説明

重量計量装置

【課題】軸状ピン型ロードセルで計量物の重量を測定する重量計量装置において、計量精度と耐久性を向上する。
【解決手段】
荷台4と車体3の間に介在する計量ユニット7F,7Rはぞれぞれ軸状ピン型ロードセル13を備える。荷台側金具12の保持穴12aと車体側金具11の保持穴11cで軸状ピン型ロードセル13が保持される。複数の計量ユニット7F,7Rのうちの少なくとも1つについて、荷台側金具12及び車体側金具11のうちの少なくとも一方の保持穴12a,11cを長穴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重量計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計量物が積載される積載部と基部との間に複数個のロードセルを介在させた重量計量装置であって、軸線が水平方向に延びる姿勢で配置された円柱状の軸状ピン型ロードセルで積載部側の金具と基部側の金具を連結したものが知られている。この構造は、高さ方向の寸法を抑制できることから、塵芥収集車等の車両における車載重量計量装置としても使用されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
軸状ピン型ロードセルの軸状弾性体(円柱状)と金具の保持穴(丸穴)は隙間を確保して組み立てられる。この隙間が大きい場合、例えば車載用であると車両の走行時の荷台や荷箱の上下振動により衝撃荷重が軸状ピン型ロードセルの軸状弾性体に作用し、耐久性の面で問題がある。一方、この隙間が小さい場合、計量物の重量による積載部(荷台や荷箱)の変形、基部(車体)の捩れ、基台と積載部の熱膨張の相違等の原因による積載部と基部の相対的変位を吸収できず、軸状ピン型ロードセルの軸状弾性体に大きな横荷重が作用し、計量誤差が大きくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−299847号公報
【特許文献2】特開2007−139511号公報
【特許文献3】特開2009−35426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸線が水平方向に延びる姿勢で配置された複数個の軸状ピン型ロードセルで計量物の重量を測定する重量計量装置において、上下振動が作用する使用環境下での耐久性を確保しつつ、積載部と基部の相対的変位を吸収することにより計量精度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、計量物が積載される積載部と、この積載部を支持する基部との間に介在し、軸線が水平方向に延びる姿勢で配置された軸状ピン型ロードセルをそれぞれ含む複数の計量部を備え、個々の前記計量部は、前記積載部に固定された積載台側金具と、前記基部に固定された基部側金具とを備え、前記軸状ピン型ロードセルの両端側は前記積載部側金具及び前記基部側金具のうちの一方に設けられた保持穴で支持され、前記軸状ピン型ロードセルの中央側は前記積載部側金具及び前記基部側金具のうちの他方に設けられた保持穴で支持され、前記複数の計量部のうちの少なくともいずれか1つでは、前記積載部側金具及び前記基部側金具のうちの少なくとも一方の前記保持穴を長穴としていることを特徴とする、重量計量装置を提供する。
【0007】
例えば、前記軸状ピン型ロードセルの前記軸線が互いに平行に延び、かつ前記軸線と直交する水平方向に並ぶように配置された前記計量部の対を含み、前記対を構成する前記計量部のうちの一方において、前記積載部側金具及び前記基部側金具のうちの少なくとも一方の前記保持穴を前記長穴としている。
【0008】
具体的には、前記長穴とした前記保持穴は、前記軸状ピン型ロードセルの前記軸線に対して直交し、かつ水平方向に延びる直線状の下側穴壁と、この下側穴壁の上方に位置する上側穴壁と、前記下側穴壁と前記上側穴壁の両端をそれぞれ連結する前側穴壁及び後側穴壁とを備える。
【0009】
より具体的には、上記下側及び上側穴壁の長さは、前記軸状ピン型ロードセルの直径の0.04倍以上0.2倍以下であり、前記軸状ピン型ロードセルと前記上側又は上側穴壁との間の隙間は、前記軸状ピン型ロードセルの前記直径の0.001倍以上0.02倍以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重量計量装置では、積載部と基部の間に介在する複数の計量部のうち少なくとも1つにおいて、積載部側金具及び基部側金具のうちの少なくとも一方について軸状ピン型ロードセルを保持するための保持穴を長穴としている。そのため、上下振動が作用する使用環境下での耐久性を確保しつつ、積載部と基部の相対的変位を吸収することにより計量精度を向上できる。具体的には、長穴の前側穴壁及び後側穴壁と軸状ピン型ロードセルとの間に十分な隙間が確保されるので、積載部の変形、基部の捻れ、基台と積載部の熱膨張の相違等による積載部と基部の相対的変位が吸収され、大きな横荷重が軸状ピン型ロードセルに作用しない。その結果、計量精度が向上する。また、長穴で支持された軸状ピン型ロードセルと、長穴の上側穴壁又は下側穴壁との間の隙間は組付に必要な最小限に設定されるので、計量物を積載した積載部の上下振動による過大な衝撃荷重が軸状ピン型ロードセルに作用せず、耐久性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかる車載重量計量装置を備える車両の模式的な側面図。
【図2】本発明の実施形態にかかる車載重量計量装置を備える車両の模式的な平面図。
【図3】計量ユニットの配置を示す模式的な斜視図。
【図4】車体、荷台、及び計量ユニットの模式的な側面図。
【図5】図4のV−V線での断面図。
【図6A】計量ユニット(車体側金具が丸穴で荷台側金具が長穴)の模式的な斜視図。
【図6B】計量ユニット(車体側金具が長穴で荷台側金具が丸穴)の模式的な側面図。
【図6C】計量ユニット(車体側金具及び荷台側金具がともに長穴)の模式的な側面図。
【図7】計量ユニット(車体側金具及び荷台側金具がともに丸穴)の模式的な斜視図。
【図8】軸状ピン型ロードセルと長穴の関係を示す模式的な部分拡大側面図。
【図9】横荷重を説明するための側面図。
【図10】軸状ピン型ロードセルの側面図。
【図11】図10のXI−XI線の部分拡大断面図。
【図12】変形例における計量ユニットの配置を示す模式的な斜視図。
【図13】他の変形例における計量ユニットの配置を示す模式的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2は、本発明を適用した車載重量計量装置1を備える車両2を示す。車両2の車体(基部)3上には計量物が積載される荷台(積載部)4が配置されている(荷台4の上又は荷台4に代えて荷箱5が配置されていてもよい)。車両2の種類は、例えば塵芥収集車、汚泥吸引等であるが特に限定されない。また、ダンプ機構を備えるものでもよい。
【0013】
図3から図5を併せて参照すると、荷台4と、荷台4を支持する車体3との間には、本実施形態では合計4個の計量ユニット(計量部)7F,7Rが介在している。具体的には、車体3のフロント側には車幅方向(左右方向)に1列に並ぶように2個の計量ユニット7F,7Fが配置され、車体3のリア側にも車幅方向に1列に並ぶように2個の計量ユニット7R,7Rが配置されている。
【0014】
個々の計量ユニット7F,7Rは、車体側金具11、荷台側金具12、及び軸状ピン型ロードセル13を備える。
【0015】
図6A〜図7に示すように、車体側金具11は、車体3の上面に固定された座部11aと、この座部11aの両端から上向きに平行に延びる一対の板状の支持部11b,11bとを備える。個々の支持部11bには厚み方向に貫通すように保持穴11cが設けられている。荷台側金具12は上部が荷台4の下面に固定された板状であり、厚み方向に貫通するように保持穴12aが設けられている。荷台側金具12は車体側金具11の一対の支持部11b,11bの間に配置されている。軸状ピン型ロードセル13が備える全体として円柱状の軸状弾性体14は、車体側金具11の2個の保持穴11c,11cと荷台側金具12の1個の保持穴12aを貫通するように配置されている。軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14は、軸線γが水平方向かつ車幅に延びる姿勢で保持穴11c,11cと保持穴12aに保持されている。具体的には、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14はその両端付近がそれぞれ車体側金具11の保持穴11c,11cにより保持され、長さ方向(軸線γ方向)の中央付近が荷台側金具12の保持穴12aにより保持されている。
【0016】
軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体を軸線γが水平方向に延びる姿勢で保持する保持穴を有する限り、個々の計量ユニット7F,7Rの車体側金具11及び荷台側金具12の具体的な構造は図示のものに限定されない。例えば、図示の車体側金具11の座部11aを荷台4の下面に固定して荷台側金具として使用し、図示の荷台側金具12の下端側を車体3の上面に固定して車体側金具として使用してもよい。
【0017】
図10及び図11を併せて参照すると、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14には、それぞれ軸線γと直交する方向に対向する断面円形の凹部15A〜15Dの対を設け、凹部15A,15Bとの間、及び凹部15C,15Dとの間にそれぞれ比較的薄厚の円板状として軸線γに対して直交する方向の断面積を減少させた起歪部16A,16Bを設けている。起歪部16A,16Bは、一方が車体側金具11の一方の支持部11bと荷台側金具12の間に位置し、他方が車体側金具11の他方の支持部11bと荷台側金具12の間に位置している。起歪部16A,16Bは荷台側金具12と車体側金具11から作用する荷重Fv(計量物の重量に対応する)により適切なせん断歪みが発生するような形状に設計されている。個々の起歪部16A,16Bの両面には歪みゲージ17が貼り付けられている。これらの歪みゲージ17でホイーストンブリッジ回路を構成して荷重Fvに比例した電気信号が得られるようにしている。軸状弾性体14が円柱状であり、かつ荷台側金具12と車体側金具11から作用する荷重が検出可能である限り、軸状ピン型ロードセル13の具体的な構造は特に限定されない。
【0018】
図3に最も明瞭に示すように、4個の計量ユニット7F,7Rはいずれも、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14の軸線γが車幅方向(左右方向)に延びるように配置されている。つまり、4個の計量ユニット7F,7Rは、軸状ピン型ロードセル13の軸線γが互いに平行に延びるように配置されている。
【0019】
図3、図4、及び図6Aを参照すると、フロント側の計量ユニット7Fでは、車体側金具11の保持穴11cを丸穴20とする一方、荷台側金具12の保持穴12aを長穴21としている。保持穴11c(丸穴20)の穴径は、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14を挿通可能となるように軸状弾性体14の直径D(図8参照)よりも僅かに大きく設定している。
【0020】
図8を参照すると、荷台側金具12に形成された保持穴12a(長穴21)は、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14の軸線γに対して直交し、かつ水平方向に延びる直線状の下側穴壁22と、この下側穴壁22の上方に位置して下側穴壁22と平行に水平方向に延びる直線状の上側穴壁23とを備える。また、保持穴12a(長穴21)は、下側穴壁22と上側穴壁23の両端をそれぞれ連結する半円弧状の前側穴壁24と後側穴壁25とを備える。
【0021】
図8に最も明瞭に示すように、保持穴12a(長穴21)に挿通された軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14は上側穴壁23を支持する。下側穴壁22及び上側穴壁23の長さαは、軸状弾性体14と前側及び後側穴壁24,25との間に十分な水平方向隙間βが確保されるように設定されている。
【0022】
例えば、下側穴壁22及び上側穴壁23の長さαは、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14の直径Dの0.04倍以上0.2倍以下の範囲で設定される。直線状の下側穴壁22及び上側穴壁23の長さαは、想定される荷台4の撓みや熱膨張の差や、捩れによって生じる車体側金具11と荷台側金具12の相対変位より大きく設定する必要がある。長さαが相対変位より短い場合、相対変位を吸収できず十分な機能を発揮できない。また、相対変位は一般的にプラス側及びマイナス側に動く可能性があることから、軸状ピン型ロードセル13の中心は長穴21の中心、すなわち長さαの直線状の下側穴壁22及び上側穴壁23の中央に設定する必要がある。一方、長さαは相対変位より大きいという条件は満たすが十分に大きくない場合、計量ユニット7F,7Rの組み立て時に位置決めに時間を要し、組み立て作業効率が落ちる。一般的に大型構造物に組み込む軸状ピン型ロードセル13の直径Dは大きく、小型構造物に対しては軸状ピン型ロードセル13の直径Dも小さく、長さαも構造物の大きさに比例する傾向があるため、直径Dに対する長さαの比率α/Dは概ね一定範囲に収まる。機能性や組み立て性を考慮すると比率α/Dの下限値は例えば0.04に設定される。比率α/Dが大きくなると、組み立て性は良くなるが、軸受け寸法が大型化し、加工費用も上昇することから、比率α/Dの上限値は例えば0.2に設定される。
【0023】
前述のように軸状弾性体14は上側穴壁23を支持するが、この軸状弾性体14の下端と下側穴壁22との間の垂直方向隙間εは、保持穴12a(長穴21)へ軸状弾性体14が挿入可能となる範囲で可能な限り狭く設定されている。例えば、この垂直方向隙間εは、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14の直径Dの0.001倍以上0.02倍以下の範囲に設定される。この垂直方向隙間εは重量計量装置が使用される環境によって異なり、上下振動や、積載部(本実施形態では荷台4)が浮き上がる荷重条件がある場合は小さく設定し、積載部の動的挙動による衝撃荷重を防ぐ必要がある。静的な使用環境では、組み立て性を考慮して垂直方向隙間εは大きく設定することが好ましい。軸状ピン型ロードセル13の直径Dに対する垂直方向隙間εの比率ε/Dも、前述の比率α/Dと同様、構造物の大小にかかわらず概ね、一定の範囲に収まり、比率ε/Dが小さ過ぎると組み立てが困難になるため下限値は例えば0.001に設定され、動的挙動を抑えるため上限値が例えば0.02に設定される。
【0024】
図3、図4、図7を参照すると、リア側の計量ユニット7Rでは、車体側金具11の保持穴11cと荷台側金具12の保持穴12aはいずれも丸穴20としている。保持穴11cと保持穴12a(丸穴20)の穴径は、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14を挿通可能となるように軸状弾性体14の直径Dよりも僅かに大きく設定している。
【0025】
図2及び図3を参照すると、車体3の右側ではフロント側の計量ユニット7Fとリア側の計量ユニット7Rが車体3の前後方向に対向する対を構成し、車体3の左側でもフロント側の計量ユニット7Fとリア側の計量ユニット7Rが同様の対を構成する。そして、個々の対を構成する2のつ計量ユニット7F,7Rのうち、一方(フロント側)の計量ユニット7Fでは車体側金具11の保持穴11cは丸穴20であるが荷台側金具12の保持穴12aは長穴21とし、他方(リア側)の計量ユニット7Rでは車体側金具11の保持穴11cと荷台側金具12の保持穴12aをいずれも丸孔20としている。
【0026】
以上の構成を有する本実施形態の車載重量計量装置1の利点について以下に説明する。
【0027】
図9は、仮にフロント側とリア側の計量ユニット7F,7Rのいずれについても車体側金具11及び荷台側金具12の保持穴11c,12aがすべて丸穴20とした例を示す。荷台4には計量物の荷重Fにより撓みが生じる場合があり、この場合、フロント側とリア側の計量ユニット7F,7Rの荷台側金具12の保持穴12a(軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14が支持されている)の間の距離は距離Lから距離L’に延びる。一方、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14は車体側金具11の保持穴11cにも支持されており、この車体側金具11の保持穴11cについてはフロント側とリア側の計量ユニット7F,7R間の距離の変化は生じない。つまり、計量物の荷重Fによる荷台4の撓みにより、車体側金具11(保持穴11c)と荷台側金具12(保持穴12a)との間で、水平方向の相対的な変位が生じる。このような車体側金具11(保持穴11c)と荷台側金具12(保持穴12a)との間の水平方向の相対的な変位は、温度上昇に対する車体3と荷台4の熱膨張量の相違や、車体3の捩れによっても生じる。そして、保持穴11c,12aがすべて丸穴20であって保持穴11c,12aと軸状弾性体14の間の隙間が小さいと、この水平方向の相対的な変位に対して軸状弾性体14の水平方向の移動が拘束されるので、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14には軸線γに対して直交する方向(軸直角方向)に大きな横荷重Fhが作用することになる。この横荷重Fhは計量誤差の原因となる。
【0028】
これに対し、本実施形態ではフロント側の計量ユニット7Fについては荷台側金具12の保持穴12aを長穴21とし、軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14と前側及び後側穴壁24,25との間に十分な水平方向隙間βを確保しており、軸状弾性体14は長穴21の上側穴壁23に接触して水平方向に摺動可能である。従って、荷台4の撓み等による車体側金具11(保持穴11c)と荷台側金具12(保持穴12a)との間の水平方向の相対的な変位は、計量ユニット7Fの荷台側金具12の保持穴12a(長穴21)内で軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14が水平方向に移動することで吸収される。言い換えれば、荷台4の撓み等による車体側金具11(保持穴11c)と荷台側金具12(保持穴12a)との間の水平方向の相対的な変位に対し、軸状弾性体14の水平方向の移動が拘束されないので計量誤差の原因となる横荷重Fhが大幅に低減される。長穴21の上側穴壁23に接触して水平方向に摺動する軸状弾性体14に対し、摩擦による横荷重Fhが作用するが、この横荷重は図9の例のように軸状弾性体14の水平方向の移動が拘束される場合の横荷重Fhと比較するとはるかに小さい。
【0029】
以上のように、長穴21の前側穴壁24及び後側穴壁25と軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14との間に十分な水平方向隙間βが確保されるので、荷台4の変形、車体3の捻れ、車体3と荷台4の熱膨張の相違等による荷台4と車体3の相対的変位が吸収され、大きな横荷重Fhが軸状ピン型ロードセル13に作用しない。その結果、計量精度が向上する。
【0030】
図9を参照すれば明らかなように、車体3の前後方向(軸線γと直交する方向)に対をなす計量ユニット7F,7Rの軸状ピン型ロードセル13に作用する横荷重Fhは内力として釣り合い状態となる。従って、前後方向で対をなす計量ユニット7F,7Rの両方について保持穴12aを長穴21とするよりも、計量ユニット7F,7Rのいずれか一方のみについて保持穴12aを長穴21とすることが好ましい。
【0031】
次に、長穴21の上側穴壁23に接触して水平方向に摺動する軸状弾性体14に作用する横荷重Fhは、摩擦の法則により以下の式のように表され、軸状弾性体14に作用する垂直力に比例する。
【0032】
【数1】

【0033】
塵芥収集車等の車両2の荷台4は一般に重心が後方にあるため、前後方向に対をなす計量ユニット7F,7Rを比較すると、フロント側の計量ユニット7Fが備える軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14に作用する垂直力Wが小さい。
【0034】
以上の点を考慮し、本実施形態では、前後方向に対をなす計量ユニット7F,7Rのうち垂直力Wの小さいフロント側の計量ユニット7Fのみについて保持穴12aを長穴21とし、計量精度をより一層向上させている。また、リア側の計量ユニット7Rでは両方の保持穴11c,12aを丸穴20とすることで、車両2の発進時、停止時、又は走行中における荷台4の車体3に対する前後方向の移動を規制している。
【0035】
本実施形態では、図6Aに示すように荷台側金具12の保持穴12aのみを長穴21としている。しかし、荷台側金具12の保持穴12aと車体側金具11の保持穴11cのいずれか一方又は両方を長穴とすれば前述した車体側金具11(保持穴11c)と荷台側金具12(保持穴12a)との間の相対的変位を吸収する効果が得られる。
【0036】
例えば、図6Bに示すように、本実施形態とは逆に、車体側金具11の保持穴11cを長穴21とし荷台側金具12の保持穴12aを丸穴20としてもよい。
【0037】
また、図6Cに示すように、車体側金具11の保持穴11cと荷台側金具12の保持穴12aの両方を長穴21としてもよい。この場合、車体側金具11(保持穴11c)と荷台側金具12(保持穴12a)との間で、水平方向の相対的な変位に対して軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14は回転可能となる。つまり、長穴21の上側穴壁23に対する軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14の水平方向の移動は、摺動ではなく転がりとなる。転がり摩擦力はすべり摩擦力(前述の式参照)よりも相当小さくなるので、横荷重Fhをさらに低減してより一層計量精度を向上できる。
【0038】
長穴21の上側穴壁23を支持する軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14の下端と、長穴21の下側穴壁22との間の垂直方向隙間εは組付に必要な最小限に設定されるので、計量物を積載した荷台4の上下振動による過大な衝撃荷重が軸状ピン型ロードセル13の軸状弾性体14に作用しない。その結果、耐久性も確保できる。
【0039】
以上のように、本実施形態の車載重量計量装置1では、荷台4と車体3の間に介在する複数の計量ユニット7F,7Rのうち少なくとも1つにおいて、荷台側金具12及び車体側金具11のうちの少なくとも一方について軸状ピン型ロードセル13を保持するための保持穴11c,12aを長穴21とすることで、上下振動に対する耐久性を確保しつつ、計量精度の向上を実現している。
【0040】
図12及び図13は、本実施形態の変形例を示す。
【0041】
図12に示す変形例の車載重量計量装置1は、車体3のフロント側に1個の計量ユニット7Fを備え、リア側に2個(1列)の計量ユニット7Rを備える。これら3個の計量ユニット7F,7Rのうち、フロント側の1個の計量ユニット7Fについて荷台側金具12の保持穴12aを長穴21として車体側金具11の保持穴11cを丸穴20とする一方、リア側の2個の計量ユニット7については荷台側金具12及び車体側金具11の保持穴11c,12aを丸穴20としている。
【0042】
図13に示す他の変形例では、車体3のフロント側に2個(1列)の計量ユニット7F,7Fを備え、リア側に4個(2列)の計量ユニット7R,7R,7R’,7R’を備える。フロント側の2個の計量ユニット7F,7Fと、リア側前列の2個の計量ユニット7R,7Rについて荷台側金具12の保持穴12aを長穴21、車体側金具11の保持穴11cを丸穴20としている。リア側後列の2個の計量ユニット7R’,7R’については荷台側金具12及び車体側金具11の保持穴11c,12aを丸穴20としている。
【0043】
図12及び図13の変形例の場合も、車体3の前後方向(軸状ピン型ロードセル13の軸線γに対して直交し、かつ水平な方向)に対向する計量ユニットの対のうちの一方で荷台側金具12及び車体側金具11の保持穴12a,11cの少なくとも一方を長穴21としているので、前述の実施形態と同様、荷台4の上下振動による衝撃荷重防止による耐久性を確保しつつ、荷台4と車体3の相対変位を吸収することにより計量精度を向上できる。
【0044】
車載重量計量装置を例に本発明を説明したが、本発明は車載重量計量装置に限定されず他の用途の重量計量装置にも適用できる。例えば、荷物集配場等において荷物の重量を計量のための重量計量装置や一般的な台計にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 車載重量計量装置
2 車両
3 車体
4 荷台
5 荷箱
7F,7R 計量ユニット
11 車体側金具
11a 座部
11b 支持部
11c 保持穴
12 荷台側金具
12a 保持穴
13 軸状ピン型ロードセル
14 軸状弾性体
15A〜15D 凹部
16A,16B 起歪部
17 歪みゲージ
20 丸穴
21 長穴
22 下側穴壁
23 上側穴壁
24 前側穴壁
25 後側穴壁
γ 軸線
D 直径
α 長さ
β 水平方向隙間
ε 垂直方向隙間
L,L’ 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量物が積載される積載部と、この積載部を支持する基部との間に介在し、軸線が水平方向に延びる姿勢で配置された軸状ピン型ロードセルをそれぞれ含む複数の計量部を備え、
個々の前記計量部は、前記積載部に固定された積載台側金具と、前記基部に固定された基部側金具とを備え、前記軸状ピン型ロードセルの両端側は前記積載部側金具及び前記基部側金具のうちの一方に設けられた保持穴で支持され、前記軸状ピン型ロードセルの中央側は前記積載部側金具及び前記基部側金具のうちの他方に設けられた保持穴で支持され、
前記複数の計量部のうちの少なくともいずれか1つでは、前記積載部側金具及び前記基部側金具のうちの少なくとも一方の前記保持穴を長穴としていることを特徴とする、重量計量装置。
【請求項2】
前記軸状ピン型ロードセルの前記軸線が互いに平行に延び、かつ前記軸線と直交する水平方向に並ぶように配置された前記計量部の対を含み、
前記対を構成する前記計量部のうちの一方において、前記積載部側金具及び前記基部側金具のうちの少なくとも一方の前記保持穴を前記長穴としていることを特徴とする、請求項1に記載の重量計量装置。
【請求項3】
前記長穴とした前記保持穴は、前記軸状ピン型ロードセルの前記軸線に対して直交し、かつ水平方向に延びる直線状の下側穴壁と、この下側穴壁の上方に位置する上側穴壁と、前記下側穴壁と前記上側穴壁の両端をそれぞれ連結する前側穴壁及び後側穴壁とを備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の重量計量装置。
【請求項4】
上記下側及び上側穴壁の長さは、前記軸状ピン型ロードセルの直径の0.04倍以上0.2倍以下であり、
前記軸状ピン型ロードセルと前記上側又は上側穴壁との間の隙間は、前記軸状ピン型ロードセルの前記直径の0.001倍以上0.02倍以下であることを特徴とする、請求項2に記載の重量計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−78320(P2012−78320A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226595(P2010−226595)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(390000011)JFEアドバンテック株式会社 (32)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)