説明

重量計

【課題】重量計の耐久性や安定性を向上させ、消費電力を低減するとともに測定精度を向上させる。
【解決手段】検出部10は、測定台上の対象物の重量に応じた検出電圧Vを出力する。第1AD変換部41は、検出電圧VをAD変換することでデータd1を生成する。第2AD変換部42は、検出電圧VをAD変換することでデータd2を生成する。第1AD変換部41は第2AD変換部42と比較して消費電力が小さく、且つ、第2AD変換部42は第1AD変換部41と比較してAD変換の精度が高い。CPU20は、待機状態において、第2AD変換部42の動作を停止させ、且つ、測定台に対象物が載ったことをデータd1に基づいて検知すると、動作状態を測定状態に移行させ、第1AD変換部41の動作を停止させ、且つ、第2AD変換部42を動作させて、対象物の重量の測定値をデータd2に基づいて出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の重量の計測を自動的に開始する重量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の体重計には、人が測定台に載ったことを検知して、体重の測定を開始するものが知られている。例えば、特許文献1には、測定台の下に機械的なスイッチを設け、このスイッチがオンになったことを検知して体重の測定を開始する体重計が開示されている。この種の体重計では、ユーザーが体重計の電源スイッチを操作する必要がないので利便性を向上させることができる。
【特許文献1】USP4326596
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、機械的なスイッチは、オン・オフが繰り返されると、磨耗などによって故障する可能性が高いので、体重計の耐久性及び信頼性が損なわれるといった問題があった。
また、ユーザーが足を体重計の端部に載せた場合にも、体重計がひっくり返らず、安定していることが望ましいところ、機械的なスイッチを体重計に内蔵すると体重計が厚くなり、安定性が損なわれるといった問題があった。
くわえて、体重計が電池で動作することに鑑みれば、消費電力が小さく且つ、測定精度が高いことが望ましい。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、重量を計測する重量計において、耐久性、信頼性及び安定性を向上させ、消費電力が小さく且つ測定精度を向上させることを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明は、測定台を備え、動作状態として、前記測定台の上に対象物が載せられたことを検知する待機状態と、前記対象物の重量を測定する測定状態とを切り替え可能な重量計であって、前記測定台上の前記対象物の重量に応じた大きさの検出電圧を出力する検出部と、前記検出電圧をAD変換した結果に基づいて第1データを生成する第1データ生成部と、前記検出電圧をAD変換した結果に基づいて第2データを生成する第2データ生成部と、前記待機状態において、前記第2データ生成部の動作を停止させ、且つ、前記第1データを監視して前記測定台の上に前記対象物が載ったことを検知すると、動作状態を前記待機状態から前記測定状態に移行させ、前記第1データ生成部の動作を停止させ、且つ、前記第2データ生成部を動作させて、前記対象物の重量の測定結果を前記第2データに基づいて出力する制御部とを備え、前記第1データ生成部は前記第2データ生成部と比較して消費電力が小さく、且つ、前記第2データ生成部は前記第1データ生成部と比較してAD変換の精度が高い。
【0005】
本発明においては、検出電圧をAD変換した結果から第1データ生成部が生成した第1データに基づいて測定台上の対象物の有無が検知されるから、特許文献1のような機械的なスイッチは不要である。したがって、重量計の耐久性や信頼性や安定性を向上させることが可能である。また、第2データ生成部と比較して消費電力が小さい第1データ生成部の生成した第1データに基づいて、測定台の上に対象物が載ったか否かが検知され、且つ、第1データ生成部と比較してAD変換の精度が高い第2データ生成部の生成した第2データに基づいて測定の結果が出力される。したがって、測定台上の対象物の検知と重量の測定値の算定とが第1データ生成部の生成した第1データのみに基づいて実行される構成と比較して測定の精度が向上し、対象物の検知と測定値の算定とが第2データ生成部の生成した第2データのみに基づいて実行される構成と比較して消費電力が低減される。
【0006】
本発明の好適な態様において、前記制御部は、前記待機状態において、前記第1データ生成部を第1周期で間欠的に動作させ、前記第1データ生成部が動作する各第1期間で得られた前記第1データと第1基準データとを比較し、前記第1データが前記第1基準データを超えた場合に、前記測定台の上に前記対象物が載ったことを検知する。以上の態様においては、第1データ生成部が間欠的に動作するから、第1データ生成部が継続的に動作する構成と比較して消費電力を低減することが可能である。
【0007】
さらに好適な態様に係る重量計は、前記測定台に前記対象物が載っていない状態における前記第2データを零点データとして記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記待機状態において、前記第1周期よりも長い第2周期で前記第2データ生成部を間欠的に動作させ、前記第2データ生成部が動作する各第2期間で得られた前記第2データを前記零点データとして前記記憶部に書き込んで前記記憶部の記憶内容を更新し、前記測定状態において、前記記憶部から前記零点データを読み出し、当該零点データと前記第2データとの差分を算出し、算出結果を前記対象物の重量の測定結果として出力する。以上の態様においては、第2データが生成した第2データに基づいて零点データが周期的に更新されるから、例えば検出部の特性の経時的な変化を補償して正確な測定値を算定することが可能である。
【0008】
本発明に係る重量計において、前記第2期間を前記第1周期よりも長い時間長に設定すれば、零点データを正確に取得することができる。また、前記第2期間において前記第1データ生成部の動作を停止させる構成によれば、測定台上の対象物の検知と零点データの生成および更新とが択一的に実行される(すなわち対象物の検知と零点データの生成とを並列に実行する必要がない)から、制御部の構成や処理が簡素化されるという利点がある。同様の効果は、前記第2期間を前記第1周期よりも短い時間長に設定し、前記制御部が、前記待機状態において前記第1期間と前記第2期間とが重ならないように前記第1データ生成部と前記第2データ生成部との動作を制御する構成によっても実現される。
【0009】
本発明の好適な態様において、前記制御部は、前記待機状態の前記第2期間において、前記第2データと第2基準データとを比較し、前記第2データが前記第2基準データ以下の場合に前記第2データを前記零点データとして前記記憶部に書き込み、前記第2データが前記第2基準データを超えた場合には、動作状態を前記待機状態から前記測定状態に移行させ、前記第1データ生成部の動作を停止させ、且つ前記第2データ生成部の動作を継続させることを特徴とする。以上の態様においては、第2データが第2基準データを超えた場合に動作状態が待機状態から測定状態に移行するから、第2期間内においても測定台上の対象物を検知することが可能である。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記制御部は、前記測定状態において前記第2データを監視して、前記測定台から前記対象物が取り除かれたことを検知すると、動作状態を前記測定状態から前記待機状態に移行させ、前記第2データ生成部の動作を停止させ、且つ前記第1データ生成部を動作させる。以上の態様においては、測定台から対象物が取り除かれたことが第2データに基づいて検知されるから、測定状態において第1データ生成部を動作させる必要がない。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記第1データ生成部は、前記検出電圧をデジタルデータに変換する第1AD変換部を含み、前記第1AD変換部が生成したN個(Nは2以上の自然数)のデジタルデータを平均することで前記第1データを生成し、前記第2データ生成部は、前記検出電圧をデジタルデータに変換する第2AD変換部を含み、前記第2AD変換部が生成したM個(Mは2以上の自然数)のデジタルデータを平均することで前記第2データを生成する。以上の態様において、例えば、第1AD変換部と第2AD変換部とでAD変換の精度が同等であれば、第2データの生成に使用されるデジタルデータの個数Mを、第1データの生成に使用されるデジタルデータの個数Nよりも多く設定する(M>N)ことで、第1データ生成部の消費電力を第2データ生成部よりも小さくすることができ、また、第2データ生成部のAD変換の精度を第1データ生成部よりも高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る重量計のブロック図である。重量計100は、測定台(図示略)上の対象物の重量を測定する計測器(例えば人間の体重を計測する体重計)であり、図1に示すように、検出部10と、CPU(Central Processing Unit)20と、記憶部22と、出力部24と、電源回路30と、第1AD(Analog to Digital)変換部41と、第2AD変換部42とを具備する。第1AD変換部41は、CPU20に内蔵される。ただし、第1AD変換部41をCPU20とは別体の回路としてもよい。
【0013】
検出部10は、測定台上の対象物の重量に応じた大きさの検出電圧V(アナログ信号)を生成する。図1に示すように、本形態の検出部10は、ブリッジ回路12と差動増幅器14とを含む。ブリッジ回路12は、高位側電源と低位側電源との間に配置された複数のブリッジ抵抗素子で構成され、測定台に作用する荷重に応じた大きさの電圧を出力する。差動増幅器14は、ブリッジ回路12の出力電圧を増幅することで検出電圧Vを生成して出力する。
【0014】
CPU20は、プログラムを実行することで重量計100の各部を制御する。記憶部22は、CPU20が実行するプログラムやCPU20が利用する各種のデータを記憶する手段(例えば不揮発性のメモリ)である。出力部24は、対象物の重量の測定値を出力する。例えば、測定値を画像として表示する表示装置や測定値を用紙に印刷する印刷装置、あるいは測定値を音声で出力する放音装置が出力部24として利用される。電源回路30は、CPU20からの指示に応じて検出部10や第2AD変換部42に電源を供給する。
【0015】
第1AD変換部41は、検出部10から出力される検出電圧VをAD変換することでデジタルのデータd1を順次に生成する。同様に、第2AD変換部42は、検出部10から出力される検出電圧VをAD変換することでデジタルのデータd2を順次に生成する。第2AD変換部42が生成した複数のデータd2はCPU20に供給される。
【0016】
第1AD変換部41と第2AD変換部42とはAD変換の精度や消費電力が相違する。さらに詳述すると、第2AD変換部42は、第1AD変換部41と比較してAD変換の精度(分解能)が高く、且つ、第1AD変換部41は、第2AD変換部42と比較して消費電力が小さい。例えば、逐次比較型のAD変換器が第1AD変換部41として利用され、二重積分型や四重積分型のAD変換器が第2AD変換部42として利用される。
【0017】
重量計100の動作状態は、待機状態と測定状態とに区分される。待機状態においては、測定台上に対象物が載ったか否かを判定する処理(以下「ステップオン検知処理」という)と、測定値がゼロとなる検出電圧Vの電圧値を設定する処理(以下「零点調整処理」という)とが周期的に実行される。待機状態において、測定台上の対象物がステップオン検知処理で検知されると、重量計100の動作状態は測定状態に移行する。測定状態においては、零点調整処理で設定された零点電圧を基準として測定台上の対象物の重量が測定され、測定が完了した段階(対象物が測定台から取り除かれた段階)で重量計100の動作状態は待機状態に移行する。
【0018】
図2は、重量計100の動作を示すタイミングチャートである。図2においては、第1AD変換部41および第2AD変換部42の動作および停止のタイミングが図示されている。図2に示すように、待機状態において、CPU20は、所定の周期P2(例えば3秒)で間欠的に第2AD変換部42を動作させる。すなわち、第2AD変換部42は、周期P2毎に開始される所定長の期間(以下「動作期間」という)T2において、検出電圧Vを順次にAD変換することでM個のデータd2(図2のd2[1]〜d2[N])を生成する。CPU20は、第2AD変換部42が生成したM個のデータd2を利用して動作期間T2毎に零点調整処理を実行する。
【0019】
また、待機状態において、CPU20は、周期P2よりも短い周期P1(例えば1秒)で間欠的に第1AD変換部41を動作させる。すなわち、第1AD変換部41は、周期P1毎に開始される所定長の期間(以下「動作期間」という)T1において、検出電圧Vを順次にAD変換することでN個のデータd1(図2のd1[1]〜d1[N])を生成する。ただし、CPU20は、図2に示すように、第2AD変換部42の動作期間T2内においては第1AD変換部41の動作を停止させる。CPU20は、第1AD変換部41が生成したN個のデータd1を利用して動作期間T1毎にステップオン検知処理を実行する。
【0020】
一方、測定状態において、CPU20は、第1AD変換部41の動作を停止させたうえで第2AD変換部42を動作させる。測定状態において、第2AD変換部42は、動作期間T2と同様に、検出電圧VをAD変換することで順次にデータd2を生成する。CPU20は、第2AD変換部42が生成したM個のデータd2(d2[1]〜d2[M])に基づいて対象物の重量を算定するとともに測定値として出力部24に出力する。
【0021】
次に、図3は、CPU20の具体的な動作(記憶部22に格納されたプログラムの内容)を示すフローチャートである。図3の処理は、周期P1よりも充分に短い周期でタイマ割込が発生するたびに実行される割込処理である。
【0022】
CPU20は、まず、重量計100の動作状態が待機状態にあるか否かを判定する(ステップS1)。動作状態が待機状態にある場合、CPU20は、零点調整処理を実行するタイミング(動作期間T2の始点)が到来したか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2の結果が肯定である場合、CPU20は零点調整処理を実行する(ステップSA1〜ステップSA5)。
【0023】
一方、ステップS2の結果が否定である場合、CPU20は、ステップオン検知処理を実行するタイミング(動作期間T1の始点)が到来したか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3の結果が肯定である場合、CPU20はステップオン検知処理を実行する(ステップSB1〜ステップSB6)。ステップS3の結果が否定である場合、CPU20は図3の割込処理を終了する。
【0024】
零点調整処理を開始すると、CPU20は、電源回路30を制御して検出部10および第2AD変換部42に電力を供給することで、検出部10および第2AD変換部42を動作させる(ステップSA1)。電力の供給を受けて検出部10および第2AD変換部42が動作し始めると、CPU20は、第2AD変換部42が生成したM個のデータd2(d2[1]〜d2[M])を取得する(ステップSA2)。そして、CPU20は、M個のデータd2を平均することでデータD2を生成する(ステップSA3)。データD2は、測定台に作用する加重の大きさに応じた数値を示す。
【0025】
記憶部22には、測定台に対象物が載っていない状態(無負荷時)における検出電圧Vの電圧値を示すデータ(以下「零点データ」という)D0が格納されている。CPU20は、ステップSA3にて算定したデータD2を新たな零点データD0として記憶部22に格納することで記憶部22の内容(過去の零点データD0)を更新する(ステップSA4)。次いで、CPU20は、電源回路30からの給電を終了させることで検出部10および第2AD変換部42を停止させたうえで(ステップSA5)、図3の割込処理を終了する。
【0026】
一方、ステップS3の結果が肯定となることでステップオン検知処理を開始すると、CPU20は、電源回路30を制御することで検出部10に電源を供給するとともに第1AD変換部41を動作させる(ステップSB1)。次いで、CPU20は、第1AD変換部41が生成したN個のデータd1(d1[1]〜d1[N])を取得し(ステップSB2)、N個のデータd1の平均をデータD1として生成する(ステップSB3)。
【0027】
次いで、CPU20は、ステップSB3で算定したデータD1を所定の基準データDref1と比較し、データD1が基準データDref1を上回るか否かを判定する(ステップSB4)。基準データDref1は、重量計100による測定の対象に想定される重量の最小値を下回るように統計的または実験的に設定されたうえで記憶部22に格納される。したがって、対象物が測定台上に存在しない場合にはデータD1は基準データDref1を下回り、対象物が測定台上に存在する場合にはデータD1は基準データDref1を上回る。すなわち、ステップSB4は、測定台上に対象物が存在するか否かを判定する処理に相当する。
【0028】
ステップSB4の結果が肯定である場合(すなわち対象物が測定台上に載ったと判定される場合)、CPU20は、重量計100の動作状態を待機状態から測定状態に移行する(ステップSB5)。そして、CPU20は、検出部10および第1AD変換部41の動作を停止させたうえで(ステップSB6)、図3の割込処理を終了する。一方、ステップSB4の結果が否定である場合、CPU20は、ステップSB5およびステップSB6を経ずに割込処理を終了する。したがって、動作状態は待機状態に維持される。
【0029】
ステップSB5において動作状態が測定状態に設定されたうえで図3の割込処理が開始すると、ステップS1の判定の結果が否定となり、図4の測定処理(ステップSC1〜ステップSC8)が開始される。測定処理を開始すると、CPU20は、電源回路30を制御して検出部10および第2AD変換部42に電力を供給することで、検出部10および第2AD変換部42を動作させる(ステップSC1)。電力の供給を受けて検出部10および第2AD変換部42が動作し始めると、CPU20は、第2AD変換部42が生成したM個のデータd2(d2[1]〜d2[M])を取得し(ステップSC2)、M個のデータd2を平均することでデータD2を生成する(ステップSC3)。
【0030】
次いで、CPU20は、記憶部22に格納されている零点データD0(すなわち直前の零点調整処理による更新後の零点データD0)を、ステップSC3で算定したデータD2から減算することで測定値データDOUTを算定する(ステップSC4)。そして、CPU20は、測定値データDOUTを対象物の重量の測定値として出力部24に出力する(ステップSC5)。なお、データD2の算定に使用されるデータd2の個数がステップSA2(零点調整処理)とステップSC2(測定処理)とで相違してもよい。
【0031】
次いで、CPU20は、ステップSC3で算定したデータD2(または測定値データDOUT)が前述の基準データDref1を下回るか否かを判定する(ステップSC6)。ステップSC6の結果が肯定である場合、対象物が測定台から取り除かれたと判定できるから、CPU20は、重量計100の動作状態を測定状態から待機状態に移行させる(ステップSC7)。そして、CPU20は、電源回路30からの給電を終了させることで検出部10および第2AD変換部42の動作を停止させてから(ステップSC8)、割込処理を終了する。一方、ステップSC6の結果が否定である場合(すなわち対象物が測定台上に載っている場合)、CPU20は、第2AD変換部42が順次に出力する最新のM個のデータd2に応じた測定値の出力(ステップSC2〜SC5)を反復する。
【0032】
以上に説明したように、本形態においては、検出電圧Vから第1AD変換部41が生成したデータd1(D1)に基づいて対象物の有無が判定されるから、対象物の検知に機械的なスイッチは不要である。したがって、特許文献1の技術と比較して重量計100の耐久性や信頼性が向上するという利点がある。また、機械的なスイッチを配置する必要がない分だけ重量計100の厚さが低減されるから、重量計100の安定性を高めることができる。さらに、第1AD変換部41によるデータd1の生成と第2AD変換部42によるデータd2の生成とにひとつの検出部10が共用されるから、例えば、第1AD変換部41に入力される検出電圧と第2AD変換部42に入力される検出電圧とが別個の検出部で生成される重量計と比較して、重量計100の構成を簡素化することができる。
【0033】
前述のように、N個のデータd1を生成する第1AD変換部41と、N個のデータd1からデータD1を生成(ステップSB2およびステップSB3)するCPU20とによって、検出電圧VからデータD1(第1データ)を生成する第1データ生成部が構成される。同様に、M個のデータd2を生成する第2AD変換部42と、M個のデータd2からデータD2を生成(ステップSA2およびステップSA3、またはステップSC2およびステップSC3)するCPU20とによって、検出電圧VからデータD2(第2データ)を生成する第2データ生成部が構成される。第1データ生成部は第2データ生成部と比較して消費電力が小さく、第2データ生成部は第1データ生成部と比較してAD変換の精度が高い。
【0034】
ステップオン検知処理には、測定処理に使用される第2データ生成部と比較して消費電力が小さい第1データ生成部が利用されるから、例えば第2データ生成部の生成したデータD2に基づいてステップオン検知処理が実行される構成と比較して、重量計100における消費電力を削減することができる。一方、測定処理には、第1データ生成部と比較してAD変換の精度が高い第2データ生成部が利用されるから、例えば、第1データ生成部の生成したデータD1に基づいて測定処理が実行される構成と比較して、測定の精度を向上することができる。すなわち、本形態によれば、ステップオン検知処理に必要な電力の低減と測定処理における高精度な測定とを両立することが可能である。
【0035】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各形態において作用や機能が第1実施形態と同様の要素については、以上と同じ符号を付して各々に説明を適宜に省略する。
【0036】
図5は、第2実施形態に係る重量計100の動作を示すタイミングチャートである。図5に示すように、待機状態における第2AD変換部42の動作期間T2の時間長は、待機状態において第1AD変換部41を動作させる周期P1(ステップオン検知処理の周期)よりも短い。
【0037】
CPU20は、第1AD変換部41の動作期間T1と第2AD変換部42の動作期間T2とが重ならないように第1AD変換部41および第2AD変換部42の動作を制御する。さらに詳述すると、動作期間T2は、動作期間T1の終点から次の動作期間T1の始点までの期間内に設定される。したがって、第1実施形態と同様に、第1AD変換部41の動作期間T1では第2AD変換部42は停止し、第2AD変換部42の動作期間T2では第1AD変換部41は停止する。待機状態および測定状態の各々におけるCPU20の動作は第1実施形態(図3および図4)と同様である。
【0038】
以上のように、本形態においては、第2AD変換部42の動作期間T2の時間長が第1AD変換部41の動作の周期P1よりも短いから、待機状態において第1AD変換部41を恒常的に周期P1で動作させた場合であっても、第1AD変換部41と第2AD変換部42とを排他的に動作させることが可能である。すなわち、第2AD変換部42の動作期間T2内で第1AD変換部41の動作を停止させるといった第1実施形態の動作は不要となるから、CPU20による処理の負荷が軽減されるという利点がある。
【0039】
<C:第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態に係る重量計100の動作を示すタイミングチャートである。図6に示すように、動作状態が待機状態にある場合、CPU20は、周期P1で間欠的に第1AD変換部41を動作させるとともに、周期P1よりも長い周期P2で間欠的に第2AD変換部42を動作させる。第2AD変換部42の動作期間T2は周期P1よりも長く、動作期間T1の周期P1は動作期間T2の内外に拘わらず固定である。したがって、待機状態において、第1AD変換部41の複数の動作期間T1のなかには、第2AD変換部42の動作期間T2と重複するものがある。
【0040】
動作期間T2と重複しない動作期間T1や測定状態におけるCPU20の動作は第1実施形態と同様である。一方、待機状態において、第2AD変換部42の動作期間T2内で動作期間T1が開始すると、CPU20は、図3の零点調整処理(ステップSA1〜ステップSA5)とステップオン検知処理(ステップSB1〜ステップSB6)とを並列に実行する。
【0041】
零点調整処理の途中や直前において対象物が測定台に載ると、第2AD変換部42が生成するデータd2に対象物の重量が反映される場合がある。この場合にデータd2から生成される零点データD0は、無負荷時の検出電圧Vの電圧値を表さないから、測定処理における重量の測定値は本来の対象物の重量よりも小さい不正確な数値となる。そこで、本形態においては、動作期間T2内における動作期間T1のステップオン検知処理で対象物の存在が検知されると(ステップSB4:YES)、CPU20は、今回の零点調整処理で算定した零点データD0を記憶部22の内容に反映させずに破棄する。したがって、対象物の検知後の測定処理では、前回の零点調整処理で設定された零点データD0に基づいて測定値データDOUTが算定される。
【0042】
以上のように、本形態においては、無負荷時の検出電圧Vの電圧値を表さない可能性のある零点データD0が測定処理に適用されないから、測定値を正確に算定できるという利点がある。また、動作期間T1の周期P1が動作期間T2の内外に拘わらず一定であるから、動作期間T2内で第1AD変換部41の動作を停止させるといった動作は第2実施形態と同様に不要である。
【0043】
また、第2実施形態においてはステップオン検知処理の周期P1を第2AD変換部42の動作期間T2よりも長く確保する必要があるのに対し、本形態においては、動作期間T2とは無関係に周期P1を設定することが可能である。したがって、例えば周期P1を充分に短い時間に設定することで、対象物が測定台上に載ったことを迅速に検知して測定状態に移行できるといった利点がある。
【0044】
<D:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0045】
(1)変形例1
第1実施形態や第2実施形態において、零点調整処理の途中や直前において対象物が測定台に載ると、第3実施形態について前述したように、第2AD変換部42の生成するデータd2に対象物の重量が反映されて測定値が不正確となる場合がある。そこで、零点調整処理において、CPU20が、測定台上の対象物の有無を検知してもよい。例えば、図7に示すように、零点調整処理のために第2AD変換部42が生成したデータd2を対象物の検知に流用する構成が好適である。
【0046】
図7に示すように、図3のステップSA3に続いてステップSD1が実行される。ステップSD1において、CPU20は、ステップSA3で算定したデータD2と記憶部22に格納されている零点データD0(すなわち過去の零点調整処理で設定された零点データD0)との差分値が所定の基準値Dref2を上回るか否かを判定する。基準値Dref2は、無負荷時の検出電圧Vについて想定される電圧値の最大値を上回り、且つ、重量計100による測定の対象に想定される重量の最小値を下回るように統計的または実験的に設定されたうえで記憶部22に格納される。したがって、対象物が測定台上に存在しない場合にはデータD2は基準データDref2を下回り、対象物が測定台上に存在する場合にはデータD2は基準データDref2を上回る。すなわち、ステップSD1は、測定台上に対象物が存在するか否かを判定する処理に相当する。
【0047】
ステップSD1の結果が肯定である場合(すなわち対象物が測定台に載ったと判定される場合)、CPU20は、動作状態を待機状態から測定状態に移行し(ステップSD2)、検出部10および第2AD変換部42の動作を継続したまま割込処理を終了する。したがって、今回の零点調整処理(ステップSA2およびステップSA3)にて算定されたデータD2は記憶部22の零点データD0に反映されない(すなわち零点データD0は更新されない)。
【0048】
第2AD変換部42は、動作期間T2にて継続的にデータd2を出力する。ステップSD1の結果が否定である場合、CPU20は、動作期間T2が終了したか否かを判定する(ステップSD3)。動作期間T2が終了していない場合、CPU20は、第2AD変換部42から供給される最新のM個のデータd2についてデータD2の生成(ステップSA2およびステップSA3)と基準データDref2との比較(ステップSD1)とを反復する。一方、動作期間T2内の総てのデータD2が基準データDref2を上回ることなく動作期間T2が終了した場合(ステップSD3:YES)、CPU20は、直前のステップSA3で算定したデータD2を新たな零点データD0として記憶部22に格納することで記憶部22の内容を更新する(ステップSA4)。そして、CPU20は、検出部10と第2AD変換部42とを停止させたうえで(ステップSA5)、割込処理を終了する。
【0049】
以上に説明したように、本変形例においては、動作期間T1内のデータd1を利用したステップオン検知処理に加え、動作期間T2内の零点調整処理においてもデータd2に基づいて測定台上の対象物の有無が判定されるから、動作期間T2の直前や途中において対象物が測定台に載った場合であっても、零点データD0が不正確な数値に設定されることは回避される。したがって、対象物の重量の測定値を正確に特定できるという利点がある。なお、図7の動作は第1実施形態および第2実施形態の双方に適用される。また、図7のステップSD1ではデータD2と零点データD0との差分値を基準データDref2と比較したが、データD2が基準データDref2を上回るか否かを判定してもよい。
【0050】
(2)変形例2
以上の形態においてはN個のデータd1を平均することでデータD1を算定したが、検出電圧Vを第1AD変換部41にてAD変換した1個のデジタルデータをデータD1としてもよい。同様に、検出電圧Vを第2AD変換部42にてAD変換した1個のデジタルデータをデータD2としてもよい。また、第1AD変換部41に代えて、基準データDref1が示す電圧値の基準電圧Vrefと検出電圧Vとを比較する比較器も採用される。比較器は、検出電圧Vが基準電圧Vrefを上回る場合には第1値の信号を出力し、検出電圧Vが基準電圧Vrefを下回る場合には第2値の信号を出力する。ステップオン検知処理において、CPU20は、比較器の出力信号が第1値である場合には対象物が測定台上にあると判定し、出力信号が第2値である場合には対象物が測定台上にないと判定する。以上に説明した比較器の動作は検出電圧Vに応じた2値の信号を出力する処理であるから、本発明におけるAD変換の概念に含まれる。
【0051】
(3)変形例3
以上の各形態における零点調整処理は適宜に省略される。例えば、図3のステップS1の結果が肯定である場合にステップS3の処理を実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係る重量計のブロック図である。
【図2】重量計の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】重量計の動作(零点調整処理およびステップオン検知処理)を示すフローチャートである。
【図4】重量計の動作(測定処理)を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る重量計の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態に係る重量計の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】変形例に係る重量計の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
100……重量計、10……検出部、12……ブリッジ回路、14……差動増幅器、20……CPU、22……記憶部、24……出力部、30……電源回路、41……第1AD変換部、42……第2AD変換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定台を備え、動作状態として、前記測定台の上に対象物が載せられたことを検知する待機状態と、前記対象物の重量を測定する測定状態とを切り替え可能な重量計であって、
前記測定台上の前記対象物の重量に応じた大きさの検出電圧を出力する検出部と、
前記検出電圧をAD変換した結果に基づいて第1データを生成する第1データ生成部と、
前記検出電圧をAD変換した結果に基づいて第2データを生成する第2データ生成部と、
前記待機状態において、前記第2データ生成部の動作を停止させ、且つ、前記第1データを監視して前記測定台の上に前記対象物が載ったことを検知すると、動作状態を前記待機状態から前記測定状態に移行させ、前記第1データ生成部の動作を停止させ、且つ、前記第2データ生成部を動作させて、前記対象物の重量の測定結果を前記第2データに基づいて出力する制御部とを備え、
前記第1データ生成部は前記第2データ生成部と比較して消費電力が小さく、且つ、前記第2データ生成部は前記第1データ生成部と比較してAD変換の精度が高い、
ことを特徴とする重量計。
【請求項2】
前記制御部は、前記待機状態において、前記第1データ生成部を第1周期で間欠的に動作させ、前記第1データ生成部が動作する各第1期間で得られた前記第1データと第1基準データとを比較し、前記第1データが前記第1基準データを超えた場合に、前記測定台の上に前記対象物が載ったことを検知することを特徴とする請求項1に記載の重量計。
【請求項3】
前記測定台に前記対象物が載っていない状態における前記第2データを零点データとして記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記待機状態において、前記第1周期よりも長い第2周期で前記第2データ生成部を間欠的に動作させ、前記第2データ生成部が動作する各第2期間で得られた前記第2データを前記零点データとして前記記憶部に書き込んで前記記憶部の記憶内容を更新し、
前記測定状態において、前記記憶部から前記零点データを読み出し、当該零点データと前記第2データとの差分を算出し、算出結果を前記対象物の重量の測定結果として出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載の重量計。
【請求項4】
前記第2期間は前記第1周期よりも長いことを特徴とする請求項3に記載の重量計。
【請求項5】
前記第2期間は前記第1周期よりも短く、
前記制御部は、前記待機状態において前記第1期間と前記第2期間とが重ならないように前記第1データ生成部と前記第2データ生成部との動作を制御することを特徴とする請求項3に記載の重量計。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2期間において前記第1データ生成部の動作を停止させることを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載の重量計。
【請求項7】
前記制御部は、前記待機状態の前記第2期間において、前記第2データと第2基準データとを比較し、前記第2データが前記第2基準データ以下の場合に前記第2データを前記零点データとして前記記憶部に書き込み、前記第2データが前記第2基準データを超えた場合には、動作状態を前記待機状態から前記測定状態に移行させ、前記第1データ生成部の動作を停止させ、且つ前記第2データ生成部の動作を継続させることを特徴とする請求項3乃至6のうちいずれか1項に記載の重量計。
【請求項8】
前記制御部は、前記測定状態において前記第2データを監視して、前記測定台から前記対象物が取り除かれたことを検知すると、動作状態を前記測定状態から前記待機状態に移行させ、前記第2データ生成部の動作を停止させ、且つ前記第1データ生成部を動作させることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の重量計。
【請求項9】
前記第1データ生成部は、前記検出電圧をデジタルデータに変換する第1AD変換部を含み、前記第1AD変換部が生成したN個(Nは2以上の自然数)個のデジタルデータを平均することで前記第1データを生成し、
前記第2データ生成部は、前記検出電圧をデジタルデータに変換する第2AD変換部を含み、前記第2AD変換部が生成したM個(Mは2以上の自然数)のデジタルデータを平均することで前記第2データを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の重量計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−156754(P2009−156754A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336446(P2007−336446)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)