説明

野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料

【課題】アルギン酸塩及びジェランガムを含有し、沈殿の抑制された野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料の提供。
【解決手段】
(A)アルギン酸塩含有量がアルギン酸ナトリウム換算で0.9〜4.0質量%、
(B)ジェランガム含有量が70〜130質量ppm、及び
(C)飲料の野菜汁及び/又は果汁由来の可溶性固形分のブリックス値が0.5〜2.5
である野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
健康意識の高まる中、近年、日本人に不足がちな食物繊維を効率的に摂取する要望が高くなっており、多量の食物繊維を無理なく摂取できる形態の一つである飲料商品の要望が高まっている。その中でも特に多量に配合しても飲みやすい食物繊維が好まれており、そのような食物繊維としては酸性多糖系水溶性食物繊維が知られている。
例えば、特許文献1には酸性多糖系水溶性食物繊維としてアルギン酸塩を配合した野菜及び/又は果実飲料飲料組成物が開示されており、野菜及び/又は果実由来の固形物を調節することにより飲料の青臭みや加熱殺菌処理後の加熱臭を低減でき、飲みやすさを向上させることができる旨の記載がある(特許文献1参照)。
【0003】
一方、アルギン酸塩は産業排水や家庭用排水の清澄化のための凝集剤として利用されることが知られている(非特許文献1参照)。このため、アルギン酸塩を野菜汁や果汁に多量に添加すると野菜汁や果汁由来の不溶性固形分の一部が凝集することにより、沈殿が生じてしまうという問題があった。
【0004】
また一方、ジェランガムは沈殿を抑制する分散剤として飲料において利用されている(非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−204663号公報
【非特許文献1】堀内照夫ら、「水溶性高分子の開発と最新技術」、p47(CMC)、1996年3月25日、株式会社シーエムシー。
【非特許文献2】三栄源株式会社、"FFI Reports, 「ジェランガムの基礎と食品への応用」"、[online]、[平成20年5月28日検索]、インターネット <http://www.saneigenffi.co.jp/pdf/hyd04.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アルギン酸塩を含有し、且つ分離・沈殿生成の抑制された野菜及び/又は果実飲料飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題に対し本発明者らが検討を行ったところ、高濃度のアルギン酸塩含有の野菜及び/又は果実飲料において生成される凝集物質は不溶性固形分由来であるにもかかわらず、意外にも野菜汁及び/又は果汁由来の可溶性固形分のブリックス値を一定の範囲に調整すると、少量のジェランガムの使用においても沈殿の生成を効果的に抑制できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)アルギン酸塩含有量がアルギン酸ナトリウム換算で0.9〜4.0質量%、(B)飲料の野菜汁及び/又は果汁由来の可溶性固形分のブリックス値が0.5〜2.5、及び(C)ジェランガム含有量が70〜200質量ppmである野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料によれば、アルギン酸塩を高濃度に含有できるので、野菜汁及び/又は果汁由来の固形物を少なくし、飲み易くすることができる。アルギン酸塩を高濃度に含有しているにもかかわらず、保存中に沈殿生成が抑制され続けるため、透明容器に充填されても見た目の良好さが維持される。しかも、飲料中のジェランガムの配合量も少なくすることができ、コスト面等で有利である。
このような飲料であれば、日ごろ日本人に不足がちな食物繊維を、多量のアルギン酸塩を含有した飲料として手軽に摂取可能である。
【0009】
なお、アルギン酸塩を多量に含有するために、整腸効果や便通改善効果、コレステロール低下作用、血圧上昇抑制等の生理的効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料(以下、単に「飲料」ともいう。)中の(A)アルギン酸塩含有量は、アルギン酸ナトリウム換算で0.9〜4.0質量%である。なお、この濃度範囲は、アルギン酸塩を1回あたり4g摂取する容器詰飲料を想定した場合に、その飲料の容量は約100mL〜約450mLとなり、多量の食物繊維摂取という要望にも対応するものである。
アルギン酸塩の風味を飲料として適切なものとする点、又は粘度を維持する点から、飲料中のアルギン酸塩の含有量は3.6質量%以下であることが好ましく、3質量%以下がより好ましく、2.7質量%以下がさらに好ましく、2.6質量%以下が特に好ましい。また、アルギン酸塩を少ない回数で十分に摂取可能な飲料とする点から、1.3質量%以上が好ましく、1.4質量%以上がより好ましく、1.6質量%以上がさらに好ましい。
なお、本発明の飲料に含まれるアルギン酸塩量の測定方法は後述の(アルギン酸塩の定量法及び重量平均分子量の測定法)に示す。
【0011】
本発明の飲料に含有される(A)アルギン酸塩としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩;低分子化して可溶性を強化したアルギン酸カルシウムやアルギン酸マグネシウム等のアルギン酸アルカリ土類金属塩;アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸アンモニウム塩等を使用することができる。また、これ以外に上記塩を2種以上組み合わせたアルギン酸塩を使用してもよい。
なお、本発明の飲料に適したアルギン酸ナトリウムとしては、例えば、褐藻類等から抽出・分離精製したもの、低分子化されたアルギン酸ナトリウム(以後、これらを低分子化アルギン酸ナトリウムという)である、製品名:ソルギン((株)カイゲン)や製品名:キミカアルギンSKAT−ULV((株)キミカ)等が挙げられる。また、アルギン酸カリウムとしては、例えば、低分子化アルギン酸ナトリウムに対してカリウム置換処理したもの(以後、これらを低分子化アルギン酸カリウムという)等が挙げられ、他のアルギン酸塩も同様に塩置換処理で得ることができる。ただし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等は、これらの処理が施されたものに限定されるものではない。
【0012】
また、本発明の飲料に含有される(A)アルギン酸塩としては、飲料の粘度を低く抑え飲みやすいものとするために、低分子量のものが好ましく、GPC測定による重量平均分子量が1万〜20万、好ましくは2万〜10万、さらに好ましくは3万〜7万、特に好ましくは4万〜6万のものが良い。なお、アルギン酸塩の重量平均分子量測定方法は後述の(アルギン酸塩の定量法及び重量平均分子量の測定法)に示す。
【0013】
本発明の飲料は、(B)野菜汁及び/又は果汁由来の可溶性固形分のブリックス値(品温:20℃)(以下、単に「野菜汁及び/又は果汁由来のブリックス値」ともいう。)を0.5〜2.5とする。(B)野菜汁及び/又は果汁由来のブリックス値を2.5以下とすることで、ジェランガムの添加量を低減した条件においても沈殿の生成を抑制でき、保存上好ましい。また、(B)野菜汁及び/又は果汁由来のブリックス値を0.5以上とすることで飲料の風味を十分に高めることができる。よって、(B)野菜汁及び/又は果汁由来のブリックス値は、0.6〜2.4が好ましく、さらに0.7〜2.4が好ましい。この飲料の野菜汁及び/又は果汁由来の可溶性固形分のブリックス値は、野菜汁及び/又は果汁のブリックス値に基づいて調整することができる。
なお、ブリックス値(ブリックス度)は、糖用屈折計を用いて20℃において測定した値を用いる。
【0014】
本発明の飲料中の(C)ジェランガム含有量は、70〜200質量ppm(以下、単に「ppm」という。)である。ブリックス値を調整することにより、160ppm以下、さらに140ppm以下、100ppm以下とすることができる。また、70ppm以上とすることで、ジェランガムの分散力をアルギン酸塩による凝集力よりも高めることができ、沈澱の抑制に効果的である。長期の保存安定性を考慮するとジェランガムの含有量は80ppm以上が好ましく、さらに90ppm以上が好ましい。
なお、本発明の飲料に含まれるジェランガム量は、AOAC公定法であるAOAC991.43で測定することができる。
【0015】
本発明の飲料に含有される(C)ジェランガムとしては、ネイティブジェランガムと脱アシルジェランガムが挙げられるが、低添加量でシュードプラスチック性を示すネイティブジェランガムが好ましく、例えば、微生物Sphingomonas elodeaが菌体外に産出したもの、製品名:ケルコゲル(登録商標)LT100,HM,HT(三栄源エフ・エフ・アイ(株))等を使用することができる。ただし、シュードプラスチック性を示すネイティブジェランガムであれば、上記製品に限定されるものではない。
【0016】
また、本発明の飲料に用いられる(C)ジェランガムは、20℃で測定した粘度が、0.15質量%において1〜100mPa・sのものが好ましく、10〜90mPa・sのものがより好ましく、20〜80mPa・sのものがさらに好ましい。なお、ジェランガムの粘度測定方法は、後述の(粘度の測定法)に準じればよい。
【0017】
また、本発明の飲料に含有される野菜汁及び/又は果汁は、野菜汁として野菜の搾汁、果汁として果物の搾汁からなる。野菜の搾汁に使用される野菜としては、トマト、ニンジン、ホウレンソウ、キャベツ、メキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、セロリ、レタス、パセリ、クレソン、ケール、かぼちゃ、赤ピーマン、ピーマン、ダイコン等が挙げられるが、本発明の野菜の搾汁としては特にトマト、ニンジン、ホウレンソウ、パセリ、セロリ、キャベツのものが好ましい。また野菜の搾汁としてアロエの搾汁も使用できる。これらの野菜汁は単独で使用しても良く、複数を混合して使用しても良い。
【0018】
また、果物の搾汁に使用される果物としては、レモン、りんご、みかん、オレンジ、グレープフルーツ、スウィーティ、もも、メロン、スイカ、ウメ、キウィ、グアバ、プルーン等が挙げられるが、本発明の果物の搾汁としては特にレモン、りんご、みかん、オレンジ、グレープフルーツ、もも等が好ましい。これらの果汁は単独で使用しても良く、複数を混合して使用しても良い。
【0019】
本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料は、(D)野菜汁及び/又は果汁由来の不溶性固形物(以下、単に「固形物」という。)を含むことが好ましい。
野菜汁及び/又は果汁由来の固形物とは、後述の(固形物量測定法)によって含水状態の体積として測定されたものであり、野菜汁及び/又は果汁由来の成分が他の配合成分等と相互作用したものを含む。すなわち、不溶性セルロースやヘミセルロース、ペクチン、たんぱく質等の複合体を含有するものである。この野菜汁及び/又は果汁由来の固形物の存在は野菜汁及び/又は果汁飲料の食感、特にパルプ感に影響する。野菜汁及び/又は果汁由来の固形物量が0.01体積%以上であると野菜汁及び/又は果汁飲料は食感が均一とならず天然感や本格感の点で優れたものとなり、固形物量が8体積%以下であると粘性が高くなりすぎず飲用時に抵抗感が少なく飲み易いものとなる。
すなわち、飲用時の飲み易さの点から、野菜汁及び/又は果汁由来の固形物の量は0.01〜8体積%であることが好ましく、食感上、より好ましくは0.02〜6体積%、さらに好ましくは、0.05〜4.5体積%である。
【0020】
当該野菜汁及び/又は果汁由来の固形物量は、遠心分離やろ過等の固液分離操作による野菜汁及び/又は果汁由来の固形物の一部除去・添加・濃縮等の操作により調整することで上記好ましい範囲に調整しても良い。
【0021】
本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料の水分含有量は75質量%以上が好ましく、さらに好ましくは85質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上が飲料として好ましい。なお、水分量の測定法は、例えば、常圧にて、105℃、2時間の加熱乾燥法によって測定することができる。
【0022】
本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料のpH(品温:20℃)は、保存安定性及び飲み易さの点からpH3.5〜5、好ましくは3.7〜4.6、さらに好ましくは3.8〜4.5、もっとさらに好ましくは3.9〜4.3が良い。pHが上記範囲内であると保存安定性及び飲み易さの点で好ましい。
pHの調整は、通常、本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料の製造工程において加熱殺菌を施す前に行う。
pHの調整には、野菜汁や果汁由来の有機酸に加え、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、pH調整剤等の添加剤を単独、あるいは併用して用いることができる。このとき、これらの添加剤を直接、又は適当な濃度に希釈した水溶液として適量加えて調整する。このときpHメーター等によりpHを確認しながら加えても良い。これらの添加剤には、例えば、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸又はそれらの塩等が挙げられる。加熱殺菌の前後でpHが変化する場合は、予め変化分を考慮して加熱殺菌前のpHを調整すると良い。
【0023】
その他、本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料には、糖質、ビタミン類、各種エステル類、色素類、酸化防止剤、香料、甘味料、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等の食品添加物を単独、あるいは併用してさらに適宜配合しても良い。
【0024】
本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料には、さらに食物繊維を補充する目的で上記以外の食物繊維を配合することができる。他の食物繊維としては、(E)水溶性中性多糖系食物繊維、すなわち具体的には、難消化性デキストリン、グアーガム、グアーガム分解物、プルラン、水溶性コーンファイバー、ヘミセルロース、低分子ヘミセルロース、大豆食物繊維、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、ガードラン、ポリデキストロース、寒天等が挙げられる。このうち、グアーガム分解物、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等が飲料全体の風味に影響しないため好ましい。
【0025】
これらの他の食物繊維の含有量は、飲料の粘度を低く抑えて飲みやすくするという点、更に、沈殿の生成に影響を及ぼさないという点で、野菜汁及び/又は果汁容器詰飲料中に、0.2〜8質量%、さらに0.6〜4質量%、特に1.2〜3質量%が好ましい。
【0026】
なお、本発明に用いられる食物繊維は、AOAC公定法であるAOAC991.43やAOAC2001.03、及びこれらに準拠した方法にて定量される。例えば、グアーガム、グアーガム分解物、プルラン、水溶性コーンファイバー、ヘミセルロース、低分子ヘミセルロース、大豆食物繊維、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、ガードランは、AOAC991.43で、難消化性デキストリン、ポリデキストロースは、AOAC2001.03で測定することが可能である。
【0027】
本発明の飲料の粘度(品温:20℃)は、飲み易さの点から好ましくは400mPa・s以下であり、より好ましくは200mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは50mPa・s以下、さらに好ましくは25mPa・s以下、特に好ましくは11mPa・s以下、ことさらに好ましくは10mPa・s以下である。また、本発明の飲料の粘度は野菜汁や果汁の官能的本物感のために2mPa・s以上が好ましい。
【0028】
本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、ガラス瓶、金属や紙製の蓋が複合された樹脂製容器、チューブ状の樹脂製容器等、通常の形態で提供することができる。特に、PETボトル、ガラス瓶、金属や紙製の蓋が複合された樹脂製容器、チューブ状の樹脂製容器等の透明容器では、沈殿生成がわずかに起こっただけでも商品陳列時にはっきりと見て取れるため、商品の外観が特に問題となる。本発明はこれら透明性を有する容器詰飲料における上記外観上の課題を解決するものである。なお、着色された酸素透過性の容器であっても、透明性を有する容器であれば上記課題が生じる。
【0029】
本発明の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料は適宜殺菌が施され、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。またPETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。その際、無菌下で容器に充填してもよい。また無菌下で充填された容器に別の成分を無菌下で後から充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻す等の操作も可能である。
【実施例】
【0030】
固形物量、アルギン酸塩量・重量平均分子量、ジェランガム量、ブリックス値、飲料のpH・粘度についての測定法を以下1)〜6)に記す。
1)(固形物量測定法)
固形物量は日本農林規格検査法(日本果汁協会監修:最新果汁・果実飲料事典566頁から575頁,出版:朝倉書店に記載)それに準じた方法により測定される。
試料を固形物測定用遠心沈殿管にとり、遠心分離機で3000回転数を示してから正確に10分間遠心する。上清を5mL抜き取り、蒸留水を5mL加えて、遠心分離機で3000回転数を示してから正確に10分間遠心する。さらに、上清を5mL抜き取り、蒸留水を5mL加えて同様に、遠心分離機で3000回転数を示してから正確に10分間遠心する。操作は回転半径14.5cmの遠心分離機を用いて20℃で行い自然停止してから直ちに沈殿の平均した上端までの容積を固形物量とする。なお、固形物が少量で、固形物測定用遠心沈殿管の最小目盛り以下となる場合には、予め固形物測定用遠心沈殿管に水をマイクロピペット等を用いて正確に測りとり、上端に印をつけることにより目盛りの代わりとする等の方法を取って対応すると良い。
【0031】
2)(アルギン酸塩の定量及び重量平均分子量の測定)
2)1 前処理(HPLC用分析試料の調製)
2)1−1 アルギン酸カルシウム沈殿の生成
ビーカーに、被験試料2gを加える。さらに水35mLを加えて均一になるように攪拌する。渦動攪拌器により適宜攪拌しながら、2mol/L塩化カルシウム水溶液1.5mLを5〜10分かけて徐々に滴下した。壁面に付着した析出物を流し落としながら水約5mLを加え、その後pHが11以上となるように1mol/L水酸化ナトリウム溶液を加える。ビーカー内の溶液をよく分散させて容量50mLのメスフラスコに移しかえ、ビーカー内に付着した析出物を水で流し落として全量50mLに定容する。共栓をした後、この溶液を渦動攪拌器により20秒攪拌し、その後20分室温に放置する(溶液A)。
【0032】
2)1−2 アルギン酸カルシウム沈殿の回収
直径25mmのメンブランフィルタをメンブランフィルタカートリッジに装着し、さらに5mLのシリンジを接続する。このシリンジ内に、よく分散させた溶液A5mLをホールピペットで入れる。装着したシリンジのピストンを押し、内溶液をメンブランフィルタでろ過する。その後、水酸化ナトリウムでpH11.3とした40mmol/L塩化カルシウム水溶液約3mLで、ホールピペットとシリンジ内の付着物を同一シリンジ内へ流し落とし、メンブランフィルタでろ過する。さらにこの洗浄動作をもう一度繰り返す。
【0033】
2)1−3 アルギン酸ナトリウムへの塩交換と回収
上記操作で得られたメンブランフィルタカートリッジを解体し、メンブランフィルタとパッキンをとり出し、ビーカーに入れる。水4.8mLでメンブランフィルタカートリッジの残りの部品を洗浄しながらビーカーに加える。この溶液に1.5mol/L炭酸ナトリウム水溶液を200μL加えて、溶液が均一になるよう軽く攪拌する(全量約5mL)。途中、3回しんとう混和を行いながら1時間〜2時間室温に置く。再度攪拌し、メスフラスコ(容量10mL)に溶液を全量移す。水約5mLでビーカー内に残った部品を洗浄し、その液をメスフラスコに加えた後全量を10mLに定容する。これらの操作により、飲料中のアルギン酸をアルギン酸ナトリウムとして溶解し回収する。この溶液を直径25mmのメンブランフィルタ(GLクロマトディスク 0.45μm)でろ過したものをHPLC用分析試料とする。
【0034】
2)2 アルギン酸塩の定量
HPLC用分析試料100μLを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定する。純度既知のアルギン酸ナトリウム標準試料0.1%溶液を同様にHPLCで測定し、得られたクロマトグラムの面積の比較から試料中のアルギン酸ナトリウムを定量する。
なお、HPLC操作条件は以下の通りである。
【0035】
HPLC操作条件
カラム:1)Super AW-L(ガードカラム):東ソー(株)製
2)TSK-GEL Super AW4000(GPC用カラム)
:排除限界分子量4×105PEO/DMF、長さ15cm,内径6mm、東ソー(株)製
3)TSK-GEL Super AW2500(GPC用カラム)
:排除限界分子量2×103PEO/DMF、長さ15cm,内径6mm、東ソー(株)製
※上記カラムはAW-L,AW4000,AW2500の順で連結する。
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計
移動相:0.2mol/L硝酸ナトリウム水溶液
流速:0.6mL/min
注入量:100μL
【0036】
2)3 アルギン酸塩の重量平均分子量の測定(重量平均分子量測定法)
アルギン酸塩の重量平均分子量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定する。HPLC操作条件は、(2 アルギン酸塩の定量)と同様の条件とする。分子量算出用の検量線には、標準プルラン(昭和電工(株)製 Shodex STANDARD P−82)を用いる。HPLC用分析試料をHPLCに100μL注入し、得られたクロマトチャートより、試料中のアルギン酸ナトリウムの重量平均分子量を算出する。
【0037】
3)(ジェランガムの定量法)
ジェランガム量は、AOAC公定法であるAOAC991.43に従い、試料1gに一連の酵素処理を行った後約80%のエタノールで1時間室温に置き不溶成分を回収した。次に回収したエタノール不溶成分の乾燥物を0.1%濃度となるように蒸留水に溶解させ、溶液100μLを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定する。純度既知のジェランガム標準試料を0.1%の溶液を同様にHPLCで測定し、得られたクロマトグラムの面積の比較から試料中のジェランガムを定量する。このときの、HPLC操作条件は上記(アルギン酸塩の定量及び重量平均分子量の測定)の通りである。
【0038】
4)(pH測定法)
pHは、(株)堀場製作所製pHメーター(F−22)を使用し品温20℃の条件にて測定する。
【0039】
5)(粘度の測定法)
粘度は、20℃においてB型粘度計を用いて測定する。実施例においては(株)トキメック製B8L型粘度計を使用した(回転子:No.1、回転速度:60回転/分、品温:20℃)。
【0040】
6)(ブリックス(Brix)値(度)の測定法)
Brix計(ATAGO RX−5000)で品温20℃にて測定した。
【0041】
(飲料の製造方法)
表1に示す配合処方で、飲料組成物を製造した。
トマト汁における固形物量の調整は、固形物を豊富に含むトマト汁から遠心分離や濾過によって固形物を除去することによって行った。より具体的にはトマト濃縮汁1(6.2倍濃縮)はトマトペーストの原液(可溶性固形分のブリックス値28)を遠心分離した後にろ過し、不溶性固形物量を調整した。一方、トマト濃縮汁2(6.2倍濃縮)は市販トマトペースト原液(可溶性固形分のブリックス値28)をそのまま用いた。
アルギン酸塩として、市販品の低分子化アルギン酸塩(製品名:ソルギン、(株)カイゲン製)を用いた。低分子化アルギン酸塩において、低分子化アルギン酸ナトリウムの重量平均分子量は58000、低分子化アルギン酸カリウムの重量平均分子量は59000であった。グアーガム分解物としてサンファイバーR(製品名、太陽化学(株)製)を用いた。ネイティブジェランガム含有製剤としてビストップD−1677、D−1796、およびビストップD−1796(D)(それぞれ製品名、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を用いた。
成分(A)の低分子化アルギン酸塩を55〜65℃、成分(C)のネイティブジェランガムを80℃〜85℃の温水にそれぞれ溶解した後常温に冷却し、成分(A)水溶液、成分(C)水溶液、トマト汁、及びその他の成分を混合することにより調合液を調製した。
調合液をチューブ式熱交換器で高温短時間殺菌後、PETボトルに熱間充填を行い、密栓後室温まで冷却し、飲料組成物を製造した。
【0042】
上記の測定法を用いて、飲料中の固形物量、トマト汁濃度、アルギン酸塩量・重量平均分子量、ジェランガム量、pH、粘度を測定し、その結果を表1に示した。
なお、表中、アルギン酸塩(質量%)はアルギン酸ナトリウム換算での質量%を意味する。
また、トマト汁濃度はストレート換算(JAS規格に準拠)濃度(質量%)を意味する。よってJAS規格に準拠するとトマト汁の場合はブリックス4.5のトマト汁がストレート汁100質量%のものになる。
【0043】
(沈殿生成の判断基準)
上記方法にて調製した実施例及び比較例の飲料を室温にて静置保存し、1週間後の分離・沈殿生成の様子について外観を目視により評価(外観評価)し、その結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1〜8は分離・沈殿物のどちらも生じず、外観評価において合格であった。
比較例1、5はジェランガムを配合しなかった結果、沈殿物が生じ外観評価において不合格であった。
比較例2又は3は、ジェランガムをそれぞれ96及び100ppm配合しているが、ブリックス値はそれぞれ2.9及び3.0で、沈殿物が生じた。なお、比較例2〜3の不溶性固形分はそれぞれ0.17%及び18%であった。
比較例4は、ジェランガムを100ppm配合しているがBrixが4.3で、沈殿物が生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルギン酸塩含有量がアルギン酸ナトリウム換算で0.9〜4.0質量%、
(B)飲料の野菜汁及び/又は果汁由来の可溶性固形分のブリックス値が0.5〜2.5、及び
(C)ジェランガム含有量が70〜200質量ppm、
である野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料。
【請求項2】
(D)野菜汁及び/又は果汁由来の不溶性固形物量が0.01〜8体積%である請求項1記載の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料。
【請求項3】
(A)アルギン酸塩の重量平均分子量が1万〜20万である請求項1又は2に記載の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料。
【請求項4】
(C)ジェランガムがネイティブジェランガムである請求項1〜3のいずれか一項に記載の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料。
【請求項5】
当該容器が透明性を有する容器である請求項1〜4のいずれか一項に記載の野菜汁及び/又は果汁含有容器詰飲料。