説明

重心動揺計

【課題】測定者の負担を軽減しつつ測定の信頼性を十分に確保可能な重心動揺計を提供する。
【解決手段】重心動揺計100は、被験者が載る測定面11を有する載台10と、複数の荷重センサ12と、メイン制御装置を備える。メイン制御装置は、重心動揺測定を行うたびに、測定面11における被験者の重心位置の変動量を示す単位時間軌跡長と、測定面に垂直に作用する荷重の変動量を示す体重当たりの荷重変動平均値との比に基づいて、正常な状態で当該重心動揺測定が行われていたか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の重心動揺を測定する重心動揺計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者の立位時における体のふらつき度合いを測定する重心動揺計が知られている(例えば特許文献1参照)。かかる重心動揺計を用いて被験者の重心の動揺を正確に測定するためには、被験者の状態が、「両上肢を体側に接し、自然に直立した状態であって、運動直後ではない」といったような所定の測定条件を満たしている必要があるところ、例えば被験者が手を動かしながらバランスを取っているような状態で測定が行われた場合や、被験者が運動直後の状態で測定が行われた場合には、正確な測定結果を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−108852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、測定を行う測定者が、測定期間にわたって被験者の状態を観察することで、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判断していたので、測定者の負担が大きいうえに、測定を繰り返し実行する場合や、集団検診などで被験者の数が多い場合には、測定が正常に行われていたか否かを測定者が見落としてしまうおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、測定者の負担を軽減しつつ測定の信頼性を十分に確保可能な重心動揺計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために本発明が採用する手段を以下に説明する。なお、本発明の理解を容易にするために以下では図面の参照符号を便宜的に括弧書きで付記するが、本発明を図示の形態に限定する趣旨ではない。
【0007】
本発明に係る重心動揺計(100)は、被験者が載る測定面(11)を有する載台(10)と、測定面における複数の領域と1対1に対応して設けられるとともに、各領域に垂直に作用する荷重値を検出するための複数の荷重センサ(12a,12b,12c,12d)と、各荷重センサで検出される荷重値に基づいて、測定面における被験者の重心位置の変動量を示す第1指標を算出する第1指標算出部(30)と、各荷重センサで検出される荷重値に基づいて、測定面に垂直に作用する荷重の変動量を示す第2指標を算出する第2指標算出部(30)と、第1指標と第2指標との比に基づいて、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判定する判定部(30)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、判定部が、第1指標と第2指標との比に基づいて、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを自動的に判定するので、従来のように、測定者が、測定期間にわたって被験者の状態を観察する必要は無く、測定者による見落としが発生することもない。すなわち、本発明によれば、測定者の負担を軽減しつつ測定の信頼性を十分に確保可能な重心動揺計を提供できるという利点がある。
【0009】
本発明に係る重心動揺計の態様として、第1指標算出部は、重心動揺測定が行われる測定期間において、所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、各荷重センサで検出される荷重値に基づいて測定面における被験者の重心位置を算出する重心位置算出部(30)と、測定期間において重心位置算出部で算出された重心位置を繋いで得られる総軌跡長を、測定期間の時間長で割ることで単位時間軌跡長を算出する単位時間軌跡長算出部(30)と、を含み、第1指標は、単位時間軌跡長であり、第2指標算出部は、測定期間において、サンプリングタイミングに到達するたびに、各荷重センサで検出される荷重値を合計して被験者の瞬時体重値を算出する瞬時体重値算出部(30)と、測定期間内の各サンプリングタイミングで算出された瞬時体重値の合計を、サンプリングタイミングの数で割ることで被験者の体重値を算出する体重値算出部(30)と、瞬時体重値と体重値との差を示す瞬時荷重変動値を、サンプリングタイミングごとに算出する瞬時荷重変動値算出部(30)と、各サンプリングタイミングにおける瞬時荷重変動値の絶対値の平均を体重値で割ることで、体重当たりの荷重変動平均値を算出する荷重変動平均値算出部(30)と、を含み、第2指標は、体重当たりの荷重変動平均値である。
さらに言えば、判定部は、体重当たりの荷重変動平均値(W)に対する単位時間軌跡長(L)の割合(L/W)が所定の閾値を下回る場合は、正常な状態で重心動揺測定が行われていなかったと判定するという具合である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る重心動揺計の外観を示す図である。
【図2】同実施形態に係る重心動揺計の制御系統の概略を示すブロック図である。
【図3】メイン制御装置が実行する重心動揺測定処理の具体的な内容を示すフローチャートである。
【図4】メイン制御装置が実行する荷重変動平均値算出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。
【図5】正常な状態で重心動揺測定が行われた結果、被験者の重心の動揺が通常範囲内であった場合の測定データを示す図である。
【図6】正常な状態で重心動揺測定が行われた結果、被験者の重心の動揺が通常範囲を超える大きなものであった場合の測定データを示す図である。
【図7】被験者が手を動かした状態で、重心動揺測定が行われた場合の測定データを示す図である。
【図8】被験者が運動直後の状態で、重心動揺測定が行われた場合の測定データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<A:実施形態>
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る重心動揺計100の外観を示す図である。図1に示すように、重心動揺計100は、載台10と表示ユニット20とを備える。平たい載台10は、被験者が載る水平な測定面11を有する。測定面11の4隅には、4個の荷重センサ12(12a,12b,12c,12d)が配置される。ここでは、測定面11に垂直な方向から見て右上の隅に配置される荷重センサを12a、右下の隅に配置される荷重センサを12b、左上の隅に配置される荷重センサを12c、左下の隅に配置される荷重センサを12dとそれぞれ表記する。各荷重センサ12は、測定面11のうち自身が設置された部位に垂直に作用する荷重に応じた検出信号を生成および出力する。詳細な図示は省略するが、各荷重センサ(ロードセル)12は、入力された荷重に応じて変形する起歪体と、起歪体に貼り付けられて当該起歪体の変形に応じた値の電気信号(検出信号)を出力する歪ゲージとを含んで構成される。
【0012】
図1に示すように、表示ユニット20は、各種の入力キー21と表示部22とを備える。被験者や測定者などが入力キー21を操作すると、その操作に応じて、表示ユニット20には指令やデータが入力される。また、表示部22には様々な情報が表示される。情報には、例えば重心動揺測定の結果や、正常な状態で重心動揺測定が行われていなかったことを示すエラーメッセージといったものなどが含まれ得る。
【0013】
図2は、本実施形態に係る重心動揺計10の制御系統の概略を示すブロック図である。図2に示すように、載台10内にはメイン制御装置30が組み込まれる。メイン制御装置30は、各種の制御処理を実行するコンピュータであって、重心動揺計100を統括的に制御する。図2に示すように、メイン制御装置30には、各荷重センサ12(12a,12b,12c,12d)が接続される。被験者が載台10の測定面11に載ると、その測定面11に与えられた荷重は各荷重センサ12に伝達する。そして、各荷重センサ12は、測定面11のうち自身が設置された部位に垂直に作用する荷重に応じた検出信号をメイン制御装置30へ出力する。メイン制御装置30は、各荷重センサ12から出力された検出信号に基づいて、各荷重センサ12にて検出された荷重値を把握するとともに、各種の制御処理(後述)を実行する。
【0014】
図2に示すように、表示ユニット20内には表示部制御ボード40が組み込まれる。表示部制御ボード40には、入力キー21と表示部22とが接続される。また、表示部制御ボード40は、ケーブル1を介して載台10内のメイン制御装置30と接続される。表示部制御ボード40にはコネクタ2、メイン制御装置30にはコネクタ3が実装される。ケーブル1の両端にはコネクタ4,5が接続される。コネクタ2,3はそれぞれコネクタ4,5に着脱自在に接続される。こうして、表示部制御ボード40とメイン制御装置30との間に信号線が確立され、表示部制御ボード40とメイン制御装置30との間で信号のやり取りが可能になる。
【0015】
被験者や測定者が入力キー21を操作することで、各種のデータや指令が表示部制御ボード40に入力される。表示部制御ボード40は、その入力されたデータや指令に応じて、表示部22を制御し、あるいは、そのデータや指令をメイン制御装置30へ送信する。メイン制御装置30は、表示部制御ボード40から受信したデータや指令に応じて、各種の制御処理を実行するという具合である。
【0016】
次に、被験者の重心の動揺(重心の経時的な変化)を測定する場面を想定する。まず、被験者は載台10の測定面11に載る。この状態で、測定者が入力キー21を適宜に操作することで測定の開始を指示する。メイン制御装置30は、測定の開始の指示を契機として、被験者の重心の動揺を測定するための重心動揺測定処理を実行する。
【0017】
以下、図3を参照しながら、メイン制御装置30が実行する重心動揺測定処理について説明する。図3は、メイン制御装置30が実行する重心動揺測定処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、メイン制御装置30は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定する(ステップS101)。本実施形態では、0.05秒(20HZ)ごとのタイミングがサンプリングタイミングとして設定されているが、これに限らず、サンプリングタイミングの間隔は任意に設定可能である。ステップS101の結果が肯定の場合、メイン制御装置30は、そのときの測定面11における被験者の重心位置を算出する(ステップS102)。より具体的には、メイン制御装置30は、当該サンプリングタイミングにおいて各荷重センサ12で検出された荷重値と、測定面11における各荷重センサ12の位置とに基づいて、測定面11における被験者の重心位置を算出する。本実施形態では、メイン制御装置30は、測定面11における各荷重センサ12の位置を予め把握している。この重心位置の算出方法に特に制限はなく、任意かつ公知の方法を採用することができる。
【0018】
次に、メイン制御装置30は、測定期間が終了したか否かを判定する(ステップS103)。ここでは、測定期間の時間長は60秒に設定されているが、これに限らず、測定期間の時間長は任意に設定可能である。ステップS103の結果が否定の場合は、再びステップS101に戻り、上述の動作が繰り返される。ステップS103の結果が肯定の場合は、メイン制御装置30は、測定面11における被験者の重心位置の総軌跡長を算出する(ステップS104)。より具体的には、メイン制御装置30は、測定期間内の各サンプリングタイミングで算出した重心位置をつなぎ合わせることで、総軌跡長を求める。
【0019】
ステップS104の後、メイン制御装置30は、被験者の重心の動揺の大きさを示す指標である単位時間軌跡長を算出する(ステップS105)。より具体的には、メイン制御装置30は、ステップS104で算出した総軌跡長を、測定期間の時間長(ここでは60秒)で割ることで、単位時間軌跡長を求める。以上より、被験者の重心の動揺が測定されるという具合である。
【0020】
ステップS105の後、メイン制御装置30は、測定期間における被験者の状態が、正常に重心動揺測定を行うことができたような状態であったか否かを判定する判定処理を実行する(ステップS106)。この判定処理の詳細な内容については後述する。判定処理の結果、正常な状態で重心動揺測定が行われていたと判断した場合(ステップS106の結果が肯定の場合)、メイン制御装置30は、上述のステップS105で算出した単位時間軌跡長を、重心動揺測定の結果として表示部22に表示するように、表示ユニット20を制御する(ステップS107)。一方、判定処理の結果、正常な状態で重心動揺測定が行われていなかったと判断した場合(ステップS106の結果が否定の場合)、メイン制御装置30は、正常な状態で測定が行われていなかったことを示すエラーメッセージを表示部22に表示するように、表示ユニット20を制御する(ステップS108)。
【0021】
次に、上述のステップS106でメイン制御装置30が実行する判定処理について説明する。この判定処理の説明に先立って、メイン制御装置30が、上述の重心動揺測定処理と並列に実行する荷重変動平均値算出処理について説明する。この荷重変動平均値算出処理は、測定面11に垂直に作用する荷重の変動量(言い換えれば、測定面11に垂直な方向における被験者の重心の変動の大きさ)を示す指標を算出するための処理である。図4は、荷重変動平均値算出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。以下、図4を参照しながら、荷重変動平均値算出処理の具体的な内容を説明する。
【0022】
まず、メイン制御装置30は、図3のステップS101と同様に、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定する(図4のステップS201)。ステップS201の結果が肯定の場合、メイン制御装置30は、当該サンプリングタイミングにおける被験者の体重値(「瞬時体重値」と呼ぶ)を算出する(ステップS202)。より具体的には、メイン制御装置30は、当該サンプリングタイミングにおいて各荷重センサ12で検出された荷重値を合計することで、そのときの瞬時体重値を算出する。
【0023】
ステップS202の後、メイン制御装置30は、図3のステップS103と同様に、測定期間が終了したか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203の結果が否定の場合は、再びステップS201に戻り、上述の動作が繰り返される。ステップS203の結果が肯定の場合は、メイン制御装置30は、被験者の体重値を算出する(ステップS204)。より具体的には、メイン制御装置30は、測定期間内の各サンプリングタイミングで算出した瞬時体重値の合計を、測定期間内のサンプリングタイミングの数(ここでは、60(秒)÷0.05(秒)=120個)で割ることで体重値を算出する。
【0024】
ステップS204の後、メイン制御装置30は、瞬時体重値と、ステップS204で算出した体重値との差を示す瞬時荷重変動値を、測定期間内のサンプリングタイミングごとに算出する(ステップS205)。より具体的には、メイン制御装置30は、測定期間内の各サンプリングタイミングで算出した瞬時体重値と上記ステップS204で算出した体重値との差を順次に求めることで、各サンプリングタイミングにおける瞬時荷重変動値を求めるという具合である。
【0025】
ステップS205の後、メイン制御装置30は、測定面11に垂直に作用する荷重の変動量を示す体重当たりの荷重変動平均値を算出する(ステップS206)。より具体的には、メイン制御装置30は、ステップS205で算出した各サンプリングタイミングにおける瞬時荷重変動値の絶対値の平均を求め、その平均を、ステップS204で算出した体重値で割ることで、体重当たりの荷重変動平均値を算出する。本実施形態では、各サンプリングタイミングにおける瞬時荷重変動値の絶対値の平均を体重値で割ることで、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いている(正規化している)。このようにして、1回の重心動揺測定が行われるたびに、そのときの体重当たりの荷重変動平均値が算出されるという具合である。
【0026】
以上を前提として、メイン制御装置30が実行する判定処理の内容を説明する。図3のステップS106において、メイン制御装置30は、図3のステップS105で算出した単位時間軌跡長(第1指標)と、図4のステップS206で算出した体重当たりの荷重変動平均値(第2指標)との比に基づいて、測定期間における被験者の状態が、正常に重心動揺測定を行うことができたような状態であったか否かを判定する。本実施形態では、メイン制御装置30は、体重当たりの荷重変動平均値(以下、「W」と表記する)に対する単位時間軌跡長(以下、「L」と表記する)の割合(L/W)に基づいて、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判定する。以下、具体的に説明する。
【0027】
いま、正常な状態で重心動揺測定が行われた結果、被験者の重心の動揺が大きいものであった場合を想定する。この場合は、Lの増加分がWの増加分に対して大きくなるので、結果として、L/Wの値は大きくなる。図5は、同一の被験者に対して、正常な状態で重心動揺測定が3回行われた結果、当該被験者の重心の動揺(測定結果であるLの値)が通常範囲内であった場合の測定データを示す図である。また、図6は、同一の被験者に対して、正常な状態で重心動揺測定が3回行われた結果、当該被験者の重心の動揺(測定結果であるLの値)が通常範囲を超える大きなものであった場合の測定データを示す図である。ここでは、Lの値が10未満である場合は、重心の動揺は通常範囲内であるとみなされる。図5および図6からも理解されるように、正常な状態で重心動揺測定が行われた結果、被験者の重心の動揺が通常範囲を超える大きなものであった場合は、被験者の重心の動揺が通常範囲内であった場合に比べて、L/Wの値が大きくなることが分かる。
【0028】
次に、測定面11に載った被験者が手を動かした状態で、重心動揺測定が行われた場合(つまり、正常な状態で重心動揺測定が行われなかった場合の一態様)を想定する。この場合は、Wの増加分がLの増加分に対して大きくなるので、結果としてL/Wの値は小さくなる。図7は、同一の被験者が手を動かした状態で、重心動揺測定が3回行われた場合の測定データを示す図である。図5乃至図7からも理解されるように、被験者が手を動かした状態で重心動揺測定が行われた場合は、正常な状態で重心動揺測定が行われた場合に比べて、L/Wの値が小さくなることが分かる。
【0029】
さらに、測定面11に載った被験者が運動直後の状態で、重心動揺測定が行われた場合(つまり、正常な状態で重心動揺測定が行われなかった場合の他の態様)を想定する。この場合も、Wの増加分がLの増加分に対して大きくなるので、結果としてL/Wの値は小さくなる。図8は、同一の被験者が運動直後の状態で、重心動揺測定が2回行われた場合の測定データを示す図である。図5、図6および図8からも理解されるように、被験者が運動直後の状態で重心動揺測定が行われた場合は、正常な状態で重心動揺測定が行われた場合に比べて、L/Wの値が小さくなることが分かる。
【0030】
本実施形態では、測定期間における被験者の状態が、正常に重心動揺測定を行うことができたような状態ではなかったときは、Wの増加分がLの増加分よりも大きくなることに着目し、LとWとの比に基づいて、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判定することを特徴とする。詳述すると、メイン制御装置30は、L/Wの値が所定の閾値以上の場合は、正常な状態で重心動揺測定が行われていたと判定し、L/Wの値が所定の閾値を下回る場合は、正常な状態で重心動揺測定が行われていなかったと判定する。本実施形態では、所定の閾値は「50」に設定されているが、これに限らず、所定の閾値は任意の値に設定可能である。要するに、所定の閾値は、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判定可能な値であればよい。
また、閾値の決定方法も任意である。例えば上述の実施形態のように、複数回に亘る個人の測定結果に基づいて閾値を決定してもよいし、複数の被験者の各々の少なくとも1回の測定結果に基づいて閾値を決定することもできる。
【0031】
以上に説明したように、メイン制御装置30は、重心動揺測定が行われるたびに、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判定する判定処理を実行するので、従来のように、測定者が、測定期間にわたって被験者の状態を観察する必要は無く、測定者による見落としが発生することもない。すなわち、本実施形態によれば、測定者の負担を軽減しつつ測定の信頼性を十分に確保可能な重心動揺計を提供できるという利点がある。
【0032】
<B:変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうちの2以上の変形例を組み合わせることもできる。
【0033】
(1)変形例1
上述の判定処理では、メイン制御装置30は、体重当たりの荷重変動平均値Wに対する単位時間軌跡長Lの割合(L/W)に基づいて、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判定しているが、これに限らず、例えばメイン制御装置30は、単位時間軌跡長Lに対する体重当たりの荷重変動平均値Wの割合(W/L)に基づいて、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判定することもできる。この態様では、上述の実施形態とは反対に、メイン制御装置30は、W/Lの値が所定の閾値を上回る場合は、正常な状態で重心動揺測定が行われていなかったと判定するという具合である。要するに、本発明の形態としては、正常な状態で重心動揺測定が行われていなかったときは、測定面11における被験者の重心位置の変動量よりも測定面11に垂直に作用する荷重の変動量の方が大きくなることに着目し、測定面11における被験者の重心位置の変動量を示す第1指標と、測定面11に垂直に作用する荷重の変動量を示す第2指標との比に基づいて、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判定する態様であればよい。
【0034】
(2)変形例2
上述の実施形態では、測定期間の後に判定処理が実行されているが、これに限らず、測定期間の途中で判定処理が実行される態様であってもよい。この態様では、メイン制御装置30は、その途中の時点におけるL/Wを求めて、その値が所定の閾値を下回る場合は、エラーメッセージを表示部22に表示するように、表示ユニット20を制御するという具合である。
【符号の説明】
【0035】
10……載台、11……測定面、12……荷重センサ、20……表示ユニット、21……入力キー、22……表示部、30……メイン制御装置、40……表示部制御ボード、100……重心動揺計、L……単位時間軌跡長、W……体重当たりの荷重変動平均値。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が載る測定面を有する載台と、
前記測定面における複数の領域と1対1に対応して設けられるとともに、前記各領域に垂直に作用する荷重値を検出するための複数の荷重センサと、
前記各荷重センサで検出される荷重値に基づいて、前記測定面における前記被験者の重心位置の変動量を示す第1指標を算出する第1指標算出部と、
前記各荷重センサで検出される荷重値に基づいて、前記測定面に垂直に作用する荷重の変動量を示す第2指標を算出する第2指標算出部と、
前記第1指標と前記第2指標との比に基づいて、正常な状態で重心動揺測定が行われていたか否かを判定する判定部と、を備える、
ことを特徴とする重心動揺計。
【請求項2】
前記第1指標算出部は、
前記重心動揺測定が行われる測定期間において、所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、前記各荷重センサで検出される荷重値に基づいて前記測定面における前記被験者の重心位置を算出する重心位置算出部と、
前記測定期間において前記重心位置算出部で算出された重心位置を繋いで得られる総軌跡長を、前記測定期間の時間長で割ることで単位時間軌跡長を算出する単位時間軌跡長算出部と、を含み、
前記第1指標は、前記単位時間軌跡長であり、
前記第2指標算出部は、
前記測定期間において、前記サンプリングタイミングに到達するたびに、前記各荷重センサで検出される荷重値を合計して前記被験者の瞬時体重値を算出する瞬時体重値算出部と、
前記測定期間内の各サンプリングタイミングで算出された前記瞬時体重値の合計を、前記サンプリングタイミングの数で割ることで前記被験者の体重値を算出する体重値算出部と、
前記瞬時体重値と前記体重値との差を示す瞬時荷重変動値を、前記サンプリングタイミングごとに算出する瞬時荷重変動値算出部と、
前記各サンプリングタイミングにおける前記瞬時荷重変動値の絶対値の平均を前記体重値で割ることで、体重当たりの荷重変動平均値を算出する荷重変動平均値算出部と、を含み、
前記第2指標は、前記体重当たりの荷重変動平均値である、
ことを特徴とする請求項1に記載の重心動揺計。
【請求項3】
前記判定部は、
前記体重当たりの荷重変動平均値に対する前記単位時間軌跡長の割合が所定の閾値を下回る場合は、正常な状態で重心動揺測定が行われていなかったと判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の重心動揺計。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−61049(P2012−61049A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205795(P2010−205795)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】