説明

重畳型画像観察装置

【課題】被写体を実視野で観察しながら重畳的に、高効率に情報を表示できる重畳型画像観察装置を提供すること。
【解決手段】 撮像された被写体を画像認識により特定する画像認識部105と、特定された被写体に関する被写体情報を所定の表示画角Bで表示する電子情報表示部101と、所定の撮像画角Aで被写体110を撮像する撮像部104とを有し、撮像画角Aから表示画角Bを減じた角度が−10°以上で、かつ10°以下であり、さらに、電子情報表示部101に表示された被写体情報を被写体110の実視野に重畳的に表示する半透過光学素子102を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重畳型画像観察装置に関し、特に被写体を実視野で観察しながら重畳的に情報を表示する重畳型画像観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部景色の映像と仮想映像とを重畳して表示するシースルー型のヘッドマウントディスプレイが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。ここで、現実映像と仮想映像との間に位置的な関連付けを行なう必要がある。このため、特許文献1の構成では、公知の画像処理方法を行い、撮影した映像に含まれる所定の物体の位置を検出している。
【0003】
【特許文献1】特開平11−142784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のヘッドマウントディスプレイは、重畳表示される情報の種類に関わらず、一定の撮像画角で外部景色の被写体を撮像している。このため、撮像画角が表示画角に比較して狭いと、画像処理に必要な被写体情報が欠落してしまう。これとは反対に、撮像画角が表示画角に比較して広いと、不必要に過剰な被写体情報に対して画像処理を行なってしまう。いずれの場合も、画像処理を効率的に行なうことができずに問題である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、被写体を実視野で観察しながら重畳的に、高効率に情報を表示できる重畳型画像観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、撮像された被写体を画像認識により特定する画像認識部と、特定された被写体に関する被写体情報を所定の表示画角で表示する電子情報表示部と、所定の撮像画角で被写体を撮像する撮像部とを有し、撮像画角から表示画角を減じた角度が−10°以上で、かつ10°以下であり、さらに、電子情報表示部に表示された被写体情報を被写体の実視野に重畳的に表示する半透過光学素子を有することを特徴とする重畳型画像観察装置を提供できる。
【0007】
また、本発明の好ましい態様によれば、撮像部は、変倍光学系を備えることが望ましい。さらに、本発明の好ましい態様によれば、撮像部は、固定焦点の光学系を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像部は、表示画角、即ち実視野の画角と略同一または所定の範囲内の撮像画角を有している。撮像部は、この撮像画角で被写体を撮像する。そして、画像認識部は、撮像された被写体を画像認識により特定する。これにより、狭い撮像画角で画像処理に必要な被写体情報が欠落してしまうことを低減できる。さらに、広い撮像画角で不必要に過剰な被写体情報に対して画像処理を行なってしまうことも低減できる。このため、効率良く、画像認識を行なうことができる。この結果、被写体を実視野で観察しながら重畳的に、高効率に情報を表示できる重畳型画像観察装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係る重畳型画像観察装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1に係る重畳型画像観察装置100の概略構成を示す図である。使用者OBSは、重畳型画像観察装置100を用いて被写体110を観察する。被写体110は、家屋110bと、植物110cと、人物110dとから成る。また、人物110dは、ネクタイ110aを着用している。重畳型画像観察装置100は、撮像部104と、電子情報表示部101と、半透過光学素子102とを有する。撮像部104として、小型カメラを用いることができる。電子情報表示部101として、液晶表示パネルや有機ELパネルを用いることができる。また、半透過光学素子102は、ホログラム素子を用いることができる。
【0011】
図2−1、図2−2は、重畳型画像観察装置100の斜視図である。半透過光学素子102は、被写体110からの光を透過し、電子情報表示部101からの光を使用者OBSの方向へ反射する。これにより、半透過光学素子102は、電子情報表示部101に表示された被写体110に関する被写体情報を被写体110の実視野に重畳的に表示する。
【0012】
図3−1は、重畳型画像観察装置100を上面から見た構成を示す。図3−2は、重畳型画像観察装置100の断面構成を示す。図3−3は、重畳型画像観察装置100を底面から見た構成を示す。図3−1、図3−3に示すように、重畳型画像観察装置100は、被写体110(不図示)を撮像画角Aで撮像する。なお、撮像部104の詳細なレンズ構成は後述する。
【0013】
一般に人間の水平方向の視野角は、略150°である。このうち、人間が一括して被写体を認識できる水平方向の視野角は、略40°〜50°である。さらに、人間が注視したときの水平方向の視野角は、略10°以下である。このように、図1において、使用者OBSが重畳型画像観察装置100を用いて被写体110を見ているときに、その水平方向の視野角は種々の値に変化する。このため、本実施例では、視野角を定義するために表示画角Bを用いる。表示画角Bは、電子情報表示部101から射出した光のうち、半透過光学素子102で使用者OBSの方向へ反射される光の水平方向の拡がり角である。使用者OBSは、重畳型画像観察装置100の半透過光学素子102を透過して、被写体110を観察している。このため、図1では、使用者OBSが表示画角Bで被写体110を観察する範囲を矩形の枠で囲って示す。なお、画角の角度の単位は全て「度(°)」である。
【0014】
また、図3−2に示すように、使用者OBSは、半透過光学素子102を透過して被写体110(不図示)を実視野で観察する。同時に、電子情報表示部101に表示された被写体情報の像は、半透過光学素子102により使用者OBSの方向へ反射される。これにより、使用者OBSは、被写体110を実視野で観察しつつ、重畳して被写体情報を認識できる。
【0015】
図4は、撮像部104のレンズ構成を示す図である。撮像部104は変倍光学系を有している。変倍光学系は、被写体側(不図示)から順に、直角プリズムPと、負の屈折力を有するレンズL1と、正の屈折力を有するレンズL2と、撮像素子130とから構成されている。撮像素子130は、2次元CCD等を用いることができる。なお、図4では、レンズL1、L2をそれぞれ単レンズで示している。しかし、これに限られず、レンズL1、L2を複数のレンズからなるレンズ群で構成しても良い。また、各レンズのパワー配置も図4に示したものに限られず、変倍できる構成であれば良い。図4の(a)、(b)は、広角端(Wide)側から望遠端(Tele)側へのレンズ移動軌跡を示す。
【0016】
図5は、撮像画角Aと表示画角Bとの関係を示す。図5において、縦軸(z軸)は撮像部104の光軸に沿った方向、横軸(x軸)は使用者OBSから見て水平方向をそれぞれ示す。また、理解の容易のため、撮像画角Aの原点と、表示画角Bの原点とを一致させる。図5において、撮像画角Aから表示画角Bを減じた角度が−10°以上で、かつ10°以下である。即ち、2つの画角A、Bは次式(1)を満足する。
【0017】
−10°≦A−B≦10° ・・・(1)
ここで、電子情報表示部101の表示画角Bは一定の値である。これに対して、撮像部104の撮像画角Aは、変倍光学系により上記式(1)を満足する範囲で可変である。図5では、上記式(1)を満足する範囲で、最も望遠端側の撮像画角Atと、最も広角端側の撮像画角Awとを合わせて示す。
【0018】
図6は、重畳型画像観察装置100の機能ブロック図である。撮像部104は、上述の変倍光学系により上記式(1)を満足する範囲で可変な倍率で被写体110を撮影する。画像認識部105は、撮像された被写体110を画像認識により特定する。使用者OBSは、予め複数のアプリケーション・プログラムのいずれか1つを選択する。このアプリケーション・プログラムは、インターネット等を介して重畳型画像観察装置100へダウンロードされる。また、アプリケーション・プログラムは、重畳型画像観察装置100内のROM(不図示)に格納しておいても良い。例えば、使用者OBSは、実視野(表示画角B)と略同一または所定の範囲内の被写体110に基づいて、現在位置のナビゲーション情報を知りたいときを考える。
【0019】
このとき、使用者OBSは、ナビゲーションプログラムを選択する。そして、使用者OBSは、視野内に表示されている十字状のターゲットポイント120を被写体110の中央部下方へ移動する。ターゲットポイント120の移動は、重畳型画像観察装置100の操作ボタン(不図示)を用いる。
【0020】
図6において、画像認識部105は、例えば、撮像した被写体110の画像、即ち植物110c、家屋110b等の画像をパターンマッチング処理する。パターンマッチングは、公知の画像処理法を用いる。これにより、画像認識部105は、撮像した画像を特定する。撮像画角Aの初期値は、表示画角Bと一致させておく。変倍制御部103は、撮像部104の変倍光学系の撮像倍率を必要に応じて望遠端側または広角端側へ制御する。また、被写体情報データベース106は、被写体110の情報、例えば風景に関するナビゲーション情報が格納されている。なお、本実施例では、重畳型画像観察装置100が被写体情報データベース106を備えている。しかしながら、被写体情報データベース106は、これに限られず、重畳型画像観察装置100とは異なる別個のデータベースとしても良い。このときは、重畳型画像観察装置100と、被写体情報データベース106とは、PHS回線、携帯電話回線、有線LAN、無線LAN、赤外線通信等のデータ転送を行なえるように構成する。
【0021】
画像認識部105は、被写体情報データベース106から特定された被写体110に関する情報を取得する。電子情報表示部101は、取得された被写体110の情報を表示する。半透過光学素子102は、被写体110からの光を透過し、電子情報表示部101からの光を使用者OBSの方向へ反射する。これにより、半透過光学素子102は、電子情報表示部101に表示された被写体110に関する被写体情報を被写体110の実視野に重畳的に表示する。実視野に重畳的に表示される情報は、文字情報に限られない。例えば、静止画、動画などの映像情報を重畳的に表示できる。また、アイコン、天気記号、地理記号等の記号を重畳的に表示してもよい。
【0022】
図7は、本実施例の情報表示の手順を示すフローチャートである。ステップS501において、使用者OBSは所望のアプリケーションを選択する。ステップS502において、撮像部104は、選択されたアプリケーションに従った撮像画角Aで被写体110を撮像する。ステップS503において、画像認識部105は、撮像された被写体110の画像に基づいてパターンマッチング処理を行なう。ステップ504において、使用者OBSが所望した領域の画像が特定できたか、否かが判断される。判断結果が偽(No)のとき、ステップS505へ進む。ステップS505において、変倍制御部103は撮像部104の変倍光学系を所定ステップ量だけ変倍する。ナビゲーションプログラムが選択されているときは、変倍光学系は、適宜望遠端側または広角端側へ、式(1)を満足する範囲内で変倍される。そして、ステップ502へ戻り、撮像部104は、再度、被写体110を撮像する。
【0023】
また、ステップS504の判断結果が真(Yes)のときは、ステップS506へ進む。ステップS506において、画像認識部105は、被写体情報データベース106から特定された被写体、この例では風景の情報を取得する。ステップS507において、電子情報表示部101は、被写体情報、即ちナビゲーション結果である現在位置情報を表示する。半透過光学素子102は、被写体110の実視野に重畳して、現在位置情報を表示する。
【0024】
このように、使用者OBSが被写体110のうち、表示画角B、即ち実視野の画角と略同一または所定の範囲内の画像領域の情報を知りたいときは、画像認識が完了するまで、望遠端側または広角端側への変倍を逐次行なう。次に、画像認識が完了した状態で、変倍動作が終了する。そして、上述のように、被写体情報が取得される。なお、撮像画角Aが初期値の状態において、画像認識が完了するときもある。このときは、変倍動作を行なわなくても良い。このように、変倍しながら、画像認識を行なうことで、画像認識が完了するまでの収束時間を高速化できる。
【実施例2】
【0025】
図8は、実施例2に係る重畳型画像観察装置200の機能ブロックを示す図である。上記実施例1では、撮像部104は変倍光学系を備えている。これに対して、本実施例では、撮像部104は、固定焦点の光学系を備えている点が異なる。上記実施例1と同一の部分には、同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0026】
撮像部104は、固定の撮像画角Aで被写体110を撮像する。撮像画角Aから表示画角Bを減じた角度が−10°以上で、かつ10°以下である。本実施例によれば、撮像部104は、被写体110のうちの実視野(表示画角B)と略同一または所定の範囲内の領域を撮像する。これにより、被写体110に関するパターンマッチングを効率良く、かつ高精度に行なうことができる。このため、画像認識部105は、短時間で被写体110、例えば植物110c、家屋110bを特定できる。この結果、風景に基づくナビゲーション情報等を迅速、かつ簡便に、実視野に重畳して表示できる。
【0027】
以上説明したように、表示画角Bに対して撮像画角Aを上記式(1)を満足する範囲とすることで、効率良く画像認識できる。そして、使用者OBSが所望する情報を実視野に重畳して表示できる。また、表示される被写体情報は、画像認識で得られた情報を全て表示しても良い。さらに、取得された情報のうち、使用者OBSが操作ボタン(不図示)で選択した情報を表示しても良い。加えて、実視野内に表示される被写体情報の位置は、画像認識された被写体の近傍に表示することが望ましい。これにより、実視野の画像と、その画像に関する情報とが使用者OBSにわかりやすく重畳表示される。この結果、重畳型画像観察装置100は、教育分野、訓練分野、バーチャルリアリティ分野においても適用できる。なお、本実施例では、表示画角Bを一定にして、撮像画角Aを可変としている。しかしながら、これに限られず、撮像画角Aと表示画角Bとを可変とする構成、及び撮像画角Aを固定とし表示画角Bを可変とする構成でも良い。
【0028】
さらに、上記各実施例では、使用者が重畳型画像観察装置100を手で把持して携帯電話のように使用する例を説明している。しかしながら、本発明は、携帯電話形状の重畳型画像観察装置100に限られず、例えば公知のヘッドマウントディスプレイに上述した重畳型画像観察装置100の機能を持たせても良い。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る重畳型画像観察装置は、被写体を実視野で観察しながら重畳的に、高効率に情報を表示するときに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1に係る重畳型画像観察装置の概略構成図である。
【図2−1】重畳型画像観察装置の斜視構成図である。
【図2−2】重畳型画像観察装置の他の斜視構成図である。
【図3−1】重畳型画像観察装置の上面図である。
【図3−2】重畳型画像観察装置の断面図である。
【図3−3】重畳型画像観察装置の底面図である。
【図4】実施例1の撮像部のレンズ構成を示す図である。
【図5】実施例1の撮像画角と表示画角とを説明する図である。
【図6】実施例1の重畳型画像観察装置の機能ブロック図である。
【図7】実施例1の情報表示の手順を示すフローチャートである。
【図8】実施例2の重畳型画像観察装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
100 重畳型画像観察装置
101 電子情報表示部
102 半透過光学素子
103 変倍制御部
104 撮像部
105 画像認識部
106 被写体情報データベース
110 被写体
110a ネクタイ
110b 家屋
110c 植物
110d 人物
A 撮像画角
B 表示画角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像された被写体を画像認識により特定する画像認識部と、
特定された前記被写体に関する被写体情報を所定の表示画角で表示する電子情報表示部と、
所定の撮像画角で前記被写体を撮像する撮像部とを有し、
前記撮像画角から前記表示画角を減じた角度が−10°以上で、かつ10°以下であり、
さらに、前記電子情報表示部に表示された前記被写体情報を前記被写体の実視野に重畳的に表示する半透過光学素子を有することを特徴とする重畳型画像観察装置。
【請求項2】
前記撮像部は、変倍光学系を備えることを特徴とする請求項1に記載の重畳型画像観察装置。
【請求項3】
前記撮像部は、固定焦点の光学系を備えることを特徴とする請求項1に記載の重畳型画像観察装置。


【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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