説明

金属の回収方法

【課題】金属の新規な回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の金属の回収方法は、タングステンカーバイドと結合材を含む処理対象物を、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液中、81〜100℃の温度範囲で処理する方法である。結合材は、コバルト、ニッケル、クロム、鉄から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせを含むことが好ましい。また、温度範囲は、85〜98℃であることがさらに好ましく、90〜98℃であることがまたさらに好ましい。また、塩化第二鉄の濃度は、0.5〜3.0 mol/lの範囲内にあることが好ましく、1.0〜2.0 mol/lの範囲内にあることがさらに好ましい。また、塩酸の濃度は、0.3〜8.0 mol/lの範囲内にあることが好ましく、0.5〜5.0 mol/lの範囲内にあることがさらに好ましい。また、塩酸と塩化第二鉄の濃度比率(塩酸/塩化第二鉄)は、0.5〜5.0の範囲内にあることが好ましく、1.0〜2.0の範囲内にあることがさらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の新規な回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資源の偏在が著しいレアメタルの1種であるタングステン(W)は、種々な目的に使用されている。例えば、切削工具、金型、土木鉱山用工具、収納ケース等の超硬合金製品、高速度鋼、合金工具鋼等の特殊鋼、その他、電気・電子部品、遮蔽材、スポーツ用品、触媒、顔料等の製品がある。
【0003】
一方、タングステン(W)のリサイクル率を高めることは、重要な課題である。タングステン(W)のリサイクル率を高めるためには、回収費用の低減化を実現しなければならない。
【0004】
しかし、タングステン(W)の従来の回収方法、すなわちアルカリ浸出法、アルカリ溶融法、電気分解法は、長い工程を必要とするという問題点があった。すなわち、タングステン(W)の従来の回収方法は、パラタングステン酸アンモニウム(APT)を経由するという長い工程が必要とされていた。
【0005】
そこで、長い工程を必要とする従来法ではなく、使用済超工合金から直接的にタングステンカーバイド(WC)等を得るための方法が注目された。この目的を達成するため、以下の技術が開発された。
【0006】
1つ目は、タングステンカーバイド等と金属結合材を含む工具屑を、塩化第二鉄、塩化第二銅のいずれかまたは双方を含む水溶液に浸漬して金属結合材を溶出分離し、次いでタングステンカーバイド等を分離する方法である(特許文献1参照。)。
【0007】
2つ目は、タングステンカーバイド等と金属結合材を含む材料を、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅のいずれか1つまたはいずれか2つ以上の混合物を含む水溶液、または、この水溶液に無機酸を加えた水溶液に浸漬して金属結合材を溶出分離し、次いでタングステンカーバイド等を分離する方法である(特許文献2参照。)。
【0008】
【特許文献1】特公昭56-5685号公報
【特許文献2】特公昭56-36692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1においては、「処理温度が80℃以上では塩化第一鉄等が加水分解する恐れがある」(第2頁左欄下から1行〜同頁右欄第1行)と報告している。
【0010】
この反応式は以下のようである(化学大辞典編集委員会編 化学大辞典第1巻1050頁)。
3FeCl2 + 4H2O → Fe3O4 + 6HCl + H2
6FeCl2 + 3H2O → 4FeCl3 + Fe2O3 + 3H2
【0011】
同様に塩化第二鉄も70℃前後で加水分解され含水酸化鉄(III) Fe2O3・H2Oとなるとの報告がある(日本化学会編 実験化学講座 第9巻 339頁)。
【0012】
処理温度が高いと以下のような問題点があると考えられる。(1) 溶解液の活性物質である塩化第二鉄が無駄に加水分解され、不活性の酸化鉄類となってしまう。(2) この酸化鉄類が副生すると不溶性かつ微粉状のため濾過性が不良となり、また濾過残として得られる目的物への混入の恐れがある。(3) 下記の主反応で生成する塩化第一鉄も、前記反応式のように加水分解され不溶性かつ微粉状の酸化鉄類となってしまい、(2)項と同様な問題が発生する。
M + 2FeCl3 → MCl2 + 2FeCl2 (M:結合材の金属)
【0013】
また、特許文献2においては、「80℃を超えると、残渣固体として残る金属、炭化物等が酸化される恐れがあるので、これら溶出液の温度の上限は80℃である」(第2頁右欄第28行〜第30行)と報告している。
【0014】
炭化物等が酸化されることによりつぎのような問題を生ずる。すなわち、炭化物等が酸化物になると、酸化物(酸化タングステン類)、つぎにパラタングステン酸アンモニウム(APT)、つぎにタングステン(W)、つぎにタングステンカーバイド(WC)という長い工程を経ねば、タングステンカーバイド(WC)を得ることができない。
【0015】
そのため、このような課題を解決する、金属の新規な回収方法の開発が望まれている。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、金属の新規な回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の金属の回収方法は、タングステンカーバイドと結合材を含む処理対象物を、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液中、81〜100℃の温度範囲で処理する方法である。
【0017】
ここで、限定されるわけではないが、結合材は、コバルト、ニッケル、クロム、鉄から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせを含むことが好ましい。また、限定されるわけではないが、温度範囲は、85〜98℃であることがさらに好ましく、90〜98℃であることがまたさらに好ましい。また、限定されるわけではないが、塩化第二鉄の濃度は、0.5〜3.0 mol/lの範囲内にあることが好ましく、1.0〜2.0 mol/lの範囲内にあることがさらに好ましい。また、限定されるわけではないが、塩酸の濃度は、0.3〜8.0 mol/lの範囲内にあることが好ましく、0.5〜5.0 mol/lの範囲内にあることがさらに好ましい。また、限定されるわけではないが、塩酸と塩化第二鉄の濃度比率(塩酸/塩化第二鉄)は、0.5〜5.0の範囲内にあることが好ましく、1.0〜2.0の範囲内にあることがさらに好ましい。また、限定されるわけではないが、タングステンカーバイドと結合材を含む処理対象物を、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液中で処理し、結合材は、コバルト、ニッケル、クロム、鉄から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせを含み、温度は90〜98℃の範囲内にあり、塩化第二鉄の濃度は1.0〜2.0 mol/lの範囲内にあり、塩酸の濃度は0.5〜5.0 mol/lの範囲内にあり、塩酸と塩化第二鉄の濃度比率(塩酸/塩化第二鉄)は1.0〜2.0の範囲内にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
【0019】
本発明の金属の回収方法は、タングステンカーバイドと結合材を含む処理対象物を、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液中、81〜100℃の温度範囲で処理する方法であるので、金属の新規な回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、金属の回収方法にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0021】
本発明の金属の回収方法は、タングステンカーバイドと結合材を含む処理対象物を、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液中で処理する方法である。
【0022】
処理対象物の種類としては、超硬合金からなるスクラップ、例えば、切削工具(チップ、ドリル、エンドミル等)、金型(成形ロール、成形型等)、土木鉱山用工具(石油掘削用工具、岩石粉砕用工具等)、収納ケース(眼鏡ケース等)等を採用することができる。
【0023】
処理対象物中の主成分としては、タングステンカーバイド(WC)等を挙げることができる。
【0024】
処理対象物中の添加物成分としては、TiC、TaC、NbC、VC、CrC、Cr3C2等を挙げることができる。耐熱性向上、焼結時のWC結晶粒成長の抑制等の目的を持って添加物として加えられるものである。添加する比率の例は、0.1〜10%(成分合計)である。
【0025】
結合材としては、コバルト、ニッケル、クロム、鉄等から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせを含むものを採用することができる。配合する比率の例は、6〜30%である。
【0026】
処理温度は81〜100℃の範囲内にあることが好ましい。また、処理温度は85〜98℃の範囲内にあることがさらに好ましい。処理温度は90〜98℃の範囲内にあることがまたさらに好ましい。
【0027】
処理温度が81℃以上であると、反応速度を大きく維持できるという利点がある。処理温度が85℃以上であると、この効果がさらに顕著になる。処理温度が90℃以上であると、この効果がまたさらに顕著になる。
【0028】
処理温度が100℃以下であると、排ガスの発生量を抑制でき、また突沸を予防できるという利点がある。処理温度が98℃以下であると、この効果がさらに顕著になる。
【0029】
FeCl3濃度は0.5〜3.0 mol/lの範囲内にあることが好ましい。また、FeCl3濃度は1.0〜2.0 mol/lの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0030】
FeCl3濃度が0.5 mol/l以上であると、反応速度を大きく維持できるという利点がある。FeCl3濃度が1.0 mol/l以上であると、この効果がより顕著になる。
【0031】
FeCl3濃度が3.0 mol/l以下であると、反応速度を大きく維持できるという利点がある。FeCl3濃度が2.0 mol/l以下であると、この効果がより顕著になる。
【0032】
HCl濃度は0.3〜8.0 mol/lの範囲内にあることが好ましい。また、HCl濃度は0.5〜5.0 mol/lの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0033】
HCl濃度が0.3 mol/l以上であると、反応速度を大きく維持でき、またスラリーの濾過性を改善することができるという利点がある。HCl濃度が0.5 mol/l以上であると、この効果がより顕著になる。
【0034】
HCl濃度が8.0 mol/l以下であると、反応速度を大きく維持でき、またスラリーの濾過性を改善することができるという利点がある。HCl濃度が5.0 mol/l以下であると、この効果がより顕著になる。
【0035】
濃度比率(HCl/FeCl3)は0.5〜5.0の範囲内にあることが好ましい。また、濃度比率(HCl/FeCl3)は1.0〜2.0の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0036】
濃度比率(HCl/FeCl3)が0.5以上であると、反応速度を大きく維持でき、またスラリーの濾過性を改善することができるという利点がある。濃度比率(HCl/FeCl3)が1.0以上であると、この効果がより顕著になる。
【0037】
濃度比率(HCl/FeCl3)が5.0以下であると、反応速度を大きく維持でき、またスラリーの濾過性を改善することができるという利点がある。濃度比率(HCl/FeCl3)が2.0以下であると、この効果がより顕著になる。
【0038】
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、金属の回収方法が、タングステンカーバイドと結合材を含む処理対象物を、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液中、81〜100℃の温度範囲で処理する方法であるので、金属の新規な回収方法を提供することができる。
【0039】
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【実施例】
【0040】
つぎに、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0041】
実施例1
3×3×2cm程度の立方体形に切断したWC−8%Co−4%Ni の超硬合金製成形ロールスクラップ(以下「仕込ロール」と略す)265.0gをフッ素樹脂製内筒付き二口500mlガラス製セパラブルフラスコに仕込み、組成が1.0mol/l−FeCl3と1.0mol/l−HClの混合水溶液である溶解液300mlを加えた。温度計およびコンデンサーを装着し、シリコンオイルバス中で40時間95℃に加熱した。
【0042】
室温に冷却後塊状のロール残(以下「塊状物」と略す)を取り出し、水洗、乾燥後重量を測定したところ224.4gであり、仕込ロールからの重量比回収率(以下「回収率」と略す)は84.7%であった。溶液部を17G3型ガラス濾過器で減圧濾過し、濾過残を水洗、乾燥して31.8gの灰色薄片状物(以下「薄片」と略す)を得た。この薄片の仕込ロールからの回収率は12.0%であった。
【0043】
薄片をJIS H 1402(2001)記載の混酸D溶解法で処理しICP-MS分析の結果、その組成は0.5%Co+0.3%Niであり残りはWCであった。 濾液を同様にICP-MS分析の結果、 Co、Ni、Wの各含量は5.9g、2.8g、0.3g合計9.0gであった。
【0044】
回収した塊状物を新たに調製した同組成、同量の溶解液中で再度40時間95℃に加熱した。再回収した塊状物の重量は147.8gとなり、仕込ロールからの回収率は55.8%であった。回収薄片の重量は70.2g、回収率は26.5%、その組成は0.5%Co+0.4%Niで残りはWCであった。濾液のCo、Ni、Wの各含量は4.2g、2.1g、0.2g、合計6.5gであった。
【0045】
回収した塊状物を同方法により3回目の処理を行い、61.9g(回収率23.4%)の塊状物を得た。回収薄片の重量は78.4g(回収率 29.6%)、組成は0.4%Co+0.3%Niであり、残りはWCであった。濾液のCo、Ni、Wの各含量は4.9g、2.5g、0.2g、合計7.6gであった。
【0046】
3回の処理結果を合計すると仕込ロール265.0gを95℃で120時間加熱することにより、純度99%以上のWCを薄片として仕込ロールの68.1%(180.4g)回収できた。また濾液中のCo、Ni、Wの各合計含量は15.0g、7.4g、0.7g、合計23.1gとなり、仕込ロールの8.7%であった。実施例1の結果を表1に示す。
【0047】
なお回収薄片には黄色の酸化タングステン類の付着は各処理回ともほとんど認められず、濾液のICP-MS分析結果からもW量0.7g(WO3換算0.9g)のように酸化タングステン類の副生はごく僅かであった。特許文献2の実施例5のように酸化性無機酸である硝酸使用時には高温でWまたはWCの酸化も起こり得るが、塩酸系ではWCの酸化はほとんど発生しないと考えられる。
【0048】
溶液部の濾過性はいずれの処理時も良好で、2分程度で濾過が終了した。濾過性が良好であった理由はHClを添加してあるため、95℃と高温であるにもかかわらずFeCl3およびFeCl2の加水分解が防止され、濾過性不良原因となる酸化鉄類の副生がほとんど無かったことによると考えられる。
【0049】
実施例2〜4
実施例1におけるHCl濃度を0.5、2.0、5.0mol/l に各々変更した以外は実施例1と同条件で処理した。実施例2〜4の結果を表1に示す。
なお、各実施例とも酸化タングステン類の副生は実施例1と同様ごく僅かであった。
溶液部の濾過性に関しては各実施例の各処理回とも良好で、いずれも2分程度で濾過が終了した。
【0050】
実施例1〜4の結果から、HCl濃度が0.5〜5.0mol/lの範囲で、良好な結果が得られていることが確認された。また、実施例1〜4の結果から、HClとFeCl3の濃度比率(HCl/ FeCl3)が0.5〜5.0の範囲で、良好な結果が得られていることが確認された。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例5
実施例1における仕込ロールの組成をWC-8%Co-4%Ni-1%Crに変更し、さらにFeCl3とHCl濃度を各2.0mol/l とした以外は実施例1と同条件で処理した。処理結果を表2に示す。
なお、酸化タングステン類の副生は実施例1と同様ごく僅かであった。
溶液部の濾過性に関しては各処理回とも良好で、いずれも2分程度で濾過が終了した。
【0053】
実施例1〜5の結果から、FeCl3濃度が1.0〜2.0mol/lの範囲で、良好な結果が得られていることが確認された。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例6
実施例1における各処理回の加熱時間を8時間に短縮し、処理回数を5回とした以外は実施例1と同条件で処理した。処理結果を表3に示すが、処理5回目(合計加熱時間40時間)の結果を実施例1の1回目の結果と比較すると、大幅に薄片の回収率が増加した。 この結果は溶解液のFeCl3濃度が処理中徐々に低下するため、新たに調整した溶解液への交換時間が短いほど処理効果が高まることを示す。
なお、酸化タングステン類の副生は実施例1と同様ごく僅かであった。
溶液部の濾過性に関しては各処理回とも良好で、いずれも2分程度で濾過が終了した。
【0056】
【表3】

【0057】
実施例7
実施例1における仕込ロールを、1×5×5cm程度の超硬合金製切削工具スクラップ(以下「仕込チップ」と略す)に変更した以外は実施例1と同条件で処理した。なおこの仕込チップの組成はTiC、TaC、NbC、VCおよびCr3C2を添加物として加えたWC−8%Co−4%Ni−0.6%TiC−0.3%TaC−0.3%NbC−0.3%VC−1.0% Cr3C2であった。処理結果を表4に示すがVCの溶解量が若干多かった以外は、添加物はWCと同様にほとんど溶解しなかった。
なお、酸化タングステン類の副生は実施例1と同様ごく僅かであった。
溶液部の濾過性に関しては各処理回とも良好で、いずれも2分程度で濾過が終了した。
【0058】
【表4】

【0059】
比較例1
実施例1における処理温度を60℃に変更した以外は実施例1と同条件で処理した。処理結果を表5に示すが、処理温度を低下させると薄片の回収率は大きく低下する。
なお、酸化タングステン類の副生はごく僅かであったが、95℃で処理した実施例1よりは若干多かった。
溶液部の濾過性に関しては各処理回とも良好で、いずれも2分程度で濾過が終了した。
【0060】
【表5】

【0061】
比較例2〜3
実施例1におけるFeCl3とHCl濃度をFeCl3/HCl = 0.1/1.0 mol/l、0.4/0.4 mol/l に各々変更した以外は実施例1と同条件で処理した。処理結果を表6に示すが、FeCl3濃度を低下させると薄片の回収率は大きく低下する。
なお、各比較例とも酸化タングステン類の副生は実施例1と同様ごく僅かであった。
溶液部の濾過性に関しては各比較例の各処理回とも良好で、いずれも2分程度で濾過が終了した。
【0062】
【表6】

【0063】
比較例4
実施例1におけるHClを使用せず、さらにFeCl3濃度と処理温度を表7に示すように変更した以外は実施例1と同条件で処理した。処理結果を表7に示すが、HClを使用せず処理温度を下げると薄片の回収率は大きく低下する。さらに問題なのは溶液部の濾過性が不良であったことである。副生した微粒子状赤褐色の酸化鉄類が濾過性に悪影響を与え、いずれの処理回でも1時間以上の濾過時間を要した。また回収した薄片にもこの酸化鉄類が混入するため、水洗、デカンテーションを繰り返して除去する必要があった。
なお、酸化タングステン類の副生はごく僅かであったが、実施例1よりは若干多かった。比較例1と4の結果を実施例1〜7の副生酸化タングステン量と比較すると、温度を95℃まで上げても酸化タングステン類の副生量は増加しないことが確認された。
【0064】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンカーバイドと結合材を含む処理対象物を、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液中、81〜100℃の温度範囲で処理する
金属の回収方法。
【請求項2】
結合材は、コバルト、ニッケル、クロム、鉄から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせを含む
請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項3】
温度範囲は、「81〜100℃」に代えて、「85〜98℃」である
請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項4】
温度範囲は、「81〜100℃」に代えて、「90〜98℃」である
請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項5】
塩化第二鉄の濃度は、0.5〜3.0 mol/lの範囲内にある
請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項6】
塩化第二鉄の濃度は、1.0〜2.0 mol/lの範囲内にある
請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項7】
塩酸の濃度は、0.3〜8.0 mol/lの範囲内にある
請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項8】
塩酸の濃度は、0.5〜5.0 mol/lの範囲内にある
請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項9】
塩酸と塩化第二鉄の濃度比率(塩酸/塩化第二鉄)は、0.5〜5.0の範囲内にある
請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項10】
塩酸と塩化第二鉄の濃度比率(塩酸/塩化第二鉄)は、1.0〜2.0の範囲内にある
請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項11】
タングステンカーバイドと結合材を含む処理対象物を、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液中で処理し、
結合材は、コバルト、ニッケル、クロム、鉄から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせを含み、
温度は、90〜98℃の範囲内にあり、
塩化第二鉄の濃度は、1.0〜2.0 mol/lの範囲内にあり、
塩酸の濃度は、0.5〜5.0 mol/lの範囲内にあり、
塩酸と塩化第二鉄の濃度比率(塩酸/塩化第二鉄)は、1.0〜2.0の範囲内にある
金属の回収方法。

【公開番号】特開2009−179818(P2009−179818A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17258(P2008−17258)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(599072725)株式会社光正 (4)
【Fターム(参考)】