説明

野菜加工品の製造方法および野菜加工品並びにそれを用いた食品

【課題】野菜類を、局所加熱に伴う焦げや局所的な加熱不足などがなく均一に加熱調理して野菜加工品を工業的に大量生産できる方法を提供する。
【解決手段】野菜類を、必要に応じて粉砕し、この原料野菜を、加熱装置の加熱面に強制的に接触させ、略均一な厚さの薄膜状に拡げた状態で該加熱面に沿って流動させながら加熱調理することで、野菜原料が凝集することがなく、全体に均一な加熱が可能となり、目的とする品温に到達するまで加熱調理を続けても、局所加熱に伴う焦げや局所的な加熱不足が発生することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜加工品の製造方法に関し、更に詳しくは、野菜原料を凝集させることなく均一に加熱して、ソテー野菜やロースト野菜などの加熱調理した野菜加工品を工業的に製造する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソテーやローストといった加熱調理された野菜加工品は、タレ等の調味料類、ラーメンスープやカレー等のスープ・ソース類などの様々な加工食品に、ロースト風味や調理感を付与する目的で広く利用されている。従来、前記のような加熱調理された野菜加工品の工業的な製造は、一般的に、容量が500リットル程度の平釜などの加熱装置を用いて加熱調理されていた。しかし、前記のような平釜での加熱調理では、大量生産するためには強力な加熱を施す必要がある。しかし、そのように強力な加熱を施すと、野菜原料が釜内で凝集して塊状になったり、均一に攪拌することが困難になる等の理由により、野菜原料に対して均一に加熱処理を施すことができないという問題が生じる。このように加熱処理が均一に施されない場合、ソテーやローストなどの目的とする調理状態になるまで十分に加熱しようとすると野菜原料に局所的な焦げが発生して苦味や渋みといった好ましくない味がついてしまい、そうかといって、焦げが発生しないようにすると野菜原料に局所的な加熱不足が発生して生っぽい味が残ってしまう、といった品質の低下や品質の安定性の問題が発生する。このため、局所加熱の状態で加熱処理された食品素材を、後工程において磨り潰して標準化する方法(特許文献1参照。)や、加熱処理により塊状化した食品素材を水性調味液に漬けて膨潤させた後に粉砕する方法(特許文献2参照。)等が知られている。
【0003】
しかし、前記のような公知の方法は、加熱調理時の食品素材の塊状化による不均一加熱という、前記問題の原因自体を解消するものではないため、局所加熱に起因する焦げや加熱不足による雑味が発生してしまう問題がある。その他の製法としては、実際には最適な温度で加熱処理することなくアミノ酸やエキス類の添加により調理感を出す製造方法が一般的である。しかし、このような調味料を添加する方法は、調味料由来の不自然な風味が強く、加熱調理感に乏しいといった問題がある。
【特許文献1】特開2001−8620号公報
【特許文献2】特開2006−34264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、食品素材としての野菜類に、局所加熱に伴う焦げや局所的な加熱不足などがなく均一に加熱調理を施して、均質で加熱調理感に富んだ野菜加工品を工業的に大量生産できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、野菜類を特定の条件で加熱調理することにより、素材である野菜類を凝集させることなく、均一な加熱調理を施すことが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の第一は、野菜原料を、加熱装置の加熱容器内に導入し、該容器に設けた加熱面に強制的に接触させ、略均一な厚さの薄膜状に拡げた状態で該加熱面に沿って強制的に流動させながら、所定の品温に到達するまで加熱調理することを特徴とする野菜加工品の製造方法である。
【0007】
野菜原料は、0.5mm〜125mmの範囲の薄膜状に拡げた状態で加熱調理することが好ましい。
【0008】
加熱容器内面の加熱面に強制的に接触させて薄い膜状に拡げた状態で流動させる具体的方法としては、遠心力による方法、撹拌機による方法、更には、加熱容器に所定の間隔を隔てて対向して設けた二つの壁面の少なくとも一方の壁面を加熱面とし、野菜原料を前記二つの壁面間に形成される間隙内を圧送する方法などが挙げられる。
【0009】
また、前記薄膜状に拡げた野菜原料を、その両面から加熱しながら流動させて加熱調理することもできる。
【0010】
前記野菜原料に食用油脂を混合して加熱調理することも好ましい。
【0011】
また、本発明の第二は、上記のような本発明方法により加熱調理された野菜加工品に関する。
【0012】
更に、本発明の第三は、前記加熱調理された野菜加工品を用いて製造された食品に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、原料となる野菜類を、加熱面に接触させ、かつ略均一な厚さの薄膜状に拡げた状態で加熱するので加熱ムラがなく、しかも加熱面に沿って強制的に流動させながら加熱調理するので、目的とする品温に到達するまで加熱調理を続けても、局所的な過熱や加熱不足が発生することがない。従って、本発明によれば、従来の加熱処理方法では困難であった野菜類の均一加熱が可能となり、高品質でかつ安定した品質の加熱調理された野菜加工品を工業的に提供することが可能となる。
【0014】
また、薄膜状で流動する野菜原料の両面から加熱すると、より効率的かつ均一な加熱が可能となる。
【0015】
また、野菜原料に食用油脂を混合しておくことで、加熱調理感(風味)が向上するとともに、加熱調理時の野菜原料の流動性、伝熱性なども良く、より均一な加熱調理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0017】
本発明における食品素材である野菜原料は、そのままでもよいし、原料となる野菜類を細かくカットしたり、スライスしたものや、野菜類を潰してピューレ状としたものなどでもよく、流動性を有し加熱容器に導入できる状態の野菜原料であれば、その形態に特に限定はない。
【0018】
前記野菜類は、葉菜、根菜、茎菜、果菜など、どのようなものでもよいが、特にニンニク、ニンジン、タマネギ、セロリー、パセリ、バジル、とうがらし、しょうが、長ねぎ等の香味野菜が好ましく、大豆、ピーナツ、胡麻、くるみ、枝豆、アーモンド、カシューナッツなどの豆類も用いることが可能で、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの野菜類は、生のものでも、乾燥したものでもよく、必要に応じて酵素処理を施したものでもよい。また、本発明の原料野菜には、目的に応じて、野菜類以外の食品及び食品添加物を加えても良い。
【0019】
また本発明では、前記野菜原料に油脂を混合して加熱調理してもよい。油脂を混合することで、より好ましい加熱調理の香ばしい風味を野菜加工品に付与できるとともに、加熱調理時の野菜原料の流動性や伝熱性を向上でき加熱調理の効率もよくなる。
【0020】
本発明に使用する油脂には特に限定はなく、例えば、あまに油、桐油、サフラワー油、かや油、胡桃油、芥子油、向日葵油、綿実油、菜種油、大豆油、辛子油、カボック油、米糠油、胡麻油、玉蜀黍油、落花生油、オリーブ油、椿油、茶油、ひまし油、椰子油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、シア脂、ボルネオ脂などの植物性油脂や、魚油、鯨油、牛脂、豚脂、乳脂、羊脂などの動物性油脂、更には、これらの油脂を原料としてエステル交換したものや、硬化油、分別油、混合油などが挙げられる。その他、マーガリン、バター、ショートニングなどの加工油脂も使用することができる。これらの油脂は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
前記油脂には、必要に応じて乳化剤、香味油脂、フレーバーや色素などを適宜添加してもよい。野菜材料に対する油脂の添加量に特に限定はなく、加熱処理する野菜原料の特性や加熱処理後の野菜加工食品の用途に応じた添加量とすれば良い。
【0022】
本発明においては、加熱装置の加熱容器に設けた加熱面に原料野菜を強制的に接触させ、略均一な厚さの薄い膜状に拡げた状態で、所定の品温に到達するまで該加熱面に沿って強制的に流動させる。すなわち、被加熱処理物である野菜原料に対する、撹拌力や遠心力などの力による加熱面への押さえ付け作用、または被加熱処理物である野菜原料を、二つの壁面により機械構造的に規定された間隙を強制的に通過させることで、野菜原料を薄膜状に拡がった状態で加熱面へ押し付け、かつ該加熱面に沿って流動させるのである。
【0023】
本発明における加熱調理とは、原料野菜を、所定の品温となるまで加熱処理することで、目的とする好ましい加工状態にまで熱により化学変化させることであり、野菜類を、焼く、炒める、煮る、蒸す、揚げる等の調理を施した状態に加工することをいう。前記加熱調理の品温は、原料となる野菜類の種類や、ソテー、ローストといった目的とする加工毎に異なるので一概にはいえないが、例えば玉葱やニンニクの場合は、ソテーは100〜130℃程度、ローストは120〜160℃程度である。
【0024】
本発明の加熱調理に用いる装置としては、野菜原料を加熱面に強制的に接触させ、かつ略均一な厚さの薄い膜状に拡げた状態で該加熱面に沿って強制的に流動させながら、目的とする品温に到達するまで加熱調理できるものであれば、特に限定はなく、従来公知の加熱装置を用いることができる。
【0025】
例えば、図1に示すような縦型加熱装置10は、加熱容器1の側壁2に加熱ジャケット3(図例のものは蒸気式)が設けられ、加熱容器1の内部にはトルネードフィン(スパイラル翼)4が駆動手段5により高速回転可能に設けられ、加熱容器1の上部には、トルネードフィン4のブレード上面に近接して、掻き落とし用のバッフル6を設けたものである。従来、前記のような縦型加熱装置は、汚泥の乾燥等に使用されていたが、本発明で使用する装置の場合には、野菜原料を均一な厚さで側壁2内面に沿って上方に向かって螺旋状に流動させるため、トルネードフィン4の外周縁4aと側壁内面2aとの隙間から野菜原料が流れ落ちないように、トルネードフィン4の外周縁4aと側壁内面2aとが、接触しない程度の僅かな間隙をおいて近接した状態で、トルネードフィン4が回転可能となるように設計することが重要である。この縦型加熱装置10では、加熱容器1内に被加熱処理物である野菜原料を投入し、加熱ジャケット3に蒸気を導入し、トルネードフィン4を高速で回転させると、回転による遠心力により、野菜原料は加熱容器1の側壁2の内面2aに押し付けられて薄膜状となり、回転するトルネードフィン4のブレードにより側壁2に設けた加熱ジャケット3からの間接加熱により加熱調理されながら、側壁内面2aに沿って加熱容器1の上方へ向かって螺旋状に流動する。加熱容器1の上部に達した被加熱処理物(野菜原料)は、バッフル6によってトルネードフィン4のブレード上から掻き落とされ、加熱容器1内の下部に落下して再び前記と同様に加熱処理される。このような加熱処理工程を繰り返し、被加熱処理物である野菜原料が所定の品温に達し、目的とする加工状態になるまで加熱調理される。前記野菜原料の加熱調理時の膜厚は、加熱容器1内に投入される野菜原料の量、加熱容器1やトルネードフィン4などの加熱装置10の大きさ(容量)、トルネードフィン4の回転速度などにより、野菜原料に作用する遠心力や流動速度を変えることで調整することができる。また、加熱具合は、前記した加熱調理時の野菜原料の膜厚の調整に加えて、加熱容器1内での加熱処理時間の長さによって調整できる。この縦型加熱装置10による加熱調理は、1回の投入分ごとに行われる回分式(バッチ式)である。そのため、大量生産する場合の装置サイズは比較的大型となる。
【0026】
また、例えば図2に示すような横型加熱装置20の場合は、加熱容器21の外壁22に加熱ジャケット23が設けられ、加熱容器21内には、駆動手段24により高速回転可能な回転翼25が、複数のブレード25aの先端縁を加熱容器21内面との間に所定の間隔をおいて近接した状態で設けられている。また、加熱容器21の基端側(図中、左側)上部に原料の投入口21aが設けられ、加熱容器21の先端側(図中、右側)下部には加熱容器21内で加熱調理された加工品の排出口21bが設けられ、更に容器先端側の上部には、加熱調理される野菜類から発生する蒸気を排出するための排気口21cが設けられている。この横型加熱装置20では、加熱ジャケット23に蒸気を導入し、投入口21aから被加熱処理物である野菜原料を投入し、回転翼25を高速で回転させると、上部の投入口21aから加熱容器21内に供給された野菜原料は、回転翼25の攪拌による遠心力により加熱容器21の内面と回転翼25のブレード25aの先端縁との間を薄い膜状になって排出口21bへと流動する。この横型加熱装置20では、加熱容器21を、投入口21aを設けた基端側から排出口21bを設けた先端側に向かうに従って縮小する形状(テーパー胴形)とすることで、加熱容器21内を投入口21aから排出口21bに向かって流動する野菜原料に対して、回転翼25の回転により発生する遠心力による背圧力が作用し、容器内の滞留時間が長くなる。この横型加熱装置20における野菜原料の膜厚は、ブレード25aの先端縁と加熱容器21内面との間隙の幅dにより調整することができる。また、この横型加熱装置20による加熱調理は、図示しないポンプなどにより投入口21aから連続的に野菜原料を投入して連続的に行うことができる。従って、装置は比較的小型で良い。また、加熱具合は、前記膜厚(ブレード25aの先端縁と加熱容器21の内面との間隙の幅d)に加えて、加熱容器21への野菜原料の時間当たりの投入量(流量)によって調整でき、更に、複数の横型加熱装置20を連設して、野菜原料が所定の品温に到達して目的とする加工状態になるまで、加熱処理を繰り返し行うこともできる。
【0027】
また、例えば図3に示すような二筒加熱装置30の場合は、それぞれ加熱用のジャケットを有する内筒32および外筒33の内外二本の円筒から加熱容器31を構成し、内筒32の外壁面と外筒33の内壁面との二つの壁面間に、被加熱処理物である原料野菜の流路となる円筒状の間隙34を形成するとともに、間隙34に連通して、野菜原料の投入口34aと、加熱容器21内で加熱調理された加工品の排出口34bとが、それぞれ設けられている。この二筒加熱装置30では、内筒32と外筒33とを相対的に回転させてもよい。その場合は、内筒32または外筒33の一方のみを回転させて他方は固定しておいてもよいし、内筒32、外筒33の両方を互いに反対方向に回転させてもよい。また、加熱は、内筒32、外筒33の両方に加熱ジャケットを設けた両面加熱式でもよいし、いずれか一方のみに加熱ジャケットを設けて片面加熱としてもよい。この二筒加熱装置30では、内筒32および外筒33の内外二本の円筒のいずれか一方のジャケットまたは両方のジャケットに蒸気を導入し、投入口34aから加熱容器31内にポンプなどを用いて被加熱処理物である野菜原料を圧入すると、野菜原料は、内筒32および/または外筒33からの加熱を受けながら、内筒32と外筒33との間の間隙34内を薄膜状となって排出口34bに向かって流動し、排出される。このとき、内外二本の円筒32、33を相対的に回転させると、加熱容器31内に導入された野菜原料は、相対的に回転する内筒32と外筒33との間の間隙34内を、内筒32の外壁面と外筒33の内壁面との相対的移動方向(回転方向)に対して直交する方向(回転軸方向)に流動し、排出口34bから排出される。この装置では、内筒32の外径寸法と外筒33の内径寸法により間隙34の幅dを調整し、加熱容器31の間隙34内を流動する野菜原料の膜厚を調整することができる。また、加熱具合は、前記膜厚(間隙34の幅d)に加えて、加熱容器31への野菜原料の単位時間当たりの圧入量(流量)で調整でき、更に、複数の二筒加熱装置30を連設して、野菜原料が所定の品温に到達して目的とする加工状態になるまで、加熱処理を繰り返し行うこともできる。
【0028】
本発明方法に使用する加熱容器は上記例示のものに限定されず、例えば、野菜原料を、加熱装置に設けた薄いスリット状の流路内を所定の品温になるまで強制的に通過させる方法、加熱ジャケットを有する静止した加熱プレートと、インバーターモーターなどの駆動により移動速度を任意に変えることが可能な可動プレートとを、両プレート間に所定の間隙が形成されるように配置し、加熱プレートの加熱ジャケットに蒸気を注入するなどして加熱するとともに、可動プレートを移動させ、両プレート間の間隙に被加熱処理物である野菜原料を供給するなどの方法でもよい。
【0029】
本発明において、加熱面に沿って薄膜状に流動する野菜原料の膜厚は、原料となる野菜類の種類、目的とする加工状態、加熱装置の容量及び原料の仕込み量などによるが、通常は0.5〜125mmの範囲内とすることが好ましい。前記膜厚が、125mmを超えると、薄膜状で流動する野菜原料の内部まで均一に加熱ができない場合があり、0.5mm未満では過熱により焦げ付き等が発生する場合がある。使用する加熱装置の構造にもよるが、原料野菜に対する前記のような加熱制御の容易さを考慮すると、前記膜厚は1mmから30mmがより好ましく、更には2mmから10mmとするのが好ましい。なお、前記膜厚は、例えば前記横型加熱装置や二筒加熱装置では、それらの装置に形成される野菜材料の流路となる前記間隙の幅dによって規定される。
【0030】
また、本発明に用いられる加熱装置においては、薄膜状で流動する野菜原料の片面のみを加熱してもよいし、両方を加熱してもよい。また、加熱方法としては、蒸気、過熱水蒸気、電力などが挙げられるが、蒸気、過熱水蒸気が好ましく、蒸気がより好ましい。
【0031】
このようにして加熱処理された野菜加工品は、特定の食品用に限定されることなく、様々な食品に使用することができる。前記食品の種類は特には限定されないが、惣菜としては例えば、ハンバーグ、ミートボール、メンチカツ、コロッケ、フライドチキン、チキンナゲット、シュウマイ、ギョウザ、ハム、ソーセージ、ベーコン、トンカツ、カラアゲ、肉団子、えび天、エビフライ、ポテトサラダ、卵サラダ、煮物、スープ、たれ、牛丼の具、シューマイの具、ギョウザの具、春巻きの具、カレー、カレーフィリング、カレースープ、スープ、シチュー、ラーメン、焼き飯、チキンボール、ミートソース、麺帯類などが挙げられ、それらに配合することができる。また調理法も特に限定されないが、通常は、食品の調理、調整中に、溶解、混和、練りこみ、吹き付け、塗りつけ、振りかけ、まぶす等して添加・配合を行う。さらに、これらの野菜加工品を含有する調味料の製造にも使用できる。例えば、ラーメン、うどん、そば等の麺類用液状つゆ及び各種鍋物用つゆ、またはその粉末調味料、カレールウ、ピラフ用調味料、フライ用調味料、漬物用調味料、どんぶり料理用、炊き込みご飯用、混ぜご飯用等のご飯用調味料、ドレッシング、パスタソース、麻婆豆腐用、海老チリ用などの中華料理用調味料、ポテトチップ用等のスナック用調味料、米菓用調味料、焼き肉のタレ用、ハンバーグ用、ステーキソース用等の肉料理用調味料、照り焼き用、蒲焼き用、佃煮用等の魚介料理用調味料などが挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「%」は重量基準である。
【0033】
(実施例1)ローストオニオンの作成
トルネードフィンを備えた容量1000リットルの縦型加熱装置(伝熱面積:12m2)に、オニオンピューレ420kg、パーム油180kg(合計600kg、オニオンピューレ70%、パーム油30%)を投入した後、ジャケットに徐々に蒸気を注入して加熱を開始した。約35℃でパーム油が溶解後、トルネードフィンを高速で回転させてオニオンピューレとパーム油の混合物が膜厚125mmの薄膜状態となって加熱面に押し付けられるようにトルネードフィンの回転速度を適時調整した。このときの回転速度は、毎分約150回転であった。品温が150℃になるまで加熱を続け、ローストオニオンを得た。
【0034】
(比較例1)ローストオニオンの作成
実施例1と同じ原料を容量1510リットルの蒸気加熱の平釜で加熱処理することによりローストオニオンを製造した。パーム油とオニオンピューレを鍋底から500mmの高さまで満たし、撹拌軸の先端に取り付けた撹拌羽根を鍋に常時接するようにセットした後に、毎分22.5回の回転数で常時撹拌した。ガスコンロに点火した後に弱火で90℃まで加熱した後、150℃まで中火で加熱することによりローストオニオンを得た。
【0035】
<ローストオニオンの官能評価>
実施例1で得られたローストオニオンは、均一できれいな焦げ茶色を呈し、局所加熱に伴う焦げや部分的な加熱不足から発生する苦味や渋みのない、香ばしいローストオニオンの風味を有していた。比較例1で得られたローストオニオンは、局所的に黒く焦げがあり、局所加熱による渋みや苦味が強く、オニオンの風味も弱かった。
【0036】
(実施例1A)ローストオニオンを用いたドレッシング
実施例1及び比較例1で得られたローストオニオンを用いて表1に示す配合でドレッシングを作製した。表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラー(男性5人、女性5人)による評価試験を実施した。その結果、表3に示す評価結果となり、実施例1のローストオニオンを用いて作製したドレッシングは、比較例1のローストオニオンを用いたものと比較して香味に富んだ美味しいドレッシングであることが分かった。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
(比較例2)ローストオニオンの作成
実施例1と同じトルネードフィンを備えた容量1000リットルの縦型加熱装置(伝熱面積12m2)にオニオンピューレ420kg、パーム油180kg(合計600kg、オニオンピューレ70%、パーム油30%)を投入した後、ジャケットに徐々に蒸気を注入して加熱を開始した。パーム油の溶解後、トルネードフィンを高速で回転させてオニオンピューレとパーム油の混合物が膜厚130mmの薄膜状態となって加熱面に押し付けられるようにスピードを適時調整したが、品温の上昇に伴い撹拌が滞るような状態となり焦げ付いてしまった。このように、野菜原料の膜厚を125mmとして流動加熱した実施例1に対して、130mmの膜厚で加熱した比較例2では局所的な焦げが見られたことから、均一な温度で加熱されていないことがわかった。
【0041】
(実施例2)ローストオニオンの作成
調合タンクにオニオンピューレ47.5kg、パーム油2.5kg(合計50kg、オニオンピューレ95%、パーム油5%)を投入した後に85℃まで予備加熱しながら混合した。回転翼のブレード先端縁と加熱容器内面との間隙が10mmとなるように調整された横型加熱装置(伝熱面積0.1m2、内径220mm、直胴部の長さ1000mm)の回転翼の回転数を毎分1000回で安定させた。加熱ジャケットに蒸気を徐々に注入した後に、混合後の材料をポンプにより毎時30kgの流量で定量的に供給し、品温が150℃になるまで加熱して、ローストオニオンを得た。
【0042】
<ローストオニオンの官能評価>
実施例2で得られたローストオニオンは、均一できれいな焦げ茶色を呈し、局所加熱に伴う焦げや部分的な加熱不足から発生する苦味や渋みのない、香ばしいローストオニオンの風味を有していた。
【0043】
(実施例2A)ローストオニオンを用いたドレッシング
実施例2で得られたローストオニオンを用いて表1に示す配合でドレッシングを作製した。表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラー(男性5人、女性5人)による評価試験を実施した。その結果、表4に示す評価結果となり、実施例2のローストオニオンを用いて作製したドレッシングは、比較例1のローストオニオンを用いたものと比較して香味に富んだ美味しいドレッシングであることが分かった。
【0044】
【表4】

【0045】
(実施例3)ローストオニオンの作成
調合タンクにオニオンピューレ95kg、パーム油5kg(合計100kg、オニオン95%、パーム油5%)を投入した後に85℃まで予備加熱しながら混合した。回転翼のブレード先端縁と加熱容器内面との間隙が0.5mmとなるように調整された横型加熱装置(伝熱面積0.1m2、内径φ220mm、直胴部の長さ1000mm)の回転翼の回転数を毎分1500回で安定させた。加熱ジャケットに蒸気を徐々に注入した後に、混合後の材料をポンプにより毎時30kgの流量で定量的に供給し、品温が150℃になるまで加熱して、ローストオニオンを得た。
【0046】
<ローストオニオンの官能評価>
実施例3で得られたローストオニオンは、均一できれいな焦げ茶色を呈し、局所加熱に伴う焦げや部分的な加熱不足から発生する苦味や渋みのない、香ばしいローストオニオンの風味を有していた。
【0047】
(実施例3A)ローストオニオンを用いたドレッシング
実施例3で得られたローストオニオンを用いて表1に示す配合でドレッシングを作製した。表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラー(男性5人、女性5人)による評価試験を実施した。その結果、表5に示す評価結果となり、実施例3のローストオニオンを用いて作製したドレッシングは、比較例1のローストオニオンを用いたものと比較して香味に富んだ美味しいドレッシングであることが分かった。
【0048】
【表5】

【0049】
(実施例4)ローストオニオンの作成
調合タンクにオニオンピューレ95kg、パーム油5kg(合計100kg、オニオンピューレ95%、パーム油5%)を投入した後に85℃まで予備加熱しながら混合した。約30mmの間隙にセットされた、共に加熱用のジャケットを有する同心円の内外二本の円筒からなる二筒加熱装置(伝熱面積:1m2、φ350mm×2600mm長)に蒸気を注入した後、内筒を毎分100回程度の速度で回転させた。混合後の材料をポンプにより毎時700kgの流量で定量的に加熱装置に供給し、品温が150℃になるまで加熱して、ローストオニオンを得た。
【0050】
<ローストオニオンの官能評価>
実施例4で得られたローストオニオンは、均一できれいな焦げ茶色を呈し、局所加熱に伴う焦げや部分的な加熱不足から発生する苦味や渋みのない、香ばしいローストオニオンの風味を有していた。
【0051】
(実施例4A)ローストオニオンを用いたドレッシング
実施例4ローストオニオンを用いて表1に示す配合でドレッシングを作製した。表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラー(男性5人、女性5人)による評価試験を実施した。その結果、表6に示す評価結果となり、実施例4のローストオニオンを用いて作製したドレッシングは、比較例1のローストオニオンを用いたものと比較して香味に富んだ美味しいドレッシングであることが分かった。
【0052】
【表6】

【0053】
(実施例5)ローストガーリックの作成
調合タンクにガーリックピューレ70kg、パーム油30kg(合計100kg、ガーリックピューレ70%、パーム油30%)を投入した後に85℃まで予備加熱しながら混合した。約3mmの間隙にセットされた、共に加熱用のジャケットを有する内外二本の円筒からなる二筒加熱装置(伝熱面積:1m2、φ350mm×2600mm長)に蒸気を注入した後、内筒を毎分130回程度の速度で回転させた。混合後の材料をポンプにより毎時300kgの流量で定量的に加熱装置に供給し、品温が150℃になるまで加熱して、ローストガーリックを得た。
【0054】
(比較例3)ローストガーリックの作成
実施例5と同じ原料を容量300リットルの蒸気加熱の平釜で加熱処理することによりローストガーリックを製造した。パーム油とガーリックピューレを鍋底から約500mmの高さまで満たし、撹拌軸の先端に取り付けた撹拌羽根を鍋に常時接するようにセットした後に、毎分22.5回の回転数で常時撹拌した。ガスコンロに点火した後に弱火で85℃まで加熱した後、150℃まで中火で加熱することによりローストガーリックを得た。
【0055】
<ローストガーリックの官能評価>
実施例5で得られたローストガーリックは、均一できれいな茶色を呈し、局所加熱に伴う焦げや部分的な加熱不足から発生する苦味や渋みのない、香ばしいローストガーリックの風味を有していた。比較例3で得られたローストガーリックは、局所的に黒く焦げがあり、局所加熱による苦味が強く、ガーリックの風味も弱かった。
【0056】
(実施例5A)ローストガーリックを用いた焼肉のタレ
実施例5及び比較例3で得られたローストガーリックを用いて表7に示す配合で焼肉のタレを作製した。表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラー(男性5人、女性5人)による評価試験を実施した。その結果、表8に示す評価結果となり、実施例5のローストガーリックを用いて作製した焼肉のタレは、比較例3のローストガーリックを用いたものと比較して香味に富んだ美味しい焼肉のタレであることが分かった。
【0057】
【表7】

【0058】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に用いる縦型加熱装置の模式図である。
【図2】本発明に用いる横型加熱装置の模式図であり、(a)は側断面図、(b)はII−II断面図。
【図3】本発明に用いる二筒加熱装置の模式図であり、(a)は側断面図、(b)はIII−III断面図。
【符号の説明】
【0060】
1 加熱容器
2 側壁
2a 側壁内面
3 加熱ジャケット
4 トルネードフィン
4a トルネードフィンの外周縁
5 駆動手段
6 バッフル
10 縦型加熱装置
20 横型加熱装置
21 加熱容器
21a 投入口
21b 排出口
21c 排気口
22 外壁
23 加熱ジャケット
24 駆動手段
25 回転翼
25a ブレード
30 二筒加熱装置
31 加熱容器
32 内筒
33 外筒
34 間隙
34a 投入口
34b 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜原料を、加熱装置の加熱容器内に導入し、該容器に設けた加熱面に強制的に接触させ、略均一な薄膜状に拡げた状態で該加熱面に沿って流動させながら、所定の品温に到達するまで加熱調理することを特徴とする野菜加工品の製造方法。
【請求項2】
野菜原料を、0.5mm〜125mmの範囲の薄膜状に拡げた状態で加熱調理する請求項1記載の野菜加工品の製造方法。
【請求項3】
野菜原料を、遠心力により加熱容器内面の加熱面に接触させて薄膜状に拡げた状態で強制的に流動させる請求項1または2に記載の野菜加工品の製造方法。
【請求項4】
野菜原料を、撹拌機により加熱容器内面の加熱面に接触させて薄膜状に拡げた状態で強制的に流動させる請求項1〜3のいずれかに記載の野菜加工品の製造方法。
【請求項5】
加熱容器に所定の間隔を隔てて対向して設けた二つの壁面の少なくとも一方の壁面を加熱面とし、野菜原料を、前記両壁面間に形成される間隙内を圧送することで前記両壁面に接触させて薄膜状に拡げた状態で強制的に流動させる請求項1または2に記載の野菜加工品の製造方法。
【請求項6】
野菜原料に食用油脂を混合して加熱調理する請求項1〜5のいずれかに記載の野菜加工品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法により加熱調理された野菜加工品。
【請求項8】
請求項7に記載の野菜加工品を用いて製造された食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−301782(P2008−301782A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153314(P2007−153314)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】