O−CHCH−]−(式中、fは1〜10、好ましくは1〜5の整数である);
−[O−CHCHCH−]−(式中、gは1〜10、好ましくは1〜5の整数である);
−[O−R12−(式中、R12は−CH(CH)−CH−又はCH−CH(CH)−であり、hは1〜10、好ましくは1〜5の整数である);
−[O−R14−[O−R15−又は[O−R15−[O−R14−(式中、R14は−CHCH−であり、R15は−CH(CH)−CH−又はCH−CH(CH)−であり、i、j、k及びlは整数であって、2i+3j≦15及び2k+3l≦15であり;
−[O−CHCHCHCH−]−(式中、rは1又は2の整数である);
により置換され、この場合、前記二価残基は前記第一脂肪族炭素原子のうちの1つを有し;そして
前記飽和炭化水素基、アリール基及びヘテロアリール基から選択される2個の基は、任意に単結合、アルキレン基又はO−により連結され得る、
請求項1に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体。
【請求項3】
前記有機残基Rが、
少なくとも2個の前記第二脂環式炭素原子を有する(a+b)価飽和C〜C環式、又はC〜C15二環式若しくは三環式炭化水素基;
2〜6個の前記芳香族炭素原子を有する(a+b)価飽和C〜C18アリール基又はヘテロアリール基;
アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基のアルキル部分の末端に少なくとも1個の前記芳香族炭素原子、少なくとも1個の前記第二脂肪族炭素原子、及び任意に1個の前記第一脂肪族炭素原子を有する(a+b)価C〜C18アルキルアリール基又は前記アルキルへテロアリール基;又は
少なくとも1個の前記第一脂肪族炭素原子及び少なくとも1個の前記第二脂肪族炭素原子を有する(a+b)価C〜C30アラルキル基
である請求項1又は2に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体。
【請求項4】
次式:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(式中、Zは請求項1で定義されたのと同様であり、
は、二価C〜C18アルキレン基、二価C〜Cシクロアルキレン基、二価C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、二価C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、二価C〜C30アラルキル基を意味し、前記の基は各々、1〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数)により置換され得る)
のうちの1つを特徴とする請求項1又は2に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体。
【請求項5】
が次式:
−[CHCH−O]−CHCH−(式中、mは1〜14の整数である);
−[CHCHCH−O−]−CHCHCH−(式中、pは1〜14の整数である);
−[R12−O]−R13−(式中、R12及びR13は−CH(CH)−CH−又は−CH−CH(CH)−であり、qは1〜14である);
−[R14−O]−[R15−O]−R14−又は[R14−O]−[R15−O]−R15−(式中、R14は−CHCH−であり、R15は−CH(CH)−CH−又は−CH−CH(CH)−であり、r、s、t及びuは整数であって、2r+3s≦43及び2t+3u≦42であり;
−[CHCHCHCH−O−]−CHCHCHCH−(式中、rは1又は2である);
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

又は
【化12】

(式中、R16及びR17はH又はCHであり、そしてx及びyは、独立して、0〜10、好ましくは0〜5の整数であり得る)
のうちの1つによる二価残基である請求項4に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体。
【請求項6】
前記(a+b)個の炭素原子が第一脂肪族炭素原子である請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体。
【請求項7】
酸性条件下で、好ましくは最高でも4のpHで、より好ましくは最高でも2のpHで、加水分解安定性である請求項1〜6のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体の製造方法であって、以下の:
(i)式(HO)−R−(OH)(B)のジオール又はポリオールを、式(C):
【化13】

(式中、Z、R、a及びbは請求項1〜5のいずれか一項で定義されたのと同様であり、特にRは請求項4又は5で定義されたようなRであり、そしてXはb個のヒドロキシル基(単数又は複数)/分子を有する化合物(D)を産生するための脱離基である)の化合物と反応させる過程と、
(ii)前記化合物(D)をヒドロキシル基と反応性であるリン酸誘導体(E)と反応させる過程と
を包含する請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項9】
前記化合物(C)及び前記ジオール又はポリオール(B)間の当量比が約a:1である請求項8に記載の請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項10】
前記化合物(E)及び前記化合物(D)間の当量比が約b:1である請求項8又は9に記載の請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項11】
前記リン酸誘導体(E)が三塩化リン酸化物であり、前記化合物(D)及び前記化合物(E)の反応産物を加水分解することを包含する請求項8〜10のいずれか一項に記載の請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項12】
前記ポリオール(B)のb個のヒドロキシル基が保護され、次に前記化合物(C)と反応後、前記過程(ii)を実行する前に脱保護化される請求項8〜11のいずれか一項に記載の請求項8〜11のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項13】
歯科用組成物中の請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体の使用。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体を含む歯科用組成物。
【請求項15】
酸性であり、好ましくは最高でも4のpH、より好ましくは最高でも2のpH、最も好ましくは約1.0のpHを有する請求項14に記載の歯科用組成物。
【請求項16】
硬化系をさらに含む請求項14又は15に記載の歯科用組成物。
【請求項17】
前記硬化系が重合開始剤、阻害剤及び安定剤を含む請求項16に記載の歯科用組成物。
【請求項18】
有機水溶性溶媒及び/又は水をさらに含む請求項14〜17のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項19】
有機酸及び/又は無機酸をさらに含む請求項14〜18のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項20】
重合可能なN−置換アルキルアクリル酸アシドモノマー又はアクリル酸アミドモノマーをさらに含む請求項14〜19のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項21】
前記重合可能なN−置換アルキルアクリル酸アシドモノマー又はアクリル酸アミドモノマーが次式:
【化14】

【化15】

【化16】

(式中、R及びRは、独立して、水素原子、置換又は非置換C〜C18アルキル基、置換又は非置換C〜C18シクロアルキル基、置換又は非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、置換又は非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、置換又は非置換C〜C30アラルキル基を表し、2個のR残基は、それらが結合されるN原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し得、これはさらに、前記N原子と並んで、さらなる窒素原子又は酸素原子を含有し得、そして前記置換基は1〜5個のC〜Cアルキル基(単数又は複数)により置換され得;
は、1〜45個の炭素原子を有する二価の置換又は非置換有機残基を意味し、前記有機残基は1〜14個の酸素原子及び/又は窒素原子を含有し得、そして以下の:
〜C18アルキレン基(ここで、1〜6個の−CH−基は、−N−(C=O)−CR=CH基(式中、Rは、水素原子又はC〜C18アルキル基である)により置き換えられ得る)、
二価の置換又は非置換C〜C18シクロアルキル基又はシクロアルキレン基、
二価の置換又は非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、
二価の置換又は非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、
二価の置換又は非置換C〜C30アラルキル基、及び
1〜14個の酸素原子を有する二価の置換又は非置換C〜C45モノエーテル基、ジエーテル基又はポリエーテル基
から選択され、
は、飽和二価又は多価の置換又は非置換C〜C18炭化水素基、飽和二価又は多価の置換又は非置換環式C〜C18炭化水素基、二価又は多価の置換又は非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルへテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換C〜C30アラルキル基、又は1〜14個の酸素原子を有する二価又は多価の置換又は非置換C〜C45モノエーテル残基、ジエーテル残基又はポリエーテル残基を意味し、
nは整数、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜4である)
をさらに特徴とする請求項20に記載の歯科用組成物。
【請求項22】
前記重合可能なモノマーが、次式:
【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

のうちの1つを特徴とするモノ(メト)アクリルアミド、ビス(メト)アクリルアミド又はポリ(メト)アクリルアミドである請求項21に記載の歯科用組成物。
【請求項23】
加水分解安定性ワン・パート自己エッチング、自己下塗り型の歯科用接着剤組成物である請求項14〜22のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項24】
50℃の貯蔵温度で少なくとも1週間加水分解安定性であり、前記貯蔵後、該歯科用組成物から調製される接着剤とエナメル質及び/又は象牙質との結合強度が少なくとも10MPa、好ましくは15MPaである請求項14〜23のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項25】
5〜90重量%の請求項1に記載の重合可能なリン酸エステル誘導体を含有する請求項14〜24のいずれか一項に記載の歯科用組成物。

【公表番号】特表2006−520344(P2006−520344A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504563(P2006−504563)
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002289
【国際公開番号】WO2004/078100
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(502289695)デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. (28)
【Fターム(参考)】