重粒子線ビームの生物効果の線質及び計算方法と計算プログラム
【課題】重粒子線ビーム照射の際、粒子線による生物効果を、粒子の種類やエネルギーに依存せず、短時間でできる計算方法を提供する。
【解決手段】コンピュータに、2次電子を考慮せず進路に沿ったエネルギー付与のみを考慮する第1モンテカルロコードと、進路に沿って発生した2次電子7が媒質に与えるエネルギーも考慮する第2モンテカルロコードと、第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとをインストールし、重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の物性データを入力し、重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を第1モンテカルロコードで行い、コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換し、コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで行う。
【解決手段】コンピュータに、2次電子を考慮せず進路に沿ったエネルギー付与のみを考慮する第1モンテカルロコードと、進路に沿って発生した2次電子7が媒質に与えるエネルギーも考慮する第2モンテカルロコードと、第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとをインストールし、重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の物性データを入力し、重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を第1モンテカルロコードで行い、コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換し、コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法と計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線照射装置により放射線が照射される物体内における線量分布を、コンピュータによりシミュレーションにより計算するための線量計算方法は、例えば特許文献1〜3に開示されている。また、本発明に関連する技術は、非特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特表2000−507848号公報、「全粒子モンテカルトトランスポートを使用する放射線療法線量の計算」
【特許文献2】特開2002−336365号公報、「線量シミュレーション計算方法」
【特許文献3】特開2004−41292号公報、「線量計算方法」
【0004】
【非特許文献1】Y.Kase, et.al,“Microdosimetric Measurements and Estimation of Human Cell Survival for Heavy−Ion Beams”, RADIATION RESEARCH 166, 629−638 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重粒子線ビーム(例えば、C,Ne,Si,Arイオン)と人体との相互作用を評価する場合、粒子線の持つ線質(線エネルギーや線エネルギー付与など)と粒子線が人体に与える影響(生物効果)を詳細に評価する必要がある。
すなわち重粒子線治療においては、物理線量に加えて、線質を考慮した生物線量が投与線量の評価基準となる。重粒子線は物質中で核破砕を起こしより小さな粒子に分裂し、ビームはエネルギー付与や散乱特性の異なる様々な粒子の混合となる。従って、線質評価方法としては、粒子の種類やエネルギーに依存しない方法が望ましい。
しかし特許文献1〜3では、例えば腫瘍等の標的に対する電磁放射線や微粒子放射線の線量分布を計算しているが、線質および生物効果の評価はなされていなかった。
【0006】
本発明は上述した従来の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、重粒子線ビーム(例えば、C,Ne,Si,Arイオン)を対象物に照射する際の、粒子線の持つ線質(放射線の強さ)と粒子線が人体に与える影響(生物効果)を詳細に評価することができ、かつ粒子の種類やエネルギーに依存せず、計算時間を短縮できる重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法と計算プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、コンピュータに、粒子線が媒質を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与のみを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第1モンテカルロコードと、
前記進路に沿ってのエネルギー付与と、進路に沿って発生した2次電子が媒質に与えるエネルギーとを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第2モンテカルロコードと、
第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとをインストールし、
重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力し、
コンピュータにより、重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで行い、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換し、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで行い、
前記対象物が受ける重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力する、ことを特徴とする重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法が提供される。
【0008】
また本発明によれば、粒子線が媒質を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与のみを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第1モンテカルロコードと、
前記進路に沿ってのエネルギー付与と、進路に沿って発生した2次電子が媒質に与えるエネルギーとを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第2モンテカルロコードと、
第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとを有し、
コンピュータに、重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力させ、
重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで実行させ、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換させ、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで実行させ、
前記対象物が受ける線エネルギー、重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力させる、ことを特徴とする重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
従来、線量および線質の計算においては,解析式を用いた簡易的計算方法、または汎用のモンテカルロコードを使用している。
【0010】
しかし、粒子線と人体との相互作用を評価する場合、物理線量のほか線質に起因する生物効果を評価する必要がある。簡易的計算方法には、線質の効果を十分に考慮した方法は提供されていない。
一方、モンテカルロ法により輸送計算を行うコンピュータプログラム(モンテカルロコード)は複数公開されているが、各々のモンテカルロコードに一長一短があり、特定の条件では計算精度が低下する、または計算時間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明の計算方法と計算プログラムでは、2次電子を考慮しない第1モンテカルロコードと、2次電子を考慮する第2モンテカルロコードを用い、この2つのモンテカルロコード間で粒子線のデータの受け渡しを行うインターフェイス(データ変換コード)を用いて、一つの計算対象系に対し、2つのモンテカルロコードを使用する。
すなわち各々のモンテカルロコードが計算精度または計算速度に優れた領域で計算を行うことにより、比較的少ない計算時間で、精度の良い線量および線質の評価が可能となった。これにより、粒子線が人体に与える影響(生物線量)の詳細評価が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0013】
図1は、各種放射線の生体内における線量分布を示す図である。この図において、横軸は体の表面からの深さ(cm)、縦軸は相対線量である。
この図に示すように、光子線や中性子線のように電荷を持たない非荷電粒子では、粒子数が体内で深さと共に指数関数的に減衰する。これに対して高エネルギーの荷電粒子は体内に照射されるとクーロン散乱によって徐々にエネルギーを失いながら進んでいき、飛程付近で急激にエネルギーを失う。このため深部線量分布において飛程付近にブラッグピークと呼ばれる高い線量を与える部分を持つ。この部分を腫瘍の位置に合わせることで、腫瘍に線量を集中させることができる。
高エネルギーの荷電粒子としては、炭素、ネオン、シリコン、アルゴン等が知られている。
【0014】
図2は、X線と重粒子線で照射した細胞の生存率曲線である。この図において、横軸は吸収線量(Gy)、縦軸は細胞生存率Sである。
この図に示すように、細胞生存率Sが同一(例えば0.1)の場合、X線の吸収線量D0よりも重粒子線の吸収線量Dは小さい値となる。言い換えれば、腫瘍にX線と重粒子線を照射して細胞を死滅させる場合、重粒子線の方がX線よりも低い線量で同一の細胞生存率Sを達成することができる。
【0015】
この図において、重粒子線の吸収線量D(Gy)と細胞生存率S(−)の関係は、式(1)で表すことができる。ここで、α、βは細胞、線質ごとのパラメータである。
S=exp(−α・D−β・D2)・・・(1)
【0016】
また、同一の細胞生存率S(例えば0.1)を達成するX線の吸収線量D0と重粒子線の吸収線量Dの比D0/Dを生物効果(Relative Biological Effect:RBE)と定義する。従って、生物効果(RBE)は、一般的には1より大きい正数である。
【0017】
図3は、重粒子線の生体内における物理線量と生物線量を示す図である。この図において、横軸は体の表面からの深さ(cm)、縦軸は相対線量(%)である。
この図において、物理線量は、図1の重粒子線の吸収線量に相当するが、放射線治療においては、上述した生物効果(RBE)を加味した生物線量で、治療用の投与線量を評価する必要がある。
【0018】
本発明において、粒子線の線質とは、放射線の強さを意味し、線エネルギーy(Linear Energy Transfer:LET)で表す。線エネルギーy(LET)とは、単位長さ当たりに荷電粒子によって局限的に吸収されるエネルギー量を表す。
これに対して、荷電粒子が単位長さを通るときに失う平均エネルギーを「阻止能」と呼ぶ。生体組織やガス中を荷電粒子が通過する際の線エネルギー(LET)は阻止能にほぼ等しい。
また、式(1)におけるパラメータαは、線エネルギーyの関数として与えることができることが知られている。
この関係式をα=f(y)・・・(2)とする。
【0019】
高エネルギーの荷電粒子が異なる場合、例えば、炭素、ネオン、シリコン、アルゴン等が混合する場合でも、上述した線エネルギーy(LET)が同一であれば、同一の生物効果(RBE)を得ることができる。
すなわち、式(1)のパラメータβは、細胞、線質が同一であれば一定値である。従って、ある線エネルギーy(LET)が解析又は実験で得られた場合、式(2)からαが求まり、式(1)から同一の細胞生存率S(例えば0.1)に対する重粒子線の吸収線量Dが定まる。
さらに、X線の吸収線量D0は既知であるから、D0/Dとして生物効果(RBE)を得ることができる。
【0020】
図4は、本発明が解析対象とする系の模式図である。この解析対象は、粒子線がん治療装置を想定しており、図で左側から高エネルギーの荷電粒子1(例えば12C)が入射し、ターゲット2に衝突して分散され、分散粒子3が右端に位置する対象物(図示せず)に線エネルギーyを与えるようになっている。
この例では、荷電粒子1の入射方向をz軸とし、z軸に垂直な一方向(例えば水平方向)をx軸とする。x軸とz軸の原点をターゲット2の入射面上にとり、荷電粒子1はz=−125cmから入射し、対象物(例えば生体)はz=200cmの位置にあるものとする。
なおターゲット2は、例えば、アルミニウムの平板や水である。
【0021】
実際の粒子線がん治療装置では、荷電粒子1の入射方向を制御する2極磁石、平坦化フィルタ、コリメータ、ボーラス等が設けられるが、この例ではこれらを省略している。なお、これらがある場合でも、同様に適用することができる。
また、本発明は上述した系に限定されず、その他の任意の系にも同様に適用することができる。
【0022】
図4の解析対象において、z=200cmの位置の線エネルギーyを求めるために、本発明ではモンテカルロ法による輸送計算を行う。モンテカルロ法による輸送計算は、ターゲット2に衝突した荷電粒子1がどのような物理現象を起こしながら進んでゆくかを逐一計算しつつ、2次的に発生する2次電子の挙動を統計的に処理し、対象物に与える線エネルギーyを直接計算するものである。
以下、荷電粒子1と分散粒子3を合わせて粒子線4と呼ぶ。
【0023】
図5はモンテカルロ法を適用する計算モデルの例を示す模式図である。
図5(A)に示すように、粒子線4が媒質5を通過するとき、その進路に沿って媒質5にエネルギー付与6を与える(黒丸)。また図5(B)は、2次電子7(δ線)が進路に沿って多数発生し、同様に媒質5にエネルギー8を与える(白丸)。2次電子線7の影響のおよぶ範囲は、例えばエネルギーが290MeV/nの炭素線の場合、粒子線4の軌道から1mm以下である。
【0024】
モンテカルロ法により輸送計算を行うコンピュータプログラム(モンテカルロコードと呼ぶ)は、多数知られており、そのうち、PHITSの名称で知られるモンテカルロコード(以下単に「PHITSコード」または「コード1」と呼ぶ)は、図5(A)に示すように、粒子線4が媒質5を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与6のみを考慮するものである。また、GEANT4の名称で知られるモンテカルロコード(以下単に「GEANT4コード」または「コード2」と呼ぶ)は、図5(B)に示すように、2次電子線7(δ線)が媒質5に与えるエネルギー8も考慮するものである。
【0025】
各計算コードの特徴は、以下の通りである。
PHITSコード
(1)計算速度はδ線の輸送計算を行わないので、計算速度が速い。
(2)微小領域での計算精度は、δ線の影響の及ぶ領域よりも小さい領域では、エネルギー付与の計算精度は落ちる。δ線の輸送計算を行わないので、領域外でエネルギー付与するδ線の影響も領域内のエネルギー付与として計算してしまうためである。
(3)計算精度は、エネルギー付与を考慮しない輸送計算または比較的大きい領域でのエネルギー付与の計算では、計算プロセスがシンプルなため計算精度は高い。
【0026】
GEANT4コード
(1)計算速度が遅い。
(2)小領域でも計算精度は落ちない。
(3)多くの計算プロセス、モデルを含むため、やや計算精度は劣る。単に粒子の失ったエネルギーの評価は比較的容易で実験的検証も可能であるが、発生するδ線のエネルギーなどは検証が難しく、計算モデルの誤差が蓄積するおそれがあるからである。
【0027】
図6は、本発明による重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法を示すフロー図である。この図に示すように、本発明の方法はS1〜S9の各ステップからなる。
【0028】
ステップS1では、重粒子線ビーム(重粒子線4)、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力する。重粒子線ビームのデータは、第1モンテカルロコード(この例ではPHITSコード)で使用するデータに合わせて、座標、エネルギー[Mev/n]、速度ベクトル、粒子種である。
【0029】
次いで、重粒子線4の進路に沿って、座標zを一定の変位Δzで変化させ(ステップS2)、第1モンテカルロコード(この例ではPHITSコード)で輸送計算を行う(ステップS3)。ステップS2,S3は、座標zがコード切替位置z1に達するまで繰り返して行う(ステップS4)。
ここで、「コード切替位置z1」は、重粒子線ビーム4がターゲットに衝突し分散されて対象物に入射する位置(例えば、体の表面)、あるいはこれより上流側の近傍に設定するのがよい。
【0030】
座標zがコード切替位置z1に達したら、その時点での重粒子線のデータを第2モンテカルロコード(この例ではGEANT4コード)の粒子データに変換する(ステップS5)。第2モンテカルロコードの粒子データは、座標、運動量[MeV/c]、粒子種、質量[Mev]である。
【0031】
粒子のエネルギーは、PHITSコードでは、運動エネルギー(Ek)と速度ベクトル(u,v,w)で与えられるのに対し、GEANT4コードでは、運動量ベクトル(px,py,pz)で入力する。このため、数1の式(3)で変換する。ここでMc2は質量エネルギーである。
【0032】
【数1】
【0033】
また、粒子種は、PHITSコード、GEANT4コードともに、特定の規則に従った整数で識別される。
例えば原子核の場合、PHITSコードではZ×106+A、GEANT4コードでは109+Z×104+A×10と表記される。ここでAは質量数、Zは原子番号である。
例えば12Cであれば、PHITSコードでは6000012、GEANT4コードでは10000060120となる。
また、PHITSコードでは、この表記法から原子番号Zと質量数Aを読み取っているが、GEANT4コードでは、さらに質量Mを[MeV]の単位で入力する必要がある。このため、下記の式(4)により変換する。
M=931.494・A [MeV]・・・(4)
【0034】
次いで、重粒子線の進路に沿って、座標zを一定の変位Δzで変化させ(ステップS6)、第2モンテカルロコード(この例ではGEANT4コード)で輸送計算を行う(ステップS7)。ステップS6,S7は、座標zが解析対象位置z2に達するまで繰り返して行う(ステップS8)。
【0035】
次いで、ステップS9において、解析対象位置z2において対象物が受ける線エネルギーyを計算し、これから所定の細胞生存率Sに対する重粒子線の吸収線量Dを算出し、さらに、X線の所定の吸収線量D0からD0/Dとして生物効果(RBE)を得る。
【実施例1】
【0036】
図7は、本発明の第1実施例を示す図である。この図において(A)は解析対象位置における線エネルギーy、(B)は解析対象位置における生物効果RBEを示している。この実施例では、図4の解析対象において、Z=190cmの位置をコード切替位置、z=200cmの位置を解析対象位置とした。
また各図において、横軸は解析対象位置のx座標、図中の細線AはPHITSコードのみによる解析結果、図中の黒丸C(●印)は本発明による解析結果、図中の黒角D(■印)は、組織等価比例計数管(ロッシカウンタ)で計測した実測値である。
【0037】
組織等価比例計数管(ロッシカウンタ)は、組織等価長1μmの組織等価ガス(直径12.7mm、圧力4.40kPa)を内部に封入した計数管であり、生物効果評価方法(Microdosimetry)に基づきμm程度(細胞核と同程度のサイズ)の大きさの領域におけるエネルギー付与の計測を行うものである。
すなわち、線質が、微小領域におけるエネルギー付与のばらつきに依存するという仮定に基づき、本発明では、直径12.7mmの球形カウンタ内に、組織等価ガスを人体等価厚が1μmとなるようにガス圧を調整して封入し、微小領域でのエネルギー付与を模擬した。また、評価対象は、12Cペンシルビームの側方散乱特性とした。ビームをAlまたは水のターゲットに入射させ、散乱や核破砕による物理線量、および線質の空間分布をモンテカルロ計算により評価し、実験値との比較により精度検証を行った。モンテカルロコードは、PHITSおよびGEANT4を使用し,各々に線質評価のためのルーチンを組み入れた。
【0038】
図7から、PHITSコードのみによる解析結果Aは、実測値Dと比較して、線エネルギーを約50%過大評価し、生物効果を約20%過大評価することがわかる。
これに対して、本発明による解析結果Cは、実測値Dと比較して、線エネルギーの相対誤差は約20%であり、生物効果の相対誤差は約4%であり、実測値Dとよく一致していることがわかる。
【実施例2】
【0039】
図8は、本発明の第2実施例を示す図である。この図において(A)は解析対象位置における線エネルギー、(B)は計算時間を示している。この実施例では、図4の解析対象において、Z=190cmの位置をコード切替位置、z=200cmの位置を解析対象位置とした。
また図8(A)において、横軸は解析対象位置のx座標、図中の逆三角A(▼印)はPHITSコード(コード1)のみによる解析結果、菱形B(◆印)はGEANT4コード(コード2)のみによる解析結果、黒丸C(●印)は本発明による解析結果、黒角D(■印)は、組織等価比例計数管(ロッシカウンタ)で計測した実測値である。
【0040】
この図から、本発明による解析結果CとGEANT4コード(コード2)のみによる解析結果Bは、実測値Dとよく一致していることがわかる。
また、図8(B)の表からわかるように、本発明の解析時間は、GEANT4コード(コード2)のみによる解析時間(52時間)に比較して、PHITSコード(コード1)のみによる解析時間に近い14時間に過ぎず、解析時間が大幅に短縮されていることがわかる。
【0041】
上述したように、重粒子線がん治療への適用を目的として、本発明では、モンテカルロコード(PHITSおよびGEANT4)を用いた重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法と計算プログラムを創案した。また、本発明により、12Cビームの側方散乱分布を対象として解析と実験とを比較した結果、生物効果において相対誤差約4%の範囲で一致した。
【0042】
また、本発明の計算プログラムは、上述した計算方法をコンピュータを用いて実行するための、コンピュータプログラムである。
本発明の計算プログラムは、上述した第1モンテカルロコードと第2モンテカルロコードとデータ変換コードとを含んでいる。
またこの計算プログラムは、コンピュータに、重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力させ、
重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで実行させ、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換させ、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで実行させ、
前記対象物が受ける線エネルギー、重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力させるようになっている。
【0043】
上述したように本発明の計算方法と計算プログラムでは、2次電子を考慮しない第1モンテカルロコードと、2次電子を考慮する第2モンテカルロコードを用い、この2つのモンテカルロコード間で粒子線のデータの受け渡しを行うインターフェイス(データ変換コード)を用いて、一つの計算対象系に対し、2つのモンテカルロコードを使用した。
その結果、比較的少ない計算時間で、精度の良い線量および線質の評価が可能となった。
【0044】
PHITSコードのみでは、上述したように線質および生物効果を過大評価する結果となった。この原因として、PHITSコードではトラック構造を考慮していないことが考えられる。
図9は、12Cの線エネルギー確率密度分布図である。この図において、AはPHITSコード、Cは本発明、Dは実測値である。この図から実際には,検出器が微小でありこの領域外へ飛び出すδ線も多数あると考えられるが、これを省いた結果、PHITSコードAでは高いエネルギー付与を示すイベントを多数カウントしている。
そこで、本発明では、トラック構造の計算モデルを有するGEANT4コードを用いて、検出器の部分のみ再度計算を行った。その結果,上述したようにほぼ実験結果を再現する線質分布が得られた。
【実施例3】
【0045】
図10は、粒子線がん治療装置の概略図である。この図において、1は入射粒子すなわち荷電粒子、2は散乱体すなわちターゲット、9は2極磁石、10はコリメータ、11はマルチリーフコロメータ、12はレンジシフタ、13は水ファントム、14はカウンタである。
入射粒子1は、2極磁石9,散乱体2(鉛など)で腫瘍患部のサイズに合わせてビームを空間的に拡大し、さらにコリメータ10,11で拡大されたビームが腫瘍の形になるようにビームを絞るようになっている。
【0046】
その他に、エネルギーに変調を与えるリッジフィルタも使用するが、この例では省略している。
なお、最近の照射方法では、散乱体やコリメータを使わずに,2極磁石のみでビームを2次元的にスキャンする方法もある。この場合,リッジフィルタも使わず,レンジシフタの厚さを変えて,様々なエネルギーの粒子を打ち込む。
【0047】
図11は、本発明の第3実施例を示す図である。この実施例では図10に示した装置を対象として実験値と計算値とを比較した。
図11において、横軸はレンジシフタの水等価厚さ、縦軸は線エネルギーの平均値であり、図中の菱形A(◆印)はPHITSコード(コード1)のみによる解析結果、黒丸C(●印)は本発明による解析結果、黒角D(■印)は、組織等価比例計数管(ロッシカウンタ)で計測した実測値である。
なお通常,カウンタを水中で動かして深さ方向の分布を得るが、この場合はレンジシフタの厚さを変えてこれを模擬した。
【0048】
この図から、PHITSのみを使用した計算A(◆印)では,特に浅い部分で線質を過大評価している。この領域では粒子線の運動エネルギーが大きく発生する2次電子の運動エネルギーも高いため、カウンタの外でエネルギーを付与する2次電子の割合が大きいことが考えられる。
一方、ピーク付近では、PHITSの計算A(◆印)と実験値D(■印)との乖離が小さくなっている。これは、ここでは粒子線の運動エネルギーが小さく、発生する2次電子の運動エネルギーが低いため、カウンタの中で止まってしまう電子の割合が高くなり、2次電子を考慮しない場合との差が小さくなるものと考えられる。
このような解釈から,2次電子が線質へ影響を与えていることが裏づけられる。
【0049】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】各種放射線の生体内における線量分布を示す図である。
【図2】X線と重粒子線で照射した細胞の生存率曲線である。
【図3】重粒子線の生体内における物理線量と生物線量を示す図である。
【図4】本発明が解析対象とする系の模式図である。
【図5】モンテカルロ法を適用する計算モデルの例を示す模式図である。
【図6】本発明による重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法を示すフロー図である。
【図7】本発明の第1実施例を示す図である。
【図8】本発明の第2実施例を示す図である。
【図9】12Cの線エネルギー確率密度分布図である。
【図10】粒子線がん治療装置の概略図である。
【図11】本発明の第3実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 荷電粒子(重粒子線ビーム、入射粒子)、
2 ターゲット(散乱体)、
3 分散粒子、4 粒子線、
5 媒質、6 進路に沿った付与エネルギー、
7 2次電子線(δ線)、8 2次電子による付与エネルギー、
9 2極磁石、10 コリメータ、
11 マルチリーフコロメータ、12 レンジシフタ、
13 水ファントム、14 カウンタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法と計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線照射装置により放射線が照射される物体内における線量分布を、コンピュータによりシミュレーションにより計算するための線量計算方法は、例えば特許文献1〜3に開示されている。また、本発明に関連する技術は、非特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特表2000−507848号公報、「全粒子モンテカルトトランスポートを使用する放射線療法線量の計算」
【特許文献2】特開2002−336365号公報、「線量シミュレーション計算方法」
【特許文献3】特開2004−41292号公報、「線量計算方法」
【0004】
【非特許文献1】Y.Kase, et.al,“Microdosimetric Measurements and Estimation of Human Cell Survival for Heavy−Ion Beams”, RADIATION RESEARCH 166, 629−638 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重粒子線ビーム(例えば、C,Ne,Si,Arイオン)と人体との相互作用を評価する場合、粒子線の持つ線質(線エネルギーや線エネルギー付与など)と粒子線が人体に与える影響(生物効果)を詳細に評価する必要がある。
すなわち重粒子線治療においては、物理線量に加えて、線質を考慮した生物線量が投与線量の評価基準となる。重粒子線は物質中で核破砕を起こしより小さな粒子に分裂し、ビームはエネルギー付与や散乱特性の異なる様々な粒子の混合となる。従って、線質評価方法としては、粒子の種類やエネルギーに依存しない方法が望ましい。
しかし特許文献1〜3では、例えば腫瘍等の標的に対する電磁放射線や微粒子放射線の線量分布を計算しているが、線質および生物効果の評価はなされていなかった。
【0006】
本発明は上述した従来の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、重粒子線ビーム(例えば、C,Ne,Si,Arイオン)を対象物に照射する際の、粒子線の持つ線質(放射線の強さ)と粒子線が人体に与える影響(生物効果)を詳細に評価することができ、かつ粒子の種類やエネルギーに依存せず、計算時間を短縮できる重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法と計算プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、コンピュータに、粒子線が媒質を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与のみを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第1モンテカルロコードと、
前記進路に沿ってのエネルギー付与と、進路に沿って発生した2次電子が媒質に与えるエネルギーとを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第2モンテカルロコードと、
第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとをインストールし、
重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力し、
コンピュータにより、重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで行い、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換し、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで行い、
前記対象物が受ける重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力する、ことを特徴とする重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法が提供される。
【0008】
また本発明によれば、粒子線が媒質を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与のみを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第1モンテカルロコードと、
前記進路に沿ってのエネルギー付与と、進路に沿って発生した2次電子が媒質に与えるエネルギーとを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第2モンテカルロコードと、
第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとを有し、
コンピュータに、重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力させ、
重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで実行させ、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換させ、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで実行させ、
前記対象物が受ける線エネルギー、重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力させる、ことを特徴とする重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
従来、線量および線質の計算においては,解析式を用いた簡易的計算方法、または汎用のモンテカルロコードを使用している。
【0010】
しかし、粒子線と人体との相互作用を評価する場合、物理線量のほか線質に起因する生物効果を評価する必要がある。簡易的計算方法には、線質の効果を十分に考慮した方法は提供されていない。
一方、モンテカルロ法により輸送計算を行うコンピュータプログラム(モンテカルロコード)は複数公開されているが、各々のモンテカルロコードに一長一短があり、特定の条件では計算精度が低下する、または計算時間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明の計算方法と計算プログラムでは、2次電子を考慮しない第1モンテカルロコードと、2次電子を考慮する第2モンテカルロコードを用い、この2つのモンテカルロコード間で粒子線のデータの受け渡しを行うインターフェイス(データ変換コード)を用いて、一つの計算対象系に対し、2つのモンテカルロコードを使用する。
すなわち各々のモンテカルロコードが計算精度または計算速度に優れた領域で計算を行うことにより、比較的少ない計算時間で、精度の良い線量および線質の評価が可能となった。これにより、粒子線が人体に与える影響(生物線量)の詳細評価が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0013】
図1は、各種放射線の生体内における線量分布を示す図である。この図において、横軸は体の表面からの深さ(cm)、縦軸は相対線量である。
この図に示すように、光子線や中性子線のように電荷を持たない非荷電粒子では、粒子数が体内で深さと共に指数関数的に減衰する。これに対して高エネルギーの荷電粒子は体内に照射されるとクーロン散乱によって徐々にエネルギーを失いながら進んでいき、飛程付近で急激にエネルギーを失う。このため深部線量分布において飛程付近にブラッグピークと呼ばれる高い線量を与える部分を持つ。この部分を腫瘍の位置に合わせることで、腫瘍に線量を集中させることができる。
高エネルギーの荷電粒子としては、炭素、ネオン、シリコン、アルゴン等が知られている。
【0014】
図2は、X線と重粒子線で照射した細胞の生存率曲線である。この図において、横軸は吸収線量(Gy)、縦軸は細胞生存率Sである。
この図に示すように、細胞生存率Sが同一(例えば0.1)の場合、X線の吸収線量D0よりも重粒子線の吸収線量Dは小さい値となる。言い換えれば、腫瘍にX線と重粒子線を照射して細胞を死滅させる場合、重粒子線の方がX線よりも低い線量で同一の細胞生存率Sを達成することができる。
【0015】
この図において、重粒子線の吸収線量D(Gy)と細胞生存率S(−)の関係は、式(1)で表すことができる。ここで、α、βは細胞、線質ごとのパラメータである。
S=exp(−α・D−β・D2)・・・(1)
【0016】
また、同一の細胞生存率S(例えば0.1)を達成するX線の吸収線量D0と重粒子線の吸収線量Dの比D0/Dを生物効果(Relative Biological Effect:RBE)と定義する。従って、生物効果(RBE)は、一般的には1より大きい正数である。
【0017】
図3は、重粒子線の生体内における物理線量と生物線量を示す図である。この図において、横軸は体の表面からの深さ(cm)、縦軸は相対線量(%)である。
この図において、物理線量は、図1の重粒子線の吸収線量に相当するが、放射線治療においては、上述した生物効果(RBE)を加味した生物線量で、治療用の投与線量を評価する必要がある。
【0018】
本発明において、粒子線の線質とは、放射線の強さを意味し、線エネルギーy(Linear Energy Transfer:LET)で表す。線エネルギーy(LET)とは、単位長さ当たりに荷電粒子によって局限的に吸収されるエネルギー量を表す。
これに対して、荷電粒子が単位長さを通るときに失う平均エネルギーを「阻止能」と呼ぶ。生体組織やガス中を荷電粒子が通過する際の線エネルギー(LET)は阻止能にほぼ等しい。
また、式(1)におけるパラメータαは、線エネルギーyの関数として与えることができることが知られている。
この関係式をα=f(y)・・・(2)とする。
【0019】
高エネルギーの荷電粒子が異なる場合、例えば、炭素、ネオン、シリコン、アルゴン等が混合する場合でも、上述した線エネルギーy(LET)が同一であれば、同一の生物効果(RBE)を得ることができる。
すなわち、式(1)のパラメータβは、細胞、線質が同一であれば一定値である。従って、ある線エネルギーy(LET)が解析又は実験で得られた場合、式(2)からαが求まり、式(1)から同一の細胞生存率S(例えば0.1)に対する重粒子線の吸収線量Dが定まる。
さらに、X線の吸収線量D0は既知であるから、D0/Dとして生物効果(RBE)を得ることができる。
【0020】
図4は、本発明が解析対象とする系の模式図である。この解析対象は、粒子線がん治療装置を想定しており、図で左側から高エネルギーの荷電粒子1(例えば12C)が入射し、ターゲット2に衝突して分散され、分散粒子3が右端に位置する対象物(図示せず)に線エネルギーyを与えるようになっている。
この例では、荷電粒子1の入射方向をz軸とし、z軸に垂直な一方向(例えば水平方向)をx軸とする。x軸とz軸の原点をターゲット2の入射面上にとり、荷電粒子1はz=−125cmから入射し、対象物(例えば生体)はz=200cmの位置にあるものとする。
なおターゲット2は、例えば、アルミニウムの平板や水である。
【0021】
実際の粒子線がん治療装置では、荷電粒子1の入射方向を制御する2極磁石、平坦化フィルタ、コリメータ、ボーラス等が設けられるが、この例ではこれらを省略している。なお、これらがある場合でも、同様に適用することができる。
また、本発明は上述した系に限定されず、その他の任意の系にも同様に適用することができる。
【0022】
図4の解析対象において、z=200cmの位置の線エネルギーyを求めるために、本発明ではモンテカルロ法による輸送計算を行う。モンテカルロ法による輸送計算は、ターゲット2に衝突した荷電粒子1がどのような物理現象を起こしながら進んでゆくかを逐一計算しつつ、2次的に発生する2次電子の挙動を統計的に処理し、対象物に与える線エネルギーyを直接計算するものである。
以下、荷電粒子1と分散粒子3を合わせて粒子線4と呼ぶ。
【0023】
図5はモンテカルロ法を適用する計算モデルの例を示す模式図である。
図5(A)に示すように、粒子線4が媒質5を通過するとき、その進路に沿って媒質5にエネルギー付与6を与える(黒丸)。また図5(B)は、2次電子7(δ線)が進路に沿って多数発生し、同様に媒質5にエネルギー8を与える(白丸)。2次電子線7の影響のおよぶ範囲は、例えばエネルギーが290MeV/nの炭素線の場合、粒子線4の軌道から1mm以下である。
【0024】
モンテカルロ法により輸送計算を行うコンピュータプログラム(モンテカルロコードと呼ぶ)は、多数知られており、そのうち、PHITSの名称で知られるモンテカルロコード(以下単に「PHITSコード」または「コード1」と呼ぶ)は、図5(A)に示すように、粒子線4が媒質5を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与6のみを考慮するものである。また、GEANT4の名称で知られるモンテカルロコード(以下単に「GEANT4コード」または「コード2」と呼ぶ)は、図5(B)に示すように、2次電子線7(δ線)が媒質5に与えるエネルギー8も考慮するものである。
【0025】
各計算コードの特徴は、以下の通りである。
PHITSコード
(1)計算速度はδ線の輸送計算を行わないので、計算速度が速い。
(2)微小領域での計算精度は、δ線の影響の及ぶ領域よりも小さい領域では、エネルギー付与の計算精度は落ちる。δ線の輸送計算を行わないので、領域外でエネルギー付与するδ線の影響も領域内のエネルギー付与として計算してしまうためである。
(3)計算精度は、エネルギー付与を考慮しない輸送計算または比較的大きい領域でのエネルギー付与の計算では、計算プロセスがシンプルなため計算精度は高い。
【0026】
GEANT4コード
(1)計算速度が遅い。
(2)小領域でも計算精度は落ちない。
(3)多くの計算プロセス、モデルを含むため、やや計算精度は劣る。単に粒子の失ったエネルギーの評価は比較的容易で実験的検証も可能であるが、発生するδ線のエネルギーなどは検証が難しく、計算モデルの誤差が蓄積するおそれがあるからである。
【0027】
図6は、本発明による重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法を示すフロー図である。この図に示すように、本発明の方法はS1〜S9の各ステップからなる。
【0028】
ステップS1では、重粒子線ビーム(重粒子線4)、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力する。重粒子線ビームのデータは、第1モンテカルロコード(この例ではPHITSコード)で使用するデータに合わせて、座標、エネルギー[Mev/n]、速度ベクトル、粒子種である。
【0029】
次いで、重粒子線4の進路に沿って、座標zを一定の変位Δzで変化させ(ステップS2)、第1モンテカルロコード(この例ではPHITSコード)で輸送計算を行う(ステップS3)。ステップS2,S3は、座標zがコード切替位置z1に達するまで繰り返して行う(ステップS4)。
ここで、「コード切替位置z1」は、重粒子線ビーム4がターゲットに衝突し分散されて対象物に入射する位置(例えば、体の表面)、あるいはこれより上流側の近傍に設定するのがよい。
【0030】
座標zがコード切替位置z1に達したら、その時点での重粒子線のデータを第2モンテカルロコード(この例ではGEANT4コード)の粒子データに変換する(ステップS5)。第2モンテカルロコードの粒子データは、座標、運動量[MeV/c]、粒子種、質量[Mev]である。
【0031】
粒子のエネルギーは、PHITSコードでは、運動エネルギー(Ek)と速度ベクトル(u,v,w)で与えられるのに対し、GEANT4コードでは、運動量ベクトル(px,py,pz)で入力する。このため、数1の式(3)で変換する。ここでMc2は質量エネルギーである。
【0032】
【数1】
【0033】
また、粒子種は、PHITSコード、GEANT4コードともに、特定の規則に従った整数で識別される。
例えば原子核の場合、PHITSコードではZ×106+A、GEANT4コードでは109+Z×104+A×10と表記される。ここでAは質量数、Zは原子番号である。
例えば12Cであれば、PHITSコードでは6000012、GEANT4コードでは10000060120となる。
また、PHITSコードでは、この表記法から原子番号Zと質量数Aを読み取っているが、GEANT4コードでは、さらに質量Mを[MeV]の単位で入力する必要がある。このため、下記の式(4)により変換する。
M=931.494・A [MeV]・・・(4)
【0034】
次いで、重粒子線の進路に沿って、座標zを一定の変位Δzで変化させ(ステップS6)、第2モンテカルロコード(この例ではGEANT4コード)で輸送計算を行う(ステップS7)。ステップS6,S7は、座標zが解析対象位置z2に達するまで繰り返して行う(ステップS8)。
【0035】
次いで、ステップS9において、解析対象位置z2において対象物が受ける線エネルギーyを計算し、これから所定の細胞生存率Sに対する重粒子線の吸収線量Dを算出し、さらに、X線の所定の吸収線量D0からD0/Dとして生物効果(RBE)を得る。
【実施例1】
【0036】
図7は、本発明の第1実施例を示す図である。この図において(A)は解析対象位置における線エネルギーy、(B)は解析対象位置における生物効果RBEを示している。この実施例では、図4の解析対象において、Z=190cmの位置をコード切替位置、z=200cmの位置を解析対象位置とした。
また各図において、横軸は解析対象位置のx座標、図中の細線AはPHITSコードのみによる解析結果、図中の黒丸C(●印)は本発明による解析結果、図中の黒角D(■印)は、組織等価比例計数管(ロッシカウンタ)で計測した実測値である。
【0037】
組織等価比例計数管(ロッシカウンタ)は、組織等価長1μmの組織等価ガス(直径12.7mm、圧力4.40kPa)を内部に封入した計数管であり、生物効果評価方法(Microdosimetry)に基づきμm程度(細胞核と同程度のサイズ)の大きさの領域におけるエネルギー付与の計測を行うものである。
すなわち、線質が、微小領域におけるエネルギー付与のばらつきに依存するという仮定に基づき、本発明では、直径12.7mmの球形カウンタ内に、組織等価ガスを人体等価厚が1μmとなるようにガス圧を調整して封入し、微小領域でのエネルギー付与を模擬した。また、評価対象は、12Cペンシルビームの側方散乱特性とした。ビームをAlまたは水のターゲットに入射させ、散乱や核破砕による物理線量、および線質の空間分布をモンテカルロ計算により評価し、実験値との比較により精度検証を行った。モンテカルロコードは、PHITSおよびGEANT4を使用し,各々に線質評価のためのルーチンを組み入れた。
【0038】
図7から、PHITSコードのみによる解析結果Aは、実測値Dと比較して、線エネルギーを約50%過大評価し、生物効果を約20%過大評価することがわかる。
これに対して、本発明による解析結果Cは、実測値Dと比較して、線エネルギーの相対誤差は約20%であり、生物効果の相対誤差は約4%であり、実測値Dとよく一致していることがわかる。
【実施例2】
【0039】
図8は、本発明の第2実施例を示す図である。この図において(A)は解析対象位置における線エネルギー、(B)は計算時間を示している。この実施例では、図4の解析対象において、Z=190cmの位置をコード切替位置、z=200cmの位置を解析対象位置とした。
また図8(A)において、横軸は解析対象位置のx座標、図中の逆三角A(▼印)はPHITSコード(コード1)のみによる解析結果、菱形B(◆印)はGEANT4コード(コード2)のみによる解析結果、黒丸C(●印)は本発明による解析結果、黒角D(■印)は、組織等価比例計数管(ロッシカウンタ)で計測した実測値である。
【0040】
この図から、本発明による解析結果CとGEANT4コード(コード2)のみによる解析結果Bは、実測値Dとよく一致していることがわかる。
また、図8(B)の表からわかるように、本発明の解析時間は、GEANT4コード(コード2)のみによる解析時間(52時間)に比較して、PHITSコード(コード1)のみによる解析時間に近い14時間に過ぎず、解析時間が大幅に短縮されていることがわかる。
【0041】
上述したように、重粒子線がん治療への適用を目的として、本発明では、モンテカルロコード(PHITSおよびGEANT4)を用いた重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法と計算プログラムを創案した。また、本発明により、12Cビームの側方散乱分布を対象として解析と実験とを比較した結果、生物効果において相対誤差約4%の範囲で一致した。
【0042】
また、本発明の計算プログラムは、上述した計算方法をコンピュータを用いて実行するための、コンピュータプログラムである。
本発明の計算プログラムは、上述した第1モンテカルロコードと第2モンテカルロコードとデータ変換コードとを含んでいる。
またこの計算プログラムは、コンピュータに、重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力させ、
重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで実行させ、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換させ、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで実行させ、
前記対象物が受ける線エネルギー、重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力させるようになっている。
【0043】
上述したように本発明の計算方法と計算プログラムでは、2次電子を考慮しない第1モンテカルロコードと、2次電子を考慮する第2モンテカルロコードを用い、この2つのモンテカルロコード間で粒子線のデータの受け渡しを行うインターフェイス(データ変換コード)を用いて、一つの計算対象系に対し、2つのモンテカルロコードを使用した。
その結果、比較的少ない計算時間で、精度の良い線量および線質の評価が可能となった。
【0044】
PHITSコードのみでは、上述したように線質および生物効果を過大評価する結果となった。この原因として、PHITSコードではトラック構造を考慮していないことが考えられる。
図9は、12Cの線エネルギー確率密度分布図である。この図において、AはPHITSコード、Cは本発明、Dは実測値である。この図から実際には,検出器が微小でありこの領域外へ飛び出すδ線も多数あると考えられるが、これを省いた結果、PHITSコードAでは高いエネルギー付与を示すイベントを多数カウントしている。
そこで、本発明では、トラック構造の計算モデルを有するGEANT4コードを用いて、検出器の部分のみ再度計算を行った。その結果,上述したようにほぼ実験結果を再現する線質分布が得られた。
【実施例3】
【0045】
図10は、粒子線がん治療装置の概略図である。この図において、1は入射粒子すなわち荷電粒子、2は散乱体すなわちターゲット、9は2極磁石、10はコリメータ、11はマルチリーフコロメータ、12はレンジシフタ、13は水ファントム、14はカウンタである。
入射粒子1は、2極磁石9,散乱体2(鉛など)で腫瘍患部のサイズに合わせてビームを空間的に拡大し、さらにコリメータ10,11で拡大されたビームが腫瘍の形になるようにビームを絞るようになっている。
【0046】
その他に、エネルギーに変調を与えるリッジフィルタも使用するが、この例では省略している。
なお、最近の照射方法では、散乱体やコリメータを使わずに,2極磁石のみでビームを2次元的にスキャンする方法もある。この場合,リッジフィルタも使わず,レンジシフタの厚さを変えて,様々なエネルギーの粒子を打ち込む。
【0047】
図11は、本発明の第3実施例を示す図である。この実施例では図10に示した装置を対象として実験値と計算値とを比較した。
図11において、横軸はレンジシフタの水等価厚さ、縦軸は線エネルギーの平均値であり、図中の菱形A(◆印)はPHITSコード(コード1)のみによる解析結果、黒丸C(●印)は本発明による解析結果、黒角D(■印)は、組織等価比例計数管(ロッシカウンタ)で計測した実測値である。
なお通常,カウンタを水中で動かして深さ方向の分布を得るが、この場合はレンジシフタの厚さを変えてこれを模擬した。
【0048】
この図から、PHITSのみを使用した計算A(◆印)では,特に浅い部分で線質を過大評価している。この領域では粒子線の運動エネルギーが大きく発生する2次電子の運動エネルギーも高いため、カウンタの外でエネルギーを付与する2次電子の割合が大きいことが考えられる。
一方、ピーク付近では、PHITSの計算A(◆印)と実験値D(■印)との乖離が小さくなっている。これは、ここでは粒子線の運動エネルギーが小さく、発生する2次電子の運動エネルギーが低いため、カウンタの中で止まってしまう電子の割合が高くなり、2次電子を考慮しない場合との差が小さくなるものと考えられる。
このような解釈から,2次電子が線質へ影響を与えていることが裏づけられる。
【0049】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】各種放射線の生体内における線量分布を示す図である。
【図2】X線と重粒子線で照射した細胞の生存率曲線である。
【図3】重粒子線の生体内における物理線量と生物線量を示す図である。
【図4】本発明が解析対象とする系の模式図である。
【図5】モンテカルロ法を適用する計算モデルの例を示す模式図である。
【図6】本発明による重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法を示すフロー図である。
【図7】本発明の第1実施例を示す図である。
【図8】本発明の第2実施例を示す図である。
【図9】12Cの線エネルギー確率密度分布図である。
【図10】粒子線がん治療装置の概略図である。
【図11】本発明の第3実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 荷電粒子(重粒子線ビーム、入射粒子)、
2 ターゲット(散乱体)、
3 分散粒子、4 粒子線、
5 媒質、6 進路に沿った付与エネルギー、
7 2次電子線(δ線)、8 2次電子による付与エネルギー、
9 2極磁石、10 コリメータ、
11 マルチリーフコロメータ、12 レンジシフタ、
13 水ファントム、14 カウンタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、粒子線が媒質を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与のみを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第1モンテカルロコードと、
前記進路に沿ってのエネルギー付与と、進路に沿って発生した2次電子が媒質に与えるエネルギーとを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第2モンテカルロコードと、
第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとをインストールし、
重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力し、
コンピュータにより、重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで行い、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換し、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで行い、
前記対象物が受ける重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力する、ことを特徴とする重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法。
【請求項2】
粒子線が媒質を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与のみを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第1モンテカルロコードと、
前記進路に沿ってのエネルギー付与と、進路に沿って発生した2次電子が媒質に与えるエネルギーとを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第2モンテカルロコードと、
第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとを有し、
コンピュータに、重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力させ、
重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで実行させ、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換させ、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで実行させ、
前記対象物が受ける線エネルギー、重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力させる、ことを特徴とする重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算プログラム。
【請求項1】
コンピュータに、粒子線が媒質を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与のみを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第1モンテカルロコードと、
前記進路に沿ってのエネルギー付与と、進路に沿って発生した2次電子が媒質に与えるエネルギーとを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第2モンテカルロコードと、
第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとをインストールし、
重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力し、
コンピュータにより、重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで行い、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換し、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで行い、
前記対象物が受ける重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力する、ことを特徴とする重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算方法。
【請求項2】
粒子線が媒質を通過するとき、2次電子を考慮せず、その進路に沿ってのエネルギー付与のみを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第1モンテカルロコードと、
前記進路に沿ってのエネルギー付与と、進路に沿って発生した2次電子が媒質に与えるエネルギーとを考慮してモンテカルロ法により輸送計算を行う第2モンテカルロコードと、
第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換するデータ変換コードとを有し、
コンピュータに、重粒子線ビーム、ターゲット及び対象物の位置及び物性データと対象物の上流側近傍のコード切替位置をコンピュータに入力させ、
重粒子線ビームがターゲットに衝突し分散されてコード切替位置に入射するまでの輸送計算を前記第1モンテカルロコードで実行させ、
前記コード切替位置において第1モンテカルロコードの粒子データを第2モンテカルロコードの粒子データに変換させ、
前記コード切替位置から対象物内の輸送計算を前記第2モンテカルロコードで実行させ、
前記対象物が受ける線エネルギー、重粒子線の吸収線量及び生物効果を出力させる、ことを特徴とする重粒子線ビームの線質及び生物効果の計算プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−57656(P2010−57656A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225554(P2008−225554)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月11日 社団法人日本原子力学会発行の「日本原子力学会2008年春の年会 予稿集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月26日 社団法人日本原子力学会主催の「日本原子力学会2008年春の年会」において文書をもって発表
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(301032942)独立行政法人放射線医学総合研究所 (149)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月11日 社団法人日本原子力学会発行の「日本原子力学会2008年春の年会 予稿集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月26日 社団法人日本原子力学会主催の「日本原子力学会2008年春の年会」において文書をもって発表
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(301032942)独立行政法人放射線医学総合研究所 (149)
【Fターム(参考)】
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