説明

重量物の移送方法

【課題】変断面構造の重量物を移送することが難しい重量物移送装置を用いても、変断面構造の重量物を容易、且つ確実に移送することができる重量物の移送方法の提供。
【解決手段】重量物移送装置2の下端面と重量物移送装置2を支持する支持部31との間、又は、重量物移送装置2の移送面23と重量物1の下面との間に、前記移送面23に対する重量物1の変断面の角度に応じた角度の支持面部と、前記移送面23又は前記支持部31に対して平行状とする平行面部を有したスペーサー4を、前記支持面部を重量物1側へ向けて介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の送り出し方法に関し、詳しくは、長手方向に沿って断面が変化するような変断面構造の重量物を移送するのに好適な重量物の移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する先行技術文献情報として、例えば、下記の特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005−154044号公報
【0003】
例示した特許文献1の発明は、台座上に設けた受台にクローラを掛け渡し、この上に重量物を載せて移送する重量物移送装置で、前記クローラの幅方向両側にチェンを一体的に取り付け、受台の両端部には前記チェンに噛合する駆動スプロケットと従動スプロケットをそれぞれ設け、前記駆動スプロケットを油圧モータからなる推進駆動装置で駆動するようにしたものである
又、クローラが掛け渡してある受台は、当該クローラの両側に2台ずつ配置した鉛直調整ジャッキで支持し、この鉛直調整ジャッキを連続して上下動することで、クローラの高さの調整、クローラの前後、左右、斜めの傾きを調整できるようになっている。
そして、特許文献1に記載の重量物移送装置は、クローラの重量物が載る範囲内を支持する受台は一枚板で構成している。
したがって、クローラに載る重量物の下面が水平なものであれば、クローラの搬送面で水平面を支持し、クローラの回転で重量物を移送することができる。
しかしながら、キャンバー(camber)がついた重量物、例えば、下面にアーチ形のキャンバーを形成した橋桁(変断面の橋桁)では、水平面とキャンバーとが交差する部分(角部)が無限軌道帯の略中央位置にきた時、重量物は前記キャンバーの角部を支点としてシーソーのように傾き、無限軌道帯に集中荷重が作用し、重量物を移送することができない状態となる。
そして、最悪な場合は、重量物の移送ができないだけでなく、橋桁が変形、あるいは移送装置が破損する等、解決すべき課題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、前記課題を解決するために、特願2005−379049号(以下、「特許出願」という)を提案している。
この特許出願は、キャンバー(camber)がついた重量物、例えば、下面にアーチ形のキャンバーを形成した橋桁(変断面の橋桁)を移送する重量物移動装置であり、ベースプレート上に、クローラを無端回動可能に巻回支承する機体を複数の昇降手段で傾斜可能に保持し、その機体におけるクローラの上半部裏面と対向する側にクローラを支持する摺接手段を配置するとともに、該摺接手段は重量物の変断面に応じて前記クローラを重量物の下面に倣い当接するよう上下機構で支持し、更に前記クローラの幅方向側縁にスプロケットとの噛合部を該クローラの周方向に沿って設け、前記噛合部と噛合する駆動スプロケットを、前記摺接手段で支持された範囲内に、クローラの周方向に沿って複数個配置し、更に前記駆動スプロケットをクローラの上半部裏面を支持する前記摺接手段の上下動に連繋して上下動するようにしたものである。
前記特許出願における重量物移送装置によれば、前記クローラの上半部裏面を支持する摺接手段は上下機構で支持されているため、前記クローラは重量物の変断面に応じて該重量物の下面に倣い当接され、均等な面圧で支持する。更に該クローラの上下動に連繋して該クローラを駆動する駆動スプロケットも上下するため、変断面構造の重量物でも確実に移送することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許出願の重量物移送装置は、前記したように変断面構造の重量物を送り出すのに極めて効果的であるが、本発明者は、例えば、前記特許文献1のような変断面構造の重量物の移送が難しい重量物移送装置を用いても、変断面構造の重量物を容易、且つ確実に移送できるようにするという観点から、鋭意研究の結果本発明に至ったものである。
【0006】
すなわち本発明は、変断面構造の重量物を移送することが難しい重量物移送装置を用いても、変断面構造の重量物を容易、且つ確実に移送することを課題とし、この課題を解決した重量物の移送方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明が採用した技術的手段は、変断面構造の重量物の移送方法であって、
重量物移送装置の下端面と重量物移送装置を支持する支持部との間、又は、重量物移送装置の移送面と重量物の下面との間に、前記移送面に対する重量物の変断面の角度に応じた角度の支持面部と、前記移送面又は前記支持部に対して平行状とする平行面部を有したスペーサーを、前記支持面部を重量物側へ向けて介在することで、移送面に対する重量物の荷重を均等な面圧で支持する方法である。
【0008】
本発明でいう重量物移送装置は、前記特許文献1に開示されているように、鉛直調整ジャッキで支持し、この鉛直調整ジャッキを連続して上下動することで、クローラの高さの調整及びクローラの前後方向の傾きを調整できる形態のもの、又は、クローラの高さの調整のみができるもの、クローラの高さの調整及びクローラの前後方向の傾きの調整ができない形態のもの等の公知のものが使用でき、又、前記特許出願に記載の重量物移送装置も使用できる。
【0009】
本発明でいう変断面構造の重量物とは、キャンバー(camber)がついた重量物、例えば、下面にアーチ形のキャンバーが形成された橋桁(変断面構造の橋桁)が例示できる。
前記スペーサーは、移送される各種重量物の変断面の角度や、重量物移送装置の長さ及び幅に対応させた大きさに対応できるように、角度の異なる支持面部のものや異なる大きさのものを、対象となる変断面構造の重量物に応じて用意することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、変断面構造の重量物の移送が難しい重量物移送装置を用いても、変断面構造の重量物を容易、且つ確実に移送できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本形態で例示する重量物1は、図1及び図2に示すように、下面にアーチ形のキャンバー11と、キャンバー11と連続する水平部12が形成された橋桁であり、重量物移送装置2は、台座24に支持された鉛直調整ジャッキ21で支持し、この鉛直調整ジャッキ21を連続して上下動することで、クローラ22の高さの調整及びクローラ22の前後方向の傾きを調整できる形態のものである。
又、本形態で例示する重量物1のキャンバー11は、上側の水平部12から下側の水平部12に向かって一定の傾き角度で連続するものである。
又、前記重量物移送装置2は、ベント3上に載置固定され、当該ベント3上でスペーサーを用いて前記重量物1の移送作業を行うようにされる。
又、本形態で例示するスペーサーは、前記キャンバー11の角度と同角度の支持面部41と、前記重量物移送装置2の移送面23又は前記ベント3の支持部31に対して平行状とする平行面部42を有してなる側面略楔状を呈する第1スペーサー4と、前記水平部12の角度(0度)と同角度の支持面部41'と、前記重量物移送装置2の移送面23又は前記ベント3の支持部31に対して平行状とする平行面部42'を有してなる側面長方形状を呈する第2スペーサー4'(図5(k)参照)であり、当該第1スペーサー4,第2スペーサー4'が前記移送面23と重量物1のキャンバー11の間に介在される。
又、符号5は、重量物1の移送作業中に、当該重量物1を適宜支えるジャッキである。
尚、本形態で例示する重量物移送装置2は、前記特許文献1に記載のような公知の構造であるので、具体的な説明は省略するとともに、模式的に図示する。
【0012】
以下、本形態における重量物1の移送方法を図3〜図8((a)〜(v))に基づいて工程順に説明する。
【0013】
第1工程:鉛直調整ジャッキ21を作動させてクローラ22の高さの調整及びクローラ22の前後方向の傾きを調整して、前記キャンバー11に対して移送面23の全面を接触させる(図3(a)参照)。
【0014】
第2工程:前記第1工程の状態から、重量物移送装置2を動作させて重量物1を移送し、重量物1のキャンバー11と水平部12との間の角部13の直前で重量物移送装置2を停止させる(図3(b)参照)。
【0015】
第3工程:前記第2工程の状態から、ジャッキ5を伸張して重量物1を支えた後、鉛直調整ジャッキ21を作動させてクローラ22の高さの調整及びクローラ22の前後方向の傾きを調整して移送面23を水平状とするとともに、下降させ、第1スペーサー4をその支持面部41をキャンバー11に対面させて固定する(図3(c)参照)。
このとき、スペーサー4の平行面部42は、水平部12と同一面となっている。
【0016】
第4工程:前記第3工程の状態から、前記鉛直調整ジャッキ21を作動して重量物移送装置2の移送面23を前記第1スペーサー4の平行面部42に接触させて重量物1を支え、前記ジャッキ5を収縮し、重量物1から離間させる(図3(d)参照)。
【0017】
第5工程:前記第4工程の状態から、重量物移送装置2を動作させて重量物1を移送することにより、前記角部13を通過させて水平部12を移送面23に至らせる(図4(e)参照)。
【0018】
第6工程:前記第5工程の状態から、重量物移送装置2を停止させるとともに、ジャッキ5を伸張して重量物1を支えた後、鉛直調整ジャッキ21を作動させて移送面23を下降させ、前記キャンバー11に固定されている第1スペーサー4を外し、当該第1スペーサー4を反対側のキャンバー11に固定する(図4(f)参照)。
【0019】
第7工程:前記第6工程の状態から、鉛直調整ジャッキ21を作動して移送面23を水平部12に接触させて重量物1を支えた後、前記ジャッキ5を収縮し、重量物1から離間させる(図4(g)参照)。
【0020】
第8工程:前記第7工程の状態から、重量物移送装置2を動作させて重量物1を移送することにより、逆側の角部13を通過させて、第1スペーサー4の平行面部42を移送面23に至らせる(図4(h)参照)。
【0021】
第9工程:前記第8工程の状態から、重量物移送装置2を停止させて、前記ジャッキ5を反対側に付け替えるとともに、伸張して重量物1を支えた後、前記鉛直調整ジャッキ21を作動させて移送面23を下降させ、前記キャンバー11に固定されている第1スペーサー4を外し、鉛直調整ジャッキ21を作動させて移送面23を上昇させるとともに、その移送面23の角度をキャンバー11の角度と同角度にし、且つ前記キャンバー11に対して移送面23の全面を接触させる(図5(i)参照)。
【0022】
第10工程:前記第9工程の状態から、重量物移送装置2を動作させることにより重量物1を移送する(図5(j)参照)。
【0023】
第11工程:前記第10工程の状態から、重量物1を移送し、当該重量物1のキャンバー11と水平部12との間の角部13の直前で重量物移送装置2を停止させ、更に、第2スペーサー4'をその支持面部41'を水平部12に対面させて固定する(図5(k)参照)。
【0024】
第12工程:前記第11工程の状態から、ジャッキ5を反対側に付け替えて伸張して第2スペーサー4'を介して重量物1を支え、鉛直調整ジャッキ21を作動させて移送面23を水平状とするとともに、下降させ、第1スペーサー4をキャンバー11に固定する(図5(l)参照)。
【0025】
第13工程:前記第12工程の状態から、鉛直調整ジャッキ21を作動させて移送面23を、第1スペーサー4の平行面部42に接触させて重量物1を支えた後、前記ジャッキ5を収縮し、重量物1から離間させる(図6(m)参照)。
【0026】
第14工程:前記第13工程の状態から、重量物移送装置2を動作させて重量物1を移送し、角部13を通過させて第2スペーサー4'の平行面部42'を移送面23に至らせる(図6(n)参照)。
【0027】
第15工程:前記第14工程の状態から、重量物移送装置2を停止させるとともに、ジャッキ5を伸張して重量物1を支えた後、鉛直調整ジャッキ21を作動させて移送面23を下降させ、第1スペーサー4と第2スペーサー4'を外す(図6(o)参照)。
【0028】
第16工程:前記第15工程の状態から、鉛直調整ジャッキ21を作動して重量物移送装置2の移送面23を水平面12に接触させて重量物1を支え、前記ジャッキ5を収縮し、重量物1から離間させる(図6(p)参照)。
【0029】
第17工程:前記第16工程の状態から、重量物移送装置2を動作させて重量物1を移送して、逆側の角部13の直前で重量物移送装置2を停止させ、更に、第1スペーサー4をその支持面部41をキャンバー11に対面させて固定する(図7(q)参照)。
【0030】
第18工程:前記第17工程の状態から、ジャッキ5を伸張して第1スペーサーを介して重量物1を支えた後、前記鉛直調整ジャッキ21を作動させて重量物移送装置2の移送面23を下降させ、水平面12に第2スペーサー4'固定する(図7(r)参照)。
【0031】
第19工程:前記第18工程の状態から、鉛直調整ジャッキ21を作動させて移送面23を上昇させるとともに、第2スペーサー4'の平行面部42'に対して移送面23の全面を接触させて重量物1を支えた後、前記ジャッキ5を収縮し、重量物1から離間させる(図7(s)参照)。
【0032】
第20工程:前記第19工程の状態から、重量物移送装置2を動作させて重量物1を移送して、角部13を通過させるとともに、第1スペーサー4の平行面部42を移送面23に至らせた後、重量物移送装置2を停止させて第2スペーサー4'を外す(図7(t)参照)。
【0033】
第21工程:前記第20工程の状態から、ジャッキ5を反対側に付け替えて伸張して重量物1を支えた後、鉛直調整ジャッキ21を作動させて移送面23を下降させ、第1スペーサー4を外す(図8(u)参照)。
【0034】
第22工程:前記第21工程の状態から、鉛直調整ジャッキ21を作動させて移送面23を上昇させるとともに、その移送面23の角度をキャンバー11の角度と同角度にし、且つ前記キャンバー11に対して移送面23の全面を接触させる(図6(v))。
すなわち、この図6(v)の状態は、前記図3(a)と同様の状態であり、当該図6(v)の状態から再び図3(a)〜図6(v)の移送動作を繰り返すことになる。
【0035】
以上説明した本形態の重量物移送方法によれば、スペーサー4を介在したり外したりしながら重量物の移送動作をすることにより、変断面構造の重量物を移送することが難しい重量物移送装置2を用いても、変断面構造の重量物1を容易、且つ確実に移送することができる。
又、前記特許出願に記載しているような専用の重量物移送装置を使用することなく、変断面構造の重量物1を移送することができるので、重量物移動作業におけるコストを削減することができる。
【0036】
前記形態で例示したスペーサーの他の形態として、例えば、図9(a)及び(b)に示すように、大きさや形状が異なる複数個(図示では3個)のスペーサー4A,4B,4Cを用いて、これらスペーサー4A,4B,4Cを適宜組み合わせたり(図9(a),(b))、夫々単独で使用したり(図示せず)するようにした形態が挙げることができる。
又、前記キャンバー11が、前記鉛直調整ジャッキ21におけるクローラ22の前後方向の傾きの調整可能範囲以上の角度にした形態であったり、クローラ22の前後方向の傾きの調整可能範囲の角度と範囲外の角度が組み合わさった形態であったりする場合には、必要に応じて前記重量物移送装置2の台座部24と前記支持部31の間に、前記キャンバー11に移送面23の全面を接触させることが可能な角度の支持面部41を有するスペーサーを用いることもできる(図示せず)。
又、本形態では、前記ジャッキ5を一個備えて、この一個のジャッキ5を付け替えながら移送作業を行う方法を例示したが、図に示すように、ジャッキ5を重量物移送装置2の両側に2個備えた形態(図示せず)としてもよく、この形態では、移送作業中にジャッキの付け替え作業を省略することができるという効果が期待できる。
【0037】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載した内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】重量物移送状態を示す模式図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】重量物移送工程の(a)〜(d)を示す模式図。
【図4】重量物移送工程の(e)〜(h)を示す模式図。
【図5】重量物移送工程の(i)〜(l)を示す模式図。
【図6】重量物移送工程の(m)〜(p)を示す模式図。
【図7】重量物移送工程の(q)〜(t)を示す模式図。
【図8】重量物移送工程の(u)〜(v)を示す模式図。
【図9】スペーサーの他の形態を示し、(a)及び(b)は組み合わせて使用する状態を示す。
【符号の説明】
【0039】
1:重量物
11:キャンバー
12:水平部
13:角部
2:重量物移送装置
23:移送面
31:支持部
4:第1スペーサー
4':第2スペーサー
4A:スペーサー
4B:スペーサー
4C:スペーサー
41:支持面部
41':支持面部
42:平行面部
42':平行面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変断面構造の重量物の移送方法であって、
重量物移送装置の下端面と重量物移送装置を支持する支持部との間、又は、重量物移送装置の移送面と重量物の下面との間に、前記移送面に対する重量物の変断面の角度に応じた角度の支持面部と、前記移送面又は前記支持部に対して平行状とする平行面部を有したスペーサーを、前記支持面部を重量物側へ向けて介在することで、移送面に対する重量物の荷重を均等な面圧で支持する重量物の移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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