説明

金属の連続鋳造用鋳型

【課題】
本発明の課題は、作用点のずれが発生し、金属の収縮率が鋳型の内部で変化した場合にでも、ストランド品質が所望な際の高い鋳造速度を出すことができる様式の、金属を連続鋳造するための鋳型を提供することである。
【解決手段】
鋳造方向(G)で延びている少なくとも一つの凹部(7,7a,7b)が設けられており、この凹部がある間隔をおいて、予め設定されたメニスカス位置(5)の下方で始まり、かつ出口開口部(4)まで延びていることにより解決される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴を備えた、金属を連続鋳造するための鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
融点が高い鋼あるいは他の金属でできた形材を鋳造するための、銅あるいは銅合金でできた管状鋳型は、従来技術において度々記載されてきた。鋳型管部は通常水平横断面において均一な壁厚を有しており、この壁厚は鋳造方向で鋳型管部の内部テーパーにより増大する。テーパーは鋳型の長さ全体にわたり均一であってもよい。しかしながらさらにその長さにわたり変わりうるテーパーを使用してもよく、冷却の際の鋳造ストランドの収縮が特に良好に行われ、それにより良好な放熱を確実に行うように、特にテーパーは鋳込み開口部の領域において大きく、かつ鋳造方向で減少する。
【0003】
基本的にテーパーを最適化するための方法は、鋳造方向での放熱を、内部輪郭をストランド凝固殻の収縮に適合させることにより改善するという前前からの目標を有している。今日使用されている鋳型の大部分はテーパーに関しては一定の作用点に合わせて最適化されており、この場合作用点は、例えば鋳造速度、鋼の組成及び冷却条件のような多くのパラメータに依存している。予め設定された作用点がずれると、選択された幾何学形状により鋳造工程は中断し、ストランドの品質は劣化する。なぜならメニスカス内の金属溶湯の生じる凝固により、ストランドにおいていわゆるストランド凝固殻が形成されるからである。鋳型管部の幾何学形状が不適切であると、ストランド凝固殻は浮揚し、かつそれ自体捻じ曲がるかあるいは反対の場合、すなわち収縮が小さすぎると、鋳型管部における磨耗が大きくなる。ストランドの振動、ストランドの剥離あるいはさらにブレークアウトを結果として伴うことがある。さらに鋳型管部とストランド凝固殻の間のエアギャップにより放熱は不均一になり、ストランド凝固殻はその結果によりストランド内外部の亀裂において再度融解する。従ってテーパーを一定の適用範囲に調節するという何回もの骨折りが生じこれにより最適な鋳造速度が得られる。
【0004】
特許文献1には、テーパーが少なくとも鋳造テーパー部の長さ部分内で周囲線に沿って、角隅領域間の周囲線の各部分が平滑なカーブを形成し、この場合テーパーが鋳造方向で減少するように変動することがこの目的のために提案されている。パラメータの決まった定理に関する型中空域のこの実施形態は理論的に最適な幾何学形状を示しているが、実際のところ、例えば温度管理によって、あるいは鋳型の一定の作用点を持続的に正確に維持することを不可能にする、変化する鋼組成によって条件付けられた状態では、それでもやはりパラメータは変動する。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0958871号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底をなす課題は、作用点のずれが発生し、金属の収縮率が鋳型の内部で変化した場合にでも、ストランド品質が所望な際の高い鋳造速度を出すことができる様式の、金属を連続鋳造するための鋳型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を備えた鋳型において解決される。
【0007】
実質的に本発明による鋳型の場合、鋳造方向で延びており、凹状である少なくとも一つの凹部が設けられており、この凹部はある間隔をおいて、予め設定されたメニスカス位置の下方で始まり、かつ出口開口部まで延びている。多数の凹部が設けられているのが好ましく、従って通常の場合における真直ぐな側面とは異なり、鋳型の下側の高さ部分内において、いわば波状の輪郭が周囲全体にわたって、あるいはほんの部分的周囲領域にわたって得られる。少なくとも一つの凹部により、凝固した金属のストランド凝固殻が、作用点がずれた場合に、すなわち収縮率が変化した場合に、それに対抗して設けられた凹部内に多少ともなりとも多く入ることが可能になる。しかしながらこの場合ストランド凝固殻は常に確実に案内され、従って例えばストランド凝固殻のねじれあるいは偏菱を回避することができる。収縮率が高くなる鋳造パラメータにより、提案された鋳型の幾何学形状が可能になり、ストランド凝固殻は高い位置にある面に、すなわち凹部の縁部に案内されるのが好ましい。逆になった場合、すなわちストランド凝固殻の収縮率が低すぎる場合、ストランド凝固殻は凹部内に多少多く浸かる。浸ることにかかわらず、ストランド凝固殻と型中空域の間の摩擦は、実質的に真直ぐな周囲輪郭を備えた横断面輪郭の場合に比べて実質的に小さい。
【0008】
たしかに本発明により設計された鋳型の場合、鋳造ストランドが予め設定されたメニスカス位置から出口開口部まで接触することは完全に十分ではなく、その中から結果として生じるほんのわずかに不適当な冷却により、最大鋳造速度は完全には達せられるわけではないことは受入れなければならないが、確かに方法の安全性は、品質を損なうことなく疑う余地なく改善される。さらに型中空域の表面の大部分は溶湯あるいは凝固するストランド凝固殻と直接接触する。なぜなら凹部は型中空域の長さ全体にわたって延びてはおらず、初めにある間隔をおいて予め設定されたメニスカス位置の下方で始まるからである。これは凹部の上方にある領域が実質的に平滑であること、すなわち初めに鋳型の高さ領域の下側に設けられているような、特にこのような凹部を一切備えていないことを意味する。これについて当然鋳込みホッパーは除外して考えられている。この鋳込みホッパーは例えば凸面管路の場合ほぼメニススカスの高さで始まり、型中空域の約半分の長さまで延びている。
【0009】
本発明の有利な実施例は従属請求項の対象である。
【0010】
少なくとも一つの凹部は発端領域で始まっており、この発端領域は鋳込み開口部から測定して、型中空域の長さの30%から70%まで、好ましくは40%から60%まで延びている。特に少なくとも一つの凹部は型中空域の半分の長さで始まっている。凹部は必ずしも全て正確に同じ高さ位置で始まるわけではない。このことから凹部は様々な高さ位置で始まることも考えられる。凹部はすでにある程度の形状安定性を有する十分肉厚のストランド凝固殻がすでに生じている領域内で始まることが重要である。従って予め設定されたメニスカスと少なくとも一つの凹部の間の間隔は十分大きく寸法取りすることができる。この間隔は型中空域の長さの10%、特に20%よりも大きいことが好ましい。型中空域の面毎に少なくとも一つの凹部が設けられているのが好ましい。
【0011】
少なくとも一つの凹部の最深部でのテーパーが、凹部の縁部でのテーパーに比べて急激に減少するのが特に有利である。特に凹部の最深部でのテーパーは、1メートル当り0%まで減少するが、凹部の縁部でのテーパーはある領域までは1メートル当り0.6%から1.5%まで減少する。別の言い方をすれば、鋳造方向での凹部の深さは増加する。
【0012】
本発明による鋳型の設計の場合、テーパーに関しては同様に一定の理論上の作用点が想定でき、この場合これから生じる凹部の領域内のテーパーのカーブは、唯一凹部の縁部によっても、凹部の最深部によっても規定されていない。むしろ隣接した凹部は波状輪郭部を形成し、この場合波状輪郭部の意図した平均線は、テーパーに関する鋳型の設計のために重要な最適線を形成する。鋳型の作用点に達すると、ストランド凝固殻の一部は凹部内に移動するが、他の部分は波状輪郭部の縁部あるいは波状輪郭部の波の山部に支持されていることがわかる。収縮が偏向すると、すなわち最適線がずれると、ストランド凝固殻はそれにもかかわらず鋳型内の凹部により案内される。ただしストランドの振動とストランドの剥離が起こる恐れがなくても、摩擦が増加するかあるいは減少するだけである。
【0013】
テーパーは凹部の縁部において、すなわち波状山部においては1メートル当り0.9%から1メートル当り1.1%までの領域まで減少する。テーパーが例えば鋳造円錐部の初端領域での1メートル当り2.5%からメートル当り0.5%まで減少しなければならず、凹部の円部でのテーパーが1%であり、かつ凹部の最深部におけるテーパーが0%であると、これから波状輪郭の中央線は1メートル当りほぼ0.5%のテーパーに相当することが推論される。
【0014】
凹部の縁部から最深部まで測定された凹部の最大深さは、0.3mmから1mmの範囲にあり、好ましくは約0.5mmである。深さは鋳造方向での凹部の最大深さにおけるテーパーが急に減少することにより増大し、この場合最大深さは出口開口部4において達せられる。
【0015】
鋳造ストランド内の材料張力を回避し、ならびに型中空域の一定の磨耗形状に達するためには、横断面が長方形、多角形あるいは円筒形の型中空域である場合、凹部が対称に設けられていることが有利であるとみなされる。横断面が円筒形の型中空域である場合、凹部は正反対に設けられているのが好ましい。型中空域が円筒形の場合、凹部の数は奇数であってもよい。この場合均一な分配、すなわち回転対称な凹部の分配が周囲にわたりなされ、その際二つの互いに隣接した凹部の間の円弧は360°/nを超えて延びており、nは凹部の数である。横断面が長方形もしくは多角形である場合、好ましい実施例においてはそれに応じて、鋳型側面の各々に凹部が設けられている。
【0016】
テーパー変化部の亀裂あるいはひびは、鋳造方向で場所に依存した型中空域のテーパーが、連続的な関数により作図可能であるカーブであることにより回避することができる。このことは凹部が急に始まるのではなく、緩やかでかつできる限り丸みを付された移行部分を備えていることを表わしており、この移行部分は緩やかなカーブにより作図することができる。代替え案として、さらに輪郭は適切でかつ十分に多数の直線部分を用いて作図してもよい。さらに凹部方向、すなわち鋳造方向で、凹部の輪郭は、理想的な場合に連続的な関数により作図されたカーブであるべきである。代替え案として、輪郭は直線および/または円形部分から構成されていてもよい。丸みを付されかつできるだけ緩やかな移行部分により、ストランド凝固殻と型中空域の間の摩擦は軽減することができる。
【0017】
本発明による鋳型は、輪郭を与えるために非切削で改造することができる。当然少なくとも一つの凹部を形成するために、切削による機械加工も可能である。少なくとも一つの凹部の輪郭の少なくともその一部が析出法により製造されているのが特に有利であるとされている。本発明の考えにおける分離析出法は電気分解の析出法であるのが好ましく、この析出法にあって例えばクロム、銅及びニッケルあるいはそれらの合金のような金属が型中空域の内表面に堆積する。凹部の所望の輪郭は、適切な電極誘導あるいは電極幾何学形状により得られ、従って層の厚さは程度が異なってばらつく。凹部の所望の幾何学形状を唯一析出法によって作ることは原則的に十分事足りるものである。しかしながらかなりの深さを有する凹部が所望される場合は、非切削かあるいは機械加工による改造を析出法と組合わせるのが合理的であり、従って少なくとも一つの凹部の輪郭は少なくともその一部が析出法により作られている。鋳型の耐磨耗性を高めるのと同時に耐用期間を延ばすために、型中空域をコーティングするのが原則的に望ましい。さらにこの理由から、凹部の縁部には凹部の最深部よりも厚いコーティングを施すのが適切である。なぜなら最深部では凹部の危険に晒される縁部に比べて耐磨耗性が小さくてもよいことが見込まれるからである。
【0018】
少なくとも一つの凹部の輪郭は、少なくともその一部が、言い換えれば場合によっては他の加工方法と組み合わせて、析出法、例えばエッチング法、腐食、レーザーでの切削により、あるいは電気化学法により作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を以下のように概略的図を基にして詳しく説明する。
【実施例】
【0020】
図1は金属を連続鋳造するための鋳型1の壁部の縦断面図を示す。図は全く概略的であり、縮尺基準には全く従っておらず、ただ本発明のアイデアの説明に対してだけに用いられる。
【0021】
鋳型1は中心縦軸線MLAに対して対称に形成されている。鋳型1は銅あるいは銅合金からできており、外側から詳細には示していない方法で冷却されており、従って鋳型1内に導入される金属溶湯は外側から内側に向かって凝固し、かつストランド凝固殻を形成する。図示した鋳型1はこの目的のために特に輪郭を与えられた型中空域2を有しており、この場合型中空域のテーパーKは金属溶湯の収縮挙動に基づいて調節されている。型中空域2は鋳込み開口部3と出口開口部4とを有する。鋳造方向は矢印Gで示してある。連続鋳造工程時に、金属溶湯は予め設定されたメニスカス位置5の内側で保持される。メニスカス位置5は方法に基づいて特定の範囲内で予め設定されたメニスカス位置5、すなわち規定位置の付近で変動する。鋳型1は外部から冷却され、それによりメニスカス位置5の下方で金属溶湯の凝固が始まり、その先の経過において収縮するストランド凝固殻が生じる。6で示した鋳造テーパー部は、特定の範囲の溶湯あるいはストランド凝固殻の容積減少を均一にする。鋳造テーパー部6のテーパーKは鋳型1の長さ方向において変化する。テーパーKは1m当り約2.5%で始まり、鋳造方向においては1m当り約0.5%まで減少する。
【0022】
本発明による鋳型1はこの実施例において、二つの異なる高さ領域に分かれている。上側の高さ領域H1は鋳込み開口部3から鋳型1の半分の長さLまで延びている。下側の高さ領域H2は鋳型1の中央部から始まり、出口開口部4まで達する。基本的に高さ領域H2は間隔Aをおいてメニスカス位置5の下方で始まる。というのも下側の高さ領域H2は程度が異なる収縮を均一にするための全体的に特殊な輪郭部を有しているからである。この輪郭部は下側の高さ領域H2内でまず始まり、これにより十分固いストランド凝固殻が発達する。本発明による鋳型1の場合、鋳造方向Gで延びている凹部7が設けられており、この凹部は出口開口部まで達している。凹部7の深さTは鋳造方向Gで増大する。凹部7は急に始まるのではなく、鋳造方向Gで徐々に増大する深さTを有する。上側の高さ領域H1へ至る流れるような移行部は、凹部7がその縁部8を除き、鋳造方向Gで凹部7の最深部9における、より急激に減少するテーパーK2を有することにより生じる。詳細については図2に基づき以下に説明する。
【0023】
図2は二点鎖線を用いて、図1に示したような横断面平面Iの領域内における鋳造テーパー部6の表面輪郭を示している。第二線は出口開口部4における表面輪郭のカーブを示している。具体的に説明するためのカーブの経過が強く誇張して描かれ、従ってさらに図1の寸法にも一致しないことを指摘しておく。横断面平面Iでの振幅が横断面平面IIでの振幅よりも大きいことがわかる。このことは凹部の深さTが鋳造方向Gで増大することを意味する。横断面平面Iにおいて、深さT1は最深部9と型中空域2の間に面した縁部8との間で深さT2が測定される横断面平面IIでの深さの約半分にすぎない。同時に凹部7の最深部9でのテーパーKが、縁部8間に比べて急激に減少することがわかる。なぜならこの図における最深部9は縁部8に比べて互いに小さい間隔を有するからである。
【0024】
鋳型1は、記載した波状輪郭部10の平均位置MIあるいはMIIがテーパーに対して標準的な最適ラインに対応するように設計されている。この場合平均線M1,M2は各々、凹部7の最深部9と縁部8の鋳型の縦方向に依存した位置から構成されている。図3はこの状況を明確に示している。鋳込み開口部3の近傍におけるテーパーKは1メートル当り2.5%でもって比較的高く、かつ鋳造方向Gで連続的に減少している。例えば約L/2の鋳型の中央部で凹部7が始まり、この場合全体的テーパーKはテーパーK1とK2から成る。テーパーK1は凹部7の縁部8において各々測定されており、かつ鎖線で描かれている。テーパーK2は凹部7の各最深点において測定されており、かつ破線で描かれている。縁部8でのテーパーK1はほんの徐々に減少するだけであり、かつ1メートル当り約1%の範囲で変動する。それに反して凹部7の最深部9でのテーパーK2は急激に減少し、かつそれどころか鋳型1の出口開口部4においては1メートル当り0%である。テーパーK1,K2の重畳により全体的テーパーKは1メートル当り約0.5%の大きさになる。
【0025】
鋳型1の下側高さ領域H2内の別の凹部7を介して、様々な鋳造温度、合金組織により、あるいはメニスカスの様々な位置により限定された状態で、ある程度の限度内でパラメータ変動を均一にすることが可能である。これにより、ストランドの振動、ストランドの剥離、ストランドのブレークアウトに至るストランドのクランプは回避される。
【0026】
図4は鋳型11の斜視図を示しており、この場合幾何学形状を説明するために、以下に図1及び2に関するすでに紹介された参照符号を使用する。鋳型11の型中空域2は鋳造方向Gで実質的に二つの部分に区分けされている。鋳込み開口部3に所属している上側高さ領域は平滑に仕上られており、この場合鋳型11のほぼ半分の長さにわたり、多数の凹部を備えた下側高さ領域が続いている。凹部7は各々、各鋳型側面12の中央部に設けられている。さらにまた二つの互いに隣接している鋳型側面12の間の角隅領域13も凹部7を備えている。凹部7は全て、鋳造方向Gに対して横方向に設けられ、丸みを付され、仕上げられており、この場合は曲線部分の相互接続部である。他方では、図4の鋳型11の場合は、凹部7は一定の間隔で予め設定されたメニスカス位置の下方で始まり、かつ出口開口部4まで延びていることが基本である。凹部7の幾何学形状は、テーパーに関しては凹部7の最深部9によっても、縁部8によっても定義されておらず、全てのテーパーのオーバーラップ部により定義されている最適な線が得られるように選択されている。
【0027】
図3に相応して、図5は図4の実施例のテーパー経過を示す。まず鋳込み開口部の領域内でのテーパーKは一定であり、その後鋳造方向で連続的に減少している。テーパーK3は初めのうちは適当に急激に減少し、この場合グラフK3は出口開口部4の方向で平坦になっている。下側の高さ領域、すなわちほぼL/2以降の領域内において、凹部7は個々の鋳型側面12において始まる。K4はこの関連で凹部7の最深部9において測定されたテーパーを示す。K5は凹部7の縁部8で測定されたテーパーを示す。凹部7の最深部でのテーパーK4はL/2においては0まで低下するが、凹部7の縁部8でのテーパーはほぼ1の状態にある。中間のテーパーK3はテーパーK4とK5の間にある。
【0028】
図6及び7は、異なって形成された凹部7a,7bが各々設けられている鋳型側面12の出口部分を示す。図示した鋳型側面12に対する凹部7a,7bの長さは、これに関してはただ凹部7a,7bの幾何学形状だけを説明すべきであるにすぎないので重要ではない。
【0029】
凹部7a,7bの深さTと幅Bは鋳造方向で減少している。凹部7aの半径R1が長さ全体にわたり一定であることが見分けがつくのはもちろんである。この幾何学形状は鋳型側面12の表面に対してわずかに傾斜した、鋳型側面12の環状円筒の貫通部から生じる。鋳造方向Gに対して横方向で丸みを付された幾何学形状を維持するために、凹部7aの縁部8への移行部に丸みを付した。
【0030】
図7の実施例は、凹部の半径が鋳造方向で増大することから前述のものと区別がつく。凹部7bの幅の狭い端部での半径R2が、凹部7bの幅の広い端部での半径R1よりも小さいことが認められる。この幾何学形状は環状円錐の鋳型板12の貫通部から生じる。この際円錐の高さ方向軸線は型中空域の表面に対して平行に延びている。凹部7bの深さと幅を様々に変えるために、この環状円錐はまださらに傾斜してもよい。さらにこの実施例において、凹部7の縁部8は丸みを付されて構成されていてもよく、したがって出口側ではほとんど波形輪郭になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】鋳型の側壁部の縦断面図である。
【図2】図1の二つの異なる横断面平面IとIIから見た拡大図である。
【図3】側壁の長さにわたりプロットされた、図1の鋳型板の側壁のテーパーを示すグラフである。
【図4】鋳型出口での注視方向における鋳型管部部の斜視図である。
【図5】鋳型の出口にわたりプロットされた、図4の鋳型の側壁のテーパーを示すグラフである。
【図6】第一実施例における二つの凹部を備えた鋳型板の領域の一部を示す図である。
【図7】第二実施例における二つの凹部を備えた鋳型板の領域の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 鋳型
2 型中空域
3 鋳込み開口部
4 出口開口部
5 メニスカス位置
6 鋳造テーパ部
7 凹部
7a 凹部
7b 凹部
8 7の縁部
9 7の最深部
10 波状輪郭部
11 鋳型
12 鋳型側面
13 角隅領域
MLA 中心縦軸線
G 鋳造方向
H1 上側高さ領域
H2 下側高さ領域
L 鋳型長さ
A 5とH2の間隔
B 7aの幅
T 深さ
T1 深さ
T2 深さ
R1 7の半径
R2 7aの半径
R2 7bの半径
MI Iの場合の平均位置
MII IIの場合の平均位置
K テーパー
K1 テーパー
K2 テーパー
K3 テーパー
K4 テーパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型中空域(2)を備えた金属を連続鋳造するための鋳型であって、この場合前記型中空域(2)が鋳込み開口部(3)と、出口開口部(4)と、鋳造テーパー部(6)とを備えた鋳型において、
鋳造方向(G)で延びている少なくとも一つの凹部(7,7a,7b)が設けられており、この凹部がある間隔をおいて、予め設定されたメニスカス位置(5)の下方で始まり、かつ出口開口部(4)まで延びていることを特徴とする鋳型。
【請求項2】
少なくとも一つの凹部(7)の発端部が発端領域内にあり、この場合発端領域が鋳込み開口部(3)から測定して、型中空域長さ(L)の30%から70%まで延びていることを特徴とする請求項1記載の鋳型。
【請求項3】
少なくとも一つの凹部(7)が型中空域(2)の半分の長さ(L)で始まっていることを特徴とする請求項2記載の鋳型。
【請求項4】
予め設定されたメニスカス(5)と少なくとも一つの凹部(7)の間の間隔(A)が、型中空域(2)の長さ(L)10%よりも大きく、特に20%よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項5】
少なくとも一つの凹部(7)の最深部(9)でのテーパー(K,K3)が、少なくとも一つの凹部(7)の縁部(8)でのテーパーに比べて急激に減少するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項6】
少なくとも一つの凹部(7)の最深部(9)でのテーパー(K2)が、1m当り最大0%まで減少するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項7】
凹部(7)の縁部(8)でのテーパー(K1)が、ある領域までは1メートル当り0.6%から1.5%まで減少するように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項8】
隣接した凹部(7)が波状輪郭部(10)を形成し、この場合波状輪郭部(10)の意図した平均線(MI,MII)が、テーパー(K)に関する鋳型の設計のために重要な最適線を形成していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項9】
横断面が長方形、多角形あるいは円筒形の型中空域(2)である場合、凹部(7)が対称に設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項10】
横断面が円筒形の型中空域(2)である場合、凹部(7)が正反対に設けられていることを特徴とする請求項9記載の鋳型。
【請求項11】
少なくとも一つの凹部(7)が、横断面が長方形もしくは多角形である型中空域(2)の鋳型側面(12)の各々に設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項12】
鋳造方向(G)で場所に依存している型中空域(2)のテーパー(K)が、連続した関数により作図可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項13】
鋳造方向(G)で場所に依存している型中空域(2)のテーパー(K)が、カーブ部分および/または直線部分の相互接続部により規定されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項14】
鋳造方向(G)に対して横方向の少なくとも一つの凹部(7)の輪郭が、
連続した関数により作図可能なカーブであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項15】
鋳造方向(G)に対して横方向の少なくとも一つの凹部(7)の輪郭が、
カーブ部分および/または直線部分の相互接続部により規定されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項16】
少なくとも一つの凹部(7)の輪郭の少なくともその一部が、析出法により作られていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項17】
少なくとも一つの凹部(7)の輪郭の少なくともその一部が、切削加工法により作られていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の鋳型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−152431(P2007−152431A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315118(P2006−315118)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(391011951)カーエム・オイローパ・メタル・アクチエンゲゼルシヤフト (9)
【Fターム(参考)】