説明

野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シート

【課題】 野菜又は果実を収納した段ボール箱の手掛穴から、カラスが嘴を入れて、野菜等をつつかないようにするための貼着シートを提供する。
【解決手段】 この貼着シートは、段ボール箱の内壁面から手掛穴7に合成樹脂製ネットを張設しうるものである。貼着シートは、段ボール箱の手掛穴7に対応する孔5を持つ剥離紙1、孔5を持つ粘着剤層2、孔5を持つ合成樹脂製フィルム3又は紙3、孔5を持つ接着剤層4及び孔5を持たない合成樹脂製ネット6の順に積層一体されてなる。剥離紙1を取り除き、粘着剤層2が段ボール箱の内壁に当接するように、かつ、孔5が段ボール箱の手掛穴7に一致するようにして貼着すると野菜用又は果実用段ボール箱が得られる。また、貼着シートは、段ボール箱の手掛穴7に対応する孔5を持つ再湿性接着剤層1、孔5を持つ紙3、孔5を持つ接着剤層4及び孔5を持たない合成樹脂製ネット6の順に積層一体されてなるものであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴からカラス等の鳥が嘴を入れ、収納してある野菜又は果実に被害を与えるのを防止するため、手掛穴に貼着するための貼着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜又は果実は、段ボール箱に収納して運搬されている。この段ボール箱は人手で持てるように、また良好な通気性を維持するために、側面に手掛穴が設けられているのが一般的である。
【0003】
野菜又は果実を収納した段ボール箱は、運搬前後において、倉庫等の屋内に保管されている。しかしながら、倉庫等が満杯であったり、又はすぐに他所に運搬するなどの事情で、段ボール箱を野積みしておくことがあった。段ボール箱を野積みしておくと、カラス等の鳥がきて、手掛穴に嘴を入れて、野菜又は果実をつつき、被害を与えるということがあった。かかる被害は年間、数億円にも達すると言われているが、従来、何の対策も講じられていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、野菜又は果実を収納した段ボール箱の手掛穴から、カラス等の鳥が嘴を入れて、野菜又は果実をつつかないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、段ボール箱の内壁面から手掛穴に合成樹脂製ネットを張設しうる貼着シートを用いて、上記課題を解決したものである。
【0006】
具体的な第一態様は、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を持つ剥離紙、該孔を持つ粘着剤層、該孔を持つ合成樹脂製フィルム又は紙、該孔を持つ接着剤層及び該孔を持たない合成樹脂製ネットの順に積層一体化されてなる野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シートに関するものである。
【0007】
図1は、第一態様の一例に係る野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シートを剥離紙側から見た平面図である。図2は、この貼着シートの中央横断面図である。本発明は、剥離紙側から、剥離紙1、粘着剤層2、合成樹脂製フィルム又は紙3、接着剤層4及び合成樹脂製ネット6の順に積層一体化されてなる貼着シートに関するものである。そして、剥離紙1、粘着剤層2、合成樹脂製フィルム又は紙3及び接着剤層4には、段ボール箱の手掛穴に対応する孔5が設けられている。合成樹脂製ネット6は、最終的に手掛穴に張設されるため、孔5は設けられていない。なお、本発明に係る貼着シートは、剥離紙1を取り除いて段ボール箱に貼着されるものであるため、剥離紙1は取り除きやすいように、粘着剤層2、合成樹脂製フィルム又は紙3、接着剤層4及び合成樹脂製ネット6の周辺外方にはみ出した状態で積層されている(図2)。
【0008】
剥離紙1としては、粘着剤層2側に離型処理が施されている従来公知のものが用いられる。粘着剤層2としても、アクリル系粘着剤等の従来公知のものが用いられる。合成樹脂製フィルム3としては、ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムを用いることができ、一般的には透明なものが用いられる。また、紙3としても従来公知のものが用いられる。接着剤層4としては、酢酸ビニル重合体系接着剤、エチレン−酢酸ビニル重合体系接着剤、ポリエステル系接着剤等の溶剤型接着剤や感熱性接着剤が用いられる。
【0009】
合成樹脂製ネット6としては、カラス等の鳥が嘴を差し入れることのできない程度の目を持ったものであれば、従来公知のものが用いられる。本発明においては、目づれや目開きがしにくいものが好ましい。目づれや目開きのしやすい合成樹脂製ネットであると、鳥が嘴で目を開いて、野菜や果実をつつく恐れがあるからである。目づれや目開きのしにくい合成樹脂製ネット6としては、縦糸と横糸とで構成されており、縦糸と横糸の交点で熱融着されている合成樹脂製ネット6を用いるのが好ましい。具体的には、JX日鉱日石ANCI株式会社製のコンウェッドネット(登録商標)を用いるのが好ましい。なお、合成樹脂の素材としては、ポリプロピレン、ポリエステル又はナイロン等を用いることができる。
【0010】
第一態様に係る貼着シートは種々の方法で製造されるが、一例を挙げれば、以下のとおりである。すなわち、剥離紙、粘着剤層及び合成樹脂製フィルム又は紙の順に積層貼合されてなる三層シートの、該合成樹脂製フィルム又は該紙表面に感熱性接着剤層を設けた後、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を打ち抜き、続いて該感熱性接着剤層表面に合成樹脂製ネットを積層した後、加熱圧着して該感熱性接着剤層を軟化又は溶融させることによって、該合成樹脂製ネットを積層一体化するというものである。この製造方法を具体的に説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
まず、剥離紙1、粘着剤層2及び合成樹脂製フィルム又は紙3の順に積層貼合されてなる三層シートを準備する。この三層シートは、一般的に任意の幅を持つ長尺状のものであり、巻物として準備するのが好ましい。そして、三層シートの合成樹脂製フィルム又は紙3の表面に、感熱性接着剤(ホットメルト接着剤)層を設ける。感熱性接着剤層の設け方としては、従来公知の任意の方法を採用しうる。たとえば、加熱溶融させた感熱性接着剤をTダイに供給し押出ラミネート法で、合成樹脂製フィルム又は紙3の表面に設ける方法が一般的である。また、加熱溶融させた感熱性接着剤を、ナイフコータやロールコータ等で塗布して設ける方法も採用される。そして、固化した感熱性接着剤層が合成樹脂製フィルム又は紙3の表面に形成された後、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を打ち抜く。準備された三層シートが長尺状のものであると、多数の孔が長手方向に並ぶことになる。また、準備された三層シートの幅が狭い場合は、一列の孔が長手方向に並び、その幅が広い場合は、複数列の孔が長手方向に並ぶことになる。
【0012】
孔を打ち抜いた後、感熱性接着剤層に当接するようにして、合成樹脂製ネットを積層する。そして、感熱性接着剤層が軟化又は溶融する温度に加熱し加圧する。具体的には、一対の加熱ロールを用いて加熱加圧すればよい。この結果、合成樹脂製ネットは、孔を打ち抜かれた三層シートと圧着され、剥離紙1、粘着剤層2、合成樹脂製フィルム又は紙3、感熱性接着剤層5及び合成樹脂製ネット6の順で積層一体化されたシートを得ることができる。このシートは、段ボール箱の手掛穴に対応する孔が長手方向に一列又は複数列となって並んだものである。最終的には、段ボール箱の手掛穴に対応する孔が一個の貼着シートとして供給されるか、又は孔が長手方向に一列に並んだ状態、すなわち、貼着シートが一列に配列した状態となった巻物の形態(貼着シートロール)で供給される。なお、図3は、ロール8から一部巻き戻した状態であり、貼着シートを合成樹脂製ネット6側から見たものである。そして、前者の場合には、剥離紙1を取り除いて手張りによって段ボール箱の手掛穴に貼着され、後者の場合にはラベリング装置によって自動的に剥離紙1が取り除かれて、組み立て前の段ボール箱の手掛穴に一枚づつ貼着される。なお、貼着シートの形態であっても、貼着シートロールの形態であっても、剥離紙1は、取り除きやすいように、粘着剤層2、合成樹脂製フィルム又は紙3、感熱性接着剤層5及び合成樹脂製ネット6の周辺外方にはみ出した状態で積層されている。
【0013】
また、第一態様に係る貼着シートは、以下のようなドライラミネート法で製造することもできる。すなわち、剥離紙、粘着剤層及び合成樹脂製フィルム又は紙の順に積層貼合されてなる三層シートに、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を打ち抜いた後、該合成樹脂製フィルム又は該紙表面にドライラミネート法で接着剤層を設けると共に該接着剤層によって合成樹脂製ネットを積層一体化するというものである。ドライラミネート法による場合は、三層シートに孔を打ち抜いた後に、接着剤層を設けて合成樹脂製ネットを積層一体化するものである。ドライラミネート法で使用する接着剤としては、溶剤で希釈した溶剤型接着剤が用いられ、これを合成樹脂製フィルム又は紙表面に塗布し、乾燥後に合成樹脂製ネットを積層一体化することになる。
【0014】
本発明の具体的な第二態様は、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を持つ再湿性接着剤層、該孔を持つ紙、該孔を持つ接着剤層及び該孔を持たない合成樹脂製ネットの順に積層一体化されてなる野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シートに関するものである。
【0015】
第二態様は、剥離紙1を持たない点、粘着剤層2として再湿性接着剤層を用いている点及び合成樹脂製フィルムを使用せずに紙を使用する点で第一態様と異なるが、その他は、第一態様と同一である。再湿性接着剤は、水分を付与することにより粘着性が与えられ、水分が蒸発又は紙に吸収されることにより固化して接着力を発現するものである。したがって、水分を付与しない通常の状態では粘着性を持たないので剥離紙1は不要である。また、再湿性接着剤が塗布される基材は水分を吸収しやすい紙を用いるので、合成樹脂製フィルムは通常用いられない。
【0016】
また、第二態様に係る貼着シートの製造方法も、剥離紙1が用いられていない点、粘着剤層2として再湿性接着剤層が用いられている点及び合成樹脂製フィルムは使用せずに紙を使用する点を除いて、第一態様に係る貼着シートの製造方法と同一である。したがって、第二態様に係る貼着シートの製造方法は、以下のとおりである。すなわち、再湿性接着剤層及び紙の順で積層貼合されてなる二層シートの、該紙表面に感熱性接着剤層を設けた後、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を打ち抜き、続いて該感熱性接着剤層表面に合成樹脂製ネットを積層した後、加熱圧着して該感熱性接着剤層を軟化又は溶融させることによって、該合成樹脂製ネットを積層一体化するというものである。また、再湿性接着剤層及び紙の順で積層貼合されてなる二層シートに、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を打ち抜いた後、該紙表面にドライラミネート法で接着剤層を設けると共に該接着剤層によって合成樹脂製ネットを積層一体化するというものである。
【0017】
以上説明したように、本発明に係る貼着シートは、最終的に一枚毎に裁断された貼着シートとして供給されるか、一枚毎に裁断されずに貼着シートが一列に配列されてなる巻物の形態となって供給される。一枚毎に裁断された貼着シートとして供給された場合は、組み立て前又は後の段ボール箱の内壁に、貼着シートから剥離紙1を取り除いて粘着剤層2が当接するようにして、かつ、手掛穴7に孔5が一致するようにして、貼着シートを貼着する。また、粘着剤層2に代えて再湿性接着剤層が設けられている場合は、再湿性接着剤に水分を付与して粘着性を与え、この状態で、再湿性接着剤が段ボール箱の内壁に当接するようにして、かつ、手掛穴7に孔5が一致するようにして、貼着シートを貼着する。また、貼着シートが一列に配列されてなる巻物の形態として貼着シートロールで供給された場合は、このロールをラベリング装置に適用し、組み立て前の段ボール箱の手掛穴7に自動的に貼着する。この場合も、粘着剤層2又は再湿性接着剤層が段ボール箱の内壁に当接するように、かつ、手掛穴7に孔5が一致するようにして貼着される。以上のようにして、図4に示したような段ボール箱が出来上がるのである。
【0018】
そして、この段ボール箱に、野菜又は果実を収納する。段ボール箱を人手で運搬する場合には、貼着シートが段ボール箱の内壁側に貼着されているので、手掛穴7の中まで手を差し入れることはできないが、段ボール箱の外壁と内壁の厚みの箇所に手を当てて運搬することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る貼着シートを用いれば、野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に合成樹脂製ネットが張設されるので、野菜又は果実を収納した段ボール箱を野積みしておいても、カラス等の鳥が手掛穴から嘴を差し入れて、野菜又は果実をつつくのを防止することができる。したがって、本発明によれば、野菜又は果実を段ボール箱に収納して運搬する際、野菜又は果実が被害を受けにくいという効果を奏する。さらに、本発明によれば、ゴキブリ等の虫類が手掛穴から内部に侵入するのを防止でき、虫類によって野菜又は果実が被害を受けにくいという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一例に係る野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シートを剥離紙側から見た平面図である。
【図2】図1に示した貼着シートの中央横断面図である。
【図3】本発明の他の例に係る野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シートロールであり、ロールから一部巻き戻した状態を合成樹脂製ネット側から見た平面図である。
【図4】図1に示した貼着シートを野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に貼着した状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 剥離紙
2 粘着剤層
3 合成樹脂製フィルム又は紙
4 接着剤層
5 段ボール箱の手掛穴に対応する孔
6 合成樹脂製ネット
7 手掛穴
8 ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボール箱の手掛穴に対応する孔を持つ剥離紙、該孔を持つ粘着剤層、該孔を持つ合成樹脂製フィルム又は紙、該孔を持つ接着剤層及び該孔を持たない合成樹脂製ネットの順に積層一体化されてなる野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シート。
【請求項2】
段ボール箱の手掛穴に対応する孔を持つ再湿性接着剤層、該孔を持つ紙、該孔を持つ接着剤層及び該孔を持たない合成樹脂製ネットの順に積層一体化されてなる野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シート。
【請求項3】
合成樹脂製ネットが縦糸と横糸とで構成されており、縦糸と横糸の交点で熱融着されている請求項1又は2記載の野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シート。
【請求項4】
請求項1又は2記載の貼着シートが一列に配列されてなり、巻物の形態となっている貼着シートロール。
【請求項5】
剥離紙を取り除いた請求項1記載の貼着シートの粘着剤層が段ボール箱の内壁に当接するように、かつ、孔が段ボール箱の手掛穴に一致するようにして貼着してなる野菜用又は果実用段ボール箱。
【請求項6】
請求項2記載の貼着シートの再湿性接着剤層に水分を付与して粘着性を与えると共に、該再湿性接着剤層が段ボール箱の内壁に当接するように、かつ、孔が段ボール箱の手掛穴に一致するようにして貼着してなる野菜用又は果実用段ボール箱。
【請求項7】
剥離紙、粘着剤層及び合成樹脂製フィルム又は紙の順に積層貼合されてなる三層シートの、該合成樹脂製フィルム又は該紙表面に感熱性接着剤層を設けた後、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を打ち抜き、続いて該感熱性接着剤層表面に合成樹脂製ネットを積層した後、加熱圧着して該感熱性接着剤層を軟化又は溶融させることによって、該合成樹脂製ネットを積層一体化することを特徴とする請求項1記載の野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シートの製造方法。
【請求項8】
剥離紙、粘着剤層及び合成樹脂製フィルム又は紙の順に積層貼合されてなる三層シートに、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を打ち抜いた後、該合成樹脂製フィルム又は該紙表面にドライラミネート法で接着剤層を設けると共に該接着剤層によって合成樹脂製ネットを積層一体化することを特徴とする請求項1記載の野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シートの製造方法。
【請求項9】
再湿性接着剤層及び紙の順で積層貼合されてなる二層シートの、該紙表面に感熱性接着剤層を設けた後、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を打ち抜き、続いて該感熱性接着剤層表面に合成樹脂製ネットを積層した後、加熱圧着して該感熱性接着剤層を軟化又は溶融させることによって、該合成樹脂製ネットを積層一体化することを特徴とする請求項2記載の野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シートの製造方法。
【請求項10】
再湿性接着剤層及び紙の順で積層貼合されてなる二層シートに、段ボール箱の手掛穴に対応する孔を打ち抜いた後、該紙表面にドライラミネート法で接着剤層を設けると共に該接着剤層によって合成樹脂製ネットを積層一体化することを特徴とする請求項2記載の野菜用又は果実用段ボール箱の手掛穴に用いる貼着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28349(P2013−28349A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163606(P2011−163606)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000116862)旭加工紙株式会社 (2)
【Fターム(参考)】