説明

重荷重用空気入りタイヤ

【課題】転がり抵抗が効果的に低減されており、タイヤ寿命の初期から末期に亘って優れた低燃費性を維持することが可能な重荷重用空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ビード部1内に夫々埋設したビードコア6のタイヤ半径方向外側に隣接する硬スティフナー7aと該硬スティフナー7aのタイヤ半径方向外側に隣接する軟スティフナー7bとからなるスティフナー7を具える重荷重用空気入りタイヤにおいて、硬スティフナー7aの貯蔵弾性率(E')が30MPa以上で且つ損失正接(tanδ)が0.25以下であって、サイド部2のカーカス4のタイヤ幅方向外側に位置するサイドゴム8の損失正接(tanδ)が0.11以下であることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤ、特にタイヤ寿命の初期から末期に亘って良好な低燃費性を維持することが可能な重荷重用空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、重荷重用空気入りタイヤの転がり抵抗を低減して、タイヤの低燃費性を向上させることが求められている。これに対して、トレッド部に用いるトレッドゴムを低ヒステリシスロス化することで、タイヤの初期の転がり抵抗を低減することができる。しかしながら、この場合、トレッドゴムの摩耗に伴い、転がり抵抗の低減効果が減少してしまう問題がある。
【0003】
一方、タイヤのケース部材の変形抑制及び低ヒステリシスロス化は、タイヤ寿命の初期から末期に亘って良好な転がり抵抗を低減するのに有効である。例えば、特開平7−61214号公報(特許文献1)、特開平5−254308号公報(特許文献2)及び特開平5−254310号公報(特許文献3)には、サイドゴムのtanδを0.02〜0.15として、低燃費化を達成したタイヤが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−61214号公報
【特許文献2】特開平5−254308号公報
【特許文献3】特開平5−254310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、単一部材の変更では、歪分布が変わることで転がり抵抗の低減効果を最大限に引き出すことができず、転がり抵抗の低減効果に依然として改良の余地があることが分かった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、転がり抵抗が効果的に低減されており、タイヤ寿命の初期から末期に亘って優れた低燃費性を維持することが可能な重荷重用空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ビードコアのタイヤ半径方向外側に硬スティフナーと軟スティフナーとからなるスティフナーを具える重荷重用空気入りタイヤにおいて、硬スティフナーの貯蔵弾性率(E')を30MPa以上としてビード部の変形を抑制して、ビード部のエネルギーロスを低減し、また、ビード部の変形が抑制されることに伴いサイド部の変形が増大することを考慮して、サイド部に配置するサイドゴムの損失正接(tanδ)を0.11以下として、サイド部のエネルギーロスを低減することで、両者の相乗効果により、タイヤの転がり抵抗を大幅に低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の重荷重用空気入りタイヤは、一対のビード部及び一対のサイド部と、両サイド部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在して、これら各部を補強するカーカスと、前記ビード部内に夫々埋設したビードコアのタイヤ半径方向外側に配置したスティフナーとを具え、該スティフナーが前記ビードコアのタイヤ半径方向外側に隣接する硬スティフナーと該硬スティフナーのタイヤ半径方向外側に隣接する軟スティフナーとからなり、
前記硬スティフナーの貯蔵弾性率(E')が30MPa以上で且つ損失正接(tanδ)が0.25以下であって、
前記サイド部のカーカスのタイヤ幅方向外側に位置するサイドゴムの損失正接(tanδ)が0.11以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの好適例においては、前記サイドゴムに、少なくとも天然ゴムを含むジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対してカーボンブラック及び/又はシリカからなる充填剤30〜60質量部を配合してなるゴム組成物を用いる。ここで、該サイドゴムに用いるゴム組成物のゴム成分は、含窒素官能基を有する変性ポリブタジエンゴムを含むことが好ましい。また、該含窒素官能基は、ヘキサメチレンイミンに由来することが好ましい。
【0010】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記硬スティフナーに、ジエン系ゴムからなるゴム成分とカーボンブラックとフェノール系樹脂とメチレン供与体である樹脂用硬化剤とを含み、前記ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックの配合量が30〜100質量部で且つフェノール系樹脂の配合量が5〜30質量部であるゴム組成物を用いる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビード部及びサイド部のエネルギーロスが低減されていると共に、その相乗効果により、転がり抵抗が効果的に低減されており、タイヤ寿命の初期から末期に亘って優れた低燃費性を維持することが可能な重荷重用空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の重荷重用空気入りタイヤの一実施態様を示す断面図である。図1に示すタイヤは、一対のビード部1及び一対のサイド部2と、両サイド部2に連なるトレッド部3とを有し、前記一対のビード部1間にトロイド状に延在して、これら各部1,2,3を補強するラジアルカーカス4と、該カーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されたベルト5と、前記ビード部1内に夫々埋設したリング状のビードコア6のタイヤ半径方向外側に配置したスティフナー7とを備える。なお、スティフナー7は、ビードコア6のタイヤ半径方向外側に隣接する剛性の比較的高い硬スティフナー7aと、該硬スティフナー7aのタイヤ半径方向外側に隣接する剛性の比較的低い軟スティフナー7bとからなる。また、サイド部2のカーカス4のタイヤ幅方向外側には、サイドゴム8が配置されている。
【0013】
図示例のタイヤにおいて、ラジアルカーカス4は、ビードコア6間にトロイダルに延びる本体部4aと、各ビードコア6の周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部4bとを有する。なお、ラジアルカーカス4の構造及びプライ数は、これに限られるものではない。そして、スティフナー7は、ラジアルカーカス4の本体部4aとその折り返し部4bとの間に配置されている。
【0014】
ここで、本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいては、上記硬スティフナー7aの貯蔵弾性率(E')が30MPa以上で且つ損失正接(tanδ)が0.25以下であって、上記サイドゴム8の損失正接(tanδ)が0.11以下である。硬スティフナー7aの貯蔵弾性率(E')を30MPa以上とすることで、ビード部1の変形を抑制して、ビード部1のエネルギーロスを低減することができる。なお、ビード部1の変形を抑制すると、サイド部2の変形が増大するが、本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいては、サイド部2に配置するサイドゴム8の損失正接(tanδ)が0.11以下であるため、サイド部2のエネルギーロスも低減することができる。また、ビード部1のエネルギーロスの低減効果とサイド部2のエネルギーロスの低減効果との相乗効果により、タイヤの転がり抵抗が大幅に低減されている。
【0015】
なお、上記硬スティフナー7aの貯蔵弾性率(E')が30MPa未満では、ビード部1の変形抑制効果が不十分である。また、上記硬スティフナー7aの損失正接(tanδ)が0.25を超えると、硬スティフナー7aのエネルギーロスが増大し、ビード部1のエネルギーロスを十分に低減できなくなる。ここで、ビード部1の変形抑制効果を向上させる観点から、硬スティフナー7aの貯蔵弾性率(E')は35MPa以上であること好ましい。また、硬スティフナー7aのエネルギーロスを更に低減する観点から、硬スティフナー7aの損失正接(tanδ)は、0.22以下であることが好ましい。
【0016】
また、上記サイドゴム8の損失正接(tanδ)が0.11を超えると、サイド部2のエネルギーロスを低減する効果が不十分である。なお、サイド部2のエネルギーロスを更に低減する観点から、サイドゴム8の損失正接(tanδ)は、0.1以下であることが好ましい。
【0017】
上記サイドゴム8には、少なくとも天然ゴムを含むジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対してカーボンブラック及び/又はシリカからなる充填剤30〜60質量部を配合してなるゴム組成物を用いることが好ましい。充填剤の配合量がゴム成分100質量部に対して30質量部未満では、サイド部2の剛性が不足し、一方、60質量部を超えると、サイド部2のエネルギーロスを十分に低減できないことがある。ここで、使用するジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)の他、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等の合成ジエン系ゴムが挙げられる。これらゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。また、使用するカーボンブラック及び/又はシリカとしては、特に制限はなく、種々のカーボンブラック及び/又はシリカを用いることができる。
【0018】
上記サイドゴム8用ゴム組成物のゴム成分は、天然ゴム(NR)の他に、含窒素官能基を有する変性ポリブタジエンゴムを含むことが好ましい。該変性ポリブタジエンゴムは、カーボンブラックやシリカ等の充填剤の分散性を向上させることができ、サイドゴム8の損失正接(tanδ)を低下さる効果を有する。ここで、サイドゴム8用ゴム組成物のゴム成分における天然ゴムの含有率は60〜40質量部の範囲が好ましく、変性ポリブタジエンゴムの含有率は40〜60質量部の範囲が好ましい。
【0019】
上記変性ポリブタジエンゴムは、含窒素官能基を有する重合開始剤を使用して、1,3-ブタジエンを重合させたり、活性末端を有するポリブタジエンを合成した後、該活性末端を含窒素官能基を有する変性剤で変性する等の公知の方法で合成することができる。ここで、上記含窒素官能基としては、ヘキサメチレンイミンに由来する官能基(例えば、ヘキサメチレンイミノ基)が好ましい。上記含窒素官能基を有する重合開始剤は、n-ブチルリチウム等のリチウム化合物と、ヘキサメチレンイミン等の二級アミンとから予備調製して重合反応に用いてもよいが、重合系中で生成させてもよい。また、変性剤としては、四塩化スズ等のスズ含有化合物、N,N'-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4,4'-ビス(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等の窒素含有化合物、四塩化ケイ素、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物等のケイ素含有化合物が挙げられる。
【0020】
上記サイドゴム8用ゴム組成物は、上述のゴム成分、カーボンブラック及び/又はシリカの他、加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。なお、上記サイドゴム8用ゴム組成物は、少なくとも天然ゴムを含むゴム成分に、カーボンブラック及び/又はシリカと共に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0021】
一方、上記硬スティフナー7aには、ジエン系ゴムからなるゴム成分とカーボンブラックとフェノール系樹脂とメチレン供与体である樹脂用硬化剤とを含み、上記ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックの配合量が30〜100質量部で且つフェノール系樹脂の配合量が5〜30質量部であるゴム組成物を用いることが好ましい。カーボンブラックの配合量がゴム成分100質量部に対して30質量部未満では、硬スティフナー7aの貯蔵弾性率(E')が低下して、ビード部1の変形を十分に抑制できないことがあり、一方、100質量部を超えると、硬スティフナー7aのエネルギーロスが増大して、ビード部1のエネルギーロスを十分に低減できないことがある。また、フェノール系樹脂の配合量がゴム成分100質量部に対して5質量部未満では、硬スティフナー7aの貯蔵弾性率(E')が低下して、ビード部1の変形を十分に抑制できないことがあり、一方、30質量部を超えると、硬スティフナー7aのエネルギーロスが増大して、ビード部1のエネルギーロスを十分に低減できないことがある。
【0022】
上記硬スティフナー7a用ゴム組成物において、ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)の他、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等の合成ジエン系ゴムが挙げられる。これらゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0023】
上記フェノール系樹脂としては、ノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、ノボラック型クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物、ノボラック型レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物、及びこれらの変性物が挙げられ、これらの中でも、ノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びその変性物が好ましい。ここで、上記変性物としては、上記縮合物を、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸、リノレン酸等のオイルで変性したもの、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素で変性したもの、ニトリルゴム等のゴムで変性したもの等が挙げられる。これらノボラック型フェノール系樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
また、上記樹脂用硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、パラホルムアルデヒド等のメチレン供与体が挙げられ、これらの中でも、ヘキサメチレンテトラミン及びヘキサメトキシメチルメラミンが好ましい。これら樹脂用硬化剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。なお、該樹脂用硬化剤の配合量は、特に限定されるものではないが、上記フェノール系樹脂の配合量の5〜50質量%の範囲が好ましい。
【0025】
上記硬スティフナー7a用ゴム組成物には、上述のゴム成分、カーボンブラック、フェノール系樹脂及びメチレン供与体である樹脂用硬化剤の他、加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。なお、上記硬スティフナー7a用ゴム組成物は、ゴム成分に、カーボンブラック、フェノール系樹脂及びメチレン供与体と共に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0026】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、硬スティフナー7a及びサイドゴム8の物性が上述の範囲になるようにして、常法に従って製造することができる。なお、本発明の重荷重用空気入りタイヤは、硬スティフナー7a及びサイドゴム8以外の部材は、特に限定されず、公知の部材を使用することができる。また、本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
表1及び表2に示す配合のゴム組成物を常法に従って調製し、該ゴム組成物を硬スティフナー7a又はサイドゴム8に用いて、図1に示す構造を有し、サイズが11R22.5の重荷重用空気入りタイヤを製造した。得られたタイヤに対して、下記の方法で、転がり抵抗、並びに貯蔵弾性率(E')及び損失正接(tanδ)を測定・評価した。結果を表3に示す。
【0029】
(1)転がり抵抗
正規荷重及び内圧で、80km/hでの新品時及び走行後の転がり抵抗を測定し、コントロール(比較例1のタイヤ)対比の軸トルクを指数表示した。指数値が小さい程、転がり抵抗が小さく良好であることを示す。なお、走行後の転がり抵抗は、タイヤを主溝深さの残りが3mmとなるまで、バフした後測定した。
【0030】
(2)貯蔵弾性率(E')及び損失正接(tanδ)
供試タイヤから、硬スティフナー及びサイドゴムを切り出し、スペクトロメーターにて、温度25℃、歪2%、周波数52Hzの条件下で、硬スティフナーの貯蔵弾性率(E')及び損失正接(tanδ)、並びにサイドゴム損失正接(tanδ)を測定した。
【0031】
【表1】

【0032】
*1 住友ベークライト製, スミライトレジンPR−50235, 軟化点:121℃
*2 ヘキサメトキシメチルメラミン, AMERICANCYANAMID COMPANY製, CYREZ964, 変質開始温度:120℃
*3 N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0033】
【表2】

【0034】
*4 JSR製, BR01
*5 下記方法で製造した変性ポリブタジエンゴム
*6 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0035】
<変性ポリブタジエンゴムの製造例>
乾燥し、窒素置換された内容積約900mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン283g、1,3-ブタジエン50g、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.0057mmol、及びヘキサメチレンイミン0.513mmolをそれぞれシクロヘキサン溶液として注入し、これに0.57mmolのn-ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、撹拌装置を備えた50℃の温水浴中で4.5時間重合を行った。重合添加率はほぼ100%であった。この重合系に四塩化スズ0.100mmolをシクロヘキサン溶液として加え50℃で30分撹拌した。その後さらに、2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール(BHT)のイソプロパノール5%溶液0.5mLを加えて反応を停止させ、さらに,常法に従い乾燥して変性ポリブタジエンゴム(変性BR)を得た。得られた変性BRのビニル結合(1,2-結合)量を、1H-NMR[日本電子製, Alpha 400MHz NMR装置、CDCl3中]スペクトルにおける積分比より求めたところ、ブタジエン単位のビニル結合量が14%であった。また、得られた変性BRのカップリング効率を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より得られるデータのうち高分子量側のピークの面積比率を用いて算出したところ、カップリング効率は65%であった。また、ガラス転移温度は-95℃であった。
【0036】
【表3】

【0037】
表3の実施例の結果から明らかなように、硬スティフナーの貯蔵弾性率(E')を30MPa以上且つ損失正接(tanδ)を0.25以下としつつ、サイドゴムの損失正接(tanδ)を0.11以下とすることで、比較例1のタイヤに比べて、新品時及び走行後の転がり抵抗を大幅に低減できることが分かる。
【0038】
一方、硬スティフナーの貯蔵弾性率(E')が30MPa未満の比較例2のタイヤ、並びにサイドゴムの損失正接(tanδ)が0.11を超える比較例3及び4のタイヤは、新品時及び走行後の転がり抵抗の低減効果が実施例のタイヤに比べて小さかった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の重荷重用空気入りタイヤの一実施態様を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ビード部
2 サイド部
3 トレッド部
4 ラジアルカーカス
4a カーカス本体部
4b カーカス折り返し部
5 ベルト
6 ビードコア
7 スティフナー
7a 硬スティフナー
7b 軟スティフナー
8 サイドゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部及び一対のサイド部と、両サイド部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在して、これら各部を補強するカーカスと、前記ビード部内に夫々埋設したビードコアのタイヤ半径方向外側に配置したスティフナーとを具え、該スティフナーが前記ビードコアのタイヤ半径方向外側に隣接する硬スティフナーと該硬スティフナーのタイヤ半径方向外側に隣接する軟スティフナーとからなる重荷重用空気入りタイヤにおいて、
前記硬スティフナーの貯蔵弾性率(E')が30MPa以上で且つ損失正接(tanδ)が0.25以下であって、
前記サイド部のカーカスのタイヤ幅方向外側に位置するサイドゴムの損失正接(tanδ)が0.11以下であることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記サイドゴムに、少なくとも天然ゴムを含むジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対してカーボンブラック及び/又はシリカからなる充填剤30〜60質量部を配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記サイドゴムに用いるゴム組成物のゴム成分が含窒素官能基を有する変性ポリブタジエンゴムを含むことを特徴とする請求項2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記含窒素官能基がヘキサメチレンイミンに由来することを特徴とする請求項3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記硬スティフナーに、ジエン系ゴムからなるゴム成分とカーボンブラックとフェノール系樹脂とメチレン供与体である樹脂用硬化剤とを含み、前記ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックの配合量が30〜100質量部で且つフェノール系樹脂の配合量が5〜30質量部であるゴム組成物を用いたことを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−143314(P2008−143314A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331922(P2006−331922)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】