説明

重量物搭載装置

【課題】障害物を避けて重量物を目的とする設置場所に横移動させる便利な重量物搭載装置を提供する。
【解決手段】 軌条1a、1b上をその軌条に沿ってスライドする複数のスライド装置2に、そのスライド装置2の移動方向と交差する方向に回動する無限軌道帯3’を備えた送り装置3を水平旋回可能に支持し、目的の設置場所との間の障害物Bを避けて複数本の軌条1a、1bを非平行に設置し、軌条1a、1bに対して固定/開放を切換可能としたクランプ装置4とスライド装置3とを水平ジャッキ装置5で連結し、軌条1a、1b上のスライド装置2の送り装置3に亘って重量物Wを横架載承し、水平ジャッキ装置5を同期、又は個別に操作して、重量物Wを前記障害物Bを避けながら目的の設置場所に横移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重量物搭載装置、更に詳しくは橋桁等の重量物を搭載し、その重量物の長さ方向と交叉する方向(幅方向)に押出し移動させる重量物搭載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物である、例えば橋桁の横移動装置は、押出し方向の手前位置に製作ヤードを設置し、製作ヤードで組み立てた橋桁を該製作ヤードに敷設した軌条上を押出し設備によって押出し移動させて、橋脚上に架設するものである。
【0003】
ところで、前記する重量物横移動装置は、上記したように横移動開始位置から真横に目的とする設置場所に向けて押出し移動するため、その押出し移動を案内する移動用軌条は、目的とする設置場所に対して直角に敷設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記重量物横移動装置は、前記移動用軌条、その移動用軌条に対して固定/開放を切替え可能としたクランプ装置と、そのクランプ装置に一端側を連結した水平ジャッキ装置と、その水平ジャッキ装置の他端側に連結した重量物搭載装置(スライド装置とクローラ式の重量物送り装置とを具備)とで構成され、前記クランプ装置を移動用軌条に固定して水平ジャッキ装置を伸長し、該水平ジャッキ装置の伸長後、前記クランプ装置を開放して水平ジャッキ装置を収縮し、この動作を、重量物を横架載承する重量物送り装置の水平ジャッキ装置に対し同期して重量物搭載装置(スライド装置とクローラ式の重量物送り装置とを具備)に横架載承する重量物を目的の設置場所まで移動させるようになっている。
ところが、前記のように移動用軌条を直角に交差させて、各移動用軌条を平行に設置しようとする場合に鉄塔や建造物等の障害物が存在する時には、前記する重量物横移動装置は使用できず、他の方法によってすることになる。前記障害物が撤去可能である場合は、該障害物を撤去して移動用軌条を設置する場所を整地するなどの土木工事が必要になり、重量物を目的とする設置場所まで移動に要する費用が高騰してしまう。
【0005】
そこで、前記鉄塔や建造物等の障害物がある場合には、障害物を避けるように移動用軌条を非平行に設置して、目的の設置場所まで移動させることが提案できる。
しかしながら、クローラ式の重量物送り装置がスライド装置の移動方向に対して直角状にその向きを固定されているので、非平行側(目的とする設置場所に対して非直角に設置された側)の移動用軌条を横移動させると、そのベクトルを受けてクローラが橋桁の長さ方向に交差する方向に回動して、橋桁がクローラから落下する虞れが生じ、使用できない。
【特許文献1】特開2000−234311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、移動用軌条が横移動開始位置から目的とする設置場所との間の障害物を避けて非平行に設置しなければならない特殊事情下でその障害物を避けて重量物を目的とする設置場所に横移動させる便利な重量物搭載装置を提供することにある。
他の目的とする処は、重量物送り装置が重量物の水平回動に従動してスムースに水平旋回して、重量物の横移動を阻害しない重量物搭載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために講じた技術的手段は、目的とする設置場所に亘って非平行に設置する横送り出し用の複数本の移動用軌条に載承され、移動用軌条に対して固定/開放を切替え可能とするクランプ装置に水平ジャッキ装置を介して連結した重量物搭載装置であって、前記移動用軌条上をその軌条に沿ってスライドする複数のスライド装置に、そのスライド装置の移動方向と交差する方向に回動する無限軌道帯を備えた重量物送り装置を水平旋回可能に支持したことを特徴とする重量物搭載装置である(請求項1)。
ここで、目的とする設置場所に亘って設置するその移動用軌条は、重量物が、例えば橋桁にあっては橋桁を組立てる製作ヤードと目的とする設置場所とに亘って設置する。
【0008】
そして、移動用軌条の非平行設置とは、少なくとも2本の移動用軌条のうち、1本の移動用軌条を目的とする設置場所に対して直角に設置し、他の移動用軌条は障害物等を避けて平面略く字形、或いは目的とする設置場所に対して直角以外の角度で交叉する設置形態、2本の移動用軌条を平面略ハ字形に設置する形態など、重量物を横架載承する重量物送り装置をスライド案内する複数本の移動用軌条が平行でない状態をいう。
また、前記移動用軌条としては、一般的にH形鋼が使用される。
【0009】
前記移動用軌条に設置するクランプ装置は、移動用軌条に対して固定叉は開放を切換できるものであればよく、前記移動用軌条としてH形鋼を使用した場合はそのH形鋼のフランジを楔で固定する楔式クランプ装置が有効である。
また、移動用軌条上に載置するスライド装置は、軌条の上面(例えば、H形鋼の上フランジ上面)を滑動するもので、該スライド装置のスライド面(滑動面)は摩擦係数が小さい部材、例えばテフロン(登録商標)部材を取り付けた装置が挙げられる。その装置としては、例えば実公平1−20323号公報で提案されているスライドジャッキ(重量物移動用油圧ジャッキ)を使用することができる。基本的構成は、油室に供給される作動油によってフリーピストンに設けた合成樹脂製の滑走部材が移動用軌条方向に所定量突出して、移動用軌条に摺接するようになっている。
【0010】
また、重量物送り装置における無限軌道帯は回動自在であるが、機械的に無限軌道帯を回動/停止切換え自在としてもよい(請求項2)。
【0011】
以上の手段によれば、重量物を横架載承する重量物送り装置を搭載したスライド装置は、クランプ装置の固定と水平ジャッキ装置の伸長動作により移動用軌条上を滑動して移動する。この時、重量物送り装置における無限軌道帯の回動方向と、該重量物送り装置を搭載するスライド装置の移動方向(即ち、移動用軌条方向)が略直角を成す場合は、スライド装置の移動に対し重量物送り装置は姿勢を変化することなく、横移動開始時の姿勢を保って平行移動する。
しかし、移動用軌条が非平行に設置される場合、該非平行な移動用軌条(目的とする設置場所に対して非直角に設置された移動用軌条)を移動するスライド装置に対し重量物送り装置の無限軌道帯を重量物の長さ方向(橋桁の場合には橋軸方向)を向くように水平旋回させた状態で重量物を横架載承させる。そして、水平ジャッキ装置の伸長によりスライド装置を移動させると、該スライド装置に搭載されている重量物送り装置に力(ベクトル)が作用し、それにより重量物送り装置の無限軌道帯が回動し、重量物送り装置に対して重量物がその長さ方向、即ち横送り方向と交叉する方向(橋桁の場合は橋軸方向)に移動する。そのため、非平行な移動用軌条(目的とする設置場所に対して非直角に設置された移動用軌条)を移動する重量物送り装置の無限軌道帯の回動を停止させることによって、スライド装置がスライドしても重量物送り装置の無限軌道帯は回動が止められているため、重量物は支持された状態のまま移動用移動用軌条に沿って平行移動させることができる。
従って、重量物を横架載承する各移動用軌条の重量物送り装置における無限軌道帯の回動/停止をコントロールしながら水平ジャッキ装置の伸長/収縮を行うことで、重量物を目的とする設置場所に対して傾けたり、橋軸方向に移動させて、障害物を避けながら所定の目的とする設置場所へ横移動することができる。
【0012】
そして、重量物送り装置のその機台に水平旋回用の中心凸部を下向きに突設し、該中心凸部をスライド装置の支持台に凹設した円柱状凹部に水密状に嵌挿すると共に、機台に、前記円柱状凹部回りの支持台上面に当接する荷重受け面を設け、前記中心凸部の底部と円柱状凹部との間に油圧供給してその油圧で支持台の上面に対する前記荷重受け面の水平旋回時の摩擦抵抗を小さくする浮上力を付与する構成とし(請求項3)、更にスライド装置は油室に作動油を圧送して下側のフリーピストンを介して設けた合成樹脂製の滑走部材を移動用軌条方向へ突出する構成とされ、その油室と前記中心凸部の底面と円柱状凹部との間とを連絡し、該油室への油圧供給と、前記中心凸部の底面と円柱状凹部との間への油圧供給を同調する構成(請求項4)を採用すると好適なものである。
例えば、図4に示すような横移動開始位置と目的とする設置場所との間に岩山(障害物)Bが存在する場合、その岩山Bを避けて設置場所に重量物(例えば橋桁)Wを横移動させる必要がある。この時、目的とする設置場所に対して非直角に設置された移動用軌条(後述では非直角移動用軌条と称する)1b上の重量物送り装置3の無限軌道帯を回動停止とし、目的とする設置場所に対して直角に設置された移動用軌条(後述では非直角移動用軌条と称する)1a上の重量物送り装置3を回動可能にして、クランプ装置4、水平ジャッキ装置5を使用して、図5(a)の2点鎖線の状態(岩山を避けた状態)まで重量物(橋桁)Wを横移動させる。このまま同様に横移動させると、重量物Wが目的とする設置場所までは横移動するが、目的とする設置場所から真横に平行移動させることにはならない。このような時、そのままの状態で直角移動用軌条1a側の水平ジャッキ装置5を伸長してそのスライド装置2をスライドさせる。そうすると図5(b)に示すように非直角移動用軌条1b側の重量物送り装置3が重量物Wを横架載承したまま水平旋回用の中心凸部(回動軸)を中心にして水平旋回する。無論、直角移動用軌条1a側の重量物送り装置3も重量物Wを横架載承したまま水平旋回用の中心凸部(回動軸)を中心に水平旋回する。続いて、図6(a)に示すように非直角移動用軌条1b側の重量物送り装置3の無限軌道帯を回動可能とし、直角移動用軌条1a側の重量物送り装置3の無限軌道帯の回動を固定して、非直角移動用軌条1b側の水平ジャッキ装置5を伸長してそのスライド装置2をスライドさせる。そうすると、直角移動用軌条1a側の重量物送り装置3が重量物Wを横架載承したまま水平旋回用の中心凸部(回動軸)を中心にして水平旋回する(2点鎖線)無論、非直角移動用軌条1b側の重量物送り装置3も重量物Wを横架載承したまま水平旋回用の中心凸部(回動軸)を中心にして水平旋回する。
これにより岩山(障害物)Bを避けた重量物(橋桁)Wは平行状態に戻り、直角移動用軌条1a側の無限軌条帯の回動を固定し、非直角移動用軌条1b側の無限軌条帯を回動可能にして、両水平スライド装置5、5を伸長する。これによって非直角移動用軌条1b側の無限軌条帯が回動して重量物Wに対する支持を変えながらスライドし、図6(b)に示すように重量物Wを目的とする設置場所へ平行移動させ、横移動を完結する。
前記図5(b)や図6(a)のように重量物送り装置3が重量物Wを横架載承したまま中心凸部(回動軸)を中心に水平旋回する時、重量物Wの高重量が重量物送り装置3の機台に設けた荷重受け面とそれが摺動するスライド装置2の支持台の上面とに亘って集中し、その摩擦抵抗が大きいと重量物Wの水平回動に重量物送り装置3が従動せずに重量物Wの横移動を不能にしてしまう。
【0013】
以上の手段にあっては、重量物Wの水平回動時に従動して水平旋回する重量物送り装置3の機台の荷重受け面のスライド装置2の支持台上面に対する摩擦抵抗を簡単な構成で小さくして、重量物Wの水平回動に対する重量物送り装置3の水平旋回従動をスムースに行うことができる。
そして、油圧供給でスライド装置2の支持台の上面に対して重量物送り装置3の機台を完全に浮上させた時のように横架載承される重量物Wの重量バランスの変動で水平旋回の中心凸部(回動軸)に捩れ力や剪断力を作用させなくする。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1、2)本発明は以上のように構成したから、重量物を横移動する移動用軌条が非平行(目的とする設置場所に対して非直角)に設置されても、その移動用軌条に対して固定/開放を切替え可能とするクランプ装置に水平ジャッキ装置を介して連結して、重量物を目的とする設置場所に横移動させる便利な重量物搭載装置を提供することができる。
(請求項3、4)しかも、その重量物送り装置のその機台に水平旋回用の中心凸部を下向きに突設し、該中心凸部をスライド装置の支持台に凹設した円柱状凹部に水密状に嵌挿すると共に、機台に、前記円柱状凹部回りの支持台上面に当接する荷重受け面を設け、前記中心凸部の底部と円柱状凹部との間に油圧供給してその油圧で支持台の上面に対する前記荷重受け面の水平旋回時の摩擦抵抗を小さくする浮上力を付与するようにしており、水平旋回がスムース且つ確実に行える。
その上、重量物送り装置の機台に設けた荷重受け面の支持台上面に対する小さな摩擦抵抗が横架載承される重量物の重量バランスの変動によって水平旋回の中心凸部(回動軸)に捩れ力や剪断力を発生させず、安定した水平旋回性能を持続し、耐久性を向上することができる。
しかも、スライド装置への油圧供給と、重量物送り装置浮上力付与の油圧供給とを同調しており、同一の油圧供給設備に連絡可であり、構造的にも簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明重量物搭載装置の実施の形態を説明すると、この実施の形態では図1〜図8に示すように橋桁をその長さ方向と交差する方向(幅方向)に押出し移動させる重量物の横移動装置を示しており、押出し移動方向前方に障害物等が存在し、押出し移動のための移動用軌条を該押出し方向に向かって平行に設置できない非平行に設置する横移動現場である。
【0016】
重量物搭載装置Aは、図1〜図3に示すように移動用軌条1上をスライドするスライド装置2に重量物を横架載承する重量物送り装置3を搭載して構成されている。
【0017】
前記スライド装置2は、支持台12に重量物送り装置3の水平旋回中心を挟んで2基のスライドジャッキ22、22が支持された構成になっている。
このスライドジャッキ22は、図3に示すように、復動型であり、支持台12に設けた固定ピストン22aに対して上面を閉塞したシリンダ22bを水密状の摺接可能に外嵌挿し、該ピストン22aの下側に凹設した凹部にそのピストン22aに対して水密状にフリーピストン22cを摺接可能に嵌挿し、そのフリーピストン22cに合成樹脂製の滑走部材22dとして摩擦係数が小さく、且つ耐摩耗性に優れたテフロン(登録商標)樹脂製の肉厚な円板を取付け、2基のシリンダ22b、22bを重量物送り装置3支承用の反力梁12aで連結し、シリンダ22bと固定ピストン22a上面との間の油室O1及びフリーピストン22cと前記滑走部材22d上面との間の油室O2に、油圧供給手段から油圧(作動油)を供給することによってシリンダ22bと共に反力梁12aを上昇させると同時にテフロン(登録商標)樹脂製の肉厚な円板(滑走部材)22dを支持台12から下方に所定量突出させて、移動用軌条1の上フランジ11上面に摺接させるようになっている(スライドジャッキの詳細構造は実公平1−20323号公報参照)。
前記支持台12は、前記固定ピストン22a、22aを具備する横長状の本体12’と、その固定ピストン22a、22aの上面を閉塞するように水密状に被嵌した摺接可能な前記シリンダ22b、22bに螺嵌するナット22b’、22b’で支承される反力梁12aとを備えた構成になっている。
また、そのシリンダ22b、22bの側面と固定ピストン22a側面との間に油室O4、O4各々を確保し、前記油室O1を解放して油室O4に油圧を供給することによってシリンダ22bと共に反力梁12aを下降させるようになっている。
【0018】
前記スライド装置2に搭載する重量物送り装置3は、無限軌道帯(クローラ)3’であり、その機台13中央から下方に突設した水平旋回用の中心凸部23を、2基のスライドジャッキ22、22間の反力梁12a部分に凹設した円柱状凹部12bに水密状に嵌合すると共に、その機台13に円柱状凹部12b回りの支持台12上面に当接する荷重受け面13aを形成し、図3に示すように機台13の外周に無限軌道帯3’を回動可能に巻装し、無限軌道帯3’の下半部は反力梁12a下位に支持台12との間に確保された空間12cを利用して配置して、この無限軌道帯3’の回動で横架載承する重量物Wを送り出すことができるようになっている。
【0019】
また、重量物送り装置3は、機台13の外周を回動する無限軌道帯3’の回動抵抗を少なくするために機台13上面における無限軌道帯3’の裏面と対向する位置に摩擦係数が小さく、且つ耐摩耗性に優れた合成樹脂製のプレート(例えば、テフロン(登録商標))板33を機台13内に設置した鉛直ジャッキ43で押上げるように構成されている。
【0020】
そして、前記シリンダ22bと固定ピストン22a上面との間の油室O1と前記中心凸部23の底部と円柱状凹部12bとの間の油室O3とを連絡して、前記油圧供給手段による油室O1への油圧(作動油)の供給と油室(作動油)O3への油圧の供給を同調させて、支持台12の上面、即ち反力梁12aの上面に対する重量物送り装置3の機台13に形成されている荷重受け面13aの水平旋回時の摩擦抵抗を小さくする浮上力を付与するように構成されている。
詳細には、前後のスライド装置2、2の固定ピストン22a、22a合計断面積に対して、中心凸部23の断面積を若干小さくしている。
それによって、油室O1、O1に油圧が供給されると同時に油室O3に油圧が供給されると、反力梁12aに対して重量物送り装置3に搭載される重量物Wの重量の殆どを油室O3の油膜で保持し、重量物Wの重量の一部を重量物送り装置3の機台13の荷重受け面13aの反力梁12aの上面に対する小さな載承力で受けることができるようになる。
【0021】
従って、油圧供給手段からの油圧(作動油)供給で、スライドジャッキ22、22のシリンダ22b、22bと共に反力梁12aを上昇させると同時にテフロン(登録商標)樹脂製の肉厚な円板(滑走部材)22dを支持台12の本体12’の下方から所定量突出させて移動用軌条1の上フランジ11上面に接触させ、荷重受け面13aの反力梁12aとの摩擦抵抗を小さくするように重量物送り装置3の機台13を油室O3に供給される油圧で浮上させて、重量物送り装置3を水平旋回し易くすることができる。
【0022】
この実施の形態では、重量物送り装置3は2基のスライドジャッキ22、22を連絡する反力梁12aの長さ方向(移動用軌条1への押出し方向)に直角に交差する状態から30度の許容範囲で水平旋回するように設定されている。
即ち、30度以上水平旋回すると、機台13が反力梁12aに干渉してそれ以上は旋回しないように構成されている。無論、その水平旋回許容角度範囲を30度以上に設定しても良いものである。
図4(b)において、符号13bは機台13に設けた段部で、この段部13bが30度水平旋回すると、反力梁12aの干渉して、それ以上は水平旋回しないように規制されている。
【0023】
前記重量物Wの横移動に際して搭載装置Aと一緒に使用される移動用軌条1、クランプ装置4、水平ジャッキ装置5において、移動用軌条1は、一般的にH形鋼を使用し、その移動用軌条1の連結部は段差がないように設置され、端部をサンダー等で面取り直線的に連結して所要長さにしてある。
また、クランプ装置4は、移動用軌条1のH形鋼における上フランジ11の前後両側を、楔チャック14,14’でクランプするもので、その楔チャック14,14’は油圧で作動する開閉用ジャッキ24,24’で固定/開放を切換し得るように構成されている。叉、同クランプ装置4には、水平ジャッキ装置5等をピン接続する連結部34,34’が設けられている。
また、水平ジャッキ装置5は、シリンダとロッドからなる周知の油圧シリンダで、油圧により伸長/収縮するロッドの先端は該水平ジャッキ装置5寄りに配置されているスライド装置2の連結腕にピンで連結され、シリンダの基部は該水平ジャッキ装置5の反力を支持するクランプ装置4の連結腕にピンで連結されている。尚、重量物送り装置3を搭載するスライド装置2は、横送りする重量物Wの幅方向の両側ウェブ芯の線上を支持する為、必要な台数(図面では2台)を連結杆15で連結し、送り方向に向かって先頭に位置するスライド装置2の先にはおしみ用クランプ装置6が連結されるようになっている。このおしみ用クランプ装置6は前記した水平ジャッキ装置5の反力を支持するクランプ装置4と同じである(前記クランプ装置、水平ジャッキ装置構成は特開2000−234311号公報参照)。
【0024】
次に、本発明重量物搭載装置Aを使用して、重量物W、例えば橋桁(後述では符号Wを付して説明する)を横移動させる手順を図4〜図7に基づいて説明すると、図4に示す橋桁Wの目的とする設置現場は、その手前に岩山(障害物)Bが張り出している。その為に、移動用軌条1の一方(図面では右側の軌条)を設置場所に対して略直角に配置し、もう一方の移動用軌条1を前記岩山(障害物)Bを避けて斜めに傾けて設置されている。そして、両移動用軌条1,1に設置したスライド装置2に搭載されている重量物送り装置3上に橋桁Wを載架する(図4の仮想線の位置)。尚、図4に実線で示した箇所が橋桁Wの目的とする設置場所である。また、移動用軌条1、1は支保工100上に敷設され、目的とする設置場所の橋脚101に亘って設置される(図1、図4等参照)。
【0025】
図4(a)の横移動開始箇所で2点鎖線で示した橋桁Wを岩山(障害物)Bを2点鎖線のように避けて、目的とする設置場所に実線のように横移動させなければならない。
図4(a)の横移動開始箇所に仮想線で示した状態に載架支承した橋桁Wは、橋軸方向に移動することなくそのまま設置場所に向かって横移動させた場合、該橋桁Wの左端が岩山(障害物)Bに当たってしまう。その為、橋桁の左端を岩山Bの先端付近まで移動用軌条1と平行に移動させる必要がある。そこで、図5(a)に示すように、移動用軌条(目的とする設置場所に対して直角に設置された移動用軌条(後述では直角移動用軌条と称する))1a側の重量物送り装置3は無限軌道帯3’が橋桁Wのウェブの長さ方向を向くようにスライド装置2の移動方向と直角状に向け、且つ重量物送り装置3の無限軌道帯3’は回動可能にセットし、移動用軌条(目的とする設置場所に対して非直角に設置された移動用軌条(後述では非直角移動用軌条と称する))1b側の橋桁Wを横架載承する重量物送り装置3は前記水平旋回許容角度(例えば30度)を利用して水平旋回させて橋桁Wのウェブの線上に向かせ、且つ無限軌道帯3’は回動しない固定にセットする。その状態で横架載承された橋桁Wを両移動用軌条1a,1bの水平ジャッキ装置5、5を伸長してスライド装置2、2を夫々スライドさせる。この時、非直角移動用軌条1bを摺接するスライド装置2に搭載された重量物送り装置3の無限軌道帯3’は固定されているため、非直角移動用軌条1b側の重量物送り装置3は橋桁Wの支持位置を変えずに非直角移動用軌条1bに沿って移動する。他方、直角移動用軌条1a側の重量物送り装置3の無限軌道帯3’は回動可能であるため、橋桁Wは直角移動用軌条1a側の重量物送り装置3に対しては滑り移動する。それにより、橋桁Wは図5(a)の仮想線で示す位置へ横送りされる。尚、スライド装置2のスライド作業は、先ず、水平ジャッキ装置5を収縮状態とし、クランプ装置4とおしみ用クランプ装置6を固定(締め付け状態)してスタートの準備を完了する。次に、クランプ装置4を固定し、おしみ用クランプ装置6は開放して水平ジャッキ装置5を伸長させ、スライド装置2を移動させる。水平ジャッキ装置5の伸長後、おしみ用クランプ装置6を固定し、クランプ装置4を開放した後、水平ジャッキ装置5を収縮させクランプ装置4を移動させる。この工程を繰り返して所定位置まで移動させる。
【0026】
図5(a)の状態において、非直角移動用軌条1b側の重量物送り装置3の無限軌道帯3’を固定し、直角移動用軌条1a側の重量物送り装置3の無限軌道帯3’は回動可能とし、直角移動用軌条1a側の水平ジャッキ装置5を伸長してスライド装置2をスライドさせる。この時、非直角移動用軌条1b側の水平ジャッキ装置5は伸長させない。これにより、橋桁は図5(b)に示すように、非直角移動用軌条1b側の重量物送り装置3が橋桁Wを横架載承したまま重量物送り装置3の機台13の荷重受け面13aがスライド装置2の支持台12上面を小さな摩擦抵抗(摺接抵抗)で水平旋回用の中心凸部(回動軸)23を中心にして水平旋回する。無論、直角移動用軌条1a側の重量物送り装置3も重量物Wを横架載承したまま水平旋回用の中心凸部(回動軸)23を中心に水平旋回する。
【0027】
次に、直角移動用軌条1a側の重量物送り装置3の無限軌道帯3’を固定し、非直角移動用軌条1b側の重量物送り装置3の無限軌道帯3’を回動可能にし、その非直角移動用軌条1b側の水平ジャッキ装置を伸長してスライド装置をスライドさせる。この時、直角移動用軌条側の水平ジャッキ装置は伸長させない。これにより、図6(a)に示すように、直角移動用軌条側の重量物送り装置3の機台13の荷重受け面13aがスライド装置2の支持台12上面に対して小さな摩擦抵抗で接触しているため中心凸部23を中心にして回動して、橋桁Wを目的とする設置場所と平行な状態にする。無論、非直角移動用軌条1b側の重量物送り装置3も重量物Wを横架載承したまま水平旋回用の中心凸部23を中心に水平旋回する。
【0028】
目的とする設置場所に対し平行な状態に移動した橋桁は、その姿勢のまま平行移動すれば目的とする設置場所に移動完了する。この平行移動は、目的とする設置場所に対して直角移動用軌条側の重量物送り装置の無限軌道帯を固定し、非直角移動用軌条側の重量物送り装置の無限軌道帯は回動可能とし、両軌条1a,1bの水平ジャッキ装置5を伸長する。それにより、非直角移動用軌条1b側の重量物送り装置3を搭載したスライド装置2は無限軌道帯3’が回動して橋桁Wに対する支持位置を変えながらスライドし、図6(b)に示すように橋桁Wを目的とする設置場所へ平行移動し、横移動を完了する。
図7が、図6(a)の時の、無限軌道帯3’の橋桁Wの水平回動に従動する水平旋回時の拡大図である。前記図5(b)の時も同様である。
尚、上記した横移動は、移動の一例であり、この作業手順に限定されるものではない。
【0029】
図8は、移動用軌条1の非平行な設置形態の他の例を示し、一方は設置場所に対し略直角に配置し、他方は岩山(障害物)Bを避けるために2本の軌条1を平面略く字形に配置してある。この場合は、橋桁Wの左側の支持を、く字形に配置した移動用軌条1、1相互で乗り換えて横移動を行なう。尚、横移動開始から完了までの間は、前示実施例の如く重量物送り装置の無限軌道帯3’の回動/停止、水平ジャッキ装置5の伸長/停止を適宜組み合わせて行うようにする。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の重量物搭載装置は、クランプ装置、水平ジャッキ装置と併用して、山岳地帯での橋梁は勿論のこと、都市圏でのビルの間を通る高速道路等の高架橋の建設、建築物の横移動等に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の重量物搭載装置の使用状態を示す側面図。
【図2】同重量物搭載装置の使用状態を示す平面図。
【図3】図2の(3)−(3)線拡大断面図。
【図4】橋桁の横移動工法を示す説明図で、(a)は横移動開始箇所から目的とする設置場所に橋桁を横移動させる際の過程を示す。(b)は、重量物搭載装置の斜視図。
【図5】同橋桁の横移動工法の続き示をす説明図で、(a)は、岩山を避けて横移動した状態を示す。(b)は、直角移動用軌条側の水平スライド装置を伸長して、橋桁を水平回動させた状態を示す。
【図6】同橋桁の横移動工法の続きを示す説明図で、(a)は、非直角移動用軌条側の水平スライド装置を伸長して、橋桁を水平回動させた状態を示す。(b)は、目的とする設置場所に平行となるように橋桁を横移動させた状態を示す。
【図7】図6(b)の状態の重量物搭載装置の平面図。
【図8】移動用軌条の他の設置形態を示す平面図。
【符号の説明】
【0032】
A:重量物搭載装置 2:スライド装置
3:重量物送り装置 3’:無限軌道帯
1:移動用軌条 W:重量物(橋桁)
4:クランプ装置 5:水平ジャッキ装置
13:機台 12:支持台
12b:円柱状凹部 23:中心凸部
O1:油室(固定ピストンとシリンダとの間の油室)
O3:油室(中心凸部の底面と円柱状凹部との間の油室)
22c:フリーピストン 22d:滑走部材
1a:直角移動用軌条 1b:非直角移動用軌条
13a:荷重受け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的とする設置場所に亘って非平行に設置する横送り出し用の複数本の移動用軌条に載承され、移動用軌条に対して固定/開放を切替え可能とするクランプ装置に水平ジャッキ装置を介して連結した重量物搭載装置であって、前記移動用軌条上をその軌条に沿ってスライドする複数のスライド装置に、そのスライド装置の移動方向と交差する方向に回動する無限軌道帯を備えた重量物送り装置を水平旋回可能に支持したことを特徴とする重量物搭載装置。
【請求項2】
前記重量物送り装置における無限軌道帯の回動/停止を切換え可能にしたことを特徴とする請求項1記載の重量物搭載装置。
【請求項3】
前記重量物送り装置のその機台に水平旋回用の中心凸部を下向きに突設し、該中心凸部をスライド装置の支持台に凹設した円柱状凹部に水密状に嵌挿すると共に、前記機台に、前記円柱状凹部回りの支持台上面に当接する荷重受け面を設け、前記中心凸部の底部と円柱状凹部との間に油圧供給してその油圧で支持台の上面に対する前記荷重受け面の水平旋回時の摩擦抵抗を小さくする浮上力を付与することを特徴とする請求項1または2記載の重量物搭載装置。
【請求項4】
前記スライド装置は油室に作動油を圧送して下側のフリーピストンを介して設けた合成樹脂製の滑走部材を移動用軌条方向へ突出する構成とされ、その油室と前記中心凸部の底面と円柱状凹部との間とを連絡し、該油室への油圧供給と、前記中心凸部の底面と円柱状凹部との間への油圧供給を同調していることを特徴とする請求項3記載の重量物搭載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−9474(P2007−9474A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189718(P2005−189718)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(390032001)株式会社大滝油圧 (9)
【Fターム(参考)】